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目次 1. なぜ今再び 有機 EL なのか?... 3 iphone の有機 EL パネル採用報道がきっかけ... 3 供給能力拡大加速へ 3 大勢力の それぞれの事情... 5 需要は 後からついてくる? 設備投資見通し : 山は高く ピークは先か? 最新動向と製造面

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2016 年 6 月 27 日

株式調査部

In-Depth /日本 /-

ジャパン・テック:ディスプレイ技術

<業界アップデート>

有機 EL はバブルか救世主か?

SMBC日興証券およびその関連会社は本レポートでカバーされている企業と取引を行っている、または今後行う可能性があります。 従いまして投資家の皆様は本レポートの客観性に影響を及ぼす利益相反が弊社に存在する可能性があることをご認識ください。本レ

SMBC NIKKO SECURITIES AMERICA, INC

SMBC NIKKO CAPITAL MARKETS LTD SMBC日興証券株式会社

民生用エレクトロニクス /精密機器 化学・繊維 シニアアナリスト シニアアナリスト 桂 竜輔 竹内 忍 半導体製造装置 石油 シニアアナリスト シニアアナリスト 嶋田 幸彦 塩田 英俊 諸製造 半導体製造装置/電子部品 シニアアナリスト アナリスト 岡芹 弘幸 伴 明泰 電子部品 民生用エレクトロニクス /精密機器 シニアアナリスト アナリスト 渡邉 洋治 花屋 武 業種格付け 民生用エレクトロニクス 中立 電子部品 中立 精密機器 弱気 化学・繊維 中立 石油 強気 諸製造 中立 半導体製造装置 中立  設備投資はスマホを全て有機 EL へ置き換える勢いへ再加速  材料/製法のブレークスルーではなく、セットメーカー/国家の事情が背景  バブルか救世主へ昇華かの判断は時期尚早も、変化への挑戦始まる

Action and catalysts

有機 EL ブームが到来している。弊社では(1)なぜ今再び「有機 EL」なのか、(2)最 新動向と製造面での「3 つの鍵」、(3)有機 EL の基礎と現状認識、(4)個別関連企業 の動向、の 4 つの章立てで、関連セクターアナリストとクロスセクターで調査/分析/需 要予想を行った。 結論としては、今回のブームでは、小型パネルが全て有機 EL に置き換えられるほど の勢いで設備投資は実施される公算が大きいことから、株式市場が想定しているより もピークは高く、長期に渡って設備投資が継続する可能性が高いと考えられ、製造 装置、マスクメーカーや関連部材メーカーにポジティブだろう。一方パネルメーカー ではサムスンが圧倒的に優位だが、最終的な勝敗を占うのは時期尚早であろう

Pros and Cons on the Change

有機 EL 投資/普及が加速する際の恩恵銘柄は、出光興産、日本写真印刷、大日本 印刷、SCREEN ホールディングス、キヤノンなど。有機 EL/液晶の高度化のいずれ でも恩恵享受するのはニコンなど。 大日本印刷は現行主流である蒸着方式のメタルマスクで 90%程度の高シェアを持ち 営業増益に寄与している。一方で凸版印刷は事業展開に遅れをとっている。 出光興産は有機 EL 発光材料をフルラインアップで手掛ける数少ない総合有機 EL 材料メーカーで、世界トップシェア。有機 EL 材料の中では、競合の少なく収益性が 高い青色蛍光材や電子輸送材を得意としており、有機 EL 普及で恩恵を受けよう。 フィルムにおいては、LCD から有機 EL へのシフトによる偏光フィルム使用枚数が減 少(2 枚→1 枚)、その点では既にハイエンドスマホ向けで高シェアを有する日東電工 にはネガティブ、アウトセル方式でフォトリソ工法タッチパネルを有する日本写真印刷 がポジティブとみる。有機 EL「フレキシブル化」では、TSP と偏向フィルムの両製品を 手掛ける住友化学が商機をつかむポテンシャルを秘めると考える。 FPD 露光装置においてはニコンとキヤノンでシェアを二分。ニコンは中小型高精細 対応品で高シェア。一方キヤノンは子会社のキヤノントッキが手掛ける有機 EL 用真 空蒸着装置での G6 ハーフ量産機での主要サプライヤーであり、露光機もセットで拡 販することが可能と考えられる。FPD 露光装置と組み合わせて使用されるコータ・デ ベロッパにおいて高シェアを握るのは SCREEN HD。パネルメーカーでは JDI、シャ ープの有機 EL に投下できるリソースは限定的であり、当面はコスト増要因とみる。 非カバレッジ銘柄では、平田機工、ブイ・テクノロジー、レーザーテック、エスケーエレ クトロニクスを取り上げている。

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目次

1.

なぜ今再び「有機 EL」なのか? ... 3

iPhone の有機 EL パネル採用報道がきっかけ ... 3

供給能力拡大加速へ、3 大勢力の「それぞれの事情」 ... 5

需要は「後からついてくる」? ... 11

設備投資見通し:山は高く、ピークは先か? ... 12

2.

最新動向と製造面での「3 つの鍵」 ... 14

「リアル RGB/400ppi/フレキシブル」を目指す? ... 14

(1)蒸着装置:キヤノントッキの装置概要/生産能力と他社動向 ... 15

(2)マスク:大日本印刷の技術と、今後の可能性 ... 16

(3)封止:フレキ化での挑戦 ... 17

屈曲耐性確保のために、光学フィルム・センサーの統合が始まる ... 18

3.

有機 EL とは? 基礎と現状認識 ... 20

発光原理と材料 ... 20

液晶との比較:「変わるもの」と「変わらない」もの ... 21

材料メーカーの顔ぶれに大きな変化はない ... 23

4.

個別関連企業の動向 ... 24

ジャパンディスプレイ(6740) ... 25

シャープ(6753) ... 26

キヤノン(7751) ... 27

ニコン(7731) ... 28

SCREEN ホールディングス(7735) ... 30

大日本印刷(7912) ... 32

凸版印刷(7911) ... 33

日本写真印刷(7915) ... 34

日東電工(6988) ... 35

住友化学(4005) ... 36

その他関連銘柄(化学セクター) ... 40

出光興産(5019) ... 42

非カバレッジ銘柄(国内企業) ... 44

平田機工(6258):真空チャンバーを製造受託 ... 44

ブイ・テクノロジー(7717):ハイブリッドマスクを展開... 44

レーザーテック(6920):大型マスク欠陥検査装置の雄 ... 45

エスケーエレクトロニクス(6677):フォトマスク製販ピュアプレイヤー ... 45

非カバレッジ銘柄(中国企業) ... 46

Tianma Micro-electronics (000050) :中国中小型パネルメーカーの雄 ... 46

BOE Technology Group (000725):中国最大手パネル投資の主役 ... 46

China Star (非上場):TCL グループ傘下の液晶パネルメーカー ... 46

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1. なぜ今再び「有機 EL」なのか?

iPhone の有機 EL パネル採用報道がきっかけ

供給能力の増強局面入り、需給の議論はその先か

2015 年秋頃より再び、何度目かの有機 EL(OLED:Organic light-emitting diode)ブームが到来してい る。きっかけは米 Apple が 2017 年/2018 年発売の iPhone 新モデルで有機 EL を採用するとの報道に より、日韓台中のパネルメーカー/装置メーカー/材料メーカーが一斉に動き出したことにある。 以来、株式市場では関連銘柄について何度となく注目され、銘柄によっては既にバリュエーションから ピークアウトの議論がなされるなど、何度か期待を織り込みつつも一方で現実の受注/業績動向も注視 する局面が繰り返されている。 弊社では最新動向を常に追いかけつつ、その影響についてフォローしているが、前提条件は刻一刻 と変化しており、最終的にどの様なかたちで着地するかは予断を許さない。 ただ現状ではボトルネックと想定されていた要素も徐々に解消されつつある。当初弊社が想定してきた よりも全体での設備投資規模は大きく膨らむ可能性が高まりつつあることから、関連業界の受注/売上/ 収益は現状の株式市場の期待値を上回って推移する可能性があると弊社では考える。 図表1. 情報合戦の中で、日系装置メーカー/材料メーカー/パネルメーカーが突き動かされる 有機 EL に関する主な報道 市場動向 ・韓国パネルメーカーが液晶から有機 EL にシフトするのは液晶パネルで中国勢が急速に台頭している為 ・中国大手 4 社の総投資額は今後 3 年間で 3 兆円に上る ・中国勢の生産増強に対し、世界のスマホ市場は伸び悩み気味。供給過剰に陥ることで液晶パネルの価格下落は不可避 韓国政府の動向 ・サムスン電子/LG ディスプレイ両社を支援。産業通商資源省は 2015 年 11 月 27 日新工場支援チームを編成 ・研究開発投資に対する税控除や生産設備の輸入関税免除などを実施 韓国 LG ディスプレイの動向 ・中小型液晶パネル最大手の韓国 LG ディスプレイが、スマホやテレビ向けの有機 EL パネルの先端工場に 10 兆ウォン(約 1 兆 700 億円)投じると 2015 年 11 月 27 日正式発表 ・LG ディスプレイは、韓国北西部の披州(パジュ)で有機 EL パネルの新工場を建設。同工場は 2018 年上半期に稼働する予定 ・巨額投資の背景には、米 Apple が 18 年発売の「iPhone」の新モデルに有機 EL パネルを採用するため 韓国サムスン電子の動向 ・自社のスマホに有機 EL パネルを搭載 ・既にスマホ向けの有機 EL パネルを量産しており Apple と納入を交渉開始 日本企業の動向 ・日本のパネル産業は競争条件が異なる消耗戦を強いられてきた ・有機 EL では韓国勢に先行を許している ・パネルの製造装置や部材での技術蓄積でみれば日本はまだ優位を保つ。「日の丸連合」が一丸となれるかどうかが、巻き返しのカギ 出所: 各社 HP、各種報道を基に、SMBC日興証券作成 供給能力増強の山は想定 以上に高く期間は長い?

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飽和状態の中で「破壊的技術」の登場を欲する企業と国家(と株式市場) 一方、最終需要の主要テックハードウエアの動向は停滞感が継続している。弊社では四半期毎に主 要セット台数実績並びに見通しを予想/発表しているが、2016 年 5 月 27 日付レポート ジャパン・テッ ク:主要セット台数前提見直しでもセット台数見通しをもう一段下方修正するなど、汎用機器を中心とし たテックハードウエアの見通しは厳しい。 株式市場でもこの最終需要の弱さを実感している中で、年初来の投資家との議論の中では、供給過 剰リスクを懸念する声が圧倒的多数であった。従来通りの循環的な需給の議論で足元の有機 EL 投資 ブームを捉える傾向が強く、依然として慎重派が主流であると弊社では考えている。 弊社としてもこの何度目かの有機 EL 投資ブームの調査/分析を進める過程で、(1)有機 EL の製法や 材料において大きなブレークスルーが実現したことが発端ではないこと、(2)現実的に事業として成立 し、量産できているのはサムスン 1 社であること、(3)液晶の進化系が比較優位を維持/拡大させる余地 も残っていることから、最終需要でどれだけ液晶から有機 EL に置き換えられていくかの議論は時期尚 早であると考えていること、などから、今回のブームも持続性についてはこれまではやや懐疑的なスタ ンスであった。 しかしながら、(1)キャッシュコストで液晶に対して比較優位の目途が現実的に見え始め、(2)薄型化/ フレキ化などへの発展で、潜在需要の上限がスマホの 14 億~15 億台にとどまらず、その 2~3 倍の 30 億~45 億台分、場合によってはそれ以上の面積拡大も中期で描けること、(3)蒸着装置やマスクなど、 ボトルネック解消が進む目処がつき始めた模様であること、などから、需給サイクルの議論を超えた次 元で、スマホを全て有機 EL に置き換えるかそれ以上の勢いで設備投資が加速する動きが始まった。 逆説的だが、閉塞感が強まっている現状があるからこそ、この飽和状態を打破するための「Disruptive Technology(破壊的技術)」を求める機運がセットメーカーや国家でも生まれつつあると考えている。 図表2. 向こう 3 年は、右肩下がりを覚悟する局面と予想 主要セット台数の世界総出荷台数の実績及び見通し(2008 年~2018 年予)

注: 実績は Mobile Phone は Gartner、PC/TabletPC は Gartner/IDC、TV は IDC、DSC は CIPA 及びSMBC日 興証券推定

出所: グラフはガートナー・リサーチ、IDC、CIPA に基づきSMBC日興証券が作成

出典: Gartner, Inc., "Market Share: Final PCs, Ultramobiles and Mobile Phones, All Countries, 1Q16”、 Mikako Kitagawa アナリスト他、2016 年 5 月 13 日 -10% -5% 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000

2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016E 2017E 2018E

Smartphone Feature phone Desktop PC

Notebook PC Tablet PC TV

Interchangable lens camera Compact camera YoY

(mn)

「現実の最終需要は弱い」 という不安材料

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供給能力拡大加速へ、3 大勢力の「それぞれの事情」

Apple、サムスン、中国が 3 大供給拡大ドライバー 供給能力拡大を加速させようと動き出したのは、(1)Apple、(2)サムスン、(3)中国勢が 3 大勢力であり、 「それぞれの事情」が背景にあると弊社では考えている。 (1) 初のマイナス成長に直面で、「もがく Apple」 まずは冒頭でも指摘したが、今回の投資拡大ブームのきっかけを作った Apple。iPhone により、世界中 で飽和していた携帯電話市場で、スマートフォンという新たな成長市場を生み出した Apple は、今年、 2007 年の iPhone 誕生以来 10 年目で初めてマイナス成長が予想されている。弊社ではいち早くその 変調について分析/報告してきた(詳細は2016 年 2 月 22 日発行レポート ジャパン・テック:台湾出張 報告参照)。 例年と同様のスケジュールであれば、2016 年 9 月にも発売が予想される iPhone7 についてもその進化 は限定的でマイナーチェンジにとどまる可能性が高いと弊社では考えており(詳細は2016 年 5 月 27 日発行レポート ジャパン・テック:主要セット台数前提見直し参照)、残念ながらハードウエアでサプラ イズを与え、株式市場の想定を上回る需要を喚起するのは困難であると考えられる。 弊社では Apple 製品も含めたサプライチェーンや最終需要動向を、多面的に調査/分析を継続的に行 っており、特許申請から研究開発、試作開発動向などについても注視している。その過程で最終製品 に結びつかないものも当然多くあるわけだが、同社のように注目度が高くなった昨今では、様々な媒体 で次期モデルのスペックについて憶測が流れ、時にそれは株式市場でも誤解が生まれることがある。 記憶に新しいところでは、2014 年に iPhone6 ではカバーガラスを強化するためにサファイアガラスを使 用するとの見方が当時は支配的であったが、実際には採用が見送られ、サファイアクリスタル製造会社 の GT Advanced Technologies 社は破産した。 図表3. iPhone は発売以来、初めてのマイナス成長へ突入 iPhone の出荷台数実績並びに予想(2012Q1~2016Q4 予) 注:前回予想は 2016 年 3 月 3 日時点。詳細は2016 年 5 月 27 日発行レポート ジャパン・テック:主要セット台数前 提見直し参照 出所: 会社資料、SMBC日興証券予想 35.1 26.0 26.9 47.8 37.4 31.233.8 51.0 43.2 35.239.3 74.5 61.2 47.5 48.0 74.8 51.2 37.040.0 62.0 -40.0% -20.0% 0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 100.0% 120.0% 140.0% 160.0% 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 1 Q 1 2 2 Q 1 2 3 Q 1 2 4 Q 1 2 1 Q 1 3 2 Q 1 3 3 Q 1 3 4 Q 1 3 1 Q 1 4 2 Q 1 4 3 Q 1 4 4 Q 1 4 1 Q 1 5 2 Q 1 5 3 Q 1 5 4 Q 1 5 1 Q 1 6 2 Q 1 6 E 3 Q 1 6 E 4 Q 1 6 E iPhone 出荷台数(左軸) 前回予想 iPhone 出荷伸び率 (右軸) 135.8m YoY +46% 153.5m YoY +13% 192.1m YoY +25% 231.5m YoY +21% 190.0m YoY -18% (百万台) (前年同期比) 供給拡大へ「3 つの事情」 iPhone:誕生 10 年目で、 初のマイナス成長へ

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このように、Apple が「やりたいこと」と「やれること」は区別して考える必要があると弊社では考えている が、過去の調査経験から勘案しても、足元では様々な開発/試作のための打診を多くのサプライヤーに 対して行っているであろうことは、将来モデルに対して様々なリーク記事と称される報道がなされている ことからも想像に難くない。 弊社では Apple が初のマイナス成長に直面したことで、新たな需要喚起のため、あらゆる力を総動員し て「破壊的創造」を目指す可能性があると考えている。それはハードウエア面では今回報道されている 有機 EL の採用に向けた動きが象徴的かもしれない。 現状、サムスンが唯一の有機 EL パネルサプライヤーという状況に対しては、場合によっては、iPhone4 で LTPS を採用するために工場建設の資金を提供したのと同様に、Apple がサプライヤーの生産能力 の拡大のために動く可能性もあると考えている。韓国 LG ディスプレイ(以下「LGD」)や JDI、シャープ も既に 2018 年に有機 EL の量産開始を目指すこと発表している。 図表 4 では 2015 年秋時点と、2016 年春時点で、Apple が今後の iPhone 用ディスプレイのロードマッ プをどう変化させているかを弊社が推定したものである。我々は Apple が有機 EL の採用を当初想定の 2018 年から 2017 年に早め、モデルサイクルを短期化してイノベーションを継続させる戦略を模索して いると考えており、関連サプライヤーはこれに如何に対応していくか、対応を迫られることになろう。 ただ繰り返しになるが、Apple が「やりたいこと」と「やれること」にはギャップがあり、その過程において はサプライチェーンの中で、マイナス影響を被るリスクがある企業も多数存在すると考えられる。 現状、2017 年に Apple が求めるスペックで技術や供給面でハードルが存在する部材としては、(1) FPC の微細化対応、(2)有機 EL 用ドライバーIC の供給力(LCD ドライバーIC との互換性は無く、チッ プサイズは大型化)、(3)曲面化を進める場合は、対応静電容量タッチパネル(ITO フィルムベース)の 製造キャパシティなども想定されることから、iPhone 有機 EL 化で恩恵を享受できる電子部品メーカー をピックアップするのは時期尚早と弊社では考えている。 図表4. モデルサイクルを短期化、イノベーションを継続させる戦略もあり得るか? iPhone のディスプレイ技術ロードマップ推定 出所: サプライチェーン調査などを基に、SMBC日興証券推定、作成 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

2015年秋時点 iPhone6 iPhone6s iPhone7? iPhone7s? iPhone8? iPhone8s? iPhone9?

Front Plane LCD LCD LCD LCD OLED(Flex) OLED(Flex) OLED(Flex/Roll) realRGB/400ppi realRGB/400ppi realRGB/500ppi

Back Plane LTPS LTPS LTPS LTPO LTPO LTPO LTPO

(NMOS/CMOS) (CMOS) (CMOS) (CMOS) (CMOS) (CMOS) (CMOS) +Dual touch? +Dual touch

+On-Cell touch? +On-Cell touch? +On-Cell touch?

Module +Force touch +Force touch +Force touch - -

-+Fingerprint touch?-+Fingerprint touch?

+Hover touch? +Hover touch?

2016年春時点 iPhone6 iPhone6s iPhone7? iPhone8? iPhone9? iPhone10? iPhone11?

Front Plane LCD LCD LCD LCD OLED(Rigid/Curved) LCD OLED(Flex/Curved) OLED(Flex/Roll) OLED(Flex/Roll) realRGB/400ppi realRGB/400ppi realRGB/400ppi realRGB/500ppi Back Plane LTPS LTPS LTPS LTPS LTPS LTPS?/LTPO? LTPS?/LTPO? LTPO LTPO

(NMOS/CMOS) (CMOS) (CMOS) (CMOS) (CMOS) (CMOS) (CMOS) (CMOS) (CMOS) +Dual touch? +Dual touch +Dual touch

+On-Cell touch? +On-Cell touch? +On-Cell touch? +On-Cell touch?

+Dual Haptic? - +Dual Haptic? - - -+Force touch +Force touch +Force touch

+Fingerprint touch?+Fingerprint touch?

+Hover touch? +Hover touch?

LCD LTPO (CMOS) +Dual touch +Force touch New function Module +Hover touch? +Fingerprint touch? New function 「資金提供も含め、サプ ライヤー拡大に動く? 「やりたいこと」と 「やれること」は違う

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(2) 先行者メリットを死守すべく全力投資を続けるサムスン 有機 EL モデルの iPhone へのパネルサプライヤーは、最有力候補は当然、現在事業として唯一成立さ せ、量産できているサムスンということになろう。 実際、現地の報道ではサムスンが Apple へ 3 ヵ年で 1 億台/25.9 億ドルの供給契約を締結し、2017 年 5 月にも供給を開始すると報じるなど、既定事実の前提で株式市場でも議論がなされている。2016 年 6 月 18 日付の日本経済新聞報道でも、Apple が有機 EL スマホを出す時期を部品メーカーに伝えてい た 2018 年から 2017 年に一部機種を前倒し、有機 EL パネル市場をほぼ独占するサムスンに供給を打 診した模様と伝えている。 同報道では、現在のサムスンの有機 EL 生産能力(スマホ換算で 2 億数千万台を大きく上回る)を 5 割 超増加させる規模に相当する能力増強投資を実施、2016 年は 8 兆ウォン(約 7,200 億円)程度を投じ るとも報じている。サムスンの供給能力がどのようなかたちで増加していくかについては弊社でも試算 しており、その詳細は、図表 5 で示した各社の工場別供給能力実績並びに見通しを参照されたいが、 弊社では設備投資の鍵となるキヤノントッキ製蒸着装置を、2017 年央まではほぼ独占して購入、生産 能力としては 2018 年初頭で月産 50 百万台分へ急拡大させること目指していると考えている(5 インチ 換算推定)。 弊社では日本経済新聞の 1 面を使ってまで情報合戦が繰り広げられている現状はやや行き過ぎとの 印象を有している。最終的にどうなるかを議論することは、GT Advanced Technologies の例を挙げるま でもなく、依然として最終決定されるタイミングではないため予断は許さず、Apple が 2017 年に有機 EL パネルを使用した iPhone を発売すると断じるのは時期尚早と弊社では考えている。 しかしながら、サムスンとしては、iPhone への採用の如何に関わらず、先行者メリットを死守すべく有機 EL 生産能力増強を全力で行うべき局面であり、そうする理由も資金も技術も有していると考えている。 図表5. 自社向け+中華スマホ向け+iPhone 向けへと需要先を拡大 サムスンモバイルのスマホ出荷台数と、サムスンディスプレイの有機 EL パネル出荷実績及び見通し 出所: 会社資料、SMBC日興証券推定、予想 167 182 214 225 275 325 3 5 54 100 125 150 60 150 0 100 200 300 400 500 600 700 S a m su n g m o b ile O L E D P a n e l S a m su n g m o b ile O L E D P a n e l S a m su n g m o b ile O L E D P a n e l S a m su n g m o b ile O L E D P a n e l S a m su n g m o b ile O L E D P a n e l S a m su n g m o b ile O L E D P a n e l

2013 2014 2015 2016E 2017E 2018E

In-house For Chinese For Apple

(mn units)

iPhone への採用の如何に 関わらず全力投資

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中国は国家戦略で投資拡大 中国勢の動向も無視できない。そもそも韓国勢が 2015 年に一気に有機 EL へと舵を切った背景には、 中国勢の液晶への巨額投資があり、そうせざるを得ない方向へと追い込まれたためということもある。し かしながら、昨今の有機 EL 投資ブームを受けて、当初 LTPS 液晶への投資として発表した計画を、一 部有機 EL へと変更するところも出始めており、有機 EL ブームは中国へも伝播しつつある。 急加速した有機 EL ブームの中では、製造装置だけでなくエンジニアの確保もボトルネックとなっており、 中国勢が発表通りに設備を立ち上げてくることは困難であると弊社では考えている。一方で、予定通り に稼働できるか否かに関わらず、生産設備を調達し準備を進める可能性は充分にあろう。弊社では直 近で合肥や武漢などを訪問、工場建設に向けて実際に急ピッチで工事を進めている現場を確認して きた。 中国勢の中で最も先行していると考えられるのが、旧 NEC 秋田の流れを汲む Tianma(天馬微電子)、 それに続いて G10.5 の世界最大液晶工場を立ち上げ予定の BOE や、TCL が親会社の CSOT などが 挙げられる。 なおバックプレーンとしても使用できる LTPS 液晶の量産立ち上げでは、Tianma が 2 年前に上海で投 資した G5.5 の工場があるが、足元で同工場の稼働率が急速に上がりつつあり、ようやく歩留り改善も 進んで競争力を持ち始めてきたと考えられる。 図表6. 中国大陸では有機 EL/LTPS それぞれ 10 工場/3 工場が計画されている 小型ディスプレイの投資計画地図 注: 企業及び都市名は稼働開始時期で色分け;黒:CY2015 年末既に稼働済み、赤:2016 年、青:2017 年、緑: 2018 年。枠の色、オレンジ:有機 EL、網掛け:LTPS。太枠は中国の工場。生産能力の数字は 2015 年末 or 立ち 上げ時→2018 年末の生産能力予想 出所: SMBC日興証券 Huizhou Chengdu Wuhan Shanghai Xiamen Kunshan Hakusan CSOT Wuhan G6: 10-->30K/m (LTPS) BOE Chengdu G6: 15-->30K/m (OLED) Tianma Xiamen G6: 5-->30K/m (LTPS) JDI Hakusan G6: 15-->30K/m (OLED) JDI Mobara G6: 15K/m (OLED) SDC A4 G6:60K/m (OLED) SDC A3 G6:15-->135K/m (OLED) SDC A2 G5.5:142-->150K/m (OLED) AUO Kunshan G6: 10-->30K/m (LTPS) Tianma Wuhan G6: 15-->30K/m (OLED) LGD E8 & E6 G6: 15-->90K/m (OLED) Sharp Sakai G6: 30K/m (OLED) Innolux Kaohsiung G6: 10-->24K/m (LTPS) Tianma Shanghai G6: 15K/m (LTPS/OLED) Ordos BOE Ordos G5.5: 30-->60K/m (LTPS/OLED) Visionox Kunshan G5.5: 2-->15K/m (LTPS/OLED) Foxconn Guizhou G6: 8K/m (LTPS/OLED) Truly Huizhou G4: 5-->30K/m (LTPS/OLED) CPT Fujian G6: 5-->30K/m (OLED) Foxconn Kaohsiung G6: 8-->24K/m (LTPS/OLED) Visionox Chengdu G5.5: 5-->25K/m (LTPS/OLED)

Ever Display Shanghai

G4: 15-->21K/m (LTPS/OLED)

Ever Display Shanghai

G6: 5-->15K/m (LTPS/OLED)

「鉄は国家なり」から、 「テックは国家なり」?

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図表7. 液晶は大型/小型ともに、ピークを迎えつつあるが、高水準の投資が続く CSOT の G6 LTPS 液晶工場(武漢:2016 年 6 月撮影) BOE の G10.5 工場建設予定地(合肥:2016 年 6 月撮影) 出所: SMBC日興証券 出所: SMBC日興証券 図表8. 有機 EL の工場建設計画も急ピッチで進む Tianma の G6 有機 EL 工場建設現場(武漢:2016 年 6 月撮影) 出所: SMBC日興証券 注意しなければならないのは、ある国家が覚悟を決めて産業への投資を長期の時間軸で行う場合は、 そこに資本主義社会では合理的な考え方である需給サイクルをベースとした議論は当てはまらない、 ということである。中国では国家戦略としてハイテク産業への投資を進めている。 その意味では、これまでのクリスタルサイクルとは違う次元で投資が行われてくることを想定しておくべ きであると弊社では考える。シャープの買収においても産業革新機構 vs 鴻海精密工業で争奪戦が繰 り広げられた際(詳細は2016 年 4 月 4 日付レポート シャープ(6753) : シャープの将来と鴻海との関 係/銀行への影響参照)、中期的な観点では JDI も含めて協業していくことも視野に入れるべきと主張し てきたが、大局に立った判断を行っていかなければ、日韓台のパネルメーカーは、かつてのセメント/ 鉄鋼/造船産業のように、国境を越えた再編の大波に飲み込まれるリスクもあろう。 「需給サイクル」という ロジックは機能しない?

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図表9. 長期ビジョンの中で、半導体/ディスプレイなどへの投資が決定されている 中国製造 2025~中国版インダストリー4.0 出所: SMBC日興証券 図表10. 重厚長大一辺倒からの脱却が背景 重要投資対象 「6 大新興産業」 6 大新興産業の 1 つに半導体産業 出所: SMBC日興証券

2015~2025年に製造大国としての基盤固めとし、2050年に世界トップに飛躍

フェーズ1  (~2020年) 工業、製造大国に向けた基盤固め  (~2025年) イノベーションと生産性向上 フェーズ2  (~2035年) 世界の製造大国の中でTeir2水準へ フェーズ3  (~2049年) 総合的に製造大国トップ水準へ到達  研究開発分野を重点推進【次世代技術】 (1)次世代情報通信技術、(2)高性能NC工作機械・ロボット、(3)航空宇宙設備、(4)海洋設備及びハイテ ク船舶、(5)交通設備、(6)省エネ・新エネ自動車、(7)新素材、(8)バイオ医薬・医療用機器、(9)農業機器 (1)次世代情報通信技術について  半導体と半導体製造装置の開発・製造技術育成  最先端半導体設計の育成、IPとEDAツールの整備を行い、国家情報技術と情報安全技術、機器・ 設備に関するコアデバイスで最先端となり、最先端半導体の国産・量産  半導体の3D封入、組立、検査の開発力向上、コア製造装置の国産化 「中国製造2025」とは 2015年5月19日に中国国務院より公 布された中国製造業の発展戦略 ・自動車・鉄鋼業・設備製造・石油化学・船舶・軽工業・非鉄金属 ・電子情報・繊維・物流 「 6大新興産業」とは 2014年7月23日に中国国家発展改革委員会 により公布された中国政府の重点投資対象 ①新興6大産業の指定 今後の経済成長のドライバーとなる新興産業を選定し、政府が重点育成。2017年までの発展投資を誘導 ②従来の重厚長大一辺倒からの脱却 高度経済成長後のあるべき新たな経済発展モデルの確立 2009年 「十大産業振興計画」 2010年 「戦略的新興産業計画」 ・省エネ、環境・次世代情報技術・バイオ・最先端装置 ・新エネルギー・新素材・新エネルギー自動車 2015年 「新興産業重大工程計画」 ・IT消費・新型健康技術・海洋エンジニアリング設備・ハイテクサー ビス業・高性能半導体・産業イノベーション ※次世代情報技術の細目の1つに高性能半導体が含まれた

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需要は「後からついてくる」?

需給モデル:3 つのシナリオと需要の考え方 これだけ投資意欲が強く、大規模な投資計画が目白押しとなりつつある一方、最終需要は決して強く ないという現実から合理的な分析を行った場合、当然供給過剰によりパネル価格は下落し、設備投資 は早晩ピークアウトするであろうと考えるのが資本主義社会の常識であろう。 実際、本レポートの冒頭でも言及したが、株式市場では懐疑的な見方がマジョリティーであり、一般的 な需給モデル計算を行えば、この漠とした株式市場の不安は正しく、供給過剰となると計算される。弊 社が作成した小型有機 EL のパネルメーカー別供給詳細は補足資料の図表 34 を参照されたいが、図 表 11 ではこれとセット台数予想スマホ台数予想をベースに需給モデルを作成してシミュレーションを行 った結果をグラフで示している。 図表 11 の棒グラフはテクノロジー別での面積ベースでの供給構成を表しており、線グラフは需給レシ オを示している(プラスは供給過剰、マイナスは供給不足) 。 供給は各社の投資計画やサプライチェーンなどへの調査などを基に弊社が予想。需要は中期的には Curved、Rollable、Bendable など柔軟性の高い有機 EL が開発ロードマップ上にあると考えられることか ら、潜在需要として勘案する場合、単純に現在、スマホのガラスタイプで使用されている台当たりのパ ネル面積に留まらず、現行品の 2~3 倍へと拡大する可能性があることから 3 つのシナリオ(ノーマル、 ダブル、トリプル)に分けて試算している。 供給過剰懸念は杞憂に終わる? 図表 11 が示している通り、供給側は 2015 年から 2020 年にかけては、計算上、有機 EL の供給構成は a-TFT や LTPS 液晶を超えて、スマホ向け小型パネル技術での主流になりえると予想される。具体的な 需給の試算結果としては、2016 年は 2.5%の供給過剰、2017 年は 11.6%の供給過剰と予想している。 一方、2018 年以降については、Curved、Rollable、Bendable モデルが登場すると予想されるため、上 述通り、3 つのシナリオで需給計算を行っており、この場合の景色はケース別でがらりと変わる。 一般的な発想として想定されるシナリオ 1(標準シナリオ)では、2018 年/2019 年/2020 年でそれぞれ 25%過剰/31%過剰/65%過剰と試算され、明らかな供給過剰が継続することとなり、この場合は当然、 一般的には過当競争から価格下落→パネルメーカーの収益悪化→投資抑制という懸念が生まれる。 しかしながら、シナリオ 2(ダブルシナリオ)では 2018 年/2019 年/2020 年の需給は 37%不足/34%不足 18%不足、シナリオ 3(トリプルシナリオ)では同 58%不足/56%不足/45%不足と試算され、当然ながら結 果は一変、現状の投資規模であっても潜在需要をカバーするに至らないと試算される。 このシナリオ 2、3 のようなことが将来的に実現するのであれば、パネルメーカーの行動原理はむしろ積 極的に先行投資を行い、競合他社よりも早いタイミングで償却負担を減らし、コスト競争力を高めてい こうとするであろう。また今後も多くの技術変化が起き得ると想定されることから、後発メーカーでも十分 先行メーカーに勝てる余地はあることから、弊社ではパネルメーカー各社がその先を意識、勝ち抜く覚 悟で投資を続ける可能性が高いと考えている。 トリガーは引かれた 潜在需要を見据えた投資 競争が始まった?

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図表11. シナリオ 1 では供給過剰だが、シナリオ 2、3 では供給不足と試算 有機 EL/LTPS 液晶パネルの需給シュミレーション(2015 年~2020 年予) 出所: SMBC日興証券予想

設備投資見通し:山は高く、ピークは先か?

設備投資見通し:山は高く、ピークは先か? 設備投資についてはフロントプレーンとバックプレーンを分けてみていく必要がある。 フロントプレーンへの投資については、シャープが鴻海精密工業への第三者割当増資を行う際に発 表したプレスリリースの中で有機 EL の量産に 2,000 億円を投じるとしており、その具体的な使途や予定 時期などが記載されているものが参考になる。図表 12 では、この開示情報と周辺取材などを基に推定 したイメージであるが、ここから蒸着装置の供給能力拡大とその割合などを合わせて単純試算すると、 フロントプレーンへの装置関連投資は 2015 年/2016 年/2017 年/2018 年で、830 億円/2,070 億円/4,140 億円/4,960 億円と拡大が続く計算となる。 一方、バックプレーンへの投資については、スクラッチから建てる場合と、既に LTPS 液晶パネル用に 投資したものを転用するケース(7~8 割程度がそのまま転用可能であると推察される)があることから、 単純な試算は困難だが、フロントプレーンと同規模の能力を一から準備する場合は、大雑把に 1:1 で、 フロントプレーンの規模と同程度かかると考えられる。 特にバックプレーンで必要な露光装置の進化は、マスク枚数の増加とアライメント精度の要求水準の 拡大など、20 年前の半導体の進化と類似した傾向があると考えており、その意味では露光装置も有機 EL 投資が拡大する場合、恩恵が大きい装置となると弊社では考えている。 -100% -80% -60% -40% -20% 0% 20% 40% 60% 80% 0.0 2.5 5.0 7.5 10.0 12.5 15.0 17.5 20.0 22.5

2015A 2016E 2017E 2018E 2019E 2020E

OLED (左軸) LTPS (左軸) α-TFT (左軸) シナリオ1(シングル、右軸) シナリオ2(ダブル、右軸) シナリオ3(トリプル、右軸) (供給面積、百万m2) (供給過剰 ) (供給不足 ) フロント/バックに分けて 投資動向をみる

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図表12. 有機薄膜蒸着装置が主要装置 シャープの有機 EL フロントプレーン投資計画推定概要 出所: シャープ第三者割当増資資料、JDI 資料、CC 総研などを基に、SMBC日興証券作成 図表13. 液晶向けでの拡大(2016 年)後、有機 EL が 2017 年以降牽引するか? ディスプレイ前工程投資額 出所:業界データよりSMBC日興証券予想 2016年 2017年 2018年 2019年 1H 2H 1H 2H 1H 2H 1H 2H 年別投資額(十億円) 5.0 20.0 実験ライン G4.5 マスク蒸着製造装置 5.0  280億円 ポリイミド基板製造装置 5.0 有機薄膜蒸着装置 5.0 カプセル化装置 2.0 検査・洗浄装置 3.0 クリーンルーム 8.0  計 十億円 28.0  FMM+FHM 開発 G4.5 1k/M  投資  立上げ  試作生産  5インチ×65万個/月 パイロットライン G6 マスク蒸着製造装置 5.0  480億円 ポリイミド基板製造装置 5.0 有機薄膜蒸着装置 15.0 カプセル化装置 4.0 検査・洗浄装置 7.0 クリーンルーム 12.0  計 十億円 48.0 G6  7.5k/M (=Half 15k/M)  投資  立上げ  試作生産  5インチ×230万個/月 量産ライン G6 マスク蒸着製造装置 10.0  1,240億円 ポリイミド基板製造装置 10.0 有機薄膜蒸着装置 50.0 カプセル化装置 15.0 検査・洗浄装置 21.0 クリーンルーム 18.0  計 十億円 124.0 G6  7.5k/M x 3 line (=Half 15k/M x 3 line)  投資  立上げ  量産  投資  立上げ  量産  投資  立上げ  量産  5インチ×690万個/月 売上高目標 260,000 百万円 販売数量計画 90 百万個 単価 2,889円 75.0 100.0 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016予 2017予 (百万ドル) 中小型 大型

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2. 最新動向と製造面での「3 つの鍵」

「リアル RGB/400ppi/フレキシブル」を目指す?

コスト的な目途がついてきたことに加え、中期的にディスプレイを更に進化させるためのロードマップが 描きやすくなってきたことも、投資を加速する背景にあると弊社では考える。現状はサムスンの Galaxy シリーズが量産品としての最先端品として注目されるが、iPhone が有機 EL を採用する場合は更にその 先の進化を目指してロードマップを描いているであろうことは想像に難くない。 弊社では(1)配列パターンはリアル RGB で 400ppi クラスを目指す、(2)有機 EL で求められる要件は、 (A) Durable/Curved(r>10mm)、(B) Rollable(r=5~10mm)、(C) Bendable(r=3mm)という順でクリアし て進化させていく、(3)これらの最新要求水準実現のための製造面での「3 つの鍵」は蒸着装置、メタ ルマスク、封止であると考えている。 まず(1)の配列パターンであるが、現行のサムスンの Galaxy S7 では、Pentile 方式を採用している。こ れは一般的な RGB で一画素を構成するのではなく、二色(G+B、G+R など)で一画素を構成するため、 単位面積あたりでの製造は RGB で製造するよりもシンプルにできるメリットがある反面、色数は画素数 よりも少ないというデメリットがある。次期 iPhone では当然、現行モデル比で劣後するスペックは許され ないと考えられ、より製造のハードルが高いリアル RGB で 400ppi クラスを目指すと弊社では考える。た だ現実的には、量産実績で先行する Pentile 方式からのスタートとなることもあろう。 (2)の形状進化のロードマップとしては、まず(A-1)「Durable:割れにくい」を実現することを優先し、 UTG(Ultra thin-glass)またはポリイミドでのバリアフィルムを使用したフラットディスプレイで量産を開始、 次 に (A-2)「 Curved : 曲げ られる」 ディス プレイへ進化さ せ、 エ ッジ タイプと な り、 最終的には (B) 「Rollable:巻き取れる」ディスプレイで収納時の 3 倍以上の表示能力を実現することも視野にあると考 える。なお、技術的には(C)Bendable が最も難易度が高いが、需要側からみた場合そこまでの対応は 不要と考える。 こうした野心的なロードマップを実現するための製造面での「3 つの鍵」は蒸着装置、メタルマスク、封 止が三大要素になると弊社では考えており、以下、それぞれの最新動向をまとめている。 図表14. 次世代 iPhone では「リアル RGB/400ppi/フレキシブルを目指す? 有機 EL の配列パターンと採用例

出所: マイクロスコープ写真は Fomalhaut Techno Solutions 提供、SMBC日興証券作成

配列パターン 模式図 マイクロスコープ写真 メリット/デメリット 採用モデル例 メリット:リアルRGBで 高演色、高精細 Galaxy SⅡ、 PS Vitaなど デメリット:マスク、装置での       制約大で製造難 メリット:製造がシンプル Galaxy S6、 Galaxy S7など デメリット:色の数<画素数 メリット:RGBとPentileとの      中間くらいの難易度 Galaxy NoteⅡ、 Apple Watchなど デメリット:生産実績少 RGB Pentile S-Stripe iPhone が求める水準は?

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(1)蒸着装置:キヤノントッキの装置概要/生産能力と他社動向

昨今では日経ビジネスなど一般的なビジネス誌でも報道しているように、有機 EL 製造上の最大のボト ルネックは、キヤノントッキ製の蒸着装置とされる。 これはキヤノントッキ製装置がサムスン向けに供給、Apple 向けでも推奨されていると推定されるにも関 わらず、これまで需要が限定的であったこともあり、年間の生産能力は 2015 年までは 3 台/年であった と考えられ、キヤノントッキの津上晃寿会長兼 CEO は、足元の急速な引き合いに対して生産体制が全 く追いついていないとコメント(日経ビジネス 5 月 30 日号)している。

こうした状況を受け、韓国の Sunic、YAS、SFA、日本の Ulvac、米国の AMAT などが新たに同市場に 参入し始めた。ただ現状の最先端である G6 ハーフサイズの装置は幅 20m/高さ 10m/長さ 100~150m クラスとなり、装置というよりも一大プラントである。しかもカスタム性も高く、マスクとの相性も重要、単価 も 100 億円以上となる。装置メーカー選定は歩留りにも直結し、スイッチングコストも高いと想定されるた め、可能ならばキヤノントッキ製の蒸着装置を入手したいと考えるパネルメーカーが多数と想定される。 弊社ではキヤノントッキはキヤノンのサポートなどで供給能力拡大を進めていることもあり、現状では 2016 年で 5 台、2017 年には 10 台の出荷が出来る体制に向けて準備を整えつつあると考えている。 装置は 20 台弱程度のチャンバーから構成されており、システムとしては成膜クラスタ内では第 1 電極 蒸着→正孔注入層蒸着→正孔輸送層蒸着→発光層蒸着→電子輸送層蒸着→電子注入層蒸着→第 2 電極蒸着という流れ。これに逆サイドから封止ガラスを自動供給したものを封止クラスタで乾燥剤/接 着剤塗布済のガラスを封止室へ搬送、蒸着基板と加圧、UV 照射で接着/封止し貼り合わせ、それを自 動排出して完成させる。 図表15. 蒸着機は、装置というよりもライン/プラントに近い 有機 EL 蒸着機でのフロントプレーン部分の生産の流れ 出所: キヤノントッキ HP や業界ヒアリングなどを基に、SMBC日興証券作成

約100~150m

HTL H IL 対 B AI 搬送室 ⑫完成ガラス基板自動排出 搬送室 搬送室 ⑨電子 注入層 蒸着 ⑩金属 積層蒸 着 マスクストック室 ITO付きガラス基 板自動投入 ②基板前処 理洗浄 ③正孔注入 層蒸着 ④正孔輸送 層蒸着 ⑤赤 蒸着 ⑥緑 蒸着 ⑦青 蒸着 ⑧電子輸送 層蒸着 受渡 受渡 ⑪貼り合せ・ 封止 真空ガス出し 乾燥剤貼付接着剤塗布 UV洗浄 封止ガラス 自動供給

約20m

成膜1クラスタ 成膜2クラスタ 封止クラスタ 封止ガラス 自動供給ライン 生産能力は 3 台/年からは 拡大させる方向

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(2)マスク:大日本印刷の技術と、今後の可能性

蒸着機とセットで難易度が高いのがマスクであろう。チャンバーを高温で維持しながら、下部のるつぼ からマスクを通して有機材料を蒸着させていく。マスクには様々な種類が存在するが、現状サムスンが 採用しているのは大日本印刷と開発した FMM(ファインメタルマスク)であると弊社では推定している。 大日本印刷の FMM はケミカルエッチングで作成しており、もともとはブラウン管時代のシャドーマスク の技術を応用したもの。高温の蒸着器の中で形状変化を考慮しながらも張力をかけ、ピンと張っておく 必要があるが、箔の厚みは数十ミクロン単位で高温下での形状維持の問題や、ケミカルエッチングで あるが故に、寸法のバラつきをコントロールする精度も難しい模様。このバラつきが色むらの原因となり、 ゴミ詰まりやクリーニングの問題もあり、設置の難易度も高い。 したがって、上記の方法では iPhone 向けで弊社が想定したスペックを勘案した場合、同様の方式でリ アル RGB400ppi を実現するのは困難であると考えられることから、さまざまなチャレンジがなされている。 中期的には日立マクセルなどが基本技術を有する(髭剃りのシェーバーなどでも使われている)電鋳 方式でマスクを作成する可能性もあろう。 マスク製造では、凸版印刷も大日本印刷と同様の技術で参入しているほか、FHM(ファインハイブリッ ドマスク)を提案しているブイテクノロジーの方式なども候補となってくると考えられる。ただ、先行する 大日本印刷は 60 億円を投じて生産能力を 3 倍に拡張することを発表しており、蒸着装置との相性や 実績、サムスンとの関係を勘案すると、当面は大日本印刷が先行するものと考えられる。 一方で、技術の筋という意味では電鋳技術でメタル部分を成形、方式では FHM が有望であろう。電鋳 方式の採用はハードルが高いと考えられてきたが、数ミクロン単位で薄くできる上、硬度も確保でき、穴 の形状の自由度も高いため、高精細を実現するには必須となると考えられる。FHM は金属部分と樹脂 部分から構成されており、材料がハイブリッドとなっている。樹脂材料を用いることで、各蒸着パターン に対応できることや開口部を薄くすることができることが特徴。マザーガラスが大型化した時のハンドリ ングが容易な点もメタルマスクに対する優位性となる。 図表16. 金属と樹脂のハイブリッドで製造される FHM ファインハイブリッドマスク(FHM)のマスク部拡大イメージ マスク部拡大イメージ(平面図) 出所: ブイテクノロジー資料より、SMBC日興証券作成 開口部 樹脂製 金属製のサポート部 大日本印刷も 60 億円を 投じ生産能力増強を発表

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図表17. マスクは蒸着機とセットで開発していく必要あり チャンバー内での有機材料の蒸着プロセスイメージ 出所: キヤノントッキ HP などを基に、SMBC日興証券作成

(3)封止:フレキ化での挑戦

有機 EL では水分/湿度は厳禁であり、RGB 蒸着後は速やかに封止、かつ水分を長期間シャットアウト させることが必須となってくる。これまでガラスでは実績を積んできている一方で Curved、Rollable、 Bendable を目指す際に必須となるフレキ化では特に難易度が高くなってくる。 サムスンの Galaxy Edge シリーズでの投入においても、当初は歩留りが厳しい状態が続いたが、この薄 膜を封止するハードルは高かったと推察される。 最近では、高温下での封止から常温下での方法へシフト、有機/無機の材料を複層化したハイブリッド 膜を活用して何層か重ね合わせて止めるなど、様々な技術が提案され始めている模様である。 図表 18 は LAN テクニカルサービス社の提案だが、常温接合の一手法を示しており、表面酸化膜の吸 着層をイオン衝撃/ラジカル照射により表面を活性化、ポリマーとポリマー、ポリマーとガラス、ガラスとガ ラスなど、異種/同種の材料をつなげるため Si 薄膜中間層を用いて接合する手法を示している。 中長期のロードマップを描いていく上においては、フレキシブル化を進める中で如何に寿命を維持、 改善させるかという意味で、有機材料開発そのもののブレークスルーも期待したいが、封止材料/装置 も重要な開発ポイントになってくるかもしれない。 水分との戦いも鍵に

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図表18. 封止を制する者がフレキを制す? 常温接合封止の基本構造の一例 出所: LAN テクニカルサービス資料などを基に、SMBC日興証券作成

屈曲耐性確保のために、光学フィルム・センサーの統合が始まる

Curved/Rollable/Bendable なセンサーの実現の課題は大きいかもしれない 平面の有機 EL の光学フィルムは、位相差フィルムと偏光フィルム組み合わせたものが主に使われて いる。高付加価値のフィルムではあるが、LCD と比較すると偏光フィルムが 2 枚から 1 枚に減少、フィ ルムの層数も少ない。タッチ機能は、ITO ガラスか ITO フィルムが使われている。平面の LCD から平面 の有機 EL への移行はすでに、量産体制に入っていることもあり、光学フィルムやタッチパネルの供給 はボトルネックにはならないだろう。 しかし、Curved/Rollable/Bendable への対応となると話は変わる。屈曲耐性を確保するためには、薄型 化が必要となるため、今以上に光学フィルムの統合が進むとみられ、要求技術水準は高まる。センサ ーの屈曲対応も必要になるため、最終的には光学機能だけでなく、センサー機能も含めた統合が進 むとみられる。 図表 19 に示すように、最終的には、all in one の機能統合部材が求められるようになろう。有機 EL 化が 進み、フレキシブルディスプレイの採用が進めば、all in one 製品の提供ができない企業はシェアを失う ことになる。よって、現状開発に取り組んでいる企業は、日東電工と住友化学だが、LG 化学も今後対 応を進めてくる可能性は高いだろう。 現状、曲面有機 EL のタッチパネルは、日東電工の ITO フィルムをアルプス電気がエッチング加工した ものが量産されているだけで、後発メーカーは歩留まり改善に苦労している模様。Rollable や Bendable 対応はより、屈曲耐性を求められるため、ボトルネックとなりうる部材であると弊社では認識している。

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図表19. 塗工型偏向板、フレキシブルタッチセンサーを含め、最終的には all in one フィルムが求められよう。 フレキシブルディスプレイ材料・部材の開発状況

出所:住友化学、SMBC日興証券作成

機能の一体化 ガラスを樹脂で代替

現在のOLEDパネル フレキシブルOLEDパネル (第一世代の材料) フレキシブルOLEDパネル (第二世代の材料)

封止ガラス ガラス カバーガラス 偏光板 タッチセンサーパネル (TSP) OLED バリアフィルム ウィンドウフィルム 液晶塗布型偏光板 フレキシブルTSP OLED バリアフィルム バリアフィルム OLED バリアフィルム 機能統合部材

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3. 有機 EL とは? 基礎と現状認識

発光原理と材料

「青」の発光効率/寿命の課題は未解決

有機 EL(OLED:Organic light-emitting diode)とは、主原料である有機材料に電流を注入することで発 光する半導体素子である。有機材料に電流が注入されると、一時的に電子エネルギーが活性化した 励起状態になり、この状態から元の基底状態へと(エネルギーが)安定化する際、熱と光を発生する。 この発光過程には、「蛍光」と「燐光」という 2 種類の発光現象があるが、今では発光効率の高い燐光 材料を用いるのが主流となっている。しかしながら、従来から課題となっている「青」の燐光材料の、発 光効率/寿命の問題は依然として解決していないと弊社では考えている。

第 3 世代の発光材料としては、TADF(Thermally Activated Delayed Fluorescence)の開発があり、出光 興産やベンチャー企業のキューラックスなどが手掛けているが、本格量産には至っていない。今回の ブームが材料のブレークスルーによるものではないと我々が考える根拠はここにあるが、開発投資が 加速することで、結果としてブレークスルーが生まれることを期待したい。 なお、有機層の発光材料メーカーの顔ぶれについては図表 23 を参照されたいが、主力メーカーとし ては出光興産のポテンシャルが最も大きいと弊社ではみている(詳細は個別銘柄の章の 42 ページを 参照)。 図表20. 青の燐光材料は依然として課題を抱えている 発光原理と技術開発の動向 注: TADF は、開発中の新規材料で量産段階にはない 出所: 出光興産、キューラックス、NHK 技研他より、SMBC日興証券作成 励起状態 エネルギー不安定 →安定した基底状態に戻ろうとする 電流注入 発熱 基底状態 エネルギー安定 材料:          TADF 蛍光 燐光 理論発光効率:    100% 25% 100% 分子中の希金属:  不要 不要 必要 三重項励起準位 一重項励起準位 発光 発光 発光 有機 EL とは?

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液晶との比較:「変わるもの」と「変わらない」もの

専門用語の整理 足元のディスプレイの技術変化は過去と比較しても速いスピードで様々な開発が進められている局面 にあり、様々な新しい専門用語が生まれている。 こうした中、シャープの買収合戦や Apple の iPhone での有機 EL 採用が多く報道されたことで、「鴻海 精密工業がシャープを買収した狙いは有機 EL だが、本当の狙いは『IGZO』である」、「Apple は LTPS ではなく、LTPO を嗜好している」、「LTPS(液晶)は有機 EL との比較で、消費電力や狭額縁などで優 位を保てる可能性もあり、JDI は、LTPS(液晶)の進化と有機 EL 開発の両にらみで開発を進める」など、 様々な報道がなされているが、重複する工程もあることから一般報道の中で誤解されたままの報道もあ るため、ここでは中小型ディスプレイでよく使用される専門用語を整理しておきたい。 まずは図表 21 で示したようなかたちで、基板側と発光側に分けると理解しやすい。液晶パネルと有機 EL で共通な部分としては、ガラスやプラスチック基板の上に、画素を駆動するための「バックプレーン」 という層がある(生産工程ではアレイ工程と呼ばれる部分)。 ここで使う駆動方式として、パッシブ/アクティブがあるが、パッシブは 2000 年代前半に主流であった STN、アクティブでは駆動回路や画素部分の形成する材料や製法の違いで、大型で主流の a-TFT や、 シャープの IGZO、iPhone 4 で採用が加速した LTPS、IGZO と LTPS のハイブリッドの LTPO 等がある。 (分類別整理は図表 35 を参照) 図表21. 発光原理、駆動原理の違いから有機 EL は薄型化/フレキ化で優位? 液晶パネル/有機 EL パネルの模式図/断面図/鳥瞰図での比較 出所:JDI技術比較資料などを基に、SMBC日興証券作成 液晶 フロントプレーン バックプレーン モジュール 有機EL フロントプレーン バックプレーン 基板 TFT基板 駆動回路 液晶 LED バックライトユニット カラーフィルタ 液晶 LTPS バックライト TF T TF T TFT TFT TF T TFT TFT TF T TFT TFT TF T TFT TF T TFT TF T TF T TFT TF T TFT TF T TFT TF T TFT TF T TFT TF T TFT TF T TFT TF T TFT TF T TFT TF T TFT TF T TFT TF T TFT TF T TFT TF T TFT TF T TFT TF T TFT TF T TFT T F T T F T T F T T F T T F T T F T T F T T F T T F T T F T T F T T F T T F T T F T T F T T F T T F T T F T T F T T F T T F T T F T 表示部(画素) 額縁部(駆動回路) 駆動回路 有機発光層(赤・緑・青) 基板 基板 電極/TFT 有機EL LTPS

断面図

鳥瞰拡大図

模式図

誤解されやすい専門用語 「バックプレーン」は、 液晶/有機 EL ともに必須

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駆動時の液晶と有機 EL との違いは、液晶では画素あたり TFT 素子(最近は CMOS 化が進んでいる) が 1 つであり、画素を on/off するスイッチ機能のみであるのに対し(電圧駆動)、有機 EL ではスイッチ ング素子と電流駆動素子の最低 2 つの素子が必要となる。有機 EL では電流駆動するため、補正回路 が必要となり、ドライバーIC における負荷も液晶と比較した場合大きくなる。 図表22. 有機 EL では駆動用回路が必要となる分、工程数増加や精度要求が高まる 液晶パネル/有機 EL の駆動の仕組みの違い 出所:SMBC日興証券 その上の「フロントプレーン」と称される部分が、液晶と有機 EL とで大きく異なる。液晶ではこのバック プレーンとカラーフィルターと間に液晶素子をサンドイッチのように挟み、バックプレーンの背面に作成 したバックライトモジュールから光を照射、透過させた光で画素を表示させる。 一方、有機 EL においては、材料そのものを発光させる(自発光の固体素子である)ため、バックライト を使用しない。したがって、視野角/輝度/応答速度/コントラスト/消費電力/薄さ/コストなどあらゆる面で、 理論的には液晶に対して有利である。したがって、理想のディスプレイとして期待されてきており、1990 年代からも、何度かブームがあった。しかしながら、実際には青色の燐光材料の寿命/輝度の問題や材 料開発でハードルが高かったことや液晶の進化が著しく進んだこともあり、有機 EL が代替できるハード ルは年々上昇してきた。 したがって、この発光体が正に(有機)EL の肝となるわけだが、材料としては有機(O)と無機があり(無 機はカラー化が難しく開発は下火)、高分子と低分子があり(高分子は照明用や印刷法のディスプレイ で開発が続いている)、小型用では低分子が主流となっている。 発光方式としては、有機 EL の RGB(赤緑青)の色をそのまま塗り分ける方式と(サイドバイサイド方式: 塗り分け方は図表 14 のように様々な方法がある)、LG が大型テレビで採用しており、混色させて白色 をバックライト代わりに使い、カラーフィルターで使用する W-OLED(白色有機 EL)という方式があるが、 小型用ではサイドバイサイド方式が主流である。 スイッチ ング 配向膜 スイッチ ング 有機 LED 駆動用 素子 走査線 データ 線 データ 線 走査線 電源線 有機層 (発光) TFT TFT 配向膜 カラーフィルタ 液晶 OLED バックライト 電圧駆動と電流駆動 「フロントプレーン」が 大きな違い

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材料メーカーの顔ぶれに大きな変化はない

サムスンがほぼ独占したかたちで開発 化学材料メーカーについても、前回の開発ブーム以降、サムスン以外では有機 EL 開発が低迷してい たことから、サプライヤーに大きな変化はなく、むしろ限界メーカーは撤退したところも多く、サムスン (あるいは一部材料では LG)が中心となって共同で開発を進めてきたかたちとなっている。 こうした状況下、有機 EL 関連材料の供給実績で先行するのが住友化学と宇部興産である。住友化学 は 2011 年に市場参入を果たしたオンセル型タッチセンサーパネル(TSP)をサムスン向けに供給して おり、16/3 期売上高は 450 億円程度に達している。現在はガラス基板を使用するリジッド型が主体だが、 フレキシブル化に対応した樹脂基板を用いたフィルム型も事業化している。さらなるフレキシブル化の ニーズを商機とすべく、ウィンドウフィルム、液晶塗布型偏光板、フレキシブル TSP、バリアフィルム等の 関連部材の開発に注力している。将来的には、複数の部材の機能を一体化した機能統合部材の市場 投入による付加価値の取り込みを目指している。 同様に、宇部興産はサムスンディスプレイと 2011 年にポリイミドの前駆体であるワニスを生産する合弁 会社を設立した。宇部興産は当該合弁会社に粗原料であるビフェニルテトラカルボン酸二無水物 (BPDA)を供給している。モノマーの分子設計から手掛け、カップリング反応を用いて BPDA を大量に 合成する技術を世界で初めて開発し、原料から一貫生産している点が強みとして挙げられる。合弁会 社が手掛けるのはワニスまでであり、持分法投資利益の増加による短期的な EPS 押上げ効果は限定 的とみるが、フレキシブルタイプの有機 EL の基板用素材としてポリイミドがスタンダードとなる可能性を 秘めると弊社ではみている。 図表23. サプライヤーの顔ぶれに大きな変化はない 有機 EL の素子構造と主要部材サプライヤー 出所:SMBC日興証券作成 偏光板 :住友化学、日東電工 タッチセンサー(オンセル) :住友化学、日東電工 封止ガラス :日本電気硝子、コーニング、旭硝子   有機層 陰極(金属膜) :日本発条 封止材 :三井化学、スリーボンド 陽極(透明/画素電極) :出光興産 ガラス基板 :コーニング、旭硝子、日本電気硝子 TFT(駆動用と選択用) :Samsung Elec.、Lusem、Novatek、Himax

電子輸送層 保土谷化学、Dow Chemical、LG Chemical、新日鉄住金化学、東レ バリアフィルム/UTG :SMD、宇部興産とのJV、DNP

Merck (Ultra Thin Glass)

有機発光層

赤 Duksan、Dow Chemical、LG Chemical、出光興産   有機層 緑 Doosan Corp.、Dow Chemical、出光興産、新日鉄住金化学

青 出光興産、Dow Chemical、SFC

正孔輸送層 保土谷化学、Dow Chemical、LG Chemical、新日鉄住金化学 先行するのは住友化学と

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4. 個別関連企業の動向

コード

会社名

セクター

担当アナリスト名

ページ番号

6740 ジャパンディスプレイ 民生用エレクトロニクス 桂 竜輔 P25 6753 シャープ 民生用エレクトロニクス 桂 竜輔 P26 7751 キヤノン 精密機器 桂 竜輔 P27 7731 ニコン 半導体製造装置 嶋田 幸彦 P28 7735 SCREENホールディングス 半導体製造装置 嶋田 幸彦 P30 7912 大日本印刷 諸製造 岡芹 弘幸 P32 7911 凸版印刷 諸製造 岡芹 弘幸 P33 7915 日本写真印刷 諸製造 岡芹 弘幸 P34 6988 日東電工 電子部品 渡邉 洋治 P35 4005 住友化学 化学・繊維 竹内 忍 P36 その他関連銘柄(化学セクター) 化学・繊維 竹内 忍 P40 5019 出光興産 石油 塩田 英俊 P42 6258 平田機工 機械 桂 竜輔/ 伴明泰 P44 7717 ブイ・テクノロジー 精密機器 桂 竜輔/ 伴明泰 P44 6920 レーザーテック 電気機器 桂 竜輔/ 伴明泰 P45 6677 エスケーエレクトロニクス 電気機器 桂 竜輔/ 花屋武 P45 000050 Tianma Micro-electronics 桂 竜輔/ 花屋武 P46

000725 BOE Technology Group 桂 竜輔/ 花屋武 P46

China Star 桂 竜輔/ 花屋武 P46

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ジャパンディスプレイ(6740)

精密機器/民生用エレクトロニクスセクター担当 シニアアナリスト 桂 竜輔

有機

EL 関連事業

JOLED と共に 2018 年量産開始へ ジャパンディスプレイ(以下「同社」)ではこれまで、有機 EL パネルの研究開発を産業革新機構が 75%、 同社が 15%を出資する JOLED(パナソニック、ソニーの有機 EL パネル事業を切り出し、統合した企業) と共に進めていたが、スマホ向け有機 EL パネルのニーズが拡大している中で、方向転換を迫られて いる。具体的には、JOLED では元々パナソニックの技術であった印刷方式を採用、大型パネル向け 開発を進めてきたが、2018 年までに 500 億円を投じて蒸着方式での量産を目指す方針。

業績インパクト

16/3 期、17/3 期に有機 EL 関連売上高は立たない 同社は LTPS 液晶パネルの生産/開発に特化し、同分野での技術/生産能力で世界トッププレイヤーと して勝ち抜く戦略を進めてきたことから、有機 EL に関連する経営資源は限定的。従って、16/3 期、 17/3 期という期間では有機 EL 関連売上高はほぼゼロであろう。 同社の最大顧客は米大手スマホメーカーで、16/3 期では同社売上高の 53.7%を占める。同顧客が有 機 EL 採用を決めた場合、既存の LTPS 液晶パネルの売上高が減少するリスクがあるため、当然その 開発を進めることとなる。同社の研究開発費が 15/3 期の 160 億円から 17/3 期には 290 億円(会社予 想)へ拡大しているのはそうした背景もあろう。従って、同社にとって有機 EL 開発は当面はコスト増要 因の位置づけとなる。

有機

EL 事業の位置づけ

進化系 LTPS or 有機 EL 同社では有機 EL が本当にスマホの中で主流となるか否かについては、依然として懐疑的な見方を有 していると考えられる。弊社でも前述してきた通り、今回の有機 EL ブームは材料面でのブレークスル ーが発端となっている訳ではなく、求められるハードルが高いことから、当面は LTPS 液晶の進化系と 有機 EL の両面での開発を進めることになると考えている。同社では当初 2018 年に向けては茂原工場 で量産準備を進める計画だが、仮に有機 EL がスマホでのメインストリームとなり、同社がそれに対応す る場合は物理的なスペースも勘案すると、白山工場のライン転用なども含めた活用が視野に入ろう。た だ資金確保も含め課題は多い。

参照

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