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河川上流域に生息するオオナガレトビケラの生態・生息場所の解明および生息場所の環境評価 - 河川上流域の保全をめざして -

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Academic year: 2021

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Title 河川上流域に生息するオオナガレトビケラの生態・生息場所の解明および生息場所の環境評価 - 河川上流域の保全を めざして -( 内容の要旨 ) Author(s) 鶴石, 達 Report No.(Doctoral Degree) 博士(農学) 甲第320号 Issue Date 2004-03-15 Type 博士論文 Version URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/2661 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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氏 名(本(国)籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 研究科及び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 員 会 論 文 鶴 石 達 (長野県) 博士(農学) 農博甲第320号 平成16年3月15日 学位規則第4条第1項該当 連合農学研究科 生物環境科学専攻 信州大学 河川上流域に生息するオオナガレトビケラの生態・ 生息場所の解明および生息場所の環境評価 一河川上流域の保全をめざして-主査 信州大学 教 授 吉 副査 信州大学 教 授 中 副査 岐阜大学 助教授 土 田 村 田 副査 静岡大学 教 授 廿日出 男 志 治 美 利 寛 浩 正 の 内 容 の 要 1.本論文の研究目的 本論文は,河川上流域に生息するオオナガレトビケラの生態および生息場所を解明し, 本種および河川上流環境の保全に有効な環境評価手法を開発することを目的としたもの■で ある・本来,河川上流域の河川形態は小規模な滝と淵が連続する構造を示すが,砂防ダム などの建設により河床勾配が緩くなり,早瀬が単調に連続する河川形態が随所に認められ るようになってきた・このような物理的な河川形態の変化は生息場所の変化を通じて生物 に影響すると考えられている・特に,河川上流域では,上述のように滝環境の減少が静め られるため,・本論文では微生息場所が河川上流域の滝環境に限定され,かつ環境省による レッドリスト全国版に上がっており,種の保全上も生態や生息場所に関する知見が必要と されているオオナガレトビケラを対象とした.これまで,このオオナガレトビケラ属の生 態に関する知見は,国内はもとより世界でも待られていない.本論文はオオナガレトビケ ラの生態について,生活史,食性,水温と発育速度,越冬蟻の琴青春点および有効積算温 量,秋の終齢幼虫と蛸の発育休止への日長と水温低下の影響,幼虫の呼吸量に及ぼす流速 と温度の彪響に関する6つの研究を収めており,さらに,保全学的研究として,微生息場 所の環境条件,幼虫と蟻の石表面の付着位置,環境量と生息量の対応関係に関する3つの 研究を収めている.

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-48-研究の手法は大きく野外での調査と,室内での飼育実験に分けられる.まず,野外調 査では,生活史を解明するため,毎月1回以上の定期採集が長野県内4河川(小黒川・大 泉川・滝の湯川・柳川)で1997年から2002年まで行なわれ,発育段階の季飾変化から生 活史が推定された・また,生息場所に関する調査として,流速,水深,石の大きさや状態, 瀬間距離などといった物理的な河川環境要因の計測が行なわれ,本種の生息密度との対応 関係が解析された・一方,室内実験としては,自ら考案・作成した飼育水槽を用いて,温度 や日長条件が本種の成長・発育にどの様に影響するのかを明らかにし,さらに,幼虫の呼 吸量や食性も明らかにした. 以上の調査および実験の結異,次のような結呆と結論を得た. 1・本種は分布域下限付近では春から秋まで長く羽化する複雑な1年1化,より上流では 真に羽化する明瞭な1年1化の生活史を持ち,発育零点は1℃から2℃であることが明 らかにされた. 2・野外において,秋に5齢幼虫および蛸は発育零点よりも明らかに水温が高いうちから 発育を休止し,嘩冬して翌春に発育することが明らかになった.これらの現象を示唆 する結呆として,中日条件下で飼育した場合,長日条件で飼育した場合に比べ5齢幼虫 期間が有意に長くなることが確かめられた.これらのことから,本種の発育零点は 1・6℃と低く,水温のみに発育が制御された場合,終齢幼虫および蛸は冬直前まで発育 してしまい,羽化した成虫は氷点下の外気にさらされる危険が高いことが指摘され, その危険を回避するため,秋の中計によって発育を休止するものと考えられた. 3・本種の幼虫はプユ科の幼虫を主な餌とし,そのほか,瀬や小滝のような流速の早い場 所に生息している多くの水生昆虫を挿食していることが明らかとなった. 4・本種終齢幼虫の酸素要求量は他の水生昆虫に比べ多いことが明らかとなったが,それ にも関わらず,酸素欠乏や流速低下に対する行動的補償機構が発達していないことか ら,高水温や流速の低下が本種の生息量や分布に大きな影響を及ぼすと考えられた. 5・オオナガレトビケラは河川内の滝的環境に強く依存して生息し,物理的な生息場所の 質や量は,生息量を制限する要因のひとつであることが明らかとなった.特に滝や瀬 の流速の低下は本種の生息量を減少させることから,本種の生息場所を保全するため には,河床勾配の低下や流量の減少を防ぐ必要があると結論付けられた. 6・瀬の流速を基に算出した教生息場環境の評価値および物理環境要素を変数とした潜在 生息歯度の予測モデルは,実際の本種の隼息密度と有意な正の相関関係を示し,これ らが本種の生息場所や河川環境の評価指標として有効であることが示された. 7・.石面上での付着位置をみると,本種は石の腹面や側面に多く生息しており,たとえ流 速▲が本種にとって好適であったとしても,河床のはまり石化,凹凸のないコンクリー トや練り石工法による床固めなどは,本掛ことって石面における教生息空間の消失を 埠く可能性が指摘された. 8・本種の微生息場所には多くの他の水生昆虫も生息しており,大型肉食種であるオオナ ギレトビケラの微生息場所を保全することにより,多くの同じ生息場所を利用する水

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生昆虫も保全されることが示唆され,本種は河川上流生態系の指標種付mbre11a Speeies)として有効性であることが示された. 本研究により・世界的に今まで全く明らかにされていなかったオオナガレトビケラ属 の生態がはじめて詳細に明らかにされた・また,本種の微生息場所が明らかにされ,それ を指標とした河川環境の評価手法が示された・これらの知見はオオナガレトビケラの保全 および河川上流域の環境評価・保全に重要かつ有効な情報を提供し,それらに貢献するも のである. 審 査 結 果 の 平成16年1月27日,信州大学農学部において審査員全員出席のもとに公開審査発表 会が開かれ,約30分間にわたる口頭発表と,約30分間の質疑応答が行われた。 河川環境の悪化が進む昨今,生息する生物と河川環境との対応関係を明らかにするこ とは,最重要課題の一つである・特に,本研究の対象であるオオナガレトビケラは環境省 が発表したREDuSTで準絶滅危倶種にあげられており,種の保全上もその生理・生態・ 生息場所の情報が求められている.これまでヒマラヤ地域を中心に現在46種が報告されて いるオオナガレトビケラ属の生態情報は世界的に皆無であった.本研究は徹底した野外で のデータ収集と,綿密な計画の基に5年以上にわたり継続して精力的に行われた飼育実 験によって,初めてオオナガレトビケラ属に関する情報を提供し,しかも研究が特定の分野 に限定される昨今の候向のなかで,その内容は生理J生態・生息場所と多岐にわたり,か つそれぞれが詳細で科学性の高いものであることが評価できた. 内容としては以下の点が評価された. 1・採集されることすら稀であったオオナガレトビケラの基礎生態学的知見を提供している 点・特に,野外における生活史を明らかにし,その形成のメカニズムを,発育零点・有効積 算温量・日長の関与した発育休止を明らかにすることによって鋭明し,調査地ごとの事例 研究になりがちな生活史に関する研究を一般化した点. 2・発育速度および呼吸量と水温の関係を明らかにし,本種が低水温に適応していること, 水温上昇が本種の生息に負の影響を与える可能性を明らかにした点. 3・終齢幼虫の酸素要求量は他の水生昆虫に比べ多いことを明らかにし,それにも関わら ず,酸素欠乏や涜速低下に対する行動的補償機構が発達していないことから,高水温や 流速の低下が本種の生息量や分布に大きな影響を及ぼすことを明らかにした点. 4・石面上の付着位置を明らかにし,河床のはまり石化凹凸のないコンクリートや練り石 工法による床固めなどが本種にとって石面における微生息空間の消失を招く可能性を明 らかにした点. 5・生息量と生息場所の環境要素との対応関係を定量的に明らかにし,本種の生息場所 の保全に有効な情報を示した点. 6・本種を指標とした新たな定量的な河川環境評価手法を提案し,これらが本種の生息場 所や河川環境の評価指標として有効であることを解析した点. 7・他種の生息状況と本種の関係を示し,河川上帝生態系の指標種としての本種の有効 性が示されている点. 上記の知見により,世界的に今まで全く明らかにされていなかったオオナガレトビケラ 属の生態に関する知見が初めて提供され,保全上重要な環境要因が生理・生態学的知 見により示された・また,本種の微生息場所が明らかにされ,それを指標とした河川環境の 評価手法が示された・これらは国内で初めて水生昆虫と生阜場所の対応関係を明らかに したうえで,定量的に微生息場所評価を行なったもので,オオナガレトビケラの保全および

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-50-河川上流域の環境評価・保全に重要かつ有効な情報を提供し,それらに貢献するもので ある. これらの内容は以下の基礎となる学術論文3報および既発表論文2報に公表された.ま た,日本陸水学会,日本環境動物昆虫学会,応用生態工学会,東アジア水生昆虫シンポ ジウム,国際トビケラシンポジウムと国際学会を含むさまざまな分野にわたってそれぞれ発 表し,各国の研究者からも別刷り請求がある.なお,「オオナガレトビケラの微生息場所とし ての環境収容力と生息密度の関係」に関する研究は,応用生態工学研究会第6回大会 (2002年10月5-6日 東京)において高く評価され,ポスター賞(選考委貞会賞)が氏に授 与された. 以上について,審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合農学研究科の学 位論文として十分価値あるものと認めた. 【学位論文の基礎となる学術論文】 1)TsuruishiT(2003)Lif色CyC]eofgiantcarnivorou$Caddi$ny,HimaJop$yChe japoniGa(Monon)(Tnchoptera:RhyacophiIjdae)inthemountain$tream$Of Nagano,CentralJapan.Limno(Ogy4:11-18 2)鶴石達・吉田利男(2003i)オオナガレトビケラ(トビケラ目;ナガレトビケラ科)幼虫の呼 吸量に及ぼす流速と温度の影響.日本生態学会誌53:23-27 3)鶴石達・吉田利男(2002)中部地方の山岳河川におけるオオナガレトビケラの微生息場 所?環境条件.日本環境動物昆虫学会13(4):193-202 【既発表学術論文】 4)鶴石達・吉田利男(2003b)長野県中部の山地渓流におけるオオナガレトビケラ幼虫と 蛸の石表面の付着位置と幼虫の消化管内容物.日本環境動物昆虫学会14(2):113-118 5)鶴石達・中村寛志・吉田利男(2002)オオナガレトビケラHimalopsychej叩Onica (Mohon)の越冬蟻が翌春の羽化に要する発育零点および有効積算温量の推定.New Entomolo由t51(3-4):29-33

参照

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