Title
大学生、看護学校生の価値観の変化
Author(s)
国吉, 和子
Citation
沖縄大学紀要 = OKINAWA DAIGAKU KIYO(7): 199-211
Issue Date
1990-03-31
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/5745
沖縄大学紀要第7号(1990年)
大学生、看護学校生の価値観の変化
国吉和子 1.目的 人は、様々なものに価値を認めるが、その認める価値は、人によってそのウ エイトが違う。また、それは、個人の置かれた状況によっても変わる。 人の価値の置き方と行動とは密接な関係がある。人が何に価値を置くかによ って、その人の行動は異なってくる。即ち、人が行動する背景には、その人の 価値観が作用しているのである。 価値観と行動がどのように結びついているか、両者の関係を明らかにした研 究に、ロキーチの研究(Rokeach,M・’1968~69)がある。彼は、価値を次の ように定義していろ。 価値(values)は、特定対象・特定状況に向けられるものではなく、それを 越えて、「行為の様式(modesofconduct)」や「存在の最終状態(end-states ofexistence)」と関係するものである。また、それは、態度や行為、比較、 評価、自他の正当化などを導く基準または尺度である。 ロキーチは、価値を手段的一最終的という視点から2分して考えていろ。 手段的価値(instrumentalvalues)というのは、上記の「行為の様式」と対 応するもので、「正直にふるまうべきである」とか、「責任感のある行動をす べきである」というように、行為のあり方についての信念を意味する。 また、最終的価値(terminalvalues)というのは、「存在の最終状態」と対 応するもので、人生の究極目標として、「平和な世界」とか、「平等」、「自由」 などに対する信念を意味する。 この2種類の価値は、相互に関連し合い、手段的価値が最終的価値に組み込 まれろという関係にある。 本研究では、このようなロキーチの視点に基づいて、彼の価値の測定法を使 って、価値観の調査を行なった。大学生及び看護学校生を対象にして、1977年 -199-沖縄大学紀要第7号(1990年) から1988年にかけてその調査を実施した。
本稿では、その結果を基に、主として、大学生及び看護学校生の価値観が、
約10年の間にどのように変化したか、また、両者の置かれた状況の違いによっ
て、価値のウェイトがどのように異なるか、等を分析していくことにする。 2.方法 1)対象:大学1~4年生男女及び看護学校1~2年生女子(准看護婦又は 看護婦見習中)を対象にした。大学生のサンプル数は、1977年には50人、1982 年には96人、1988年には57人であった。また、看護学校生のサンプル数は、1978年 には31人、1982年には37人、1986年には34人、1988年には32人であった。なお、 看護学校生については、男子はサンプル数がかなり少なかったため(各年とも数 人)、分析の対象から外した。2)調査時期:大学生に対しては、1977年、1982年、1988年に、そして、看
護学校生に対しては、1978年、1982年、1986年、1988年にそれぞれ実施した。3)調査項目:本調査では、ロキーチによって考案された「価値観の調査」
の日本語版(東江平之らによる翻訳、1976)を用いたが、それには、最終的価 値及び手段的価値の2種類の価値尺度が含まれていろ。各価値尺度は、それぞ れ18の価値項目で構成されているが、最終的価値項目は、「平和な世界」とか、「自由」、「平等」など、人生の究極目的(目標)を表わすものであり、手段
的価値項目は、「やさしい」とか、「責任感のある」など、行為のあり方(生 活手段)を示す項目である(表1,2参照)。4)調査方法:上記の2種類の価値尺度に含まれるそれぞれの18の価値項目
について、被調査者に、彼らの生活における指針または原理として、どれ程重 要であるかを決めさせ、その重要性の程度にしたがって1位から18位までを序 列化させた。 3.結果と考察 1)大学生の場合表1,2は、1977年と1982年、1988年における大学生の最終的価値及び手段
-200-沖縄大学紀要第7号(1990年) 的価値の平均順位を示したものである。 まず、最終的価値について、経年比較でみて際立って特徴的なことは、大学 生の価値の置き方が、広く、抽象的なものから、具体的.身近かなものへ変化 してきていることである。 1977年には、男子では、「自由」、「成熟した愛」、「平和な世界」などが、 女子では、「自由」、「幸福」、「真の友情」などが、それぞれ上位3位まで を占め、男女とも「自由」の順位が最高であった。また、1982年には、男子で 表1大学生の最終的価値(平均順位) 1124911 257956 341174 486667 510、161415 6513888 775731 823212 933323 10915101112 ,1616171316 121491149 131314181217 1412851510 151118151713 16151213105 171717121618 181810141814 -201- 1977年 男 (、-28) (、=22)女 1982年 男 (n=48) (、==女48) 1988年 男 (、=41) (n=16)女 自由 1 1 2 4 9 11 成熟した愛 2 5 7 9 5 6 平和な世界 3 4 1 1 7 4 活気のある生活 4 8 6 6 6 7 自尊心 5 10 11 16 14 15 、 JU の調和 6 5 13 8 8 8 家族の保護 7 7 5 7 3 1 幸福 8 2 3 2 1 2 真の友 盾 9 3 3 3 2 3 分別 10 9 15 10 11 12 達成感 11 16 16 17 13 16 安楽な生活 12 14 9 11 4 9 社会的承認 13 13 14 18 12 17 平等 14 12 8 5 15 10 美の世界 15 11 18 15 17 13 快楽 16 15 12 13 10 5 救い 17 17 17 12 16 18 国の安全 18 18 10 14 18 14
沖縄大学紀要第7号(1990年) 表2大学生の手段的価値(平均順位) は、「平和な世界」、「自由」、「幸福(あるいは、真の友情)」、そして、 女子では、「平和な世界」、「幸福」、「真の友情」などが上位3位までを占 め、しかも、「平和な世界」が男女共通して首位を占めていた。 ところが、1988年には、男女とも「幸福」とか、「家族の保護」、「真の友 '清」などが上位3位までを占めるようになり、小市民的な、身近かな人間関係 を重視する方向に変化してきていろ。 このような変化は、相対的に、女子よりも男子において大きい。特に、「幸 -202- 1977年 男 (、=28) (、=22)女 1982年 男 (、=48) (、=48)女 1988年 男 (n=41) (n=16)女 責任感のある 1 2 1 4 2 4 意欲的な 2 2 5 6 3 6 想像的な 3 14 17 17 16 17 勇気のある 4 9 4 5 5 5 知性の高い 5 5 16 16 12 10 心の広い 6 4 6 2 6 3 独立の精神をもつ 7 6 8 13 11 13 論理的な 8 15 18 18 18 18 正直な 9 11 3 1 4 2 寛容な 10 8 12 7 10 7 有能な 11 10 15 9 8 12 やさしい 12 1 2 2 1 1 自制心のある 13 7 10 12 9 8 快活な 14 13 9 8 14 9 骨身をおしまない 15 12 14 10 13 16 礼儀正しい 16 18 7 11 7 5 清潔な 17 16 11 14 17 14 従l頂な 18 17 13 15 15 11
沖縄大学紀要第7号(1990年) 福」や「真の友情」など、身近かな人間関係を重視する傾向は、女子において は一貫してかなり強く、経年的にほとんど変化していない。ところが、男子に おいては、1977年には、それらの価値項目は8位(幸福)、9位(真の友情) の順位に位置し、それ雁商い価値を置いていなかったが、1982年には、両方と も3位に、そして、1988年には1位、2位に上昇し、次第により重視する方向 に変化してきていろ。このような男子の女性の価値観への接近化により、性差 が縮小してきている。 とはいえ、各価値項目についての大まかな性別比較をすると、男女間の価値 の置き方に多少の違いがみられろ。男子では、「自由」とか、「成熟した愛」、 「活気のある生活」、「自尊心」、「達成感」、「安楽な生活」、「社会的承 認」などに対して、女子よりも比較的安定して価値を置く傾向がある。一方、 女子では、「心の調和」とか、「幸福」、「分別」、「平等」、「美の世界」、 「快楽」などに対して、男子よりも比較的安定して価値づける傾向がある。 ところで、以前にはそれ程価値がおかれなかった「安楽な生活」や「快楽」 に対して、男女ともその順位が次第に高まってきていろ。そして、それらの項 目と関連する「成熟した愛」とか、「活気ある生活」などの順位には変化が少 なく、しかも、比較的に上位を保持していろ。これらのことは、欲求の開放と 充足のなかに生きる若者たちの`快楽志向の高まりを反映しているように思われ ろ。 現代社会においては、遊びとか、消費の方に価値の目盛りが傾いてきている と言われるように、大学生の場合も、まじめ主義が後退し、快を求める傾向、 自分の個人生活・私的生活をより大切にする生き方が次第に強くなってきてい ることをうかがわせていろ。 一方、「平等」に関しては、1977年には男女とも余り価値を置いていなかっ たが、女性運動の広がりと大きなうねりの社会状況下で、1982年には順位が上 がり、その重要度がかなり高まった。その後は順位が低下しているが、どの年 も、男子よりも女子の方の順位が高くなっていろ。 また、先に述べた「'快楽」の価値づけの変化は、とりわけ女子において大き いという結果になっていろ。それは、女性運動が高揚する社会的状況のなかで、 -203-
沖縄大学紀要第7号(1990年) 女子の「平等」に対する価値の高まりと併行して進行してきたものなのだろう か。 「自尊心」については、男女とも、順位が低下傾向にある。特に男子では、 1977年には、それが5位を占めていたが、その後は11位、14位と急に低下して きていろ。若者たちにとって、かっては特に男子に重視された自尊心とか、プ ライドなどは、今やそれ程重要な意味をもたなくなってきたことを示唆してい ろ。 ところで、「平和な世界」の順位が低下傾向にあることは既に述べたが、そ れでも、その価値項目は、1988年時点でも上位の範囲内に位置していろ。しか しながら、その項目と関連すると考えられろ「国の安全」に対しては、彼らは ほとんど価値を置いていない。それは、核戦争による地球の破滅が叫ばれるな かで、防衛力の強化による国の安全は、世界の平和のためにならないという彼 らの考え方に基づく価値の置き方を示しているのであろうか。 -万、手段的価値については、1977年には、男子では、「責任感のある」、 「意欲的な」が、女子では、「やさしい」、「責任感のある(あるいは、意欲 的な)」が、それぞれ上位を占めた。1982年には、男子では、「責任感のある」、 「やさしい」が、女子では、「正直な」、「やさしい(あるいは心の広い)」 が、それぞれ上位となっていろ。そして、1988年には、男子では、「やさしい」、 「責任感のある」、女子では、「やさしい」、「正直な」が上位を占めていろ。 このように経年比較でみていくと、1977年には、価値観の性差が比較的明確 であったのが、その後次第に縮小してきていることが分かる。そして、1988年 には、男女とも共通して「やさしさ」が最高位になった。 「やさしい」という項目に対しては、女子では一貫して高い価値を置く傾向 があり、経年的にほとんど変化していない。しかしながら、男子では、1977年 には、「やさしい」は12位で余り価値が置かれなかったが、1982年には急に2 位に上昇し、1988年には1位を占めるようになった。 最終的価値の場合と同様、手段的価値においても、男子の女性の価値観への 接近化が性差の縮小化を生じさせている。特に「やさしい」という特性は、最 終的価値として1988年に男女共通して上位に位置した「幸福」、「家族の保護」、 -204-
沖縄大学紀要第7号(1990年) 「真の友'盾」などの目標達成に不可欠の条件といえる。 要するに、いまの大学生の望むことは、具体的な、平穏充足型の生き方・行
動の仕方であるといえよう。また、彼らが最も価値を置く「やさしさ」は、ハ
ードウェアに依拠するいもの中心〃社会から、ソフトウェアが主役を演ずろいもの離れ〃社会へ急速に移行するなかでその重要度を増してきたのであろう。
ところで、各項目について性別比較でみろと、「責任感のある」、「意欲的な」、「想像的な」、「勇気のある」、「独立の精神をもつ」などは、比較的に
男子に安定して価値が置かれる傾向がある。一方、「心の広い」、「正直な」、 「寛容な」、「快活な」などは、比較的女子に重視される傾向がある。他方、男女間の価値観の接近化傾向も目につく。既に指摘したように、「や
さしい」は、以前は女性の特性とされ、また、女子はそれに一貫して高い価値を置いてきたが、男子は以前は余り価値を置かなかった。しかし、1988年には、
男子もそれに最も高い価値を置くように変化した。また、「想像的な」、「論理的な」などは、1977年には、特に男子において価値
づけられていたが、その重要度は次第に低下してきていろ。それらに余り価値 を置かない女子においても、同じく低下傾向を示していろ。このことは、性差 の縮小化とともに、現代の若者の感覚追求的で、議論やむずかしい話を避ける傾向を反映しているように思われろ。また、「知性の高い」や「独立の精神を
もつ」でも順位が男女とも低下の方向にある。さらに、「自制心のある」では、 1977年には性差が大きかったが、次第に縮小してきていろ。 ところで、従来、女性の特性とされた「礼儀正しい」に対しては、1977年に は、男女とも順位はかなり低かったが、次第に上昇傾向をみせていろ。特に女 子においてその傾向が強い。また、「従順な」の順位は、どの年も男女とも低 いが、経年比較では、やB高まる傾向を見せ、女子にその傾向が強くなってい ろ。 これらのことは、一方で女子の保守化傾向を反映しているように受けとめら れるが、むしろ、それは、彼女らの、自分の欲求により忠実な、無理しない、 自然の生き方への傾斜を示唆しているように思われろ。 -205-沖縄大学紀要第7号(1990年) 2)看護学校生の場合 表3,4では、看護学校生の1978~1988年における最終的価値及び手段的価 値の平均順位が示されていろ。ここでは、大学生女子と比較しながら考察を進 め、看護学校生の価値観の特徴をみていくことにする。 最終的価値については、看護学校生では、「幸福」や「家族の保護」などが  ̄貢して上位に位置づけられていろ。「平和な世界」は、1978年には6位であ ったが、1982年と1986年には2位、1988年には3位と、順位が上昇してきてい ろ。また、「真の友'祷」については、経年比較では順位が上下しているが、 1988年には4位を占めていろ。 これら上位項目の変化については、看護学校生は、大学生女子とかなり類似 した傾向を示していろ。このことは、青年の一般的傾向として、看護学校生の 場合でも共通して、個人生活・私的生活をより大切にし、身近かな人たちとな ごやかな日々を送る生き方を重視する傾向があることを示しているように思わ れろ。 しかしながら、「家族の保護」については、大学生女子が重視の方向へ動い てきているとはいえ、1982年までは、その重要度はそれ程高くはなかったのに 対し、看護学校生では一貫して重要度が高い。また、「自由」の重要度につい ては、経年比較では、看護学校生が上昇傾向を示しているのに対し、大学生女 子ではや&低下の方向にある。さらに、「安楽な生活」についても、看護学校 生の方が比較的高い価値を置く傾向がある。 これらの違いは、両者の置かれた立場の違いに依ると思われる。看護学校生 の場合は、大学生と異なって、病気や死と対決している患者との直接的関わり のなかで、安らぎとか、自由、家族の保護などの重要性を直に、より強く感じ させられるために、それらの項目の順位が、大学生よりも高くなっていろと考 えられろ。 また、「救い」についても、各年とも、順位は余り高くはないが、経年比較 でみろと、看護学校生では僅かながら高まってきていろ。大学生女子では低下 の方向にある。看護学校生の場合は、職業がら、生死の境をさまよう人々との 出会いが比較的多く、そのことが、「救い」への重要度を次第に高めさせてい -206-
沖縄大学紀要第7号(1990年) 表3看護学校生の最終的価値(平均順位) ろのかもしれない。 一方、「真の友!清」は、友人関係の形成をよ 一方、「真の友'清」は、友人関係の形成をより重視する大学生において順位 が比較的安定して高くなっていろ。「快楽」の順位は、看護学校生では余り高 くはなく、また、経年比較でみても上昇の方向にはあるが、大きな変化はして いない。r快楽」というのは、看護婦という職業にはあまり許容されるもので はないのかもしれない。他方、自由な生活の享受がより可能な大学生女子では、 「快楽」の順位は次第に上昇し、1988年にはかなり上位(4位)にきていろ。 -207- 1978年 (n=31) 1982年 (、==37) 1986年 (n=34) 1988年 (、=32) 幸福 1 4 1 1 家族の保護 2 3 3 2 安楽な生活 3 11 4 6 真の友 盾 4 7 8 4 心の調和 5 6 5 9 平和な世界 6 2. 2 3 自由 7 8 6 5 分別 8 11 14 14 成熟した愛 9 1 7 7 活気ある生活 10 5 9 8 快楽 11 13 10 10 平等 12 9 11 12 自尊 、 ノU 13 14 17 17 美の世界 14 18 15 15 社会的承認 15 15 18 18 国の安全 16 10 12 11 救い 17 15 13 13 達成感 18 17 16 16
沖縄大学紀要第7号(1990年) 表4看護学校生の手段的価値(平均順位) その他、「心の調和」や「分別」の順位は、大学生女子と同様に低下の方向 ある。また、「成熟した愛」や「活気ある生活」は、看護学校生では、1982 には上位を占めるようになったが、その後、や>下降してきていろ。大学生 にある。また、「成熟した愛」や「活気ある生活」は、看護学校生では、1982 年には上位を占めるようになったが、その後、や>下降してきていろ。大学生 では逆の方向を示していろ。 ところで、「国の安全」の11項位は、大学生女子の場合と同様に高くはないが、 経年比較でみろと、両者とも順位がやL高くなってきていろ。そして看護学校 生の方の順位がやき高い。また、それと関連する「平和な世界」に対しては、 -208- 1978年 (n=31) (n=37)1982年 1986年 (n=34) 1988年 (、=32) 責任感のある 1 2 4 2 やきしい 2 1 1 1 正直な 3 3 2 3 意欲的な 4 5 5 5 自制心のある 5 10 8 11 、 ノU の広ぃ 6 4 3 4 知性の高い 7 6 11 8 礼儀正しい 8 8 10 6 寛容な 9 7 6 9 骨身をおしまない 10 12 9 15 清潔な 11 14 12 7 従 順な 12 11 13 14 有能な 13 13 15 10 快活な 14 15 13 13 勇気のある 15 9 7 12 論理的な 16 18 18 18 独立の精神をもつ 17 16 16 16 想像的な 18 17 17 17
沖縄大学紀要第7号(1990年)
大学生女子、看護学校生ともに、順位は上位にあるが、大学生女子がやL下降
の方向にあるのに対し、看護学校生は一定した順位を保持している。
これらのことから、「国の安全」や「平和な世界」の問題に反応する感度は、
男子よりも女子の方が高まってきていろ(表1)が、その傾向は、とりわけ看
護学校生が強い(表3)と言えよう。また、「達成感」や「自尊心」、「社会的承認」などに関しては、どの年も、
大学生女子と同様に、その順位は低いが、経年比較でみろと、看護学校生の「達成感」の順位は、上昇の方向を見せ、「自尊心」や「社会的承認」は下降
してきていろ。これは、彼女たちにとって、社会的評価が得られるか否かとい うことよりも、自己充実感・成就感が持てるか否かということの方がより重要 になってきていることを示唆していろ。 ところで、手段的価値では、全体として、「やさしい」とか、「責任感のある」、「正直な」、「意欲的な」、「心の広い」などが上位を占めていろ。看
護学校生の場合は、特に「やさしい」、「責任感のある」、「正直な」などが
一貫して上位3位内にランクされている。看護学校生の「やさしい」を一貫して上位に置くのは、大学生女子とも共通す
ることであるが、上記の3項目が一定して上位にあるのは、それらが看護婦という職業に最も要求される側面を表わしているからであろう。また、いずれも、
最終的価値として上位を占めた「幸福」、「家族の保護」、「平和な世界」な
どの目標を達成するために最も必要なものと言えよう。さらに、職業がら必要とされろ「心の広い」というのも、看護学校生では順
位が上昇の方向にある。大学生女子においても僅かな高まりがみられる。この傾向は、「やさしい」とか、「正直な」などの重要度の高まりと併行して生じ
てきているものと考えられろ。ところで、「清潔な」の順位は、両者とも低いが、職業上、看護学校生の方
の順位が大学生よりも幾分高く、また、経年比較でみても上昇の方向にある。 また、従来、女性の特性とされてきた「骨身をおしまない」とか、「自制心のある」、「従順な」などが低下の傾向を見せていろ。このようなことは、最
近の女性の一般的傾向として見られることであるが、看護学校生の間でも、伝
-209-沖縄大学紀要第7号(1990年) 統的な性役割意識が次第に薄らいできていることを示している。 しかし、他方、大学生女子と同じく、「礼儀正しい」の順位は、経年比較で みろと、やき上昇傾向を見せ、また、「知性の高い」や「寛容な」は、中位の 位置で上下している。そして、「勇気のある」も上下に揺れていろ。これらの ことは、伝統的な性役割についての考えが、彼女ら自身のなかで微妙にゆれて いることを示しているのであろうか。 こうしてみていくと、最終的価値、手段的価値に、看護学校生と大学生女子 との間に、基本的には共通する点が多いことが分かる。しかしながら、一方、 両者の置かれている立場の違いによって、価値観がいくらか違うことも認めら れろ。看護学校生の場合は、患者や医療関係者との関わりのなかで、看護婦と いう職業により必要とされることに価値を置く傾向が強い。それに対し、大学 生の場合は、大学生活の充実・享受という観点から、そのために必要とされる ことに価値を置く傾向が濃い。 4.まとめ 本研究では、ロキーチの価値観の測定法を用いて、大学生及び看護学校生の 価値観の変化と両者の違いをみてきた。 本調査結果でみられた主なものは次の通りである。 ①最終的価値では、大学生の場合、男女とも、広く、抽象的なものから、具 体的な、身近かなものに価値を置く方向に変化してきていろ。 ②身近かな問題を重視する傾向は、女子(大学生、看護学校生)に一貫して みられるが、その傾向は、看護学校生の場合により強い。 ③手段的価値では、大学生女子、看護学校生の両者とも一貫して「やさしさ」 を最重視する傾向があるが、大学生男子の場合でも、それを最上位に置くよう に変化してきている。 ④I決志向の傾向は、大学生、看護学校生ともに次第に強まってきているが、 とりわけ、大学生女子にそれが顕著である。 ⑤最終的価値及び手段的価値の変化は、男子において比較的大きく、そのた め、男女間の価値観の縮小傾向が認められろ。 -210-
沖縄大学紀要第7活(1990年) なお、本研究では、サンプル数が少なく、また、実施した調査資料の一部を 紛失したために統計処理ができなかったことなどで、本結果を一般化する には限界がある。こうした制約のドではあるが、これまで得た資料は、若者の