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メカニカルセンサとイメージセンサの融合による3次元形状復元

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(1)2005-CVIM-147 (16) 2005/1/21. 社団法人 情報処理学会 研究報告 IPSJ SIG Technical Report. メカニカルセンサとイメージセンサの融合による 3次元形状復元 岡谷 貴之 東北大学大学院情報科学研究科 [email protected] 概要: 本稿では,角速度センサや加速度センサといったメカニカルセンサをカメラに取り付け,カメラの運 動に関する情報を計測することで,画像からの 3 次元復元などの問題において,カメラだけでは従来難しかっ たような問題を解決する方法について述べる.特に,難しいとされる特徴点の対応付けの問題が,姿勢を計 測するメカニカルセンサを使ってどのように解決できるか,センサの種類の使い分けとその精度についての 考察も含めつつ議論する.また,このようなシステムで問題となる,カメラとメカニカルセンサの内部的な 座標表現の違いを計算するキャリブレーション方法についても述べる.. 3D Shape Recovery By Fusion of Mechanical and Image Sensors Takayuki Okatani Graduate School of Information Sciences, Tohoku University Abstract: This paper presents a method that resolves several difficulties with the problems of 3D recovery from multiple images by attaching mechanical sensors, such as gyrosensors and accelerometers, to the camera and then measuring the pose of the camera from these sensors. To be specific, it is discussed how the problems of image matching, which are still difficult to perform, could be solved by introducing mechanical sensors measuring 3D pose of the camera, including discussion as to choice of mechanical sensors and their measuring accuracy. Moreover, several methods are described for calibration of the system, which is to determine the difference in internal coordinate representation between the camera and the mechanical sensors, and which will be a problem need to be carefully considered.. 1. 用を提案している [3].また著者らは,第 5 節に述べる. はじめに. ように,姿勢センサ(角速度センサ+加速度センサ) カメラを自由に動かしながら対象とするシーンや物. を使用して,スチルカメラの静止姿勢の情報を得て,. 体の画像を得て,3 次元形状復元を初めとする各種の. 画像の輪郭から 3 次元形状を復元する問題や [4],ス. 応用を可能にする方法の研究が,これまで盛んに行わ. テレオ画像の特徴点対応付け [5],さらには傾斜セン. れてきた.その中で,カメラにメカニカルセンサを取. サと平面とを組み合わせた幾つかの応用 [6, 7] につい. り付け,そこから 3 次元空間内でカメラが占める位置. て発表している.. や姿勢の情報を得て,カメラだけでは困難だったよう な問題を解決することを目的とした研究が行われてき ている.. 本稿ではカメラとセンサを組み合わせたシステムの うち,どこへでも持ち運びでき,空間内を制約なく自 由に動かせる柔軟性を備えたものを考える.この柔軟. 例えば,向井らは角速度センサ(レートジャイロ) 性は,幅広い応用を考える上で前提となる. (この種の とビデオカメラを組み合わせて,ビデオ画像列からの. 柔軟性を必要としないのならば,カメラの位置や姿勢. 3 次元形状復元に応用している [1, 2].そこでは,ビデ オカメラの運動における回転と並進の成分の分離や, 特徴点追跡のロバスト性の向上などが目標とされてい る.また,Lobo らは,ロボット視覚への応用を意識 して,ステレオカメラヘッドに傾斜センサを取り付け て,姿勢やカメラパラメータの推定などいくつかの応. を得ることは難しくないだろう. )この柔軟性を念頭 に置くと,実装がコンパクトでそれ単体のみで機能す るメカニカルセンサを選び,それをカメラに取り付け たシステムが最有力となる.このような要件を満たす センサが計測する物理量は,普通は姿勢に関係するも のとなる.センサとしては,角速度センサ(ジャイロ. 1 −123−.

(2) りさせ,それによってシステムの機能を向上したり性 能を改善することにある.その意味で,カメラとメカ ニカルセンサそれぞれの得手不得手を見極めることが 議論の出発点となる. まず,カメラ(画像から情報を取り出すアルゴリズ ムも含む)にとって難しいのは何か.空間をカメラを 図 1: メカニカルセンサとカメラを組み合わせたシス テム.センサは角速度センサ+加速度センサからなる. 動かして得た複数枚の画像から,3 次元形状を復元す るなどの幾何学的な計算を行う方法の研究は,とりわ け幾何学的な計算原理に関してはほぼ解明されてい る.基本的には,シーンや物体表面上の同一点を複数. センサ),加速度センサ,磁気センサ(特に地磁気を. 画像上で安定して特定する(画像追跡や画像間の対応. 検出するもの)などがある.角速度センサの出力する. 付けと呼ばれる)ことさえできれば,3 次元形状の復. 角速度を 1 階積分することで姿勢(変化)を,加速度 センサを使って重力加速度方向を検出することで傾斜 角を,磁気センサでは地磁気を検出することで姿勢角 を,それぞれ求めることができる.. 元やカメラの運動・光学パラメータの推定など,今や 相当うまく出来るようになっている. 今でも難しいとされているのは画像間の対応付けつ まり複数画像上で同一点を特定することである.その. 位置を計測するセンサで,上述の柔軟性の要件を満 たすようなものはほとんどない.GPS は少ない例外と 言え,実際にカメラと GPS を組み合わせた手法はよ. 難易度は,画像の性質に大きく依存する.中でも,ビ デオカメラを使って画像系列を撮る場合と,スチルカ. メラを使って特に離れた視点での画像を撮影する場合 く研究されている.しかしながらそのような GPS も,(ワイドベースラインステレオと呼ばれる)では,事 対象とできる空間は屋外で,また基本的には一定以上. 情が大きく異なる.基本的には,前者はそれほど難し. の大きさの空間を対象とする場合に限定されよう.ま. くなく,後者は相当難しい問題であるとされる.前者. た,使用上の制約も少なくない.. では例えば,Lucas-Kanade-Tomasi のアルゴリズム このようなことから,本稿では上に挙げたような,(通称 LKT トラッカー)などで特徴点を追跡し,そ 姿勢あるいはその変化量を計測するセンサのみを考え の後 RANSAC に代表されるロバスト推定の方法で外 る.部品レベルでは,計測する物理量の違いによって, れ値を取り除けば,大抵の場合うまく行く.しかしな 上に挙げたように複数の種類があるが,多くの製品は がら,ワイドベースラインステレオ画像については決 これらの異なる種類のセンサを複数個組み合わせたも. 定打は今のところない.. のである.これは,測定可能なデータの種類を増やす. 次に,姿勢に関する量を計測するメカニカルセンサ. 目的に加え,異なるセンサの情報を統合することでド. の利点と欠点について考える.まず考えておかねば. リフトを低減したりキャリブレーションを行うといっ ならないのが姿勢角の計測精度の問題である.画像を た目的に利用されているためでもある. 使った応用では一般に高い精度が必要となる.現在の この後,まず第 2 節で,上述のような姿勢センサと. ところ,メカニカルセンサからカメラの 3 自由度の姿. カメラの組み合わせからなるシステムについて,主に. 勢角を得ようとしても,画像による幾何学計算(特に. 有用性や応用の観点から著者の考えを述べる.第 3 節. 良条件下のもの)を, 「完全に」置き換えるほどの精度. ではセンサの出力とカメラの姿勢の関係を定式化し, を期待するのは一般には無理なようである.これは, 第 4 節ではシステムのキャリブレーション方法につい 3 自由度の姿勢角,特に運動中の値を得るには,今の て概要を述べる.第 5 節で,著者らが行ってきた研究. ところ角速度センサ(ジャイロセンサ)を使うしかな. について述べる.. いことによる.この場合,姿勢=角度を得るには生の データである角速度を時間積分することになるが,そ の過程で誤差の蓄積によって精度は一般に低下してし. 2. カメラに取り付けたセンサから何 を得るか. まう. 絶対量を検出するセンサであれば,この種の誤差の 蓄積やあるいはセンサのドリフトといった問題には強. メカニカルセンサをカメラに取り付ける目的は,カ. い.そのようなセンサに,地磁気を検出して姿勢を算. メラ単体では不可能であるか何らかの困難さを伴う問. 出する磁気センサや,重力加速度方向を検出して傾斜. 題・カメラに不得手な領域の問題を,センサに肩代わ. 角を算出する傾斜角センサがある.磁気センサは周囲. 2 −124−.

(3) 環境に左右される不安定な面があって使いにくいが, ンサが利用できるようになることが大きい.注目すべ 傾斜角センサは極めて安定で精度も十分である.ただ. きは,この方式のセンサが相当高い精度を持つことで. し,傾斜角センサは基本的に加速度センサであるため, ある.傾斜角は 3 自由度の姿勢角の 2 自由度分でし 運動中の姿勢を知ることはできず,静止姿勢のみが対. かないから,残りの 1 自由度分(方位角,ヨー角と呼. 象となる.. ばれる)は傾斜センサだけでは不定である.したがっ. 姿勢角を得ることを諦め,瞬時の姿勢変化すなわち. て傾斜センサのみを使うとすれば,精度は高いが姿勢. 角速度をそのまま利用することにするならば,それを. の部分的な情報しか得られない状況で,何か有用なこ. 計測する角速度センサには十分な精度がある.実際, とを実現できるかという話になる.あるいは残りの 1 この種のセンサはビデオカメラやスチルカメラでの手 自由度たる方位角を,角速度センサと積分計算によっ ブレ補正に従来より応用されており,広く成功してい. て算出して利用することも考えられる.少なくとも運. る.故に短い時間ならば,角速度センサの出力を使う. 動中の姿勢を計測することに比べれば,傾斜センサか. のは精度の面では十分だと思われる.. ら傾斜角が決まることは計測精度の面で大きなプラス. 以上を踏まえると,実際的なのは消去法によって, である. ビデオカメラと角速度センサの組み合わせ,ないしは. われわれは以上のような考察に基づいて,スチルカ. スチルカメラと静止姿勢を測る姿勢センサの組み合わ. メラに加速度センサと角速度センサからなる姿勢セン. せということになる.. サを取り付け,画像撮影時のカメラの静止姿勢を,3. まず,ビデオカメラと角速度センサの組み合わせに. 自由度全て,あるいは傾斜角の 2 自由度分のみを計測. ついて考える.上述のように,ビデオカメラで得た画. し,カメラだけの画像処理では難しい問題を解決する. 像系列では,特徴点を追跡することがそれほど難しく. 方法を研究してきた.以下では,そのようなセンサと. ないので,そもそもセンサを追加する必要があるかど. カメラの組み合わせを使う方法について,われわれが. うかという問題がある.つまり角速度センサを,単な. これまで考えてきた応用を説明する.その前に,この. る手ブレ補正ではなくより高度な幾何学計算に組み込. 種のシステムで重要な問題となる,カメラとセンサの. むことができるかどうか,である.例えば,シーンに. 内部の座標表現の違いを校正する方法について,簡単. テクスチャが少なく,信頼できる特徴点そのものが十. にまとめる.. 分な数だけ取り出せない場合に,センサの情報を「補 完的」に使うことが考えられる.実際,特徴点を取り 出せないような好ましくない画像が,画像系列内で 「断続的に」現れるという場合はあるだろう.このと き,そのような画像が現れている時間だけ,角速度セ ンサの出力を利用して特徴点追跡の精度を向上するな どが考えられる.しかしその場合には,瞬時の角速度. 3. カメラの姿勢と姿勢センサの出力 まず最初に,姿勢センサの出力がカメラの姿勢と実. 際にどう結びつくかを整理しておく.. でなくある程度の長さの時間に渡るその積分を使うこ. センサが出力する姿勢角は,センサ内部で想定する. とになってしまうので,最終的にどのくらいトータル. ある「基準姿勢」からの変量としての角度である.こ. の性能が向上するのかは積分時間の長さなどの要因と. れを記述するため,センサの本体に仮想的に固定した. 精度の関係に依存すると言え,その見極めは簡単では. 座標系を導入し,これをセンサ座標系を呼ぶことにす. ない.. る.理屈の上ではセンサ座標系はセンサのパッケージ. 次にスチルカメラと姿勢センサの組み合わせについ. に仮想的に固定されていさえすればよいが,重力加速. て考える.上述のようにワイドベースラインステレオ. 度方向が主要な役割を果たす関係から,簡便性のため. での画像間の特徴点の対応付けは一般に相当難しい. センサが基準姿勢をとるとき,座標系の Z 軸方向が. 問題であるから,それが何であれ画像外の情報を取り. 重力加速度方向と一致するようにセンサ座標系を決め. 込むことにとりあえず合理性はある.この場合,カメ. ることにする.そして,センサ座標系を s と記し,セ. ラの静止姿勢さえ測れればよいことは一つの利点とな. ンサが基準姿勢をとるときのセンサ座標系を特に s0. る.運動中の姿勢(この場合角速度でなく絶対値)よ. と記することにする.. りも,静止姿勢の方が比較すればより精度良く計測で. s0 から s への座標変換を Ts0,s ,その回転成分を Rs0,s (回転行列)と書く.センサが計測するのはこ の Rs0,s (あるいはその一部)である.センサがロー ル・ピッチ・ヨー角表現 (α, β, γ) をとる場合,Rs0,s. きると考えられるからである. 静止姿勢であれば,傾斜センサ,つまり重力加速度 を加速度センサで検出し,傾斜角を計測する方式のセ. 3 −125−.

(4) と書き換えられる.この式にしたがってセンサの出力 を元にカメラの姿勢を計算することになる.通常カメ ラの姿勢は絶対量としてではなく,カメラにとっての 基準姿勢(第 1 枚目の画像撮影時の姿勢など)に対 する相対的な姿勢変化のみを用いるので,ワールド座 標系とセンサ基準座標系間の座標変換—Z 軸周り角 度 φw,s0 の回転—はキャンセルされて知る必要がない (c → c0 は Rc,c0 ≡ Rw,c0 Rc,w となり φw,s0 は相殺さ 図 2: センサの基準系 s0 ,ワールド座標系 w,カメラ. れる).. 座標系 c,センサ座標系 s の関係. 4. は. Rs0,s = Rx (α)Ry (β)Rz (γ),. (1). と表記される.. キャリブレーション 本節では (3) 式の Rsc を計算する方法について述べ. る.センサの取り付け時に,機械的にイメージセンサ. さらにこれとカメラの姿勢の関係を導くために 2 つ. とのアラインメントをとって例えば Rsc = I などと. の座標系を導入する.一つは空間に固定のワールド座. することも考えられるが,ここではカメラで画像を何. 標系 w で,利便性を考慮し Z 軸が重力加速度方向と. 枚か撮影し,その時のセンサの出力から Rsc を推定. 一致するように選ぶ.もう一つはカメラ座標系 c で, する方法について述べる. これはいつものように座標原点が光学中心に,Z 軸が. 以下では,センサが 3 軸の姿勢角すべてを出力する. 光軸にそれぞれ一致し,X,   Y 軸が画像の横縦とそ. 場合にそれらを利用する方法と,センサが傾斜角のみ. れぞれ平行になるように選ぶ.ワールド座標系 w か. しか出力しない(あるいは恣意的に傾斜角のみしか使. らカメラ座標系 c への座標変換とその回転成分をそれ. わない)場合の方法の 2 つを述べる.. ぞれ Tw,c ,Rw,c と書くことにする. センサとカメラは一つの剛体として空間を移動する から,センサが出力する姿勢角 (α, β, γ)(あるいはそ の一部)は,上の Rw,c と関連付けることができる(図. 2).図 2 の関係から,センサの現在の姿勢 s0 からカ メラ座標系 c への変換 Ts0,c と,上で決めたワールド 座標系 w からセンサの基準系 s0 への変換 Tw,s0 ,さ らに s0 から s への変換 Ts0,s の合成変換として,Tw,c は Tw,c = Ts,c Ts0,s Tw,s0 と書ける.それぞれの回転 成分についても Rw,c = Rs,c Rs0,s Rw,s0 .. (2). が成立する.この式の右辺で,まず Rs,c はセンサと カメラ間の座標変換の回転成分である.これは事前. 4.1. 姿勢角全てを出力するセンサの場合. 最初にセンサが姿勢角 3 自由度分すべてを出力する 場合のキャリブレーションについて述べる.この問題 は,ロボットビジョンで言うハンドアイキャリブレー ションと同じである [8, 9].Rc,s の計算は,回転を伴 う姿勢変化の際,物理的には同一である回転の,回転 軸の表現がカメラとセンサの座標系で異なる表現をと ることを利用して行う.まず,カメラとセンサの複合 体を空間内で動かし,複数の静止姿勢 i(i = 1, . . . , n) をとらせる.そのときのカメラとセンサの座標系を それぞれ ci , si と書くことにする(図 3).姿勢 i か ら j への座標変換をカメラとセンサでそれぞれ Tci,cj ,. Tsi,sj と書く. Tci,cj , Tsi,sj の回転成分を回転行列 Rci,cj , Rsi,sj と の決定方法は次節で述べる.Rs0,s は (1) 式 に与えた 書く.これらの回転の回転軸をそれぞれ ni,j , mi,j と 通り,センサ出力する姿勢角と対応する.Rw,s0 は, ワールド座標系 w とセンサの基準座標系 s0 を Z 軸 する.すなわち Rci,cj ni,j = ni,j , Rsi,sj mi,j = mi,j が重力加速度にともに重なるように決めたことから, である.ベクトル ni,j , mi,j の大きさを |ni,j | = |mi,j | Z 軸周りの回転行列のみで表現できる.その回転角を と揃えれば次が成り立つ. φw,s0 とすると,上の式は Rc,s ni,j = mi,j (4) のキャリブレーションで決定すべき未知数であり,そ. Rw,c = Rs,c Rx (α)Ry (β)Rz (γ)Rz (φw,s0 ) = Rs,c Rx (α)Ry (β)Rz (γ + φw,s0 ).. ここから,Rc,s を決定する.姿勢変化 i → j に対し, (3) カメラとセンサそれぞれで回転軸の方向 (n , m ) を i,j i,j. 4 −126−.

(5) で γj − γi が決まらなず,そのままでは Rc,s の計算が できない. そこで,カメラとセンサが回転を共有することを改 めて利用する.前節では,両者の座標系の間で姿勢変 化にともなう回転の軸方向の表現が異なる,というこ とがキャリブレーションの基礎となった.ここでは, 姿勢変化に伴う回転の回転角度が両者で等しい,と いう(キャリブレーションそのものには意味のない) 条件を逆に利用する.つまり,カメラ側の静止姿勢間 変化 Rci,cj は画像から計算するとして,その回転角 calibration object/pattern. θci,cj が,センサ側の回転角 θsi,sj と同一になるはず だということである.これはヨー角 γj − γi の 1 自由 図 3: 複数の静止姿勢間の回転から Rc,s を決定する. 度分不定な R si,sj に 1 自由度分の拘束を与え,そこ から γj − γi が決定できる.そうやって Rsi,sj を完全 求める.前者は参照物体を使ったカメラキャリブレー に決定できれば,センサ側でも回転軸の方向を補完的 ション∗ よって,後者はセンサの出力からそれぞれ求 に推定できるから,その後は前節の方法によって Rc,s めることになる.ここではセンサは姿勢角全てを出力 を計算できる. するので Rsi,sj ないし mi,j が得られる.この回転軸 上述の条件は具体的には,Rci,cj と Rsi,sj の回転角 のペア (ni,j , mi,j ) 1つで,Rc,s に対する 2 自由度の θ ci,cj , θsi,sj を使って,|θci,cj | = |θsi,sj | と表される. 拘束を (4) 式から得る.Rc,s を決定するには,2 ペア 回転角は回転軸の向きの符号分の自由度があるので, 以上の回転軸の組があればよいことになる.このよう 等号は角度の絶対値の間にのみ成り立つ.一般に回転 な問題での回転行列の計算アルゴリズムはいくつか知 行列 R に対してその回転角を θ で表すとき,その余 られている.誤差を含む場合の計算方法を含め,それ 弦は行列のトレースを使って らについては [10] に詳しい. 1 cos θ = (tr(R) − 1) 2. 4.2. 傾斜センサを用いたシステムのキャリ と表すことができる.今の |θci,cj | = |θsi,sj | は,角度 ブレーション の絶対値に関する等式であり,角度の余弦が等しいこ. 次に傾斜角のみから Rc,s を決定する方法について 述べる.これは傾斜センサのみを用いる場合はもちろ. とと同値であるから,上の条件は行列のトレースを 使って次のように書き換えられる:. ん,キャリブレーション精度の向上を狙ってキャリブ. tr(Rci,cj ) = tr(Rsi,sj ). レーションではわざと精度に信頼の置ける傾斜角のみ. (6). しか用いない,という戦略も考えられ,他のセンサ・ 利用形態の場合でも使用する合理性がある方法である. まず条件を整理すると,傾斜角しか得られないとい うのは,(1) 式のように表記するとき,ロール角 α と ピッチ角 β のみが得られ,ヨー角 γ が得られないと. (5) 式を上の右辺に代入すると tr(Rci,cj ) = p cos(γj − γi ) + q sin(γj − γi ) + r, (7) を得る.ただし,. 言い換えられる.この場合も最終的には前節と同じ様 に,静止姿勢間の姿勢変化 i → j に伴う回転を共通の. p≡. X. X. akl blk. (8a). ak2 b1k − ak1 b2k. (8b). ak3 b3k. (8c). l=1,2 k=1,2,3. 観測として,キャリブレーションを行う.しかしなが q≡. ら,姿勢間の回転 Rsi,sj は. X. k=1,2,3. Rsi,sj = Rx (αj )Ry (βj )Rz (γj −γi )Ry (βi )> Rx (αi )> , (5) であるが,今の場合センサのヨー角が未知なためここ ∗ 静止姿勢が最低. 3 つ必要であることなどから Zhang のアルゴ リズム(平面パタンの 3 枚の画像からカメラの内外パラメータを 計算する)が便利である.. r≡. X. k=1,2,3. であり,さらに akl ≡ (Rx (αj )Ry (βj ))kl , bkl ≡. (Ry (βj )> Rx (αj )> )kl (k, l = 1, 2, 3) である.表記を 簡単にするため r0 ≡ r − tr(Rci,cj ) とし,(7) 式を解. 5 −127−.

(6) くと,次の 2 つの式を得る(符号同順) : p −(pr0 ± q p2 + q 2 − r2 ) cos(γj − γi ) = , (p2 + q 2 ) p −(qr0 ∓ p p2 + q 2 − r2 ) sin(γj − γi ) = . (p2 + q 2 ). (9a) (9b). これらの式の右辺はすべて既知の量:傾斜角 (α, β) と. 図 4: 撮影した 12 枚の画像の中の 1 枚.直線は他の カメラの姿勢変化の回転成分 Rci,cj である.したがっ 視点の画像における物体の輪郭を空間に逆投影してで て γj − γi を計算することができ,センサの姿勢変化 きる錐を動画像上に投影したもの.左はカメラの位置 の回転成分 Rci,cj を完全に決定できる.. が計算されていない初期状態,右は反復計算終了後カ. ただし,(9) 式には 2 通りの解が存在する.そのた. メラの位置が正しく推定された状態.. め Rsi,sj も 2 通り存在してしまうので,これを定め なければならない.この決定は,再び回転角が等しい ことを使い,次のようにすれば可能である.3 つの静 止姿勢 i, j, k 間の姿勢変化 i → j → k を考えると,対 応する回転行列 Rsj,sk Rsi,sj は上で求まる 2 通りの組 み合わせで 4 通りあることになる.しかしこれは実際 には Rci,ck と等しい回転角を持つはずであるから,そ れを条件として正しい Rsi,sj と Rsj,sk を選べば良い.. 4.2.1. 画像上にて重力加速度方向を利用する場合. 図 5: 復元された立体形状. ラはニコン製の D1 を使用した(図 1).. 画像上で重力加速度方向を特定できる場合,上のよ うに姿勢変化を使う必要がない.例えば平面キャリブ レーションパタンを正確に水平面(重力加速度方向に 垂直なる面)と平行に置き,その画像からカメラ座標 系での重力加速度方向を求める.(4) 式にて,n をカ メラ座標系での重力加速度方向,m をセンサ座標系 での重力加速度方向にそれぞれ置き換えれば,後は同 じアルゴリズムで Rc,s を計算できる.この方法は [3] で述べられている.しかしながらこの方法には,水平 面上にキャリブレーションパタンを置くなど,画像と 重力加速度方向を物理的に結びつける不便さがある. まず,センサが出力する重力加速度方向が,正確に重 力加速度方向かどうかもチェックする必要があろう. また,通常の傾斜センサでは計測可能な傾斜角の上限 下限はさほど広くないので,2 つの座標系空間内で n と m を程よくばらつかせるようなデータを得るのが 難しく,計算精度に問題が起る可能性も留意すべきで ある.. 5. 応用と実験結果 本節では,著者らが上述のカメラと姿勢センサを組. み合わせたシステムを使ってこれまで行ってきた応用 研究について述べる.以下の全ての実験で,姿勢セン サはデータテック製「VR センサ」GU-3011 を,カメ. 5.1. 姿勢角:輪郭からの立体形状復元. 図 1 のようなカメラを手に持って一つの物体の周 囲から 8 − 30 枚程度の画像を撮影し,物体の輪郭か ら 3 次元形状を復元する方法を考案し,実験を行った. [4].センサからは姿勢角 3 自由度すべてを得,使っ ている.画像間の点対応に基づく幾何学計算は一切行 わず,画像から取り出した物体の輪郭形状と姿勢角の 情報から,各画像撮影時のカメラの位置を計算する方 法とした.なおカメラの内部パラメータは既知として いる.反復的な計算アルゴリズムによってカメラの位 置を計算し,その後輪郭から立体形状を復元(shape. from silhouette)する.図 4 に,ある視点の画像上で, 対象物体の輪郭と,同時に他の画像からの輪郭線を射 影してできる直線群を重ねて表示したものを示す.同 図左が反復計算の初期状態であり,右図が収束後の状 態である.右図では,他の視点からの輪郭を延長した 直線が輪郭にきっちり外接している様子が見て取れ, これがカメラの位置が正しく推定されていることを表 す.復元された 3 次元形状の例を図 5 に示す.センサ の姿勢角の精度(方位角の精度)は完璧ではないとは いえ,図に示した程度の 3 次元形状を復元することは 可能である.. 6 −128−.

(7) 図 6: ワイドベースラインステレオ画像の一例.特に 平面状の物体が少ないことがネックとなる場合.. 図 8: 傾斜角センサから求めた地平線(図中白線)と 水平な直線の交点として無限遠点が決まる. 5.3 5.3.1. 傾斜角の利用 地平線の計算と方位角の算出. 前節までに述べたように,傾斜角センサが出力する 傾斜角には高い精度が期待できる.そこで,傾斜角だ け,つまり方位角の 1 自由度分カメラの姿勢に不定性 が残った状態で,有用な応用が可能かどうかに関心が 図 7: 推定されたカメラの位置を元に作成した仮想的 な平行ステレオ画像.頁の平行線が両画像のエピポー ラ線となる.. 向く. まず,カメラの内部パラメータが既知であるとすれ ば,傾斜角を用いると,ただちに画像上の地平線—つ まり水平面(=重力加速度方向に垂直な平面)の消失. 5.2. 姿勢角:ワイドベースラインステレオ 線—が計算できる.水平面は,建造物などわれわれの 生活空間に沢山あるから,画像上でも水平面を何らか の画像間対応付け の形で利用できれば,傾斜センサと画像の情報を連携. 上と同じ姿勢センサ+スチルカメラのシステムで, することで,幾つかの応用が可能になる [6, 7]. 一つのシーンの 2 枚の画像を離れた視点から撮影し, 例えば,水平面上の一本の直線(つまり水平な直 画像間の点に基づく対応を求める方法を考案し,実験. 線)があって,それが画像上で特定できれば,無限遠. している [5].ここでもセンサからは姿勢角 3 自由度す. 点を同定することができる.なぜなら,その水平な直. べてを得,カメラの内部パラメータは既知とした.2. 線と,上述の傾斜角のみから計算される画像上の地平. 枚の画像間の関係は基本行列で記述されるので 5 自由. 線との,画像上での交点が無限遠点となるからである. 度だが,カメラの姿勢がセンサから分かるとしている (したがって必要な計算は画像上で 2 直線の交点を算 ので,2 自由度しか不定性はない.このことから,ラン 出するだけ).一例を図 8 に示す.無限遠点を特定で ダムサンプリングに基づくアルゴリズム (RANSAC). きれば,そこから不定だったカメラの方位角を決定す. ではなく,パラメータ空間(2 自由度なので平面)で. ることが可能となるので,したがってカメラの姿勢角. の投票に基づく推定を行うことができて,精度と計算. を完全に決められる.このとき,水平面上の一直線を. 時間を改善できる.さらに,対応点の候補を計算する. 画像上で特定できさえすれば良いことに注意する.つ. 前処理の段階で,カメラの姿勢が既知であることから, まり,カメラを動かして画像を撮影する際,同じ一本 両画像を並進カメラによって得たものに仮想的に投影 の水平な直線(あるいはそれと平行ないし,なす角の し直す(rectification)ことで,対応点の候補の計算. 分かった水平な直線)を常に画像系列内に捉えること. 精度を向上させられることも利点となる.結果の一例. ができさえすれば,方位角すなわちカメラの姿勢が完. を図 6, 7 に示す.図 6 はオリジナルのステレオ画像. 全に決定できるということになる.. であり,図 7 は対応点算出後,推定したパラメータに よって(並進ではなく)平行ステレオの画像対へと変 換したものである(つまり図の頁に対する平行線がそ. 5.3.2. パノラマ画像の生成. のまま左右のエピポーラ線となる).対応点が算出し. 同様の考え方で,センサの出力する傾斜角を使った. ずらいシーンであっても,ロバストに対応を算出する. パノラマ画像の生成方法を研究している [7].パノラ. ことができている.. マ画像は一般に,その場でカメラを回転させながら風. 7 −129−.

(8) 6. まとめ 角速度や加速度を計測するメカニカルセンサとカメ. ラを組み合わせたシステムにより,カメラ単体では難 しい問題をより安定に解く方法について述べてきた. メカニカルセンサの計測精度を考慮した場合,カメラ の静止姿勢を角速度センサと加速度センサで計測する のが有利だと思われること,一番良いのは傾斜角セン サで傾斜角のみを計測する場合であることを述べ,そ れぞれの場合のキャリブレーションの方法を示すとと もに,いくつかの応用についても述べた.運動を計測 するセンサの精度が今後向上することと,加えて低価 図 9: その場でカメラを回転して撮影した遠方の風景 の画像 4 枚. 格化も進むだろうこと期待すると,メカニカルセンサ とカメラの融合システムの現実性はより増してくると 考えている.. 参考文献 [1] T. Mukai and N. Ohnishi. Object shape and camera motion recovery using sensor fusion of a video camera and a gyro sensor. Information Fusion, Vol. 1, No. 1, pp. 45–53, 2000. [2] 向井利春. 「ビデオカメラとジャイロセンサを用いた 三次元形状復元」と「柔軟な面状触覚センサ」. 第 67 回パターン計測部会研究会(計測自動制御学会).. 図 10: 図 9 の画像から,センサから傾斜角を得,画 像上の 1 点だけを目印に方位角を推定して作成したパ ノラマ画像. [3] J. Lobo and J. Dias. Vision and inertial sensor cooperation using gravity as a vertical reference. PAMI, Vol. 25, No. 12, pp. 1597–1608, December 2003. [4] 岡谷貴之, 出口光一郎. 視点の位置が不明な画像系列に おける物体の輪郭形状の重ね合わせ:ジャイロセンサ を用いた輪郭からの三次元形状復元. 画像の認識・理 解シンポジウム (MIRU2000)講演論文集, 2001.. [5] 岡谷貴之, 出口光一郎. 3 次元向きセンサを取付けたカ メラによる対応点が未知の複数枚の画像を用いた投票 によるカメラの並進運動の推定. 情報処理学会研究報 景の画像を複数枚撮影し,それら画像から作成する. 告 CVIM129-4, pp. 25–32, 2001.. 回転のみで移動を伴わないカメラで撮影した画像は, [6] 久保田俊作, 岡谷貴之, 出口光一郎. 傾斜センサと画像 とを融合したカメラの姿勢推定法. ロボティックスシ 互いに 3 × 3 ホモグラフィー行列で結ばれるが,これ は画像間で 4 点以上の対応が得られれば計算できる. 通常,そのような画像間の対応は,シーンの同一の点 (特徴点)を視野が重なる画像間で特定することで求 めている.しかしながら,シーンや画像の条件によっ ては,たった 4 点であっても条件の良い特徴点が抽出 できないことがたびたび起る.センサから傾斜角を読. ンポジア予稿集, pp. 318–323, 2004.. [7] 久保田俊作, 岡谷貴之, 出口光一郎. 傾斜角センサを取 り付けたカメラの高精度な姿勢推定法. 画像の認識・ 理解シンポジウム(MIRU2004)講演論文集, 2004. [8] R. Y. Tsai and R. K. Lenz. A new technique for fully autonomous and efficient 3d robotics hand/eye calibration. IEEE Transactions on Robotics and Automation, Vol. 5, No. 3, pp. 345–358, 1989.. み取ることで,そのような画像に対する要求を低減で. [9] R. Horaud and F. Dornaika. Hand-eye calibration. The International Journal of Robotics Research, Vol. 14, No. 3, pp. 195–210, 1995. したので,残りの未知数はカメラの方位角のみである. これは画像上で無限遠にある(と仮定した)点を一つ [10] 太田直哉, 金谷健一. 3 次元回転の最適推定と信頼性評 価. 電子情報通信学会技術研究報告, Vol. PRMU97-123 だけ選ぶことで決定でき,そのようにした例を図 9, (1997-10), pp. 17–24, 1997.. きれば価値がある.カメラの内部パラメータは既知と. 10 に示す.それぞれ元の画像とパノラマ画像である.. 8 −130−.

(9)

図 1: メカニカルセンサとカメラを組み合わせたシス テム.センサは角速度センサ+加速度センサからなる センサ),加速度センサ,磁気センサ(特に地磁気を 検出するもの)などがある.角速度センサの出力する 角速度を 1 階積分することで姿勢(変化)を,加速度 センサを使って重力加速度方向を検出することで傾斜 角を,磁気センサでは地磁気を検出することで姿勢角 を,それぞれ求めることができる. 位置を計測するセンサで,上述の柔軟性の要件を満 たすようなものはほとんどない. GPS は少ない例外と 言え,実際にカメ
図 6: ワイドベースラインステレオ画像の一例.特に 平面状の物体が少ないことがネックとなる場合. 図 7: 推定されたカメラの位置を元に作成した仮想的 な平行ステレオ画像.頁の平行線が両画像のエピポー ラ線となる. 5.2 姿勢角:ワイドベースラインステレオ の画像間対応付け 上と同じ姿勢センサ+スチルカメラのシステムで, 一つのシーンの 2 枚の画像を離れた視点から撮影し, 画像間の点に基づく対応を求める方法を考案し,実験 している [5].ここでもセンサからは姿勢角 3 自由度す べてを得,カメラの内
図 9: その場でカメラを回転して撮影した遠方の風景 の画像 4 枚 図 10: 図 9 の画像から,センサから傾斜角を得,画 像上の 1 点だけを目印に方位角を推定して作成したパ ノラマ画像 景の画像を複数枚撮影し,それら画像から作成する. 回転のみで移動を伴わないカメラで撮影した画像は, 互いに 3 × 3 ホモグラフィー行列で結ばれるが,これ は画像間で 4 点以上の対応が得られれば計算できる. 通常,そのような画像間の対応は,シーンの同一の点 (特徴点)を視野が重なる画像間で特定することで求 めてい

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