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高齢化社会と住宅問題(2)-香川大学学術情報リポジトリ

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香 川 大 学 経 済 論 叢 第66巻 第4号 1994年3月 29-54

高齢化社会と住宅問題

(

2

)

山 下 隆 資

I はじめに II わが国の住宅事情 III 香川県の住宅事情 (以上,本誌第66巻第3号) IV わが国の高齢者住宅政策 V 香川県の高齢者住宅対策 VI 香川県のシルバーハウジング・プロジェクト VII おわりに (以上,本巻本号)

I

V

わが国の高齢者住宅政策 1.. 住宅宅地審議会の「答申」における高齢者住宅政策の基本的考え方 すでに前稿(本誌第

6

6

巻第

3

号)で見てきたように,わが国では,人口の急 速な高齢化にともなって i高齢者夫婦のみの世帯」や「高齢者単独世帯」が著 しく増加している。 そして,昭和

6

3

年「住宅統計調査」によれば,高齢者世帯の持ち家率は比較 的高いものの i高齢者単身世帯」の

2

7

.

.

9

%

,i高齢者夫婦のみの世帯」の

1

1

.

.

4

%

は「民営借家」で生活していた。これら高齢者世帯が居住する「民営借家」は, 最低居住水準未満のものも多く,また,家賃の支払能力,生活管理能力への不 安などから入居を断られたり i立ち退き」などを求められる事例も指摘されて いる。 また,高齢者世帯が住んでいる持ち家の場合も,老朽化が進んだり,室内の 段差,狭障な廊下,滑りやすい浴室,使いにくい便所等で高齢者が住みにくい 構造の住宅が多く,改築・改善が必要となっている。 さらに,今後障害を持った高齢者がますます増加するものと予測されている

(2)

~30~ 香川大学経済論叢 844 が,これらの人々が車椅子で自立した生活ができるような住宅は極めて少ない。 このように,人口高齢化の進展にともなって,わが国の高齢者の住宅問題は 一段と深刻化していくと思われる。では,これらの諸問題を解決するために, これからのわが国の住宅政策は,一体どのように展開されようとしているので あろうか。 まずここでは,わが国の住宅政策の策定に大きな影響力を持つ住宅宅地審議 会の「答申」から見ていくことにする。 平成 2年6月,住宅宅地審議会は r経済桂会の発展に対応したゆとりある住 生活を実現するための住宅・宅地政策についての答申」を建設大臣に提出した。 同審議会は,この「答申」のなかで r我が国は,今や世界有数の経済大国とな り,国民の所得水準や消費水準も上昇し経済的な豊かさを謡歌しているものの, 住宅及び住環境の整備水準という点ではまだまだ欧米諸国の水準に及ばず,こ れが国民がその経済力にふさわしい真の意味で豊かさを実感できない原因のー っとなっているJor住宅は,国民生活にとって個人の生活及び家庭生活の基盤 であり,また,住環境は国民の生活の場としての安全性や快適性を支えるもの として欠くことのできないものである。国民は今こそ経済的な繁栄の成果を住 宅及び住環境の水準の向上に活用することを期待しており,良質な住宅ストッ ク及び良好な住環境の形成は我が国の最も緊急かつ重要な政策課題となってい る」と述べている。つまり,住宅宅地審議会は,経済大国日本の住宅及び住環 境の整備の遅れを率直に指摘するとともに,その整備・充実に対する国民の期 待を表明しているのである。 そしてさらに,同審議会はこの「答申」のなかで r住宅政策においては,高 齢者が可能な限り住み慣れた地域社会で健蔵で生きがいをもって生活できるよ う,住宅及び住環境の整備を高齢化の進展にあわせて的確に進めて行くことが 極めて重要な課題となっている」と述べ,高齢化社会に対応した住宅政策の推 進を,今後の住宅政策の重点課題のーっとし位置づけている。 そして,今後高齢化社会に対応した住宅政策を推進していく上での「基本的 な考え方」として次のような点を示している。

(3)

845 高齢化社会と住宅問題(2) -31-その第

1

は,高齢者の健康状態,所得水準等の違いにより,様々なニーズが 存在し,それに対応する必要がある。第2は,地域社会の活力を維持するため, 高齢者のみが集まった街ではなく,若年層や中堅層との活発な交流を可能とす る街づくりを行う必要がある。第3は,高齢者が安心して日常生活が送れるよ う,住宅及び住環境の整備に併せ,医療,福祉等の厚生行政との連携を強化し ていく必要がある。第

4

は,一般に高齢者は,将来的に所得の上昇が見込まれ ないことから,借家に居住する高齢者の居住の安定を確保する必要がある。第 5は,高齢化社会に対応する住宅・住宅部品等の性能は,高齢者世帯用の住宅・ 住宅部品等に限定されるものではなしそれらが基本的性能として一般に備え るべきものとして普及されるべきものである。そして,これらの点に十分留意 して,今後の高齢化社会に対応した住宅政策の推進をはかるべきであるとして いる。 国は,上記審議会の「答申」を受けて,平成3年3月,第六期住宅建設五箇 年計画(平成 3~7 年度)を策定した。ここでは,良質な住宅ストック及び良 好な住環境の形成,大都市地域の住宅問題の解決,高齢化社会への対応,地域 活性化等に資する良好な居住環境の形成の4点を基本目標にかかげ,平成3年 度以降5か年間に適正な規模,構造及び性能・設備を備えた730万戸(その内 訳は,公的資金による住宅建設戸数370万戸,公営住宅等31万5千戸,公庫住 宅

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4

4

万戸,公団住宅

1

4

万戸,公的助成民間住宅

1

5

万戸,その他の住宅

4

5

万 5千戸,調整戸数20万戸)の住宅建設を計画している。 そして,高齢化社会への対応としては r高齢者が可能な限り住み慣れた地域 社会で自立した生活を送れる住宅,住環境の整備を進めること」を基本理念と し,高齢者住宅政策の課題として次のような点をあげている。 ①親族との同居,近居等高齢者の多様な住まい方に応じた住宅供給を促進す る。また,公共賃貸住宅の的確な供給等により高齢者の居住の安定の確保を 図る。 (1) 建設省住宅局監修『住宅政策の新展開J

189頁。 (2 ) 建設省住宅局監修 r住宅政策の新展開, 2n. 13頁。

(4)

32 香川大学経済論叢 846 ② 設計,設備等の面で高齢者に配慮した住宅の供給を促進する。 ③ 医療・福祉施策との連携を図りつつ,高齢者向けの住宅対策を実施する。 ④ 障害者等についても,高齢者と同様に居住環境,住宅の設計,設備等に関 してその世帯特性に応じた適切な配慮をおこなう。

2

現在実施されている国の高齢者住宅関連施策 次に,第六期住宅建設五箇年計画等に基づき,公営住宅,公団住宅,住宅金 融公庫等において,現在実施されていたり,あるいは今後実施されようとして いる国の高齢者住宅に関連する施策の主なものを列挙すれば,およそ次のよう なものカまある。 (1) 公営住宅等における施策 ① 国の補助を受けて建設される公営住宅においては,規模・設備面で配慮、し た老人世帯向け特定目的住宅や老人同居向け世帯住宅を建設するとともに, 老人夫婦と子供夫婦が隣接しながら独立して生活できるペア住宅も建設して いる。障害者に対しては心身障害者世帯向け住宅を建設している。また,改 良住宅においても,高齢者・心身障害者世帯のための住宅を建設している。 ② 公営住宅,改十良住宅については,平成3年度以降,新たに供給する全ての 住宅について,住戸内の段差の解消,階段の手すりの設置等,一定の高齢化 に対応した仕様を原則として標準化している。 ③公営住宅,改良住宅の建設にあたっては,老人対策のためエレベーター付 きの

3

"

-

'

5

階建ての中層住宅の供給を促進している。併せて,優良住宅部品 認定制度の活用による高齢者向け浴室ユニット等の開発,普及及びその公営 住宅等への採用を図っている。 ④公営住宅の入居資格に関しては,

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0

歳以上の高齢者(女子は

5

0

歳以上)又 は身体障害者の場合,単身であっても入居できることにしている。さらに, 入居者の選考にあたっても,住宅の困窮度が高いものとして,一般住宅困窮 者よりも優先的に入居できるようにしている。 (3 ) 建設省編 r建設白書.)(平成5年版), 294~297 頁参照。及び,総務庁老人対策室編『長 寿社会対策の動向と展望J(平成5年6月), 208~213 頁参照。

(5)

847 高齢化社会と住宅問題(2) 33

(

2

)

公団住宅における施策 ① 公団では,高齢者,身体障害者を含む世帯に対して,募集時の当選率をー 般の

1

0

倍とするとともに,入居住宅については

1

階又はエレベータ停止階の 住宅への優先的割当を行っている。また,住宅変更や高齢者世帯と扶養等世 帯とが同一団地内に近居しようとする場合にも募集上の優遇措置を講じてい る。さらに,既存賃貸住宅団地のなかから,高齢者向けに住宅等の改善を行 う団地を指定し,改善した住宅については,高齢者等を対象とした募集をお こなうことにしている。 ② 高齢者のいる世帯については,分譲最低一時金を減額する措置がとられて いる。 ③ 高齢者,身体障害者に対し設備等の面で配慮した高齢者向け仕様の公団住 宅を建設している。平成

3

年度からは,それ以外の住宅についても,住棟ア プローチのスプロール化,共同階段への手すりの設置ラ住戸内段差の解消な ど一定の仕様を標準化している。 (3) 住宅金融公庫における施策 ① 住宅金融公庫においては,高齢者又は心身障害者の同居する世帯や二世帯 住宅の建設に対する割増融資を実施している。 ② 高齢者もしくは身体障害者用設備の設置に対する設備割増融資,ホームエ レベーターの設置に対するエレベーター設置割増融資を実施している。 ③親の住宅を子が債務者となって建設する場合等に融資を行う親孝行ローン 制度,親子が債務を継承して返済する承継償遺制度を実施している。 ④若年・壮年世帯を含めて,入居者がいず、れ高齢者になった時にも不都合な く生活ができる構造・仕様等をあらかじめ備えた住宅に対する割増融資を実 施している。 (4 ) なお,住宅金融公庫の融資のほか,厚生省も高齢者向けの住宅資金融資制度を実施して いる。また,年金福祉事業団が行う被保険者住宅資金貸付においても,老人同居割増貸付 制度を実施している。 (5 ) 勤労者財産形成持家融資制度においても,承継償還制度を実施している。

(6)

~34 香川大学経済論叢. 848 ⑤ 地方住宅供給公社等が,直接又は一括借り上げにより供給するケア付き高 齢者住宅に対し融資を行っている。 (4)福祉型借上公共賃貸住宅制度 平成3年度から,公営住宅の供給を補完するものとして,土地所有者等の建 設する良質な賃貸住宅を,地方公共団体文は地方住宅供給公社が借り上げ,家 賃負担を軽減して高齢者等に対して賃貸する福枇型借上公共賃貸住宅制度を実 施している。 (5) 地域高齢者住宅計画 昭和

6

1

年度より,高齢化社会に対応した住宅ストックの形成と総合的居住環 境の整備を進めるため,市町村による地域高齢者住宅計画の策定を進めており, 平成

4

年度までに約

1

0

0

地区において策定し,計画に基づく住宅・住環境の整 備を推進している。平成5年度からは,地域の課題に対応し,地域に根ざした 住宅政策を展開するための総合的な住宅計画である地域住宅計画に位置づけ, これに基づき推進を図っている。

(

6

)

シルノマーハウジング・プロジェクト 昭和

6

2

年度より,建設省と厚生省が協力してシルバーハウジング・プロジェ クトとを推進している。シルバーハウジング・プロジェクトとは,住宅政策と 福祉政策との密接な連携のもとで,高齢単身又は高齢夫婦世帯を対象として, 自立した安全かつ快適な生活を営むことができるよう,高齢者に対応した設 備・仕様の公営住宅等を供給するとともに,ライフサポート・アドバイザ'- (生 活援助員)による入居高齢者に対する日常の生活指導,安否確認,緊急時にお ける連絡等の福祉サービスが適切に受けられるよう十分配慮された住宅の供給 を行うものである。 (7) シニア住宅供給推進事業 平成

2

年度より,建設省はシルバーハウジング・プロジェクトとは別に,高 齢者が生涯にわたり安定した住生活を営めることを目的として,シニア住宅供 給推進事業を実施している。シニア住宅とは,住宅・都市整備公団,文は地方 住宅供給公社の供給する住宅で,高齢者の生活特性に配慮した設備,仕様の採

(7)

849 高齢化社会と住宅問題(2) -35-用,生活を支援するための関連施設・サービスの設置,一時払い終身年金保険 の活用による入居時の一括払方式の採用等により,高齢者の住生活の安定を図 ることを目的とするものである。前述のシルバーハウジング・プロジェクトと シニア住宅の違いは,前者が自立可能な健康状態にある高齢者を対象とし,心 身機能の低下により介護が必要になった場合には老人福祖施設や病院等の他の 施設へ移転することを前提にしているのに対し,後者はそのような前提は置か ず,ケアサービスの程度やその対価等については,個々のシニア住宅で計画・ 実施することになっている。したがって,付帯施設・サービスや他の施設との 連係方策のいかんによっては,いわゆる寝たきりの状態となっても,継続して 居住することが可能となっている。 (8) 福祖の街づくりモデノレ事業 福祉の街づくりモデlレ事業は,長寿社会の到来,都市化の進展に対応して, 高齢者・身体障害者に配慮した街づくりの推進を図るため,動く歩道,スロー プ,エレベータその他の都市における高齢者・身体障害者の快適かつ安全な移 動を確保するための移動施設の整備に対する国庫補助等を行う制度である。平 成3年度に創設され,平成4年度までに 11地区で調査を行い,平成5年度は群 馬県高崎市中心市街地区等計 4地区で事業等を行うことにしている。 (9) 制高齢者住宅財団による支援 平成

5

3

月に岡高齢者住宅財団が設立された。この財団は,建設省・厚生 省及び地方公共団体,住宅・都市整備公団及び地方住宅供給公社等の公的住宅 供給機関との緊密な連携を図りながら,各種調査研究,啓発・普及等の事業を (6 ) 平成 4年度に,住宅・都市整備公団による港北ニユ!ータウンシニア住宅(仮称)が着工 されている。この事業は, 60歳以上の高齢単身者又は高齢者夫婦世帯を対象とした1DK ~2DK の住宅を 180 戸(平成 6 年 3 月募集開始予定の第 1 期には 120 戸)供給するもの であり,住宅には,段差の解消など様々な高齢者の生活特性に配慮した設計・設備がなさ れるとともに,高齢者の家賃負担の不安を解消するために終身年金保険を活用した家賃 システムが採用されることになっている。また,高齢時の生活を支援するため,緊急通報 の受付及び対応,定期健康診断,生活相談などの基礎サービスと,家事サービス,在宅介 護サービスからなる各種生活関連サービスを提供するシステムを備えることになってい る(建設省編『建設白書』平成5年版, 296頁参照)。

(8)

36- 香川大学経済論叢 850 行うとともに,高齢者向け住宅の事業化支援,管理運営等の業務を実施するこ とにより,高齢化社会に対応した住宅・生活関連サービス等の整備を総合的に 推進することを目的に設立されたものである。 以上が,現在実施されているわが国の高齢者住宅関連諸施策の主なものであ る。 V 香川県の高齢者住宅対策

1

香川県の高齢者住宅計画 つぎに,香川県の高齢者住宅対策についてみる。 香川県の人口の高齢化は,全国平均に比べ,ほぽ

1

0

年早く進行していると言 われている。香川県の老年人口比率が

7%

に達したのは昭和

3

4

年であり,

14%

に達したのは昭和

6

4

年である。そして,平成

2

年の国勢調査では

1

5

.

.

4

%

となっ ている(ちなみに,全国平均の老年人口比率が

7%

を超えたのは昭和

4

5

年で, 平成

2

年の国勢調査では,

1

2

.

.

0

%

となっている。そして,

1

4

.

.

0

%

を超えると予 測されているのは平成6年である)。 また,すでに前稿でみてきたように,香川県でも,近年「高齢者単独世帯」 や「高齢者夫婦のみの世帯」が急速に増加し、ている。 そこで,県は「高齢者に対する住宅対策が緊急かつ専門的課題である」とい う認識のもとに,平成元年 7月,長期的視点に立った高齢者住宅計画を策定す るため,香川県高齢者住宅計画策定委員会を設置した。そして,同委員会の報 告書をもとに,平成2年 7月,県は『香川県高齢者住宅計画』を公表した。こ れは,今後の県の高齢者住宅施策の指針となるものである。 県は,上記計画書のなかで,①安全に住み続けられる高齢化に配慮した住宅 の整備促進,②多様な住まい方に対応できる高齢者向け住宅の供給,③安全で 快適な住環境づくり,④地域福祉サービスとの連係,⑤多様なニーズに答える ための情報提供体制の確立。⑥地域特性に即した市町における高齢者住宅施策 の充実,という 6つの「施策方針」と,それらについての具体的な施策や,推 進プログラムなどを明らかにしている。以下において,県がこれら 6つの「施

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851 高齢化社会と住宅問題(2) -37-策方針」のもとで,具体的にどのような施策を展開しようとしているのか,も う少し詳しく紹介することにする。 2 県の6つの「施策方針」と具体的な施策 施策方針 1"安全に住み続けられる高齢化に配慮した住宅の整備促進 高齢者の心身機能は,加齢と丘もに低下する。したがって,それに対応した 住まいづくりが必要となる。しかし,現時点ではその身体的特性に対応して当 然配慮すべき「段差の解消J,,-手すり」等についても,必ずしも十分に対応で きておらず,そのため,住戸内での事故も多発している。 今後は,超高齢社会の到来により,県内でも,ほとんどの住宅に高齢者が住 居するようになると思われる。したがって,今後建設される全ての住宅におい て「バリアフリー設計」を採用することが望ましいと考えられる。 また,老朽化した住宅に居住している高齢者も多いことから,公営住宅にお いては建て替えや既存住宅の改善を行い,民間住宅に対しては,質の高い住宅 供給を誘導するための助成制度等の検討をする必要がある。 さらに,高齢者に配慮した設計指針等を作成して,これをもとに建築関係者, 一般住民等にPRし,-力日齢住宅」の普及を図ることが重要となる。 そして,上記のような高齢者に配慮した住宅を整備促進させるために,県は 次のような具体的施策を推進するとしている。 ① 加齢型住宅設計指針の作成と普及 加齢型住宅設計指針を作成し,公的住宅はもとより民間住宅にも活用を 図っていく。なお,指針の作成にあたっては,次の点に配慮する。付)加齢に 対応できるシステムであること,わ)安全性を配慮した住宅であること,付あ らゆる年齢層にとって使いやすいシステムであること,付選択できる住宅シ ステムであること,体)自立支援システムに対応できること, (吋地域に密着し (7) rバリアフリー設計」とは,段差の解消・手すりの設置・スロープの設置など高齢者が 生活していくうえでの障害を取り除いた設計をいう。高齢者在宅福祉を考える場合の基 本理念であるノーマライゼイションを実現していくための第l条件が,住宅のバリアフ リー化の普及・一般化であると云われている。なお,建設省は,平成3年度より,公共住 宅のバリアフリー設計を標準化している。

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-38ー 香川大学経済論叢 852 た住宅システムであること。 さらに,その指針をもとに土地所有者,施主,一般県民,福組関係者,大 工i等への配布を考慮したパンフレツトを作成し,加齢型住宅のより広い普及 を図る。 ② 公営住宅における既存ストックの建て替えの推進及び住戸改善の実施 現在居住している高齢者への対応が必要であることから,既存ストックの うち老朽・狭小住宅の建て替えや,継続して活用可能な住宅の住戸改善につ いて早急に整備計画を作成し,その推進を図る。また,市町に対しても,建 て替え及び住戸改善整備基本計画作成の誘導・指導をおこなう。 ③ 住宅供給公社における高齢者向け住宅の供給 加齢型住宅設計指針の内容を加味したモデノレプランを作成し,高齢者向け 住宅の供給を促進する。 ④ 加齢型住宅の設計コンペの実施 加齢型住宅の設計コンペを実施し,加齢型住宅への認識を高めるとともに, その普及に努める。また,優秀な作品を収集して冊子を作成するなどして情 報の提供に役立てる。 施策方針2:多様な住まい方に対応できる高齢者向け住宅の供給 公営住宅における高齢者への対応は,これまでも実施されてきているが,量 的にみると僅かである。また,管理面においては高齢者単身・高齢者夫婦のみ ( 8) 県住宅課は,平成3年3月香川県高齢者住宅設計指針』を作成し,高齢者が安心し て住み続けることができる住宅の普及に努めている。また,高齢者に配慮した住まいづく りのポイントを,わかりやすく冊子にまとめた『お年寄りに配慮した住まいづくりのてび き』も作成し,高齢者に配慮した住宅のより広い普及を図っている。 (9 ) 県は,これまで2回,高齢者向け住宅設計競技を実施している。第1回目は,平成4年 2月に実施され(平成3年度の事業),応募作品は29点あり,このなかから最優秀賞l点, 優秀賞1点,佳作2点が選ばれている。第2回目は,設計課題を変えて平成4年10月に 実施されたが,このときの応募作品は33点あり,このなかから最優秀賞l点,優秀賞I 点,佳作3点,特別賞1点が選ばれている。また,平成5年10月には r高齢者向け住宅 啓発絵本」を作成するための「絵」を募集した。応募作品 (4枚の絵を作品1点としてい る)は36点あり,このなかから,最優秀賞l点,優秀賞2点,各場面賞4点,特別賞l 点が選ばれている。なお,最優秀賞に選ばれた人が,残りの絵9枚を作成し,平成5年度 中に絵本を作り,高齢者向け住宅の啓蒙・普及をはかることにしている。

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853 高齢化社会と住宅問題(2) -39-の世帯の優先入居,低所得者に対する家賃減免等の対策がとられているが,こ れも充分に対応できているとはいい難い。 民間住宅については,住宅金融公庫割増融資制度や県における助成制度等が あるが,利用件数は多くなく,高齢者に配慮した住宅供給はまだまだ不十分の 感がある。 しかし,今後は21世紀に向けて高齢者の増加が著しいことから,量的対応、と ともに,さらに多様化するであろうニーズにも対応していくことが必要となっ てくる。つまり,隣居・近居を含めた同居スタイノレの多様化,平均寿命の伸び による居住の長期化,心身機能の低下した後期高齢者の介護,低所得者に対す る援助の必要性などへの対応が必要となる。このため,公営住宅において,高 齢者の多様なニーズに配慮した住宅供給を促進するためのモデル団地の建設に 取り組む必要がある。また,民間住宅に対しては,建設・増改築に対する融資 制度の活用やその充実を図るとともに,啓発や助成などを通じ,選択性の高い 高齢者住宅供給を誘導する必要がある。 そして,多様な住まい方に対応できる高齢者向け住宅の供給を促進させるた めの具体的な施策として,県は次のような点をあげている。 ① 住宅の型別供給の推進 高齢者の多様なニーズに対応するため,そのニーズの把握に努めるととも に住宅の型別供給(高齢者単身・夫婦・同居世帯向け公営住宅の建設など) を推進する。 ② 県営のモデル団地の建設 県において I加齢型住宅設計指針」や「高齢者の利用に配慮した住環境設 計指針」の内容を加味し,福組サービス等との連携に配慮したモデル団地を 計画・建設する。このことは,市町営,公社や民間における高齢者に配慮し た住宅供給の先導的役割を果たすことになり極めて重要なことである。 ③ 高齢者単身・夫婦のみの世帯に対する優先入居の充実・推進 現在,高齢者に対する優先入居を実施している事業主体はまだ少なく,今 後この制度を図っていく必要がある。また,高齢者対応の改善住戸は言うま

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~40~ 香川大学経済論叢 854 でもなく

1

階住戸等についても優先的に対象住戸として取り扱う必要があ る。 ④ 家賃のあり方についての検討 高齢者単身・高齢者夫婦のみの世帯では,低所得者が多いことから,家賃 のありかたについて多角的に検討する。 ⑤ 高齢化対応住戸への住み替えの推進 居住者のニーズに対応して,高齢化対応住戸への住み替えの推進を図って いく。 施策方針3:安全で快適な住環境づくり 高齢化社会においては,高齢者が屋外で安全かつ快適に過ごせるよう歩道の 拡幅,段差の解消,休憩スペースの確保,公園や緑の確保等の配慮がなされて いることが望ましい。また,余暇時間の増大等から,趣味,教養など生きがい の占めるウエイトは高まり,集会所,団らん室,図書館等の整備が望まれる。 しかし現状では,必ずしも充分な整備がなされているとはいい難い。 したがって,公的住宅や民間住宅における高齢者に配慮した住環境づくりの 促進・誘導を図るため,住環境設計指針などの作成や県営モデノレ団地の建設に 取り組むことが必要である。 そして,そのための具体的施策として,県は次の点をあげている。 ① 住環境設計指針などの作成と普及 今後の高齢化対応のための「住環境設計指針」や「まちづくり手法の手引 き」を作成し,公共住宅はもとより民間住宅への、活用も図っていしなお, 「住環境設計指針」の作成にあたっては,付)安全に配慮した環境づくり, (,ロ) コミュニティに配慮した環境づくり,付快適な生活空間に配慮した環境づく りが大切である。さらに,その指針をもとに土地所有者,施主,一般県民, 福祉関係者等への配布を顧慮したパンフレツトを作成し,住環境指針の広い 普及を図る。 施策方針

4

:地域福祉サービスとの連携 高齢者単身・高齢者夫婦のみの世帯は,心身機能の低下により,定住志向で

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855 高齢化社会と住宅問題(2) 41-ありながら,同じ場所,同じ地域に住み続けることが困難となる場合が多い。 しかし,常時の介護が必要となるまでは,相互扶助が可能な地域コミュニティ と,在宅サービスを中心とする各種サービスがあれば,住み慣れた土地で自立 して生活することが司能となる。 これまでの住宅行政は,公共住宅の建設,管理等を主に行ってきたが,今後 は高齢核家族世帯が増加することから,緊急時の対応も含めた日常のケアにつ いても配慮する必要が生じてきている。 このため,医療・福祉・保健行政との密接な連携を図り,住宅居住者に対し ケアサービスの提供できる地域福祉サービス体制づくりや相互扶助を目的とし た地域コミュニティの形成の誘導をすすめることが必要である。 また,民間住宅における援助・サービス体制を誘導するため,公営住宅にお いては,シルバーハウジング・プロジェクトを導入し,ライフサポート・アド バイザー(生活援助員)の配置を中心とした地域福祖サービス体制づくりをモ デル的に実施することが望まれている。 そして,それを実現させるために,県は次のような具体的施策をあげている。 ① シルバーハウジング・プロジェクトの実施 県土木部住宅課が,平成元年 11月に,県内に居住する 55歳以上の男女 2,469人を対象に実施した「高齢者の住まい方意識調査」によると,単身世帯 で4割,夫婦のみの世帯で3割強,また借家居住で4割強の高齢者が,高齢 者向け住宅ができれば入りたい気持ちを持っている。また,行政に対する要 望では借家居住者で6割近くの人が高齢者向け公営住宅の建設を望んでい た。 また,高齢化にともない健康状態が悪くなり,特に高齢者単身・高齢者夫 婦のみの世帯では緊急時に対する不安も強くなる。ところが,近所つきあい は比較的あるものの,緊急のとき頼めることになると r買い物」など簡単な ことでも 3割を超える程度となっている。 したがって,健康で安心できる社会を目指すには高齢化対応の付加された 住宅の供給だけではなく,高齢者が安心して暮らせるための福祉サービス等

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-42- 香川大学経済論叢 856 の支援が重要である。 上記のような現状をふまえ,福祖施策と住宅施策の密接な連携のもとに,高 齢者の居住の安定と社会福祖の増進に資することを目的とした「シルバーハウ ジング・プロジェクト」を導入し,公営住宅においてケア付き住宅の供給をモ デル的に実施して,今後の民聞におけるケア付き高齢者住宅供給の誘導を図る。 施策方針5"多様なニーズに答えるための情報提供体制の確立 今後の高齢化対応施策の展開のためには,多様な居住形態や,種々の情報提 供が必要になるものと思われる。特に,加齢型住宅設計指針や住環境設計指針 などの普及,自分の住まい方意識にあった住宅の建設や建替・増改築による居 住水準改善・促進のために,建設関係業界等との協力のもと住宅相談窓口を設 置するなどして,情報提供の充実及び体制の確立を図る必要がある。 そして,そのための具体施策として,県は次の点をあげている。 ① 各種指針,パンフレツト等による PR 住宅フェア等を利用し,パンフレツトの配布,コンペ作品の紹介,リフォー ム相談,住宅設計相談,融資制度・助成制度の紹介,設備機器等の展示など を実施して,高齢化対応住宅の普及を図る。 ② 講 演 会 等 の 開 催 マニュアノレ,パンフレット等を利用し,民間住宅事業者等の説明会や専門 家,有識者等による講演会等を開催するなどして啓蒙・普及に努める。また, 優良団地,優良住宅の見学会の開催などにより高齢化対応住宅の普及を図る。 ③ 情報提供のための体制づくり 市町自治体の住宅関係者による協議会,民間住宅関連事業者等による協議 会を設立し,相互に連携を保ちながら高齢化対応への'情報収集やその提供等 のための体制づくりをする。 施策方針

6

"地域特性に即した市町における高齢者住宅施策の充実 高齢化社会に適した住宅ストックと居住環境の整備及び地域福祉サービスの 体制の充実や生きがい対策的な面での対応の充実を推進するためには,地域の 特性を生かせる市町の役割が非常に重要となる。

(15)

857 高齢化社会と住宅問題(2) -43-このため,市町は地域に視点、をすえて,高齢者と住宅との実態に即した長期 的で総合的な計画を策定し,その方針に沿った住宅供給を推進する必要がある。 さらに,地域特性に即し,生きがいづくりに着目した住宅施策としての「生涯 学習のむら」構想について,生涯学習施策と密接に連携をとりながら検討して いく必要がある。 そして,これらを実現させる具体的施策として,県は次の点をあげている。 ① 市町における高齢者住宅計画の策定の誘導及び促進 これまで,住宅行政は公営住宅の建設・管理等を中心に動いてきたが,住 宅・住環境に対するニーズが多様化・高度化している状況のなかで,これら にきめ細かく対応するには地域ごとの特性に即した対策が必要であり,市町 における総合的な計画・体制づくりが今後の住宅施策の大きな課題となって いる。 このため,県においては「地域高齢者住宅計画整備推進事業(国庫補助事 業)Jに基づく計画策定や市町独自の高齢者住宅計画策定を誘導するととも に,市町の特性に即した高齢者住宅対策事業の促進を図る。 ② 高齢者住宅計画策定に対する助成 地域の高齢者住宅計画策定の誘導・促進にあたっては,県における指導・ 援助体制を充実するとともに,計画策定費の助成を検討実施することが必要 である。 ③ 生涯学習のむら建設計画の策定の誘導及び促進 今後,人生80年時代の社会を迎え,高齢者の余暇時間の増大にともない, 人生のなかで最も自由時間に恵まれゆとりのある生活が可能となり,生きが いに対するより強い欲求が生まれてくるものと考えられる。 また,趣味や学習のような活動自体に楽しみを見いだすことや,高学歴化 などを背景に知識や経験を生かして地域社会に参加することも,老後生活を 充実させるうえで重要なこととなってくる。 このため,人生80年の長寿社会において,ゆとりとうるおいのある居住環 境を確立し,年齢に関係なく生涯をいきいきと暮らせるような生活設計を可

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← 44- 香川大学経済論叢 858 能とする生涯学習社会を先駆的・モデル的に実現するため,生涯学習施策と の密接な連携を図りつつ r生涯学習むら」建設をモデル的に実施するための 計画策定の誘導及び事業の促進につとめる。 以上が,香川県高齢者住宅計画における 6つの施策方針と,その具体的な施 策である。

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香川県のシルバーハウジング・プロジェクト L シルバーハウジングの建設について 平成

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月,香川県は r香川県高齢者住宅計i画」にもとづき,シルバーハ ウジング・プロジェクト事業に取り組むことにした。シルバーハウジング・プ ロジェクトとは,すでに述べたように,住宅政策と福租政策との密接な連係の もとで,高齢者単身又は高齢者夫婦のみの世帯を対象として,自立した安全か っ快適な生活を営むことができるよう,高齢者に対応した設備・仕様の公営住 宅等を供給するとともに,ライフサポート・アドバイザー(生活援助員,以下 LSAと略称する)による入居高齢者に対する日常の生活指導,安否確認,緊急 時における連絡等のサービスの提供を行うものである。 以下において,県が計画・実施しているシルバーハウジング・プロジェクト について紹介する。 (I)建設計画 高松市の中心部から南東約5kmの位置に,県営高松元山団地があるが,この 団地に接した約6,000m2 の敷地に,高層住宅 2棟と LSA用住宅等を建設する 計画をたてた。 事業を実施する団地の選定にあたっては, (イ)デイサービスセンタ}に近いこ と, (ロ)交通の便が良いこと,付日常利便施設(ショッピングセンター,金融機 関等)や病院等の医療施設に近いこと, (ニ)余暇活動のための地域施設があるこ と,

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ホ)閑静で自然環境に恵まれていること,などの条件を考慮した。 建設年次計画によると,平成3年度に南棟 6階建て 24戸(このうち高齢者向 け住宅は, 2DKで約 49m2のが 12戸)を建設し,つづいて,平成 4年度に北棟

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859 高齢化社会と住宅問題(2) -45-8階建て 32戸(このうち高齢者向け住宅は, 2DKで約49m2のが16戸)と, 集会室(団らん室と生活相談室を併設),

LSA

用住宅を建設することになってい る。 そして,現在は,両棟とも計画通り完成している。

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2

)

住棟の特徴 次に,今後の高齢者向け住宅のモデノレ団地として,大きな期待が寄せられて いる県営高松元山団地の住棟の特徴について述べる。 当団地は,高齢者の孤独感を少しでも解消するとともに,生活行動範囲を広 げることを目的として,高齢者とその他の世代が混住する団地としている。 そして,高齢者は一般的に,加齢にともない屋内にこもりがちになる傾向が 現れることから,住棟中央にエレベーターを配置し,その両側に高齢者向け住 戸を,隣に一般向け住戸を設け,お互いの日常の出合いに配慮している。また, 各階の階段付近やエレベーターホールにゆとりあるスペースをとり,高齢者と その他の世代との交流が図れるようになっている。さらに,南北両側に,階段 とともにスロープを設け,車椅子の利用者や歩行の不自由な者にとっても使い やすく便利な構造にしている。 次に,住棟の共用部分については,高齢者に対し,以下のような点に配慮し ている。 ①

1

階出入口の階段,スロープには手すりを付け,案内板や郵便受け等は高 齢者の身体寸法に配慮した高さになっている。 ② 共用ロ}カは広めにとり,段差がなく手すりを付け,高齢者向け住戸の出 入口は,通行の妨げにならないよう前面にスペースをとっている。 (10) 南棟は平成4年1月末に完成し,同年3月から入居開始となっている。なお, 12戸に対 し45世帯からの応募があり,応募倍率は375倍となっている。入居世帯の内訳は,単身 世帯が8世帯,夫婦世帯が4世帯で,入居時の平均年齢は68..2歳となっている。家賃は 月額26,000円である。 北棟は平成5年1月末に完成し,同年3月から入居開始となっている。こちらは, 16戸 に対し37世帯からの応募があり,応募倍率は2..31倍となっている。入居世帯の内訳は, 単身世帯10世帯,夫婦世帯6世帯で,入居時の平均年齢は68引5歳となっている。家賃は 月額27,000円である。

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-46- 香川大学経済論叢 860 ③ エレベーターホーJレでは,周囲の状況が確認できるように常夜灯を設け, 防犯や危害防止等に配慮している。また,各階の中央階段付近に高齢者とそ の他の世代とのコミュニケーションが図られる場が設けられている。 ④ 階段や踊り場は広めにとり,手すりを設けている。 ⑤住棟や階数を容易に識別できるように,サイン計画されている。 (3) 住戸内の特徴 次に,住戸内の特徴について述べる。 住戸内の設計においては,高齢化による筋力や平衡感覚の低下によるつまず きや転倒を防止するような配慮がおこなわれている。 まず,段差の解消については,玄関やバルコニーのように,屋外と屋内を区 画する部分については,できるだけ段差を少なくしている。また,浴室や,敷 居と床の仕上がりについても,段差には十分注意を払っている。 つぎに,転倒を防止するため,玄関,浴室,便所及び通路に手すりを設置し ている。手すりの取付にあたっては,高齢者の身体寸法や使いやすさを考え, それぞれの室等での手すりの形や高さに配慮している。また,床の仕上げ材料 も,すべりにくい材質を選んでいる。 さらに,車椅子の使用にも対応できるように,各室の広さや出入口の幅を広 くしている。 < 玄 関 > ① 出入口は,車椅子でも出入りできるように,広くしている。 ② 高齢者が,開閉しやすいように,自動閉鎖式引き戸にしている。 ③ ホールの広さは,車椅子の使用を配慮、した広さにしている。 ④ 履き替えが容易にできるよう,手すりや靴脱ぎ台を設けている。 ⑤ ホーノレと土間の段差を2cmとし,車椅子の乗り入れが可能となるように している。 < 台 所 > ① できる限り広くして,食器棚等を身近に置けるように配慮している。 ② 流し台は,椅子に腰掛けても調理できるように配慮している。

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861 高齢化社会と住宅問題(2) ③ 天袋は,高齢者が使いやすい高さにしている。 < 洗 面 ・ 脱 衣 室 > ① 出入口は引き戸とし,車椅子の使用を考慮した広さにしている。 ② 洗面器及び鏡の高さは,高齢者の高さに合わせている。 -47ー ③ 洗面器は,車椅子でも使用ができ,また,体を支えても大丈夫なように 堅固に取り付けている。 ④ 床材は,滑りにくく掃除がしやすいものを選んでいる。 < 便 所 > ① 出入口は,使いやすさと安全性に配慮し,アコーデイオン戸としている。 ② 車椅子でも使用が可能としている。 ③ 便器は,暖房便座付き様式便器としている。 ④ 手すりと専用の手洗い器を設置している。 < 浴 室 > ① 出入口は,使いやすさと安全性に配慮し,引き戸にしている。 ② 高齢者の使用しやすい半埋め込み型浴槽とし,手すりも付けている。 ③ 浴室は,介助しやすいように,広めにしている。 ④ 床は,滑りにくい仕上げとしている。 < 居 間 , 寝 室 > ① 居間は,昼間の活動や友人とのつきあい,また,一時的介護者の就寝の ために確保している。 ② 居間,寝室は,日照・風通しがよく,居心地のよい空間としている。 ③ 寝室は,ベッドの使用可能な間取りとしている。 ④ 押入は,高齢者が使いやすいように,棚の高さに配慮している。 < 物 干 し > ① 洗濯物を低い位置にも干せるように,外部のバルコニーに,壁付きの物 干し金具を設置している。 <ノ幻レコニー> ① パノレコニーは,出入りがしやすいように,段差を少なくしている。

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-48- 香川大学経済論叢 ② 避難の際の安全性も考慮し,バルコニーを広くしている。 (4) 設備の特徴 次に設備の特徴について述べる。 862 高齢期になると,身体機能や感覚機能が低下し,日常生活において様々な不 便や不都合が生じやすい。このため,設備面においても安全性,使いやすさ, 快適な室温の確保,緊急時の対応等に十分配慮している。 < 電 灯 設 備 > ① 視覚機能の低下に対応するため,照明器具は明るさの確保に配慮したも のとなっている。 ②

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階の通り抜け廊下,エレベーターホールには常夜灯を設置している。 また,共用階段・廊下の照明器具用スイッチは,利便性を考え3路・ 4路 スイッチにしている。 ③ 住宅内の通路・玄関等のスイッチも 3路スイッチを基準としている。 また,寝室には枕元にスイッチを設け,寝たままで操作できるようにして いる。 ④ スイッチは,操作のしやすい大型(ワイド・ホタノレ付き)とし,取付け 高さも身体寸法や車椅子使用を考慮した位置となっている。 < コ ン セ ン ト 設 備 > ① 台所コンロ台には,電気調理器等の使用できるコンセントを設けている。 ②便所には,暖房便座用コンセント(洗浄便座へも対応可能)を設けてい る。 ③脱衣室は,浴室と比べ大きな温度差があるため,電気暖房機器の設置可 能なコンセント回路とし,また,洗濯機用コンセントも電気乾燥機の使用 可能な容量としている。 ④ 一般コンセントの取付け高さは,車椅子使用を考慮した位置となってい る。 < 通 信 設 備 > ① 玄関の来客に対しては,台所にドアホーンを設置している。

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863 高齢化社会と住宅問題(2) -49-② 台所に,電話配管を行っている。 ③ 居室には,テレビ共聴用端子を設けている。 < 非 常 警 報 設 備 > ① 緊急通報装置として,入居者側には,浴室,便所に固定式押しボタンを, 寝室・台所に通話可能式押しボタンを設置し,

LSA

の常駐する相談室と 連係させている。また,住戸玄関にはブザー・ランプが設置されており, 付近入居者にも緊急時であることを知らせることができるようになってい る。 そして,相談室側には,緊急通報用受信機を設置し,この受信機が入居 者からの緊急発信を受信すると,チャイム音及びランプの点滅により発信 住戸と発信箇所が表示されるようになっている。また,寝室及び台所から の発信であれば,通話により発信内容の把握あるいは確認ができるように なっている。 ② 自動火災報知設備(自主設置)を設置し,相談室で監視を行い,火災時 には,各階廊下及び相談室に設けたベルより警報音が出るようになってい る。 ③ ガス漏れ警報設備を設置し,相談室で監視を行い,ガス漏れ時には,相 談室及び各住戸内の警報器並びに各住戸外壁(廊下部分)に取付けている ランプ・ブザーにより警報が行われるようになっている。 < 衛 生 器 具 設 備 > ① 身体機能の低下に対応するため,操作のしやすい器具を選定している。 ②水栓は,操作のしやすいレバーハンドル式,混合水栓はシングルレバー 式とし,浴室洗い場の混合水栓は温度設定のできるサーモ付きとなってい る。 ③洗面器は,カウンター埋め込み式となっており,車椅子でも使用できる ようになっている。 ④便所には,操作の簡便性に配慮して,専用手洗い器を設置している。 ⑤便器は腰掛け型洋風便器で,暖房便座付きとし,身体機能が低下したと

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50- 香川大学経済論叢 864 きには,洗浄便座への取替えが可能なものになっている。 < 給 湯 設 備 > ①給湯方式を採用し,安全性や操作の簡便さを重視して,貯湯式電気温水 器(深夜電力使用)を設置している。 ②給湯箇所は,台所の流し台,浴室及び洗面の3箇所となっている。 < エ レ ベ ー タ ー 設 備 > ①車椅子使用者でも利用できるエレベーター(

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人乗り -45mj分一車椅 子専用操作盤,手すり及び鏡等取付け)を設置している。 ②付加仕様として地震時管制,火災時管制,停電時自動着床及び超音波ド アセンサ}を設けている。 ③相談室にはエレベーター管制盤を設置し,進行状況を把握できるように し,非常時には避難誘導を行えるようインターホンを設備している。 2.. シルバーハウジングにおける福祖サービス 今回のシルバーハウジング・プロジェクトの事業計画の主体は,香川県となっ ている。しかし,ソフトサービスとしてのライフサポ}ト・アドバイザーの設 置主体は,地域とのつながりや福組サービスとの連携から,高松市(福祉事務 所)が受け持つことになっている。したがって,

LSA

の設置にかかわる業務は, すべて高松市が行っている。なお,

LSA

は,約

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-

-

-

-

-

3

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世帯に

I

人の割合で配置 されることになっており,したがって,当団地は合計

2

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世帯であるから,

1

人 の配置となっている。 以下において,

LSA

の資格・要件およびその業務等について述べる。 (1)

LSA

の資格・要件

LSA

の資格・要件は次のようになっている。 ① 心身ともに健全であること ②社会福祉事業に理解と熱意を有すること ③ 老人の生活指導,相談,臨時の家事,緊急時の対応等を適切に実施する 能力を有すること ④

LSA

住宅に入居すること

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865 高齢化社会と住宅問題(2) -51-以上の要件を満たすことが必要であるが,加えて次の資格等を具備していれ ば,なお望ましいとされている。 ① 看護婦または保健婦の資格を有する者 ② 福祉施設での経験のある者 ③ ケースワーカーの経験のある者

(

2

)

LSA

の業務

LSA

は,管理者・家事作業者・援助者・介護者としてではなく,あくまで, 日常生活の相談・指導,あるいは安否の確認を主たる業務とし,必要に応じて 入居者とサービス供給者及び関係機関との連絡・調整を行うものである。 なお,

LSA

の基本的な業務は,およそ以下のようになっている。 ① 安 否 の 確 認 必要に応じて,入居者の居宅への訪問や機器の活用によって,安否を確認 する。 ② 相談及び情報の提供 生活相談・生活指導を行うとともに,市などの福祉サービスをはじめ,公 共施設等に関する情報を必要に応じて提供する。また,入居者からの要請が あった時,必要に応じ関係機関に連絡し調整を行う。 ③ 緊急時の対応

LSA

が緊急通報を受信したときは,機器の使用等により,状況を把握した うえで必要な関連機関に連絡する。 ④ 一時的疾病などにおける援助 入居者が,一時的な疾病にかかった場合は,病院,家族等と連絡をとり必 要な措置をとる。また,原則として身の回りの世話は行わないが,日常業務 に差し支えない程度の援助をし,必要に応じてホームヘルパ一等の派遣を依 頼する。 ⑤ 長 期 加 療 が 必 要 な と き 家族,医療機関等と協議のうえ,入院または老人福祉施設等の入所など, 適切な処置をとる。

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-52ー 香川大学経済論叢 ⑥ その他 イ.内容により,警察,消防署等への連絡・調整を行う。 ロ.入居者の相互扶助意識の形成に努める。

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6

6

ハ.団地内の団らん室,相談室,屋外便所等の管理を行い,必要に応じて県 への連絡・調整を行う。 ニ.高松市福組事務所とも密接な連携を保ち,円滑な業務の遂行に努める。 (3) 関連福祖施設等との連携 県営高松元山団地のある川添地区の近辺には,民間の医療機関が多数あり, 市街地へも電車等交通機関の利便がよいうえ,特別養護老人ホーム(弘思苑) やデイサービスセンターも近くにある。したがって,

LSA

によるサービスに力日 えて,これらデイサービスセンターや特別養護老人ホームによる在宅支援サー ビスの活用が可能となっている。 また,公的サービス,民間の個別サービスなども積極的に活用することが重 要となっている。

3

高齢者向け住宅の入居対象者 最後に,このような高齢者向け住宅に入居するには,一体どのような資格が 必要なのか,その点についてみる。 県は,入居資格については,公営住宅法規等に規定する資格に加え,以下の 各項の要件のすべてに該当する高齢者世帯としている。 ①

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0

歳以上の単身世帯,

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0

歳以上の夫婦のみの高齢者世帯,又は

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0

歳以上 の高齢者のみからなる世帯であること。 ② 自炊が可能な程度の健康状態であるが,身体機能の低下等が認められ,又 は高齢等のため,独立して生活するには不安があると認められる者であるこ と。 ③ 現に住宅に困窮していることが明らかな者であり,家庭による援助が困難 な者であること。 ④ 県内に住所文は勤務場所を有すること。 ⑤ 入居しようとする世帯全員の収入合計が,公営住宅法施行令で定める基準

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867 高齢化社会と住宅問題(2) -53-の収入の範囲内であること。 また,入居者に対しては,次のような注意事項が示されている。 ① 入居資格者以外の同居は認められない。 ② 入居者が病気等の理由により一時的に介護等の必要が生じた場合には,申 請にもとづき介護人の一時的居住を承認する。 ③ 同居を認めた者以外の使用権の継承は認められない。 ④ 入居者が病気療養等の理由により一時的に住宅を不在にする場合には,不 在理由・期間等を明記した届書を提出するものとする。 ⑤ 入居者の身体状況が変化し,寝たきりなど常時かつ長期にわたって介護を 要する状態に至ったとき,あるいは入院治療が必要になったときなど自立生 活が不可能になった場合には, LSAと連絡を密にし,市福祉事務所から福祉 施策についての情報提供や相談,指導,措置等について,必要な援助を得て 親族等への引き取りや施設入所等の対応に努める。 以上が入居者への注意事項であるが,なお,家賃については,低所得者の実 状に鑑み,政策家賃により設定されており,収入が著しく低い者に対しては「香 川県住宅家賃減免及び徴収猶予事務取扱要領」に基づき,家賃が減免されるこ とになっている。 また,福松サービスにかかる費用については,受益者負担の原則から,入居 者の負担となっている。

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I

お わ り に 以上(前稿を含む)で,国及び香川県の高齢者の住宅事情と,現在実施され ている高齢者住宅政策や具体的施策等をみてきた。 わが国の高齢者が抱えている住宅問題は,極めて深刻であり,この問題を解 決するには,まず,高齢者の特性に配慮した公的住宅の供給に重点を置いた施 策を推進していくことが何よりも重要であると考える。地価や住宅建築費の高 騰により,多くの国民にとって,住宅問題はもはや自助努力だけで解決できる 問題ではなくなっている。

(26)

54- 香川大学経済論叢 868 すでにみてきたように,国及び地方公共団体の高齢者に対する住宅計画をみ ると,高齢者が抱えている問題点はほぼ的確に把握されており,そこで述べら れている基本理念や施策方針も,住民の期待にかなり答えるものとなっている。 だがしかし,基本理念や施策方針が如何にすばらしくとも,それによって供給 される良質の住宅量が極めて少ないのでは,何ら解決にならない。(現在,長引 く不況のなかで,消費需要を喚起させるために,政党,経済団体,労働組合な どから大型所得減税が強く主張されているが,われわれは所得減税よりも,高 齢化社会に対応した高齢者住宅や社会福祉施設等の建設の方が,内需拡大にも つながり,より重要と考える)。 また, 21世紀に向けて超高齢社会の到来を予測するとき,バリアフリ、一住宅 の普及は極めて重要であると考える。持ち家や民営借家にもバリアフリー住宅 を普及させるためには,バリアフリー住宅に対する理解や関心を高めるととも に,建築基準法によってバリアフリーを義務づける必要がある。そして,バリ アフリ}化した住宅は必然的に建築面積も広くなり建築コストも高くなること から,補助金,低利で多額の公的融資,税制による優遇措置などの誘導施策が 必要であると考える。 居住の安定は福甜の基礎であり,在宅ケア実現のためにも必要不可欠のもの である。これまでの国及び地方公共団体の住宅・住環境の整備の遅れが,高齢 者の「社会的入院」をまねき医療費高騰の一閣をなしているとともに,また他 方では,障害を持つ多くの高齢者を,狭い住宅の部屋の中に閉じこめ,みじめ な生活を余儀なくさせているという現実をわれわれは十分認識しなければなら ない。高齢化社会を迎え,高齢者が安心して快適な生活を送ることができるよ うに住宅及び住環境を整備・充実することが,現在のわが国の最も重要なかっ 緊急の課題であると考える。

参照

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