(東京女医大誌第27巻ng 9号頁506−519昭和32年9月)
淡水魚の網膜内活動電位(EIRG)に関する研究
東京女子医科大学生理学教室
登
ト 坂 サカ 恒ツネ夫
テ(受付 昭和32年8月7日)
1.緒 言19世紀におけるDu Bojs ReymondやHolmgren 等によって研究の端緒が開かれたいわゆる網膜活 動電位(ERG)はその発見以来諸家の研究の対象 とされて来たが,Adrian1’(1928)によりERGが 視神経活動とある因果関係を有していることが示 されるに至って,それが網膜のいつれの層に如何 なる機構で発生するか,叉それが如何に神経放電 と結びつくかという問題が改めて多くの研究者の 関心の対象とされ討議が続けられて来た。その経 緯についてはGranit7)(1947)によって詳論されて いる如くであるが,氏はエーテル麻酔時,酸素欠 乏時下によるERG及び視神経放電の変化から分
析を進めてERGを3つの要素(PI,P■,PHI)
に大別し,その各々が異る細胞層より発生すると 推論した。その後冨田等25・50)一一52)(1950∼1952)は 網膜内に:先端直径約10μの微小電極を刺入して行 き,各深さにおける電位(EIRG)を記録して電位 の極性が反転する深さを測定した結果,ERGの 主な要素の発生部位は両極細胞層にあるという結 論に到達した。又両極細胞層における・EIRG中に は視神経放電と密接に関係し且つEcclesのシナ ップス電位5・と類似の性質を有すると老えられる ところの陰性電位変動50)52,が光照射に伴って現わ れることを見出した。これに対してSvaetichin等 17)18)(1952,1953)は1μ以下の超微小電極を用い て冨田等の実験を追試したが,その結果は完全に 冨田等の結論に対し否定的で,ERGの発生部位 は総て視細胞層にあり両極細胞層より上位の各層 はERGに関与する所がないと結論した。 Svae− tichin等は更にERG及び視神経放電に対する薬 物,温度及び酸素欠乏等の影響をしらべてその論 拠の裏付けとした。 (別に冨田等による網膜内陰 性電位についてもこれを太い電極を用いた為の人 工的所産として否定したが,最近彼もその存在を 是認し21),この点では冨田等の成績を全面的に肯 定した。) この反駁に対して冨田等55)(1956)は Svaetichin等と同様な1μ以下の電極を用いて, 電極の進みと実際の網膜の位置との関係等を詳細 に再検討して10μの電極によって得られた以前の 結果と本質的に同様の成績を得,如何にしても両 極細胞層にその主な発生源をおかざるを得ないと 結論し,又電極部位の網膜の限局照射によってはERGが得られないことからもERGの発生部位
を視細胞と考えることは困難であると述べた。更 に冨田等はいわゆるペンシル型微小電極を用いて 実験を行い同様の結論に達することを報告した。 その他:Noe1116)(1953), Brindley2)∼4)(1956)などの 多くの研究者がERGの発生部位に関して論じて いるが,その実験手技において冨田等の結論を反 駁するには不充分であると思われる。勿論網膜の 複雑な構造に加うるに複:雑なERGの波形を簡単 に論ずることは困難であろうが,両極細胞層に主 な発生の揚があることは間違いないと思われる。 以上脊椎動物のEGRに関する問題を論じたが 一方無脊椎動物においてもERG又はこの種の活 動電位に関する研究は少なくない。これ等のうち 特に注目すべきものはHartline等10)(1952),冨 田26)∼28)(1954,1956,1957)及び田中24(1956)等 によるカブトガニ光受容器に関する研究で,この 光受容器では光照射中持続する緩やかな活動電位 が発生し,この緩電位によって視神経放電が誘起Tsuneo TOSAKA (Department of Physiology, Tokyo Women’s Medical College) : Studies on the
intraretinal action potential (EIRG) of a fresh−water fish.
せられるものであることが詳細に報告された。こ のような受容器電位と称すべきものは他の感覚受 容器例えば筋張力受容器6)(1955)や圧受容器8 9)’・ (1953)でも報告され,一般的現象と考えられるに 至っている。かかる一般的見地からERGを考え ると視細胞層から発するというSvaetichin等の 主張は興味があるが,さきに述べたようにその結 果は冨田等の実験により否定的である。 ところ力玄Svaetichin19)(1953)は魚類維i月[莫の光 受容細胞中の錐体に著明な緩電位が認められ,そ れが視神経放電のgenerator potentialであると いう注目すべき報告を行った。即ち魚類(bream 及びperch)の色素層と桿体外節を剥脱した網膜 内に超微小電極を刺入して行くと,深さ約40μと 70μの2ケ所で20∼50mVの急激な負の電位飛躍 があり,光照射によって更に20∼30mVの陰性変 動(活動電位)が光照射の持続中継続して現われろ のを認めた。この電位は多くの電気生理学的知見 から推定して細胞外から誘導しているとは考え難 く,電極先端の位置と網膜の組織構造との関連よ り想定して錐体の主としてcone myoid,あるい はcone pe嬢cleに刺入きれた電極によりその電 位が記録されているものと考え,Svaetichinはこ れを錐体活動常位cone action potentia1と命名
した。叉これと独†に飯田等11て1955)は鯉の網膜 において同様の活動電位を記録したが,その発生 部位については詳しく論ずることを避けている。 一方本川等15,(1957)及び御手洗等12)(1955)は鯉の 網膜でSvaetichinの研究を追試し,何れも電極 :先端の位置が錐体の存在する深さにある時いわゆ る錐体活動電位が誘導されることを是認している が,本川等は錐体よりも更に中枢側,即ちmyoid やpedicleの深さ以上の所からも同様の活動電位 が得られることがあると報告し,これに反し御手 洗等は錐体のmyoidよりも中枢側では最:.早何等 の電位変化も認め得ないと報告しているJ而も錐 体活動電位と視神経放電との関係についてSvae− tichinと本川等とは結論を異にし,前者はスパイ ク放電と錐体活動電位との両者が同時に誘導され た記録例に基き錐体活動電位を興奮過程と見倣し たのに反し,後者は錐体活動電位に重畳するスパ イク放電の像よりこれを抑制過程と関連づけてそ れぞれ反対の見解を提示している。 更にSvaetich{n19)20)(1953,1956)及び本川等 15’ ヘこの錐体活動電位を示標としてスペクトル感 度を求めている。Svaetichinによればbreamの 感度曲線は単相性負:方向のみのものであり,感度 極大はそれぞれ470,550,600及び650mμに認め られると報告したが別の淡水魚Mugil genasで 24枚の干渉フィルター22塘使用し詳細に検討した 結果,或る波長の色刺激では逆に脱分極電位を示 すものもあり,且つ2相性の電位変動を示す幾つ かの異った活動電位波形が得られたことより,ス ペクトル感度曲線を3型に分類した。その第1は
L型と称するもので,breamで見られる単相性
高分極電位と同等のものと推定きれ,574m〆しに最 大の山を示し,その他に小さな山が5ケ所に認め られるものである。第2はR−G型で506mμ(脱分 極)と639mμ(高分極)に山を有する2相性曲線, 第3はY−B型で460mμ(高分極)と610mμ(E莞分 極)にそれぞれ山を有するものでR−G型とは極性 の逆な2相性曲線である。それに対し本川等は鯉 を用いて2型のスペクトル感度曲線を得た。その 1つである:N型と称するものは高分極電位のみを 示す単相性のもので,恐らくSvaetichinのL型に 相当すると解釈されるものであり,他方はSvae− tichinのY−B型と比較されるべきものでこれを A型と名付け,それぞれの:極大は470,550,600及び650mμでSvaetichinのbreamにおけると
同様の結、果を報告した。しかしこれ等の感度曲線 の解釈に就いては異った意見を表明した。即ち本: 川は各々の感度曲線に1っ或いは2っの極大に加え て小さな山がいくつか存在する所より,1つの錐 体内に4種類の視物質が存在すると想定した14)。 他方SvaetichinはL型をsingle coneに由来す るものとし,且つそれがGrundfestのsunfish で得られたphotopic lurninosity curveとほと んど一致する所よりL型は主として光覚に関係あ るものと推論し,R−G型及びY−B型が色覚を司 るもので細胞膜が互いに密接しているtwin・cone に由来するものと推論し,更に逆説的に活動電位 が錐体に由来するものであることの一論拠とし た。 いつれにしても視細胞に活動電位が発生すると いう見解に対し反対する理由はないが,このよう な著明な電位変化が若しも視細胞に発生するもの とすれぼ,その電位がERGの上に影響しないとは 老え難く,この点で冨田等の結論と矛盾すること 一507一になる。.著者はかかる矛盾を出発点としてSvae− tichinのいわゆる錐体活動電位について次のよう な実験を行った。即ち鮒網膜の視細胞側と硝子体 側の両方より内部極0.5μゴ外部極5μのペンシル 型微小電極を刺入し,その内外両極によりいろい ろ.な深きにおける活動電位を同時誘導記録し,更 に特殊スペクトル掃引.装置によりそのスペクトル. 反応曲線を記録した謹の結巣この電位が直径10μ 前後の小さな錐体に由来するものとは老え難く,. 且つ鮒網膜の組織像と電極位置との関係より視細 胞より更に中枢位にそのoriginを有するもので あり,少くともSvaetichin,御手洗の弓張する如・ き錐体に由来するものでないという結論を得たの でこれを報告する。ここでいわり)る“cone action potentia1”という名称が妥当でないと思われ.るの で著者は以下富田等に従って…般に光刺激時に網 膜内よ.り誘導される電位変化を網膜内活動電位 (EIRG)と称することに.する。 2。実験方法 1.実験材料:実験動物は凡て鮒(CyPrinus aori’,zttss> を用いた。そめ理由は,1)鯉に比べて網膜血管に乏 しく,従って網膜内面から電極を刺入してスN一クトフレ 反応を検する場合血管の蔭に電極が位置する危険が少 いこ.と及び;2)硝子体の詠口性が少いことの2点に よる。眼球を摘出後,実験の一部はこれを輪切りにし .前眼部を摘除した眼盃標本となし,他の場合は色素層 .を除いた剥離網膜を視細胞層を上にして銀板上のリン .ゲル液を含ませたkjeenexの上に置いた。銀板はそ あまま不関電極とし・(使用し,その下を冷水で灌洗し 標本の温度を常に約8℃に保つようにした。爾使用し たリンゲノレ液は冷血動物用リンめレ液で,.その組成は
O. 65% NaC], O. 0140% KCI, O. 0120/5 CaC.IL,, O. 020%
.N・耳cg琢び.q・ OQi%NaH・P◎・で軽・.. 2.重縫騨酵熟たR・’・シ理石馴騨27・29)
55)鞭ゆ・・そ幽幽騨α54以柳3MKC1蝿
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’鏡の架台にとりつサてあ.り., tt「1回転140μ・の微動装繊1こ .より糠:畔刺袖論説極の1勾部脚財!捌に. .鰍一力啓.7:!≒附し論る.・.瞳140・の鋤装. 置によ.り外部極を固定した津まで官由に操作レ得るよ うになってV・6 g軍極先端の位置の判定■はこの両微動. 装置に附してあるマイクロメータr一’の読みによった。 3.増巾器及び記録装置:ペンシル型微小電極の内 .外両極により誘導された電位は顕微鏡架台に装置した 前置増巾管(双2極管12A U 7 55))を経て2回路直流 増巾器で増聾し,electronic switchで分け虚2現象 ブラウン管オシロスコープで記録した。爾既に冨田27) .(1956)が報告した所の内外両極聞の容量による結合を 除く為の補償回路はここに対象となるEIRGの如き緩 やかな電位変化に対しては必要を認めなかった。 4.光刺激装置 1)白色引々源。タングステン.ランプを5V50サ■ .クル交流で点火し,レンズ系を通して網膜上に一様に 投射した(全面照射)。照度は三々50Luxで常に一定に 保たれるようにし,その“on”,“off”はシャッターを 使用し,その動作はブラウン管の掃引に同期せしめた 遅延回路を通してブラウン管の掃引開始後任意の時聞 後に任意の期問だけの網膜照射が行えるようにした6 2).スペクDレ掃引装置。水野15)(1954)の特殊,ス.ベ クエ▽レ掃引装置を使用した、これを要約すると第1図 ノ/’(s
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第1図スペクトル掃引装置の概略図。1パタングステ ・ンランプ,・C:.集光レンズ,S:波長分光計, D:特 睡殊回転装置,R=網膜眼盃標本, AMP:増巾器 ド轡ノ黙
.、,1/II?,一豆一一{一・.。{ l r :1 \ ノ. / 「 \ .! S IL. \ /・R.…レi・ 、‘ノ
1.’」 rご秘・b3・ : 1 .Dp 第.2隅特殊國巌葦の原三図・FJ河山関鰍F1冊 ible.」・int)l w¢・ウ織目.ム,ギヤ学期モ:ターに ’.よ.り等速回転を行う.),Al:01を麦点として運動するarm, A2:02を支点として運動するarm, Sp:A,を 牽引する.ためのスプリング,St:A2の運動を制限する stopper, ER:偏心環, L:03を支点として耳Rの回転 に伴って運動するlever, Dp:しの運動により分光計
.の支持台のarmを駆動せしめ.るもの。(水野15)を参照)
に示す如く,光源ランプL(白色光々応用ランプと同 一のもの)より発した光はコンデンサー一 C }(よって集 光され,島津製分光計Sを通して得られる単色光を標 本上に投射した。分光計は特殊回転装置Dによリブラ ウン管の掃引に同期して回転し,赤端より青端へ又は その逆に連続的に波長の変化する単色光が得られるよ うになっている。ng 2図の装置は,ウォームギアWG の単位回転当りの波長の変化d入/dp(あるいはdg/dt が一定であるからd入/dgはd入/dtに比例)を可及的 一定にする為のもので,今回の実験に当り水銀燈の輝 線スペクPレを用いてWGの回転と波長との関係を再 検査した結果は第3図の如くであった。図中横軸の pip numberはWGが一回転する毎にブラウン管上に 自動的に記録(実験成績参照)きれるpipの番号を示 700 600 500 400
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t 700 12 4 6 8 10 12 14 16
PIP NUMBER 第3図スベクPレ掃引装置におけるWG(第2図)の回 転数と波長との関係。縦軸は波長,横軸はWGの回転 数で水銀燈の輝線スベクトフレを基準として測定したも のである(本:文参照) す。尚この装置は光のエネルギT一’を一定にするように は設計されていないので,後の実験成績で述べるよう な計算によってスペク.Pレ反応曲線を求めた。3.実験成績
L EIRG発生部位の決定
網膜内面(硝子体側)から電極を刺入する揚合 には,予めペンシル型微小電極の内外両極の先端 を揃えてセットしておき,これを実体顕微鏡下に 網膜表面に丁度接着する所まで進める。電極先端 が網膜表面に到達したことは,その瞬間にブラウ ン管上の基線に動揺が認められるのでこれからも 知り得るが,別に網膜表面を走る血管の上叉はそ の近接部位に電極が下降するような揚合には電極 の到達と同時に血管中の血球が移動してその部位 が観潮することから確実に知ることができる。こ の位置に外部極先端を固定し,次に内部極だけを 突出させて網膜内の細意さに刺入した際の静止電 位及び光刺激時の電位変化を記録する。第4図は かくして得られた記録の1例である。忙中光刺激 の始めと終りの時点は夫々上及び下向きの小さな シグナルで示されている。そして上部の記録はペ ンシル型微小電極の外部極で誘導したERGで, 下部の記録は網膜内に刺入した内部極により誘導 せられたEIRGである。図のaは内部極が網膜内 60μの深さにある揚合,b−dはそれよりも更に 20μつつ内部極を刺入して行った揚合に得られた 電位(EIRG)である。内部極を刺入して行くと 60μの所でaに示される大きさの陰性の電位飛躍 があり,光照射によって更に陰性の方向に進んで 光照射中持続する所の電位変化が生ずる。いわゆるSvaetichinのcone action potential 1こ相当
a b c d
第4図 網膜内側表面よりペンシル型微少電極を刺入して得られた記録。上側の記録は外部極を網膜内側表面に丁度 接する位置に固定して誘導したもので,上,下向きのpipは光刺激の“on”“off”を示す。マイクPtメ・・ Pt ・・の読 みはa:60μ,b:80μ, c:100fi , d:120μ。第4図以下第11図までの記録は上が正,下が負である(本四参照)
する。80μの深さでは静止電位及びEIRGの大き さは共に増大してSvaetichi血の報告しているも のと略々一致した値を示したが,120μに至って 両者共に再び減少を示した。 EIRGの大きさは静止電位のそれとほぼ消長を 共にし,最犬の値を示す深さの巾は20μをはるか に越える。微動装置で内部極を一度引上げた後に 再び同じ場所ぺ刺入すると略々同じ深さで再び同 様なEIRGが得られ,このような観察は何回も繰 返して行われ得ることが大きな特徴であった。勿 論網膜の機械的な抵抗や粘着の為に,電極を刺入 して行く時と抜いて行く時とで最大のEIRGが得 ら.れるマイクUメーターの読みに幾らかのずれが 認められた。叉電極を頻回に反覆刺入させた場合 は三二電位及びEIRGゐ大きさが徐々に減少して 行ったが,この際刺入部位を僅かに変えると再び 大きな静止電位及びEIRGが記録される。このこ とから同一部位へ反復刺入した場合の反応の減弱 は,その部位の細胞乃至組織が電極によって破壊 さ.れることによるものと理解することができる。 新鮮な標本では電極を刺入すれば殆どその度毎に かかる静止電位及びEIRGを記録することができ た。このようにして内部極を反復往復せしめるこ とによって最も大きなEIRGが記録される深さを 求めた結果,平均値として網膜の内側表面から80 乃至90μなる値を得た。 第5図以下第8図までは剥離網膜を用い,電極 を網膜の外側(視細胞側)より刺入して得られた ものである。最初の実験では外部極の:先端を桿体 外節端上に止め,内部極だけを網膜内に進めて EIRGを記録しようとしたが,内部極を120μまで 進めても何等のEIRGを記録することが出来なか った。用いた外部極の先端外径が僅かに5μであ ったので,これ以上内部極を外部極から突出すこ とが不可能となった為,以後の実験では凡て内部 極を120μ以下のある一定の距離だけ外部極の先 端から突出した状態に保ち,内外両極をそのまま 同時に35μのステップで網膜内に刺入することと .した。そして電極の深さは便宜上外部極先端が桿 体外隈隈上にある時を0としてマイクuメーター の読みをとった。又一中内外両極による記録を区 別する為に,内部極よりの記録のみに光刺激時点
a’ b c
第:5図 ぺ.ンシル型微小電極の両極間距離を100μとし,同時に視細胞側より刺入して得られた記録。一度電極 をaの深さまで刺入しその位置から順次抜いて行った場合で,外部極に対するマイク・メーターの読みは, 欲・105μ,b:70tLi c:・35μ, d:’0μ。内部極はそれぞれの読みに100μを加える。光刺激時点を示すpipの ある記録は内部極からの誘導を表わす。第6図∼第8図も同様(本文参照)d
a
b
c
d
「第6図第5図と同じ位置で再び電極を刺入して行った場合を示す。外部極に対するマイク・メーターの読み .1は,.a:70μ, b:105μ, c:140pt, (!:175μ 一一 5iO 一を示すシグナルを入れた。 第5図は内外両極先端の距離を100μに固定し たまま同時に視細胞側から網膜内に刺入した場合 の記録:例で,3ステップ目,即ち外部極105μ,内部 極205μの深さの所で内部極から定型的なEIRGが 得られた(図a)。読図b−dはその位置より1ステ ップつつ抜いていった時の記録である。cにおい ては内部極:先端は桿体外節端よりth 135μの深さ にあるにも拘らず,静止電位は既に0となり,微 弱なEIRGを示すに過ぎない。第6図は第5図と 同じ位置で再び網膜内に刺入した場合の記録で, cでは両極聞の距離が100μもあるのに両者に殆ん ど同じようなEIRGが記録されている。更に電極 を刺入したdにおいては内部極は明らかに網膜の 全層を貫いて反対側に出たと思われ何等のEIRG を示さなくなったが,この位置において外部極 (先端は桿体外節端より175μの位置にある)からは やや小さいが定型的なEIRGが記録きれている。 第7図は同じ電極の内外両極聞の距離を50μに セットし直して網膜内へ刺入した場合の記録例で ある。第4ステップ(外部極の先端は140μ,内部極 の先端は190μ)で両極同時に静止電位を記録し, 殆んど同じ大きさのEIRG』ェ記録された(図a)。 その位置から電極をぬいて行く各ステップ毎の記 録(b−d)では静止電位もEI:RGも両極で異った 態度を示した。第8図は第7図の場合と同じ条件
a b c
第7図 ペンシル型微小電極の両極間距離を50μとし,同時に視細胞側より刺入して得られた記録。一一・tw電極 をaの潔さまで刺入しその位置から順次抜いて行った場合で,外部極に対するマイク・メーu一の読みは, a:140μ,b:105μ, c:70μ, d:35μ。 aの最上部の記録は0μにおける記録を対照として示したものであるd
es b C
第8図. 謔V図と同じ条件(両極間距離50μ)で別の部位に刺入して行った時に得られた記録。外部極に対する マイクmメーターの読みは,a;140μ, b;175μ, c:210μ, d:245μ。 aの最上部の記録は0μにおける記 録を対照として示したものである (内外両極問距離50μ)で刺入して行き,始めて内 部極でEIRGが記録:された深さ(a)か.ら更に1ス テップつつ刺入して行った場合で,深さに応じて 両極により記録される波形が丁度入れ替る状態が 明瞭に認められる。更に両極間距離を30μ或いは それ以下に固定して行った別の実験では,両極共 殆んど同一の静止電位及びEIRGを記録し,そのci
為に両者は殆んど完全に重なり合って記録され, 波形上の区別は困難であった。電極を視細胞側よ り・刺入した以上の如き諸実験成績を綜合し平均し た結果,最も大きなEIRGが得られる深さとして 桿体外出端より160乃至170μなる値を得た。 2.スペクトル掃引実験 剥離網膜で視細胞側を上にして光刺激を与えた ;一 511 一揚合は色素層によってある波長が吸収される危険 があるので,今回は総て眼識標本を用いて網膜表 面より色刺激を与えた。標木の作製に当って網膜 の表面に血液が附着せぬように注意した。今回の 実験では特に外部極を必要としなかったが内部極 を保護する意味でペンシル型微小電極を使用し た。最:初に内外両極の先端を揃えて電極を下げて 行き,先端が網膜の.表面についた所で今度は内部 極のみを網膜内に刺入し,’光刺激により最:も大き なEIRGの記録される位置に電極を固定,この状 態でスペクトル掃引を行った。一回の掃引に要し た.時間は約6秒程である。鮒のEIRGは洗に述べ ・たように光を照射している間略々一定の電位レベ ルに保たれており,前の光刺激がその後の光刺激 に対するEIRG}とほとんど影響しない12)と見徹し 得るから,一回のスペクトル掃引によって得られ た反応曲線の各波長に対する反応の大きさは,反 応の時間的な僅かの遅れを除きその時々の波長の みによる刺激で得られた反応の大きさを示すもの と見倣しても:支障ないと思われる。 第9図より第11図までは同一標本のいろいろな 部位に電極を刺入しスペクトル掃引を行って得ら れたスペクトル反応曲線のうち代表的な9例を示 すものである。各誌の左側(B→R)は青端より赤 端へ掃引した場合で,その右側(R→B)は同じ電 極の位置で逆掃引(赤端より青白)した揚合を示 し,a, b, cはそれぞれ一対の反応を表わしたも のである。.左右の反応像を比較してみると略々対 象形を示していることがわかる。 第9図は最:も多く見られる負方向の単純な単相
R一一一一一一一一)B
第9図スペクb・レ反応曲線3型(其の1)左側(B−R)は青端より赤端へ・右党囁(R−B)は赤端より青端へ掃 引して得られてこ記録を示す。以下第10図,第11図も同様。中央の記録は長波長端で単色光刺激を与えた場合 を示す(本文参照) 性の反応曲線を示し,図の中央に示す如く赤端に おける単波長刺激によって明らかに負方向(高分 極)の反応を示しているρaの左側では青端より 13番目のpip(650mμ)に最:大の山が見られる。 b,cではaと幾らか異った位置に曲線の峰が見ら れたが,cでは曲線の赤色側斜面に別の小峰の存 在を思わしめるhumpが認められる。 第10図は第9図と同じ負方向,単相性のもので あるが波形がやや複雑で,左側(B→R)を見ると aでは青端より12番目のpipの所(620mμ)に反応 の最大の山がありジ6番目(460mμ)に別の僅かな 高まりがみちれているが,bでは13∼14番目(650 ∼680mμ)に最大の山が移動し,別の小峰:も7番目 (485mμ)の位置にやや明らかに現われている。 c においてはこの副峰は8∼9番目(510∼540mμ)の 位置にあり,.ほとんど最:大〔D山(14番目一680正hμ) 一一 512 一B−R
R一一一一一一)B,
第10図 スペクDレ反応曲線3型(其の2)bの下の記録はbの右側の記録を反転したものを示す。時聞は0.5 十5秒で第9図,第11図にも共通(些事参照) と同じ程度の大きさに現われている。以上3型は 一連の反応型と思われるものであるが,⊥述の如 く主峰も副峰も常に一定の波長の所に出るとは限 らない。th b下の曲線は赤端より青端に掃引して 得られた反応曲線(:有側)をJ文転して焼付け,左側B一一一一一一一一)R
の曲線下に重ねてみたもので,両者を比較してみ るると反応のおくれによる僅かなずれが認められ るが,両曲線の類似は充分認められる。第9及び 第10図に示したものは、Svaetic垣nのし型,本川 等のN型と1司一一のも0)と考えられる。 R一一一一一一一一一一一一一一i)B 第11図 スベクDレ反応曲線3型(其の3)中央の記録は長波長端で単色光刺激を与えた場合を示す(本文参照) 一 .5/8 一一第11図aは稀に得られる3相性の反応型,叉
b,Cはaよりも幾らか高い頻度で得られる2相性 の反応型で,b, cにおいては青側では負方向(高 分極),赤側では正方向(脱分極)への振れを示し たものである。(但し同仁aでは赤端で再び僅か な高分極を示すものの如くであ.る)図。の中央は 赤端の単波長刺激を与えて得られた反応で明らか に正方向の反応を示している。これらはSvaet.i− chinのY−B型,本川等のA型と同一のものと思 われる。a, bでは山あるいは谷が略々同じ波長の 所に見られるが,cは可成り異った位置にpgak を有している。SvaetichinのR−G型に相当する もの即ち緑色で正方向(脱分極)を示す例はL例も 検出しなかった。 スペクトル掃引によって得られた多くの反応曲 線はすべて上述の9例に必ずしもあてはまるもの ではなく,その中歯型ないし移行型と思われるも のが数多く見られた。これらの曲線は光のスペク トルのエネルギーが一一様でない状態で得られたも のであるために,これを次のように処理して等エ ネルギーによる反応曲線を求めてみた。 先づ第1に,得られた反応曲線がいくらかの反 応のおくれをもったために,これを前述の第10図 bの如く一一・一・方向の記録を反転し他方の記録:と重ね 合せて両者の中点を結んで往復掃引による平均曲 線を描き,これを基準反応曲線とする。 第2に光強度と反応の大きさとの関係を知るた めに,Kodakのneutral density filterを使用し て光強度を変えてEIRGの大きさを検した。その 結果はSvaetichinの得た関係19)とほぼ同一で, 縦軸に反応の大きさをとり,横軸に光強度の平方 根をとってPlotしてみると,本実験に用いた光 の強度の範囲では略述直線関係が得られたので, EIRGの大きさAは光強度1の平方根に比例する, 即ちA=k》1の関係が成立するものと見徹した。 第3に各波長のエネルギー分布飽Planckの黒 体輻射の理論式25)から求めた。即ち E(x.T.)=2Z tgg2h.t.h Cerg.sec−i.cm−3) ekXT−1 c=光の速度=3又1010cm・sec一・ h:プランクの常数=6.626×10−27erg・sec k:ボルツマンの常tW==1.3709×10−16erg・deg−1 において絶対温度=25000Kとして求めた。水野15) が詳述している如く,.タングステン電球は完全黒 体とは考えられないが一応上記の式にあてはめて も大過ないと思われる。.叉この計算に当り光学系 の光の反射。吸収は無視した。 かくして⊥述の基準反応曲線から計算によって 最大の振巾を100%としてスペクトル反応曲線を 画き,第12図以下第14図を得た。第12図は9図に, 第13図は10図に,又第14図は11図にそれぞれ対応 したものである。これらを見ると完全に単純な単 三性ではなく三三の存在を思わしめるような小さ なhumpが認められる。そして第13図b, cではこ のhumpが大きくて明らかな2峰性を示している, 第14図a,b, cは本川等のA型とpeakは異なる がほとんど同型のものであると見倣される。短波 長部では光のエネルギーが少いために確実なこと はいえないが,各波長につきhumpの波長を求 めこれを列拳してみると,455,460,465,470, 485,. 550, 585, 590, 600, 62,.・O, 655, 665, 680 及び690mμで,本川等のいう470,550,600及び 650mμに該当するものもあるがその成績は非常にa
b
,誌 so ・ oo co 20 400 1詣 ’ se oo 如 20 500 600 Too 侮μ 400 ,誌 500 600 70e m一c
so 60 40 20 一 L一一一一.“LL ’ptnTrr一”T 400 wo ・60E) Too 吻 第12図等エネルギーによるスペクトル反応曲線3型 (其の1)a,b, cはそれぞれ第9図のa, b, cに対応 する。第12図以下第14図まで上が負,下が正である (:本女参照) 一 514 一a
b
1論 so 6D op 20a
品 400 1詣 soo 600 TCX)携μc
so oo }o co co 如 20400 soo 600 一’一
奄U6Mi.」 、為 rTr−i−7−r’ :i/一r−TT’f=i=P7trT’ttnf−iT−rMt’rrtirr.r’i”−’tr”v“T.t”一= 20 ▼一門一「[一TTt「一s−VTT「「一r]一TT−T’TL・一t−r「「b
,。1 1話 eo co co ao oo co 20 噸 500 600 700 呼 第13図等エネルギーによるスペクトル反応曲線3型 (其の2)a.b, cはそれぞれ第10図のa, b, cに対応する まちまちで,一概にpeakの波長を決定すること は困難であった。 4.考 察 1.既に冨田等55)が蛙網膜のERGの発生部位 を決定するための実験において指摘している如 く,網膜内に微小電極を刺入して電極の進み即ち マイクロメーーター一の読みから網膜内の部位を判定 するには,いくつかの障碍を考慮した上でなけれ ば大きな誤りを招く恐れがある。この誤差の原因 の第一に考えられるものは網膜組織の機械的抵抗 と粘着性並びに電極の携みによるものである。吾 々は網膜内のどの部位に機械的な抵抗が存在する .かを正確に知り.得ないが,電極刺入時の実体顕復 鏡下の所見から内境界膜が最も大きな抵抗を示す ことは確かである。この他に視細胞側にもかなり の抵抗を示す部位が存在し,恐らくそれは外境界 膜と想像される。例えば第5図に見られる如く, 内部極がaの深さ(桿体外節端より205μ)に達す るまでは何等のEIRGも記録し得なかったものが 一旦aの深きに達した後ではそれより1ステップ 20 soo 一t一一一T’s−TTTT’snytrT一 N 600 700 m野 。 400 / Soo 20 的 co 80 eco 1話 oo co co 2e 600 Too m劉 LwhLrJ”au#.’.s..“ ゴ 一rU,7’ 冒「〒「一P .∫一.LL”_ローA−A−J_LJ 7G.ノ m“ま ノ \紀ノ
第14図等工皐ルギ・・によるスベクDレ反応曲線3型 (其の3)a,b, cはそれぞれ第11図のa, b, cに対応する (35μ)だけ電極を抜いてもaにおける記録よりも 却って大きなEIRGが得られている。このことは 内部極が網膜内のある深さ(恐らく外境界膜)に 達した時,その抵抗のためにしばらくは更に先に 進むことができず,電極を進めてもその部の組織 を圧迫しているだけで,更に電極を進めて始めて この抵抗の部位を貫通して一気に網膜内のある深 さまで刺入されると考えるべきであろう。従って 電極の網膜内における深さの判定には電極を繰返 し網膜内を上下させた時にEIRGの最も大きく記 録し得るマイクロメーターの読みからその平均値 一 515 一求めることが必要である。このようにして求めた EIRGの最も大きく得られる深さは視細胞側(桿 体らの外節端)から160∼170μであった。硝子体 側か平均値が80∼90μであることは既に述べた。 第2に問題になる点は上述の如くして得られた深 さを網膜の組織構造と比較対応せしめることにあ る。それには網膜全体の厚さのみならず各層の占 める厚さまでも正確に知らねばならない。今回の 実験に供した鮒の網膜より凍結標本を作りその全 層の厚きを測定した結果250μなる値が得られた。 第15図は網膜を10%フォルマリンで固定した後に 。
50
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25(据 第15図今回の実験に供した鮒網膜の組織豫。10%フォ ルマリンで固定,ゼラチンに包埋し凍結切片とし,ヘ マ}キシリンで単染色したもの。矢印は最も大きな EIRGの記録される部位を示す ゼラチンに包埋し,それより凍結標本を作成しヘ マトキシリンで単染色したものである。この方法 は包埋により組織の離脱を防ぐ一方,単純な凍結 標本に次いで組織を収縮せしめることの少ない最 良の方法とされている。この組織像より視細胞層 (桿体外節端より外穎粒層の中枢位基底部まで)は 約140μで蛙の視細胞層よりはるかに大きな部分 を占めている。これに対してEIRGの最も大きく 得られる深さは視細胞側より160∼170μで組織像 との対応を示すと第15図の矢印の位置に相当し, 明らかにcone myoidの存在する深さ(視細胞側 より90μ)をはるかに越え,EIRGの発生部位は 錐体よりも更に中枢部に存在することを示してい る。 2.次に記録されるEIRGが細胞内からか,細 胞外からかという点が問題となる。本川等15旧び 御手洗等12)によれば,ある深さに電極の先端が到 達した時光刺激により数mVの陽性活動電位が認 められ,その位置がら電極をわっかに進めると 20血V以上の陰性の電位飛躍即ち静止電位がみら れ,この位置で光刺激を与えると更に20一・30rriv に達する陰性の活動電位が誘導されるという。即 ち電位飛躍のあること,及びこの電位飛躍の前後 で活動電位の極性が反転することからこれを細胞 内より誘導したものであると解釈している。一方 著者の経験からするも,電極を刺入した部位にお いて電極を反復上下して刺入を繰返えしているう ちに静止電位及び活動電位が徐々に減弱して行 くが,刺入部位を僅かに変えると又再び大きな静 止電位と活動電位とが得られることから,その電 位のoriginとしてある限局したunitを考えれば 理解は容易である。そのunitは細胞と考えるこ とが最も妥当であろうが,次のような点が樹問題 として残る。即ち電極を網膜の一定部位に反復刺 入を繰返した場合時聞的減弱はあるにしてもほと んど同一の深さで,定型的なEIRGが得られる。 このことは1個の細胞内からの誘導としては理解 し難いところである。例えば第6図に見られる如 く,内部極は既にEIRGの記録される深さ(a, b) を突きぬけてしまった時に外部極からは定型的な EIRG(d)が誘導されている。かかる関係は第8 図Cにも見られる。又内外両極の先端が50μも離 れていても両極より同時に定型的なEIRG(第7図 a,b,第8図b, c)が記録され,且つ30μ差では 両極より誘導されるEIRGの記録がほとんど重っ て区別し得ないという事実は,EIRGがあるいは 細胞外から誘導されたものかも知れないとの可能 性を一応は疑わしめるものである。あらかじめセ ットした内外両極間の距離が網膜内にある時も不 変に保たれているかどうかという点については, 内部極を銀板上におしつけて検した結果から,お されて外部極内におしこめられることは殆んどな いと見てよく,従ってこの点は考慮から除外し得 る。新鮮な網膜を用いれば電極を刺入する度毎に 殆んど例外なく定型的なEIRGが記録し得ること からも,どの部位を刺しても常に電極が細胞内に 入ると考えるよりは細胞外より誘導されていると 考えた:方が妥当なように思われる。少くとも直径 僅か8μ程度の錐休内をかかる電位のoriginと考 えることは甚だ困難である。さきに飯田等11)は鯉 及び鮒の網膜内に刺入した10μ前後の微小電極に より同一一・ZZ位で2分間もの間EIRGを記録し得ら れることを報告しているが,このように太い電極 で相当長い期間EIRGが記録されるということ も;それが錐体内から誘導きれたものではないと 一 51B 一いう戦えを裏書きするものと思われる。 3・一方EIR(}を示標としてスペクトル掃引装 置によりスペクトル反応曲線を記録し,それが単 純な単峰性の曲線ではなく一つの主峰といくつか の副峰が見られる複雑.な波形であることが観察さ れた。これらの反応曲線のうち本川等15の示すN 型及びA型(Svaetichin20’のし型及びY−B型)に 相当すると愚われる波形は得られたが,Svaetic・ hinの示すR−G型は全く記録されながった。、本川 14)はスペクトル反応曲線の主峰及び副峰の波長よ り,それぞれの波長に最:大感度を有する錐体視物 質4種類が一・つの錐体内に含まれていると推論し たが,他方SvaetichinはL型はsingle coneに, R−G型及びY−B型はtwin coneに由来するも のと老えているので両者の見解には碕大きな開き がある。著者の実験で得られた一連の反応曲線を 見ると,主峰及び面面の位置は記録する網膜部位 により甚だ区々で,これを波長別に分類すること は殆んど不可能と思われた。このことから各曲線 の主峰及び副峰が直ちにある視物質と対応すると は考え難い。恐らく得られた個々のスペクトル反 応曲線は或る幾つかの定まった波長に山を有する 単純な反応曲線の2つ以上の和であり,各々の反 応曲線の大きさの相対的な割合の変化と共に,合 成される反応曲線の主峰及び田鼠の位置は異って くるものと考えるべきであろう。又このように一 つのスペクトル反応曲線に多くの峰のみられるこ とについては,各錐体が幾種類かの視物質を異つ・ た割合で含むと考えるよりも,単一の視物質を含 む錐体がより中枢側の神経細胞にconvergeし て,・そこで複雑な波形が得られると考えた方が妥 当のように思われる。 最:近の冨田等の研究(未発表)によれば,電極の 刺入部位に直径約100μの限局照射を行ったので はEIRGはほとんど記録し得ず,照射面積をある 程度拡大すればそれに従ってEIRGの大きさを増 してくるという。もしもEIRGが錐体に発するも のであれば,照度さえ不変であれば限局照射によ っても全面照射におけると同じ大きさのEIRGが 記録されるべきであり,このことからもEIRGが 錐体に由来すると考えることは困難である。 4.以上の老涙よりEIRGが錐体に由来しない ことは確実とみてよく,その発生部位は視細胞よ り更に中枢位にあると考えられる。それが細胞内 からの誘導であるか,細胞外から.のものであるか は目下の所断定し得ないが,もしも細胞内から誘 導されるものであるならばその細胞は錐体に比べ てはるかに大型のものでなければならない。これ 以上の推論は今後のより精密な組織構造の検索に 侯たねばならないと思われる。’尚Svaetichinの R−G型の反応が鮒にも存在するか否かに関して は,今回の実験に短波長部の光のエネルギrt一が弱 い装置を使用したために確定的な判断は下し得な かった。この点についても今後の研究が期待され る。 5.結 語 1・ペンシル型微小電極(内部極は0.5μ以下で 3MKCI溶液を,外部極はリンゲル液を満したガ ラス管ピペット)を鮒てCyPrinbls auratUS)の網 膜内に刺入して網膜内活動電位(EIRG)‘を記録し た。 “ 2.EIRGの波形及びその振巾はSvaetichinの いわゆるcone action・potentia1と同じであった。 EIRGの最も大きく記録される深さは,硝子体側 (網膜内側表面)より80∼90μ,視細胞側(桿体外 節端)より160∼17Gμであった。 3.網膜内の同一部位で反復電極を刺入あるい は抜去した際,時聞的な反応の減弱は認められた が,ほぼ同「の深さにおいて毎回定型的なEIRG 力塔己録された0 4.ペンシル型微小電極の内外両極の先端距離 を50μに固定して網膜内に刺入すると,ある深さ で両極より同時にEIRGが記録された6又内外両 極の差を30μあるいはそれ以下にした場合には, 両極より常に殆んど等しいEIRGが誘導された。 5.EIRGを示標として特殊スペクトル掃引装 置によりスペクトル反応曲線を記録し,そのうち の定型的と思われる波形9例を示した。その主峰 及び副峰のスペクトル上の位置は必ずしも一定せ ず,それらを波長別に分類することは不可能と思 われた。樹スペクトル反応曲線の考察からEIRG の錐体に由来すると老えることの困難性を論じ た。 6.以上の結果よりEIRGは錐体に由来するも のではなく,その主な発生部位は視細胞層より更 に中枢部位にあることを結論した。又このEIRG の誘導が細胞内か細胞外かにつき老察したが,そ の結論は保留した。 一 517 一
欄筆に当り御懇篤なる御指導と御校閲.を賜った冨田 教授,組織標本作製に当り多大の御尽力を戴いた病理 学教室今井教授並びに鮒を提供して下さった木村国男 氏に深甚の謝意を表す。
.文 献
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