理学 療 法 学 第23巻 第
8
号512〜517
頁 (1996年 )報 告
慢 性 呼 吸 器 疾
患 患
者
の
安 静 時
お
よ び
運
動
時 呼 吸
運
動
*小
室
透
1>聞
瀬 教 史
)辻
田
純
三 3)居
村
茂
幸
2)藤
原
誠
2)稲 森
義
雄
)大 西 秀 明
5) 要 日慢 性 呼 吸 器
疾
患例
の 安 静 時お よ び 運動時
の呼 吸 運 動の特
異性
を知る た めに,酸素補給
無 し で歩 行 可 能な15
例の一
回 換 気 量,
呼 吸 数,
周 径 変 化による胸 腹 部 呼 吸 運 動な ど を測 定 し,
健 常 男 性20
名と比 較 検 討した。 そ の結 果,
安 静 時および軽 度 運 動 時で は慢 性 呼 吸 器 疾 患 例の胸 腹 部 呼 吸運 動に特 異 的な低 下は見 られな か っ た。 また,
腹 部 呼 吸 運 動と胸 部 呼 吸 運 動との 比 にっ い て は,
最終
運動時
におい て も特
異 的な差は見ら れなか っ た。更
に,慢性
呼吸器 疾患例
が示 す 呼 吸 運 動 と肺機
能お よ び換 気 反 応との 間に関連性
は見ら れ な か っ た。 以 上 の結
果よ り, 呼 吸 運 動の量 的 変 化や片 寄りは一
様な もの で は ない こ と が示された。 従っ て,
慢 性 呼 吸 器疾
患例
に対
して呼
吸運動
の改善
を目 的に横隔膜呼
吸訓練
な どを行
うに際
して は,各
症例
の特
性を充分
に把握
す る必要
が あ る。 キー
ワー
ド 慢 性 呼 吸 器 疾 患,
肺 機 能,
呼 吸 運 動 目 的* Thoracoabdominal MotiQn on Breathing During Rest and Exercise in Patients with Chronic RespiratQry
Disease
1)大阪厚生年金 病 院リハ ビリ テ
ー
シ ョ ン科 (〒553大 阪府 大 阪 市 福 島 区福 島4−
2−
78) Toru Komuro,
RPT :Osaka Koseinenkin Hospital2)兵 庫 医 科 大 学 病 院リハ ビ リ テ
ー
シ ョ ン部Kyoshi Mase
,
RPT,
Shigeyuki Imura,
RPT,
Makoto Fuziwara,
MD :Rehabilitation Center,
Hyogo College of Medicine3)兵 庫医科 大 学 第
一
生 理Zyunzo Tsujita
,
MD : The First Department ofPhys三〇10gy
,
Hyogo College of Medicine 4)兵 庫 医 科 大 学 行 動 学Yoshio Inamori
,
MA :Departrnent of Science Behavior,
Hyogo College of Medicine
5)東 北 大学大 学 院 運 動 機 能 再 建 学 部
Hideaki On孟shi
,
RPT : Department of RestQrative Neuromuscular Surgery and Rehabilitation,
Tohoku UDiversity Graduate School ef Medicine(受 付日 1996年
3
月18日/受 理日 1996年9
月21日) 慢 性 呼 吸 器 疾 患に対 する肺理学 療 法の重 要な手 技の一
っ と して,
腹 部 呼 吸 運 動の量 的 変 化か ら判 定 するい わ ゆ る腹式
呼 吸の促 通が行わ れて きてい る。 し か し,
腹 式 呼 吸の 換 気に対 する有 用 性につ い て は,
否 定 的な報 告 も多い。Roussous
ら ’) は 腹式
呼吸 に よ り肺
底部
の吸 気 分 布が増 加 するこ と を報 告して い る が, こ の 研 究の対象
と な っ て い る の は健 常者
で ある。 これに対 して,Grinby
ら 2) は 慢 性 閉 塞性
肺 疾 患(
Chronic
Obstructive
Pulmonary
Disease
:COPD
) 症 例に対 して同 様の研 究を行い
,
腹 式 呼 吸に よ る吸 気 分 布の変 化は 見 られ ない ことを確 認 している。 また,Sackner
ら3)は ,腹式呼
吸が呼 吸仕事
量 の 増 加を招来
し得
るこ と,COPD
におい て は腹式呼
吸が自
然 呼 吸以 上 の 効 果 を持
た な い こ と を示 唆 して い る。慢 性 呼 吸 器 疾 患 患者の安 静時お よ び運動時 呼 吸 運 動
513
Fitting
ら4) は,
吸 気 努 力の感 覚が胸 腔 内 圧の変 化 と関 連 し, 呼 吸 運 動の違いと は関
連し ない こ と を報告
してい る。 ま た, 同症
例が実 際どの程 度正常 の呼 吸 運 動か ら逸 脱 して い るのかを量 的に確認 し, 腹 式 呼 吸 促 通の必要性
を明
確に し た研究
は少
ない と思わ れ る。 こ の よ う な事実
に も関わ らず, 腹 式 呼 吸の促 通が汎 用さ れて い る。 我々 は, 適 切な呼 吸パ ター
ンの改 善や呼 吸 運 動の改善
に対
する治療
手技
の選択
を行う た めの 基礎 資 料を得るた めに,
健 常 男 性および慢 性 呼 吸 器 疾 患 症 例が示 す一
回 換 気 量と呼 吸 数の変 化 (呼吸パ ター
ン)
や,胸 腹部
の 呼 吸 運 動が安 静 時および運 動に際してどの様
な変化
を示す か,
そ して,
その 変 化 に は どの様な因 子が強 く関 与 して い る か につ いて検 討 を重ねて き た5’
D。 その結果
,健常者
で も胸部
呼 吸運動
が優 位な ものが ある こと,
慢 性 呼 吸 器 疾 患の 呼 吸 数や一
回 換 気 量 変 化に は3
っ の パ ター
ンが見 られ るこ と, こ れ らの パ ター
ンは 肺 機 能より特
徴づけるこ とは で き ない こと,
また,
最終
運 動 時に示 さ れ る パ ター
ン を推 定 する た めには何 らかの 運 動 を 負 荷 した状 態で観 察 する こと が必 要であ るこ と を報告
してき た。 今 回の 研 究は,
慢 性 呼 吸 器 疾 患 症 例 が 示 す 安 静 時および運 動 時の胸 腹部呼
吸運動
が健常者
よ り ど の程 度 逸 脱 してい る か,
そ して,
そ の 呼 吸運動
の 変 化には どのよ うな因 子が関 与して い るかを 確 認 し,
いわ ゆる腹 式 呼 吸 を 促 通 する事の妥
当 性 を検
討
するこ と を目的
と し た。 対 象お よび 方 法対 象は, 酸 素 補 給 無しで
独歩
可能
な慢 性 呼 吸 器 疾 患 症 例15
例 (男性
8
例,女性
7
例)
である。 平均年齢
は,
60
±12
歳,
肺 活 量 は1879
±775m1
(62
±20
% ),一
秒 量は952
±338m1
(62
±24
%)・
であっ た。尚
,疾
患は陳旧性 肺 結核
7
例
, 汎 発 性 細 気 管 支炎
4
例
, 肺 気 腫3
例,
肺 線 維 症1
例であっ た。運
動負荷
テ ス ト は,
環境
温25
度,
湿 度50
%の人 工気 象室内で,
安 静 座 位を約30
分とっ た後に 行っ た。 労 作は電 気 制 動 式 自転 車エ ル ゴ メー
ター
(
竹
井 機 器 製ハ イパ ワー
自 転 卓エ ル ゴ メー
ター
)
で,
10
ワ ッ トで3
分
聞,
その後1
分 毎に15
ワ ッ トずっ 増 加さ せ る多 段 階 漸 増 負 荷 法 を用いて ,60
回転/
分の駆 動 が 行え な くなる まで,
ま た は,
息 切れの た め 運動 遂 行が困 難と な るまで行 っ た。 そ して,
その間の分 時 換 気 量 ,一
回 換 気 量 ,呼
吸数
,酸素
摂取
量を,呼気
ガス分析
器 (ミナ ト医科 学 製MG
360
)
を 用い て,経時的
に測 定 した。 また同時
に,Wade
の方 法s) に準じて 作 成 した水 銀ス ト レ イ ンゲー
ジを用 い て, 胸骨剣状突起
部と肋 骨 弓の外側
最下端
直 下の高さの周 囲 径 変 化より,
胸 部 と 腹 部の 呼 吸 運 動を測 定した。 こ の方 法は,水
銀で満
た した軟 性チ ュー
ブの 内径
の変化
(長さの 変 化 ) に伴い水 銀の 電気抵抗
が変化
する こと を利 用 して 長さの変化
を電 圧の変 化に変 換 する もの で あり, 両 者の間に高い相 関が得ら れ るこ と を我
々 も確 認 し ている。 そ して,
こ の研 究によ り得 られ た 結 果 を,
以 前に健 常 男 性20
例 (平 均 年 齢24
±4
歳)
を 対 象に して 得た胸 腹部呼
吸運動
の結
果 6〕 と比 較検討
し た。 尚, 各 群 間の差にっ い て は,一
元 配 置 の分散分析
を 用い た。 結 果1
,
安 静 時お よ び運動時
の胸 腹 部 呼 吸 運 動にっ い て慢 性
呼
吸器疾
患 症例
呼 吸 運 動を,安 静 時,
10
ワ ッ ト運 動中
,最終
運動時
に分 けて検 討 する と,安静
時
は,
胸 部が1
.
3
±e
.
5cm
,
腹 部がL6
±O
.
9cm
で あ り,
健 常 男 性 と比 較 して有
意な差 は見ら れ な か っ た。 ま た,胸 部の周
囲径
を腹 部の周 囲 径で除 した値 (
以下,呼
吸 運動 比 とする) は0.
95
±O
.
54
で あ り,
健 常 男 性との 間に有 意な差は な か っ た。 分 時 換 気量につ いて も,健常男性
との 間に有 意な差は 見 られなかっ た(
表 1J
:段)
。10
ワ ッ ト運 動 中の胸 腹 部 呼 吸 運動
お よ び呼 吸 運 動 比にっ いて も,
健 常 男 性が同程度
の分
時 換 気 量 を示 し た40
ワ ッ ト運動中
と 比較 して有 意な差は見 ら れ な か っ た。 ま た, 呼 吸 数につ い て は健 常男 性
よ り高値
を,
一
回 換 気量 につ い て は低値
を示 して いた (表1
中 段 )。 し か し,
最 終 運 動 時 (健 常 者 群190
ワ ッ ト〜
250
ワ ッ ト, 慢 性 呼 吸器
疾 患群
25
ワ ッ514
理 学 療 法 学 第23
巻 第8
号 表 1 健常者および慢性呼吸 器 疾 患 例の胸 腹 部 呼 吸 運 動および換 気 反 応 安 静 時 健 常 男 性 慢 性 呼 吸 器 疾 患 例 胸 部 呼 吸 運 動 (cm ) 腹 部 呼 吸 運 動 (cm ) 呼 吸 運 動 比 分 時 換 気量 (1/分 ) 呼 吸 数 (回/分 )一
回換気量 (ml ) 1.
0
±0.
34 1.
2 ±二〇.
390.
87
±0.
41
1G.
1 ±1,
8
16.
0
±3.
7
642
±136
1.
3
±0.
5 1.
6 士0,
9095
±0.
54
10.
6
±2.
5
1
&8
±5,
4600
±197
軽 度 運 動 中 健 常 男 性 (40
ワ ッ ト) 慢 性 呼 吸 器 疾 患 例 (10
ワ ッ ト) 胸 部 呼 吸 運 動 (cm ) 腹 部 呼 吸 運 動 (cm ) 呼 吸 運 動 比 分 時換気量 (1
/分 ) 呼吸数 (回/分)一
回換気 量 (ml )1.
3
d:O.
28 1,
5
:ヒ0,
46
0.
92
±0.
31
18,
2
±3.
4
21.
4
±3.
9862
±146L5
±O.
7 1.
7
:ヒ0,
5
1.
02
±0.
62
16.
6
±3.
8
25.
9
±5.
2
★663
±176
※ 最 終 運 動 時 健常男 性 慢 件 呼 吸 器疾患 例 月匈剖S呼吸運 動 (cm ) 腹 部 呼 吸 運 動 (cm ) 呼 吸 運 動比 分 時 換 気量 (1
/分 ) 呼吸数 (回 /分)一
・
.
・
回 換 気 量 (mD 3.
3 ± 0.
88 3.
5 ± 1.
19
1.
11
±0.
64
101.
1 ±23.
4 43,
3 t: 6.
4 2360:±:490 1.
9 ± 12※2.
0 ±0.
8
※1.
17
±0.
85
27.
5 ±10.
3※ 34.
0 ±6.
9
※840
±299
※ ※ 健常男子20名か ら得ら れ た値より有意に小さい (p<0.
O/),
★ 健 常 男 子20名か ら得ら れ た値より有意に大きい (pく0.
01),
注) 呼吸 運 動 比=
胸 部 呼吸 運 動/ 腹 部 呼 吸運 動 卜〜85
ワ ッ ト)
に お いて は, 胸部
お よ び腹部
の 呼 吸運動
は,健常男性
よ り危険率
1
%で有
意に低い 値を示し た。 ま た,
分 時 換 気 量,
一
回換
気量,
呼 吸 数 も,
慢 性 呼 吸 器 疾 患 例 が 危 険 率1
%で有 意に 低い値
を示 して い た。一
方
, 呼吸運 動 比につ い て は,有
意な差は見られなか っ た(
表
1
下段)
。2.
胸 腹 部 呼 吸 運 動と肺 機 能との関 係にっ い て慢
性 呼 吸器疾
患 症 例の 安 静 時,10
ワ ッ ト運 動 中,
最終
運動時
にお け る呼吸運 動と肺 機 能との 関 係を 見る と, 肺 活 量, % 肺 活量,一
秒量,一
秒 率, 最 大 呼 気 流 量と もに,
各 時 期の呼 吸 運 動と有 意な相 関 を示し た もの はな か っ た。 ま た,
呼 吸 運 動比 と肺 機 能 との間に も,
有意 な相 関は見ら れ な か っ た (表2
)。3
.
安 静時 お よ び 運動 時の 胸腹 部 呼 吸 運 動の特 性と換 気 反 応お よび肺 機
能
の関 連にっ い て健
常 男 性の平均値
に ±1
標
準 偏 差 を 加 減 するこ とで求
め た呼 吸運動
比の範 囲を も とに,
これ よ り 大 きなものを胸 部 呼 吸 運 動 優 位 群 (以 下TH
群 ),
小さ な ものを腹 部 呼 吸 運 動 優 位 群 (以 下AB
群 ),
こ の範
囲 内にあ るものを混 合 呼 吸 運 動 群 (以 下 混 合 群 )と して分 類し,各群
間に お ける分 時 換 気量,一
回 換 気量,
呼 吸 数を比較
す る と, い ず れの 因 子 におい て も, 安 静 時や10
ワ ッ ト運 動 中だけで はな く,
最 終 運 動 時 (表3
)に おい て も3
群 間で有 意 な差は見ら れなか っ た。 考 察今
回は,
対 照群
と して20
代の健常男
性を用いた。
通 常,
患 者 群と年 齢が あっ た対 照 群を用い るの が 原 則である。 しか し,
高 齢 者で は肺 機 能だけで は な く胸 郭,
肺の コ ン プ ラ イア ンス に潜 在 的な異 常慢 性 呼 吸 器 疾 患 患 者の安 静 時 および運 動 時 呼 吸 運 動
515
表2
呼 吸運動と肺機能 間の相 関係数 肺 活 量 % 肺活量一
秒量一
秒率 最 大 呼 気 流 量 胸部呼 吸 運 動 安静 時O.
Ol
10
ワ ッ ト運 動 中0.
06
最終運動時0
ユ6
0.
ユ6
0.
19
0.
16
0
ユ0
0.
41
0.
38
0.
25
0.
49
0.
35
0.
020
.
25026
腹 部 呼 吸 運 動 安 静 時10
ワ ッ ト運 動 巾 最終運動時0,
020
.
410
.
27
0.
03
0.
17
0
,
21
0.
40
0.
16
029
0.
27
0.
31
0.
10
0
.
100
.
22G
,
11
呼 吸 運 動 比 安 静 時10
ワ ッ ト運 動 中 最 終 運動時0.
140
.
320
.
170
ユ8
0
,
04
0.
150,
26
0
.
06
0
.
49
0、
08 0.
06 0.
36O,
150
,
250
.
20 表 3 最 終 運 動 時の呼 吸 運 動 特 性と換 気 反 応 胸部呼 吸 運動優 位群 腹部呼 吸 運動優 位 群 混合 呼 吸運動 群 分 時 換 気量 (1
/分 )一
回 換 気量 (mD 呼吸数 (回/分)24,
3
±9.
8814
±25533
±5.
8
32.
9
±12.
0
980
士36935
±9、
4
21.
3±3.
4622 ±2634 士4.
8
※ 各 群 間で有意 差 な し,
を有
す る もの が多
く,例
え呼
吸器
疾 患の既往
が な くて も健常群
と して採
用 するの には疑問
が ある。 従っ て,
個 体 本 来の呼 吸パ ター
ン や呼 吸 運 動を表 出で きる能 力を持っ 対 照 群を選 択 すること は, 胸 腹部
呼吸 運動
の 比較検討
を行
う上で有
用であ る と 考え る。 今 回 対 象と し た様な能 力を持っ慢 性 呼 吸 器 疾 患 症例
で は,安静
時お よ び10
ワ ッ ト とい う比較 的軽
度
の 運動 中
において は,健常者
と比較
して胸腹部
呼 吸 運 動の低 下は見ら れ な か っ た。 また,
最 大 運 動 時におい ては, 胸 部, 腹 部 呼吸運 動の 両 者が有 意に低
’
ドして い ること が示さ れ た。一
方, 呼 吸運動
比の変 化よ り呼 吸 運 動の片 寄 りを見る と,
安 静時
および運 動 時に お い て 有意 な差は見られ な か っ た。 以 上の結 果よ り, 慢 性 呼 吸 器 疾 患に おい て も 表出
さ れ る胸 腹部
呼吸 連動は一
律
では な く,
症 例 に応 じ た呼吸 運動
の強
調 を行
わ な け れ ば な ら ない こと が示 唆さ れ る。 ま た,
我々 は 8) 健 常 男 性に吸 気 および 呼 気 抵 抗 下で 自転 車 駆 動 を 行 わせ た時,抵抗
を負荷
しない時
と比較
して 胸部呼
吸 運動だ け が有 意に変 化 するこ と を報告
し た。 これは,肺
に 器質的
な変 化を持た ない健 常 男 性で は,
呼 吸 抵 抗 が増 加 してい る状 況 下で運 動に よ り必要
な換気
量 を維 持 する た めに 胸 部 呼 吸 運 動 を 増 加させ るこ と を 示 唆 する。
従っ て,
胸部呼
吸 運動
が優位
であ る 慢 性 呼 吸 器 疾 患 症 例の 中に は,
必 然 的に胸 部 呼 吸 運 動を強 調 する ことで病 的な状 況に対 応 して い る ものも存 在 する か もし れな い。従
っ て, この よ う な症例
に対
して, 腹 部 呼 吸 運 動を強 調 する こ とは か えっ て換 気 量を減 少さ せ る可 能 性がある。次に
,
軽 度 運 動 時に おい て一
回 換 気 量が健常者
と比較
して有
意に減少
してい るにも か か わ らず,
呼 吸 運 動には有 意な低 下が見 られ な かっ た。 これ は,
症 例に よ っ て は呼 吸 運 動が一
回換気
量 の増加
を伴
わない見せ か けの変化
と な る場 合が ある こと 示唆
してお り,呼
吸 運動
を強
調 する際に は呼 吸 運 動の 増 加が一
回 換 気量の 増 加を反 映 して い るこ と を必 ず 確 認し な け れ ば な ら ない ことを示 す。 ま た, 症 例の換 気 能 力 を越え た呼
吸 運動
の 強 調を行うこ とは, 実 際に は呼
吸仕事
量を増 加す る だ けに と ど ま るこ と も推 測さ れる。次
に,
今 回 対 象と し た慢 性 呼吸器 疾 患例
で は,516
理学療 法学 第23
巻第8
号安静時
お よ び 運動時
に表出
さ れ る胸腹部
の 呼 吸運 動と肺 機 能 との関 連 性は少ない こと が示 唆さ れ た。 また, 肺 機 能や換 気 反 応から呼 吸 運 動の片 寄 り を 関連
づ け ること はでき な か っ た。 以前
,我
々 は慢
性 呼 吸 器 疾 患における運 動 時の 呼 吸パ ター
ン の変 化, 即 ち,一
回 換 気 量や呼 吸 数の変 化 に は複 数の形
が あ り, そ れを 肺機
能 と 関 連づ け るこ とはで き ない こと を報
侍
し た5) 。 呼 吸パ ター
ン は,
延髄
の 形 成された一
次 的 呼 吸 リ ズム が,動 脈 中お よび脳 脊 髄 液 中の 二酸
化炭素濃度
な どの化学的刺激
や,
肋 間 筋,
横 隔 膜,
気 管な ど か らの機 械 的 刺 激を始
め とする多
くの 情 報 を もと に橋で 二次 的に修 飾 さ れ,
呼 吸 仕 事量 を最 小 限とする よ うに設定
さ れ る9)1°〕 。 そ の結
果と して形成
さ れ た呼吸中枢
ド ラ イ ブ が,
肋 間 筋や横 隔膜な どの 呼 吸 筋に伝 達 さ れ る。 そ して,呼
吸運 動は胸郭 ・
肺の分
節 的な コ ン プライア ン スや呼 吸筋筋
力によっ て修飾
を受
け た 上で表 出さ れ, その結 果は再 び 呼 吸 中 枢へ 戻る ユ % 従っ て, 呼 吸パ ター
ン と同様
に呼
吸運動
につ いて も肺 機 能とい う単
一
的
な指標
よ り特徴
づ け るこ と は困 難で あ り,
表 出さ れ る形も一
律で は ない 。 ま た,呼
吸パ ター
ン と呼 吸 運 動の 間に も複 雑な関 連性
が存在
す る と考
え ら れ る。 これ よ り,
安 静 時お よび運 動 中に表 出さ れ る呼 吸 運 動の片 寄 りを換 気 反 応よ り特 徴づ け ること は難 しい と考え られた。い わ ゆ る
腹式
呼 吸を強
調 するこ とで 得ら れる利 点につ いて はい くっ かの研究
が行
わ れてい る が, 未だ明 確に さ れて い るとは い えない。 また,
それ らの結果
を鑑みて も,
腹 式 呼 吸の効 果 を 支 持 する 結 果を報 告してい る もの は少
ない 2−
4 )。従
っ て, 腹 式 呼 吸が慢 性 呼 吸 器 疾 患 例に必 ず 有 効である と は’
言
え ない。 慣 例 的に慢 性 呼 吸 器 疾 患に対 して いわ ゆ る腹 式 呼 吸,
即ち,
腹 部呼
吸 運 動の強 調が行わ れて きて い る。 し か し,
臨 床におい て は腹部呼
吸運動
を意 識させ ると かえ っ て 呼 吸の リ ズムが悪 くな る な ど,
その妥
当性
が疑わ しい場 面 もある。 今 回の研 究で 示さ れ た よ うに, 慢 性 呼 吸 器疾
患例
の胸
腹 部運動 が示す臨床
的 意義
は複雑
で あ り, 健 常 者で は安 静 時の呼 吸におい て横
隔膜
の寄与
が高
い とい う事実
があると して も,
常に腹 部 呼 吸 運 動の強 調が有 用 な手段
であ る と はいえな い と考え る。 従 っ て , 臨 床上汎 用さ れて い る腹式
呼 吸 訓練
, 即ち,腹部呼
吸 運 動の 強 調 訓 練を慢性
呼 吸 器疾
患に対
して行
う に際 して は, そ の症 例が明 らか に腹 部 呼 吸 運 動の低下
を示して い ること,肺
の器質
的変化
よ り腹
部 呼 吸 運 動の強 調の有 益 性が期 待で きること (下 肺部
の器質的変化
が少
ないな ど)
な どを充分
に確 認 し た 上で適 応を検 討 する必 要が あ る と考
え る。 參 考 文 献1)Roussous CS
,
et at.
:Voluntary factorsinfluenc
−
ing
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distribution
ofinspired
gas,
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breathing
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rcJkmpWeerk,vazagOzaneeetslktSmeskeeopWfiS
517
<Abstract>
Thoracoabdominal
Motion
enBreathing
During
Rest
andExercise
in
Patients
withChronic
Respiratory
Disease
Toru
KOMURO,
RPT
Osalea
Koseinenhin
HbsPital
Kyoshi
MASE,
RPT,
Shigeyuki
IMURA,
RPT,
Makoto
FUZIWARA,
MD
Rehabilitation
Center,
Hlyago
Cotlqge
of
Medicine
Zyunzo
TSUJITA,
MD
Tiie
First
Dopartment
of
Physiology,
fllyago
Collage
of
Medinne
Yoshio
INAMORI,
MA
Department
of
Science
Behavior,
Rbiogo
College
of
M2dicine
Hideaki
ONISHI,
RPT
Department
of
Restorative
AJeuromuscular
Surgery
andRehabilitation,
7bhoku
Universit),
Graduate
School
of
Mbdicine
We
studiedthoracoabdominal
motionduring
rest and exercisein
fifteen
patients
with chronic respiratory
disease
who could walk without oxygen supplement, andcom-pared
to
the
results withthose
in
twenty
five
unaffected subjects,No
significantdecrease
was observed
in
the magnitude of thoracoabdominal motionduring
rest andlight
exer-cisein
patients
with chronic respiratorydisease,
There
was also no significant changein
the rate of thoracic