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岩田年浩・水野英雄編著, 『教員養成における経済教育の課題と展望』, (三恵社刊)(投稿原稿(査読付))

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Academic year: 2021

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済が苦手だという中高の教員は多数います。そ れはなぜでしょうか。そもそも学校という枠, 文化のなかで経済がそぐわないということなのか,そ れとも教える教員の資質が問題なのか,方法が悪いの か。いろいろな仮説が出せると思います。本書は,そ の理由を,教員養成の仕組みの中にあるという問題意 識から編まれ,教員養成における経済教育の現状と課 題,さらにそれを超える取り組みを明らかにした本で す。  では,教員養成における経済教育の現状は何でしょ うか。一言でいえば,経済学教育の貧困とでもいうべ きものではないでしょうか。それは構造的で,その部 分にメスをいれないと少なくとも高等学校までの経済 教育の進展は望めないというのが編著者の主張です。 評者もこれまでのいくつかの体験からそれに納得しま す。その問題点を明確に指摘した意味で本書の刊行意 義は大きなものがあります。  本書は,教員養成系大学で教鞭をとっている,また はとった経験のある先生方によって書かれています。 全体は三部に分かれています。  第一部では,「教員養成の変遷」ということで,編 著者の岩田・水野両先生による学校をとりまく全体的 な変化と教員養成に求められる条件の吟味が行われて います。少子化による教員需要の変化,生徒や保護者 との関係変化,免許制度の変更や長期化構想など教員 養成を巡る全体的な変化が経済学的な知見から指摘さ れていて,なかなか読ませます。例えば,修士課程に よる教員養成に関した部分では,制度設計を間違える と,資格取得のコストは高いのに,生涯所得は高くな く,就職の難易度は高いという三重苦の職業となって しまうという指摘(p28)などは面目躍如の部分で しょう。  第二部は,「教員養成における経済教育の現状と課 題」です。ここが本書のメイン部分で,岩田・水野両 先生による教員養成系大学のカリキュラム調査や,加 納,宮原,柴田,栗原の各先生による現状分析と提言 がなされています。そこでは,大学で教員養成向けの 経済学のガイドラインをいかにつくってゆくかに関し て,加納先生や宮原先生の提案,柴田先生の指摘,栗 原先生の経済学者と教育学者のコラボ授業や研究の必 要性の提言など,大事な問題提起がされています。  第三部は,「教員養成における経済教育の実践」で す。猪瀬,水野,濱地,鎌田,山根,小野,番場,裴 の各先生が,大学で実際に取り組んでいる体験型, ワークショップ型,ゲームや金融教育の実践が紹介さ れています。さらに,福祉系大学での経済学講義,商

書評

岩田年浩・水野英雄編著

『教員養成における

経済教育の課題と展望

(三恵社刊)

Book Review

Th e Journal of Economic Education No.32, September, 2013

新井 明(東京都立小石川中等教育学校) Arai, Akira

The Japan Society for Economic Education

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188 シンポジウム 論 考 投稿原稿 会務報告 大会報告 業科教員向け講義,韓国教育系大学での経済教育の実 際も紹介されています。韓国の経済教育の新しい動向 の調査などは興味深い情報です。  全体として,本書の「まとめ」(p241)で総括して いるように,この本は課題については十分に指摘でき ていると思います。例えば,第二部のカリキュラム調 査から浮かび上がる経済学担当者の声,経済学を全く 学ばなくとも教員免許状が取れ教壇に立てる仕組み, 経済学の講義担当者がかかえる固有の困難などの指摘 は,一般大学の経済学部で教壇にたつ先生方にはあま り見えなかった部分だろうと思います。それをしっか り指摘している意味では,本書の刊行の意義は十分に 達成できています。  ただ,惜しむらくは,これも編著者が「まとめ」で 述べているように,展望,特に「経済教育の内容の確 立」に関しては,まだ不十分と感じました。例えば, 第二部で講義内容の全体像を提示されていたのは宮原 先生だけで,それぞれの先生方が自分の考える教員養 成向けの経済学の教育内容のガイドラインを提示して, それを比較しながら検討するというようなものがある とよかったと思いました。そのためには,執筆者に教 員養成系大学で教える経済学者をもう少し入れないと 議論は深まらないかと感じました。  また,第三部の実践部分でも,それぞれの実践は興 味深く参考になるのですが,教科教育,社会科教育法 や公民科教育法の全体カリキュラムのなかでどれだけ の比率で経済教育部分を扱っているのか,また,その なかでどんな経済学の知見を踏まえて講義を行ってい るのかが十分には書かれていません。第二部の課題や 提言を踏まえて,各実践が報告されていれば,もっと それぞれの実践の位置づけが明らかになったかと思い ました。  さらに,のぞむらくは,全体を総括するような経済 学者と教科教育の担当者とディスカッションのような ものがあるとよかったと感じました。そうすれば,そ れぞれの論考が有機的にまとめられ,教員養成系大学 での経済学ないし経済教育のコアカリキュラムへの展 望やガイドラインの作成が展望できたかもしれません。  とはいえ,学校における経済教育の発展を阻害する 要因を,教員養成系大学における経済学教育の在り方 という原因までさかのぼり指摘した類書はありません から,先駆的業績だと思います。本書をスタートライ ンにして,教員養成系大学や教職課程での経済教育へ 関心がもっと向いてゆくことを期待したいものです。  そのためにも本書は,大学の経済学部に所属する経 済学専攻の先生方にこそ読んでもらいたい本だと感じ ています。

The Japan Society for Economic Education

参照

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