主要な研究成果
背 景
電力自由化の進展に伴い、連系線潮流など系統状態の不確実性が増大することが予想され、こうした状況下 での電力系統の安定運用のためには、リアルタイムでの安定性監視が重要になる。 当所ではこれまでに、発電所および変電所の電圧位相差情報を活用して電力系統の安定性をリアルタイムに 判別する論理を提案してきた[1] [2]。実系統への適用に向けては、計測ノイズやデータ伝送遅れなどを伴う環境 下でのシステムの性能評価のために、電力系統シミュレータを用いて、複雑な動揺が存在する多機系統のもと で性能検証を行うことが必要である。目 的
広域の多地点情報を用いたリアルタイム安定判別システムを開発し、ハイブリッド型電力系統シミュレータ において、多機系統における開発システムの安定判別性能を検証する。主な成果
1.リアルタイム安定判別システムの開発 多機系統においてもリアルタイム安定判別の計算処理を確実に実行させるため、8 台のローカル安定判別 装置と 1 台の広域安定判別装置を、通信ネットワーク(LAN)を介して接続し、計算機負荷を分散させた 2 階層構造のリアルタイム安定判別システムを開発した(図 1)。 ローカル安定判別装置は主として電圧位相差の算出、動揺モードの算出、データの送信を行う。また、広 域安定判別装置はローカル安定判別装置のデータを LAN を介して収集し、発電機と変電所側の動揺モード (正弦波成分)を照合して、双方に同一周期の不安定な動揺モード(徐々に発散していく正弦波成分)が含 まれていれば、系統が不安定と判定する。 2.ハイブリッド型電力系統シミュレータによる多機系統の安定判別性能の検証 ハイブリッド型電力系統シミュレータで 5 機系統を構成して、複雑な系統動揺に対するリアルタイム安定 判別システムの性能を実験的に検証した。その結果、以下を確認し、開発システムの有効性を検証した。 (1)0.1 秒間隔で安定判別可能なリアルタイム処理性能を有する (2)擾乱発生後の複雑な動揺に対して、複数の動揺モードを抽出でき、かつ、動揺モードごとに安定性を 判別できる(図 2)今後の展開
今後は、確立された安定性判別手法を基に、系統安定化のための制御手法を開発する。 主担当者 システム技術研究所 電力システム領域 主任研究員 山下 光司 関連報告書 「リアルタイム安定判別論理の電力系統シミュレータによる実験的検証―多機系統における 安定判別システムの開発と性能検証―」電中研研究報告: R05017(2006 年 3 月) 参考文献 [1]「時系列解析を用いた電力系統の動揺モード検出による脱調予測論理の開発」電中研研 究報告: T00026(2001 年 4 月) [2]「リアルタイム安定判別論理の電力系統シミュレータによる実験的検証―安定判別装置 の開発と基本性能の検証―」電中研研究報告: R04003(2005 年 3 月) 72電力系統のリアルタイム安定性判別論理の開発
―電力系統シミュレータによる判別性能の検証―
4.電力流通/流通網の有効利用・信頼性確保
73 発電機T2 (60kVA) 発電機N1 (100kVA) 変動が最大となるの変電所間の 位相を抽出し、動揺モードを算出 各発電所の 動揺モードを 照合し安定性を判別 発電機T3 (90kVA) 発電機D4 変電所D 変電所E ディジタルシミュレータGigabit Ethernet LAN
TCPソケットによるデータの送受信 基準信号に対する 当該変電所の 位相差の算出 1回線 広域安定判別装置 発電機・変電所兼用ローカル 安定判別装置 3LG アナログシミュレータ 発電機N2 (100kVA) ・・・発電機のローカル安定判別装置 ・・・変電所のローカル安定判別装置 図1 リアルタイム安定判別装置と検証系統 - 100 -50 0 50 変電所間 の 位相差 [d e g ] 20 19 18 17 16 15 14 13 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 時間[s] 100 80 60 40 20 0 発電機 内 部相差 角 [ deg ] ○:安定な 動揺モード ▲:不安定な 動揺モード T2 N1 N2 変電所D-E間(変動量が最大となる変電所間の位相差) T3 事故発生 脱調 不安定 動揺周期を照合して判定 (発電機端子基準) 2.0 1.5 1.0 0.5 N1 の 動 揺周期 [s] 9 8 7 6 時間[s] 2.0 1.5 1.0 0.5 変電所間 の 動 揺周期 [s] 9 8 7 6 時間[s] 0.1s 図2 脱調予測例(G10) D4 発電機の内部 相差角の算出と 動揺モードの算出 波 形 の リ ア ル タ イ ム で の 分 析 か ら 事 故 発 生 後 7 秒 の 時 点 で 不 安 定 と な る こ と を 判 定 し て い る 。