特別支援学校の現場から
8
0
0
全文
(2) デザイン学研究特集号 Vol.28-1 No.103. 康な生活を送る上で重要になってくると考えました。 病気の予防の観点から、学校生活の中でできることは、手洗い、うがい、 食生活の改善など数多くあります。その中で、筆者の所属する研究チームは 歯磨きをターゲットにすることとしました。なぜなら、従前で述べた通り、 彼らが虫歯の進行に伴い治療が必要となった場合、その治療は心身ともに大 きな負担となる可能性があるからです。また、経済的発展、医療と福祉の充 実により短命とされていた病気や障がい、重症心身障がいのある子どもも長 く生きられるようになり、ダウン症候群に伴う歯周疾患の早期発症、抗てん かん薬副作用による歯肉肥大症など新たな歯科的問題も生じてきています [注2]。ゆえに、知的障がいのある子どもが健康な生涯を送るための重要な ファクターの一つであると言えます。 知的障がいのある子どもに対して、視覚的に歯磨きを支援するツールに は、歯垢染色剤や日捲り式手順カードを活用することが考えられました。し かしながら、昨今の教育現場では ICT 機器を活用するように執拗に言われ. ています。そこで、「知的障がい」「アプリケーション」と検索して巡り合っ たのが拓殖大学工藤教授の研究室で大学院生が制作した、知的障がい者のた めの歯磨き支援アプリケーション『いっしょにはみがき』(図1)[注3,4, 5]でした。このアプリケーションは、応用行動分析学におけるスモールス テップ法を用いて歯磨き行為を細分化し学習効果を促すとともに、タブレッ ト上で完結を示すイラスト表示と音声を用いた強化刺激を活用し学習の動機 付けを行うものです。工藤教授らの研究では中軽度の知的障がい者の歯磨き 行為が誘発されることを確認していました。筆者の所属する研究チームはこ のアプリケーションを子ども達の歯磨き指導に活用しその効果を検証しよう と考え、学校のタブレット端末にインストールしようと試みました。です. 2)森崎市次郎:少子化時代の障害児に対する歯科保健と 治療,小児歯科学雑誌,47(5),665-672,2009. 3)富澤俊紀,工藤芳彰:知的障がい者のための歯磨き支 援アプリケーションの開発,日本デザイン学会研究発 表大会概要集,60巻8B-32,2013. 4)富澤俊紀,工藤芳彰:知的障がい者および特別支援対 象児のための歯磨き支援アプリの開発,日本デザイン 学会研究発表大会概要集,61巻 C7-03,2014. 5)工藤芳彰,富澤俊紀:知的障がい者のための歯磨き支 援アプリ「いっしょにはみがき」のデザイン,日本デ ザイン学会研究発表大会概要集,62巻 PA1-02,2015. が、いくら検索してもダウンロードサイトが出てきません。そこで、拓殖大 学へ直接連絡をして工藤教授に取り次いでいただきました。電話でのやり取 りで快くアプリケーションのインストールされたタブレット端末の貸与を承 諾していただき、そこから共同研究へとつながっていきました。 研究では、中軽度の知的障がいのある中学部第2学年、第3学年(生活年 齢13~15歳)の生徒9名を被験者として歯磨き支援アプリケーションの使用 時、不使用時の効果を検証しました(図2)。アプリケーション使用期間、. 図1 歯磨き支援アプリケーション「いっしょにはみがき」[注5]. 5.
(3) 6. 特集:なぜ、子どものためのデザインに取り組むのか. 不使用期間を二週間交互に設定する ABAB デザインを用いて[注6]、無作 為に抽出した日に歯垢染色を行い、染色面積ポイント(歯面の全体が染. 色;1、歯面の部分が染色;0.5、染色なし:0の3段階)を記録しました。. 染色面積ポイントの平均値を比較したところ、磨き残しが減少する効果を確. 認でき、二度の検証にてそれぞれ対応のある t 検定を実施して確認したとこ. ろ、それぞれ有意差があり、アプリケーションが歯磨き指導に効果があるこ とを統計的に示しました。しかしながら、染色面積ポイントの平均値を部位 図2 テ レ ビ 画 面 に 映 さ れ た ア プ リ ケ ー ションを見て歯磨きをする生徒. ごとに比較すると、前歯付近の磨き残しが大きいことが分かり、歯磨き指導 とアプリケーションの改善点としました。. 3.日本デザイン学会第66回春季研究発表大会 歯磨き支援アプリケーションの指導の効果に関わる研究結果を工藤教授と やり取りする中で、「日本デザイン学会」での発表をご提案いただき、第66 回春季研究発表大会で口頭発表することになりました。 この大会に参加するまで、筆者の「デザイン」という言葉に対する印象は 「何かかっこよくて、おしゃれなものを作る」というくらいの稚拙なもので した。しかし、学会で多様な発表を拝聴する中で、「デザイン」という言葉 が対象とする領域の浩蕩たる広さに驚き、人間が森羅万象の中の営みで生み 出す、すべてのモノ・コト・トキがデザインに関係するのではないかと考え るほどに、その印象は大きく変化しました。このように「デザイン」という 概念を広く捉えると、特別支援学校の中で筆者ら教師たちが行っている、子 どもたちのニーズに合わせた日常的な教材の工夫や配慮も「デザイン」とい う仕事の一部なのかもしれません。. 4.ゴボウの波板栽培[注7] 例えば、特別支援学校では教科領域等を合わせた学習として作業学習を行 います。筆者の学校でも授業の多くを作業学習の時間に割いています。なぜ なら作業学習は障がいのある子どもたちが働く力をつけるために重要な役割 を果たす授業だからです。筆者は、この授業で農業の指導を行っており、青 森県が出荷量全国一位の作物であるゴボウ‘滝乃川’の栽培に取り組みたい 図3 2018年のゴボウ(収穫時). と考えました。生徒たちも日ごろの食事でよく口にする野菜ですが、実際に. 6)つまり,中学部第2学年の生徒には,アプリケーショ. 学校の栽培実習園で栽培をしようとすると耕土の深さが問題となります。一. ンをそれぞれ,用いた歯磨き指導(2週間)→ 用いな い歯磨き指導(2週間)→ 用いた歯磨き指導(2週 間)→ 用いない歯磨き指導(2週間)となる。第3学 年は同様に,アプリケーションをそれぞれ,用いない 歯 磨 き 指 導( 2 週 間 )→ 用 い た 歯 磨 き 指 導( 2 週 間)→ 用いない歯磨き指導(2週間)→ 用いた歯磨き 指導(2週間)となる。なお,検証時アプリケーショ ンは,インストールされたタブレット端末をテレビに 接続して投影し,全体で同時に歯磨きを実施し「ひと りではみがきモード(歯列イラストを表示し,磨く箇 所と歯ブラシのアニメーションを自動で表示切替して いく)」を活用した。 7)小枝洋平,勝川健三:知的障害児に対する栽培指導の あり方についての一考察 ─ ある生徒の活動参加の様. 般的に、ゴボウ‘滝乃川’は①深い耕土、②酸性に偏らない河川沖積土又は 火山灰土、③冷涼な気候の3点が栽培適地の条件であるとされます[注8]。 そのため、住宅地を開墾して作られた学校の栽培実習園は耕土が30cm ほど. であり、栽培適地であるとはいえません。. そこで、弘前大学教育学部勝川健三准教授が取り組んだ、浅い耕土でのゴ ボウ栽培方法の研究に着目し、栽培に挑戦することにしました[注9]。勝 川准教授らの研究では、ゴボウ‘滝野川’を耕土20~30cm の栽培地におい. て、波板、塩ビ管、直播きの栽培方法を比較し、波板を用いた栽培が出荷基 準を満たす市場性のあるゴボウを収穫するために適しているとの結論でし. 子を中心として,弘前大学教育学部研究紀要クロス. た。浅い耕土におけるゴボウ‘滝野川’の波板栽培を勝川准教授から直接指. ロード,23,57-63,2019. 導していただき、筆者は中学部生徒6名と栽培活動に取り組みました。. 8)飛高義雄,嶋崎豊:野菜園芸大百科 ニンジン ゴボウ ショウガ,農村漁村文化協会,238,2004 9)勝川健三,渡邉悠来,前田隆行:学校園におけるゴボ ウ 栽 培 の 可 能 性, 日 本 農 業 教 育 学 会 誌,48( 別 ), 63-66,2017. 2018年度、一回目のゴボウ‘滝乃川’の栽培です(図3)。この時、種子 を植える場所を地面から近い状況になるように波板を設置して栽培に取り組 みました。これは、播種をするときに水やりの必要回数を少なくするための.
(4) デザイン学研究特集号 Vol.28-1 No.103. 工夫でした。 しかし、収穫したゴボウも長いもので50cm 程のものが数本という結果で. した。なぜなら、生徒たちは地面に近い場所に植えられている種子をあまり 気に掛けず、畝を踏んでしまっていたからです。そのため、発芽したゴボウ 自体が少なく、長さ、本数ともに満足のいく収穫体験とはなりませんでした。 この収穫体験を行っているときのある生徒(R くん)の様子が、次年度に. もゴボウ波板栽培を継続して取り組む意欲となりました。R くんは重度の自. 閉症の生徒で、言葉を使ったやり取りに困難を抱え、興奮状態になりカーム ダウンが必要となることもある生徒でした。R くんが畑での作業を始めた当. 初を振り返ると、実習園の地面は作物と雑草の分別もなく歩行し、疲れた時. は安座し仰臥するものでした。R くんはゴボウ収穫活動の時もカームダウン. で別の作業に取り組んでいました。しかし、ふとした瞬間、R くんは、なぜ. か自発的にゴボウを収穫しはじめ、自分一人の力でゴボウを掘り出すことが 図4 2019年のゴボウ(収穫時). できました。これは、一般的にゴボウ栽培で行われる地植え栽培よりも、収 穫を手軽に行うことができる波板栽培を取り入れたからこそ生まれた R くん の体験ではないでしょうか。. 2019年度、二回目のゴボウ‘滝野川’の栽培です。筆者は、ゴボウの収量 の少なさの原因であった波板の設置方法を改良し、種子を植える場所を地面 より20cm ほどの位置に設定しました(図6)。すると、生徒たちは畝を踏む. こともなく、すくすくとゴボウは成長していきました(図4)。収穫された ゴボウは、90cm を超える立派なものが数十本もあり、生徒ととともに喜ん で収穫できました。この時収穫されたゴボウは、弘前大学の学園祭で販売. 図5 陳列されたゴボウ(右下). し、すべて完売しました(図5)。. 図6 波板の位置の改良(左:2018年,右:2019年). 5.知的障がいのある子どもの学校音楽教育[注10] 翻って、各教科の学習にも改良すべき課題が数多くあります。筆者は、学 校で取り組まれている音楽活動にそれを見出しました。 特別支援学校に限らず学校の音楽活動では、作曲家の作った音楽を、楽譜 の通りに演奏することが当たり前のように取り組まれています(例えば、み んなで“校歌”を練習しましょう:卒業式で“巣立ちの歌”を歌いましょう など)。その音楽を再現できたとき、学習発表会や合唱コンクールなどス テージの上で発表することも行われています。このような音楽活動は子ども 10)小枝洋平:知的障害を有する生徒とのサウンド・エ デュケーションの実践 ─ 創作「音の絵の具」の活動を 通して,音楽教育実践ジャーナル,14,15-23,2016. たちが大人になってからも続きます。例えば、カラオケボックスで J-pop を. 歌うこともそうです。一般の吹奏楽団、オーケストラ楽団、合唱団などで有 名な作曲家の作った曲を演奏する活動もそうです。これを美術教育になぞら. 7.
(5) 8. 特集:なぜ、子どものためのデザインに取り組むのか. 図7 リスニング・ウォークをしながら聴こえた音を書きとめる生徒(本校校庭にて). えて考えると、大物芸術家の作品や教師がテーブルに置いたリンゴや花瓶を 延々と模写し、作品展や展覧会を開くことを繰り返しているということにな り、その取り組みが如何に奇怪かわかります。本当に、歌を歌うことが好き な人、吹奏楽をやりたい人が集まって作曲家の作った音楽を再現することは 特に問題はありません。しかし、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校 で音楽授業の対象となる子どもすべてがそうではありません。辛辣な言い方 ですが、再現する対象となった音楽に興味のない子どもたちに、一部のマイ ノリティが愛好する音楽を押し付けるという活動を公教育の音楽授業で行っ ているといっても過言ではないと思います。 再び、美術教育を援用します。もしもこの空間に、木や石、粘土、段ボー ル、糊、絵の具、テープなどなんでもあります。いまここにある材料を使っ て自分の好きな作品を作っていいと言われたら胸が高鳴りませんか?筆者 は、特別支援学校の音楽教育をフィールドとして同じような活動を展開して います。その参考にしている実践は、カナダの作曲家 R. マリー・シェー. フ ァ ー が 提 唱 し た「 サ ウ ン ド・ エ デ ュ ケ ー シ ョ ン(Sound Education). [注11]」というものです。「サウンド・エデュケーション」とは、身近な音 環境に耳を傾けて聴く練習を繰り返すことで、音をはっきりと聴き分けるこ とができるようになっていく音楽教育プログラムです。その中でも、生徒た. ちは「リスニング・ウォーク(listening work)」という活動が大好きです。. 「リスニング・ウォーク」とは、音を聴くことに集中して歩く活動です(図7) 。 学校の校庭や中庭、普段は立ち入ることがめったにない校舎の裏側などを ゆっくりと歩きながら音を聴いていると、生徒たちは「草」や「石」「遠く の車」 「換気扇」など聴こえた音を伝えてきてくれます。言葉でのやり取り に困難を抱える生徒も、教師と一緒に「今、鳥の鳴き声が聴こえたね」など 11)R. マリー・シェーファー,今田匡彦:音さがしの本 ─ リトル・サウンド・エデュケーション,春秋社,1996. と話しながら歩きます。 次に、子どもたちに「どんな音を聴きたい」と問いかけて、音を奏でる.
(6) デザイン学研究特集号 Vol.28-1 No.103. 楽器に使うことができそうな材料を探してきてもらいます。生徒たちは、 「石のぶつかる音」と言ってリスニング・ウォークで見つけた音を再現しよ うとしたり、音楽室にある大太鼓を指先でたたいて雨の音を作ろうとしたり しながら、自分が聴きたい音を探します(図8)。 そして、活動のまとめとして、自分が聴きたい音を奏でる楽器を持ちよ り4、5人のグループで教師も混ざり簡単な音楽づくりをします。音楽を つくるときのルールは非常にシンプルで、演奏の始め方と終わり方のみを 図8 楽器の材料を探す生徒たち. グループで決めて、あとは即興で演奏することにしました。このときにで きる音楽は、生徒たちが普段耳にするであろう J-pop やクラシック音楽など 西洋音楽の機能和声を基盤としたものにはなりません。生徒たちが好きだ と確信した音が乱雑に行きかうようですが、奏者間でアイコンタクトをと り音の重なりを作ったり、ある生徒の一定の周期をもったリズムの執拗な 音の繰り返しがスパイスのように効いたりする独特な音響空間ができあが りました(図9)。 作曲家の作った楽曲を再現することを目的とした実践では、音楽の中心 は他者にあります。しかし、このサウンド・エデュケーションを基盤とし た音楽教育実践では、音楽の中心は演奏に参加する自分たちに移ります。. 図9 自分たちで集めた音で音楽づくりを する生徒. そのため、授業に参加する教師たちは他者の音楽を基準とした「できる― できない」の判断を保留せざるを得なくなり、演奏に参加する中で実際に 子どもたちが奏でる音を聴くことになります。そして、生徒たちをどうに か演奏できるようにしようすることではなく、「いい音だね」「びっくりし た」「きれいだね」などと生徒が好きな音をよく聴いて共感するようになっ ていました。 この実践の参加者に次のような生徒(K くん)がいました。K くんは地域. の小学校特別支援学級から入学してきた生徒でした。K くんは、入学当初よ. り歌唱、器楽、身体表現も取り組むことができずにいました。筆者は、彼の 障がいや身体の特性から服薬をする必要があり、常に眠気と戦っている影響 があるためだと思っていました。しかし、彼から詳しく話を聞くと次のよう. な小学校での体験を教えてくれました。それは、手指に軽い麻痺があるが、 リコーダーを普通学級の児童と同じように演奏するために放課後に残って練 習を繰り返したというものです。このようなことが起こったのも、他者の音 楽を楽譜通りに演奏する活動が中心だったからです。. K くんは、リスニング・ウォークで、草が風にそよぐ音、鳥の声などの音. を見つけていました。見つけた音を友達や教師と共有したり、草を拾い、扇 風機の前に持ってきたり、うちわであおいだりしていました。最後の演奏発 表では、合図を出す役割を担い、草が風にそよぐ音とレインスティックで演 奏に参加していました。. K くんは、実践を始めた当初、好きな音はなく、音楽の授業に参加するこ. とに積極的ではありませんでした。しかし、サウンド・エデュケーションを 基盤とした実践の活動の後に行った簡単なアンケート調査に、「先生が演奏. したマリオの音楽が好き」「外で葉っぱや石を拾う活動をもう一度やってみ たい」と書いていました。. 6.まとめ 『なぜ、子どものためのデザインに取り組むのか』という問いに答えるた めに、筆者が勝手にデザインの定義を「人間が森羅万象の中の営みで生み出. 9.
(7) 10. 特集:なぜ、子どものためのデザインに取り組むのか. す、すべてのモノ・コト・トキ」と拡張して考えてみました。そして、筆者 の取り組んできた何の繋がりもないように思われる、歯磨き、ゴボウ波板栽 培、サウンド・エデュケーションの各実践を列挙しました。これらに共通点 を見出すとすると、「知的障がい」と言われるハンディキャップのある子ど もたちです。 筆者は、地域の小学校特別支援学級から入学してくる子どもとの出会いの 中で、自身に強い劣等感を抱く人にしばしば出会います。筆者は彼らとのや り取りの中で印象に残っているエピソードがあります。それは数年前に中学 部第3学年の担任をしていた当時、長男の出産に立ち会うために休暇を取得 した翌日に起こりました。筆者に長男が生まれたことを学級の生徒に報告し ていたときです。N くんが唐突に「先生の子どもって障がいとかあるの?」. と問うてきました。筆者が解答の仕方に困惑していると、T くんが「そんな. 迷惑なこときくなよ」と横槍を入れました。本当に些細な一場面のように思 われますが、筆者にはとても気にかかる子どもたちの発言でした。N くんの 発言からは、自身に障がいがあるということを自覚していることが分かりま す。そして、T くんの発言から、自身に障がいがあることを理解しつつ、そ. の障がいが「迷惑」なものとして捉えていると考えられます。. 彼らが、自身に障がいがありそれを迷惑なものとして捉えるようになった 背景には、障がいのある人に対する周囲からの視線が影響しているのではな いでしょうか。自身もハンディキャップのある S. ジェーン・ヤングという. ジャーナリストは、障がい者を健常者の感動を誘うための道具として扱う. 「感動ポルノ(inspiration porn)[注12]」の存在を主張するスピーチの中で次 のように述べています。. 「闘う相手は、自分たちの身体や病名ではなく、私たちを特別視し 物として扱う世界である」 健常者は弱者である障がいのある人を救い上げなくてはいけない。弱者で ある障がいのある人は、ポジティブに生きるところを見せなくては募金を集 められない。このような、ハンディキャップのある人たちに向けられる特別 な視線は、障害のある子どもたちの身近な社会である学校の中にも数多あり ます。例えば、障がいのある子どものお世話係を健常児が担当したり、運動 会で障がいのある子どもが健常児に手を引かれてゴールしたりするような場 面です。N くんや T くんも、学校生活の中で同じような経験をする中で、自. 分自身と周囲との差をひしひしと感じ、自身の存在が迷惑であり、周囲より 劣っていると認識するようになったと考えられます。 改めて、筆者の行ってきた3つの教育実践を振り返ります。歯磨き支援ア プリケーションがあることで、子どもたちが自発的に歯を磨き、教師が自然 に歯の磨き方を指導する仲介をしてくれます。そして、教師と子どもの相互 の間で潤滑油のように働き、一人一人の歯磨きが上達し磨き残しが減ってい きました。ゴボウ波板栽培は、掘削をせずに収穫ができることが最大の特徴 で、体力に自信のある子どももない子どもも一緒に活動に取り組み、長いゴ ボウをとる面白さを体験することができました。サウンド・エデュケーショ 12)S. ジェーン・ヤング:私は皆さんの感動の対象ではあ. りません,どうぞよろしく,https://www.ted.com/talks/. stella_young_i_m_not_your_inspiration_thank_you_very_ much/transcript?language=ja(参照日2019年12月7日). ンを基盤とした音楽教育実践では、一人一人の子どもが活動を通して自分の 感覚をよく使い、好きな音を見つけ、演奏を創り上げていきました。 これらをふまえて、『なぜ、子どものためのデザインに取り組むのか』と.
(8) デザイン学研究特集号 Vol.28-1 No.103. いう問いに答えるとすると、できるかぎり広く多様な背景をもった子どもた ちが、一人一人の力を十分に発揮し、(決して一方的ではなく)互いに支え あう中で、一緒に遊び、学ぶことができる場を作りたいからだと思います。 教師として、そのような授業や教材、教具を考えながら堅実に発信を続ける ことが、自分自身に劣等感を抱く子どもが生まれることを抑制しつつ、自分 の存在を肯定的にとらえて生きる子どもを増やすことにつながると信じてい ます。 (筆者が勤務する弘前大学教育学部附属特別支援学校は、在籍児童生徒の 学びと成長を保障する他に教育実習や研究の場としての使命も担ってお り、あらかじめ事前に十分説明した上で、保護者より研究協力及び成果公 開の同意を書面で得ています。また、校内で個人情報の保護をはじめとす る倫理的課題について十分に検討した上で、記載した研究の実施と公開に あたっています。). 11.
(9)
関連したドキュメント
2)摂津市障害者地域自立支援協議会代表者会議 年 3回 3)各支援学校主催会議や進路支援等 年 6回
2)摂津市障害者地域自立支援協議会代表者会議 年 1回 3)各支援学校主催会議や進路支援等 年 5回
本センターは、日本財団のご支援で設置され、手話言語学の研究と、手話の普及・啓
社会学研究科は、社会学および社会心理学の先端的研究を推進するとともに、博士課
平成 31 年度アウトドアリーダー養成講習会 後援 秋田県キャンプ協会 キャンプインストラクター養成講習会 後援. (公財)日本教育科学研究所
世界規模でのがん研究支援を行っている。当会は UICC 国内委員会を通じて、その研究支
世界規模でのがん研究支援を行っている。当会は UICC 国内委員会を通じて、その研究支
海外の日本研究支援においては、米国・中国への重点支援を継続しました。米国に関して は、地方大学等小規模の日本関係コースを含む