Title
脊髄性筋萎縮症患者の運動機能を定量的に評価する新規指
標の開発( 内容と審査の要旨(Summary) )
Author(s)
松丸, 直樹
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医科学) 連創博甲第42号
Issue Date
2018-03-25
Type
博士論文
Version
ETD
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/75255
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。論文内容の要旨 緒言:本研究では、運動機能低下が主訴である神経筋疾患の一つ、脊髄性筋萎縮症(SMA)におい て、定量的に運動機能を評価する手法を確立することを目的として、三次元モーションキャプチャシ ステムで記録された運動データから算出する評価指標を考案し検証した。 方法:運動機能の評価指標として、繰り返し運動の精確さに着目した指標(SpDe)と、動きの滑らか さに着目した指標(DiVa)の2つを考案した。これらの指標の有用性について検証するため、健常成人 と神経筋疾患患者を対象とした2つの実験を実施した。対象とする運動タスクとしては、肩関節の屈曲 運動を10回繰り返す運動を設定した。健常成人を対象とした実験では、負荷がない状態での運動デー タとダンベル(8kg)を保持して運動タスクを実施した運動データとを比較した。また、神経筋疾患患 者を対象とした実験では、歩行不可能なSMA患者に対する甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンによる治 療の有効性評価に応用し、治療前と治療後での運動機能の変化を解析し評価した。さらに、新規指標 であるSpDe、DiVaの標準参考値を導出するため、複数の健常成人と健常小児を対象として、負荷のな い状態での肩関節屈曲運動の運動データを収集し解析した。 結果:健常成人(28歳)を対象とした実験では、負荷がある場合にはSpDeとDiVa両指標について値が 有意に上昇したことから、本指標を用いることで、重りによる運動機能の低下を、有意な差をもって 定量的に検出することができた。神経筋疾患患者(SMA患者、3歳)を対象とした実験では、治療前後 での運動機能を解析したところ、DiVaにおいて有意な運動機能の向上が検出され、主治医らによる臨 床的な観察から得られた所見と一致していた。健常者のSpDeとDiVaの標準参考値は、健常小児21名( 5〜13歳)と健常成人3名(21歳、23歳、24歳)の運動データを解析し、年齢に応じた運動機能の発達 過程をSpDeとDiVaの変化として定量的に示した。健常児とSMA患者とを比較するとSpDeとDiVa共 に明らかな差が見られ、これらの評価指標がSMA患者の運動機能低下を定量的に示すことが示唆され た。 結語:本研究において、歩行不可能なSMA 患者の運動機能を定量的に評価できる新たな指標を開発し 氏 名 ( 本 籍 ) 松丸 直樹(愛知県) 学 位 の 種 類 博 士 (医科学) 学 位 授 与 番 号 甲第 42 号 学 位 授 与 日 付 平成 30 年 3 月 25 日 専 攻 医療情報学専攻 学 位 論 文 題 目 脊髄性筋萎縮症患者の運動機能を定量的に評価する新規指標の開発
(Development of Quantitative Evaluation Method of Motor Functions for Spinal Muscular Atrophy)
学位論文審査委員 (主査)教 授 武 藤 吉 徳 (副査)教 授 上 田 浩
た。モーションキャプチャシステムを臨床現場で活用する際には、対象者に装着するマーカーの数が多 いことがしばしば問題となるが、本指標においては1 点で済むため、臨床現場における使い易さが大幅 に向上している。また、本手法はSMA に限らず様々な神経筋疾患や発達障害に応用が可能である。臨 床現場での使い易さと汎用性を高めることは、疾患や障害に関わらない統一的な運動機能のデータ蓄積 を促進し、より臨床的所見に即した新たな知見が導き出されることが期待できる。 論文審査結果の要旨 申請者は、厚労省指定難病である脊髄性筋萎縮症(SMA)の患者に適応が可能な定量的な運動機能評 価を確立することを目指し、3次元モーションキャプチャを用いた評価手法を発展させるとともに、よ り臨床応用に適した評価方法とするために、SpDe と DiVa という新規評価指標を開発し、健常成人と歩 行不可能なII 型 SMA 患者に適応してその有用性を実証した。 健常成人を対象として、おもりの保持による上肢の運動機能の変化を解析したところ、新規評価指標 を用いることで、定量的に評価可能であることが明らかとなった。次に、歩行不可能なII 型 SMA 患者 を対象として、開発した運動機能評価方法がSMA 患者に適応可能であること、また、4週間の TRH 療 法の前後での運動機能の変化を解析することで、医薬品の有効性判定に応用が可能であることを実証し た。 従来の方法であるスケール評価では検出できないような微細な変化であっても、新規評価指標を用い ることで、定量的に評価が可能であることが明らかとなり、新規評価指標を用いた運動解析は、臨床的判 断に即した評価指標あると考えられた。 本研究により、これまで十分な治療評価が行えなかったSMA 患者に対しても、新規指標を用いること で定量的な運動機能評価が可能であることが実証され、今後、SMA を含む、多くの神経難病の治療効果 や自然歴の解明に対して、新規指標であるSpDe と DiVa を用いた評価方法の有用性が示された。 したがって、申請者が開発した運動機能の評価指標および手法は、SMA を含む神経難病の治療法の 確立に大いに貢献すると期待できる。こうした観点から、申請者松丸直樹の論文は学術的価値が極めて 高く、博士学位論文に値するものと判定した。 最終試験結果の要旨 松丸氏の論文は、これまで行ってきた神経難病患者に適応が可能な3次元モーションキャプチャ を用いた定量的評価手法に関連する研究内容をまとめ、審査付き論文として公表済みの論文に基づ い た、完成された内容であることを確認した。 また、公聴会において、学位論文の内容に関する事項、すなわち、運動機能の微細な変化を定量 的に評価可能である方法であること、開発した運動機能評価方法がSMA患者に適応可能であること 、治療前後での運動機能の変化を解析することで、医薬品の有効性判定に応用が可能であること、 今後の研究の方向性などについての諮問を行った。 申請者からは十分な内容の回答が得られたので、博士(医科学)の学位に値するものと判断し、 最終試験に合格したと判定した。
論文リスト
1. Naoki Matsumaru, Ryo Hattori, Takashi Ichinomiya, Katsura Tsukamoto, Zenichiro Kato. New Quantitative Method for Evaluation of Motor Functions Applicable to Spinal Muscular Atrophy. Brain