クレーン振れ止め制御装置の開発
著者
西郷 宗玄
雑誌名
工業技術 : 東洋大学工業技術研究所報告
号
37
ページ
24-27
発行年
2015
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00007623/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja*
*
*プロジェクト研究報告***
=工業技術研究所プロジェクト研究報告=クレーン振れ止め制御装置の開発
Dev
e
lopment o
f
v
i
b
r
a
t
i
o
n
c
o
n
t
r
o
l
o
f
c
r
a
n
e
s
y
s
t
e
m
西郷宗玄* 鄭小欄州1
はじめに クレーンに代表される懸垂系の振れ止め制御は多く の研究者によって種々の提案がなされているが,提案手 法の多くはある程度の制御対象情報が得られることを 前提とする振動制御に基づくものである.一方,屋外で のクレーン作業などでは運搬物が千差万別でその特性 や懸垂物の振れ角を計測することが容易でない.このよ うな状況にも対応するためには制御対象の波動伝搬を 懸垂端で吸収する波動制御法が適している. 波動制御のロープ荷系の制御モデ、ルとして,ロープ長 が変化する単振子と見なして振子制御として扱う方法 と,下端質量を有する懸垂索と見なして懸垂索制御とし て扱う方法が考えられる.これらの方法は相反するもの でなく併用することで制振性能の向上が期待できるが, 何れの手法も未だ制御法が確立していないため個別の 手法として研究開発する必要がある.本研究は,新しい 振れ止め制御装置開発の要素技術として,波野J制御則を 検言すしたものである. ロープ荷系の波動制御に基づく振子 IljIJ1~!l法として,西 郷らが制御対象懸垂系の支持点が仮想的な多重単振子 系の下端に懸垂されていると して,制御対象懸垂系最上 端振子振れ角を入力とする仮想、多重単振子系のオンラ インシミュレーショ ンと制御対象振子系と仮想振子系 が連続する条件から,制御対象に波留]伝搬状態、を発現さ せる支持点の横運動J加速度制御法が提案している1)し かし,この手法では仮想系の“初期化"が必要であり, 制御の不連続性ゆえに制振性を犠牲にしていた.また, 波動制御はロープ長に関わらず波動吸収できることが 最大の長所であるが,波動制御性をさらに向上させるた めのロープ長変化に対応することが困難であった.そこ で,筆者らは,仮想系シミュレーションを用いない方法 として,理論的な波動伝搬解を新たに導出し,振子角度 *理工学 部 機 械 工 学 科 科大学院了,学研究科 のj皮動伝搬を計測振子角度の畳み込み積分と して演算 する手法を開発し,実験によりその有効性を確認した2) 一方,懸垂索制御の従来の研究で波動制御の観点から のアプロー チ は な い こ れ は 懸 垂 索 の 理 論 的 な 波動伝 搬併が発見されていないためである.筆者らは,差分モ テ 、ルに基づ、く波動伝搬解を理論的に導出し,上端差分境 界近傍での波動制御法 を 開 発 し た 波 動伝搬解は差分近 似としての誤差は有するが,差分モデ、ル厳密解との数値 的な比較から制御上は十分に有用であり,制御応答をシ ミュレーションにより確認した3) 本稿では,振子とし ての振れ角制御と懸垂索としての変位制御の特性に考 察を加えている. 2 多重単振子波動制御法 2. 1 制御則 医1
1
に示す支持点が加速度運動する非均質多重懸垂 単振子系のk番目振子の支持点を加速度制御して波間j Graviry9 111 11_1ι
Xk米
的と
ど
手
ぃ
Fig.l Multiplesimple pendulums system
A
守
クレーン振れ止め制御装荷の開発 Developmentofvibγ8t1011control 0'1Cral1e system 西 郷 宗 玄 関1小榔l 伝搬状態を生成するには,k番目の振子支持点が固定さ れている場合の運動方程式と上方振子に連結されてい る場合の運動方程式の差を水平!J[I速度心と して印加す ればよいすなわち,
i
同 一 凡 十 玖 Ak
l
叶 一 九 G dq
k
F
F
一 川い
巴
町
Q υ 伐 A k x 一 一 t/-) t¥ 制御量は計測できる()kを用いて θk,[を演算する必要 がある. 3連続振子系が均質単振子の場合には以下のように 近似波宮]伝搬解を導出することができる.均質多重単振 子系の振子長さをlとすると k番目の振子の運動方程 式は次式となる.4
4(
+
)
l
的[+判(
k
+1
)
凡[二
}
O ρ
式(ω2)をラブプρラス変換する. L[的(
I
)
J
=
0k(
s
)
と置き,解を式(3)と置くと, 0k
(
s
)
=
y
(
S
)
ソ
k.. .(3) 特性方程式から座標正方向に伝搬する波動伝搬解(4)が 得られる.y
(
s
)
寸
(
J
叶
岬
t
-
S
J
付) 式 (4)のラプラス逆変換を行うと式 (5)となる巾
)
J
=
与
(押
1)σ)
J]: 2次第 1種 ベ ツ セ ル 関 数 すなわち k番目の振子角度から (k+ 1)番目の振子角度 が畳み込み積分式(6)で演算できる.川)
=出土中
高
7
f
.
(
I
-
r
)
J
(
)
k
(
r
)
d
r
...(6) ロープ支持端が均質2自由度単振子系に仮想的に連 結されているとして仮想2自由度単振子系の挙動をオ ンライン計算する.その際,仮想、2自由度単振子系の支 持端を式(6)によって制御して波動伝搬状態を実現する. 本制御は角度の制御を支持端横加速度で行うため制御 後の支持端位置が補償されない.そこで,角度の波動制 御の横加速度に次式(7)に示す位置と速度のフィードパ ック量を重畳した加速度。を制御量としている, α=Kλ -Kp(x"一
寸
-Kι
ο) ここで,K",Kp,K、は係数でXjは制御後の支持点目標位 置である. 2. 2 実験 問 2に実験装置の概要を示す.振子角度はポテンシ オで計測している 支持端横方向制御はボールネジ・サ ーボモー夕方式で,制御加速度をサーボモータの速度制 御で近似して印加している.ボールネジストロークは約 44cmである. 図3にロープ質量系の制御応答を示す.同図(
a
)
は仮 ー ー ' ! ! ' ー 、 1s , i l l 上 γ 1 1 0 上 ' γ l a l e 、 1 1 、 t、 J ‘ J U γ o 一 町 h etA 山 州m
m
日 ﹁ J 山 一 E r tmt 阿 川 町 U u c h M 官 民 n H ρ しv 、 、 l l a n ド W Nut //
Potentio meter Mass Rope mass systemFig.2 Experimentalsetup for pendulum system
control 想、2自由度系の振子長さがロープ質量系と同じ O.9m の場合,同図(b)はO.24m,I司図(c)はO.12mの場合であ る 同図(a),(b), (c)を比較すると,仮想2自由度系が均 質系となる(a)が最も整定時間が短く,均質系に近いほ うが市11振性の高いことが確認できる.一方,支持点変位 を見ると, (a), (b), (c)の順で大きい.支持点横変位制維fI で単原子系の振れ角の制振性を│向上させるには制御変 位が大きくなることと,仮想、2自由度振動系の長子長さ を小さくすることで,整定時間を犠牲にすれば制御支持 点変位を抑制することが可能であることが確認できる. 己 d 円 ノ ム
クレーン振れ止め制御装置の開発 Developmentof vibration controlofcranesystem 西郷 宗 玄 鄭 小 欄
y
9↓
Gravity。
0,25 0,15互。
0,05 呈 ∞ o -0,05 ,。
: --0, 15~ト vl -0,25 28 (a) Control start 0,25 0,25 10戸
、
ν r、
J ζ J ︽ J 1 1 ハ U A U -ハ H v n u n v n v [ 七 E } ( 寸 円 一 七 ω 一 叫 ロ ︿ 26 24 22 18 20 Til11e (s) 16 14 12M
x μg(l-x
-
d
x
)
十Mg
0,2 0,15 E 0,1 g 0,05 三 ∞o
g
_
-0,05 ~ -0,1:
e
-0,15∞ 0,2 30 0.4 0.3 0,2 0,1 0 0,1 0,2 0.3 -0.4 5 [ 七 E ] ( 寸 円一号 ) ω 一 ∞ ロ ︿ 25 15 20 Til11e (s) ハ U lFig.4 Diagram of suspended rope with loadmass
y",+1
(
1
)
二 y,,,(
t
)
十11
土
J2{
2
ωo(t-r)}{ん(
r) -y",-l (仰
T 川 ω;全g
(
λ+m
)
/
LJz [ E ﹂ = 。 ニ 苫 O 且 亡 。 且 己 コ 出 A 仏 寸 n x U ベノ -つ -n x U A U マ ハ υ ハ U 1 1 1 1 A υ ハ υ ハU ハ U A U ハU ハU ハU ハU 一 一 一 ζ J 吋 〆 白 0.3 ハ U 1 1 ハ U 1 1 ﹁ ノ 旬 、 J ハ H V ハU A U A U { 司 E } ( 寸円{持 ) ω 一 同 己 ︿ 0.2 が得られる目 20 15 10 制御員JIは西郷が従来から提案している境界条件の影 Til11e (s) 響を受ける境界節点方程式が波動伝搬解を満たすよう Fig. 3 Controlled response;length ofimaginary pendulum: Ca)0.9m,Cb)0.24m,Cc)0.12m に補償制御する手法で,懸垂索上端支持境界から 1差分 間隔の索位置に置いて,節点番号/1の境界節点運動方程 式(11)が内部節点方程式と同じになるよう式(12)右辺 懸 垂 索 波 動 制 御 法 差 分 制 御 則 3. の強制項を制御力として作用させる比
三
{-(λ十月一刊
y"ー1+ 2(λ叫ん}
= 0 L (11) 1 図4に示す下端に集中質量を有する懸垂索の運動]方 3.JJ4L
十
(λ+n -lj2)Y"_1 十2(λ叫ん)
LlZ、 , 二(λ+n +1
/
2)ん IL (12) 程式は式(8)で与えられる 4)会
913+zp+214LO) 制御項のYII+lは実在しない仮想、変位であり,実在変位 Yρ九一lから波動伝搬解を用いて演算する μは索 zは下端からの座標, M は下端集中質量である目 y(z,t)は横変位, の単位長さ当り質量, ここで, m番目の 式 (1)を差分間隔6zで中央差分近似すると,制御シミュレーション
図5
は下端質量を有しない長さ 1mの懸垂索の制御 差 2 応答で,市JI御変位を:tlcmに制限した場合のである 3. 節点方程式は川子
{-(λ+m-l)Y"'_l+2(λ+ m判
y",-(λ十m)Y"'+l} ζ~L =0;λ=M/
μ L (9) 分制御則は50分割で導出したもので,応答計算は懸垂 索の悶有モード関数 (0次第 1種ベッセル関数)を用い p h u q / ︼ 第2章の多重単振子系の場合と類似の手続きからク レ ー ン 探 れ11ーめ制御装置の開 発 Dcvelopmenlof vibration controlofcran.、system l出羽むた玄 鄭 小欄 4.
考察とまとめ
クレーンの振れ止め制御法として対象を単振子系と して扱う方1
1:;と下端質量を有する懸垂索として扱う方 法との二面からのアプローチを試みている. 下端質量がない場合は懸垂索として扱わなければな らない.木稿で紹介した~i~~垂索波動制御手法がシミュレ ーションではあるが有効で、あることが確認された(現在 実験検証中).一方,荷を有する場合の制御性は多重単 振子制御が懸垂索制御に比べて制振性に優れているよ うに見えるが,支持点変位の大きさと整定時間の詳細な 検討が必要である.タワークレーンの新しい機構として 制御装置を開発するにはコンパク卜な空間で制振性を 向上させる必要があるためである. 波野]制jililJに基づく上記二手法で,懸垂索市lJ1削!は索長さ には関係しない制御 法 で あ る 多重単振子制御は制御則 (a) にロープ長が現れないが,市JI御性はロープ長に影響され ハ リ (a) ハ リ。
4 6 8 Time (5) 10 12 2 -0.1。
0.2 0.4 0.6 0.8 Rope pOS ition(111)Fig.5Controlled response of suspended rope without
load mass. l.E-OI E 】caEJ 5E-02 C 司 U J 0.E+OO
5
トー5.E-02 C -l.E-O 1。
I .E-O1 〆 )'戸口ー、 E U ロ に国 U J O E+ 0 05
ト5.E-02。
ーI.E-O1。
40 80 Time (5) 120 0.2 0.4 0.6 0.8 Rope p05 ition(111)Fig.6Controlled response of suspended rope
with load mass
ている.十分短い時間で整定していることが分かる.図 6は下端質量比λ=5000で制御変位を士1CI1lに制限した 場合の制御応答である.円借質量を有する懸垂索は固有 モード、が求められないので応答計算は差分モデ、ルで、あ る 整定にはl分以
t
の時間を要するが;fII1
御l許容変位 が十分小さくても制御できることが分かる.下端質量の ある懸垂索制御で制御許容変位を大きくすれば整定H寺 問が短くなるが,索全体が制御許容変位内の応答になる と索が鉛直線状になり以後の制御応答は許容変位値に 関わらずほぼ│同じ挙動を示す る 制 御性と制御アルゴリズムの複雑さの トレードオフ となるが,必要であれば,大まかなロープ長情報を用い てロープ長に対応したパラメータ可変制御プログラム での対応は零易である.現在実験検証中であるー 参考文献 1 ο) 8a創Ig,O仏M.,叶Tani, K.and Usui, H., V山‘百叫a抗tτ¥'av巴ling8uspended 8ysωtem Us臼ingWave Absorbing
Control, Transactions of th巴ASME,Journal of Vibration
and Acoustics, Vol.125, July (2003), pp.343.350
2) 鄭小欄,西郷宗 !,Z 多重懸垂系の波動制御1,R本殿械学会
D&D Conference2014講演論文集, 2014年8月,東京
3) XiaolanZheng and Muneharu 8aigo,WaveControl of
suspended rope baseclon finiteclifference model
Proceeclingofthe21stlnternationalCongress on Souncl
anclVibration, July, 2014, Beijing
4) Bloclgett, R.E. and Majumdar, A.K., An Analysisof
Elevator Rope Vibration inTall Buildings, Transactions of the ASME, Journalof Vibration, Acoustics, Stress, and ReliabilityinDesign, Vol.105, No. 5 (1983), pp. 5.10 弓 i q ノ 臼