石油技術協会誌 第 75 巻 第 6 号 (平成 22 年 11 月)404 ∼ 410 頁 Journal of the Japanese Association for Petroleum Technology
Vol. 75, No. 6(Nov., 2010)pp. 404∼410
講 演
Lecture
1. は じ め に
既存の大規模油・ガス田の衰退,新規確認埋蔵量の減少 に伴い,近年IOR(Improved Oil Recovery)/EOR(Enhanced Oil Recovery)といった 2 次回収による生産量増大技術が 注目されている。そのなかで,DOF(Digital Oil Field)と 呼ばれ,リアルタイムで貯留層の変化を把握し,これに合 わせて最適な生産プロファイルとなるように生産計画を修 正していくことで,油・ガス田の価値を最大化するという 手法が提案され,国際石油企業(メジャー)において実践 が進んでいる。 JOGMEC では,DOF において,坑内に設置されたモニ タリング機器やフローコントロール機器によって坑内か ら貯留層の情報をモニタリングし,圧入量・生産量をコン トロールすることを目的とする,スマートウェル,インテ リジェントウェルなどと呼ばれる技術(以下,Intelligent Well 技術と表記を統一する)を対象として,2009 年に技 術動向調査を実施している。 Intelligent Well 技術の適用に際しては,特定の油・ガス 田に対して,どのようなデータが必要か,どのような坑内 制御が必要か,といった特定の状況・環境に沿った仕上げ の最適化が重要であるが,ここでは,これらの坑内機器の 技術動向に焦点を当て,その適用例や技術課題について, 前述の技術動向調査に基づき,紹介する。
2. Intelligent Well 技術の定義
技術動向調査において,委託先がChevron 社からヒアリ ングし,調査に用いた定義によれば,「特定の区間,或い は坑井から生産または圧入する,流体の流れを計測し,制 御できる仕上げ」と定義している。つまり,①特定の区間 のアイソレーション,②特定の区間の坑内モニタリング, ③特定の区間の流量制御,を可能にする技術である。ただ し,各サービス会社で得意とする技術分野があり,自社の 実績に対する印象を高めるため,モニタリングのみの仕上 げに対してもIntelligent Well 技術であると呼ぶことを主張 する会社もある。 つまり,坑井内にモニタリング機器とフローコントロー ル機器を設置し,リアルタイムに坑井ごとの貯留層情報を 収集し,これを貯留層シミュレーションモデルにフィード バックして生産計画を最適化した上で,最適化された生産 計画にのっとって地上からの操作で坑内の流体挙動を制御 するための技術ということができる。3. Intelligent Well 技術適用の動機
一言でいうと,Intelligent Well 技術とは,対象となる油・ ガス田からの総生産量を最大化し,開発費用を削減するこ とを目指している。Intelligent Well Completion の技術動向
*稲田 徳弘
**・市川 真
**(Received August 31 15, 2010 ; accepted November 2, 2010) Technical trend of Intelligent Well Completion
Norihito Inada and Makoto Ichikawa
Abstract: JOGMEC surveyed technical trend of intelligent well completion on 2009. The general idea of tools for intelligent well technology and resent technical trend are described in this article. Intelligent well technology, which is known as “smart well technology” too, is to maximize the subject field value with optimization of the production operation based on the real-time down-hole monitoring and flow control. Typical intelligent well technology systems are represented to surface system and down-hole system. Surface systems are consisted by data transfer & management system, and operation optimization system. On the other hand, Down-hole systems are consisted by isolation tool, flow control tool, and monitoring tool; those are focused on this article. For the recent technical trend, following topics are described; typical application of intelligent well technology, reliability of component tools, and newly development tools.
Keywords: Intelligent well, Smart well, Down-hole tool, Monitoring, Flow control, Production Optimization
* 平成 22 年 6 月 10 日,平成 22 年度石油技術協会春季講演会開発・生 産シンポジウム「坑井モニタリング技術とデータ活用法」で講演 This Paper was presented at the 2010 JAPT Development and Production Technology Symposium entitled “Well surveillance and data interpretation for reservoir management” held in Fukuoka, Japan, June 10, 2010.
** (独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構 Japan Oil, Gas and Metals National Corporation
ロギング(生産検層)やスライディングスリーブ操 作等の改修作業を削減し,生産量の最適化による随 伴水の生産を減少させることで操業費を削減する。 これらの手法を組み合わせることで,対象となる油・ガ ス田の価値を最大化することが,Intelligent Well 技術適用 の動機となる。
4. Intelligent Well 仕上げを構成する坑内機器
坑内機器には,大きく分けて3 つのカテゴリーがある。 4.1 モニタリング機器(坑内センサー) 坑内の温度・圧力・フローレートなどを計測する機器。 データの伝送システムには,電気式と光ファイバー式があ る。それぞれ,転送できるデータの量・温度/ 圧力環境に 対する耐性などに特徴があり,状況に応じて適切なシステ ムが採用される。モニタリング機器は,基本的には仕上げ 機器に取り付けられる,ある任意のポイント(深度)に設 置されたポイントセンサーであり,その情報はリアルタイ ムでも収集できる。図1 に典型的なポイントセンサーを示 す。また,温度については,DTS(Distributed Temperature Sensing:光ファイバーに光パルスを発信し,その後方散 乱を分析して温度情報を得るシステム)と呼ばれる坑底か ら坑口までの光ファイバーを設置した区間に対して,温度 分布を時系列で観測することができるシステムがある。現 在では,DTS による坑内流体のプロファイルに基づいて, 坑内の流体挙動を解釈するサービスも提供されている。 部仕上げ沿わせた光ファイバーケーブルを接続する際や, 海底仕上げの場合に,坑口装置内の光ファイバーとアン ビリカルの光ファイバーとを接続する際に必要となる技術 である。海中での接続ではスペースの制限が少ないため, Wet-mate Connector も存在するが,坑内での接続を可能に するWet-mate Connector は開発段階にある。 4.2 フローコントロール機器 坑 内 で の フ ロ ー コ ン ト ロ ー ル は,SSSV(Sub Surface Safety Valve:油圧による開閉が可能なボールバルブ)や スライディングスリーブ(一般的には,ワイヤーラインに よる操作が必要)がこれまでにも使用されてきているが, Intelligent Well 技術で適用されるフローコントロール機器 は,大きく分けて,ICD(In-flow Control Device: 流路に 流量制御機構が組み込まれたもの。流量制御機構として は,オリフィスタイプや,螺旋の流路を設けてその圧損に よって流量を制限するヘリカルチャネルタイプがある。坑 内に下げる前に設計された流量にしか制御しかできない。) と,ICV(In-flow Control Valve: 油 圧 式 あ る い は 電 気 式 の,SSSV に近い「On-Off」バルブやチョーク開度が選択 あるいは調節できるもの。サービス会社により,Interval Control Valve とも呼ぶ。地上から操作することができる。) がある。図2 にオリフィスタイプ ICD の模式図を,図 3 に 典型的なICV を示す。 ICV の方式には大きく分けて,電線による電力供給が必 要でありモーターによって作動する電気式,油圧ラインへ の加圧によって作動する油圧式がある。電気式のICV は, 初期に開発されたものでもあり,複雑で故障が多かったた め適用された例が非常に少なく,機構が簡単で信頼性の高 い油圧式が数多く採用されている。ただし,油圧式は,ダ ウンホール機器の数が多くなるとその分Control Line が増 えてしまう。坑井仕上げの設計の制限にもなり,また,設 置中の事故・故障リスクが高まるという一面もある。図4 に典型的な油圧式ICV のコントロールシステムの模式図 を示す。 図1 パーマネントダウンホールゲージクラスター (出典: WellDynamics) 図2 オリフィスタイプ ICD(JOGMEC 作図)この方式はN+1 システムとも呼ばれ,N 個の ICV に対 し,N+1 本の油圧コントロールラインを必要とするもの である。例えば,3 つの ICV を仕上げ編成に設置する場合 には,4 本の油圧コントロールラインが必要になる。 4.3 パッカー センサーからのデータの伝送,フローコントロール機器 への指示情報の伝送と駆動力の供給のため,通信ケーブル, 油圧コントロールラインを地表から坑内機器まで設置す る必要がある。このため,プロダクションパッカー,グラ ベルパックパッカーなど,坑内の圧力バリアーとなるパッ カーには,これらのケーブル・ラインを通すことができる Feed-Through パッカーを使う必要がある。図 5 に典型的 なFeed-Through パッカーを示す。 Feed- Through パッカーには,通常の油圧式パッカーの 他,Swell パッカー(生産流体の油分,あるいは水分に反 応して膨らむパッカー。パーマネントタイプ。)と呼ばれ るものがあり,これは,前述のケーブルやコントロールラ インのために,エラストマー部分に切り込みを入れること で容易にFeed-Through にすることができるため,使用さ れることが多い。 モニタリング機器,フローコントロール機器,パッカー といった機器の他,ケーブル・コントロールラインを束ね るクランプ,出砂コントロールのために仕上げ区間を分け る場合に必要な通信コネクター(インダクションコイルを 用いて,接点なしに電気信号を伝えるコネクターが開発さ れている),ICV を多数設置する場合に必要なコントロー ル機器(N+1 システム以外にも,3 本のコントロールラ インで6 つの ICV をコントロールすることができるシス テムがあり,そのシステムにおいて油圧流路を制御するも の),などがある。 これらの機器を提供するベンダーは,特にセンサー類を 取り扱う数多くの会社があり,それぞれ性能やコストに違 いがあるため,最適な仕様となる様ベンダーの評価/ 選定 も大切となる。異なるベンダーが提供する機器によって構 成された仕上げ編成となる場合には,それぞれの機器が確 実に連携して機能することを,SIT(System Integrity Test) を実施して設置作業前に確認することが重要である(後 述)。 一方で,Intelligent Well 技術の総合サービス会社には, これらの機器をよく使用される仕様で設計したパッケージ として一体化することで機器間の接続の問題をクリアし, かつ顧客の求める仕様に合わせて設計する手間と製造・保 管・整備コストを削減し,比較的安価に短期間で供給する ことを目指しているものもある。
5. Intelligent Well 技術適用方法例
次に,具体的なIntelligent Well 仕上げの適用例をいくつ か挙げる。 5.1 コミングル仕上げ 多数の貯留層を持つフィールドでは,ひとつひとつの層 に対応する生産井を確保していたのでは,貯留層の数だけ 生産井が必要となり,掘削/ 仕上げコストがかかり,広い 敷地も必要となる。これらの貯留層を1 本の坑井から生産 すること(多層仕上げ=コミングル仕上げ)で,コストを 下げることができる。敷地を小さくすることはフットプリ ントを小さくすることにもつながり,環境影響を少なくす るという点においては環境に対する貢献も小さくない。な お,各層をパッカーで仕切り,それぞれの区間にフローコ ントロール機器を設置し,地上からコントロールすること で,それぞれの貯留層に合った圧力・流量で管理すること が可能である。 図3 ICV (出典:WellDynamics) 図4 典型的な油圧式 ICV コントロールシステム (出典:WellDynamics) 図5 典型的な Feed-Through パッカー (出典:WellDynamics)5.2 Heel & Toe 効果 水平坑井の場合,そのヒール部とトウ部では貯留層と坑 井内の圧力差が異なるため,流入する流量分布が不均一と なってしまうことがある。また,水押し型の排油機構を持 つフィールドの場合では,差圧の大きいヒール部でウォー ターコーニングが発生しやすく,ウォーターカット(液体 中の水の割合)が高くなり生産性の上で好ましくない。そ こで,コミングル仕上げ同様,適当な長さでパッカーによっ て区間を仕切り,それぞれの区間からの生産量をフローコ ントロール機器で制御することで,坑井内に流入する流量 分布をできるだけ均一に保ちウォーターコーニングの回避 や削減,更に随伴水生産量の最適化により生産量を最大化 することができる。図6 に模式図を示す。 5.3 Auto Gas-lift 通常,Gas-lift(ガスをチュービング等の油回収流路に圧 入し,流体の見掛け比重を下げ,油回収流路内の圧力損失 を小さくすることで,油を回収しやすくする)仕上げにお いては,地上からガスを圧入するためのGas-lift ライン設 置や,圧入するためのガスの供給が必要である。油層の上 位にガス層がある場合,油層とガス層をパッカーで仕切り, ガス層からの流量をフローコントロール機器で制御するこ とでGas-lift と同じ効果を得る。図 7 に模式図を示す。 5.4 Connection Well 同じフィールド内に貯留層と水層が交互に存在する場 合,下位の貯留層を生産する生産井と上位の水層を1 本の Intelligent Well 仕上げの生産井として仕上げ,下位の貯留 層からの水の生産が多くなり油・ガスの生産が終了した時 点で,上位の水層への圧入井へと切り替えることで,2 つ の役割を1 つの坑井に担わせることができる。 これらの例の他,Distributed Injection(複数の圧入井, 圧入区間を最適化して掃攻効率を上げる),Dump Flood(サ イドトラック井を用いて,1 坑井で水層から油・ガス層へ の圧入と油・ガス層からの生産を行うもの),Composition Blending(生産物の性状の異なる複数の生産層を,各層か らの生産量を調整してコミングルで生産することで,生産 井からの生産物の性状をコントロールするもの)など,さ まざまな応用が可能となる。
6. Intelligent Well 仕上げ機器の信頼性
6.1 これまでの適用実績の経緯と現在の動向 最初にIntelligent Well 技術が適用されたのは,1997 年と いわれており,10 年以上が経過した 2008 年の統計では, 図6 Heel & Toe 効果の模式図 (出典:WellDynamics) 図7 Auto Gas-lift の模式図 (出典:WellDynamics)Intelligent Well 技術が適用された坑井は 700 坑を超えてい る(図8)。 当初,多くのメジャーが導入を検討したが,導入コス トがかかるため,長期的な資金回収が期待しやすい大型 のプロジェクト(例えば,もともと大きな初期投資がかか る海底仕上げのプロジェクトなど)での改修作業を削減す ることで操業費を削減することを目的とした適用が多かっ た。当時は,複雑な構造であり,手間の掛かる設置作業 が求められる,坑内機器のトラブルが頻発したため,多 くのメジャーがIntelligent Well 技術の適用を躊躇し,導入 実績が後退した時期もあったが,油価の高騰により開発 費として充当できる費用に余裕が出たこと,単純な機構 のIntelligent Well 坑内機器の適用が進んだことやサービス 会社の努力により信頼性が向上したことなどにより,近 年は,経年の生産活動によって油・ガス田の生産能力が衰 退した陸上のプロジェクトでの生産量最大化を目指した, Intelligent Well 技術の適用が進んでいる傾向がある。 6.2 坑内機器毎の信頼性 モニタリング機器,特に電気式ポイントセンサーは,ゲー ジ自体とゲージと通信ケーブル間の接続に課題があった。 あるサービス会社のセンサーでは,95 年∼ 97 年の第一世 代では4 年間の故障確率は 20%程度あった。2003 年にゲー ジと通信ケーブル間の接続技術が開発され,2005 年のデー タでは2 年間の故障確率が 2%程度にまで向上している。 フローコントロール機器は,前述のとおり,当初は電気 式で複雑な機構だったため故障が多かったが,現在適用さ れているICV の殆どは油圧式となっている。あるメジャー のデータでは,設置された115 の ICV の内故障が発生した のは7 つのみである。あるサービス会社のデータでは,設 置された408 の ICV の内,故障は 5 つとしている。 パッカーの信頼性が最も高く,あるサービス会社のデー タでは,設置された570 の Feed-Through パッカーの内, 故障したのは3 つとしている。 サービス会社の努力により,坑内機器の信頼性は,現 在飛躍的に向上しており,機器自体が故障することはかな り稀であるといえるが,機器間の連携に問題がある場合が ある。
7. Intelligent Well 技術の適用におけ
る課題と最新動向
7.1 Intelligent Well 技術適用における課題 7.1.1 Intelligent Well 技術導入までのステップと 評価 一般的に,Intelligent Well 技術の適用までには次のステッ プが必要とされている。 ①スクリーニング・評価・適用のマネジメント承認 ②坑井の仕上げデザインと仕様の決定 ③ベンダーのテンダー ④Purchase Order の発行 ⑤Intelligent Well 機器の製造 ⑥SIT ⑦仕上げ作業 ⑧コミッショニングと生産開始 それぞれのステップに1 ∼ 9 カ月程度の期間を要するた め,事前にIntelligent Well 技術適用のスタディーを実施し ており,マネジメントの方針も固まっている様な最速の ケースでも7 カ月程度かかり,長い場合には,2 年半から 3 年近くかかることも多い。 前出のステップにおいては,最初のスクリーニング・評 価に時間を割くべきである。適用までの過程においては, 途中途中で問題が発生し,前の段階に戻ることも多いが, スクリーニングとその評価がしっかりしていれば,大きな 時間のロスになることは少ない。 最初のスクリーニングでは,適用対象フィールド特有 の課題を基に,仕上げの方法をいくつか想定し,それぞれ のケースで,可能な生産量の向上やコストの増減などをシ ミュレーションし,ケースごとに経済性評価を実施する。 そのケースの1 つとして,Intelligent Well 技術の適用があり, 図8 2008 年 Q2 までの Intelligent Well 適用実績 (出典:WellDynamics)この評価の結果,最も価値が高くなったケースを採用する こととなる(図9)。 また,詳細計画を立てる上では,Intelligent Well 技術を 適用する坑井の機能を初めにしっかりと定めておくべきで ある。途中で機器を追加するには,それらの機器との接続 性の検討や,全体としての価値の変化など,さまざまな再 評価が必要となるからである。 必要な機能が決まれば,環境を基にさまざまなベンダー から機器の仕様を決めることになる。このベンダーのテン ダーにおいて,総合力を持つ主要サービス会社を選び機器 間の接続性の問題を回避するか,自らそれを評価すること でよりコストパフォーマンスの良い中小のベンダー数社を 選択するか,大きな方針の選択を迫られる。 7.1.2 その他の課題(SIT) 先に述べたとおり,Intelligent Well 技術で使用される機 器のベンダーには多くの会社があり,それぞれの持つ機器 の特徴もさまざまである。したがって,さまざまな会社の 製品を組み合わせて1 つの仕上げとする場合が多いが,そ の場合,各機器の接続性をしっかりと確認することが大切 である。近年は,Intelligent Well 機器のインターフェース の規格(光ファイバーのデータインターフェースの規格は ISO1063-85 として定まった)が,主要オペレーター,ベン ダーによって標準化されているが,実際の仕上げ編成の設 置作業に入る前にはSIT を実施するべきである。前述のと おり,機器自体の信頼性は向上しているが,仕上げ編成全 体の信頼性はSIT に掛かっており,これを蔑ろにしたため に失敗したケースも多く報告されている。 7.2 Intelligent Well 技術に関わる石油業界の動向 7.2.1 サービス会社のシェア 技術動向調査では,サービス会社の市場シェアの動向も 調査した。石油業界のサービス会社としては,総合的なサー ビスが可能なSchlumberger,Halliburton,Baker Hughes な どがよく知られているが,Intelligent Well 技術においても, これらのサービス会社が主なシェアを占めている。
特に,Intelligent Well 技術の黎明期より Shell などと開 発を進めてきたHalliburton は,WellDynamics という会社 を設立したが,同社はIntelligent Well 技術に関わるマー ケ ッ ト の 約40 ∼ 50% とトップシェアを持つ。次いで, Schlumberger,Baker Hughes が 15 ∼ 30% のシェアで競合 している状況である。 なお,モニタリンング機器のサービス会社としては, WoodGroup が約 20% のトップシェアを持ち,Roxar が約 15%,次いで Schlumberger が約 12% となっている。
7.2.2 JIP(Joint Industry Project)
前述のとおり,Intelligent Well 技術においては,機器の 信頼性に問題があった時期があり,石油会社1 社が独自に 実績を重ねるには費用がかかり過ぎるため,信頼性向上 の成否は適用実績に基づく情報収集力によるところが大き かった。このため,2000 年頃から石油会社・サービス会社 等がJIP を組み,各々が持つ情報を共有して有効に活用す る動きが進んでいる。
Intelligent Well 技術にかかわる JIP は,ICON(Intelligent Completions on the Net),WellMaster 等 に 代 表 さ れ る 適 用実績および機器データの情報共有データベース構築 を 目 的 と す る プ ロ ジ ェ ク ト,SEAFOM(Subsea Fiber Optic Monitoring Group),IWIS(Intelligent Well Interface Standardization)に代表される特定の技術課題に対応する プロジェクト,IWFsT(Intelligent Well and Fields systems Technology)に代表される大学・研究機関と石油関連企業 との共同研究を目的とするプロジェクトがある。
このうちICON は,約 300 坑分の Intelligent Well 仕上げ 適用事例のデータを持っており,サービス会社の機器情 図9 スクリーニングのイメージ
報も得られる。WellMaster は海底仕上げのデータベース から始まっており,北海海域の海底仕上げのIntelligent Well 仕上げ適用事例が 100 件程度蓄積されている。なお, WellMaster に参加すると,FieldSim という経済性シミュ レーションソフトも使用することができる。SEAFOM は 海底仕上げの光ファイバーモニタリングを対象とするも ので,温度センサー(DTS)の性能評価基準の制定などを 行っている。IWIS はすでに終了した JIP であるが,多数 の会社が持つモニタリング機器のインターフェースの規格 化(ISO 13628-6)を完了している。 7.3 技術開発動向 以下,最新の技術開発動向について紹介する。 7.3.1 DPS(Distributed Pressure Sensing) モニタリング機器の1 つとして挙げた DTS に続き,光 ファイバーによる圧力の分布を時系列で計測するシステム が開発されている。光ファイバーに照射されたパルス光の 後方散乱を利用するものであり,概念自体は新しいもので はないが,依然として開発段階にある。 7.3.2 ワイヤレスコントロール 電気通信ケーブルの代わりに,電磁波で坑内ツールと 地表のコントロール機器間をつなぐもの。チュービングを 介して電磁波をやり取りする方法は,Expro 社がサービス を開始している。将来的には,管体なしでの通信を目指し ており,例えばマルチラテラル仕上げでのラテラル井への ICV の設置が可能となるかもしれない。 7.3.3 坑内バルブ開発 電気式ICV の普及は油圧式にかなりの後れを取ってい るが,精密な制御は電気式の方が行いやすい。一部のサー ビス会社は,モーターで駆動する低出力のバッテリーバル ブを開発しており,パーマネントセットの坑内フローコン トロール用として期待されている。 また,AICD(Adaptive/Autonomous ICD)と呼ばれる流 量に伴って自動的に開閉するフラッパー式のICD が開発 されている。ICD の流路にフラッパーを設け,流体の比重 が小さくなることでClose する仕組みである。例えば,高 傾斜/ 水平の油生産井で随伴ガスの生産量が増加すると流 体の見かけ比重が落ちてフラッパーを持ち上げていた圧力 が下がり,流路を遮断できる。ただし,構造上比重差の小 さい流体が入ってきた場合には適用できないため,適用範 囲は限られる。