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ドイツ連邦共和国統合時点における刑事訴訟法の実体

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(1)

田 和 俊 輔 (1991年3月16日受理) はじめに

1.検

事 と警察の間における捜査の事務配分 はいかにあるべ きか

2.予

審が廃止 されたことに依 って捜査主体が どう変わったか 3.刑事警察が捜査の現実で比重 を増すのに反 'ヒ 例 して,刑 事ノペ、権の保護に欠けることはないか

4.刑

事ノペ、権 の保護 と当事者主義・ 弾劾主義 は両立するか

5.職

権主義・ 糸し問主義 は,金面的に刑事人権の保護 に反するか 6。 西 ドイツの刑事警察の捜査活動のための新立法の傾向 むすび は じ皮汀こ 現在 の ドイツ連邦共和国刑事訴訟法StrafprozeSordnung(以 下

StPOと

略称 す る

)と

裁半J所構 成法Gerichtsverfassullgsgesetz(以 下

GVGと

略称 する)の 中で

,検

事Staatsanwalt,Staatsanwalt‐

schaft(以 下

StAと

略称する)が捜査手続 Ermittlungsverfahrenに おいて捜査機関 として占める法 律上 の地位 は,「捜査の主体」Herr des Ermittlungsverfahrenで ある。 これ と

,事

実上 の捜査機関 であるところの「刑事警察」Kriminalpolizei(フ ランスや我が国の「司法警察」police judiciaireに

相当す る)との権 限の配分 と強制力の行使が もた らす角逐 と調整 の現状 を報告す る。更 にそれに関連

する立法 と学説の方向を検討する。既 に1978年 4月14日のテロ防止法 Antiterrorismusgesetzを 受 け た刑事訴訟法改Iユ去Gesetz zur Anderung der Strafprozttordnullg und des Gerichtsverfassungs―

gesetzes(以 下

StPAGと

略称する)が

,StP0163b条

,163c条

に新たに刑事手続関係者 の特定 の為 の全権委任 の制度 を設 け

,更

に1986年の

StPAGで

,StP0163d条

に「 トロール綱 捕 縛 条項」 Schleppnetz‐paragraphenな るものを設 けるに至 っている。これ らはいずれ も,警察捜査 の主体性 と 警察 の予防警察作用の比重 を高めるものであ り,警察の勾引権Vorfuhrungを緊急事態 において認 め る内容 の ものであるだけに

,こ

の行使 に依 つて守 られ るべ き秩序 と

,そ

れに依 つて蒙 る刑事人権上 の被害・ 得失の均衡 と調整 を

,

ドイツ法 にい う公益の代表者であ り

,法

の番人で もある検事 はどう

(2)

34 田 俊 輔 扱 うのか。 また この様 にして収集 された証拠 の吟味 と評価 は何人が行 うのか。 この点 に於 いて1975 年 に廃止 されたかつての予審制度 における予審判事 Voruntersuchungsrichterが どう関わ っていた のか

,あ

るいはこれ と判事の職権主義 との関係 はどうであったのか

,更

,母

法国であるところの フランスの予審半Jttjuge d'instructionの 職権主 義 は

,現

在 の司法民主化 の要素で もある弾劾主義 Anklageprinzipと どのように均衡 をとってい るのかの諸点 について模索 し,かつ西 ドイツにおける 「検事 と警察 の関係改正案。

L(1978年 )が

国会で否決 された原因 と背景 を検証す ることを通 して, わが国の検事制度 の在 り方を再検討す ることが当論考の目的である。

1.検

事 と警察の間における捜査の事務配分 はいかにあるべ きか。

(1)西

ドイツにおける検事 と刑事警察の捜査上 の問題。 西 ドイ ツ刑事訴 訟 法 は捜査 の主体 を検 事 で あ る として い る (StP0163条)。 また

,刑

事 警 察 Kriminalpolizeiは 行政警察 Verwaltungpolizeiに 対立する概念であるが,「犯罪があると思料 した時 に証拠及び被疑者 を捜査す る

(StP0160,163条

)」機関であるか ら

,フ

ランス及びわが国の司法警察 police judiciaireと 同様であるといえる。但 し

,そ

れ はわが国の第二次大戦後の司法警察 研J事訴訟 法189条

2項

,警

察法

2条

1項中段)や

,合

衆 国のい くつかの州 に見 られ る様 な独立 し

,

しか も第一 次的な (検事 を第二次的 としての

)捜

査機関で はない。西 ドイツ刑事訴訟法 は原則的に

,検

事 を国 家訴追

,起

訴独 占(私人訴追 Pr

atklage,起

訴強制手続 Klageerzwingulagsverfahrenを 併せ持 っ ているが)の主体 としてお り,その公訴Publikklageについては法定主義 Legalitatprinzip(StP0152 条

)を

原則 とす る。起訴便宜主義Opportunitatsprinzip(StP0 153,374,376条

)は

例外 として認 められ るに過 ぎない。 それな らば検事 は

,主

観的被疑事実の全ての起訴 をすればよい と言 えそうであるが

,そ

うはいか な い。西 ド イ ツ 刑 訴 法 は

,予

Voruntersuchungの

廃 止9)に 見 ら れ る 様 に,糸

L問

主 義 Inquisitionprinzip131を ,証拠裁判主義・自由心証主義141を骨子 とする弾劾主義 Accusationsprinzip,0 それ も原告 と被告 を証拠法上対等な訴訟主体 とす る当事者主義― に可能な限 り近付 けようとしてい るか らである。 そこには当然「疑わ しきは罰せず」の法理が働 くか ら

,客

観的に公判 の維持が不可 能な公訴 は提起すべ きではない。 それに加 え

,更

に西 ドイツ検事 の立場 を苦 し くしている法理 は, 「無意味な公訴 を提訴す るな」と言っているに等 しい「公益 の代表者性」(わが国の検察庁法第四条 にい う公益 の代表者性 は

,単

に国家代表原告 として

,法

秩序 を破壊 した者 に対 して国の科罰権 を請 求す るという意味であ り

,抽

象的・ 逆説的にはそう言 えるとい うだけであるか ら

,一

方的 に原告性 に徹 す るだけで よい

)で

ある。

(2)法

律上 は捜査 の主体が検事であ り

,事

実上 は捜査の主体が刑事警察官であることの調整。

(3)

西 ドイツ刑訴法 は明文 を以 て

,検

事 に「被疑者 Beschuldigteの 帰責証拠 だけでな く

,被

疑者の免 責証拠 をも捜査すべ し」(StP0160(2),296(2)条 )と命 じている(さ らには「被告人 の利益のための上

訴 もせ よ」と命 じている)。 この意味か らも

,西

ドイツ検事 は当事者性 に徹す る事 はで きない。 ロク

シンClaus Roxin,ゲ セル Karl Heinz GOsselら が,「西 ドイツの検事 は当事者 にあらず(0」 と定義

するのはこのためである。 西 ドイツ検事 に課せ られた この責務が

,我

が国刑訴法の理想 の一つで もある「真実の発見」 につ なが ると言って もよいであろう。西 ドイツ刑訴法 は

,

これ を条文 において「検事 は公訴 を提起する ため必要な一切 の捜査 をし

,一

切 の機関か ら捜査 に関す る情報 の提供 を受 け

,自

ら捜査 しあるいは (刑事

)警

察官 をして捜査 させ ることがで きる。」

(StP0161,163条

)と 規定す るが

,裁

判所構成法

(GVG)152条

,検

事の補佐官 Hllfsbeamteと しての警察官 について規定 し

,

この警察官の適格 性,範囲および任用条件 は各州

Landの

法律 に依つて規定 している。しかし,ロクシンやゲッツ

Volkmar

GOtzの

説明に依れば,検事 の補佐官でない行政警察 Verwaltungspolizeiや 保安警察Schutzpolizei

,そ

の職務執行 中に摘発 した事件が刑事事件 になるわ けであるか ら

,そ

の時点か ら刑事警察官 と しての職務 を執 ること

,ま

た検事 の補佐官たる警察官が一般 の警察官 に捜査 の補佐 を求めることが できるため

,こ

れ らも間接的 に検事の「補佐官」であ り得 る0と され る。つ ま り

,警

察全体が捜査機 関 としての検事 の補佐機関であることの実質 は変わ らない とい う見解である。法文 の上か らもこれ は首肯で きる。即 ち

,検

事 の警察 に対す る捜査指揮権 の他 に

,警

察 は (検事 の指揮 を待たず

)捜

査 する権利 と義務 を持つが

,

これ はあ くまで も捜査の着手権 であつて

,わ

が国の様 な一次的捜査権で はな く

,警

察が独立捜査機関 として認 め られたわ けで はない。警察 は着手事件 を遅滞 な く検事 に送 付する事 を義務付 けられ (StP0163条

),捜

査の終結権 は検事 のみにある。

これは比較的 とこ見 ると

,フ

ランス刑訴Code de prOcOdure pё

nale(C.PP,)の

体系 に類似 してい る。すなわち同法 は

,西

ドイツよりも一層厳格であって

,公

訴 の追行 と予審 の章下 に「司法警察J

“police iudiCiairざ'なる項 を設 け

,司

法警察 は

,上

訴法院 Cour d'appel検 事長prOcureur gёnOralの 監督 の下 に

,共

和国検事 PrOcureur de la Rё publique(わが国の地方裁判所 にあたる大審裁判所 grande instance検 事局parquetの長一検事正一である。この下 に検事代理prOcureur stlbstitute,

検事補prOcureur adiointが いるが,いわゆる検事局一体 の原則で行動す るか ら,集合的には`検事″

ministёre publicである

)の

指揮 を受 けることを定 める

(CP.P.12,13条

)。 更 にこの指揮下で捜査

に従事するもの として司法警察官officier de police judiciaire及 びこれを補助する司法警察吏 agent

de police judiciaireを規定 し(15,20条

),更

にこれ を補助す るもの として

,補

助司法警察吏 agent

de police judiciaire adiointを 規定 している (21条)。

これ らは

,わ

が国旧刑訴 (大正11年刑訴

)の

規定 とほぼ同型である。 ●

)捜

査の主体が法律上

,検

事であることの利害得失。

(4)

36 E日 前述 のごとく

,西

ドイツにおいて捜査 の主体が検事であることは法律上規定 されているが

,1978

年「警察が検事 の『補佐官』とされ ることに『劣等感』がある0」 として

,警

察 を統 治 している内務 省か ら

,検

事 の属す る司法省 に対 して クレームがつけられ

,両

者 の関係 の改正が国会で審議 された が

,結

,改

正案 は否決 された。 改正案の内容 は

,検

事 を公訴官 に終始 させ

,捜

査か ら手 を引かせ ることによって警察 を捜査 の専 従機関 とし

,検

事 の警察 に対す る指揮権 を奪い

,警

察 の検事 に対す る捜査報告義務 をな くする

,と

い うものであった。 国会が改正案 を否決 した理 由は,「この言い分 を通せ ば

,捜

査 の体系だけでな く

,刑

事訴訟法の法 秩序 そのものの根幹 を覆す。もとい うものであった。但 し

,警

察の不満 を調整す るために法令上の手 直 しが行われ

,警

察 の捜査 に自主性 と独立性 を持たす傾 向にある。

2.予

審が廃止 されたことに依 って捜査主体が どう変わ ったか。 西 ドイツの予審 Gerichtliche Voruntersuchngは 1975年に廃止 された。 予審 は

,事

件の法律捜査が困難 な事件 において

,検

事が起訴 した後

,予

審判事 に予審 を請求す る ことに依 って開始す るものであったが (フランスのように重罪 の全てについて予審 を必要 とす るの とは意味が違 う

),公

判手続 畔J決手続Hauptverfahren)前 に

,司

法機関である予審判事が捜査行 為 を行 う点 に糸し間の名残があ り

,弾

劾主義に反す るとい うことで廃止 された。予審 の行われている 間の捜査主体 は予審判事であ り

,従

って警察 はその指揮 を受 けて捜査 をした。予審 の廃止 は

,当

然, 捜査 の主体が検事 のみになった ことを意味するのであるが

,現

実 は捜査 の事実上 の比重が警察 にか かって きたため

,公

判維持が不可能な事件 をスク リーエ ングす る事がで きず

,警

察が送検 した事件 は

,起

訴法定主義の建前か ら全て起訴す ることになると

,無

意味 に公判 を求 めて起訴 を追行 しなけ ればな らな くなるため

,軽

微事件や冤罪事件の被告人 に無用な苦痛 を忍ばせ ることになる。 この事態 は刑事人権保護 に反す るので,検事 に起訴 の取捨選択 の幅 を持 たせ ることが必要 とな り, 結果的に検事 に予審判事 の任務 をさせ ることになる。 しか も西 ドイツの検事 は公益 の代表者であつ て非当事者であるか ら

,一

,捜

査 の主体者である必要 は増すわけである。ペータースKarI Peters が,「捜査の比重が警察 に傾 いている時に予審が廃止 され ることは不幸である(lω」とす るのはこのた めである。 輔

(5)

3.刑

事警察が捜査の現実で比重 を増すのに反比例 して

,刑

事人権の保護 に欠 けることはないか。 予審判事 に代わ るべ き検事が捜査か ら撤退す ることは

,証

拠の吟味の機会がな くなる点 と

.公

益 の代表者 として被疑者 に有利 な証拠 を捜査で きな くなることを意味す る。つ まり

,被

疑者が不当な 捜査 の犠牲 とな らないための後見的役割 を西 ドイツの検事が負 っているとす ると

,検

事 の捜査か ら の撤退 は

,刑

事人権 の保護 に欠 ける結果 を生ず ることになる。

4.刑

事人権の保護 と当事者主義・ 弾劾主義は両立するか。 これ らは

,両

立するかに見 えて両立 し得 ない と考 えられ る。但 し

,カ

ロリナ法典時代 の当事者主 義 と弾劾主義

,英

米法系 におけるそれ らのように

,訴

追す る者 もされ る者 も対等の私人である「私 人訴追」 の場合 には

,相

互 に証拠提 出が可能な訴訟構造 を持 ち

,よ

って攻撃防御 において武器が対 等であるため両立する。しか し

,裁

判所主導の審問主義 Instruktionsgrundsatzの 下で

,国

家権力 を 代表す る検事 とその下で捜査 に従事す る警察 に対 し

,被

告・ 被疑者の地位 は対等で はないため

,刑

事人権 の保護 と当事者主義 。弾劾主義が両立す るとはいえない。

5.職

権主義・ 糸し問主義 は

,全

面的に刑事人権の保護 に反するか。 これ は

, 4に

挙 げた理 由に依 って

,必

ず しも「保護」 に反す るとはいえない。

6.西

ドイツの刑事警察の捜査活動のための新立法の傾向。 全警察官 を検事 の補佐官 とす ることをやめて,連邦刑事警察Bundeskttminalamtそ の他 に,補佐 官の範囲 を限定 した。D。 また

,被

疑者逮捕後

,一

日間に限ってではあるが

,刑

事警察 に尋間権 を認 めた。但 し

,一

日の満了前 に捜査判事Ermittlungsrichter(捜 査行為 の法律 チェックをす る官で

,検

事の補助者 の一人であ り

,通

,管

轄 内の区裁判所半Jtt Amtsrichterが 送て られ る

)の

チェックに 依 り

,身

柄勾留

Haftの

要否 を決定す る必要がある。捜査着手後

,遅

滞 なき送検義務が比較的寛やか に運用 されている。(19 このような現実 をおさえて

,新

立法 に

,通

信管制 。傍受

aO,交

通遮断。

0,

トロール式捕縛等●0, 即時強制的な強制処分権がテロ防止法(10と共 に強化 されている。 新立法 に依 つて刑事警察の強制処分権が強化 された ことで

,収

集 された証拠 の証明力 と直接主義

(6)

38 田

との関係 はどのように処理 され るか。

西 ドイツ刑訴法で は

,強

制処分権 において

,検

事 と警察 との間に

,未

だかな りの格差が設 けられ ている。特 に検事 に認 められている強制処分権 として

,被

疑者の確認・特定Identitatsfeststellung

(EGGVG―

Einfunrungsgesetz zum Gerichtsverfassungsgesetz― 裁判所構成法施行法23条以下,

StP098条 2項 2号

ana10g),被疑者 の召喚

Ladung(StP0162,169条

,EGGVG23条

以下

),被

疑者 の勾引Vorfuhrulag(StP0162,169条

,133条 2項

,135条

),被

疑者 の召喚なしの即時勾引Sofortige

vOrfuhrung ohne vorhedge Ladung(StP0162, 169条 ), 証人不出頭 に対 する制裁Zwallgsmittel

Zeugen(StP0162,169,304条 ,163a条 3項 3号

,EGGVG23条

以下),証言拒否 に対 す る制裁gegen Zeugnisverweigerung(StP0162,169条),被疑者 その他の住居の捜査Durchsuchung beim Verdach_ tigen,bei anderen Personen(EGGVG23条以下),差し押え郵便物の内容物取 り出 し

Beschlagnahme

(Postausgenommen)(StP0162,169,304条),差

し押 え郵便物 の開封

Offen(stPo162,169,304

),死

体解音」

Leichenoffnung(EGGVG23条

以下

),墳

墓発掘

Leichen aus Grabung(StP087条

4項

,1条,2条

2頂

,2-6条

ana10g),被 疑者の身体捜検KOrperhch Untersuchullg des Beschul‐

digten(StP081a条 2項 1号,98条 2項

2-6号

ana10g),被

疑者 以外 の者 に対 す る身体 捜検

(EGGVG23条

以下)などが挙 げ られ る。 ここにおいて

,警

察 は野放 しではな く

,検

事 のコン トロー ル下 にあ り

,検

事 はまた

,裁

判官のコン トロール下 にある。 さらには一般的な被疑者 の確認(特定) は一般警察官 も行 うことがで きるが

,特

定 目的で監督的 に行 う確認Identitatsfeststellung an dazu eingettchteten Kontrollstllenは捜査判事・ 検事

StAと

検事 の補佐官

deren Hittbeamte(緊

急時

に限 るが)にのみ認 められていて

,補

佐官以外 の一般警察官sonstige PoHzeiに は被疑者尋間のため の権限 はない。担 当捜査判事の もとへの勾引 Vorfuhrul.gは 捜査判事 の専権であ り

(StP0162,169

,133条 2項 ,135条 ),被

疑者尋間のための召喚権 は検事 のみにあ り(StP0163 a条

3項 2号 ,133

2項 ,135条

)警

察官 にはない。 この様 に

,StP0163 a条 4項 1号

,163b条

1項 1号,163C条

を見 る限 りで は

,警

察の自主的捜査 権が拡大 されているようで

,実

は検事 と捜査判事の捜査権が これを制御 しているのである。 また

,強

制捜査 の結果収集 された証明力 は

,検

事 に依 るもの と警察 に依 るもの との間に格差があ る。例 えば

,調

書PrOtOkollに ついて は

,裁

判官の調書作成PrOtOkollierung richterlichen Unter―

suChungshandlungで は

,StP0168条

に依 って「裁半」官が審理Untersuchungs‐

handlungす

る時 は常 に調書 を作成すべ きもの」 とされてお り

,こ

れ は審理 の場所

,日

,関

与者 の氏名が記載 され

,審

理手続が適法であったか否か を確定す るために朗読 されなければな らない(StP0168 a条

2項

)。 そ のためには,「公判手続で規定 された形式の遵守 は,この調書のみに依 って証明 され得 る。この裁判 官調書の形式 (正当性)Formlichkeitに 関わ る調書の内容 を争 うには

,調

書が偽造であった ことを 立証する以外にない」(StP0274条)とされている。また,検事の調書作成PrOtOkollierung staatsanwalt― 俊

(7)

schaffliehen Untersuchungshandlungに ついては,「検事の審理の結果 は書類 にしなければならない」 (StP0168条

1項

)と され

,更

に「被疑者(被告

),証

,鑑

定人 の尋間について は

,刑

事訴訟法160 条

,169d条

に従 つて,捜査に著 しい延 引をもたらさない限 り調書が作成 されなければならない」(StP0168 芍条

2項 )と

されている。 しか もStP0168 C条

1, 2項

に依 って,「被疑者 (被告

)が

判・検事 の尋問 を受 ける時には

,必

ず 弁護士の臨席

Anwesenheitを

要す る」とされ

,武

器対等原則が うたわれているか ら

,そ

の証明力 は それだけで も信憑性があるといえよう。 この ことについてシェーファー Gerhard Schaferは

,直

接 主義 Unmittelbarkeit,口 頭主義 の原則か らいって も

,裁

判官調書 の証明が主位であ り

,検

事調書が 無制約で はないにしろこれに次 ぎ,,Das staatsan、valtschaftliche Protokoll soll(muβ alSO nicht

unbedient) nach den fur das richterhche Protokon geltenden Vorschriften aufgenommen

verden,“

,警

察調書polizeiliche PrOtokollの証明力 は極 めて弱い(10と述べている。

その根拠 は

,警

察調書が刑訴法254条にい う

,裁

判官作成 の もので はないか らである(同条 による と,自白Gestandllisの朗読 と

,異

議 のあった場合 の判事調書 に記載 された被告の釈明 は

,自

白につ いての証拠調 は朗読 されてよい ことになっているか ら

,公

判廷で裁判官のテス トを受 け得 るとい う わけである)。 だか ら,「捜査機関 に対する被告人 の文書 に依 る釈明 は

,朗

読禁止 Verlesungsverbot を義務付 けられて はいない(1972年

99号

事件,ハム高等裁判所交通法令集

OLG Hamm VRS 1972,

99,警

察 に取調べ を委ね られた被害者 の弁解)。 つ ま り

,そ

れ らは参考資料であつて

,シ

ェーファー が紹介 しているように,「捜査機関の調書 は

,捜

査手続 中に

,尋

問の代わ りになされた刑訴法

163a

条1・

2項

に依 る文書が問題 になった場合 も

,刑

訴法254条の裁判官調書の場合 と全 く同様 に

,そ

の 内容の正当性 に対 す る不信や疑念があって

,そ

の内容 の釈明 を釈明者が現実 にしようとしているに もかかわ らず

,そ

れ を許 さないのは不当だ と考 えられ る時 にだけ朗読が認 め られ る」(1971年

,デ

ュ ッセル ドルフ高等裁判所交通刑事事件436号法令集

OLG DusseldOrf vRS1971,436)の

である。 ま た

,彼

は,「警察調書 には

,法

令上の規定Formschriftが全 くない」 として,「尋間の経過 と調書の 作成 は

,裁

判官が尋問す るときだけ適用 されていて

,被

疑者(被告)・証人への法律上の教示 も書面 でしなければな らないが

,警

察官 は

,交

通刑事事件 における被疑者・ 証人 の供述 を単なる概念上 の 標語Stichwort化 して受 け取 ってお り

,後

,清

書す るときに書 き換 えている」といい,「この手続 が重大 な誤 りの源 とな り得 ることは明 らかだ(19」 としている。 以上 のまとめ と批判的考察 (特にフランス法 との比較 を軸 にして

)か

ら「武器対等」の原則 は訴 訟手続 を弾劾化 し

,更

に当事者主義 を強化,力日味す るためには不可決であることが導 き出され る。 既述 したように

,現

在の西 ドイツ刑訴法 は

,検

事 を以て

,原

告 としての弾劾官 としている以上(予 審半J事を残 して

,公

半」手続 の開始前 に捜査権 をこれに与 えているフランスが糸し問主義・職権主義 の カテゴ リーに入 るとす ると

,

この点で両者 は相違す ることになるが

),そ

の手続 は「訴訟構造」を持

(8)

40 田

っているか ら

,明

らかに弾劾主義であ り

,そ

れを民主化す る為 には

,選

事者主義が要請 され るのは 自然である。しか し,前述 の如 く,西 ドイツの検事 は,公益 の代表者であ り,「法 の番人(2の」,,wachter des Gesetzes“とされ るか ら

,捜

,公

判手続Hauptverfahrenを 通 じて「非当事者」でなければな らない。このため西 ドイツの訴訟手続 は

,訴

訟構造 は持 ちなが らも当事者主義ではない。この点が,

英米法 と根本的 に違 うところである。強いて言 えば

,検

事 の職権主義であるか ら

,ロ

クシンが言 う ように,「西 ドイツ現行法 は

,大

陸法手続の職権主義 を踏 まえつつ

,合

衆国法の当事者主義 を折衷 し た無理 な訴訟形態。lLと言 えるのである。 その意味で

,た

とえ予審が廃止 されていなかった として も

,西

ドイツの検事 は

,そ

の精神 において,フ ランスの予審判事juge d'instructionに 近い運命 にあ

った と思われ る。すなわち,フランス は

,起

訴actiOn publiqueと 予審instructionとを分離 したが,

重罪crimeについて は勿論,軽罪dёlitについて も,起訴 を受 けた予審半J事は予審 を開始 しなければ

な らず

,現

行犯 については現場 に赴 き

,司

法警察官で はない ものの

,司

法警察 の作用 としての司法 警察官 を指揮 し

,共

和 国検事 の到着 を待つのであ り

,検

事 の請求 に依 って予審 を開始 した後 は

,自

ら捜査手続 の主催者 としての司法警察官を指揮す る。 またその他

,ち

ょうどわが国の「付審半J手続」 や西 ドイツの「起訴強制手続」,,Klageerzwingungsverfahren“ の様 に,「私訴」“action civile"を 受 けて検事の公訴権 を駆動 させ

,ま

た自ら告訴 を受理 し

,予

審 を通 じて実体調査 を司法チェックす る のである。 フランスの検事が「社会利益」,,intOrOt de sociOtO“ の名 において

,民

衆訴追の共同者 と なるため(西ドイツの様 に

,公

益 の代表者 として「法 の番人」性 を帯びるの とは違 う

),フ

ランスの 検事 は

,西

ドイツの検事 のような非当事者で はな く

,純

然 たる当事者 に徹 す る。 西 ドイツの検事が「公益 の代表者」であ り「法の番人」であるとい う点か ら

,わ

が国で はえて し て,「公益」は「国の利益」であ り

,国

を法人 として個人 と対等 に扱 う限 り

,国

法 を犯 した被疑者や 被告人 を国に対立す る者 として

,国

の代表者 たる検事が原告者 当事者性 に徹 してその弾劾 に専念す るのは当然である

,

とい う論が導 き出されがちである。わが国の検察庁法 にい う

,検

察官 は「公益 の代表者」とい う表現 は何 ら当事者性 に矛盾す るもので はな く,「当事者性 を追求 し続 けることこそ 公益 なのだ」との所論 もそこか ら生 まれ るし

,さ

らに,「検察官 は同時 に被告人 (被疑者

)の

保護者 で もあるとい う主張があるが

,わ

が国で この精神 を僅かなが ら実現 しているのは非常上告だけであ るか ら

,こ

のような主張 は二重人格的

,欺

慢的な糸L問主義である」とい う見解 もそ こか ら生 まれ る。 しか し

,西

ドイツ検事 の公益代表者性 と非当事者性 ない し法の番人性 の論拠 は

,西

ドイツ憲法第一 条 に在 り

,そ

の精神 を正 し く理解す るならば

,先

の論 の誤 りは明 らかである。即 ち同条一項 には, 「人間の尊厳 は不可侵 である。これを尊重 し

,か

つ保護す ることはすべての国家権力の義務 である」 とうたわれ

,1956年

改正の同条

3項

には,「以下の基本権 は直接 に適用 され る法 として

,立

,執

行 権及び裁判 を拘束す る」 とあるか ら

,検

事 は刑事訴追 に当たって も

,法

の番人 として法の適正 な適 用 を監視す ることを通 じて

,被

告人 を含むすべての訴訟関係人 の尊厳 と基本権 を尊重 し保護す るこ 輔

(9)

とを義務づ けられてお り

,そ

の意味で非当事者であ り

,そ

して被告人 を含む国民 の尊厳 と基本権 の 保全 こそ公益の実体であるか ら

,検

事 は正 に公益 の代表者 として この義務 を果すのである。 これに対 し

,フ

ランスの検事が「社会利益の名 において」公訴 を行 うとい う表現 は

,検

事が民衆 訴追の共同者であることを示す ものであ り,その意味で検事が訴訟当事者であることと矛盾 しない。 フランス人権宣言第

2条

は,「あ らゆる政治的団結の目的 は

,人

の消滅す ることのない自然権 を保全 することである。 これ らの権利 は

,自

,所

有権

,安

全及び圧制への抵抗である」とうたってお り, その趣 旨は西 ドイツ憲法

1条

と同 じであるにもかかわ らず

,西

ドイツ とフランス とで検察官の性格 にこのような違いが生ず るのは

,次

の理 由による。即 ち,フ ランス刑訴法 は伝統的 に

,弾

劾 の主体 三 原告

=当

事者 自身に対 し

,弾

劾 を基礎づ ける証拠だけでな く

,被

告人 に有利 な証拠 をも

,公

平 に収 集す ることを求 めるのは

,人

情 として極 めて困難であるとい う考 えに立 って

,弾

劾 と

,証

拠の公平 な捜索 。収集 とを明確 に区別 し

,各

機能 をそれぞれ別個独立の機関たる検事 と予審裁判所 (予審半J 事 と上訴法院重罪公訴部

)と

に分掌 させ るとい う構造 を とって きた。両機関が協力 してその機能 を 補充 し合 うことによ り

,初

めて

,弾

劾 と分益保全 との二機能が矛盾な く共同 して働 きうる

,

とす る のである。 これによ り検察官 は

,被

告人有罪の予断に基づいて偏 った証拠収集 を行 い被告人 を冤罪 に追い込む危険 を免れ

,予

審判事 も

,自

己の抱いた嫌疑 に基づいて予審 を開始す ることはで きず, 検事 の請求 に基づいて しか捜査 を行 いえないので

,お

のずか ら公平な捜査 と付公判可否判定 を行 う ことがで きる。 これに対 して西 ドイツ刑訴法 は

,予

春 を廃止 してその機能の多 くを検事 に移 したか ら

,検

事 は, フランスで検事 と予審裁判官 とに分属 していた二つの機能 を併せ持つ機関 とな り

,弾

劾 の主体 たる と同時 に被告人のためにも捜査 を行 う非当事者であるという

,二

重性格 を持つに至 ったのである。 論者が

,西

ドイツの検事 はフランスの予審判事 に近 い とす るのはこのためで ある。すなわち

,西

ド イツの検事 は

,弾

劾 と免責 (被疑者 のための

)両

面の証拠収集 を行 うとい う二面性 を持 ち

,被

告の ための後見的役割 を持つ。 この役割 は裁判官の判断者性 とはおのずか ら異なるものである。 西 ドイツ刑訴法 は

,検

事 の非当事者的後見性 だけで は

,な

,訴

訟構造上

,被

疑者

,被

告の検事 に対す る「劣位」 を払拭す るには不十分であることを認識 し

,被

,被

疑者が検事 。裁判官 に調べ られ る時 には

,必

ず弁護士 Verteidigerに 付 き添われ る権利 を

,明

文で定 めている。正 に,当事者主 義 に基づ く「武器対等の原則」の法文化である。 それにもかかわ らず

,刑

事警察官の取 り調べ を受 ける時 には

,こ

の保障 を法文上欠いている。既述 の通 り

,起

訴前の勾留 は

,実

体調査 の段階であ り, 合法・ 非合法 を聞わず警察 に

,そ

の比重が傾いているとき

,こ

の段階で違法 (違法 と言 えないまで も真実性 を歪 曲するような

)捜

査が行われていて は

,西

ドイツ刑訴 の真実発見の目的 は大 き く阻害 され るわけである。 この点 につ きゲセル は,「警察 には

,被

疑者の在席強制権がな く

,検

事 には

,罰

則 を伴 う強制権が

(10)

42

ある」ので

,警

察 の取調 を受 ける時 には弁護士帯同権 は不必要なのだ と説明す るが

,論

者 は

,警

察 の捜査 した証拠価値が検 。判事 の捜査 した証拠 の証拠価値 に比べて

,著

し く低 い ことがその理由で あると考 える。すなわち

,西

ドイツで は

,公

半」調書の証明力 は絶大であ り

,他

の手段 に依 る反証 を 許 さず

,裁

判官の検証 も同様 だが

,検

事 の捜査 した証拠 の証明力 はこれに次 ぎ

,警

察官のそれ は「下 書」,,Niederschrift“ として扱われ

,僅

かに

,被

告人 の「 自己矛盾」,,Self contradicto“の供述の補強

証拠 として使用で きるにとどまり

,西

ドイツ刑訴法 における「厳格 な証明」 のための必須条件であ るところの法廷 における「朗読」 その ものが認 め られていないか らである。 以上 の意味 に於いて,西ドイツ刑訴法 においては,公半J手続が裁判官主導の審問主義Instruktions‐ grundsatzに立 ってお り,こ の点で も

,英

米法のい う意味 における当事者主義 は排斥 されている。そ して これは

,被

疑者 (被告の身分 になってか らも検事 の捜査 は可能である

)に

対す る違法捜査が, 仮 に実体捜査 の段階で行われた として も

,法

廷で真実が発見 されることを意味 し

,そ

の意味で は, 公半J手続 もまた

,広

義 の捜査である。 むすび 結論 一般 の警察官に対 し捜査上認 め られ る強制処分権 は次の通 りになる。 まず

,StP0163条

1項

1号

,163C条

に依 り

,一

般的な身元確認 (特定)の権 限 をもつが

,こ

れ は 捜査判事

,検

事 と競合 している。次 にStP0163 a条

4項

に依 り

,被

疑者 を尋間のために召換する権 限をもつが

,検

事 は同 じ権限をStP0163 a条

1項 1号

,133条に依 って,ま た捜査判事 は

StP0133条

に依 って持つ。 この ことが

,警

察官 は

,召

喚 に応 じない者 に制裁 を加 えて出頭 を強制で きない根拠 になっている。 さらに

,163a条

4項 1号,136条

に依 って尋問権が認 められているが

,捜

査判事 は 136条

1頂

,検

事 は

163a条 1項 1号,136条 1項

,同

じ権限を競合的に持 っている。 要す るに

,一

般警察官の捜査上 の強制権 は

,刑

事事件 に対す る自主的な着手権 にす ぎない ことが わかる。 前記 トロール網捕縛 は

,前

163b条

やその前提 となる127条

1, 2項

を根拠 にしていないので, 警察 の捜査権が

,非

常事態の場合 のみ とはいえ拡大 し過 ぎる危険がない とはいえないが

,そ

れを右 に述べたように

,捜

査判事 と検事 の (管理的

)捜

査権が コン トロール しているといえよう。 この捜査 のコン トロール性 に着 目す る時

,更

に次 のような点 に言及 しなければな らない。それ は, 西 ドイツ汗」訴 の特色であるところの起訴主義Anklagegrundsatzと ,「疑わ しきは被告人 の利益 に」,,

In dtlbio pro reo“原則 とに結び付 くことは既述の通 りだが

,弾

劾主義の要求であるところの直接主

義 Grundsatz der Unmittelbarkeitと 審間主義

hstruktionsmaximeと

にもまた結び付 くことであ

(11)

る。詳論すれば

,起

訴主義 は

,弾

劾主義 の第一 の要素であ り

,捜

査者 と判決者が同一人である とこ ろの糸L間 と

,決

定的かつ直接的 に相違す る。私人 に依 る当事者主義が この要求の終極形式であるか のように思われ るがそうで はない。古 くカロ リナ法典 にも

,こ

の形式以外 に弾劾官 を以て原告 とす る形式が存在 し

,む

しろこの方が原則的であった とい う沿車がある。 これに照 らせば

,現

在 の西 ド イツの検事 は

,十

分 に起訴主義 の要求 を満たす もの と言 える。担 し

,前

述 のように

,西

ドイツの検 事 は当事者性 を持 たず

,被

疑者 のためにもまた真実 を発見す る捜査官であ り

,そ

の点で は裁判官的 な職権主義 を行使す る一種 の糸L間官的存在であるといえる。 これに対 し,「直接主義」と「審間主義」は

,真

実発見のために

,裁

判官の職権主義が強 く残 って いることを意味す る。当事者主義が

,訴

追す る者 (弾劾者

)と

訴追 され る者 (被弾劾者

)を

対等の 上俵 の上で闘わす ことに意義 あ りとするのであれば

,職

権主義 は糸し問主義 と結び付いて

,裁

く者 と 裁かれ る者の関係 を作 り出す ものであ り

,訴

訟 の民主化 に反す るように もみえる。 しか し

,裁

く者 が真実の発見 に専念 し

,か

つ裁 く者 と裁かれ る者 との間に

,起

訴主義 の代表者 といえる検事 (弾劾 官

)が

介入 し

,

この官が法の守護者 として

,真

実発見 のために非当事者 に徹 して

,警

察捜査 を司法 チェックす るな らば

,そ

れによって検事 の公益 の代表者性が生 きることになる。更 に

,西

ドイツの 裁判官 も

,ま

,捜

査官的性格 も残 し

,告

訴 の受理権 を持 ち

,真

実 を探求す るために職権 をもって 真実 を調査 し

,こ

れ を裁判 の基礎 とする建 て前 を採 っているか ら,「審問主義」を通 していることに なる。 これ は当然

,当

事者主義サイ ドか らは,「『予断フ「除』の原則 に反す る。 また『起訴状一本主 義』の理想 に背馳す る。り」 とい う批判 を浴びるところだが

,こ

のような批判 は前述の とお り

,訴

追 する者 (広義で は警察 を含 めて

)と

され る者 は

,法

律知識・ 権力下 の行動力 において格差があるこ と

,お

よび逮捕・ 勾引をす る者 とされる者 の心理状態の相違

,殊

に後者 のコンプレックスを無視 し ている。 この点で

,西

ドイツの判・検事 の管理捜査 は

,い

わば裁 く者

,訴

追する者のサイ ドか らの 刑事人権保護 であ り

,実

体的真実発見 の理 にもかなうものである。この意味で裁判所 の審問主義 は, 最広義 の「捜査」 と言って もよいであろう。 以上 を要約す ると

,西

ドイツの刑事訴訟法 は

,捜

査手続 における主宰者 を検事 とし

,そ

の手足 と いう意味で刑事警察 を実体捜査機関 としている。そうすることに依 って

,実

体捜査中に捜査機関の 違法 。越権 (職権乱用罪 を構成す るか否かを問わず

)行

為 に依 って刑事人権が侵害 された り

,違

法 に収集 された証拠が冤罪 を生 んだ りす ることがないように

,検

事 に捜査 をチェックさせている (こ の点

,現

行 フランスの予審半J事が

,捜

査チェックと司法 チェックの両機能 を果たすの と違 って

,西

ドイツで は,司法捜査 についてのチェックを捜査半J事に委ねている所 に相違がある。ロクシンの「検 事 は手のない頭¢0」

,ゲ

セルの「捜査のフィルター

,司

令所90」 説 はこの ことを言 っている )。 西 ド イツで は

,更

に検事が右の目的 を達成す るために

,職

務上 の矛盾 を生 じないように

,検

事 に当事者 性 (原告性

)を

認 めていない。 また

,西

ドイツは

,起

訴主義であるため

,当

然訴訟構造 を持 つ。 こ

(12)

44 田 の ことは

,検

事が弾劾官であることを意味 し

,カ

ロ リナ法典以来

,

ドイツ法 に見 られた糸し問主義 は 払拭 されてい るはずである。しか し

,狭

義 の弾劾主義 の当事者主義 は

,承

継法以来廃止 されている。 ここに,「糸L間」 と誤解 され る犠牲 を払 つて,「弾劾主義 は採 つて も当事者主義 は採 らない

Jと

い う 西 ドイツ法 の矛盾 を超克

,止

揚 した姿がある。 そして検事 を非当事者 とす るために

,必

然的 に「公 益の代表者概念」 に落 ち着 くのである。そして これが

,プ

ロイセ ン以来 サ ビイエ ィ

,ウ

ーデン等 に提唱 され

,

ドイツ法 の伝統 となった「法 の番人(29」 概念 にも帰着す るのである。 また西 ドイツ法 は

,刑

事人権 を確保するために

,公

判手続 に期待 している面が大 きい。すなわち, 右 のようにして捜査 を遂 げ

,そ

れを完結 した検事が公訴 を提起 して係属 した公半Jであつて も

,裁

判 所及び裁判官 は

,こ

れに拘束 されることな く

,職

権 に依 る証拠調べに依 つて真実 を糾明す る。 また その際の決 め手 になる調書 の証明力が

,原

則 として

,公

判調書が裁判所 (裁判官

)の

検証調書 に限 って認 め られ

,検

事調書が これに次 ぎ

,警

察調書 は

,法

律上 の根拠 を持たず

,自

己矛盾の供述が あ った時や

,そ

れ以外 に証明の決 め手がない場合 に例外的 に参考 とされ るに留 まるか ら

,違

法捜査 の 結果が冤罪判決 を生む危険性 は極 めて少ない。 この様 に

,裁

判所 (裁判官)に職権主義 を認 めて も, それ は西 ドイツ刑訴が真実発見のために審間主義 を採 り入れて

,当

事者主義の長所 を加味 している 点か ら

,決

して「糸L問

Jと

して非難 され るべ きもので はな く

,最

終 の「捜査」 は

,真

実発見 のため に公半」廷で行われ ることを意味 しているのである。すなわち

,現

行西 ドイツ刑事訴訟法の「疑 わ し きは

,被

告人 の利益 に従 う」原則 を審聞主義 と一致 させているのである。 江

(1)Karl Heinz Gδttel,もber die stellung der Staatsanwaltschaft im rechtsstaatlichen Strafverfahren und uber ihr Verhaltnis zur Poli3ei,9,September 1980,127 Jahrgang,R.V.Deckers Veriag G Schenck,Harnburg,S 326

(21 永 く,西ドイツで行われて きた非公開の職権 主義糸し問的な予審Voruntersuchungは 1975年 1月7日の刑事訴訟 法 で廃止 され た。

(3)Claux Roxin,StrafprozeBrecht,SS 43‐44,S 126,C H Beck,Munchen 1984

(4) Claux Roxin,StrafprozeBrecht,SS,45‐ 46,C H Beck,Minchen 1985

(5) Claux Roxin,Strafverfahrensrecht,S.39,S 64,C H Beck,A/1unchen Ju■ 1985

(6) Karl Hein2 Gδ ssel,jberlegungen iber die Ste■ung der Staatsanwaltschaft im rechtsstaatlichen Strafver‐

fahren und uber ihr Verhaltnis 2ur Polizet, S 337. I(arl Peters, StrafprozeS Ein Lehrbuch, S23 Die Staatsanlvaltschaft,S 162,C F WI■ ller JuristiScher Verlag Heidelberg 1985

(7)Claus Roxin,op‐ cit,Strafverfahrensrecht,19 Auflage,S 16 Volkmar Gёtz,Allgemeines Polizei‐ und Ordnungsrecht 2 Auflage 1973,S.130,Vandenhoeck&Ruprecht

(8) Kar1 1■ einz Gё ssel,も ber die stellung der Staatsal■ waltchaft i■l rechtsstaathchen Strafverfahren und uber 輔

(13)

ihr Verhaltnis zur Polzei,9,September,1980,127 」ahrgang,R V Deckers Verlag G.Schenck,Hamburg, Heideiberg,S 326

(9)Karl Heinτ G6ssel,もberlegungen tiber die Stellung der Staatsanwaltschaft im rechtsstaatlichen Strafver‐

fahren und iber ihr Verhaltenis zur POlizei,9,September,1980,127 」ahrgang,R V Deckers Verlag G Schenck,IIamburg,IIeidelberg,S 326

1101 KarI Peters, op‐ cit,, Strafverfahrensrecht, S.533, "I)ie Beseitigung ware verhangnisv011, wenn sie unter

Ubergehung der Staatsanwaltschaft zum allgemeinen poHzellichen Ermittlungsverfahren fdhren、 viirde“ llll Claus Roxin,op‐cit Strafverfahrensrecht,19,Auflage,S 51

1121 Claus Roxin,op‐cit Strafverfahrensrecht,19,Auflage,S 200, Karl Peters,StrafprozeB 4,op‐cit,S 340 StP0 161

1131 Ciaus Roxin,op‐ cit,StrafprOzeBrecht,10 Auflage,S.14, Strafverfahrensrecht,19 Auflage,S.51,StPO 163(2)

10 StP0 100a,b 10 StP0 11l I(1) 10 StP0 163b,c tO StP0 163b,c

l10 Gerhard Schafer,Die Praxis des Strafverfahrens,Kohlhanarner,Stuttgart,Berln,K61n,Mainz,1976,S 160 1101 Gerhard Schafer,Op‐ cit,Die Parxis des Strafverfahrens,S 160

1201 Karl Heinz GOssel, op,cit, もberlegungen dber die Ste■ ung der StaatsanⅥ′altschaft im rechtsstaatlichen

Strafverfahren und uber ihr verhaltnis 3ur PoHzei,Coltdammer 8s Archiv fur Strafrecht,S.334 1211 Claus Roxin,Strafverfahrensrecht 19 Auflage WIunchen 1985,S 89

1221 Nagler,der Parteibegriff in Zivil‐ und Strafverfahren,Rechtsgang l,S 127

Kern,Strafverfahrensrecht,2 Aufl,1951,S 59‐ 60

Sauer,Grundlagen des ProzeBrechts,1929,S 302‐ 311 1231 Claus ROxin,op‐cit,Strafverfahrensrecht 19,Auflage S,51

90 Karl Heinz Gossel,も berlegungen dber die Ste■ ung der Staatsanwattschaft irn rechtsstaadichen Strafverfa‐ hren und tiber ihrヽrerhaltnis zur Polizei,9,September 1980,S 334.

(14)

輔 俊

Uber die wahren Schlage der strafproze3ordnung im Zeitpunkt der Vereinigung der Bundesrepublk Deutsch‐ land

ZusanlIYlenfassung

Die gultige gesetzHche Stellungnahme,die der StaatsanM・ alt in der StrafprozeBordnung und dem Gerichtsver

fassungsgesetz der Bundesrepublik Deutschland fdr ein ErHlittlungsOrgan halt,ist der IIerr im ErHlittlungsver

fahren.Der ZⅥ reck des Verfassers stellt die Verteilung von der Kompetenz des Staatsanwaltes und derienigen

der I(riminalpolizei(po■ ce judiciatre dans France et」apon)dar und zwar die Reibung,die die Durchfuhrung der KOmpetenz beider Parteien hervorbringt,und durch den Ausgleich dieser Reibungen Dariber hinaus sOnten hier

die Gesetzgebung und Theorie um die obengenannten Kompetenzkonflikte ins Studium vorgenommen werden. Das neuc Geset7 2ur Anderung der StrafprozeBordnung sowie des Gerichtsverfattungsgesetzes, das dem Antiterrorismus・ Geset2 vonl 14 April 1978 bereits entsprach,hat eine neue Regelung,in der die I(ompetenz fur Beteiligte am StrafprozeB bestimmt werden soHte,in die StP0 163b und 163c formuliert AuBerdem hat das

Gesetz zur Anderung des Strafprozesses im Jahre 1986 die "Schleppnetz‐ Paragraphen“ in die StP0 163d hineingesetzt All diese Gesetze sollen die Subiektivitat der P01izeier■ littlung und auch die Einwirkung der praventiven POHzei hёher bringen, Wenn sie tatsachlich die Vorfuhrung der Pohzei inl Notstand m6glich

machen,sO fdhrt es prOblematisch dazu,、 vie der Staatsanwalt,der der Vertreter des offentlichen Wohls und

zugleich derヽ ヽ「achteF deS Gesetzes auf dem bundesdeutschen Gesetz ist,Ausgleiche und Regelungen zM′ ischen der Ordnung einerseits,die von der verstarkten POlizei sichergestellt Ⅵrird,und geschadigten verlusten an den

kriHュinellen WIenschenrechte andererseits, die von der PoHzei unglicklicherMreise erltten、 verden, behandein

kann, Auch fdhrt es dazu, lvie der VOruntersuchungsrichter, der schon 1975 abgeschafft wOrden ist, mit der

ersten Frageste■ung zu tun gehabt hatte.Auch wie dasヽ「erhaltnis der Voruntersuchungsrichter zum PrOfes‐ sionalismus des Richters war Und auch wie sich harmonisch der Professionalsmus der franzё sischen'luge d' instruction“,der als ein Mutterland fur Deutschland iコ n Gebiet des StrafprozeSrechtes eine Ro■ e gespielt hat, in dem Anklageprinzip,das einen Bestandteil der gegen覇 /artigen demokratisierten Rechtspflege abgab,befindet

lndem der Verfasser diese Fragenserie herausfOrdert und die Grunde und deren Hintergrunde, 都rarum der "Vorentwurf des Gesetttes ums Verhaltnis z、 vischen StaatsanMraltschaft und POlizei“ 1978 im Bundestag zuriick‐

gewiesen lvurde, theoretisch verfolgt, hat er es hier dOch darauf abgesehen, zu iberprdfen, wie richtig das

iapaniSche Staatsan都 /altswesen aussehen s01l und kann

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