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反すうに対するワーキングメモリと注意機能の影響性の検討

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-49 218

-反すうに対するワーキングメモリと注意機能の影響性の検討

○池田 寛人1)、松野 航大2)、高橋 恵理子3)、根建 金男4) 1 )早稲田大学大学院人間科学研究科、 2 )武蔵野大学 通信教育部 人間科学部、 3 )人間総合研究センター、 4 )早稲 田大学 人間科学学術院 【問題と目的】 反すうは「抑うつ気分やその原因に対して,探索的 かつ反復的に思考する」こととして定義されている (Nolen-Hoeksema, Morrow, & Frederickson, 1993)。

反すうは抑うつを始めとした様々な精神疾患の脆弱性 であるため,心理的介入の効果向上においては反すう の維持メカニズムについての理解が重要だと考えられ る。反すうの維持過程や反すうを維持する要因に対し て介入を行う療法としてメタ認知療法(MCT; Wells, 2009)が挙げられる。MCTでは反すうの維持要因を 1 ) 「反すうすることは役に立つ」といったポジティブな 信念, 2 )「反すうすることは止められない」といっ たネガティブな信念, 3 )特定の刺激や処理に注意が 向き,他の刺激や処理に注意を逸らせない注意の機能 低下,の 3 つから理解している(Wells, 2009)。 この,MCTにおける注意とは,他の処理に意識的に 注意を向けるなど,能動的に認知を制御するような働 きが想定されている(Wells, 2009)。この定義から は,たとえば一時的な情報の保持や操作を行いつつ注 意を制御するワーキングメモリ(WM) の機能も類似性 が考えられる。しかし,Tomita, Imai, Kanayama, Kawashima, & Kumano(2017)がWMとMCTにおける注意 とでは賦活する脳領域が異なることを示していること からも,MCTにおける注意とは,「どこに注意を向ける か」といった情報処理の志向性を定める機能だと考え られる。一方で,反すうではWM内の情報を更新できな い傾向や(西村・望月,2014),状況を判断して目標 を切り替える機能の低下など(Altamirano, Miyake, & Whitmer, 2010),WM機能の低下も特徴として示され ている。「どこに注意を向けるか」というMCTで想定さ れてきた注意の制御機能とは別に,一時的な記憶の保 持や,保持した情報を操作するWMの機能も反すうを強 めることが示されれば,反すうの維持メカニズムにつ いての,さらに詳細な理解につながると考えられる。 そこで本研究では,反すうに対して影響性が示され ているWMの更新機能と,目標を切り替えるWMの転換機 能果が,MCTの注意制御機能を統制しても反すうに対 する影響性が示すのか,検討を行う。 仮説:更新機能,あるいは転換機能は,注意制御機能 の影響を統制しても,反すうに対して有意な影響を示 す。 【方法】 1 ) 実験参加者情報 大学生を対象にスクリーニング 調査を行い,実験参加者募集を行った。スクリーニン グには,関口・山田(2017)が開発した実行機能質問 紙を使用した。最終的に20名分の実験データが得られ た(男性 6 名,女性14名)。 2 ) 心理指標 従属変数として反すうを,共変量とし てMCTにおける注意制御機能を用いるために,それぞ れ尺度で測定した。反すうの測定には“反すう型反応 尺度(長谷川, 2011)”を,注意の制御機能の測定に は“能動的注意制御尺度(今井・今井・熊野,2015)” をそれぞれ使用した。また,WMの機能低下は,一時的 な記憶保持の困難や,注意の制御困難を指すため,反 すうの制御困難感,つまりネガティブな信念と交互作 用的に反すうを強めると考えられた。そのため,独立 変数とするために反すうに関するネガティブな信念を 測定した。反すうに関するネガティブな信念の測定に は,“抑うつ的反すうに関するネガティブな信念尺度 (長谷川・金築・井合・根建, 2011)”を用いた。 3 ) 実験課題 WMの更新機能と,目的に応じて注意を 転換する機能を,それぞれ課題で測定した。更新機能 の測定には,短期記憶更新課題を用いて,提示された 刺激の内容をすべて新しく覚えなおす条件と,部分的 に覚えなおす条件,覚えなおす必要がない条件の反応 時間を測定した。条件ごとの反応時間の差分を求め, 更新機能の指標とした。転換機能の測定には,数字-文字判断課題を用いて,刺激が提示される位置ごとに 数字をみるか英語をみるか教示を行い,切り替えが必 要ない条件と,切り替えが必要になる条件の反応時間 を測定した。条件ごとの反応時間の差分を求め,転換 機能の指標とした。 4 ) 倫理的配慮 本研究は早稲田大学「人を対象とす る研究に関する倫理審査委員会」の承認を得て実施さ れた(承認番号:2017-041)。 【結果】 独立変数とした更新機能の指標得点,および転換機 能の指標得点と,反すうに関するネガティブな信念の 平均値を基準として,高群と低群を設定した。更新機 能 (高群,低群)とネガティブな信念(高群,低群) を独立変数とし,能動的注意制御尺度の得点を共変量 とした 2 要因共分散分析を行ったところ,更新機能と ネガティブな信念は反すうに対して有意な主効果を示

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-49 219 -さず,有意な交互作用も示されなかった(F (1, 19) =.39, ns, ηp2=.03; F (1, 19)=.14, ns, ηp2=.09; F (1, 19)=.09, ns, ηp2=.06)。 続いて転換機能(高群,低群)とネガティブな信念 (高群,低群)を独立変数とし,能動的注意制御尺度 の得点を共変量とした 2 要因共分散分析を行った。反 すうに関して,ネガティブな信念は有意な主効果を示 さず,交互作用も有意な値は得られなかったが,転換 機能の主効果は有意な傾向を示した(F (1,19)=3.52, p <.10, ηp2 = .19; Figure1)。 【考察】 本研究では,反すうの維持メカニズムについての理 解を深めることを目的として,WMの更新機能と目標を 切り替えるWMの転換機能が,MCTの注意制御機能を統 制しても反すうに対して影響性を示すのか,検討を 行った。 結果として,更新機能は注意制御機能を統制すると 反すうに対して有意な主効果を示さなかった。よっ て,反すうの維持過程において,WMの更新機能は注意 制御機能と比べて影響性が低いといえる。MCTでは, 注意を制御できるようになることで,認知をメタ的に 捉える機能の向上を目指すが,WM内の情報を操作する ためにはメタ的に認知を捉え,制御することが求めら れるため,注意制御機能の影響を統制することによっ て更新機能の主効果が有意でなくなったのだと考えら れる。 一方で,反すうに関して転換機能の主効果は,注意 制御機能の得点を統制しても有意傾向であった。転換 課題では,切り替えの際にどんな切り替えをするべき か思い出す必要があるため,スキーマレベルでの転換 が 求 め ら れ る と 考 え ら れ て い る(R o g e r s , & Mounsell. 1995)。MCTの注意制御機能では,意図的に 注意を制御する過程でメタ的に認知を制御することは 求められるが,「今,どんなことが必要なのか」など 注意を切り替える際に目標を思い出そうとする過程ま では想定されていない。また,反すうでは記憶があい まいになる傾向が示されており(松本・越智・望月, 2013),注意の影響が統制されたとしても記憶想起に 関わる機能が反すうを強める結果として示唆されたと 考えられる。よって,反すうに対して注意制御機能の 向上を促す介入を行う際には,特に切り替えを行う場 面で,「何に注意を向けるべきか」など目的を思い出 してもらうことで,より反すうの低減が促される可能 性が考えられる。

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