研究成果の概要
副腎白質ジストロフィー(ALD)は進行性の脱髄と副腎機能障害を主徴とするⅩ染色体連鎖劣性
遺伝病で、学童期の男児が学習障害・性格変化・視力聴力障害などで発症し、知能低下・運動障害を
経て植物状態に至る予後不良の、しかも脱髄疾患としては最も高頻度(男児数万人に1名の割で発
症)の疾患である。本症の病因はⅩ染色体長腕末端付近に位置するALD遺伝子の異常であること、
また極長鎖脂肪酸活性化酵素の機能障害が二次的に生じていることが既に明らかにされているが、詳
細な発症メカニズムは明らかでなく、治療法や発症予防法も確立されたものはない。本研究では
ALDの病態を明らかにし、発症予防・遺伝子治療法を開発することを目的として研究を行った。
本報告書において、副腎自質ジストロフィーの概略と国内外の研究状況を述べ、平成10、11年
度の成果を報告する。
(1)副腎自質ジストロフィーの概略
疾患領域
遺伝形式
病因遺伝子
遺伝子変異
染色体座位
欠損蛋白質
代謝障害部位
臨床症状
予後
生化学所見
治療
出生前診断
鑑別診断
先天性ペルオキシソーム代謝異常症/脂肪酸代謝異常症
Ⅹ染色体連鎖劣性遺伝
ALD遺伝子(その他のmodifiergeneの存在も推測されている)
多様で遺伝子型と臨床病型に明らかな相関性はなく、同一家系・同一遺伝子異常
でも臨床病型が異なる場合もある
Ⅹq28
ALD蛋白
ペルオキシソーム脂肪酸β酸化系(極長鎖脂肪酸の蓄積)
(小児型)学童期に知能低下、視力低下、歩行障害で発症し、数年で死に至る
(思春期型)思春期発症、経過は小児型に類似
(成人大脳型)痴呆、精神症状をきたし寝たきりとなる
(AMN)成人発症し、歩行障害、直腸勝胱障害が緩徐に進行
(アジソン病)副腎不全のみが出現
(女性発症者)保因者の一部にAMN様症状をきたす
(無症状者)稀に生涯無症状の者もいる
小児型が最も予後不良で、急速に進行する
血中・組織中の飽和極長鎖脂肪酸(C26:0,C25:0,C24:0)が蓄積する
骨髄移植、ロレンゾ油(?)、Lovastatin(?)
可能
各種自質変性症、ペルオキシソーム病、亜急性硬化性全脳炎、脳腫瘍
心身症、精神病、アルツハイマー痛、アジソン病
(2)副腎自質ジストロフィーに関する国内外の研究状況
1923 副腎白質ジストロフィーの初報告(Siemerling)
1976 飽和極長鎖脂肪酸の蓄積(Igarashietal)
1984
ペルオキシソームβ酸化系の障害(Singhetal)
1986 極長鎖脂肪酸活性化酵素の異常(Hashmietal)
1989
エルカ酸(ロレンゾ油)による治療(Rizzoetal)
1990 骨髄移植療法の成功(Aubourgetal)
1993 ALD遺伝子のクローニング(Mosseretal)
1996 極長鎖脂肪酸活性化酵素遺伝子のクローニング(Uchiyamaetal)
1997 ALDモデルマウスの作出(Kobayashietal)
1998 Lovastatin療法(Singhetal)、4,phenylbutyrate療法(Kempetal)
2000
Lovastatinの国際共同治験(Moseretal)