肺癌は死因の第一位
肺癌は世界で最も多い癌で、日本においても、毎年、約11
万人が新たに肺癌と診断されています。また、肺癌は死亡率が高く、がん対策情報 センターのデータによると、10
年相対生存率は、乳癌が79
.
3
%
であるのに対し、肺癌では女性は約31
%
、男性ではわずか18
%
であると報告 されています。組織型としては、肺癌の80
∼85
%を占める組織型は非小細胞肺癌(NSCLC
)ですが、その中でも腺癌が最も割合が多く、肺癌 全体の約40
%
を占めています。1,2 図1肺癌と診断された患者の10年相対生存率は約18%(男性) 肺癌におけるALK
遺伝子変異 ドライバー遺伝子の変異は、肺癌の増殖や転移において重要な役割を担っています。これらの変異の大部分は若年性で非喫煙者の肺腺癌に おいて認められます。ALK
遺伝子は、受容体型チロシンキナーゼであり、2
番染色体の短腕上に位置しています。他の遺伝子と転座や逆位に よって形成されるALK
融合遺伝子は、非小細胞肺癌の3
∼5
%
で認められ、重要な発癌要因と考えられています。肺癌で最も多いALK
の融合 相手はEML
4
であることが知られており、EML
4
-ALK
融合遺伝子は二量体化に必要なCoild-Coil
ドメインと、チロシンキナーゼ活性をあわせ 持つことから、リガンドの結合なしに常に二量体化し、活性化されることで細胞のがん化を引き起こします。このALK
融合遺伝子により形成 される融合タンパクは、ALK
阻害剤のターゲットとなります。3,4,5 図2
肺腺癌におけるドライバー遺伝子変異6 肺癌における検査 肺癌診療ガイドラインでは、切除不能の非小細胞肺癌において、組織型の特定の後、分子標的治療薬による治療方針を決定するためにALK
変異の検査を行うことが推奨されています。7 また、日本肺癌学会の「肺癌患者におけるALK
遺伝子検査の手引き」においても、適切な患者選別を行うためのALK
検査のアルゴリズムが推奨 されています。8ALK
阻害剤である、クリゾチニブ、セリチニブでは、効能・効果が「ALK
融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」となって おり、ALK
阻害剤の投与に先立ち、適切なコンパニオン診断薬を用いたALK
検査により患者選別を行うことが求められます。ALK
阻害剤の 適応患者に関しては、各ALK
阻害剤の添付文書を参照ください。EGFR 50% KRAS 15% ALK 5%
MET 4% unknown 22%
100%
肺癌における
ALK
免疫染色の標準化
ベンタナOptiView ALK
(D
5
F
3
)は、ホルマリン固定パラフィン包埋標本において、免疫組織化学染色法により癌組織又は細胞中に発現するALK
融合タンパクを検出する体外診断用医薬品であり、クリゾチニブ又はセリチニブによる治療の適用を判断することを目的として用います。9-12 切除不能な肺癌患者には、迅速で信頼性の高い標準化された検査によって、治療の選択肢を評価することが必要とされます。ベンタナOptiView ALK
(D
5
F
3
)は専用の自動染色装置用に最適化された調製済みの試薬であり、安定した染色結果を提供します。 また、FISH
法による確認が不要なため、免疫染色の結果のみで、クリゾチニブやセリチニブといったALK
阻害剤の投与判断が可能です。切除 検体、針生検、気管支生検およびホルマリン固定パラフィン包埋されたセルブロックなど、あらゆる種類のヒト肺癌検体において染色が実施 できます。図
3
ベンタナOptiView ALK
(D
5
F
3
)によるALK
免疫染色の標準化迅速な検査結果 ベンタナ
OptiView ALK
(D
5
F
3
)の 染 色 工 程は約4
時 間 であり、FISH
法による確認を必要としないため、検査結果返却までの時間 短縮が期待できます。 簡便な判定方法 ベンタナOptiView ALK
(D
5
F
3
)では、検出試薬としてタイラマイド 法による増感を用いているため、微量な抗原でも強く発色させること が可能です。ALK
融合タンパクが存在する場合には、DAB
が強く 発色するため、染色強度の評価や陽性率のスコアリングを必要と しません。陽性/陰性の単純な判定方法は、判定者間の一致率や 再現性を高めます。 外部精度保証機構における評価 北欧の品質保証機関であるNordiQC
において、ベンタナOptiView
ALK
(D
5
F
3
)が最も広く使用されており、高い評価が得られている ことが示されています。13 図4ベンタナOptiView ALK
(D
5
F
3)による染色(非小細胞肺癌)
患者検体 (非小細胞肺癌;ホルマリン 固定パラフィン包埋切片) AM P OptiV iew D 5 F 3 調製済み試薬 (一次抗体;ALK(D5F3)、検出試薬;ベンタナ OptiView DAB ユニバーサルキット+ベンタナ OptiView 増感試薬) 自動染色装置による染色工程の 完全自動化 (対象機種:ベンタナベンチマークULTRA、 ベンタナXTシステムベンチマークモジュール XT、ベンタナベンチマークGX) 安定した染色結果 陽 性 / 陰 性 の 簡 便な判 定 方 法により、ALK阻 害 剤 (クリゾチニブ、セリチニブ)による治療の適用を判断 します。+
+
=
ベンタナ
OptiView ALK
(
D
5
F
3
)の特長
タイラマイド法を使用した高感度の
ALK
融合タンパク検出キットALK
融合遺伝子は未分化大細胞型リンパ腫においてNMP
遺伝子と の融合遺伝子として発見され、現在も未分化大細胞型リンパ腫の 鑑別にALK
免疫染色が用いられています。肺癌においては2007
年 にEML
4
-ALK
融合遺伝子が報告されましたが、肺癌におけるALK
融合遺伝子は未分化大細胞型リンパ腫における
ALK
免疫染色法で は検出が難しいことが報告されています。そのため、肺癌におけるALK
免疫染色は、高感度の検出系と適切な一次抗体を使用する必要 があります。14ベンタナ
OptiView ALK
(D
5
F
3
)は、肺癌におけるALK
タンパクの 検出に適した一次抗体(クローン;D
5
F
3
)を採用しており、さらに タイラマイド法による増感を用いた検出を行うため、十分な感度が 得られます。 ベンタナOptiView ALK
(D
5
F
3
)の製品特徴 タイラマイド法を用いた高感度の検出系 肺癌ALK
融合タンパク検出に適した一次抗体(クローン;D
5
F
3
)14 ベンタナベンチマークシリーズによる染色の完全自動化 最適条件に調製された希釈済み試薬 短い染色時間(約4
時間) 光学顕微鏡による観察のため組織形態と同時観察が可能 簡便な判定方法(陽性/陰性のみの判定で、陽性率や陽性強度の 評価は不要) 陽性細胞数に関係なく判定が可能 ベンタナOptiView ALK
(D
5
F
3
)の信頼性 ベンタナOptiView ALK
(D
5
F
3
)は染色工程が完全自動化されているため、高い再現性を 提供します。また、簡便な判定法により、判定者間の一致率が高いことが知られています。15 肺癌におけるALK
融合遺伝子の検査に従来用いられていたALK FISH
法との相関が高い ことも報告されています。16適切な検出方法
非小細胞肺癌において
ALK
の免疫染色を実施する場合、適切なクローンの一次抗体を使用することに加え、組み合わせる検出試薬が重要と なります。ベンタナOptiView ALK
(D
5
F
3
)の染色には、ベンタナOptiView
増感試薬の使用が必須となります。HRP HRP HRP HRP HRP HRP HRP HRP HRP HRP HRP HRP HQ HN HN OH OH OH OH HQ HQ HRP HQ HQ H2O2 H2O2 H2O2 DAB DAB HRP HQ HRP HQ HRP HQ HRP HQ HRP 増感試薬 タイラマイド-HQ 一次抗体 ベンタナ ALK(D5F3) OptiView DAB マルチマー-HRP 増感試薬 マルチマー-HRP OptiView DAB リンカー-HQ 組織 組織中のアミノ酸 ベンタナ OptiView 増感試薬を使用した ベンタナ OptiView ALK(D5F3)染色 他社クローン5A4抗体+ポリマー試薬による染色
適切な患者選別のために
適切な患者選別のためには、正しい
ALK
免疫染色を実施することが重要です。ベンタナOptiView ALK
(D
5
F
3
)は一次抗体と検出キットの 組み合わせにより体外診断用医薬品として承認されています。 必要な試薬など ベンタナOptiView ALK
(D
5
F
3
)の各構成試薬は、ベンタナベンチマークシリーズ用に最適化されています。 体外診断用医薬品製造販売承認番号:22900
EZX
00041000
商品コード 製品番号 製品名 包装単位 一次抗体 518-113735 790-4794 ベンタナ ALK(D5F3)RxDx 50テスト 陰性コントロール試薬 518-111182 790-4795 陰性コントロール ウサギモノクローナル抗体用 250テスト 検出試薬 518-111427 760-700 ベンタナ OptiView DAB ユニバーサルキット 250テスト 増感試薬 518-113742 760-099 ベンタナ OptiView 増感試薬 50テスト 推奨プロトコール ベンチマークXT, GX 【プロシージャ名:OptiView DAB】
Cell Conditioning CC1 92min Pre-Primary Peroxidase Inhibitor Selected
Antibody 16 min
OptiView HQ Univ Linker 12 min OptiView HRP Multimer 12 min OptiView Amplification Selected OV AMP H2O2, OV Amplifier 8 min OV AMP Multimer 8 min
Counterstain Hematoxylin Ⅱ, 4 min Post Counterstain Bluing, 4 min
ベンチマークULTRA ベンチマーク
ULTRA
ではALK
専用プロシージャによる染色が必要 となります。 【プロシージャ名:U VENTANA ALK
(D5
F
3
)】 プロトコールステップ 設定内容 Antibody(Primary)VENTANA ALK AB – 16 min
(“EU/Other”を選択) もしくは
Negative Control Counterstain Hematoxylin Ⅱ, 4 min Post Counterstain Bluing, 4 min
コントロールスライド
ベンタナ
OptiView ALK
(D
5
F
3
)の染色を行う場合には、必ず同時に精度管理用コントロールスライドの染色を行い、染色操作が適切に 行われていることを確認してください。自家製精度管理用コントロールスライド
NordiQC
(北欧品質保証機関)において、虫垂組織がALK IHC
染色の良いコントロール組織であることが示されています。虫垂組織にはALK
陽性細胞と陰性細胞の両方が存在しているため、一枚で陽性コントロール組織と陰性コントロール組織両方の役割を果たします。陽性 対照としては、神経節細胞の細胞質に顆粒状の強いDAB
発色が認められ、陰性対照としては、腺上皮細胞、筋組織、リンパ組織においてDAB
発色が認められないことを確認してください。判定方法 非小細胞肺癌における判定基準は、弊社が提供する添付文書および検査ガイドを参照ください。 非小細胞肺癌におけるベンタナ OptiView ALK(D
5
F
3
)の染色例 判定 染色態度 陽性 陽性腫瘍細胞数にかかわらず、腫瘍細胞の細胞質において強い顆粒状の染まりが認められる 陰性 腫瘍細胞の細胞質において強い顆粒状の染まりが認められない 判定上の注意 (1
)以下の染色はアーチファクトとして知られているものであるため、判定対象から除外する。 ・肺胞マクロファージにおける細胞質への薄い染まり ・神経由来細胞への染まり ・腺上皮細胞への染まり ・リンパ球浸潤による散在性リンパ球への染まり (2
)非小細胞肺癌における正常粘液細胞や壊死部分においてもバックグラウンド染色が認められることがあるが、これらの反応も判定対象 から除外する。 (3
)本品はALK
融合タンパク以外に全長ALK
タンパクにも反応するため、神経内分泌分化を示す腫瘍などにおいて、陽性反応が認められる 場合がある。全長ALK
タンパクによる染色が疑われる場合には、細胞形態や組織構築および、他の抗体染色(クロモグラニン、シナプト フィジン、CD
56
など)の結果から総合的に判断することが推奨される。 陽性症例(x20) 陰性症例(x20) アーチファクト (正常腺上皮細胞への染まりは判定対象から除外) (リンパ球系の細胞への染まりは判定対象から除外)アーチファクトReferences
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