Title
ヒト腎癌由来培養細胞株におけるP-glycoproteinの発現と抗
癌剤多剤耐性との関連性およびP-glycoprotein由来の多剤耐
性克服の検討( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
川本, 正吾
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第1121号
Issue Date
1997-05-21
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/15152
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
氏名 (本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 川 本 正 吾(岐阜県) 博 士(医学) 乙第 1121号 平成 9 年 5 月 21日
学位規則第4条第2項該当
ヒト腎痺由来培養細胞株におけるP-91ycoproteinの発現と抗癌剤多剤耐性との関連性およぴP-91ycoprotoin由来の多剤耐性克服の検討
(主査)教授 河 田 華 道 (副査)教授 森 秀 樹 教授 佐 治 重 豊 論 文 内 容 の 要 旨 腎細胞癌の制癌剤多剤耐性の機序として細胞膜糖蛋白質(P-glycoprotein:PGP)の過剰発現が指摘されてお り,PGPが薬剤排泄ポンプとして働くことが知られている。申請者は,腎細胞癌培養細胞株(ACHN)と当科 で樹立したPGP発現adriamycin高度耐性培養細胞株(ACHN/ADM)を用い,多剤耐性レベルとPGPの発現レ ベルとの関連性を検討した。さらに,これらの培養細胞株を用い,多剤耐性克服を目的としてPGP抑制薬剤の 併用効果を検討した。 研究方法 1)制癌剤感受性試験 ACHNおよびACHN/ADMの制癌剤感受性は細胞内ATP量を指標とするATP法で行ったo対象薬剤は adriamycin(ADM).5-fluorouracil(5-FU),mitomycin C(MMC)・etOpOSide(VP-16)・Cisplatin (CDDP),Vinblastinesulfate(VLB).7-ethyl-10-hyroxy-CamptOthecin(SN-38)の7薬剤とした0各制癌剤 と3日間持続接触させた後ATPreleasingagentを加え,bioluuminescence法でATP皇を測定し・制癌剤非添加 のコントロール細胞のATP量との比よりdose-reSpOnSeCurVeを求め,′50%抑制濃度(IC50)を算出し、た0 2)PGP発現量の検討 pGPのmRNAレベルの発現性はreversetranscriptase-pOlymerasechainreaction(RT-PCR)assayで検討 した。各培養細胞株からtotalRNAを抽出し,逆転写酵素反応で得られたcDNAのうちmRNAO・1FLgに相当す る量をPCRのtemplateとし,PGPに特異的なprimerを加えPCRに供した。こうして得られたPCRproductを電 気泳動し,PGPに特異的な327-bpのbandを確認したoPGPの蛋白レベルの発現量はWesternblottingとflow cytometryの2種の方法で解析したoWesternblottingには各培養細胞株から抽出した100pgから100×1/32FLg の蛋白を用い.PGPに特異的なC-219抗体とそれぞれ室温で1時間反応させ・PGPに特異的な170kDaのbandを確 認した。FlowcytometryによるPGPの解析にはPGPに特異的な2種の抗体(C-219抗体㌧JSB-1抗体)を用いた0 107個のsinglecellを含む各細胞浮遊液に,C-219またはJSB-1抗体を1・Opg/mlの濃度で加え30分間反応させた 後,FACScanflowcytometerを用い.530から560nmの蛍光域の蛍光量を測定しPGPの発現量とした0 3)細胞内ADM取り込み量の測定 対数増殖期の各培養細胞株の培養液に10FLg/mlの濃度となるようにADMを加え・37℃で30分臥1時間・2 時間接触させた。各時間経過後,FACScanflowcytometerを用い530から640nmの蛍光域で107個の細胞の蛍光 量を求め,得られた蛍光量のヒストグラムから細胞1個あたりの平均蛍光量を算出し細胞内ADM取り込み皇と した。 4)制癌剤感受性増強試験 ACHN/ADMにPGP抑制薬剤を併用し,ADMおよびVLBの2種の制癌剤に対する感受性増強試験を行ったo pGP抑制薬剤としてはverapamil.cycrospolinA(CYA)・medroxyprogesteroneacetate(MPA)の3剤を用 い,併用濃度はACHN/ADMの発育に影響を与えない最高濃度(verapami12・5FLg/ml・CYAO・5FLg/MPA l.Opg/ml)とした。ATP法にてPGP抑制薬剤併用時のADMおよびVLBのIC50を求め・併用しなかった時のそれぞれのIC50と比較した。さらに,PGP抑制薬剤を併用した時?ACHN/ADMの細胞内ADM取り込み量を
flow cytometryで解析し,ADM取り込み増強効果の有無を確認した0一107-研究結果 1)制癌剤感受性レベル ACHNおよびACHN/ADMの各種制癌剤に対する感受性の差を相対耐性度(耐性株のIC50/親株のIC50)で 示すと,ADM42.9,VLB28.3,VP-161l.3,CDDP3.78,MMCl.23.5-FUl.22,SN-382.29であった。 2)PGP発現レベル ACHNでは100pgまでのmRNAでPGPに特異的なbandが描出された。一方.ACHN/ADMではより低量 (10pg)のmRNAでも同bandが描出され.ACHN/ADMにおけるPGPのmRNAレベルでの発現増強が確認され た。Western blottingによるPGPの定量では.ACHNではPGPが検出されなかったのに対し.ACHN/ADMに
おいては100×l/8FLgまでの蛋白量でPGPに特異的なsingle bandが確認された。Flow cytometryによるPGP
の定量では,ACHN/ADMはACHNに対しC-219抗体とJSB-1抗体のいずれにも2倍の反応を示し.ACHN/ ADMにおける蛋白レベルでのPGP発現増強が確認された。 3)細胞内ADM取り込み皇・ 両培養細胞株でADM接触後に急速なADMの取り込みが認められ,120分ではぽプラトーに達した。しかし, AcHN/ADMの細胞内ADM取り込み畳(120分値)はACHNの1/2であった。 4)制癌剤感受性増強効果 ACHN/ADMにPGP抑制薬剤を併用した場合,ADM仁対する感受性の変化をIC50で比較するとverapamilで 15胤 CYAで4倍,MPAで24倍の感受性増強効果を認めた。同様にVLBに対する感受性もverapamilで33倍, CYAで15倍,MPAで36倍の感受性増強効果を認めた。また,PGP抑制薬剤の併用により細胞内ADM取り込み 量の増加も確認され,ACHN/ADMの細胞内ADM取り込み量(120分値)はコントロールに比べverapamilで 3.1倍.CYAで2.8倍,MPAで5.8倍に増加した。 結 論 内因性多剤耐性培養細胞株(ACHN)と獲得性高度ADM耐性培養細胞株(ACHN/ADM)との比較で,内 因性あるいは獲得性の多剤耐性レベルがPGPの発現皇に依存することが確認され,RT-PCRやflow cytometry によるPGPの定量解析は腎細胞癌の制癌剤耐性を評価するうえで有用な方法と考えられた。また,PGP抑制薬 剤の併用で獲得性の多剤耐性レベルが親株の感受性レベルまでリバースされたことから,制癌剤に抵抗性を示す 進行性腎癌の治療においてもPGP抑制薬剤は副作用の問題を克服すれば.臨床応用可能な薬剤になり得るもの と思われた。