生産関数の導入による原価差異分析
へのアウトプット管理思考の展開
山 本 浩
I はじめに 業績管理のための管理会計情報の有用性を考えるにあたっては,経営管理組 織における業績管理の意義と組織を構成する各種の管理責任単位の性質,およ び各々の管理責任単位間,さらには,それらと組織全体との関係を明確にしな ければならなし、。周知のとおり,企業における業績管理システムは,単一のも のではなく複合的なものと考えられる。組織的にも,それぞれの権限と責任に 応Uた管理単位が階層を形成して設定され,上位単位の目標達成の手段として 下位単位の目標が位置づけられる。 業績管理は,各管理責任単位の目標に照らして業績を測定・評価し, 目標を 達成するために管理活動を実施することである。それは,まず第一次的には, 当該管理責任単位の活動内容を端的に表現する業績目標にもとづく測定・評価 を意味する。しかし,同時に,上位単位あるいは経営組織全体の目標の観点か らの業績測定・評価も必要となる。 製造企業における原価責任単位についていえば,典型的には,原価標準ある いは標準原価を業績目標として,それと実際原価との原価差異によって業績測 (1) 小林哲夫教授は,複合的な構造をもっ業綴管理、ンステムを前提として,各サブシステム ことに,そこに与えられている権限と支任の範閉内で考えられるその部分の業績をその サブシステム自体の立場から測定することを部分業績の独立的測定と呼び,一方,各部分 の活動がより包括的なシステムのなかで,いかなる意味を持っかを明らかにすることを 総合的測定と呼び,両者の測定内容,会計構造の相違を詳細に検討されており,本稿もこ れに負うところが大きい。小林哲夫著ClJ。-108- 第58巻 第4号 756 定・評価を行うとし、う原価能率の面からの業績目標達成度による業績管理が実 施される。この場合の業績目標は,当然ながら,当該原価責任単位の権限と責 任を表現すべきものである。その限りにおいて,原価差異分析過程lで算出され る原価差異が,管理者による管理の必要性を示すシグナルとなり, さらに業績 評価の手段ともなりうるのである。 筆者は,これまで業績評価と原価差異分析との関係や,報告された原価差異 の重要性の判断について,統計的原価管理モテ罰ルの検討を通じて若干の私見を 展開してきたが,そこでは,インプット管理という観点からの考察が中心で あった。このことは,それが複合的業績管理システムのうちの原価管理システ ムというサブ・システムとして,第一次的には独立した業績システムと考える うえでは当然、のことではある。しかし,ある一定の権限を有する原価責任単位 においては, とくに原価差異分析にアウトプット管理思考,より端的には,上 位管理責任単位の観点からの利益管理的な思考を採用した方がよい場合が考え られるのである。 言うまでもなく,会計情報は,原則的には貨幣的評価による価値情報である。 会計情報が現場の管理に用いられるにしても,実際の作業の管理には,会計的 処理がなされる以前の現場の物量的情報が有用となる場合も多いであろう。ま た,とくに
F
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u
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i
o
n
が発達した現代においては,原価管理の内容 も変化しており,技術的な管理の必要性の低減や,技術的過程での会計情報の 相対的な重要性の低下が指摘されるところである。このような状況において は,会計は,自に見える現場の過程の情報ではなく,自に見えない部分の情報, すなわち,原価・利益数値への影響を測定し,現場の管理情報をサポートする ことに,より重点が移行することになろう。 本稿では,複数の代替可能なインプット原価財の選択権限をもっ原価責任単 (2) 製造部門における業績評価の意義・内容およびそれと原価差異分析との関係について は,拙稿(9Jにおいて若干の私見を展開したので,参照されたし、。 (3) 拙稿(8Jを参照されたい。 (4) 生産プロセスの変化と,その原価計算システムへの影響については,宮本匡章稿C5Jに 詳しく紹介されている。757 生産関数の導入による原価差異分析へのアウトプット管理思考の展開 -109-位における原価差異分析過程に, 生産関数を明示的に導入したインプット管理 の観点からの差異分析をもとにして, これにアウトプット管理的思考展開を加 えてみる。それによって, 原価差異の影響の程度をアウトプット利益管理的観 点から測定し,様々な状況のもとでのその意義を検討してみたい。 Tこだ, 原価管理システムと利益管理システムとは,密接に関係しつつも,基 本的には両者は独立した概念・システムであることの明確な認識はしなければ ならない。 したがって,本稿での展開は, いずれ実施されるところの, 当該原 価責任単位を包摂する利益責任単位における利益管理の観点からの業績測定に 先立って,原価管理システムの運用上, アウトプット管理思考を導入しようと するものであることを最初に明記しておきたいと思う。 II 原価責任単位の責任構造と原価標準の内容 原価管理を効果的に実施するための前提として,責任会計の基礎となる適切 な管理責任単位の設定が不可欠である。後の議論の前提を押さえておく意味で, まず,小林哲夫教授による原価責任単位の類型および原価差異分析の出発点と なるそれぞれの原価標準の内容についての研究を援用したい。 すなわち, 当該単位の権限内容にしたがって, タイプ
1
の原価責任単位とし て,個々の活動に関して直接的に生ずる特定の種類の原価を, その活動の単位 ごとに原価の価格あるいは数量的プアクターのいずれかについて管理する原価 責任単位が考えられる。 この場合は,個々の活動ごとに管理がなされ,複数の 原価財が消費されるときであっても,基本的には原価種類ごとに管理される。 しT
こカ:って, 原価標準は,特定の原価財の給付単位当たりの数量, あるいはそ れに標準価格を乗じて計算される給付単位当たりの標準原価として設定され る。 このタイプでは,生産方法等の条件の変更の権限は考えられなし、。原価管 理の要点は,特定の給付単位ごとに, 必要な特定の原価の最小化となる。 タイプ2
の原価責任単位は,特定の原価種類の管理を問題にするが,活動の 個々の単位ごとにのみ管理を行うのではなく, 一定期間でその原価の発生に関 連する全体の活動に対してその原価財の消費量または購入価格についての管理-110- 第58巻 第4号 758 が問題にされるものである。このタイプのもとでは,特定の原価財についての 期間的なコシトロールが行われる。したがって,原価標準は,特定の原価財に ついての期間的な消費数量ないしそれに標準価格を乗じて計算された期間的な 金額となる。すなわち,より具体的には,予算というかたちで一定期間の活動 水準に対して,当該原価財の消費がいくらになるかを示すことになる。 これらに対して,タイプ3の原価責任単位は,いくつかの原価種類に対して 包括的な権限と責任をもっ原価責任単位である。ここでは,特定の原価種類で はなく,少なくとも
2
種類以上の原価の原価額全体に対してその管理責任が追 求される。短期的な原価財の数量的代替可能性をもとにして,それらの組合せ の選択権限の存在を前提とするのである。したがって,このタイプ3の原価標 準は,複数の原価財についての包括的な原価標準のかたちをとり,代替的な原 価財の数量的組合せのなかで,一定の生産物数量に対して最小の原価をもたら すものとなる。 以上の分類を前提としたうえで,本稿での考察の対象をタイプ3の原価責任 単位に限定したいのであるが,それは,それぞれの原価差異分析の形態,生産 関数の考慮との関係,アウトプット管理思考の適用可能性からの理由によるも のである。この点を次節において今少し詳細に述べておきたし、。 III 生産関数と原価差異分析 原価責任単位のインプット原価財の効率的かつ有効的消費を促進する目的 で,原価差異の認識が行われる。とやの時点!で原価差異の認識が行われるかによっ て,インプット法とアウトプット法が区別される。両者は,実際のアウトプッ ト量の確定を明示的に扱うかどうかの相違があるが,いずれもインプットとア ウトプットとの関係の明確な規定がなされなければならなし、。このインプット とアウトプットとの数量的な技術的関係を数学的に表現したものが生産関数に 他ならない。 生産関数が特定できる場合には,一定のアウトプットが産出されたときの, (5) 小林哲夫箸C
1 J, 66-82ページ。759 生産関数の導入による原価差異分析へのアウトプット管理思考の展開 -111-インプットの技術的な必要数量が明確になるため,原価差異分析がより精般化 できる。しかし,原価差異分析過程に生産関数を明示的に導入することの意義 は,原価差異算定の前提として実際アウトプット量の確定が先行する必要があ るアウトプット法の適用される原価責任単位において大きい。なぜなら,タイ プ
1
の原価責任単位のように,原価財の投入のつど原価差異が認識できるイン プy ト法が適用可能な場合には,給付単位当たりの原価標準を設定する段階で すでにインプットとアウトプットとの関係が含まれているのであって,アウト プット量の考慮、は事実上なされなし、からである。 一方,アウトプット法の適用される場合でも,タイプ2の原価責任単位では, 原価標準が変動予算のかたちで示され,公式法による変動予算のように現実的 な活動範囲内で給付数量に対してリニアな原価線を想定する限りは,暗黙的に 生産関数もリニアと考えられる。生産関数がリニアであれば,インプット原価 財での非能率の割合はアウトプット量に対する非能率の割合と等しくなる。し たがって,原価差異のアウトプットへの影響は容易に測定できる。 これに対して,タイプ3
の原価責任単位では,アウトプットと複数のインプッ トとの関係,さらに,複数のインプット聞の代替関係が生産関数として示され, とくにそれが非リニアな場合に,原価差異のアウトプットへの影響の程度が異 なる可能性が生じるのであって,大きな意義があると考えられるのである。こ れが考察対象を限定した第lの理由である。 第2
の理由は,各タイプの原価責任単位の権限とアウトプット管理思考の適 用可能性に関連している。タイプ3
では,前述のように,代替的なインプット 原価財の数量的組合せを変化さ!せる権限を有しているのであって,各インプッ トの価格要素を考慮して最小費用結合となる生産計画を策定する責任がある。 この場合,一定のアウトプグト量を基礎にした生産計画の達成が問題となるが, インプットの価格要素関係の変化が生じた場合には,当然,インプット組合せ の変更が要求されることになろう。このような状況においては,当初の生産計 (6 ) この場合には,逆に予算原価線上に実際原価の水準を見い出して,そのときのアウト プy ト水準と実際アウトプyト水準とを比較・測定すればよL。、-112ー 第58巻 第 4号 760 画におけるアウトプグト量が,常に最適量であるとは限らなくなる。したがっ て,原価最小化の考え方は,むしろ,計画アウトプ y ト量の変更までも含めた ものである方が合理的ではないかと考えられるのであり,アウトプット管理思 考がより重要になると思われるのである。
I
V
インプット管理的原価差異分析1
理論基礎 さて,アウトプット管理思考の展開を行うまえに,タイプ3におけるインプッ ト管理的原価差異分析をまず理解しておかなければならない。 企業がある時点で有している生産要素と生産物との関係についての技術的知 識のもとで,実行可能なすべての生産計画の集合を生産可能集合(
p
r
o
d
u
c
t
i
o
n
p
o
s
s
i
b
i
l
i
t
y
s
e
t
)
とし、う。産出ベクトルが与えられたときに,その生産を行うこ とのできる生産要素の投入ベクトルの集合が必要投入量集合(
i
n
p
u
tr
e
q
u
i
r
e
-ment s
e
t
)
といわれる。 実行可能な生産計画のうち,他のどんな生産計画にも優越されない効率的な 生産集合は,一般に生産可能集合の境界として表される。生産関数は,効率 的な計画の集合を関数で表現したものである。議論を単純化するために,以下 では生産物がl種類である場合を想定する。そのとき,異なる生産要素の投入 ベクトルの代替的組合せによって同ーの生産量が得られる場合に,必要投入量 集合のうち,効率的な投入ベクトルの集合は,等量曲線として表される。生産 X2 等量曲線 O X', 第l図761 生産関数の導入による原価差異分析へのアウトプッ「管理思考の展開 -113-要素がXl,X2の
2
要素の場合を考えると,第1
図で示されるように,斜線の部 分が必要投入量集合であり,境界が等量曲線となる。 ぃ必要投入量集合が凸であれば,当然,等量曲線は原点に対して凸となる。等 量曲線上の点における接線の傾きの絶対値は,第1生産要素の 1単位増加に対 して減少できる第2
生産要素の単位数を表す技術的限界代替率を示している。 また,それは当該投入ベクトルにおける両生産要素の限界生産性の比率を意味 している。 そして,このような生産要素が複数あるときに,原価差異分析の出発点たる 目標ポイントは,原価が最小となる生産要素の組合せの決定である。生産要素 が2つの場合には,その価格比率を傾きとする直線で表される等費用線と等量 曲線の接点として最適解が示される。この最適解は, ラグランジュの未定乗数 法を用いて表すことができる。そのときのラグランジュ乗数えは,アウトプッ ト量の変化に伴う目的関数たる最小費用の変化,すなわち限界費用に等しいこ とになる。後述するように,実はこのA
の値が原価差異分析上大きな意味を もってくるのである。2
インプット管理的差異分析の概要 若干冗長となったが,以上の理論基礎にもとづいて,Mensah
やM
a
r
c
i
n
k
o
&P
e
t
r
i
による原価差異分析のポイントを概観しておきたい。Mensah
は,C
o
b
b
-
D
o
u
g
l
a
s
型の生産関数を例にとって,2
生産要素l生産物 の場合で議論を行っている。すなわち,Q
=QA
αBβ ここでQ=
アウトプット水準A=
材料Aの必要数量 B =材料B
の必要数量 Q,α,β =技術的プロセスによって定められる適当な係数および指 数 ( 7) Yaw M..Mensah ( 4), pp 681-691-114ー 第58巻 第4号 762 このとき,費用最小化問題は, Minimize
Z
=
C
1A
+
C
2B
S
u
b
j
e
c
t
t
o
Q
=
QAaBβ F(A, B, A)=
C1A+
C2B-A(QAαBβ-Q) C!, C2はA,Bの費用係数 と表現される。 管理責任者は,生産要素の価格情報にしたがって, 定のアウトプ y ト量を 達成する生産要素組合せのうち費用最小化となる最適インプット・ミックスを ) 噌B ム ( (2) (3) 決定し,実行する責任がある。この最適インプット・ミックスにおける原価数 値と実際インプット・ミックスにおける原価数値との差を原価差異として分析 するのであるが,もし,期中に価格要素関係の変化が生じたときには, それに 対応して管理者はインプット・ミッグスの変更を要求される。その場合には, 事後最適インプット・ミックス値によって事後最適分析がなされうる。本稿で は,紙幅の都合上,インプyト価格の相対的変化がない場合を中心に考察した し、。 材料A 5 -一一一一一等量曲線 S' As 、、
、
、
Bs 材料B 第2
図(Y
M.Mensah
, op. cit, p6
8
3
を修正〉 O763 生産関数の導入による原価差異分析へのアウトプット管理思考の展開 一115-さて,実際の生産条件が与えられたときに,最適インプット・ミッグスにお けるいわゆる標準原価と実際インプ y ト・ミックスにおける実際原価との原価 差異は, (1) インプットの相対的価格が与えられたときのインプットの選択の誤り (2) 生産関数から期待されたよりも多くのインプット量の実際消費 という 2つの原因から生じる。前者を,インプグト選択差異 (inputchoice vari -ance)と呼び,後者七技術的能率差異(technicalefficiency variance)と呼ぶ。 Mensahの示した図で示すと第2図のようになる。 すなわち,
55'
が所与のアウトプット量における等量曲線であり,ライン AsBsは,インプットの価格比率を反映する等費用線である。ポイント PS Mが 最適インプy ト・ミックスを表す点、であり,ポイント PAQが実際インプット消 費数量を表す点で,ポイント PEFは,原点と PAQを結ぶ直線と等量曲線との交 点を表している。このとき,上述の原価差異は次のように算出される。C
i ) 技術的能率差異 PAQにおける原価マイナス PEFにおける原価 Cii) インプット選択差異 PEFにおける原価マイナス PSMにおける原価 ここで ,PEFは,実際に消費されたインプット・ミックスの数量比率を前提と して,技術的非能率が生じなければ当該アウトプット量の産出のために消費さ れたであろうポイントを意味している。それゆえ,Mensahは,PEFにおける原 価と実際原価との差額を技術的能率差異として認識するのである。しかし,こ れについて ,Marcinko&
Petriは, Mensahのモデルは実際消費量ポイントPAQと原点を結ぶ直線が最適ミックスのポイント P SM を通る場合,すなわち, 実際ミ yクスの比率が最適ミグクスの比率に等しくなり ,P EFと
P
吉M が一致す る場合に限つてのみ正しい旨の指摘をする:)lhmhのいう技術的能率差異 は,実際インプット・ミックスの比率を表す等量曲線上のポイントP
EFを基準 にするため,これと PAQとの比較では,両インプy ト生産要素の非能率の割合 (8) David Marcinko and Enrico Petri C 3 J, pp.489-492-116- 第58巻 第4号 764
が常に等しいこととして差異が算出されることになると批判を行うのである。 そこで, Marcinko
&
Petriは,技術的能率差異として,ポイント PAQとPS Mにおける原価の差額を主張する。 実 際 の と こ ろ , 生 産 要 素 の 代 替 性 を 想 定 す る な ら ば , た と え ば , 価 格 の 高 い 生 産 要 素 を 最 適 イ ン プ ッ ト 量 ま で 消 費 し て , あ と は 価 格 の 低 い 方 の 生 産 要 素 だ けを余分に消費することが考えられる。その結果としてインプット・ミ yグス の変化をもたらすことになり,ポイント
P
EFはP
S Mか ら 霜 離 す る こ と に な る が,これをインプット選択差異として把握することは正しいとは思われない。 したがって,管理者に対して最適インプット・ミッグスの投入を妨げるような 何らかの制約が働かないことを前提にすれば, インプット管理のための原価差 異分析においては,技術的能率差異は最適ポイント PSMを標準とする Marcin-ko&
Petriの方が妥当するであろう。 しかし,実は, MensahのP A QとP EFとの差を認識する思考は,本稿の目的 たるアウトプット管理思考にとって大きな意味があると考えられる。(9) この点、について, Marcinko
&
Petriが示した図を用いて説明しておく。ポイント Aが 最適インプyト・ミックス・ポイン J,Bが実際消費最ポイントを表し,それぞれMensah の PSM,PAQに該当する。ポイント Dが PEFである。 Mensahモテソレでは ,B
とDの差 は,生産要素 X のDf
分の浪費と生産要素 Y のB
f
分の浪費として認識されるが,B
が(
X
o
,Y
1)のようなときには,最適ポイント A との関係では X の浪費はゼロであり ,X
に 関する限りインプット選択の差異はなL。 Y の BA分、 (y一日)の浪費があるのみであ ると考える。それゆえ,両生産要素の浪費の割合を等しいと仮定するMensahのそテツレ は,常に妥当しないというのである。 ﹄ Y Z V H A yo~-_._---/--j---~ O X。
Z' X (Marcinko and Petri, op.at, p..490)765 生産関数の導入による原価差異分析へのアウトプット管理思考の展開 -117-A O 第3図
3
アウトプット管理的展開への準備段階 Q2 Q,
B ここで,第3
図のように,所与の実際アウトプット量を表す等量曲線 Qlに加 えて,実際インプット消費量ポイントP
AQを通る等量曲線 Q2を描いてみる。そ して,原点と PSMを結ぶ直線と新しい等量曲線との交点を PSQとする。等量曲 線 Q2は,実際インプット消費量が生産関数どおりに能率的に消費されておれ ば達成できたであろうアウトプット水準における等量曲線である。したがって, ポイントP
SQは,産出できたであろうそのアウトプット量を達成するための最 適インプット・ミックス・ポイントである。 生産関数として ,Cobb-Douglas
型のようなホモセティック(
h
o
m
o
t
h
e
t
i
c
)
な 生産関数を想定するならば,等量曲線は原点、に対して相似的となる。それゆえ, ポイント PAQが必要投入量集合の領域内のどこにあっても,原点から PAQと PEFへのベクトルの比は PSQと PSMとの比に常に等しくなる。 すなわち,五
F戸
AQで示される技術的非能率の程度は,最適インプクト・ミックスにおけ る2
つのアウトプット量Ql
,Q2に対応する投入ベクトルの比で町ある。ここで, 規模に関する収穫不変の法則,つまり,すべての生産要素の投入量を一定倍す れば生産物の産出量も比例倍されるということを満たせば,それはアウトプグ ト量の比率に等しくなる。それゆえ,Mensah
のし、う技術的能率差異は,基本的 には,アウトプァトへの影響の測定,すなわち,能率的であったならば達成で-118ー 第58巻 第4号 766 きたであろうアウトプット量に対する機会原価的な思考を反映するものと解釈 できるのである。 しかし,それはアウトプット管理的な思考としては不十分である。タイプ3 の原価責任単位では,生産関数の観点からの原価能率だけでなく,原価発生の 有効性も併せて考慮しなければならない。この点について次節で検討を行う。 V アウトプy ト管理的原価差異分析
1
アウトプット管理思考の基礎認識 インプット管理の場合,実際原価が標準原価に対してどうであったかという ように,原価差異の影響の程度が標準原価を基準に測定される。それに対して, ここでアウトプット管理的というのは,実際原価をもとにして,実際のアウト プット水準における計算利益額と達成できたであろう,あるいは,達成すべき であったアウトプット水準における計算利益額との差を機会原価として評価 し,標準原価と実際原価との原価差異の影響の程度を利益管理的視点から測定 しようとするものである。 タイプ3
の原価責任単位の管理者が,アウトプット量を利益管理的視点から 独自に決定できない場合でも,少なくとも,より上位の利益責任単位では,当 該原価責任単位の業績を利益管理的側面から総合的に測定・評価しなければな らない。ただ,その場合の業績測定・評価尺度が,原価責任単位管理者が用い る自らの単位内における管理のための業績尺度と一致するとは必ずしも限らな いため,両者は別の業績システムとするのが合理的ではある。しかし,そうで はあっても,原価インプット管理の段階で,当該原価差異が,その差奥数値の インプット管理的認識のうえに,さらにアウトプット利益管理的にし、かなる意 味があるかを認識することは有用であろうと思われる。ただし,実際原価をも とにした機会原価の算定で想定するアウトプット量が実際にも最適アウトプッ ト量であるかどうかは,後述するように状況によって異なるので,その解釈に は十分注意しなければならないし,また,利益管理的といっても,実現収益に もとづく実際の利益差異分析と直裁に結びつけることは想定していないことを767 生産関数の導入による原価差異分析へのアウトプット管理思考の展開 119-A B 第4図 あらかじめ指摘しておきたい。 2 アウトプット管理的差異分析の展開 さて,前節の
Mensah
の場合と同じ状況設定で考えてみる。 第4図は,第 3図に実際インプット消費量ポイント PAQを通る等費用線を書 き加え, さらに,原点と最適インプット・ミックス・ポイント P S Mを結ぶ直線 の延長線とその等費用線との交点を P OQとして ,POQを通る等量曲線 Q3を描 いたものである。 ここでポイントP
OQのもつ意味を明らかにしておく必要があろう。まず,実 際アウトプット量(等量曲線 Qlが示すアウトプット量)における標準インプッ }消費量PSMに対して,実際インプット消費量 PAQが発生した。しかし,生産 関数どおりの能率的な作業が実施されていたとすればP
AQでのインプット消 費量は,等量曲線 Q2が示すアウトプット量を産出できたはずである。したがっ て, Qlと Q2とのアウトプット量の差によって失われた利益は,PAQにおける 「生産関数の観点からの第一次的な機会原価」と呼ぶことができる。 一方,PAQにおいては,PSM におけるよりも原価差異の分だけ多い原価が発生 している。その原価は,PAQを通る等費用線上のどのインプット・ミッグスにお いても問ーである。それゆえ,実際原価が最適インプy ト・ミックスの割合で-120- 第58巻 第4号 768 発生していたとすれば,インプット消費量は
PO
Qで示されるポイントであった はずである。その場合,さらに能率的な作業を仮定すれば,P
OQを通る等量曲線Q
3
が示すアウトプット量が産出できたことになる。すなわち,ポイントP
OQ は,当該実際原価と同じ費用水準で達成可能な最高アウトプット量を産出でき る最適インプy ト量を表すのである。したがって ,Q
l
とQ
3
とのアウトプット 量の差によって失われた利益は,P
AQにおける「原価有効性の観点からの第二次 的な機会原価」と呼ぶことができる。 このように,同じP
AQとP
SMとの原価差異もアウトプット量からいえば, rQlとQ
2Jおよび rQlとQ
3
J
という2
段階の機会原価が識別可能となる。 そのとき ,Q
2
とQ
3
とのアウトプット量の差にもとづく機会原価の部分は,PAQ がP SQと請離する程度に応じて増減するのであって ,P AQがP SQに ー 致 す れ ば十つまり,実際インプット消費量が最適インプァト・ミックスの割合に等し ければ,Q
2
とQ
3
は一致して両機会原価は一致する。それゆえ,アウトプット 管理的差異分析は次のように要約できる。R(Q3)-R(Ql)
=
(
R
(
Q
3
)
-
R
(
Q
2
)
)
+
(
R
(
Q
2
)
-
R
(
Q
l
)
)
ただし ,R
(
Q
.
)
はQ
i
における利益額 上式右辺の第1
項は,実際インプット・ミックスと標準インプット・ミック スの割合が相違したために生じた部分,いわば「インプット・ミックス機会原 価」ともいうべきものである。第2項は,生産関数どおりにアウトプットが産 出されなかったために生じた部分,いわば「歩留機会原価」ともいうべきもの である。しかし,インプット・ミックスの相違は,前述したように,最適イン プット・ミックスの投入を妨げる何らかの外的制約が働いたり,あるいは,管 理者が最適インプット・ミ yクスを無視したりしない限りは,技術的な能率に 依存するものと考えられるので,第l項と第2項との区別は相対的なものとい えるのであり,両項の合計が「技術的能率による機会原価」と考えなければな らない。769 生産関数の導入による原価差異分析へのアウトプット管理思考の展開 -121ー 3 機会原価の測定 ところで,以上のような差異分析で次に問題となるのが,機会原価となる Qi における利益額の測定である。インプット管理的原価差異分析をアウトプット 管理的に見直す意義は,繰り返し述べたように,利益への影響の程度が異なる 可能性があるからである。ここでは,単純化のため,アウトプットの限界収益 は一定と仮定する。その場合,利益を規定するのは製造原価要因のみであるか ら,各アウトプット量における最小費用を表す総費用関数が特定できれば機会 原価の測定が可能となる。周知のとおり,費用関数は生産関数から導き出され る。 さて,例示の
C
o
b
b
-
D
o
u
g
l
a
s
型生産関数の場合,生産要素量にかかる指数α
および3
の値が非常に重要な役割を果たすことに留意しなければならない。 各アウトプット量における最小費用結合となる点,すなわち,各等量曲線と 等費用線との接点は,先のラグランジュ等式(3)を,A, B, Aでそれぞれ偏徴分 してOとおくことによって求められる。結果だけを示すと,A
=
(~o
s
γ
a
!
p
o
(
5
?
i
昔
7¥ C 2 α / ¥Q/
B =/EL.
治 市
r
.
皇戸
7¥C2α/¥Q/
となり,さらに,そのときの総費用Z
をQ
の関数で示せば次のようになる。z
=
C
1A+C
2B
ー (1
¥
品
百
「
p/Cl
31147l
p/Cl
β\ a~pì ハ~
-¥
7
2
J
l
へ
し
C;
OC
iJ
Tへ
し
C;
OC
i
J
J
,,<!a+T ここで, α,β,Q
はすべて定数であるので,定数部分をK
と置換すれば, 総費用関数は,Z =
KoQ詰
7 K 定数 と表すことができる。 したがって,指数α+β=1
のとき,総費用線はリニアとなり,α+β>1
の ときには逓滅的,α
+s<
1
のときには逓増的となる。Mensah
は,α+β=1
と770 第4号 第58巻 122-Pnoでのコスト
ど
2
2
引
い
:
J
J
T
J
同
h
Q1Q2Q37才
i ブ"/ト量 総費用線か逓滅的な場合 収 益 ・ 費 用 O2
2
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三
三
Q
,
総費用線がリニアな場合 収 益 ・ 費 用 O アウト フ 。yト量 第5図 つまり収穫一定の場合 いうC
o
b
b
-D
o
u
g
l
a
s
型生産関数の中でも特殊なケース, アウトプット量を所与として考慮、外 を用いて数値例を示しているのであるが, アウトプット管理的 におくインプット管理的原価差異分析の場合はさておき, とくにこの費用関数の形の区別が重要となる。 差異分析の場合には, 総費用線がリニアもしくは逓減的の場合には,第5
図で示されるように, {イ) その他の 費用関数の観点からは最適アウトプット量が定まらなし、。それゆえ, いわゆる「所与の実際アウトプグト量」が産出される。 制約条件の範囲内で, この場合には,たとえば当該生産物の実際販売可能性に制約があったとしても, 同一費用水準ではアウトプット量が多いほど有利 だと考えられる。仮に,計算上の Q2,Q3が計画アウトプット量を上回ること になっても,実際に原価差異の分の原価財浪費が行われるよりは, 原価管理的には,基本的に, その分アウ トプットとして実現した方が好ましいという考え方である。 この場合,常にR(Q,)<
R(Q2)<
R(Q3)が成立するため,上 述のアウトプット管理的差異分析がそのまま妥当することになろう。 したがって, とくに, リニア 原価発生における非能率の程度が同じであっても, その原価差異の利益への影響が大きいことがわかる。 逓滅的な場合には, な場合より,-123 生産関数の導入による原価差異分析へのアウトブツト管理思考の展開 総 収 益 線 収 益 ・ 費 用 771 アウトプyト量 Q
。
第6図 総費用線が逓増的な場合には,第6図で示されるように,費用関数の観 (ロ) この 点から利益最大となる最適アウトプクト量(これを Qoで表す〉が定まる。 この最適アウトプット量との関係でアウトプット管理を考えなけれ 場合には, ばならなL、。当然のことではあるが,原価差異を管理してアウトプット量を増 この場合には,実際 大させても,逆に利益が減少しては意味がない。つまり, アウトプグト量 Qlおよび,上述の Qz,Q3とQ。との関係によって,ポイント PSMに対する PAQの表すアウトプyト的機会原価の差異分析を算定しなおさ これを次の4
つのケースに分けて検討してみる。 。ケース 1(Ql<
Qz<
Q3<
QoJ これは,最適アウトプット量を産出するだけのインプット消費がなされな なければならない。 さらに原価差異が発生し,実際アウトプグト量が最適量 このときは,常にR(Ql)<
R(Qz)<
R(Q3)<
R(Qo)が成立する。しかし,実際インプグト消費量および実際費用水準では, R(Qo)の獲得は不可能であるため,機会原価はR(Q3)-R(Ql)となり,上述 に満たないケースである。 かった場合であり, の差異分析が妥当する。-124- 第58巻 第4号 772
o
ケ ー ス2(Ql<
Q2<
Qo<
Q3J こ の 場 合 に は,R(Ql)<
R(Q2)<
R(Qo)>
R(Q3)となる。 R(Q2)と R(Q3)の大小関係は場合によって異なる。実際インプット消費量では Q2し か産出できないが,少なくとも同ーの費用水準では Qoの産出が可能であっ たと考えられるので,機会原価としては ,R(Qo)-R(Ql)が発生する。 。ケース 3[Ql<
Qo<
Q2<
Q3J この場合には,R(Ql)<
R(Qo)>
R(Q2)>
R(Q3)となる。実際インプッ ト量の枠内で Q。の産出が可能であったと考えられるので,ケース2
と同様 の分析がなされる。O
ケ ー ス 4(Qo ~玉 Ql<
Q2<
Q3J この場合,R(Qo)孟R(Qd>R(Q2)>
R(Q3)となる。したがって,少な くとも,原価差異に対するアウトプット管理的機会原価は発生しない。R(Qo)=
R(Ql)すなわち,いわゆる実際の「所与のアウトプット量」が最適のとき には,原価差異額がそのまま利益減少額として利益、への影響が測定で、きる。 それゆえ,アウトプット管理的差異分析は意味をもたず,インプット管理的 原価差異分析だけが意味をもっ。なお,Qoく Qlの場合には,原価差異の発 生自体を原因とするアウトプット機会原価は発生しないが,実際アウトプッ ト量が最適量を上回るために,利益管理的には,機会原価R(Qo)-R(Ql)が 認識されることに留意しなければならない。4
若干の補足 以上,アウトプット管理的原価差異分析の思考を示した。インプット生産要 素の相対的価格変化が期中に生じた場合には,第7図で示されるように,等費 用線の傾きが変化する。それに伴って,最適インプット・ミックス・ポイント が移動する。この事後最適ポイントをP
Sレで表すと,管理者が価格変化の情報 を得て即時に適応、可能な状況を前提にすれば,PAQ と PS~ におけるインプット 消費量の差をカレント・プライスで評価したものがインプグト原価差異(技術 的能率差異〉として認識される。また,カレント・プライスにもとづく PS~ で773 生産関数の導入による原価差異分析へのアウトプyト管理思考の展開 -125 A PAQ
•
1ヌヘ、で?
B の原価と事前のプライスにもとづくP
SMでの原価との差額が,事後最適値が事 前最適値からシフトしたことによる原価差異部分を示すことになる。 アウトプット管理的差異分析についても,ポイントP
Sゐにもとづいて,新し い等費用線の傾きを用いて,上述した同様の分析が可能となる。ただ,インプッ ト生産要素の相対的価格変化があったときはもちろんのことであるが,両生産 要素が同比率で価格変化があり等費用線の傾きの変化がない場合でも,何らか の価格変化があれば,当然に当初の費用水準とは異なる結果となるため,当初 の生産計画の実施に対して予算上の制約が働く可能性も生じる。また,費用関 数が逓増的な場合には,最適アウトプット量が変化する可能性が生じるので, 場合によっては生産計画の変更が必要となるであろう。したがって,アウトプッ ト管理的には, これらの点の考慮をしなければならないことを指摘しておきた し、。V
I
結 び 原価責任単位における原価差異の影響の程度は,標準原価を尺度とする原価 能率の面だけでなく,利益に対する原価有効性の面からも測定されるべきであ る。 〈手 本稿では,原価責任単位のタイプ区分を前提にして, とくにインプットとア-126- 第58巻 第4号 774 ウトプットとの関係が差異分析過程で重要となるタイプ
3
,つまり,複数の代 替可能な原価財の数量的組合せに対する包括的な権限を有する原価責任単位に 考察の対象を限定し,そこで実施される生産関数を基礎とする原価差異分析を アウトプ y ト管理的にとらえる差異分析の展開を試みた。そこでは,原価差異 から認識できる仮定アウトプット量における利益額の差から算定する機会原価 によってその影響を測定した。 ただ, ここでの機会原価は,あくまでも当該原価責任単位内における内的な 機会原価である点を明記しておかなければならない。すなわち,当該原価差異 によって失われた資源は,その原価責任単位外での利用機会はないものと仮定 し,さらに内部でも生産物の製造以外には利用されないことを前提としている。 本稿での考察は,必ずしも厳密な意味での利益管理を意図したものではない。 しかし,たとえば,業績評価との関連でいえば,一定の生産計画にもとづいて 設定された製造費用予算額の達成が業績評価基準となるような場合には,原価 責任単位管理者はインプット実際原価額を重視することが考えられよう。その 結果,アウトプット量に対して影響を与え,利益の減少をもたらす可能性が生 じる。また,ある利益責任単位の下に,原価発生における非能率の程度が同様 ないくつかの原価責任単位があって,管理上どこに重点をおくかで,それらを ランクづけする必要がある場合などは,原価差異の重要性をインプット標準原 価以外の観点から評価することも重要となる。そのような状況において, での分析が 1つの有用な情報を提供するものと考えられるのである。 参 考 文 献 C1J 小林哲夫著『業綴管理原価計算』 同文舘, 1974年。 い ν、
-'
-C2J 小林哲夫稿「予算統制の機能についてJW国民経済雑誌』 第152巻第3号, 1985年 9 月。C 3 J David Marcinko and Enrico Petri,“Use of the Production Function in CaJculation of Standard Cost Variances - An Extention," the Aaounting Revzew, July 1984, pp 488-495.
。
C 4 J Yaw M. Mensah,“A Dynamic Approach to the Evaluation of Input-Variable Cost
775 生産関数の導入による原価差異分析へのアウトプット管理思考の展開 -127ー