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本邦脳卒中死亡率の研究 第I報 : 昭和(戦後)における死亡率について

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(東京女医大誌第27巻第3号頁144・一152昭和32年3月)

本邦脳卒中死亡率の研究第1報

一昭和(戦後)における死亡率について一 東京女子医科大学衛生学教室(主任吉岡馬入教授)

キン

ギン 滋 ジ (受付 昭和32年1月28日) 1 緒 .言・ 近世における治療および予防医学の発達は急性 および慢性伝染病による死亡を激減させ,文明諸 国の国民死因はほとんど老年疾患をもつて占めら れる様になった。わが国においても近年になりそ の死因の主因となるものは,老人性疾患となって きた1。とくに脳卒中による死亡は戦後になり上 昇の一途を辿り,戦後の昭和22年以後はつねに死 因順位の4位以内にある。すなわち昭和22年は4 位,23年より25年までは2位となり,昭和26年以 後ずっと国民死因の第1位をしめている2)∼8)。文 明が人類の死亡を減らし,中でも若年者の死亡を 減少させて寿命を延長し,漸次老年者の死亡のみ が残る様になることは疑ない事実である9・)1G)。か かる意味より老人性疾患の死因の第1位をしめる 脳卒中死亡率についてはとくに注目を要する。こ の問題については現在までに幾つかの報告がある が1D)∼16),余は老入に特有な疾患なるために,人 口構成を聖慮に入れ,総数,男女について訂正死 亡率を算出し,これによって現代より年代をさか のぼりつつ本邦脳卒中死亡率がいかなる経過を辿 ってきたかの年代的推移を究明すべく,まず第1 報として戦後における死亡率の推移について観察 を行った。 ■ 資料及び研究方法 資料:昭和22年及昭和25年国勢調査…報告,昭和22年 ∼昭和29年人口動態統計。 研究方法:昭和22年より昭和29年迄当年度の全国, 府県別の総数及男女別心死亡率を計算し,これに加 え,昭和22年および昭和25年はそれぞれ国勢調査人口 が判明せるため前記計数に加えて全国および府県別訂 正死亡率,ならびに性別年令別死亡率を観察した(昭和 25年以降の死因は新分類となるため,死亡数は国際死 因名のB22画面神経系の血管損傷と, b(352)のその 他の脳性麻痺を合算せるものである)。なお訂正死亡 率は昭和5年度全国入口を標準人口として計算した。

皿 研究結果

1.全国における死亡率 表一1に昭和22年より昭和29年までの総数,男子 および女子の粗死亡率をしめした。また図一1は 表一1を図表にあらわしたものである。 (1)総数の観察 図一1に示すごとく,昭和23年は昭和22年より低 率となっているが,昭和24年,25年と年次を経る にしたがい高率となってくる。昭和26年は昭和25 年に比し僅かに低率となっているが,昭和27年, 28年と高率となっている。昭禾i」29年は昭和28年に tc一 1 脳卒中による粗死亡率(入口10万対) 総 男

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Ginji Kin (Dept. of Hyglene, Tokyo Women’s Med, Coll.) : Studies on the Death−rates of Apoplexia in Japan. Report 1. 一〇n the death−rates in Shbwa (after World War 1[) era. (19=7・v1954)一

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これは女子の:方が老人層をしめる人口の割合が男 子より大なるためと考えられる17)。 2.府県別死亡率 表一∬は昭和22年,昭和25年の全国,府県別の粗 一一∬ 府県別 脳卒中による死亡率 昭和22年(1947年) i jSe 3eo 肇 鋸… 三 物2.. g 15e

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死亡率および訂正死亡率を総数並びに男女別に示 したものである。 (1)総数の観察 図¶および図一HIに昭和22年ならびに昭和25年 の粗および訂正死亡率を捧図表にしめし比較観察 してみる。 各府県については,図¶,1■にしめすように昭 和22年,25年両年とも大体同様な状態をしめして いる。昭和22年で,訂正死亡率が粗死亡率より高 率をしめす府県は20府県,昭和25年では12府県 で,昭和25年は昭和22年より府県数は少くなって 図一IV 府県別証脳卒中訂正死亡率 aoo いる。 両年とも北海道,東北地方ならびに東京,神奈 川,大阪,福岡等大都会をふくむ地方は粗死亡率 より訂正死亡率が高率となっている。これらの都 会的府県や,また北海道,東北地方では老人人口 が少いために,このような結果を得たものとおも われるユ’。関東地方の大部分は昭和22年において 訂正死亡率は粗死亡率より高率であったが,昭和 25年は逆に訂正死亡率は粗死亡率より低率になっ ていることは注目されるところである。 図一IVは昭和22年と昭和25年の各府県別総数の 昭和22年(1947年)と昭和25年(1950年)の比較 250 胴.。。 三 思

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訂正死亡率を比較したものである。図にしめすご とく昭和25年が昭和22年より死亡率が上昇してい る府県は全国の中12府県で,主として北海道,東 北地方の青森,宮城の諸県ならびに,関東地:方の 各県である。他の各府県は昭和25年は昭和22年よ り死亡率が低下している。 両年とも訂正死亡率での最高死亡率をしめした 府県は秋田県で,この秋田県が高率をしめしてい ることについては他の研究者によっても同様に報 告され,またその原因について種々の検討が行わ れている12)15)1618/19)。:最低をしめした府県は愛媛 県となっている。 (2) 男女芳脚こよる観察 1)男子の死亡率について 面一Hにしめしたごとく,昭和盟年で訂正死亡 率が粗死亡率より高い府県は32府県で北海道,東 北,北陸,関東ならびに九州地方,および東京, 神奈川,愛知,京都,大阪,兵庫の諸府県の大都会 をふくむ地方が高率となっている。昭和25年では 訂正死亡率が粗死亡率より高い府県は26府県で, その地方は昭和22年とほ5“同じ地方が高率となっ ている。 一 148 一

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その府県i数は昭和25年の方が昭和22年より少い。 昭和25年は昭和22年に比し訂正死亡率で高率と なる府県は,北海道,青森,宮城,茨城,栃木, 埼玉,東京,山梨の8府県のみで,主として北海 道,東北,関東地方となっている。 昭和22年,昭和25年両年とも訂正死亡率で最高 の死亡率をしめす府県は秋田県で,最:低は愛媛県 となっている。 2)女子の死亡率について 訂正死亡率が粗死亡率より高率となる府県数は 昭和22年では11府県で主として東北,関東地方な らびに東京,大阪の大都会をふくむ諸府県となっ ている。昭和25年は8府県でほs’昭和22年と同様 の地方となっている。この府県数は男子のほS“/3 で,これは女子』の人口において高年層の割合が多 い府県が多数なるためと考えられる17)。 訂正死亡率で昭和22年と昭和25年を比較する と,18府県が昭和25年は昭和22年より高率となっ ており,主として北海道,関東ならびに九州地方 となっている。 訂正死亡率で最高は昭和22年および昭和25年の 両年とも総数,男子と同様に秋田県で,最:低は昭 和22年では愛媛,和歌山の2県で同率をしめし, 昭和25年では愛媛県となっている。 〔3)男女死亡率の比較 表一Hによって府県別の男女死亡率を比較する と,昭和22年においては粗死亡率で,男子の方が 女子より高率の府県が多く,全国の中25府県で男 子が女子より高率となっている。これを訂正死亡 率で比較してみると,全府県の46府県で男子が女 子より高率となっている。昭和25年においては粗 死亡率では38府県で,訂正死亡率では昭和22年と 同様に全府県の46府県において男子が女子より高 率となっている。すなわち,両年とも麗ならびに 訂正死亡率とも男子が女子より高い府県が多数で あるが,訂正死亡率で比較すると粗死亡率より更 に多くなり,両年度とも訂正死亡率では全府県い ずれも男子が女子より高率となっているのが注目 される7)17)o 男:女それぞれにおいて粗ならびに訂正死亡率と の関係をみると,両年とも男子の方が女子より訂 正死亡率が粗死亡率より高率である府県が多数と なっている。 3.性別年令別死亡率の観察 (1)全国における観察 全国においては図一Vにしめすごとく,昭和22年 および昭和25年両年ともほとんど同様な曲線をあ らわしており,老年層において急激に死亡曲線は 上昇している。男女とも70才以上の死亡率は昭和 25年は昭和22年よりも上昇している。ただし男子 図一V 卒中による年令周死亡率(全国) オ600 」,300 」. ooo ?・ 70e 1一

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il ,t’ ・ up ’:一 ’・ ・i {t) i/ilC,,itt i!!s ’/1’‘ii iili’iii’i[ においては40才∼70才は, 年より死亡率は高くなっているが,女子では昭和 25年の方が昭和22年より高い。 また両年それぞれについての男女の死亡曲線を みると,昭和22年,25年両年とも一部の年令階級 をのぞき他のすべての年令においては男子は女子 より高率である。すなわち女子が男子より高率で あるのは昭和22年では45才∼50才,昭和25年では 35才∼50才の階級のみである。 ② 各府県における観察 各府県とも全国とほとんど同様な死亡曲線をし めしている。すなわち脳卒中が老入特有の疾患と 一dit21Et:i.4.r.L..L.L一.....一L一一.一 xo 30 tto se 60 vo so eo reo 年 ・?一 昭和22年の方が昭和25

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しての特徴をしめし,死亡曲線は老人層において 急激に上昇している。専一W, pa−VIIは昭和22年,昭 和25年の総数において最高,最低死亡率をしめし た2県,すなわち両年とも最高は秋田県,最低は 愛媛県をそれぞれの年度の代表としてしめした。 秋田県においてとくに死亡曲線が高令で下ること は,近藤18)によると秋田県は70才未満という若い OU−VI脳卒中による年令別死亡率 巨召禾022翁三 (1947ゴド) 秋巨]県, 愛一際県 h, 一.o” “ooo 魂6。・ 猫32e. 孚 尋・… 孝 礼。.. 望 g 之。σo’ : o Liら6。。 1,ioe Soe 4ee

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しもets t,20e Sov Aoo on−VII脳卒中による年令別死亡率 昭和25年(1950年)秋田県,愛媛県 fi’x

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4 ? ’ その差は人口10万に対し3.0となっている。 昭和25年は昭和22年より粗ならびに訂正死亡率 とも死亡率は低率となる。昭和22年は訂正死亡率 が粗死亡率より高率となっているが,昭和25年で は逆に粗死亡率の方が訂正死亡率より高率となっ ている。 (2)男女別による観察 1)男子の死亡率について 粗死亡率については昭和22年∼26年までは総数 とほゴ同様の傾向をしめしているが,昭和27年以 後は漸次高率となる。 粗および訂正死亡率とも総数と同様に昭和25年 は昭和22年より死亡率1まやs低率となる。昭和22 年,昭和25年両年とも訂正死亡率は封咀死亡率より 高率で,昭和22年の方がその死亡率の差は昭和25 年より大である。 2) 女子の死亡率について 粗死亡率の年次的推移は総数とほS’一同様であ 一 150 一

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る。 粗死亡率では昭和25年は昭和22年より高率であ るが,訂正死亡率では昭和25年は昭和22年より低 率となっている。 .昭和22年,25年両年とも,訂正死亡率は粗死亡 率より低率で,昭和25年の方が訂正死亡率と粗死 亡率の差が大となっている。 〔3)男女死亡率の比較 粗死亡率についてみると各年度とも男子の方が 女子より高率である。なお男女とも総数同様に年 次とともに死亡率は上昇し,その上昇の程度はわ ずかながら女子の方が男子より大となっている。 昭和22年,25装いずれも粗ならびに訂正死亡率 ともに,男子の方が女子より高率であるが,その 差は昭和25年の方が昭和22年よりも小となってい る。また男子では両年とも訂正死亡率は粗死亡率 より高率であるが,女子では両年とも訂正死亡率 は粗死亡率より低率となっている。 2. 府県別死亡率 Q)総数の襯察 a)訂正死亡率が粗死亡率より高率である府県 数は昭和22年は20府県で,昭禾II25年では12府県 で,昭和25年は昭和22年より少くなっている。 両年とも北海道,東北地方ならびに東京,神奈 川,大阪,福岡等大都会をふくむ地方は粗死亡率 より訂正死亡率が高率となっている。関東地方の 大部分は昭和22年において訂正死亡率は粗死亡率 より高率であったが,昭和25年は逆に訂正死亡率 は粗死亡率より低率になっている。 b)訂正死亡率で昭和25年が昭和22年より上昇 している府県は12府県で,主として北海道東北 地方の青森,宮城の諸県ならびに,関東地方の各 県である。他の府県は昭和25年は昭和22年より死 亡率が低下している。 c)両年とも訂正死亡率での最高は秋田県で, 最低は愛媛県となっている。 鋤 男女別による襯察 1)男子の死亡率について a)訂正死亡率が粗死亡率より高率である府県 は,昭和22年は32府県,昭和25年は26府県で,両 年とも主として北海道,東北,北陸,関東,九州 の諸地方,および東京,神奈川,愛知,京都,大 阪,兵庫等大都会をふくむ地方で,昭和25年の方 が昭和22年より少数となっている。 b)訂正死亡率で昭和25年が昭和22年より高率 となる府県は8府県で,主として北海道,東北, 関東地方となっている。 c)両年とも訂正死亡率で最高は総数同様に秋 田県で,最低は愛媛県である。 2)女子の死亡率について a)訂正死亡率が粗死亡率より高率である府県 は昭和22年は11府県,昭和25年は8府県で,両年 とも主として東北,関東地方ならびに東京,大阪 等大都会をふくむ地方となっており,両年ともそ の府県数は男子のほゴ%である。 b)昭和25年が昭和’22年より訂正死亡率が上昇 している府県は18府県で,主として北海道および 関東,九州地:方となっている。 C)両年とも訂正死亡率で最高は総数,男子と 同様に秋田県で,最低は昭和22年は愛媛,和歌山 の両県で,昭和25年は愛媛県となっている。 (3)男女死亡率の比較 a)両年とも粗および訂正死亡率で男子が女子 より高率である府県が多い。特に訂正死亡率では 両年とも全府県で男子が女子より高率である。 b)両年とも訂正死亡率が粗死亡率より高率で ある府県は男子の方が女子より多い。 3. 性別年令別死亡率の観察 (1)全国における観察 昭和22年,25年両年ともほとんど同様な死亡曲 線をしめしており,男女共死亡曲線は高年層にお いて急激に上昇している。また両年について男女 の死亡曲線をみるとp 一一一h部の年令階級をのぞき他 のすべての年令においては男子は女子より高率で ある。すなわち女子が二男子より高率であるのは昭 利22年では45才∼50才,昭和25年では35才∼50才 の階級のみである。 (2)各府県における観察 各府県とも全国とほとんど同様な死亡曲線をし めしている。脳卒中が老入特有の疾患としての特 徴をしめし,死亡曲線は老人層において急激に上 昇している。 稿を終るに臨み終始御懇切なる御指導,御校閲を賜 った吉岡博入教授,並に諸岡妙子助教授に謹んでi謝意 を表す。 :文 献 1)吉岡搏人,諸濁妙子:本邦都郡別老年疾患死亡

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率について,日本人口学会記要,(2),50(昭29) 2)国民衛生の動向,厚生の指標,2(9),30(昭30) 3)国民衛生の動向,厚生の指標,1(7),30(昭29) 4)渡辺 定:老人病とりどり,厚生の指標,1(10), 5(昭29) 5)新城之助:脳卒中の診断,診断と治療,44,37 (昭31) 6)斎藤潔:老入病と予防医学,診断と治療,44, 110 (口召31) 7)瀬木三雄:統計…年令別にみた主要死因の死亡 率,日本臨床,10,713(昭27) 8)山本 汀,高溝利彦:統計上よりみたる脳卒中 の動態,現代医学,4,341(昭31) 9)渡辺 定:脳卒中死亡の推移厚生の指標,1(2), 6(昭29) 10)渡辺 定:国民脳卒中死亡の統計,診断と治療, 44, 1 (昭31) 11)渡辺 定:卒中に関する統計,日本臨床,10,920 (昭27) 12)一色嗣武:脳卒申死亡率戦後の傾向,保険医学 条佳誌,50(1),9(日召27) 13)猪野達夫:脳卒中の予後に関する統計学的研究, 生物統計学雑誌,4,219(昭31) 14)一色嗣武,古川武夫:血圧の統計的研究,保険 医学雑誌,54(2),29(昭31) 15)渡辺 定:日本入の脳卒中死亡の動向,目本臨駄, 10, 920 (日召27) 16)一色嗣武:脳卒中に関する統計,日本内科会雑 誌, 41, 149 (日召27) 17)離岡妙子:生物統計学的にみた男女の差異にっ いて,東京女医大誌,24,81(昭29) 18)近藤正二:卒中と食習慣,日本臨罧,ID,992 (昭27) 19)松岡脩吉:季節と脳卒中,日新医学,39,571 (昭27) 20)三谷章次他6名:卒中死亡の原因に関する研究, 保険医学雑誌,44(1),6(昭21) 一 152 一

参照

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