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亜脱臼性股関節症に対する寛骨臼回転骨切り術の適応と成績

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Academic year: 2021

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52 ( 東 女 医 大 誌 第54巻 第7

)

頁 618-623 昭和59年7月

〔臨床報告〕

亜脱臼性股関節症に対する

寛骨臼回転骨切り術の適応と成績

東京女子医科大学整形外科学教室(主任.白川 宏教授〉

げ 道出弘

w

島村芳

刈 宏ー

、 、

、 美

ギ 木

目 他 国 付 高

付 方

げ 土

( 受 付 昭 和59年4月10日〉 はじめに 我が国における変形性股関節症は,ほとんどが 亜脱臼に起因するこ次性股関節症である.これら に対して種々の手術法が行なわれてきたが,臼蓋 形成不全に対して骨頭被覆を拡大する骨盤側の手 術にも各種のものがある.そのうち図

1

の如く, 臼蓋形成術は,荷重面が骨性臼蓋で,骨頭の内方 化は得られない.Chiari手術は,骨頭位の内方化 が得られる場合が多いが骨盤狭小化をきたし,分 娩障害をまねく場合がある.また,脚短縮が起る. 我々が行なっている寛骨臼回転骨切り術は,荷重 日 蓋 形 成 術 骨 性 臼 蓋 (+) (ー) (-) な L な し 骨盤骨切り術 (Chiari) 蓋 山一村刊↓ 骨 あ り あ り 面は本来の関節軟骨であり,荷重域の拡大,骨頭 位の内方化が得られ,また,骨盤腔の狭小化,脚 短縮も生じないすぐれた方法と考えている. 対 象 1980年以降現在までに,当教室で93例103関節に 本法を実施したが,術後

1

年以上を経過した

6

4

例 68関節について成績を検討した.内訳は,女性62 例,男性

2

例と女性が大多数を占めている.この うち,前期及び初期股関節症が

4

6

関節,進行期及 び末期股関節症が22関節である(表1). 寛骨臼田転骨切り術のみで良好な適合性が得ら 寛骨臼回転骨切り術 (田川) 荷 重 面 荷重域の拡大 骨頚伎の内方化 生理的関節軟骨 (十) (+) (+) な し な し H の下方移動 骨盤股狭小化 脚 短 縮 図l 骨 盤 側 の 手 術 法 の 特 徴

Hiromi HIJIKATA, Hiroshi TAGA W A, Hiromichi TOYOSHIMA, Kazuyuki TA区AGIand Zuiho YOO CDepartment of Orthopedic Surgery CDirector: Prof. Hiroshi T AGAWA)

Tokyo Women's Medical CollegeJ : Indications and results of rotational acetabular osteotomy for the dysplastic hip.

(2)

表l 症 例 64例 68関節 男 2 2グ 女 62 661/ 先天股脱治療歴 あり 37例 なし 27 Followup 1年-4年6ヵ月 (平 均l年11ヵ月) 前 期 16関 節 〉 46関節 初 期 301/ 進行期 200 〉 22関節 末 期 2 1/ 表2 合併手術 内反骨切り術 6関節 外反骨切り術 1 11 大転子下降術 8 1/ (重複例を含む〉 れない場合は,合併手術を行なっており,内反骨 切り術6関節,外反骨切り術1関節,大転子高位 に対しては,大転子下降術を

8

関節に行なってい る(表2). 方 法 本法は,関節包を附着したまま,寛骨臼全体を 丸く球状にくりま友くように骨切りしたのち, この くり抜いた寛骨臼を前外方に回転移動し,生じた 骨間隙には,近くの腸骨翼から採取した骨片を移 植し,キルシュナー銅線にて貫通固定するもので ある(写真1).次に症例を示す. 症 例 症例

1

:

]

.

M

.

1

4

歳女性 (写真

2

)

左股関節痛を訴えて来院した

. X

線上では,両 側股関節のE脱臼を認め, ことに左側では,関節 適合性も不良である.初期例ではあるが,今後必 発すると思われる重度関節症を阻止するため,左 側の寛骨臼回転骨切リ術を施行した. 2年後,右 も同様の手術を行ない,術後,左

3

年,右

8

カ月 の現在,終痛は全く消失し,肢行なく,運動域も 正常で,通常のスポーツも行なっている

. X

線上 は,関節の適合性が良好となり,骨頭位が正常化 した 症例2: Y.U. 11歳女性の末期例 (写真3) 術前は激しい痔痛のため,松葉杖にすがって やっと歩行可能であった.術直後では,関節裂隙 は消失したままで不安な状態であったが,術後1 年半で,著しいremodellingが得られ,終痛は全く 消失した. 症例3: A.M. 21歳女性の末期例 〈写真4) 術前は痔痛が強く,松葉杖歩行がやっとであっ た.

x

線上は,亜脱臼位が高度であった.寛骨臼 回転骨切リ術のみで,良好な適合性が得られない ため,内反骨切り術を併用し,骨頭位は正常化し, 関節裂隙の拡大をみている. 上記2例のようなremodellingが壮年期でも得 られるであろうか. 症例

4

:

K.K.

3

0

歳女性の末期例 (写真

5

)

写真l 寛骨臼回転骨切り術の経時的X線像

(3)

-619-54 写真2 定例1.14歳,女.両側初期股関節症に対し て両側手術を行なった. 肢行が著明で,可動域の著明な制限があった. 外反骨切り術,大転子下降術を併用した.術後適 合性良好,関節裂隙の軽度拡大が得られ,肢行も 著しく改善し,関節運動域は,屈曲105・,外転35。 と著しい改善をみた. 症例5:

K

.

M. 48歳女性の進行期例(写真6) 関節裂隙の狭小化が著明で,臼蓋及び骨頭に,

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y

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t

を認め,関節の適合性は可,

t

奪痛が強く,総 合点が術前58点であった.術後100点と改善し,関 節の適合性は良好となり,関節裂隙も拡大した. 臨床成績 次に臨床成績を,前期・初期群と,進行期 ・末 期群に分けて検討する.日本整形外科学会の股関 節評価基準により,終痛,歩行能力, 運動域,

ADL

について評価した(表3入 終痛に関しては,前期・初期群は,術前23.9が 術後38.5点,進行期・末期群は術前15.9が術後39.1 点と著しい改善がみられた. 歩行能力に関しては,前期・初期群は,術前14.8 が,術後18.2点となり,進行期・末期群は,術前 10.7が,術後16.8点と,終痛と同様に著しい改善 がみられた.運動域に関しては,前期・初期群は, 術前19.8が,術後19.4点,進行期・末期群は,術 前17.5が,術後18.6点であった. 日常生活動作

(

ADL

)

に関しては,前期・初期 群が,術前19.5が,術後19.8点,進行期・末期群 が,術前16.2が,術後19.2点となり,総合点では, 前期・初期群は,術前77.9が,術後95.5点となり, 進行期・末期群は,術前60.4が,術後93.5点と, 表3 臨床成績(日整会評価基準〉 前・初期群 進行期・末期群 術前 術後 術前 術後 F奪 痛(40) 23.9→38.5 15.9→39.1 歩行能力(20) 14.8→18.2 10.7→16.8 運 動 域(20) 19.8→19.4 17.5→18.6 A D LC 20) 19.5→19.8 16.2→19.2 総 合 点(100) 77.9→95.5 60.4→93.5

pre-op

post-op

1

m

post-op

3

y 写真3 症例2.11歳,女.右末期股関節症

(4)

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-

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6m

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1 y 6 m 写真4 症例3.21歳,女.左末期股関節症

pre-op

post-op

5m

post-op

1

y4

m

写真5 症例4.30歳,女.右末期股関節症 改善率は,進行期 ・末期群の方が前期・初期群よ り高度であった. X線評価

X

線評価では,

CE

角,

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(AHT)の他に,骨頭位を評価するために,両側 の

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を結んだ長さの

1

/

2

と,

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の 先端から,骨頭中心までの横の長さを,骨頭外方

pre-op

post-op

2y9m

5

8

点 100点 写真6 症例5.48歳,女.右進行期股関節症 一ι 骨頭外方 index 1/2t b 骨 頚 高 位index 1/2t σ 臼葦荷量部傾斜角 図2 X線計額u法

i

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x

とした.また荷重面における現力の発生に 影響する重要な指標として,臼蓋荷重面の傾斜角 を測定した (図2).

CE

角については,前期・初期群では,術前一2.9・ が,術後43.0・,進行期・末期群では,術前一5.2・ が,術後42.5・,AHI についても,前期・初期群は, 術前46.5%が,術後89.8%,進行期・末期群は, 術前45.4%が,術後89.8%と,

CE

角及びAHIと も正常化した. 骨頭外方

i

n

d

e

x

については,前期・初期群では, 術前0.67が,術後0.62,進行期・末期群では,術

(5)

-621-56 表4 X線評価 前・初期群 進行期・末期群 術前 術後 術前 術後 CE角 -2.9.→43.0. -5.2。→42.5。 AHI 46.5%→89.8% 45.4%→89.8% 骨頭外方lndex 0.67→0.62 0.71→0.63 臼蓋荷重部傾斜角 33.6.→3.4. 39.9.→11.2。 前0.71が,術後0.63とそれぞれ小さくなっており, 骨頭位の内方化を示している. 臼蓋荷重部傾斜角については,前期・初期群で は,術前33.60 ,術後3.40 ,進行期・末期群では, 術 前39.90 ,術後11.20 と術後は水平に近づいてお り,勢力の減少を示している. 関節裂隙の狭小化(表 5)については,術前は, (一)

3

2

関節,

C

+)

1

2

関節,

C

竹)

9

関節,

C

十仲) 4関節であったが,術後は, C一)35関節, C

+)

18関節,

C

十十) 8関節,

C

+

仲) 1関節と,多くの症 例では不変及び改善をみた.悪化をみたのは 5 関節のみである. 関節適合性(表

6

)

に関しては,術前,良

2

1

関 節,可

3

2

関節,不可が15関節であったが,術後は, 良59関節,可

7

関節,不可が

2

関節となり,ほと んどの症例で良好となり,悪化例はみていない. 考 察 我が国の変形性股関節症の大部分は,股関節形 成不全や亜脱臼に基づく二次性股関節症である. 表5 関節裂際狭小化 術 前 術 後 (ー〉 32 35 C+) 12 18 C*) 11 6 (十件〕 9 8 〔柵〉 4 1 表6 関節適合性 可

12│

不可 2 これに対する手術治療としては,従来,各種の臼 蓋形成術,骨盤骨切り術,大腿骨骨切り術などが 行なわれてきた.このうち,骨頭被覆を拡大する 骨盤側の手術にも各種のものがある.1955年 に

C

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により述べられた方法は,本来の骨頭の形 態とは完全に適合しない形の骨を移動して荷重面 を作るので,ある程度の

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が起らなけ れば,良い結果を期待しにくく,また,骨盤狭小 化や若干の脚短縮を起す欠点がある.1961年 に

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6 )により

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が 報 告 さ れ,軟骨臼蓋で,大腿骨頭が被覆される点はすぐ れた方法であるが,腸骨の骨切りのみで良好な骨 頭被覆をうる必要があるため,適応が乳幼児に限 られる.1973年に

S

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に7)より

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が報告されたが,腸骨,恥骨,坐骨に附着する多 くの筋肉のため回転が仲々困難である.1977年に,

Sutherland

8 )に よ り

double innominate

osteotomy

が 報 告 さ れ た が ,

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を 越 え る 利 点 は な い と 述 べ ら れ て い る.1968年より,田川は,寛骨臼を完全に骨盤よ り切り離し前外下方に回転移動する寛骨臼回転 骨 切 り 術

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, RAOと略す〉を行なってきた3)-削 凶.本法では, 臼蓋底を掘り,また,上外方へ移動した骨頭を内 下方に移動して正常に近づけることができるの で,合力の減少効果がある.また,荷重面の拡大 による荷重の分散,日蓋荷重面の水平化による努 力の減少が得られる.さらに本法の利点は,新日 蓋が,本来の関節軟骨で被われた生理的臼蓋で、あ ること,下肢短縮の改善が可能である点などであ る . 同 様 の 考 え に 基 づ く 術 式 が1975年 に

E

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2)1976年に

Wagner

13)により報告された が,我々の方法と異なる点は,日底部の厚い症例 で回転臼蓋の内下方を薄く短く切除しないため, 寛骨臼を回転しても,骨頭が外側に押し出される ことがある点である.以上,述べた如く,我々の 行なっている寛骨臼回転骨切り術は,荷重域の拡 大による荷重の分散,臼蓋荷重面水平化による興 力の減少,骨頭位内方化による合力の減少などが 得られる優れた方法で、ある.

(6)

結 語 寛骨臼回転骨切り術の利点は,次のごとく要約 できる. 1)生理的寛骨臼蓋の移動である. 2)大腿骨頭を完全に被覆できる. 3)骨頭位の正常化(内下方移動〉が可能である. 4) 高度亜脱臼に対しても適応し得る. 5)骨盤腔狭小化や脚長の短縮が生じない. 本法を実施した64例68関節の臨床成績は十分満 足し得るものであり,前期及び初期関節症はもと より,進行期及び一部末期股関節症においても, 術後,良好な関節適合性を期待し得る症例では, 良い結果が得られる. 本論文の要旨は, 1983年9月29日,第49回女子医大 学会総会において報告した. 文 献 1)Chiari

K.: Ergenbnisse mit der Beckenos -teotomy als Pfannendachplastik. Z Orthop 87 14(1955) 2) Eppright, R.H.: Dial osteotomy of the acetabulum in the treatment of dysplasia of the hip_ J Bone Joint Surg CAmJ 571172 (1975) 3)土方浩美・他進行期及び末期股関節症に対する 寛骨日回転骨切り術の治療成績.整形・災害外科 623-27 7 (1984) 4)土方浩美・他.壮年期変形性股関節症に対する寛 骨臼回転骨切り術の適応、と成績.整形・災害外科 投稿中 5)二ノ宮節夫・他寛骨臼回転骨切り術 (RAO)の 適応と問題点.Hip Joint 8 201(1982) 6) Salter

R.B.: Innominate osteotomy in the treatment of congenital dislocation and sublux ation of the hip. J Bone Joint Surg CBrJ 43 518 (1961) 7) Steel

H.H.: Triple osteotomy of the in -nominate bone. J Bone J oint Surg CAmJ 55 343(1973)

8) Sutherland

D.H.: Double innominate osteotomy. J Bone Joint Surg CAmJ 59 1082 (1977) 9)田川 宏:若年者の股関節に対する治療方針. Hip J oint 1 108(1975) 10)田川l宏:股関節に対する各種手術的治療方法の 選択.整形外科 30 450(1979) 11)田川 宏:変形性股関節症の手術的治療.日関外 誌 1277 (1982) 12)田川 宏・他:10歳代の変形性股関節症に対する 治療.Hip Joint 5 115(1979) 13) Wagner, H.: Osteotomies for congenital hip dislocation, in the Hip Proce巴dingsof the 4th Open Scientific Meeting of the Hip Society (1976), Mosby, Saint Louis

表 l 症 例 6 4 例 6 8 関節 男 2  2 グ 女 6 2 6 6  1 /  先天股脱治療歴 あり 3 7 例 なし 2 7  F o l l o w  up  1 年 ‑4 年 6 ヵ月 ( 平 均 l 年 1 1 ヵ月 ) 前 期 1 6 関 節 〉 4 6 関節 初 期 3 0  1 /  進行期 2 00 〉 2 2 関節 末 期 2  1 /  表 2 合併手術 内反骨切り術 6 関節 外反骨切り術 1  1 1  大転子下降術 8  1 /  ( 重複例を含む〉 れない場合は,合併

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