• 検索結果がありません。

家をもつのは当たり前? -- インドネシアの持家比率 (特集 世界の住まい・今)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "家をもつのは当たり前? -- インドネシアの持家比率 (特集 世界の住まい・今)"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

家をもつのは当たり前? -- インドネシアの持家比

率 (特集 世界の住まい・今)

著者

濱田 美紀

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

191

ページ

23-25

発行年

2011-08

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00004178

(2)

  日本人にとって「家」をもつこ と は 人 生 の 大 き な イ ベ ン ト で あ る。 土 地 が 狭 く て 高 い 日 本 で は、 「 家 」 は 自 分 の 年 収 の 何 倍 も か け て、何十年もにわたり購入する大 きな買い物である。そのため、貧 しい人がまだまだ多く住むインド ネ シ ア で は、 「 家 」 を 持 た な い 人 は多いのではないか、 と想像する。 しかし、実はインドネシアの持家 率はかなり高い。   六 年 前、 筆 者 が イ ン ド ネ シ ア・ 中ジャワにある外国から援助を受 けたマイクロファイナンス機関を 訪れた時のこと。そこは女性を中 心 に、 事 業 向 け の 小 額 な 資 金 を、 グループでなく個人に貸出してい た。貧困層向けのマイクロファイ ナンスの典型と思われている無担 保の融資は、実はインドネシアで は珍しく、この機関でも担保は必 要だった。ただし、担保は何でも い い こ と に な っ て い る。 「 な ん で もいいって⁝」と戸惑っていると 「 ほ ん と に 何 で も い い ん だ よ。 そ の人が大切にしているものだった ら、なんでも。例えば、テレビで も自転車でも」そう担当者は説明 し た。 「 じ ゃ あ、 何 が 多 い ん で す か?」 「 ん ー ⁝ な ん で も い い ん だ けど⁝でも、実際はやっぱり家や 土地の所有証明書かな」では、と 借入れ人のリストを見せてもらう と、確かにほぼ全員といっていい ほど、担保は「家 ・ 土地の証明書」 だった。想像に反して、多くの人 が家を所有しているらしい。   しかし、どこのマイクロファイ ナンスもここと同じというわけで はない。西ジャワの昔ながらの市 場で小さな店を出す人たちに小額 の資金を貸すマイクロファイナン ス機関では、担保の多くは預金と そしてテレビだった。本当にテレ ビが担保になるんだ、とはじめは 驚いたが、借りているお金は少額 なので、その機関にある自分の貯 金にテレビを付け足すくらいで担 保としては間に合うのだろう。   ところかわって、東ジャワのマ イ ク ロ フ ァ イ ナ ン ス 機 関 で の 話。 非常に多くのマイクロファイナン ス が あ る イ ン ド ネ シ ア で あ る が、 その多くは商業ベースである。そ の た め イ ン ド ネ シ ア の マ イ ク ロ ファイナンスは「本来の目的」で ある貧困削減には役立っていない という批判から、この機関が設立 された。貧困層、特に女性の事業 を援助するためにグラミン銀行型 のグループ貸付を行っている。し かし、そこでも担保は必要で、さ らに基本的には家の所有証明書が 必要という。 「グラミン銀行型だっ た ら、 無 担 保 じ ゃ な い の?」 「 担 保がないと貸せないわよ!」何バ カなこといっているの、と言わん ばかりの返事が返ってきた。さら に「じゃあ、家をもってないとダ メなの?」と重ねて聞くと、そこ にいたスタッフ全員口をそろえて いっせいに 「当然よ!」 と答えた。 「 だ い た い 普 通 の 人 な ら 家 を も っ て い る 」「 家 を も っ て い な い 人 間 は信用できない。それか、この土 地 の 者 で な い 」「 じ ゃ あ、 よ そ 者 は お 金 を 借 り ら れ な い の?」 「 そ んなことはないよ。でも、ここに 何年かいてちゃんと働けば家は買 えるはず」と口ぐちに「家」が必 要 で、 「 家 」 を も っ て い る こ と が 安 心 と 信 用 の 基 本 で あ り、 「 家 」 をもつことが重要で、そして「当 ①東ジャワ―瓦・煉瓦・土間の家(撮影:東方孝之)

      

持家比率

23

アジ研ワールド・トレンドNo.191 (2011. 8)

(3)

たり前」のことだと説明した。そ うなのか。インドネシアでは家を も つ こ と は 当 た り 前 な こ と な の か。そうはいいつつ、やはりここ も貧困層相手ではないのではない かと少し疑った。その裏付けを取 るために、中央統計庁が出す毎年 のデータをみてみよう。   イ ン ド ネ シ ア の 話 を す る 前 に、 日本の持家比率ははたしてどのく らいか。平成一七年の国勢調査に よ る と、 全 国 の 持 家 比 率 は 六 四・ 三%。昭和六〇年の六一・七%よ り若干だが増えている。人口が減 少するなかで将来家をもつ必要性 は な く な る と い わ れ て 久 し い が、 や は り 持 家 神 話 は 根 強 い ら し い。 持家一世帯当たりの住宅の延べ面 積の全国平均は平成一七年で一二 一・ 九 平 方 メ ー ト ル。 ち な み に、 持家比率が一番高い県は富山県で 八三 ・ 九%、 広さは一七六平方メー ト ル。 持 家 比 率 が 一 番 低 い の は、 想像に違わず東京の四七・二%で 広さは九四・四平方メートルであ る。   で は 他 の 国 と 比 べ る と ど う か。 Nat ionMaster .com と い う サ イ ト の 世 界 の 持 家 比 率( 二 〇 〇 〇 年 ) を眺めると、一位はアイルランド で 八 三 %、 二 位 は イ タ リ ア の 七 八 %、 三 位 は イ ギ リ ス で 六 九 %、 アメリカが六五%で七位、日本は 六〇%で九位、 フランス五四% (一 一 位 )、 ド イ ツ 四 三 %( 一 四 位 ) となっている。世界平均が六三% とあるので、日本は平均的な位置 にあるらしい(ただしこのランキ ングは先進国だけのものと思われ る) 。   では改めてインドネシアはどう か。 中央統計庁のデータによると、 二 〇 一 〇 年 の 全 国 平 均 は 実 に 七 八 ・ 〇%。二位のイタリアと並ぶ。 日本より高い。家をもつのは当た り前、というのもあながちまちが いではないらしい。州別にみると 一 位 は 中 ジ ャ ワ の 八 七・ 九 % で、 二 番 目 は 東 ジ ャ ワ の 八 七・ 一 % だった。首都ジャカルタは、 四五 ・ 二%と全国で一番低く、大都会で 家を持ちにくいのはどこの国でも 同じことらしい。それはインドネ シア国内でもいえるようで、都市 と地方と比べると、いわゆる田舎 の 方 が 持 家 比 率 は 圧 倒 的 に 高 い。 田 舎 の 全 国 平 均 は 八 八・ 三 % で 都 市 部 の 六 七・ 六 % を は る か に 上 回 っ て い る。 ジ ョ ク ジ ャ カ ル タ 特 別 州 の 田 舎 に 至 っ て は 九 四・ 八 % が 家 を も っ て い る ( 都 市 部 は 六 五・一%) 。   一 方、 広 さ に 関 し て は、 所 得 格 差 が 大 き い た め か、 日 本 の よ う な 単 純 平 均 は な く、 一 九 平 方 メ ー ト ル 以 下、二〇〜四九平方メートル、五 〇〜九九平方メートル、一〇〇〜 一四九平方メートル、一五〇平方 メートル以上という五段階に分け てその割合を出している。三三あ る州のうち一九の州で、もっとも 割 合 の 高 い の は 二 〇 〜 四 九 平 方 100.0 90.0 80.0 70.0 60.0 50.0 40.0 30.0 20.0 10.0 0.0 ナングロ・アチェD 北スマトラ 西スマトラ リアウ リアウ群島 ジャンビ 南スマトラ バンカ・ブリトゥン群島 ベンクル ランプン ジャカルタ首都特別 西ジャワ バンテン 中ジャワ ジョグジャカルタ特別 東ジャワ バリ 西ヌサトゥンガラ 東ヌサトゥンガラ 西カリマンタン 中カリマンタン 南カリマンタン 東カリマンタン 北スラウェシ ゴロンタロ 中スラウェシ 南スラウェシ 西スラウェシ 東南スラウェシ マルク 北マルク パプア 西パプア 150m2 100-149m2 50-99m2 20-49m2 ∼19m2 持家比率 トイレ無し (%) 図 州別インドネシアの住まい(広さ・持家比率・トイレ) (出所) インドネシア中央統計庁。 ②東ジャワ―土間(撮影:東方孝之)

24

アジ研ワールド・トレンドNo.191 (2011. 8)

(4)

メートルで、狭い家に慣れている 日本人から見ても家族が住むには 決 し て 広 い と は い え な い。 ( 図 参 照)さらにジャカルタは、一九平 方メートル以下に二三・九%の世 帯が住んでいて、やっぱり都会は 高くて狭いということがわかる。   つ い で な が ら 、 イ ン ド ネ シ ア で は ど ん な 家 に 住 ん で い る か に つ い て も 統 計 が 出 さ れ て い る 。 主 な 質 問 は 、「 屋 根 は 棕 櫚 ( iju k ) 葺 き ( 日 本 で い う と こ ろ の 藁 葺 き ) で な い か ? 」「 壁 は 竹 で な い か ? 」 「 床 は 土 で な い か ? 」 で あ る 。 こ の 「 で な い か ? 」 と い う 質 問 が 、 昔 は 棕 櫚 葺 き の 屋 根 に 竹 の 壁 で 土 間 の 家 が 普 通 で あ っ た の だ ろ う と 思 わ せ る 。   二〇一〇年の統計結果は、棕櫚 葺 き の 屋 根 で は な い 4 4 4 4 家 は 九 六・ 六 %。 一 九 九 三 年 で す で に 九 〇・ 三%だったことを考えると、この 質問自体が過去のものになってい る感もあるが、パプア州では二〇 一〇年でも四二・三%が棕櫚葺き である。これはパプア州が比較的 貧しいからでは、 と思いがちだが、 持ち家比率は八一%ある。 さらに、 安価な住宅を中低所得者向けに提 供 す る 国 営 企 業 Perumnas 社 の 一 戸当たりの平均価格はパプア州で 一 億 ル ピ ア( 約 九 四 万 円 )。 ジ ャ カ ル タ の 一 億 一 九 〇 〇 万 ル ピ ア ( 約 一 一 二 万 円 ) に 次 ぐ 高 さ で あ る。全国平均が六六〇〇万ルピア (約六二万円) 、安いところは五五 〇〇万ルピア (五二万円) なので、 遠隔地ゆえに資材が高いのかもし れないし、また東西に広いインド ネシアは気候も文化も大きく異な るため、もしかするとパプアでは 「 自 然 素 材 」 が 土 地 の 風 土 に 合 っ ているのかもしれない。 つぎに 「壁 は竹製でないか?」という質問に は二〇一〇年には九〇%が「竹製 でない」となっている。一九九三 年の七四・五%からずいぶん変化 し て い る。 も う ひ と つ、 「 床 は 土 でないか」という質問に、二〇一 〇 年 は 八 八・ 一 % が「 土 で な い 」 と答えている。これも一九九三年 の七二 ・ 九%から高くなっている。 しかし、印象としては地方の民家 に行けば土間の家もまだ多く見か け る よ う な 気 が す る。 写 真 ① は、 東ジャワの民家である。棕櫚葺き 屋根でなく竹の壁でもないが土間 の家である。インドネシアの民家 はたいてい玄関がそのまま応接間 になっているような作りで、そこ で客に応対する。最も簡素な土間 の場合、写真②のように敷物を敷 く。またはラタンや竹製の椅子を 置 く( 写 真 ③ )。 高 価 な 素 材 は 分 厚い大理石であるが、写真のよう な タ イ ル が 一 般 的 か も し れ な い (写真④) 。屋根と壁と床。床にタ イルを敷くのが、一番お金がかか るのだろうか?   家をもっているかどうかも重要 だが、国が豊かになるにつれ、ど のような家に住むかが重要になっ てくる。現在G 20のメンバーでも あり、好調な経済を背景に、二〇 二五年には世界一〇大経済国にな ると気を吐いているインドネシア であるが、統計庁のデータ(二〇 一〇年)では自宅にトイレがある 世帯は六三 ・ 九%に止まり、一三 ・ 四%が共同で、一八・八%の世帯 にトイレがない。将来、インドネ シ ア が 一 〇 大 経 済 国 に な る 頃 に は、トイレの有無について聞いた りする必要がなくなって、住まい に関する質問項目も変わっている のだろうか。 ( は ま だ   み き / ア ジ ア 経 済 研 究 所   金融・財政研究グループ) ③東ジャワ―敷物と家具(撮影:筆者) ④東ジャワータイルの家(撮影:東方孝之)

25

アジ研ワールド・トレンドNo.191 (2011. 8)

家をもつのは当たり前?―インドネシアの持家比率

参照

関連したドキュメント

[r]

[r]

検索対象は、 「論文名」 「著者名」 「著者所属」 「刊行物名」 「ISSN」 「巻」 「号」 「ページ」

界のキャップ&トレード制度の最新動 向や国際炭素市場の今後の展望につい て、加盟メンバーや国内外の専門家と 議論しました。また、2011

権利 Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア 経済研究所 / Institute of Developing.

権利 Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア 経済研究所 / Institute of Developing.

権利 Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア 経済研究所 / Institute of Developing.

[r]