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構造工学シンポジウム特別講演_本城_ PDF

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性能設計概念に基いた設計コードの開発:

code PLATFORM ver.1と基礎構造等の設計原則

岐阜大学・工学部 本城勇介 1. まえがき 本報告は,著者が過去約10年近く係って来た,性能設計概 念に基いた2つの設計コード,地盤工学会(2004)の「性能設 計 概 念 に 基 い た 基 礎 構 造 物 等 に い 関 す る 設 計 原 則 (JGS4001-2004)」(以下そのニックネームにより「地盤コー ド21」と呼ぶ)1),土木学会「性能設計概念に基いた構造物 設計コード作成のための原則・指針と用語」(以下,「code PLATFORM ver.1」とよぶ)2 ) について,その開発の経緯や, 理念,概要について述べるものである3)∼11) 本稿ではまず性能設計の定義について述べ,これに基いて 性能設計概念に基いて記述された設計コードの具備すべき 条件について考察する.その後に,「code PLATFORM ver.1」 と「地盤コード21」について,その開発の経緯,基本方針, 内容や特徴を述べる.なお,,「code PLATFORM ver.1」に ついては,この報告の付録として本文と解説を添付した. 2.性能設計とは何か 物 事 を そ の outputs( 形 と し て の 結 果 ) で は な く 、 outcomes( 内 容 と し て の 結 果 ) で 評 価 し よ う と 言 う performance evaluation(性能評価)の考え方は、企業経営、 行政評価、教育評価など多くの分野で共通に見られる考え方 である。性能設計は、このような考え方の、構造物設計への 適用であるといえる。この考え方の背景には「競争原理の導 入による効率的な社会の追求」という考え方がある。情報公 開の行き届いた自由な社会における、公平な競争の実現によ る効率的な社会の追求である。 現在議論されている「性能設計」の概念は、その歴史的 な経緯により、性能規定型設計と性能明示型設計の2つに分 けて議論すると分かりやすい。 2.1 性能規定型設計 性能規定型設計とは、構造物の性能が確保されていること を、要求性能をブレイクダウンした仕様ではなく、要求性能 そのものを提示し、これを照査することを規定した設計法で ある。この場合、要求性能のみを強制規定とし、その照査方 法は規定しないというのが一般的な考え方である(図-1)1 2 ) 性能規定型設計コードは、建築構造物の設計コードとして その開発と導入が始まった。その最初のものは、Nordic Five Level System であると考えられる13)。この報告書では、こ の規定導入の目的を次のように述べている。 「現在北欧諸国の建築物を支配している規則は、法 律、規定、その他の規則からなっている。北欧閣僚協 議会の北欧諸国の建築物規制の協力に関する活動プロ グラムでは、規則の体系はその包括的な目的から始ま って、技術的 な解決方法に至るような、一連の限られ た数のレベル よりなる規則として構成されることを、 最重要事項と定めた。このようにすれば、国ごとに管 理のシステム が異なっていたとしても、協力が促進さ れる。」 以上より明らかなように、性能規定型設計は、その当初か ら、国ごとに異なる「記述的(prescriptive) 」な技術基準や 規制制度の違いを統合し、国際協力を推し進めるための規則 のフレームワークとして、考えられていたことが分かる。 Nordic Five Level System 以後、各国で多くの性能規定型 のコード や、規制管理方法が導入されてきた(図-1).特に 1996 年の WTO/TBT 協定の締結・発効を境に、その導入は活 発になった。

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2.2 性能明示型設計 性能明示型設計とは、構造物の機能を確保するために要求 する性能のレベルと、その照査に用いる荷重のレベルの関係 を明確にした設計法である。すなわち、構造物の性能を、荷 重レベル とこれに対応する構造物の性能を対にしたマトリ ックスで示す(図-2)。 性能明示型設計コードは、米国のカリフォルニア構造技術 者協会(SEAOC)の Vision2000 の要求性能マトリックス(図 -2)の提案に源を発した考え方である14)。この提案は、ノー スリッジ、ロマプリータの両地震被害の経験の中で、建築物 の所有者と構造技術者の構造物の耐震性能に関する理解が、 まったく異なっていたという反省を踏まえたものであり、両 者の対話の手段として考え出されたものである。従って専門 家でない 人にいかに分かりやすく建築物の構造に関する性 能を説明し、設計時に適切なメニューを選択してもらうかとい う問題意識がその根底にある。 2.3 性能設計概念に基く設計コード 以上のように、性能設計を 2 つに分けて説明したが、今日 ではこれらを総合化した考え方が一般的である。例えば, 2004 年に地盤工学会で基準化された「地盤コード 21」も、 両者を折衷した考え方を取っている(図-3)1)。すなわちこの 設計原則では、要求性能を「目的」(objective)-「要求性能」 (performance requirements)- 「 性 能 規 定」(performance criteria)の3つの階層とし、また許容される照査方法を、 アプローチ A 及び B の二つに分けている。 「目的」とは,構造物を必要とする理由を一般的な言葉で 表現したものであり、事業主体/所有者または利用者を主語 として、記述されることが原則である. 「要求性能」は,構造物がその目的を達するために、保有 する必要のある構造的な性能を、一般的な言葉で表現したも のである. 「性能規定」は、設計供用期間を考慮した荷重の程度と組 合せにより指定される設計状態と、構造物の限界状態の2つ の要素で定義される構造物の性能を、その重要度を考慮して 具体的に指定することにより与えられる。これは性能マトリ ックスの形で表現される。また性能規定は、それぞれの要求 性能と対応し、照査可能な形(定量的であることが望ましい) で与えられる必要がある。 「許容される照査方法」には、照査アプローチAとBがあ り、前者では照査方法に何も制限を設けないが、設計者は構 造物が規定された性能規定を適切な信頼性で満足すること を証明する必要がある。後者は、当該構造物の構造的性能を 統括する主体が指定する設計コードに基づいて照査を行う ものである。 構造物の要求性能と照査法をこのように階層的に記述す るのは、非専門家である構造物の所有者や利用者に構造物の 性能を説明すること、及び専門家自身が個々の設計の照査項 目がどのような構造物の要求性能を満足するために行われ るのかを明確にしておくためである。 この点に、従来災害被害などの経験を踏まえ、各個撃破的 に専門家集団により開発されてきた記述的な構造物の設計 法に対し、非専門家である所有者や利用者の視点から構造物 の設計法を考えようという、性能設計の最大の特徴が現れて いる。従来の設計法が、どちらかと言うと個々の問題の個別 の照査方法の寄せ集めであったのに対し、性能設計は構造物 の目的と要求性能から考えるより体系的な設計法であると いえる。 2.4 性能設計の今後 日本も 1996 年に加盟した WTO/TBT 協定 2.8 項の「仕様に 基づく規定ではなく、性能に基づく規定」という概念は、我 が国が国際社会でこのコンセプトを承認したことを意味し ている。この結果、現在我が国の建築、道路橋、港湾施設等 多くの分野で、設計基準の性能規定化が進んでいる7), 8), 9) 性能設計は本質的に多様であり、現在いろいろなグループ や、種々の構造物の主管機関で出されている提案には、多く のバリエーションがある。しかし、性能設計はその基本的な 性格上、次のような変化を構造物の設計にもたらすと思われ る。 (1) 構造物の性能に関する非専門家へのより明確な説明と 情報公開。 (2) 従来からの設計・施工・維持管理に関する社会的な制度 の、性能評価の視点に立った変更。 我々地盤技術者は、性能型設計が、構造物のより正確な挙動 の予測を要求するという面のみを強調しすぎる嫌いがある。 性能設計 はもともと性能評価(performance evaluation) に よる効率的な社会の追求という本質を持っており、従来の社 会的な制度の変更を迫っているという視点を持たないと、物 図-2 Vision2000 の性能マトリックス 図-3 地盤工学会設計原則の要求性能・照査法の階層

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事の推移の本質を見誤ることになる 15)。性能設計に関する 法整備などは、むしろ技術者ではなく行政により推進されて いる。性能設計が推し進められると、発注形態の変更や、設 計・施工に関わる責任やリスクの分担区分の見直しなどに進 むと考えられる。 3. 性能設計概念に基づいた設計コード 3.1 包括設計コード 前章では、構造物の性能設計についての動向について概観 した。この章では視点を変え、このような性能設計の概念を 踏まえて、理想的な設計コードは、が具備すべき条件につい て考える。 なお,ここで対象とするのは、いわゆる包括設計コード (comprehensive design code )である。包括設計コードとは、 コード策定上の基本的な考え方と手順を示したものであり、 個別の設計コードを策定する際にコードライターによって 参照されることを意図して作成される。海外ではすでに ISO239416)や Eurocode017)が包括設計コードとして発行され ており、日本国内においても事業者・設計者・コードライタ ーの議論に基づいた包括設計コード策定の重要性が認識さ れてきている。 包括設計コードは、次のように定義される(土木学会 2003)2) 「一つの国や地域で,土木・建築構造物一般,さらに 個々の構造物種別について,その構造的な設計の原 則を記述した設計コード.個々の構造物の設計を行 うためのコードというよりは ,構造物の性能規定の 方法,用語の統一,安全性余裕の導入方法と形式,情報 伝達法の標準化などの他 ,設計で留意すべき共通事 項を記述した ,設計コード体系の階層のもっとも上 位に立つべきコード.「設計コード作成者のためのコ ード」と考えることもできるが,設計者にとって基本 的な情報を含んでいる.固有基本設計コードの上位 に立つ設計コード.」 本稿で対象としている設計コードは,このような包括設 計コードであり,このようなコードは,他のコードに先立っ て今日,性能設計概念に基いて作成される必要がある. 3.2 性能設計の利点と欠点 前章の議論からもある程度考察されることであるが,性能 設計の利点には、次のようなことがある。 § 構造物の目的(目的ー要求性能ー性能規定)から記述さ れるので、規定の意図の理解が容易である。 § 同様の理由で、設計された代替的な構造物相互の評価 に当たり、透明性と説明性が高い。 § 異なる背景を持つ仕様型設計コードや、建設に対する 異なった社会制度を持っていても、設計コードの調和 や統一を計りやすい。 § 新技術の導入、コストダウンのためのいろいろな設 計・施工上の工夫を奨励する。 § WTO/TBT協定は、性能規定型設計コードを要求してい る。 § 説明生が高く、全体の体系が理解しやすいため、後続 の若い技術者への教育、技術の継承を行いやすい。 § 情報技術(IT)による設計コードの表示や配布、検索の 作成が容易である。 § コードの利用者に対して、記述の一貫性を保ちやすい。 一方欠点もある。 § 構造物の目的に始り、要求性能をへて性能規定に到る るトップダウン構造の記述と、従来からの仕様規定型 の記述になりやすい照査方法との間の関係が、必ずし も整合しない1 § 設計された構造物が、要求性能や性能規定を満たして いるか否かを照査する社会的制度が確立していない。 § 上記のため、建設された構造物に問題が生じたときの 瑕疵の判断に、従来から使用されていた仕様型の規定 が用いられることが多い。 以上のように見てくると、性能設計の現状における問題点 を一言で言うと、「目的」から始まる構造物の性能に関する 上からのアプローチと、従来からの「手段」である照査方法 を中心とした下からのアプローチが、十分にマッチせずに、 行き違いが生じている点にあるといえる。 この問題は、設計者がその技術力を生かして性能を満たす 構造物の設計代替案を提案してきた場合の、審査の制度の問 題を含むことは言うまでもない。しかしそれ以上に、性能設 計では、構造物の性能をどこまで性格に評価できるかという、 現在の技術水準それ自体が問われることが理解される。要は、 構造力学、地盤工学等の現在の予測能力が問われている。 3.3 包括設計コードに具備されるべき条件 以上のように、性能設計の長所と欠点を総括した上で、 このような性能設計の考え方に立脚し、その長所を生かし、 欠点をできる限り解決するような設計コードが具備すべき 条件を考えてみることにする。 § 目的−要求性能 −性能規定−照査方法に到る階層を 持つ、トップダウン型の構造を持つこと。 § 包括設計コードの構成(目次)は、上記の階層構造を 明確に示すものであり、このコードの利用者や、下位 の設計コードの作成者に対して、次のような点を配慮 しなければならない。 o 設計コードの目次自体が、性能設計の考え方を明確 に持ち、これを明確に説明する構成を持たなければ ならない。 o コード作成者が、新しいコードを作成するとき、そ の目次の基本形を提示するものでなければならな

1 コードの作成者は、多くの場合技術者である場合がおおい。 このとき、技術者はコードの照査の部分、いわば設計の手段 を中心にコードを考えていることが多い。そして、そのとき の照査法は、従来からの仕様型の照査法であることが多い。 この「目的」から性能設計体系を見るか、「手段」である照 査方法からこれを見るかという、観点の違いが、 なかなか克服できない。

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い。 o 既に存在する材料を整理したり、新しい材料を挿入 しようとするとき、その作業が容易であるような構 成が望ましい。 o 内容を分類したり、索引を作成したりすることが容 易であり、またその標準となることを考慮する。 o 性能規定型設計コードでは、要求の目的を階層的に、 かつ一般的なものから個別的なものへと記述する。 しかしながら、多くのコードの使用者は(抽象的な 記述でなく)実体的な記述を求める(すなわち特定 の目的の構造物、またその要素等に関する規定を探 す)従って、目次はこのようなコード利用者の便宜 も十分に考慮した構成を取る必要がある2 o 情報技術(IT)を用いた、表示や配達が容易であり、 また検索がしやすい。 § 用語については、新しい用語の使用は極力避 け、ISO 文書等の権威ある文書で明確に定義された 用語を用 いなければならない。 § 個々の規定を記述する文章の言葉使いに関して、次の ような注意が必要である。 o 強制力を持つ規定と、非強制的な規定間の明確な区 別を行う。 o 文書は、その文字通りの意味が、意図された事項と 異ならないように書かれなければならない3 o 異なる言語や文化の法的な管轄地域では、前提とし ていることが翻訳の過程で失われたり、解釈が異な ることがおこるので、注意を要する。 o 強制規定、推薦規定、代替案の提示などを、明確に 区別する必要がある4 o 性能規定型 のコードを書 こうとする場合 、絶対的 (断定的)用語を用いるのに慎重である必要がある。 達成できないことや、検証できないことを、このコ ードを遵守しなければならない立場の人に、強制し てはならない。 o 規定の記述において、複雑な表現(例えば、 二重否 定、例外規定の紛らわしい記述や、過度に複雑な表 現構造)は、避ける。

4. code PLATFORM ver.1 4.1 開発の経緯と目的 ここでは、平成 13-14 年度に、国土交通省総合政策研究所 の委託を受け、(社)土木学会に設定された研究委員会で作成 された、「性能設計概念に基づいた構造物設計コード作成の

2 具体的には、目次の細目、または細見出しに 具体的な照査で対象となっている事項が表記される などの工夫が必要と考えられる。 3 なぜならば、例えば抗争において、法律家はおうおうにし て法律の書かれたままの意味に従って、解釈しようとするか らである。 4コード文書の言葉遣いは、必要な場合、その法律的なステ ータスと対応していなければならない。

ための原則・指針と用語(通称:「code PLATFORM ver. 1」)」 について報告する2), 5)。なお英語名は、「Principles, guidelines and terminologies for structural design code drafting grounded on the performance based design concept」である。

我が国では、道路、河川、港湾・空港、鉄道そして建築等 の個別施設の技術基準は、それぞれの施設が持つ歴史、文化 そして目的を担って策定されてきた。そのため、技術基準を 相互に見比べると大きな違いが見られる。 ここ数年、「性能設計」という新しいコンセプトの登場に より、多くの機関で設計コードの改訂がこのコンセプトのも とに盛んであるが、それも前述のような伝統的な枠組みの中 で、見方によってはそれぞれが勝手に用語や書式を決めてコ ードの改定を行っているのが現状である。このような現状は 以下のような観点から見ても極めて憂うべき状況であると いえる。 1. 我が国の優れた土木設計技術を海外に分かりやすく 発信する 2. 日本に参入しようとする国外技術者には、非関税障 壁と写る 3. 後続の若い技術者に日本の構造物設計の基本的な考 え方を体系的かつ分かりやすく伝えていく。 今後は、技術基準を策定する際にコードライターが寄るべ き策定の原則や用語は統一されるべきであり、そのようなこ とにより、上記のような状況は大幅に改善されると考えられ る。 また「性能設計」という新しいコンセプトが台頭してきて いる現在の状況は、見方によっては上記のような設計コード 間の調和を計る絶好の機会であるといえる。 以上のような背景を考慮して、国土交通省総合政策研究所 は、本調査を土木学会に委託した。 なお研究委員会の特にドラフト に関わった委員たちの意 見として、この包括コード作成を終了した時点で、この作成 された文書は「包括設計コード」という名称を避けて(特に 「コード」とすると、これも一つの設計基準と見なされてし まうため)、「性能設計概念に基づいた構造物設計コード作成 のための原則・指針と用語(ニックネーム「code PLATFORM ver. 1」)」とすることを提案したい。これは包括コードとい う、すべての上に立つコードという意味よりも、日本におい てコードライターが合意した決め事、というこの文書本来の 意図を誤解少なく伝えるためには、この名称の方がふさわし いと考えられるためである。 4.2 code PLATFORM の概要 4.2.1 研究の遂行体制 本調査では、委託先の土木学会内に「包括設計コード検討 /策定基礎調査委員会」を設置し、委員会形式で検討を進め た。特に地盤コード 21 の第 0 章が、研究委託の契機になっ たことから、委員長:日下部 治(東工大教授)、幹事長:本 城 勇介(岐阜大教授)が選ばれた。 包括設計コードの確立には、その法的位置付けの明確化や 関係諸機関との調整、施行まで含めると 10 年以上を要する 長期的な取組みが必要であるため、現状に配慮するよりも設 計コード のあるべき姿を目指すことを策定上の基本方針と した。委員会のメンバーも若手のコードライターが中心とな るよう心掛け構成された。委員の専門分野は、コンクリート 構造、鋼構造、地盤・基礎構造,耐震・耐風・耐波設計、信 頼性設計など多岐にわたった。

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4.2.2 基本方針 コードを実際に書き始める前に、次のような諸点を基本方 針として、確認した。 1. 理想を追求する。現状に縛られず、本来あるべき姿 を追求する。 2. アジアコードを見据え活動を行う。 3. 作成する包括設計コードの規定は、それぞれの分野 の設計の考え方の本質を示し、かつ矛盾せず、将来 の枠組みを阻害しないばかりか、新しい技術の進歩 を奨励(encourage )する。 4. ISO2394、13822 等の規準、「土木・建築にかかわる 設計の基本」の報告書の尊重。 5. 新しい用語の使用は極力避け、既存の権威ある文書 の用語を尊重する。 6. 構造物の要求性能が満たす信頼性のレベルそれ自身 は触れない。 7. 新設構造物を対象とした設計コード。(既設構造物の 補修・補強コードではない) 8. 一般の汎用的な構造物の設計を主に対象とする。 9. 現存のコード「道示」「港湾」「鉄道設計標準」等の 和集合ではない。積集合であるわけでもない。ある べき姿、簡素化されたコンセプトを前面に出す。(普 段大切にしている自分の設計コードを、批判的に反 省する)。 10. 要求性能を、構造物の状態(あるいは限界状態)、時 間、作用とそれらの組み合わせ、重要度の組み合わ せで記述する。このとき、構造物の状態を時間の関 数として記述することにより、耐久性、劣化の記述 を行う。さらには維持管理の思想を当然のものとし て設計の中に取り込む。 11. できる限り簡素で、分かりやすい構造にする。利用 できるものは、既存の概念をできる限り踏襲する。 12. 国際的に説明することを常 に頭に置く。複雑 すぎる 概念はこのような場合、ほとんど相手に理解されな い。 13. 構造物の構造的な設計に関 する包括設計コード。他 の要素が設計で考慮されるべきである事を強調する か。 14. 修復性限界は、経済的要因で決定されるべきである。 15. 限界状態設計法は、現時点で performance based design

を実現するもっともふさわしい設計法である。 16. 照査方法は、地盤コード21 で提案した 2 種類とする。 17. 社会の制度と設計: 情報伝達のフロー、技術者の 資格、倫理をコードに書く。 以上のような方針は、コード作成を通じて、概ね遵守さ れたと理解している。 4.2.3 code PLATFORM の内容

「code PLATFORM ver. 1」の本文と解説を,付録に示した. 参考にしていただければ幸いである. 5.「性能設計概念に基いた基礎構造物等に関する設計原則 」 5.1「地盤コード21 」作成の経緯 地盤工学会では,1997年度から新しい概念に基づく基礎構 造物の設計法について検討してきている.その活動の最初の フェーズは,1997年から3年間にわたり活動した「我が国の 基礎設計の現状と将来のあり方に関する研究委員会」(委員 長 日下部治東工大教授)である.この委員会では,地盤調 査と設計をどうつなぐべきかといった観点と国際的に整合 性の取れた基礎構造物の設計法の提案とが中心となる課題 であった.その結果,基礎構造物の設計法に関する新しいコ ンセプトの提案を行うことになった. これは,ユーロコードをはじめとする限界状態設計法に基 づいた設計コードの急速な世界的普及、1990年代特 に1995 年以後のTBT協定締結後の性能規定型設計コードの台頭を 踏まえ、我が国の基礎構造物の共通モデル・コードとなりう るような、設計コードのひな型を提案することである.特に、 歴史的な経緯により分化してしまっている我が国の道路・港 湾・鉄道・建築の各設計基準の統一を計りうるようなコンセ プトを提案することで、我が国が世界に誇りうる基礎設計技 術、特に耐震設計法の考え方のエッセンスを示し、これを single voiceとして世界に発信できるような設計 コードを作 ることが必要であるということである. このときの研究の一応の成果として、「地盤コード21」と ニックネームを付けられたコードの素案を公表した8) 9).そ の後,2000年度から地盤工学会において「基礎設計基準検討 委員会」において「地盤コード21」を基準化する議論を進めて きた.これが2004年度に実現し,JGS4001-2004「性能設計概 念に基いた基礎構造物等に関する設計原則」として学会基準 となった1) 5.2「地盤コード21」の構成 表−1に、「地盤コード21」の目次を示した.このコード は、0章から6章までの全7章で構成される. 「第0章 構造物設計の基本」は、一般の土木・建築構造物 表-1 地盤コード 21 の目次

本文

0. 構造物設計の基本 1. 基礎構造物設計の基本 2. 地盤に関する情報 3. 浅い基礎の設計 4. 杭基礎の設計 5. 柱状基礎の設計 6. 抗土圧構造物の設計 7. 仮設構造物の設計

解説

付録

付録 A アプローチ B による「設計報告書」の例 付録 B 基礎の耐震設計例 付録 C 基礎設計における地盤調査の位置付け 付録 D 少数標本からの特性値の設定 付録 E 浅い基礎に関する付録 付録 F 杭基礎に関する付録 付録 G 柱状基礎に関する付録 付録 H 抗土圧構造物に関する付録 付録 I 仮設構造物に関する付録

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全体の包括設計コードとなることを意図して書かれたもの である.このコードでは,第0章から第2章までは,基礎構造 物の設計に共通的な事項について触れており,第3章以降で 個別の構造物について記述している. 第0章は,構造物設計に共通のもと考えられ,将来,この 種の包括設計コードの体系が完成されればより上位のコー ドが記述すべき内容を含んだものである.この部分は,「code PLATFORM ver. 1」に引き継がれたと考えてもよい.第1章 は,基礎構造物の設計の基本について記し,第2章「地盤情 報」の章は,地盤工学で必要な地盤パラメータの特性値の決 定方法について革新的な提案を行っている. 第3章以下の構造形式は,基本的な構造物の形式と考えて 選んだものであるが,今後逐次拡充を図り,盛土・切土,地 盤改良などの分野についても制定していくべきものである と考えている. 5.3「地盤コード21」の特徴 5.3..1 理想像の追求:日本の構造物設計コード統一の提案 「地盤コード21」は、最近の社会の動向、国際環境の変化 等を踏まえ、日本の将来の構造物の構造設計コードがあるべ き姿を念頭において作成された.すなわち、現在各事業主体 により個別に作成されている設計コードの体系化を計り、日 本全体の設計コードの調和、透明性と説明性を増すような将 来の設計コード体系の姿を考えている.従って国際標準を示 すISO2394、本格的地域コードEurocodes等の文書は特に重視 し参考とした. このようなコードの統一を考えるとき、現在日本に存在す る有力な設計コードと同じレベルの、もう一つの設計コード を作ることによって統一を目指そうとしても、成功しないし、 あまり意味もない.コードを統一するためには、それらのコ ードの1歩上に立つコンセプトが必要であり、このためのコ ンセプトとして本コードでは、「包括設計コード」を提案し ている.Eurocodesは欧州主要各国のコードを統一するため に限界状態設計法と言う新しいコンセプトに基づいた、既存 の各国のコードより一段高いレベルのコードを作ることに よって、統一を目指したといえる.このよう に、今までのコ ードより一段高いコンセプトを持ったコードをここでは「包 括設計コード」と呼んでいる.「地盤コード21」は地盤・基 礎構造分野における包括設計コードを目指したものである. 「包括設計コード」は、性能規定型設計コードであると同 時に「A code for code writers(コード作成者のためのコード)」 としても考えられている(図−3).また,構造物の性能の規 定方法、用語の統一、各限界状態に対する余裕の導入方法と 形式、事業者/所有者・調査者・設計者・施工者・建材製造 者間の情報伝達の標準化等を規 定することを大きな目的し ている.性能設計及び限界状態設計法は重要なコンセプトで あるが、それぞれは包括設計コードの構成要素の1つと考え ている. 日本の主要な機関が制定している設計コードは、改訂が行 われれば 次の日から日本全国でそのコードにより構造物の 設計が行われることを原則としている.これは、コードに新 しいコンセプトを持ちこもうとするとき、余りにも大きな制 約である.多くの場合、この制約のため,新しく持ちこもう としたコンセプトはなし崩し的に変形され、形式のみとなり、 できあがる設計コードに実質的に何の変化も無いという結 果となりやすい. 北米のAASHTOの道路橋示方書 の例を 見ると 、アメリカ 合衆国のシステムでは,それぞれの州の道路局に道路橋設計 の最終的な責任を持たせているため、AASHTOの示方書が改訂 されても当面具体的な構造物の設計には何の影響も無い.改 訂された 示方書をそれぞれの州当局が時間をかけて慎重に 検討し、自分の州の環境に適した形に書き換え、かつ全般的 な実施状況を見て、徐々に新しい設計コードに移行する.こ のようなシステムでは、改訂作業も大胆に行うことができる し、将来の設計コードのあり方を指し示すようなコンセプト の導入も比較的容易である. 本コードで目指しているのも、このような行き方である. このコードが改訂の直後から設計に用いられて行くことを 予期しているというよりは、設計コードの将来の理想像を追 及している.すなわち,このコードをたたき台として,種々 の日本の設計コードがある程度の時間をかけて、そのコンセ プトの統一を緩やかに計る事を意図している. 5.3.2 完全な性能規定型基礎構造物設計コード 構造物の性能に関する透明性と説明性を増すために、要求 性能を階層化した.このような階層化は,図−1にも示す通 り、今日Nordic Codeをはじめ多くの性能規定型コードで採 用されているものである.本コードで採用した要求性能の記 述の階層は、すでに図−3に示したように、目的(Objectives), 機 能 規 定 (Functional Requirements), 要 求 性 能(Performance Requirements) の3つの階層である. 構造物の要求性能は、当該構造物がその設計供用期間中に 受ける荷重の程度と頻度、構造物の重要性の程度に応じて決 定されるべきであり、本コードでは図−2に示すように、い わゆる性能マトリックスの形で、構造物の要求性能を提示す ることを提案している. 5.3.3 性能照査方法の標準化と多様化:アプローチAとB 世界には一方で、1995年のTBT 協定以来の工業製品の性能 規定型仕様により、設計構造物の性能をより明確化し、設計 者と構造物の所有者との対話と合意形成を明確に計るとと もに設計の自由度を高めようという動きがある.他方では ISOやEurocodesなど、世界やある地域で強力に設計コードの 標準化と統一を進めようと言う動きもある.一見矛盾するか に見える、自由化(=多様化)と統一化(=標準化)の動きに合理 的に対処する必要がある. 上記のような2つの方向性を同時に満たすために、「地盤 コード21」の性能照査(設計)では、アプローチAとアプロー チBの2種類のアプローチを許す形を取った(図−3参照). アプローチA は、完全な性能規定型の照査(設計)アプロー チである.すなわち,既存の設計コードにとらわれずに,設 計者の独自の判断により構造物の設計を行おうとするもの である.アプローチAといえども、鋼、コンクリート、地盤

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等の個々の構造物種別の性能照査においては、照査のポイン トとなる原則的事項が存在する.そのため,「地盤コード 21」 は、アプローチAで照査を求められる個々の構造物や、新工 法の審査の際の照査項目(チェックリスト)となることが要 求される. アプローチBは、設計コードに基づく照査(設計)をめざして いる.すなわち,多くの類似の構造物を設計するために従来 より準備されている各機関の保有する設計コードに準拠し て設計を行おうとするものである.「地盤コード21」は設計 コードの作成者のためのガイドラインとなるであろう.つま り,「A code for code writers(コード作成者のためのコード)」 の役割を果たすことが意図されている. 設計コードの階層性の最上部に 位置する「包括設計コー ド」は、アプローチA及びBの上位に立つコードであり、両 アプローチの調和を計るために 考えられたコンセプトであ る.このコンセプトを取ったのはこのコードが最初である. アプローチBにおいても、設計の多様化と標準化を同時に 満たす方法として、アプローチBに属する設計コードにも階 層性が必要である.図−1に示す「固有基本設計コード」と は、現在の主要な設計基準(例えば道路橋示方書など)が想定 されており,そのさらに下層に個別に設定される,現在で言 えば「内規」に近いようなコードが存在する. 構造物の設計コードは現在の国際的な潮流の影響を受け、 透明性、説明性、標準化を指向することにより、情報の公開 とこれを通じての市場の共通化、そして最終的に建設関連の 経済活動の活性化を目指す方向にある.コストダウンや新技 術の導入もこれと軌を一にしている.一方構造物の要求性能 は、事業主体/所有者、地域性等により異り、多様化してゆ くことは、多様化を増す社会の動向、地方自治の強化の中で 必然性を持っている.以上2つの標準化と多様化と言う、構 造物の要求性能に関する2つの矛盾するとも言える動向を合 理的に調和させるためにも、包括設計コードは求められてい ると考えられる. 5.3.4 「限界状態設計法」に基づいた設計コード 本コードは、世界標準として規定されている構造物の構造 的な安全性の照査法の標準を示した「確率に基づいた限界状 態設計法」に基礎を置いたISO2394に準拠している.限界状 態を構造物の各種の構造的要求性能と置けば、「限界状態設 計法」は、構造物の性能規定型設計を行うもっとも優れた設 計法(少なくともその一つ)と考えられる. 5.3.5 地盤パラメータの特性値設定の標準化 設計コードの第一の役割は、与えられた荷重と抵抗要素、 設計計算モデルの間で、それらに含まれる不確実性を考慮し ながら、構造物のいろいろな要求性能がその供用期間中に十 分満足されるように、設計にどのくらいの余裕を見こむかを 決定することである. 上記の点が認識されると、地盤工学における設計が、鋼や コンクリートといった工業的に規格化された材料を用いる 場合と大きく異なることが理解される.自然が提供する材料 である地盤では、サイトごとに地盤調査と試験を行い,その 地盤パラメータの値を決定しなければならない.どのような サイトに建設される基礎構造物でも、設計において均質な限 界状態に対する余裕を確保するためには、各サイトで求めら れる地盤パラメータの特性値の決定方法がある程度標準化 され、その特性値がどのような意味で地盤の代表値であるか を設計者が十分理解している必要がある. 本コードを提案するに当たり、執筆者達が特に注目したの は、内外に既存のほとんどの設計コードが、工業的規格材料 を対象とした構造技術者により作られてきたため、地盤パラ メータの特性値に関する記述がきわめて不満足であるとい う点である. 地盤情報の集約である、地盤パラメータの特性値の定義は、 このコードでは次のように記述されている(2.4.3節5)).なお, ここで,それぞれの項の頭に「REQ」とあるのは,当該項目 が「要求項目」(REQuirement)であることを意味している. (1) REQ 特性値は,設計で検討する限界状態を予測するた めの基礎・地盤のモデルに最も適切な値として推定され た地盤パラメータの代表値である. (2) REQ 特性値の決定にあたっては,理論や過去の経験に もとづき,地盤パラメータのばらつきや単純化したモデ ルの適用性に十分留意しなければならない. (3) REQ この特性値は,原則として導出値の平均値(期待 値)である.この平均値は,単なる導出値の機械的な平 均値(算術平均値)ではなく,統計的な平均値の推定誤差 を勘案しなければならない.また,地質学的・地盤工学 的な知見や過去の類似のプロジェクトで得られた経験 を十分に反映し,複数の調査・試験法の計測結果の整合 性(調和性)なども総合的に判断して求めた注意深い平 均値の推定値でなければならない. ここで、もっとも重要視されなければならないのは、地盤 パラメータの特性値を平均値と規定していることである.こ のことによりこの値の決定に「安全側を見よう」等の、地盤 調査者や設計者の恣意的な判断が入ることを避けようとし ている.一方で、平均値を求めると言う明確な目標を与える ことで、地盤調査結果の解釈に必要な多くの有益な工学的な 判断は、これを奨励している. 地盤パラメータの設定に 関連するもうひとつの重要な事 項は,基礎設計において地盤調査の果たす役割が極めて大き いことである.谷18)によれば,基礎設計における地盤の存在 の持つ特徴は次の点である .(1)地盤が基礎の一部をなすこ と,(2)地盤はあらかじめ建設地点に存在し,設計者が自由 に選択することができないこと,このため,基礎の位置や構 造形式が当該地点の地盤条件に影響されること(3)地盤と基 礎は互いに影響を及ぼしあう存在であることである.また,

(9)

地盤の評価をする上での特徴としては ,(1)地盤の情報を十 分に取ること自体が難しいことによる地盤パラメータの評 価の困難性,(2)地盤情報の中には数理的取り扱いの難しい ものが多く含まれていること,(3)基礎の計画,設計,施工 の各段階 においてさまざまな形で地盤調査が位置づけられ ることがあげられる. このようなことから,基礎設計における地盤調査の位置づ けを考えると以下のようなことが言える. (1) 地盤調査と設計計算 は一体 となって基礎設計を構成 する. (2) 地盤技術者と構造技術者の 密な コミュニケーション が不可欠である. (3) 地盤調査と設計計算 は段階的に 修正されながら進展 する. (4) 地盤情報の取り扱いに当たっては,高度な専門技術を 必要とする. 以上の点を考慮し,「地盤コード21」5)では,2.2.2 設計者と 地盤調査の項において,設計者と地盤調査者の協調的な対話 の必要性を提案している.また,2.2.3 調査者の資格では, 技術者の高度な地盤技術を要求するものとなっている. 5.3.6 地盤工学の最新の知見に基づく基礎構造物設計コード 先にも述べたように、包括設計コードは性能照査型設計コ ードの枠内で、地盤工学の最新の成果に基づく基礎構造物設 計の指針であるべきである.このために次のような諸点に、 考慮した.

(1) 基礎構造物設計のstate of the artに基づく設計時の過不 足の無いチェックリストを作成することを目指した.下 位のコードの作成にあたっても、このチェックリストは 用ることができるし、用いなければならない. (2) このチェックリストでは、しかし定量的な記述は極力 避け、定性的な記述に留める事で、設計者やコード作成 者のそれぞれの 要求性能達成のための工学的判断の余 地を十分に残した. (3) これを基礎構造物設計の教科書 として用いることも 可能である. (4) 幾 つかの具体的 な照査方法 を例題として付録に付 け た.これは特に本コードが、翻訳され国外の技術者の目 に触れるとき、日本の最新の設計技術を知る上で参考に なるはずである. 「第3章 浅い基礎の設計」以下の章は,このような目標 のもとに、性能規定型設計コードの枠内で、最新の基礎設計 技術をどのように記述するかという野心的な試みの具体例 として執筆された.このような記述を過不足なく書くことは、 極めて困難な作業である. これらの章では,外見上の章の構成はなるべく合わせる方 針を取っている.設計に当たり考慮すべき事項,挙動の推定, 照査の各節の記述に当たっては,個々の構造形式ごとに必要 とされる事項を記述している.これらの記述に当たっては, 現在の日本の技術レベルが反映されるようにすることはも ちろんであるが,今後開発されるさまざまな設計技術,設計 評価技術が現れた場合でも,それらの技術が円滑に設計に取 り入れることが可能となるような記述に配慮した. なお,基礎構造物の目的は,基礎が構造物の一部をなすた め,それを単独で記述することが難しく,いきおい,当該構 造物の目的を達成することが目的となる.このあたりに,基 礎構造物の持つ特殊性が現れていると考えている. 5.3.7 情報伝達のフローの標準化と技術者の資格 本包括コードでは、地盤構造物設計に関わる情報の伝達の 標準化を意図して、それぞれのプロジェクトのフェーズで、 調査者、設計者、施工者等が作成すべき報告書の種類とその 内容(項目)について規定した. 国際的な市場の共通化をにらみ、さまざまな技術者の資格 認定も重要な課題となっている.この包括コードでは、この 問題も視野に入れ、設計技術者、地盤調査技術者の資格につ いても規定することを試みた. 6. むすび ここ10年間ほど筆者が携わってきた,性能設計概念に基い た2つの設計コード,土木学会の「性能設計概念に基いた構 造物設計 コード 作成のための原則・指針と用語」(code PLATFORM ver.1)及び,地盤工学会の「性能設計概念に基 いた基礎構造物等にい関する設計原則(JGS4001-2004)」(地 盤コード21)について,その設立の経緯,理念,内容につい て述べてきた.またその前提として,性能設計発展の経緯や, この概念に基いた設計コードが具備すべき条件についても, 私見を述べた. これらの包括設計コードは,いろいろな分野の設計基準の 改定に当たり,予想以上に尊重していただき,設立に携わっ た人々の意図した方向に,多少とも事態が進展したようにも 見える15), 19), 20), 21).また,土木学会では土木学会荷重指針連 合 小 委 員 会( 委 員 長 古 田 均関 西 大 学 教 授)5が ,code PLATFORM ver.1の考え方 に 沿った土木構造物の 作用に 関 する指針の作成を進めている.今後ともこのような方向に事 態が進み,日本の設計コード全体のコンセプトが,国外に対 して明確に説明できるようになれば結構なことである.さら に,この包括設計コードの改定も,さらに進められることを 望みたい. 著者は,性能設計概念に基いた設計コードの直接の作成か らは身を引き(とはいっても,現在も若干の残務をこなして

5 http://www.jsce.or.jp/committee/st/kajuu/

(10)

はいる),主に地盤構造物を対象とした信頼性設計,限界状 態設計法の研究課題に取り組んでいる.この分野も,まだ多 くの未解決の問題が残されている. 参考文献 1) 地盤工学会(2004):性能設計概念に 基づいた 基礎構造 物等に関する設計原則(JGS4001-2004).(英訳版も既に完 成している). 2) 土木学会(2003):包括設計コード(案)性能設計概念に 基づいた構造物設計コード作成のための原則・指針と用 語 Ver 1.0. 3) 本城勇介(2000):包括基礎構造物設計コード「地盤コ ード21 Ver.1」の提案,土と基礎, Vol. 48, No.9, pp.17-20. 4) 本城勇介(2002):地盤構造物の 性能設計、土と基礎、 Vol.50,No.1,pp.1-3 5) 本城勇介、日下部治、市川篤司、佐藤尚次、山本修司, 香月智、谷和夫、山口栄輝、杉山俊幸、澤田純男、谷村 幸裕、上東秦、佐々木義裕(2003):「性能設計概念に基 づいた構造物設計コード作成のための原則・指針と用語 (通称「code PLATFORM ver. 1」)」の開発, 構造物の 安 全 性お よ び 信 頼 性 Vol. 5, JCOSSAR 論 文 集, pp. 881-888 6) 菊池喜昭、 本城勇介、日下部治(2003):地盤・基礎構 造物分野における包括的構造物設計コードの提案, 構 造物の安全性および信頼性 Vol. 5, JCOSSAR 論文集, 7) 本城勇介・松井謙二(2004): 地盤工学分野における国 際的な設計コードの動向と展望、土と基礎、Vol52, No.2, pp.17-20 8) 本城勇介(2004): 地盤構造物の設計論 と設計コード, 土と基礎, Vol.52, No.12, pp.10-14. 9) 本城勇介(2004): 地盤構造物の設計論 と設計コード, 第39回地盤工学研究発表会、展望講演資料、144pp. 10) Honjo, Y. and O. Kusakabe (2004): Some movements

toward establishing comprehensive structural design codes in Japan: 'Geo-code 21' and 'code PLATFORM ver.1', Proc. of the 3rd Civil Engineering conference in the Asian region (CECAR), pp.217-220 (paper number T5-4), Seoul, Korea. 11) Honjo, Y., Y. Kikuchi, M. Suzuki, K. Tani and M. Shirato

(2005): JGS Comprehensive Foundation Design Code: Geo-code 21, Proc. 16th ICSMGE, pp.2813-2816, Osaka. 12) CIB(1998): Final report of CIB task group 11:

performance-based building codes, CIB(International Council for Building Research Studies and Documentation) Report Publication 206.

13) NKB(1978): Structure for building regulation, NKB report No.34, 1978.

14) SEAOC(1995): Vision 2000 - Performance based seismic engineering of buildings, Vision 2000 Committee, Final Report, 1995.

15) 山本修司(2005):性能設計体系への 移行における課題 と展望,土木学会論文集(第VI部門、9月号)

16) ISO(1998): International Standard ISO/FDIN 2394, General principles on reliability for structures.

17) CEN(1999): Draft EN 1990 Eurocode 0 Basis of design.

18) 谷和夫(2004):附録C 基礎設計における地盤調査の 位置付け,性能設計概念に基づいた基礎構造物等に関す る設計原則(JGS4001-2004).

19) 長尾毅(2007):港湾の 技術基準に性能設計体系を導入, 月間建設07-03,pp.48-49.

20) Watabe, Y., M. Tanaka and Y. Kikuchi (2006): Soil parameters used in the new design code of port facilities in Japan, New Generation Design Codes for Geotechnical Engineering Practice – Taipei 2006 (eds. Lin M-L et al.), p.97-98 and in CD-ROM, World Scientific, Singpore. 21) 中谷昌一,白戸真大,井落久貴,野村朋之(2007):性

能規定化における杭基礎の安定照査に関する研究,土木 研究所資料,第4036号,2007年1月,pp.27.

(11)

2003.3

ver.1.0

包括設計コード(案)

性能設計概念に基づいた構造物設計コード作成のための

原則・指針と用語(第1版)

P

rinciples, guide

l

ines

a

nd

t

erminologies for structural design code drafting

founded on the per

form

ance based design concept ver.1.0

c o d e P L A T F O R M ver.1.0

(12)

本調査は「包括設計コード策定基礎調査」として、昨年度の「包括設計コード検討基礎調査」

に引き続き実施したものであり、主な目的として日本版の包括設計コードの策定を掲げている。

周知のように、最近の設計コードの国際化の流れの中で、ISO2394(構造物の信頼性に関する一

般原則)や

Eurocode0 などの包括設計コードがすでに発効しており、日本国内においても国土交

通省が「土木・建築にかかる設計の基本」を

2003 年3月に発表した。

包括設計コードは、それ自体が設計コードの概念やフォーマットを理解する上で有用な文書で

あるだけでなく、個別の設計コードのコードライターに参照・尊重されることによって、設計コ

ード体系の統一が図られる。つまり、国内の設計者、事業者、利用者にとって、また海外から見

ても整合性のとれた設計体系の構築に貢献するものである。また、設計コードは設計者にとって

わかり易いだけでなく、設計者と事業者あるいは利用者との対話を円滑にするものでなくてはな

らない。包括設計コードはこれらの点についても留意したものである必要がある。

本調査では、土木学会内に「包括設計コード策定基礎調査委員会」を設け、鋼構造、コンクリ

ート構造、耐震、耐波、耐風、さらに建築も含めた様々な分野の第一線で活動するコードライタ

ーの方々に委員を委嘱し、包括コードの策定を行った。本包括設計コードは、文書の内容はもち

ろんのこと、これら多岐にわたる分野のメンバーが合意したものであることが非常に意味のある

ものといえる。実際の策定作業では、用語の定義、性能記述の階層、

「限界状態−作用−時間」に

よる性能記述について多くの時間を割いた。また、ISO2394 などすでに発効している国際標準と

の整合にも配慮した。さらに近い将来の課題としてアジアでの設計コード調和の議論にむけての

布石として、昨年に引き続き2回目の国際フォーラムを実施した。そこでアジア地域の7つの国

の設計コードの現状に関する貴重な情報を収集するとともに、本委員会の成果である用語集を、

アジアでの用語統一へのたたき台として採用する道筋が出来あがった。

構造物設計に関しては、性能設計の推進、新技術の導入の促進、コスト縮減への貢献、説明性

の向上、国際的な設計コードとの整合など様々な課題が提起されている。包括コードによって設

計コードの原則、フォーマット、用語・概念を統一することは、これら諸課題の解決へ寄与する

ものと考える。本調査においてとりまとめた包括設計コードが、今後の設計法に関する議論に資

するものであることを切に願うものである。

なお、本調査で作成された文書は「包括設計コード」という名称を敢えて避けて「性能設計概

念に基づいた構造物設計コード作成のための原則・指針と用語(呼称:code PLATFORM ver.1)」

とすることを提案したい。これは、調査委員会の中でも特にドラフト作成に関わった方々の意見

として「コードと称した場合、設計基準の一つと見なされてしまう」という指摘に対応したもの

である。包括設計コードの本来の意図を誤解ないよう伝えるためには、

「コード」という名称より

も、日本においてコードライターが合意した決め事を意味する名称の方がよりふさわしいと考え

たためである。

本委員会の2年間の活動は、設計法の調和という道のりの一歩である。今後とも継続的活動が

可能となるよう関係機関のご理解とご支援を期待したい。

包括設計コード策定基礎調査委員会

委員長 日下部 治

(13)

2

表 包括設計コード策定基礎調査委員会 委員構成

役職

氏名 所属 委員長

日下部 治

東京工業大学大学院 理工学研究科 土木工学専攻 教授 副委員長

市川 篤司

(財)鉄道総合技術研究所 研究開発推進室 主査 副委員長

佐藤 尚次

中央大学 理工学部土木工学科 教授 幹事長

本城 勇介

岐阜大学 工学部土木工学科 教授 委員

秋山 充良

東北大学大学院工学研究科 土木工学専攻構造設計学研究室 講師 委員

足立 幸郎

阪神高速道路公団 工務部設計課 技術係長 委員

香月 智

防衛大学校 システム工学群建設環境工学科 助教授 委員

勝地 弘

横浜国立大学大学院 工学研究院 環境情報研究院 土木工学教室 助教授 委員

上東 泰

日本道路公団試験研究所 道路研究部 橋梁研究室 主任研究員 委員

木村 吉郎

九州工業大学 工学部建設社会工学科 助教授 委員

澤田 純男

京都大学防災研究所 地震災害研究部門耐震基礎分野 助教授 委員

下迫 健一郎

独立行政法人 港湾空港技術研究所 海洋・水工部 耐波研究室 室長 委員

下村 匠

長岡技術科学大学 工学部環境・建設系 助教授 委員

庄司 学

筑波大学 機能工学系 講師 委員

杉山 俊幸

山梨大学 工学部土木環境工学科 教授 委員

高橋 徹

千葉大学 デザイン工学科建築系 助教授 委員

田中 和嗣

独立行政法人土木研究所 技術推進本部先端技術先端技術チーム 研究員 委員

長尾 毅

国土交通省国土技術政策総合研究所 港湾研究部港湾施設研究室 室長 委員

谷 和夫

横浜国立大学 工学部建設学科土木工学教室 助教授 委員

谷村 幸裕

(財)鉄道総合技術研究所 構造物技術研究部コンクリート構造 主任研究員 委員

能島 暢呂

岐阜大学 工学部 土木工学科 助教授 委員

三島 徹也

前田建設工業(株)技術研究所 研究第1グループ 課長代理 委員

山口 栄輝

九州工業大学 工学部建設社会工学科 助教授 委員

山本 修司

国土交通省国土技術政策総合研究所 港湾研究部 部長 幹事

佐々木 義裕

鹿島建設(株) 土木設計本部設計技術部先端技術グループ 設計主査

(14)

目 次

1.用語の定義(Definitions of terminologies) ---1

1.1 一般用語(General terms)---1

1.2 設計に関する用語(Terms on design methodology)---3

1.3 作用・環境的影響に関する用語

(Terms on action and environmental influence) ---5

1.4 構造物の応答,強度,材料特性,幾何学量に関する用語

(Terms on structural response, resistance, material property

and geometrical quantity)---6

1.5 既存構造物の性能評価に関する用語

(Terms on performance assessment of existing structures)---7

2.一般(General) ---10

2.1 適用範囲(Scope)---10

2.2 設計コードの枠組み(Framework of design code)---13

3.構造物の目的・要求性能・性能規定(Performance requirements of structures) ---15

3.1 目的(Objectives of structures) ---15

3.2 要求性能(Performance requirements) ---16

3.3 性能規定(Performance criteria)---17

3.3.1 定義(Definitions)---17

3.3.2 構造物の限界状態(Limit states of structures)---19

3.3.3 作用・環境的影響の程度とそれらの組み合わせ(Actions,

environmental influences: magnitude and their combinations)---20

3.3.4 時間(Time)---21

3.3.5 構造物の重要度(Significance of structures)---23

4.照査の方法(Verification procedures) ---24

4.1 許容される照査方法(Allowable verification procedures)---24

4.1.1 一般(General)---24

4.1.2 設計者(Designers) ---25

4.2 照査アプローチA(Verification approach A) ---26

4.3 照査アプローチB(Verification approach B)---27

(15)

1

1.用語の定義(Definitions of terminologies)

本章では,本包括設計コード及び本包括設計コードに従う固有基本設計コード・固有設計コードで

使用する用語を定義する.

なお,用語の肩字は以下の引用したコードを示す.

0) 本包括設計コードにおいて新たに定義した用語.

1) ISO2394(第3版,1998)で定義された用語を引用したものであり,ISO2394の定義・変更に従

うべき用語.

2) 土木鋼構造物の性能設計ガイドライン(2001.10)を参考に本包括設計コードで定義した用語.

3) 地盤コード21(2000.3)を参考に本包括設計コードで定義した用語.

4) 土木・建築にかかる設計の基本(2002.10)を参考に本包括設計コードで定義した用語.

5) ISO13822(第1版,2001)で定義された用語を引用したものであり,ISO13822の定義・変更

に従うべき用語.

1.1 一般用語(General terms)

(1)一般

構造物(structure)

1)

:剛性を発揮するように設計された種々の部材を結合し,組織的に組み上げた

もの.

構造要素(structural element)

1)

:構造物を構成する要素で,物体として識別可能なもの.例とし

て柱,梁,板などがある.

構造システム(structural system)

1)

:建築物や土木構造物の耐力要素,およびこれらの要素を共同

して機能させる仕組み.

寿命(life, lifetime, life period)

2)

:構造物が施工されてから,何らかの理由で使用が停止され,

撤去されるまでの期間.物理的寿命,機能的寿命,経済的寿命に分類される.

ライフサイクル(life cycle)

1)

:計画,設計,施工,および供用の全期間のこと.ライフサイクルは

構造物の必要性が認識された時に始まり,解体された時に終了する.

品質(quality)

2)

:製品のもつ1つの特性を定量的指標で表現したもの.予め設定された検査や試

験により定量的指標の1つの実現値が得られる.例えば,鋼材の降伏点,シャルピー衝撃

吸収エネルギーなど.

信頼性(reliability)

1)

: 構造物または構造要素が所定の要求事項を満足できる能力であって,所定

の要求事項には設計時に想定される供用期間も含まれる.

破壊(failure)

1)

: 構造物あるいは構造要素の耐荷性能または使用性が不十分である状態.

(2)設計コード・設計法

包括設計コード(comprehensive design codes)

3)

:一つの国や地域で,土木・建築構造物一般,さ

らに個々の構造物種別について,その構造的な設計の原則を記述した設計コード.個々の

構造物の設計を行うためのコードというよりは,構造物の性能規定の方法,用語の統一,安

全性余裕の導入方法と形式,情報伝達法の標準化の他,設計で留意すべき共通事項を記述

した設計コード体系の階層のもっとも上位に立つべきコード.「設計コード作成者のため

(16)

2

のコード」と考えることもできるが,設計者にとって基本的な情報を含んでいる.固有基本

設計コードの上位に立つ設計コード.

固有基本設計コード(specific base design codes)

3)

:当該構造物の構造的性能を統括する行政機

関/地方公共団体/事業主体などが,その構造的な要求性能を規定した文書.

固有設計コード(specific design codes)

3)

:「固有基本設計コード」を受け,この基本コードに基

づいて作成される固有設計コード.より特化した目的,限定された地域での使用,特定構造

物のために作成された,要求性能や性能規定を記した文書.これに一連の性能照査手順を

示す場合もある.

性能照査型設計法(performance-based design)

2)

:設計された構造物が要求性能さえ満足して

いれば,どのような構造形式や構造材料,設計手法,工法を用いてもよいとする設計方法.

より具体的には,構造物の目的とそれに適合する機能を明示し,機能を備えるために必要

とされる性能を規定し,規定された性能を構造物の供用期間中確保することにより機能を

満足させる設計方法.類似の用語に,性能規定型設計,性能明示型設計,性能指向型設計

などがある.

性能規定型設計コード(performance based design codes)

3)

:構造物を,その仕様によってではな

く,その社会的に要求される性能から規定する,構造物の設計コード.

注)文献6)では,「構造物の機能を確保するために要求される性能のレベルと,その照

査に用いる作用のレベルとの関係を明確にした設計法」を性能規定型設計法または性能明

示型設計法としている.

仕様に基づく設計(specification-based design)

2)

:具体的な構造材料の種類や寸法,解析手法

等が指定されており,それに基づいて設計する方法.多くの現行設計基準はこれにあたる.

適合みなし規定(pre-verified specification)

2)

: 要求性能を満足していると見なされる「解」を

例示したもので,性能照査方法を明確に表示できない場合に規定される構造材料や寸法,

および従来の実績から妥当と見なされる現行基準類に指定された解析法,強度予測式等を

用いた照査方法を表す.他には,適合みなし規定,適合みなし仕様,承認設計などの用語

があるが,示方書等に規定されている既存の解析法あるいは予測式もこの中に含めている

ため,仕様よりも規定の方が適切で,適合みなし規定を用いる.

信頼性設計法(reliability based design)

2)

:構造物が限界状態に達する可能性を確率論的に照査

する設計法.

目標信頼性レベル(target reliability level)

5)

:受容可能な性能を確認するために必要な信頼性のレ

ベル.

限界状態設計法(limit state design)

2)

:照査すべき限界状態を明確にした設計法.照査フォーマ

ットとして信頼性理論のレベルⅠにあたる部分安全係数法を採用することがほとんどで

あるため,部分安全係数法(partial safety factor design)が限界状態設計法と同義で使われ

ることもある.

部分係数様式(partial factors format)

1)

: 代表値,部分係数,および,必要ならば他の付加的な量

によって,基本変数の有する不確定性と変動性を考慮する計算様式.

(17)

3

盤パラメータ,構造物寸法,設計計算モデルの精度,限界状態を設計計算で照査するため

の基準値などの不確実性に対して,

構造物が所定の限界状態を適当な確率で満足するため

の余裕を,部分係数により考慮する設計法.

材料係数アプローチ(material factor approach)

3)

:部分係数を,各作用の特性値,抵抗パラメータの

特性値などに直接適用し,これらの設計値を求め,これら設計値を計算モデルに代入して,

構造物の作用効果と応答,また耐力を求め,これにより限界状態に対する照査を行おうと

する部分係数による設計法.

抵抗係数アプローチ(resistance factor approach)

3)

:作用の特性値と,抵抗パラメータの特性値を

直接計算モデルに代入し,構造物の作用と応答や耐力の特性値を求め,これら特性値に直

接部分係数を適用して,限界状態の照査を行おうとする部分係数による設計法.

1.2 設計に関する用語(Terms on design methodology)

(1)一般

設計供用期間(design working life)

1)

:大きな補修を必要とせずに,当初の目的のために構造物や

構造要素を使用できると仮定した期間.

構造健全性(構造ロバスト性)(structural integrity) (structural robustness)

1)

: 火災,爆発,衝撃,

人為的ミスの結果などによって,当初想定した原因によるよりもかなり大きな損傷を受け

ない性能.

構造物の信頼性等級(reliability class of structures)

1)

: ある特定の信頼性レベルが要求される

構造物あるいは構造要素の等級.

要求性能マトリックス(required performance matrix)

2)

:構造物に付与すべき性能のグレード

と想定する外力のグレードをマトリックス表示したもの.設計者は構造物の重要度に応じ

て付与すべき性能をマトリックスから選択する.文献2)では,耐震,疲労,耐風などに対

して要求性能マトリックスが提案されている.

評価(assessment)

1)

: 構造物の信頼性が許容できるかどうかを判断するために実施される作業

の総称.

事前評価(pre-evaluation)

2)

:構造物の計画・設計段階で,構造物の製作・架設時,供用時,解体・

再利用時に要求される性能を満たすように照査する行為.

事後評価(post-evaluation)

2)

:構造物の製作・架設時の品質検査,供用時および偶発的外力による損

傷時の点検・調査などの行為.すなわち構造物の製作・架設以後において要求性能を照査する

行為.

(2)性能記述に関する用語

目的(objective)

0)

:構造物を建設する理由を一般的な言葉で表現したものであり,事業者または

利用者(供用者)が主語として記述されることが望ましい.

要求性能(performance requirement)

0)

:構造物がその目的を達成するために保有する必要があ

る性能を一般的な言葉で表現したもの.

性能規定(performance criterion)

0)

:性能照査を具体的に行えるように,要求性能を具体的に記述

参照

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