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(1)

渉外離婚の連結規則について

著者名(日)

笠原 俊宏

雑誌名

東洋法学

49

1

ページ

57-85

発行年

2005-09-25

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00000580/

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渉外離婚の連結規則について

東洋法学

  目  次

五 結 証叩  日 総括的考察  口 離婚保護の理念  O 両性平等の原則 四 若干の考察  口 ベルギi国際私法典第五五条  e オランダ離婚抵触法第一条 三 当事者自治の導入  ロ ケーゲルの梯子の意義  6 フランス判例理論の生成と継受 二 段階的連結の規則 一 緒 言

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渉外離婚の連結規則について 緒 言  渉外離婚の準拠法の決定について、諸国のかつての立法、判例、学説を見れば、例えば、法廷地法主義、住所 地法主義、夫の本国法主義、夫婦の本国法の累積的適用主義、夫婦の本国法の配分的適用主義、原告の本国法主       ︵−︶ 義、婚姻住所地法主義、婚姻挙行地法主義、離婚原因発生地法主義等、極めて多岐に亘っていた。しかし、一九 六〇年代以後、いわゆる﹁国際私法の危機﹂を回避するために整備された大陸法諸国の国際私法立法上の離婚の 連結規則について見れば、採用されている連結基準、及び、それらの間の序列等に若干の相違はあるとしても、 基本的には段階的連結の規則がほぼ共通して採用されていることが看取される。わが国の国際私法においても、 離婚に関する法例第一六条は、平成元年の法例改正により、従前の規則である離婚原因発生当時の夫の本国法主 義を放棄し、現在、夫婦の同一本国法、その同一常居所地法、その密接関連法の段階的連結の規則を採用するに 至っている。  改正法例第一六条本文が同一法主義を軸とする本国法及び常居所地法、そして、密接関連法の段階的連結の規 則を採用するに至った理由が、今日、普遍的な理念として確立している両性平等の原則に則ったものであり、そ        ︵2︶ して、何よりも、その理念を最重視していることにあることは明らかである。また、同時に、近時における諸国 の国際私法を通観することによって知られることは、離婚に関する有責主義の衰退と破綻主義の優勢という傾向 の中にあって、国際私法の次元における離婚保護︵鐙<9&<9践︶もかなり早い時期から顧慮されるべき主要な

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      ︵3︶ 理念となっているということである。そのような大勢の中にあって、段階的連結の規則に実質的判断を絡ませて いない法例第一六条本文において、後者の観点が欠落していると見られることは指摘されるまでもないであろう。 そこで、この小稿においては、諸国の近時の国際私法立法を傭職し、とくに欧州のいくつかの国々の注目される べき立法を中心として検討することにより、渉外離婚の連結規則上に両性平等とともに離婚保護が確保されるこ とができる多様な方法を探究することとし、そして、その上で、いかなる方法が最良の規則として採用されるべ        ︵4︶ きであるか、若干の検討を試みることとしたい。

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︵1︶ ︵2︶ ︵3︶ ︵4︶  溜池良夫﹁国際私法上における離婚﹂同﹃国際家族法研究﹄︵有斐閣、一九八五年︶所収、八六頁以下、及び、折 茂豊﹃国際私法︵各論︶︹新版︺﹄︵有斐閣、一九七二年︶二八五頁以下参照。  南敏文﹃改正法例の解説﹄︵法曹会、一九九二年︶九一頁以下、さらに、溜池良夫﹁国際私法と両性平等﹂溜池・ 前掲書所収、三頁以下参照。  評巳頃色糞陣3ZΦ浮きρZΦ器譲畠Φ冒Φ震o冨一ω昌窪耳Φ旨彗9巴①旨b﹃一奉霞①魯応一肉&勢N§零ミ鴬 蕊\§Gり隷§箋鴇ミGつミ§駄軌ミ鳴§“融§ミ8、蕊ミ騨§ミ一零どψお一律の邦訳として、パウル・ハインリッヒ・ノイハウ ス︵桑田三郎訳︶﹁ヨーロッパ国際私法上新たな道は存在するか﹂法学新報八一巻九号一四四頁参照。  本稿と同様に比較立法的な観点から行なわれた精緻な研究としては、すでに、横山潤﹃国際家族法の研究﹄︵有斐 閣、一九九七年︶一頁以下、とくに八頁以下及び一二六頁以下がある。従って、本稿は、それ以後における諸国国際 私法立法の新たな展開を踏まえて試みられた研究ということになる。 59

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渉外離婚の連結規則について 二 段階的連結の規則  の フランス判例理論の生成と継受  シュトルム︵コ幹霞日︶教授によっても端的に指摘されているが、ヨーロッパ国際家族法の今日的動向の主要 な特徴の一つとして挙げられるのが、階段への傾注︵田器簿N<9い色8旨︶、すなわち、段階的連結の規則の支          ︵−︶ 持の益々の拡大である。婚姻準拠法の決定のための規則として、そして、多くの場合、それを準用する離婚準拠 法の決定のための規則として、今日、極めて多くの国々の立法において採用されているのがいわゆるケーゲルの 梯子︵国β巴零冨■簿R︶と呼ばれる段階的連結の規則であるが、そのような連結方法の由来を辿れば、一連の       ︵2︶ フランス破棄院判決に到達することになるということは、これまでもしばしば指摘されていることである。すな わち、一九五三年四月一七日のリヴィエール︵困証曾Φ︶判決、一九五五年三月一五日のルヴァンドウスキー ︵げΦ名き3名ωζ︶判決、一九六一年五月一五日のタルヴィド︵↓鋤同名一α︶判決によって順次に判示され、そして、 形成された規則がその原型であるが、それらの判決により、共通本国法、共通住所地法、法廷地法の段階的連結        ︵3︶ の規則が確立されたと見られている。  右のフランス判例理論の骨子は、共通法を軸として、本国法及び住所地法を段階的に連結しようとする規則で あるが、それとともに、最終的には、密接関連法に依ることなく、法廷地法に依るという点にその規則の特徴が ある。一見、国家主義的な立場に依拠していると見られる法廷地法主義が、必ずしもそうではなく、むしろ、そ

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れに固有な利益に裏打ちされた場合もあることは、いくつかの近時の立法例によっても、さらに、次に言及され るスペイン国際私法の例によっても明らかであろう。ここにおいて、まず始めに探究されようとしているのは、 そのような法廷地法主義の現代的意義についてである。  従来、スペイン国際私法は、離婚準拠法に関する限り、フランス判例理論の立場をほぼ忠実に継受した立法の 一例として挙げられることができるものであった。すなわち、﹁民法典中の婚姻に関する規定を改正し、婚姻の無 効、別居及び離婚の事件において遵守されなければならない手続を定めるための法律﹂︵一九八一年七月七日法律        ︵4︶ 第三〇号︶第一〇七条がそれである。同条の内容は次の通りである。すなわち、  ﹁一九八一年スペイン民法典第一〇七条   別居及び離婚は、請求提出の当時の夫婦の共通本国法によって規律される。共通国籍がないときは、夫婦の  常居所地の法により、夫婦がその常居所を異なる国に有するときは、スペイン裁判所が管轄権を有する限り、  スペイン法による。︵後段省略︶﹂ とするのがその規定であるが、これは夫婦の共通本国法、その共通常居所地法、法廷地法の段階的連結の規則で あり、住所地法が常居所地法にとって代わられてはいるが、基本的に、前出リヴィエール判決の立場と一致する。 因みに、スペイン国際私法上、離婚準拠法に関する規定は、同国民法典における婚姻不解消主義を反映して、右        ︵5︶ 第一〇七条の制定以前においては存在していない。同条の制定に際し、準拠外国法が離婚による婚姻の解消を認 めない場合にも、離婚保護の観点から、スペイン人がその本国法に従って離婚を得るという利益を保護する特別 61

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渉外離婚の連結規則について 公序条項として、﹁夫婦の一方がスペイン人であり、かつ、スペインにその常居所を有するときは、スペイン法が 適用される。﹂という規定が同条に付加されるべきとする修正案が草案の審議の段階において提出されたが、一九       ︵6︶ 八一年法においては、それは採択されていない。しかし、右第一〇七条は、﹁外国人の国内安全、家庭内暴力及び 社会的統合における一定の措置に関する機関法﹂︵二〇〇三年九月二九日法律第一一号︶第三条により、次のよう        ︵7︶ に改正されるに至っている。すなわち、  ﹁二〇〇三年スペイン民法典第一〇七条   一 婚姻無効及びその効果は、婚姻締結の準拠法に服する。   二 別居及び離婚は、請求開始の当時の夫婦の共通本国法に服する。共通本国法がないときは、請求開始の    当時の夫婦の常居所地法に服する。請求開始の当時おいてその常居所がないときは、夫婦の一方が、夫婦    の双方が最後にそれらの者の共通常居所を有した地が帰属する国家にその者の常居所を有する限り、その    国家の法が適用される。     いずれの場合にも、夫婦の一方がスペイン人であるか、又は、スペインにその者の常居所を有するとき    であって、かつ、次に掲げるときは、スペイン法が適用される。    @ 前記のいずれの法も適用されないとき    ㈲ スペイン裁判所に提起された請求において、別居又は離婚が、夫婦の双方によるか、又は、夫婦の一     方により、他方の同意をもって要求されるとき

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   @ 第二項︵第一段︶の規定に掲げられた法が、別居又は離婚を知らないか、又は、差別する方法によっ     てか、若しくは、公序に反してそれを認めるとき﹂ と定めるのがその新たな規定の内容である。一九八一年法との比較において、この新法が特徴付けられる点は、 何よりも、スペイン法が適用されるべき場合の拡大が図られている点であろう。そして、同法の適用の目的が、 専制離婚ないし一方的離婚を認める法制の適用を排除することにも存するが︵第二項第二段c号後段参照︶、やは り、合意離婚の優遇︵同b号参照︶、及び、離婚禁止国法の適用の排除︵同c号前段参照︶ による離婚保護にあ ることは明らかである。かくして、法廷地法としてのスペイン法は、二〇〇三年の改正法において、共通法がな い場合の補充法としての役割とともに、離婚保護のための役割をも担うに至っているということができる。

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︵1︶ ︵2︶

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))

︵5︶  閃葺Nωけξβ9§αω霞爵け巽窪α①ωΦξ8旺ωo冨p算Φ旨蝕8巴窪評巨一一①霞Φ。窪ω﹂員閃Φωけωo訂洋噺q吋○辞○ ω鋤昌辞8FNOOρψOおFωb胡h  溜池良夫﹁フランス国際私法における離婚の準拠法ー判例の変遷1﹂溜池・前掲書一二三頁以下、とくに、一 三八頁以下、折茂・前掲書二九二頁、二九五頁注︵10︶、横山・前掲書一三頁以下参照。  O。o茜Φω︾い90卸園①覧巳ω霊二Φα邑江旨Φ旨蝕o昌巴R圃識8ヨ冨轟評らミ畿澄。りOミ房一8=くも。ω刈。  国きω殉窪二Z①器ωω冨巳ω魯①ωぎけΦ旨蝉江9巴8悶餌巨一一①筒Φ。耳等嚢蹄魯の∼ミ鳴ミ&軌§ミ§、蕊ミ堅§織 寄さミ§終§ミ︵以下、鳶嚢として引用︶一〇〇。一”ψ一〇 。O中  拙稿﹁スペイン民法典中の国際私法規定︵一九七四年︶﹂法学新報八四巻七・八・九号二三三頁、及び、杉林信義口 笠原俊宏﹁スペイン国際私法における離婚の問題−一九八一年法律第三〇号についてー﹂秋田法学五号六五頁以 63

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渉外離婚の連結規則について ︵6︶ ︵7︶ 下参照。  冒き>暮o巳oO鋤三一一〇ω巴8αo”霊8⊆<Φ一一Φ議笹Φ導o旨餌氏o昌3ヨ畦ごひQ﹃Φαきω一①α8一江導Φ3象一〇轟一 質貯ひ①呂諾8ど肉ミ§偽ミ⑤ミ魯警ミ帆ミ鳴§&帆§匙特試愚︵以下塑Obト勺として引用︶一〇〇 。ω︸サ89ωεぐ●  言閃器一〇ひ日ΦN一窪ρU器器器ω冨巳ω。冨囚o≡ω一g巽①魯けぎα窪ωR①一9雪穿①巳畠凝冨貰ギ①目琶鵬 §阜ω。冨こ琶堕N貫ZΦ畦器ω茸αQ己Φω>拝一。刈呂蝉巳ω畠段O幾暗。Qミト鰭嚢8。♪ψ9。.  ⑫ ケーゲルの梯子の意義  離婚の準拠法に関するドイツ民法施行法第一七条第一項第一文は、婚姻の一般的効力に関する第一四条を準用 すると規定しているが、同条第一項においては、いうまでもなくケーゲル︵○Φ旨㊤a内畠9教授が提唱したケー ゲルの梯子と呼ばれる段階的連結の規則が表現されている。その規定の内容は次のごとくである。すなわち、  ﹁一九八六年ドイツ民法施行法第一四条 婚姻の一般的効力   一 婚姻の一般的効力は、次の各号に掲げる法に服する。    ① 夫婦の双方が属する国の法、又は、夫婦の一方がなお属するときは、夫婦の双方が婚姻中最後に属し     た国の法、さもなければ、    ㈲ 夫婦の双方がその常居所を有する国の法、又は、一方がなおその常居所を有するときは、夫婦の双方     が婚姻中最後にその常居所を有した国の法、補助的に、    ⑥ 夫婦が共に別の方法で最も密接に結び付けられている国の法

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  ︵以下、省略︶﹂        ︵−V とするものである。この規定について簡略にいえば、夫婦の共通本国法、最後の共通本国法、共通常居所地法、 最後の共通常居所地法、密接関連法という五段階の段階的連結の規則を定めているということになるであろう。 この規則が、前述のフランス判例によって定立された規則と異なる重要な点は、共通住所地法が共通常居所地法 に換えられ、又、法廷地法が密接関連法に換えられている点である。前者については、住所主義の衰退と常居所 主義の台頭という一般的潮流に従った交替として理解することができるものである。それに対して、後者につい ては、基本的には、国際主義の下に、内国法志向の徴愚とも見られがちな法廷地法主義を排除し、より原理的な 立場から密接関連法を採用したものと理解することができるであろう。そうすると、フランス判例理論とケーゲ ルの梯子との間には、理論上、決定的な乖離は存在しないといっても過言ではない。従って、今日、ケーゲルの 梯子について論ずる際には、単に、共通法を軸とした段階的連結の規則を内容としていることをもってその特徴 として指摘することには、さほどの意義は認められないであろう。それならば、果たして、その規則が諸国の立 法において採用されていることには、右に指摘された以外の点において何らかの画期的な意義が存在するという ことができるものであろうか。ケーゲル教授の見解が最も影響を及ぼしていると考えられるドイツ国際私法につ いて見れば、前出ドイツ民法施行法第一七条第一項第一文は、その第二文と結合することにより、むしろ、右の 規則の適用を制限することにより、結果的には、その規則を前進させていることが看取される。すなわち、  ﹁一九八六年ドイツ民法施行法第[七条第一項 65

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渉外離婚の連結規則について   ︵第一文省略︶婚姻が同法に従えば離婚されることができないときは、離婚を求めている配偶者がその時点  においてドイツ人であるか、又は、婚姻締結の当時、ドイツ人であったとき、離婚はドイツ法に服する。﹂        ︵2︶ と定められている。これは、離婚保護の観点から、法廷地法たるドイツ法の適用を定めるものである。最終的に は、ドイツ法に従い、ドイツ人がその本国法の下に離婚することができる途を残している点において、前出現行 スペイン法と同一の立場が先駆けて定められている。このような立場が、形式的な両性平等に止まらず、当事者 の実質的な利益をも顧慮しようとするものであることはいうまでもない。  翻って、一九九五年の北朝鮮対外民事関係法第三七条は、法例第一六条本文とほぼ同様に、夫婦の共通本国法、 共通居住地法︵若しくは共通住所地法︶、密接関連法の段階的連結の規則を採用しているが、それとともに、第三 八条が、﹁離婚当事者の中の一方の当事者がわが国に居住しているわが国の公民である場合には、本法第三七条に       ︵3︶ 拘わらず、朝鮮民主主義人民共和国の法を適用することができる。﹂と定めている。この規定については、明文を もって離婚保護を謳ってはいないが、準拠法の選択的連結を認めることにより、それを顧慮する立場をとってい ると解することができるであろう。それに対して、法例第一六条但書も、離婚当事者の一方がわが国に常居所を 有する日本人であるときは、日本法を適用すべきことを定めているが、その適用は北朝鮮法第三八条と違い、任 意的ではなく、強行的である。 ︵1V 訳文については、拙編訳﹃国際私法立法総覧﹄︵冨山房、一九八九年︶二四五頁参照。

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((

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訳文については、 訳文については、 一頁等参照。なお、 拙編訳・前掲書二四六頁参照。 崔達坤﹃北朝鮮の民法・家族法﹄︵日本加除出版、二〇〇一年︶三八九頁、戸籍時報四六四号五 次位の準拠法について、前者が居住地法と訳しているのに対して、後者の訳は住所地法である。 三 当事者自治の導入  e オランダ離婚抵触法第一条 統一された国際私法典を有しないオランダ国際私法の法源の一つを構成しているのが、一九八一年三月二五日 の﹁婚姻の解消及び別居についての法律抵触規則に関する法律﹂︵同年四月一〇日施行︶、すなわち、通称﹁オラ       ︵−︶ ンダ離婚抵触法﹂である。同法は、離婚又は別居の準拠法に関する第一条、外国官庁による離婚又は別居の承認 に関する第二条、一方的離婚の承認に関する第三条、そして、経過規則に関する第四条によって構成されるもの である。それらの諸規定の中、本稿における論及に関わる第一条は、次のように定めている。すなわち、  ﹁一九八一年オランダ離婚抵触法第一条

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 婚姻の解消又は別居が請求されることができるかの間題、 とができるかの間題は、次に掲げる法によって解決される。 @ 当事者が共通本国法を有するときは、その法 ㈲ 共通本国法がないときは、当事者の常居所地法 一 及び、いかなる原因に基づいて請求されるこ 67

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渉外離婚の連結規則について    ⑥ 共通本国法及び同一国における常居所地法がないときは、オランダ法   二 前項の適用については、当事者の一方にとって、共通国籍国との実効的な社会的紐帯が明らかに欠ける    場合には、共通本国法は存在しないものと見倣される。但し、この場合にも、当事者が共に共通本国法を    選択するか、又は、当事者の一方によるかような選択が争われなかったときは、その法が適用される。   三 当事者の一方が複数の国の国籍を有するときは、その者の本国法は、その者が国籍を有する国であって、      すべての事情を考慮して  その者が最も強い紐帯を有する国の法と見倣される。   四 前三項に拘わらず、当事者が共にオランダ法を選択するか、又は、当事者の一方によるかような選択が    争われなかったときは、その法が適用される。﹂        ︵2︶ とするのが、その法文の内容である。  まず、オランダ離婚抵触法第一条の中、離婚の準拠法の選択について定めている第一項が、前述のフランス破       ︵3︶ 棄院判例及びオランダ最高裁判所判例に倣ったものであることは明らかであろう。その立場は、比較法的に見て、 近時の多くの諸国立法上の規則と足並みを揃えるものであり、とくに注目すべき新規な点は見受けられない。ま た、複数の国籍を有する場合に、密接関連性を基準として本国法を決定すべきことを定めている第三項の立場も 決して稀少なものではない。従って、同法第一条の特徴として特筆されるべき点は、第二項が、実効的国籍の理 論を明文化した上で、実効性に欠ける国籍を連結点とする共通本国法の選択を認めている点、及び、第四項が、 いずれの場合においてもオランダ法を選択することを認めている点、すなわち、制限的ながら、離婚準拠法の選

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定における当事者自治が導入されている点であろう。これらの特徴こそが、本稿との関連において論及されるべ き点にほかならない。  それでは、オランダ離婚抵触法第一条第二項及び第四項において、当事者自治が認められている理由ないし目 的は何であるか。まず、第二項についていえば、その本文により、当事者が共通国籍を有しないと考えられうる 場合であっても、当事者の本国法に従い、オランダ法によると同様に容易に離婚することができるならば、殊更、 オランダ法の適用は不必要であるのみならず、むしろ、本国におけるオランダ離婚判決の承認の確保という観点        ︵4V からは、本国法の適用の方がより好ましいと考えられるからである。一方、第四項については、次のようにいう ことができるであろう。すなわち、当事者に共通本国法か、又は、共通常居所地法が存在する場合であり、しか も、当事者にそれらの法との密接関連性が認められる場合であっても、当事者がオランダ法の適用を選択するこ       ︵5︶ とを可能とするところに同項の規定の意義が存すると考えられる。従来、オランダ法においては、その実質法上、 夫婦財産制等の特定の事項を当事者に任せるという立場がとられており、その立場が国際私法の次元にまで波及       ︵6︶ し、同項のような当事者自治の導入をもたらしたといわれている。端的には、協議離婚を許容するオランダの実 質離婚法の影響が抵触法にも及んだ結果、オランダ法が準拠法として選択される限り、当事者双方による離婚の 合意は、当事者双方が離婚禁止国の国民である場合をも含め、いかなる場合であっても離婚原因となるものと考 えられ、そして、離婚保護の理念が同項の当事者自治の規則の定立によって担保されているということができる    ︵7︶ であろう。 69

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渉外離婚の連結規則について ︵1︶ ︵2︶ パ パ パ ハ パ

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) ) ) ) ) 肉禽ミ︵以下、≧舅として引用︶H。賀戸。 く①浮①葺U貯o目8ぎZΦ岳①巨鋤且ω質一く讐Φぎ什o讐蝉江○轟=蝉ヨ≧&ミヘ§勢S嫡訣偽ミ慧sミ軌ミ鳴§&&ミミ 立法に関する総則を含む法律﹂第六条が法源となり、又、判例によって規則が定立されていたようである。いや する法律は、オランダ人が外国に在ろうともその者を規律する。﹂という一八二九年五月一五日の﹁オランダ王国の であると見られる。いずれにしても、離婚及び別居については同条約は適用されず、﹁人の権利、身分及び能力に関 ベネルクス条約﹂の加盟国であり、それがオランダ国際私法の主たる法源となるべきものであったが、未発効のまま  オランダは、一九六九年七月三日のベネルクス三国国際私法条約、すなわち、﹁国際私法に関する統一法のための 。寅さらに、杉林信義H笠原俊宏﹁オランダの国際離婚法について﹂秋 田法学七号一七五頁参照。  い勺くR冨巳”U暮魯一旨Rきぼ9巴蝕く雲8蝉9≧舅お。 。一︵以下、く①浮Φ鼻oPo霊として引用γP8ご ︾≦窪αΦ一9↓冨希名U9畠質一く魯Φぎ富ヨ蝉江o昌巴一㊤名一Φ旭ω一曽鉱Opお鵬㊤巳ぎ鵬酢訂一四名8げΦ8巳一Φα8 ぎ8毎讐一9巴&︿雲8きα跨①お8閃巳賦89&<98ωひQ声算Φα筈8&丸く舅這。 。ρP“8.なお、法文の邦訳 については、拙編訳・前掲書七八頁以下参照。  オランダ最高裁判所判例の変遷については、杉林ロ笠原・前掲一七五頁以下参照。  くΦ浮Φ巳”oPqけ‘やG 。ONΦけωoρ  ≦o&Φ一90PoFPお。 。’  くo跨o巨︸o℃●含け4PωOo o9  くo浮Φ巳︶○つ9けこPωOo 。・  ⇔ ベルギー国際私法典第五五条  二〇〇四年七月一六日のベルギー国際私法典︵同年一〇月一日施行︶によって新たな抵触規則︵離婚について は、同法典第五五条︶が立法化される以前において、一九六〇年六月二七日の﹁夫婦の少なくとも一方が外国人

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である場合における離婚の許容性に関する法律﹂が離婚の準拠法の選定について定めていたが、そこにおける規 則は、次のようなものであった。すなわち、  ﹁夫婦の少なくとも一方が外国人である場合における離婚の許容性に関する一九六〇年六月二七日法律   第一条外国人の間の婚姻の場合には、一定の原因のための離婚の許容性は、原告たる配偶者の本国法が反    対しない限り、ベルギー法によって支配される。   第二条 国籍が異なるが、一方がベルギー人である夫婦の間の婚姻の場合には、離婚の許容性はベルギi法    によって支配される。   第三条 離婚原因の決定はベルギー法に依拠する。﹂ とするのがその規則であり、そして、それは、形式的には、ベルギー法が適用される場合を中心として定められ       ︵−︶ た一方的抵触規定と呼ばれるべきものであり、又、内容的にも、ベルギー法の適用の優先を定めるものであった。  それに対して、新法である二〇〇四年の同国国際私法典第五五条は双方的抵触規定の形式を採用しており、内 容的にも、基本的には諸国立法の動向に従いつつ、前出オランダ離婚抵触法と同様に、離婚の準拠法の決定につ        ︵2︶ いて当事者自治の立場を導入した規定として注目されるものである。同条は、次のように定めている。すなわち、  ﹁二〇〇四年ベルギー国際私法典第五五条   一 離婚及び別居は、次に掲げる法によって規律される。    ω 夫婦の双方が、請求開始の当時、それらの者の常居所を有する領域が帰属する国家の法 71

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渉外離婚の連結規則について  ⑧ 同一国家の領域上に常居所がない場合に、夫婦の一方が、請求開始の当時、それらの者の最後の共通   常居所が所在した領域が帰属する国家の領域上にその者の常居所を有するときは、その国家の法  ㈹ 最後の共通常居所が所在した国家の領域上に夫婦の一方の常居所がない場合には、夫婦の双方が、請   求開始の当時、国籍を有する国家の法  ㊨ その他の場合には、ベルギー法 二 但し、夫婦は離婚又は別居の準拠法を選択することができる。  それらの者は、以下に掲げる法の中の一つのみを指定することができる。  ω 双方が、請求開始の当時、国籍を有する国家の法  ㈲ ベルギi法   その選択は最初の出頭の際に表明されなければならない。 三 第一項において指定された法の適用は、同法が離婚制度を知らない限り斥けられる。その場合には、第  一項によって補助的に定められた基準に従って指定された法の適用が行なわれる。﹂ と定められている。  以上の通り、この規定もまた、オランダ離婚抵触法と同様に段階的連結及び当事者自治の規則を定めたもので あるが、いくつかの点において右離婚抵触法と異なっている。まず、第一に、本則として共通常居所地法に依る べきとされており、本国法はそれよりも下位の法として位置付けられ、その適用が補充的なものとされている点

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である︵第一項︶。第二に、上位の法である共通常居所地法が存在する場合であっても、ベルギー法のほか、共通 本国法に制限されているが、当事者自治が認められている点である︵第二項︶。第三に、離婚制度を定めていない 法の適用を排除する特別公序条項が置かれており、又、その際の補充法が段階的連結規則上の下位の法に求めら れている点である︵第三項︶。そして、第四に、実効的国籍の理論の採用について、特別には言及されていない点 もオランダ法と相違する点として挙げられるであろう。しかし、最後の点については、総則規定中に、それに相       ︵3︶ 当する例外条項が置かれており︵第一九条︶、それにより、形骸化した国籍が連結点として援用されることは、当 事者による選択の場合を除いて斥けられている。そのような意味においては、ベルギー法もオランダ法と異なる ところはない。従って、前者が後者と大きく異なっている点は、前三者である。そして、それらの立場がとられ るに至った事情ないしその趣旨については、以下のように指摘されている。すなわち、その制限的当事者自治は、 離婚当事者が、離婚が共通本国法によって規律されるべきとするそれらの者の本国へ戻ったとき、ベルギーにお いて形成されたその離婚が承認されることに保証を与えるものであり、又、ベルギー法上、常居所が主たる連結        ︵4︶ 点として採用されているため、本国法との調整を図る目的をもって導入されたものである。

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訳文については、拙編訳・前掲書三五四頁。 一8口歳<Φω9葺9いΦOoαΦげΦ薗ΦαΦ牙o淳巨①ヨ呂g巴質一<ρ塑9bト勺8。㎝も・一一Φ什ω鼠<● 二〇〇四年ベルギi国際私法典第一九条第一項第一文は、次のように規定している。 ﹁本法によって指定された法は、情況の全体により、状態がいずれかの他国と非常に密接な関係を呈示するのに、 73

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渉外離婚の連結規則について  それが、指定された法が帰属する国家と非常に希薄な関係しか有しないことが明臼であるときは、例外的に適用され   てはならない。﹂ ︵4︶︾鼠Φ霊oユ葺↓冨8α庄8江9・︷胃一く簿Φ凶算①旨豊o轟=蝉棄↓冨ωΦ一αq一彗Φ捲9Φ58﹂ミ鳴§&帆§匙§駄   8ミ辱隣ミ織ミ蜀ミQ§試ミ督NOOμP弩o 。。 四 若干の考察  O 両性平等の原則  それでは、夫婦の同一本国法︵共通本国法︶、同一常居所地法︵共通常居所地法︶、密接関連法の段階的連結の 規則の本質はいかなるものであるか。それが、夫婦に同一ないし共通の法へ連結させることにより、準拠法の選 定において夫婦のいずれの者にも不平等になることがないように配慮された立場であることは明らかである。そ の目的の達成のために、同一法︵共通法︶を軸として、本則が稼動することができないときは補則により、また、 それもできないときは更なる補則によるべきとする立場である。例えば、法例の場合には、本則である夫婦の同 一本国法がえられないときは、同一常居所地法が補則とされることになる。すなわち、そこにおいては、同一法 主義ないし共通法主義は放棄されることはなく、放棄されるのは本国法主義である。従って、あくまでも同一法 主義ないし共通法主義は保持されるという点にその立場の特色があるということができる。立法の趣旨が両性平 等の原則の徹底にあることは明らかであり、抵触法上においては、右のような夫婦に共通の要素の採用が両性平

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       ︵−︶ 等の原則を理想的な形で実現することができると考えられているからであろう。今日、実質法上の両性平等とは 別に、国際私法上の両性平等もまた顧慮されなければならないということは、既に異論のないところとなってい る。しかし、かような同一法主義ないし共通法主義を軸とした段階的連結の方法を採用することによって両性平 等を実現しようとする立場に対しては、次のようないくつかの疑間点が指摘されている。  まず、同一法ないし共通法を追求するあまり、当事者双方の本国法にそれをえることができないとき、常居所 地法にそれを求めようとすることの妥当性についての疑間である。すなわち、本国法と常居所地法とでは、それ ぞれに本来的に存在している指導的理念が異なっており、前者において主権の原則が支配しているのに対して、       ︵2︶ 後者において働いているのはむしろ親近の原則であると見られる。つまり、一方が、いずれかの国家に属してい ることを前提として与えられる国籍を連結点として決定される法であるのに対して、他方は、日常の生活の本拠 地を連結点として決定される法である。このように、両者には大きな隔たりがあるにも拘わらず、同一法ないし 共通法の優先的適用の立場から、異質な両者をそれぞれ本則と補則としたことには少なからぬ無理があるのでは        ︵3︶ ないかというのが、その疑間が意味するところである。  次に、両性平等の理念を抵触規定へ導入する場合に、同一法主義ないし共通法主義が採られなければならない ということの論理的な必然性についての疑間である。法例中の諸規定が同一法主義の採用をもって両性平等の理 念の発現としているのに対して、その目的のために採られうる連結方法は、本来、それに限られたものではない ことが、諸国立法の観察によって明らかとされているからである。例えば、中華人民共和国の国際私法規定であ 75

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渉外離婚の連結規則について る同国民法通則第一四七条後段は、離婚について、﹁事件を受理した裁判所の所在地法を適用する。﹂として、単       ︵4︶ 一的連結の規則を定めている。そこにおいては、離婚についての属人法主義は採られておらず、又、両性平等の 理念を侵害していないことも明らかである。これは、夫婦間の法律間題を原則的に同一属人法ないし共通属人法 へ連結しなければならないという近時における固定観念を打破するものであるということができるであろう。そ のほか、同じく離婚について、属人法に依るとしても、旧法当時におけるスイス連邦裁判所判決において確立さ        ︵5︶ れたのが、原告の本国法主義という立場である。すなわち、一九六八年七月一一日の9巳o判決は、当事者双方        ︵6︶ の本国法の累積的適用を原則とする当時の制定法上の立場を修正して、右の立場を判示している。その後、一九 七八年のオーストリア国際私法第二〇条第二項においても、離婚を成立させるため、補則としてながら、原告配        ︵7︶ 偶者の属人法主義が採用されており、又、一九九六年のリヒテンシュタイン国際私法第二一条第二項がその立場       ︵8︶ に追随している。これらの立場については、原告属人法主義と被告属人法主義のいずれをもって妥当な立場と見 るべきかの間題はあるとしても、夫も妻も原告たりうる機会を観念的にも実際的にも平等に与えられる限り、明 らかに両性平等の理念に反すると見られるものではない。むしろ、そのような立場は、人が自己の運命を自らの 属人法によって決定するという当事者利益を保護するものであるということができるであろう。  さらに、以上のほか、ケーゲルの梯子に見られる同一法ないし共通法を軸とした段階的連結の規則については、 密接関連法への連結が最後の補則とされている。しかし、密接関連法については、戸籍窓口において、いずれの 国の法をもってそれと認定すべきかという困難を強いることになる場合が少なくない。そのため、とくに法例の

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場合には、その困難を回避するための但書が、改正法例に付加されている。そのような苦肉の策もまた、同一法        ︵9︶ 主義ないし共通本国法への執着のしわ寄せであると考えられるものであり、このように、常に存在することが保 証されているわけではない同一法ないし共通法を偏重する立場には、他の側面からの間題もある。しかし、その ような間題については、ここにおいては疑間点として指摘するに止めることとしたい。

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) )

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) ) ) 拙著﹃国際家族法要説︵新訂補正版︶﹄︵高文堂出版社、二〇〇四年︶七八頁以下参照。  拙稿﹁リヒテンシュタイン国際私法の法典化とその特質﹂東洋法学四一巻二号三二二頁参照。  拙編訳・前掲書七二頁。 九一年の居住民及び居留民の民事関係に関するスイス連邦法について﹂神戸法学雑誌八巻四号六四四頁参照。  川上太郎﹁スイス、ギリシャ、エジプト、シリヤの国際私法規定と国際民法に関するモンテヴイデオ条約−一八  buO閏8山押99  例えば、張青華﹃中国渉外関係法﹄︵商事法務研究会、一九九七年︶一一〇頁以下参照。  横山・前掲書二五頁以下参照。  属人法における指導的理念については、西賢﹃属人法の展開﹄︵有斐閣、一九八九年︶一九四頁以下参照。  法例の場合については、南・前掲書六四頁以下参照。 ⇔ 離婚保護の理念 ノイハウス教授により、       ︵−︶ かなり早い時期から国際私法の実質法化の現象は指摘されているが、 国際私法上にお 77

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渉外離婚の連結規則について いても実質的な利益が考慮されることがすでに一般的になってきた現在、両性平等の観点とともに、離婚保護の ような当事者の一定の実質的利益の保護という観点はすでに確立していると見られる。比較立法的に眺めても、 形式的な両性平等の理念が表現されると同時に、明言をもって離婚保護を図ろうとする立法例が少なくない。従 って、離婚に関する抵触規則を大雑把に整理すれば、次のように二つの異なる立場に分類することができるであ ろう。すなわち、その一つは、両性平等の理念が形式的な平等として表現されているに止まるものであり、いま 一つは、形式的な平等に加えて、実質的な離婚保護をも顧慮しているものである。  前記の分類に従えば、法例第一六条は前者に属するものである。同条但書には、特別公序として、実質的な観 点からの定めもあるが、それは、離婚保護という当事者利益の保護の立場ではなく、むしろ、前述の通り、戸籍 実務上の便宜のための制限と見られる立場である。それに対して、前出北朝鮮法は、法例とほぽ同様、離婚当事 者の共通本国法、共通居住地法︵若しくは共通住所地法︶、密接関連法の段階的適用の立場を採っているが、同時 に、離婚当事者の一方が北朝鮮に居住する北朝鮮人である場合には、同国法を適用することができるとして選択 的連結の可能性が定められている点において、右の分類上、むしろ後者に属するものとして分類されるべきもの であろう。そこにおいては、当事者の一方が同国人であることという条件が付せられてはいるが、その限りにお いて離婚保護へと導くこととなる連結の多元化が図られていると見ることができる。しかしながら、同法におい ては、離婚保護の立場は明言されてはいない。  それに対して、諸国の現行国際私法立法を傭轍すれば、離婚保護を明言しているものはかなり多数に上ってい

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る。但し、それらの立法の間にも若干の相違が見られており、それらを整理すれば、次のように二つの立場のも のに分類することができる。すなわち、その一つは、離婚保護の観点が自国の国民を中心にして考慮されている ものであり、そして、いま一つは、その観点が、自国に居住する外国人に対しても配慮されているものである。 前者の立法例として、まず挙げられるのは前出ドイツ民法施行法第一七条第一項である。それは、婚姻の一般的 効力について基準となる法によって離婚できない場合であって、離婚を求めている配偶者がドイツ人であるとき は、離婚はドイツ法に服すると規定している。同様の立場は、一九九二年のルーマニア国際私法第二二条第二項        ︵2︶ においても採用されている。又、自国内に居住する者を保護の対象とするのが、一九六四年のアルバニア国際私        ︵3︶ 法第七条第三項が早くから採ってきた立場である。さらに、より近時においては、一九八二年の旧ユーゴスラヴ ィア︵セルビア・モンテネグロ︶国際私法第三五条第三項が自国居住民を中心として、又、同条第四項が自国国        ︵4︶ 民を中心として離婚保護を考慮している。そして、一九八七年のスイス国際私法第六一条第三項も又、その両方       ︵5︶ の場合における離婚保護を考慮するものである。同様に、自国法を基準として離婚保護を顧慮しようとするのが、 一九七九年のハンガリー国際私法第四一条a号であるが、そこにおいて、内国関連性はハンガリi法の適用の要         ︵6V 件とはされていない。いずれにしても、これらの諸立法は自国法への連結をもって離婚保護を実現しようとする 立場をとるものである。それに対して、一九八五年のブルガリア家族法典第一三四条第三号は、自国法上の立場 に拘わることなく、共通本国法がない場合には、両当事者の本国法の中、離婚を許容するものに依るとする択一       ︵7︶ 的連結の立場をとることにより、離婚保護を図ろうとするものである。 79

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渉外離婚の連結規則について

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) ) ) ) ) 条文については、拙編訳・前掲書三四三頁。  条文については、拙編訳・前掲書三一七頁。  条文については、拙編訳・前掲書二二九頁。  条文については、拙編訳・前掲書三八九頁。  条文については、拙編訳・前掲書二四頁以下。 大学紀要国際研究論叢八巻一号九四頁。  拙稿﹁外国国際私法立法に関する研究ノート︵1︶  ノイハウス︵桑田訳︶・前掲一四一頁以下参照。 ールーマニア国際私法︵一九九二年︶ ︵上︶﹂大阪国際  日 総括的考察  かくして、現在、国際私法における両性平等の原則はすでに確立されたものとして常に顧慮されなければなら ないことに異論は見られない。しかしながら、それのみが顧慮されることをもって、渉外離婚の抵触規則として 完結されているということはできないこと、つまり、離婚保護という実質的な利益が顧慮されなければならない ということが、前述の若干の考察からの結論の一つである。次に、国際私法の次元における形式的な両性平等が 専ら同一法主義ないし共通法主義に基づく連結方法に依るほかはありえないとする盲目的な考えが、離婚訴訟の 実態に即した適正な準拠法の選定を阻害するものであり、支持されるべきではないということも、いくつかの立 法例及び判例によって導かれたいま一つの結論である。さらに、今日的動向として、離婚保護の基準が必ずしも 法廷地法上の立場に固執されるべきではなく、むしろ、より一般的に離婚保護に適う法の可及的な適用へと移行

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しようとする兆しが見られることに伴い、保護の対象とされる当事者の範囲も自国国民又は自国居住民に限定さ れることなく、より広く離婚当事者として一般化されようとしているということも結論として導かれるところで ある。それならば、それらの結論を統合すれば、一体、いかような規則が離婚準拠法の選定規則として構成され ることになるであろうか。それについては、恐らく、次のごとく考えることができるであろう。  まず、今日、国際家族法上、何らかの当事者利益の保護のためにとられる連結の方法として考えられるのは、 段階的連結、択一的連結、選択的連結︵制限的当事者自治︶である。それらが相違しているのは、前者が、連結 される可能性を有する法の間に予め序列を設定しているのに対して、後二者には、そのような序列の設定が存在 しないことである。それでは、段階的連結の場合には、一体、いずれの法をもって最善の法とし、そして、それ に続く次善の法とすべきか。離婚準拠法における共通本国法主義を原則とする立法が比較的多数であるとはいえ、 共通住所地法主義︵共通常居所地法主義︶及び法廷地法主義もまた有力であり、共通本国法主義が必ずしも支配 的であるとは言い難い。従って、段階的連結の規則において列挙されている法は、本来、それらの間に優劣はな く、いずれも連結される適性を有する法として同等に連結されるべきであり、そして、その可能性が同等に与 えられるべきであるというべきであろう。その意味において、段階的連結の規則については、序列に拘わらず、 連結可能な法の範囲が提示されている点に重要な意義が見い出されるものであり、そこにこそ、より早くにはオ ランダ法やブルガリア法、そして、より近時にはベルギー法等において採用されているように、択一的連結や選 択的連結︵制限的当事者自治︶が駆使されることの正当性が認められるように思われる。 81

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渉外離婚の連結規則について  次に、択一的連結と選択的連結︵制限的当事者自治︶との相違についていえば、前者が、裁判官に対し、一定 の範囲の法の中から、実質的な判断により、当面の利益保護に最適な法の強行的な適用を求める立場であるのに 対して、後者は、何ら実質的な判断によることなく、当事者の意思のみに従い、いずれの法に依るべきかを決定 しようとする立場である。裁判官の判断によるにせよ、当事者の意思によるにせよ、それらのいずれによっても、 離婚保護へと導く準拠法を選定することは可能である。そうであるとしても、離婚保護の観点はそれらのいずれ の連結の方法とより馴染むものであろうか。卑見によれば、この間題の解答は、離婚保護が法秩序の維持の側面 からの強行性を有する間題であるか、はたまた、当事者意思の尊重が重視されるべき間題であるか、という点に        ︵← 掛かっていると考えられる。換言すれば、離婚保護は、離婚を争う両当事者間において、離婚請求者の側に肩入 れすべきとする理念であるか、はたまた、離婚に合意する両当事者の身分形成を阻む法体系の適用を斥け、それ らの者の希望を実現すべきとする理念であるか、ということになるであろう。果たして、そのいずれの理念に重 点を置くべきか。思うに、婚姻関係の場合には、子の保護のように異論のない優先的な利益保護の場合と異なり、 本来的に対等な婚姻当事者の一方に肩入れすることは必ずしも好ましいことではない。従って、両当事者の合意 を基盤とする準拠法の選定、すなわち、端的には当事者自治を意味する後者こそが、有責主義から破綻主義への 潮流と相侯って、離婚を一般的・抽象的に禁止するか、それを著しく困難としている法から当事者を救済するこ とを旨とする離婚保護の理念と調和する準拠法選択規則となりうるものと思われる。  もとより、当事者自治の法理は、まず、夫婦財産制の準拠法について生成され、契約の分野において発展し、

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      ︵2V       ︵3V 確立されたものであるといわれているが、今や、物権や不法行為にも及ぼうとしており、また、家族法関係の分 野においても、夫婦財産制の準拠法の選定において、制限的にせよ、ほぽ普遍的に導入されるに至っている。同 様に財産的側面の強い相続についても、ハーグ国際私法会議において採択された近時の条約の一つである﹁死亡 に因る財産の相続の準拠法に関する条約﹂︵一九八八年︶において、被相続人の意思が優先的に考慮されており、       ︵4︶ 客観的な連結はそれを補充するものとして位置付けられている。さらに、婚姻の効果についても、一九九〇年の       ︵5︶ スペイン民法第九条第二項が当事者自治を制限的に導入していることは、すでに周知のことになっている。従っ て、前出二〇〇四年ベルギー国際私法が、当事者の意思により、共通常居所地法、共通本国法、法廷地法︵ベル ギー法︶のいずれの法も離婚準拠法たりうるとする立場を採用したことについては、今後の有力な然るべき方向 を提示したものと評することができるであろう。

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︵1︶ 拙稿﹁国際家族法における当事者自治﹂比較法四〇号とくに二六一頁以下。 ︵2V 溜池良夫﹁選択的連結・任意的連結﹂澤木敬郎H妹場準一編﹃国際私法の争点︵新版︶﹄︵有斐閣、一九九六年︶所   収、六三頁参照。 ︵3︶ 例えば、拙稿﹁物権準拠法と当事者の意思﹂澤木U妹場編・前掲書所収、一〇八頁以下、中野俊一郎﹁不法行為準   拠法と当事者の意思﹂同書所収、一四〇頁参照。 ︵4︶ 例えば、木棚照一﹃国際相続法の研究﹄︵有斐閣、一九九五年︶とくに二七頁以下、松岡博﹃国際家族法の理論﹄   ︵大阪大学出版会、二〇〇二年︶一五二頁以下参照。 ︵5︶ 拙稿﹁外国国際私法立法に関する研究ノート︵9︶ースペイン民法典中の国際私法規定の改正︵一九九〇年︶ー﹂ 83

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渉外離婚の連結規則について 大阪国際大学紀要国際研究論叢一四巻二号五一頁以下。 五 結 輩 口R  わが国際私法においても、準拠法の選定の際の利益衡量を考慮すべきとする立場が明瞭に導入されるに至って いる。しかしながら、平成元年の改正後の法例中の新しい抵触規則に見られる利益衡量は、決して同一の次元の ものではなく、国際私法の次元における利益衡量と実質法の次元におけるそれとが混在していることが看取され る。例えば、親子関係に関する法例第一七条や第一九条が、嫡出保護や準正保護が実質的に実現されるよう、択 一的連結の方法をもって抵触規定において徹底されているのに対して、婚姻の身分的効果に関する法例第一四条 は、段階的連結の規則をもって形式的な両性平等を確保することに腐心しており、そのため、それを準用してい る法例第一六条本文においても、離婚保護を実質的に実現することは全く顧慮されていない。しかし、その一方、 わが国際私法においては、すでに、同じく段階的連結の規則を採用しつつ、実質法的利益をも考慮する抵触規定 が存在している。すなわち、﹁扶養義務の準拠法に関する法律﹂第二条がそれである。同条によれば、扶養義務に ついては、扶養権利者の常居所地法、扶養権利者と扶養義務者の共通本国法、日本法を段階的に適用すべきもの とされている。そこにおいて、本則から補則、さらに、次の補則へと移行するための事由は、扶養権利者の権利 が認められない場合である。これは、扶養権利者の実質的な利益の確保のために、それが実現できる法を可及的 に適用しようとする立場にほかならない。それに対して、法例第一六条において、補則の適用へと連結を変更す

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ることの狙いは、単に同一法の確保である。しかし、本来、同一法主義の採用と離婚保護の理念とは決して矛盾 するものではなく、同一法主義に立ちつつ、離婚保護を実現することは、すでに見たように、多くのヨーロッパ 諸国の国際私法においてとられている立場である。  しかるに、法例においては、専ら同一法主義を徹底することにより、抵触規定における形式的な両性平等の実 現のみが顧慮されるに止まっている。しかも、そのことのしわ寄せが、必ずしも明確な判断基準を有しない密接 関連法の採用となっており、法例第一六条但書が、いわゆる日本人条項をもって政策的にその困難を回避しよう        ︵← としているが、その条項が妥当性を欠くものであることは、しばしば指摘されているところである。それに対し て、同一法ないし共通法を中心として、両性平等に反しない法を適用範囲とする当事者自治を導入したならば、 少なくとも、そのような困難をもたらすことはない。形式的な両性平等の原則に立脚した段階的連結の規則にお いて採用されたいくつかの連結基準の間の序列を廃し、それらを当事者によって選択されることができる法の範 囲として、そこに、当事者意思の尊重を図ろうとする立場が本流となると見られる兆しは、すでに明瞭に現われ ていると考えるべきであろう。

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︵1︶ 鳥居淳子﹁内外人の婚姻と離婚1いわゆる日本人条項についてー﹂川井健ほか編﹃講座・現代家族法二巻﹄︵日  本評論社、一九九一年︶所収、三一四頁以下、同﹁国際離婚におけるいわゆる日本人条項﹂澤木11妹場編・前掲書所  収、一六七頁以下参照。 85

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