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四国におけるカシワ(ブナ科)の分布について-香川大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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(1)

四国におけるカシワ(ブナ科)の分布について

藤 原 滝 雄

〒760 高松市番町1丁目8番15号 高松苗教育委員会

Distribution Pattern of Quercus dentata(Fagaceae)in Shikoku

Takio FuJIWARA,TbhamatsuCity Boar・d qf’Education,BaTWho,

亡血pの ところが,和気(私信)により,「国分寺町 伽藍山にカシワが数本生えている」との話があ り更に,片本(私信)により,「小豆島の大角 鼻にカシワらしき植物が分布している」との話 があった。また,環境庁の特定植物群落調査報 告書の中で,「愛媛県の浄和地島に分布してい る」と報告されている(環境庁,1980)。 そこで,筆者は,非常に興味を持ったので, 1985∼1988年にかけて,現地調査をした。そ の結果を報告する。 分布・調査地点とその環境 分布・調査地点は,次の3地点である(図2)。 1け 香川県小豆郡内海町,大角鼻 地質は,サヌキ岩貿アンザソ岩とその風化土 からなり,土の表面ほ,落ち葉が多く,ミミズ らしきものが耕したようになっている。土粒ほ 非常に.細かく,乾燥すると灰白色,ぬれると火 mゐαmα古5U 76β, は じ め に カシワ Quer・eα8d飢拍£αは,海岸や火山地 などの日当りのよい山野に群生する落葉高木ま たほ小木で,ときに人家に植えられている。そ の菓は,かしわ餅に利用され,親しまれている。 分布について−は,各種図鑑等で,千島,北海

道,本州,四国,九州,朝鮮半島,中国大陸,

台湾に分布すると記載されている。我が国では, 奥山(1970)は,図1のように沖縄を除く,は ぼ全国に分布し,四国には分布がないと図に・表 している。 図2.分布・調査地点.囲中の1;小豆島 の大角鼻,2;国分寺の伽藍山,3; 津和地島の氏神鼻. 図1.奥山(1970)によるカシワの分布. −49−

(2)

山灰のように黒色となる。 半島の先端に燈台(1913年に建設,ユ966年 ごろまでは,その職員2家族が住んでいたらし い)があるが,そこから波打ち際までほ,前述 の岩石が露出し,急崖となる。 カシワが生育しているところほ,株高15∼ 140m,南西一両一南東の斜面で,風当り,日 当りは良く,たえず潮風にさらされている。 ここは,さぬき百景となり,展望が良いため 燈台付近にほ,人の出入りが多い。(図3) 2.香川県綾歌郡国分寺町方燈,伽藍山 伽藍山(標高2ユ説0汀】)は,ビュート状地形 (おむすび型の山)で,カコウ岩の上にサヌキ 岩質アンザソ岩がかぶさり,中腹より上ほ,ア ソザソ岩の大きさ固岩層でおおわれている。 カシワは,標高190∼200m,南西の斜面, 風当り,日当りほ良く,乾燥し,山道から5∼ 6m入ったところに生育している。 山ろくに万燈寺,山腹に薬師堂,山頂に八王 龍王のほこらがあり,年中参拝者がある。(囲4) 3.愛媛県温泉郡中島町津和地島,氏神鼻 津和地島は,人口約200人の漁業の町で, 愛媛県中部の瀬戸内海斎灘にあり,県の一つの 端にある。氏神鼻は,この島の北に位置し,標 高24mのごく小さい半島で,カコウ岩から成り 立っている。 カシワほ、その半島の東と西の2か所で,海面 から8∼10mの盤上に生育し,日当りほ中ぐら いであるが風当りは強く,乾燥している。ここ も小豆島と同じように,たえず潮風にさらされ ている。 地元の人の話では,今から約80年前までは, 氏神社が祭られ,人々の出入があったが現在は それも無く,全く放置されており,自然の状態 が保たれている。(図5) 諏査結果と考察 l.小豆島・大角鼻のカシワ 大角鼻を有する半島一一帯は,主として,アベ マキ・クヌギから構成され,海岸特有のマツ・ ウバメガシほほとんど無い。 樹高5∼12m,胸高直径5∼20cmのカシワほ, アベマキ・クヌギと混じって,燈台付近から北 へ扇状に約14000m2にわたって,数多く分布し ていることを判明した。 カシワの種子ほ多く落下するが,意外に幼樹 ほ少ない。 囲3.大角鼻のカシワ・ 囲4.伽藍山(矢印はカシワの生育地を示す). 図5.氏神鼻(矢印ほカシワの生育地を示す).

(3)

林床ほ,ケネザサを主とし,ネズミモチ・ヤ プニッケなどから成り立っている。 本県ほもちろん四国において,これはどの広 範囲に,数多くのカシワが自然状態で分布して いるのほ他に例を見ない。四国における最大の 自生地と考えてよく,貴重な存在である。県・ 町の天然記念物に指定し,伐採・立ち入り禁止 等の措置二をして,保全をほかることが望ましい。 そして,いつまでもこの状態を保ちたいもので ある。 植生調査地点とその付近の植物層は,次のと 植 生 調 おりである(図6∼9)。 高木層(8∼12m) アベマキ クヌギ カンワ イタビカズラ 亜高木層(4∼7m) アベマキ カニンワ コナラ ネズミモチ ャプニッケイ カゴノキ トベラ メダケ シロダモ 低木層(1∼3m) ヤプニッケイ ネズミモチ カゴノキ トベラ コマユミ ガマズミ

杏 表

(附卜那花) No.1 凡例名(附帯名)カ・ンワーーアベマキーケネザサ 群落 一 山享:根面 、 図幅 ー‥5万 雷壁 (海抜) 50 111 (カ位) S60W (傾斜) 250 (面椚) 10 ×10 日12 ;ご二‥・・・・・・‥!・・・ミ ‥ ‥∴l:・ 固岩椚・水師卜その他( )(ニい閻)㊥針湿・過洞 (高さII】) (柏被率牒) (胴i汽(l】1) (揮数) (二1一駅)ポ=軒褐森・赤い茹‖ 沼沢・・沖研い高湿牒・非固岩屑 (暗 屑) (優占椰) l帯水層 カ ン ワ m 卓晰苗木脛 アベマキ m 低木層 ネズミモチ 8・−】2 90 20 (Ⅲ現椰数) 6 2 (備 考) 2 7 4・− 7 10 1∼ 3 30 lT γF木屑 ケ ネザサ Ⅴ コ ケ 閻 1987咋 9月 23[1調査者 藤 原 沌 雄 Sl)P ケ ネザサ カトンワ カコ ノキ ャフェ ノケ ナワシログミ マサキ イポタノキ イヌビワ ヤマザクラ フジ コパノガマズミ ヤマコウパン ンロダーモ ハセノキ ノダルミ 十・′・ ﹁ 図6大角鼻の調査地点での植生 ー51−

(4)

︰姐ヤプラン

シワ・イタビカズラ

ヤプニッケイ

アベマキ・イタビカズラ

(5)

2.国分寺・伽藍山のカシワ カシワが生育している付近は,樹高約6m以 下,胸高直径約6cm以下のアベマキ・アラカシ を主とする植生である。その中で,6本のカシ ワ(1本ほ樹高2.5m,胸高直径2cm,他の5 本は全て樹高1m以下,そのうち1本ほ結実) が他の植物と同じように岩と岩の間から生育し ている。ここでは腐葉土が少くなく,年数は経 っていると思われるが成長が悪く,横にほうよ うな樹形をしている。 植生調査地点とその付近の植物層ほ,次のと おりである(図10∼12)。 高木層(7∼11m)欠除 亜高木層(4∼6m) アベマキ アラカシ マルバアオダモ クロマツ カニンワ 低木層(1∼3m) アベマキ アラカシ カシワ ハゼノキ コナラ ヤマコウバシ トベラ ネムノキ アカメガシワ ネズ 草本層(1nl以下) クズ マサキ カマツカ ナワシログミ イボタノキ ヤマコウバシ シロダモ ハゼノキ ノグルミ クサギ アキダミ アカメガシワ ヤプムラサキ 草本層(1m以下) カシワ ケネザサ サルトリイバラ ミツバアケビ ネズミモチ コバノガマズミ ガマズミ ヤブニッケイ カゴノキ シ/ロダモ イボタノキ ナワシログミ トベラ マサキ イヌビワ ヤマザクラ フジ ノガリヤス シュソラン ヤプラン へクソカズラ ナツフジ マルバグミ ヤブコウジュ イタビカズラ ック タチッボスミ レ マルバシャリソバイ ススキ ナガバジャノヒゲ ガマズミ ノダルミ イヌヨモギ へクソカズラ コウヤボウキ シュ ン/ラこ/ ナワシロイチゴ カシワ ススキ トベラ ノガリヤス ネコハキ メド/、ギ テイカカズラ アラカシ ナツハゼ アキダミ コマツナギ ヨモギ イタドリ ノキシノブ 囲8.大角奥の急崖上のカシワ(矢印). カワラマツパ アオツゾラフシ メリケンカルカヤ アキノキリンソウ チョウセソガリヤス マルバハギ 図9.大角奥の植生調査地点のカシワ林. 図10.伽藍山の植生調査地点でのカシワ・ −53−

(6)

ノ アラカシ

アカマツ

万燈寺

(7)

植 生 調 査 表 (相生調杏) 軋2 凡例名(群落名)アベマキーアラカシ群落

曾万 燈

調査地 香川欝亀 綾歌 あ国分寺

(地形)山 頂:尾 根:斜 面:㊤・中・下い凸・凹:谷:平地 (夙当)⑳ 中・弱 (海抜) 190 m (土壌)ポト性・褐森・赤牒巾黄褐森・アント・クライ=擬タライ・(日当)◎ ・11陰・瞼 (方位) S 30W )(土湿)㊨・・適・況 ・固岩屑・水荊 ̄F 沼沢・沖柄・高湿革・ (傾斜) 350 (階 層) (優占種)(高さm)(柵披率%)(胸径cm)(棟数) (面前) 4 × 15 (出現株数) 18 l高木層 5 5 (節 考) アベマキ 4 ∼ 6 70 覇 部闇木屑 m 低木層 アラカツ 1∼3 40 1 5 l†草木層 カ シ ワ 1∼ 20 Y コ ケ 層 1986年 9月 23日 調査者 藤 原 滝 姓 図12伽藍山の調査地点での植生. カシワは,氏神鼻の西斜面に2本,東斜面に

7本(8本は樹高5′〉7m,胸高直径10∼15cm

l本ほ樹高約1m)が前述したように,海面か ら8∼10mの崖上にほぼ横に一列に並ぶように, 自然状態で生育している。 8本とも多くの種子を実らせるが,落下した ところが乾燥していたり,岩場のためにほとん ど発芽することはなく,これ以上増えることは 難かしいと思われる。 植生調査地点とその付近の植物層は,次のと おりである(図13∼16)。 高木層(8∼12m)欠除 3.津和地島・氏神鼻のカシワ

氏神鼻ほ長さ約300m,幅約140mの細長く

小さい半島であり,主としてマルパ■ンヤリンパ イ・トベラ・ヤブツバキ・マサキ・アラカシ● ヤマモモ・イタビカズラ等の常緑樹から成りた っている。上部にほ,イタビカズラの巻きつい たアラカシ・ヤマキモ・カゴノキ林となり,そ の林床には,マルバシャリソバイ・カゴノキの 幼樹,ヤダケ・イタビカズラ・キヅタ ,ヒゲス ゲ・ヤプラソが生育している。 ヤダケは,かっての氏神社に関係するもので あろう。 −55−

(8)

亜高木層(4∼7m) ヒゲスゲ キヅタ ネズミモチ カシワ トベラ アラカシ アラカシ マサキ キジョウラン コナラ ヤマモモ クスドイゲ ススキ マメブタ カェデドコロ イブキ マサキ ャブニッケイ マルバシャリソバイ セトノジギク ネズミモチ カゴノキ ャブツバキ クサスギカズラ アオツゾラフジ イタビカズラ マルパシャリソバイ 低木層(1∼3m) マルバシャリソバイ ヤダケ ヤプツ/ミキ ハゼノキ ネズミモチ カシワ イヌビワ ナワシログミ マルバグミ メダケ マサキ 草本層(1m以下) ヒトッパ ツワブキ ャブラン 植 生 調 お わ り に カシワの分布について,筆者は北海道などの 冬に寒く,雪の少ない地域に分布し,ヤブツバ キクラス域の本県をはじめとする四国にほ分布 するほずほないという認識をもっていた。更に 1978年(昭和43年)からのブナ科植物の調査 においても,カシワの自然状態の分布を確認す

査 表

ヒトッパ群落 (栖生調査) ‰3 凡例名(群滞名) カンワ

調査地 愛媛謁

温泉島 中島習 絆和地島 図幅 1:5万 (夙当)⑳ い 中・・弱 三車重亘二璽憂こ二重二 (土湿)㊨・適湿・過湿 (地形)山 頂:尾 根:斜 而:上・Lト㊦・凸小凹:谷:平地 、 .:・さト=㌧誉∴・J・ハ・.!:、,・.‥ ∴・・;.∴ 沼沢‖沖析‖高湿草・非間岩層・固岩屑い水面下・その他( ) (海抜) 10 m (方位) N60E (傾斜) 600 (階 層) (擾占櫛) (高さけl) (柵被率%) (胸径即) (株数) (節析) 5 × 17 mヱ Ⅰ高木層 (出現株数) 25 打 照職木屑 カ シ ワ 4【− 7 60 16 5 (備 考) 9 m 低木層 ヤ ダケ 1∼ 3 50 1 氏 鼻 11野木層 ヒトγバ 1∼ 60 † コ ケ 屑 1g88年11月Ⅰ3日 調査者 藤 原 沌 雄 SPP ヤダケ マ/レバノヤリンパイ ネスミそチ イ ヌヒワ ヤフツ/ミキ 図13 氏神昇の調査地点での植生

(9)

図14‖ 氏神鼻の嘩生調査地点での階層.

(10)

図15.氏神鼻の植生.Aはカシワ,Bほ

アラカシ,Cはヤマモモの生育地点 を示す. 囲17.カシワの堅果と総局. その植生を明らかにすることができた。 ただ,カシワがそれぞれの地点において,い つごろ,どのような経路をたどって種子が入り 発芽,生育し,現在のような自然状態になった か興味あるところであるが,そのルーツをたど ることは難しい。 最後に,カシワについての情報をご提供いた

だいた香川県立土庄高等学校片本毅氏,香川県

大手前高等(中)学校和気俊郎氏,ご指導いただ いた香川大学教育学部末広喜代一氏に心から謝 意を表する。 文 献 環境庁.1980.日本の重要な植物群落四国版. 大蔵省印刷局. 宮脇昭.(編)1967.原色現代科学大事典3…植 物.学習研究社. 奥山春季.1970.原色日本野外植物図譜.誠文 堂新光社:5, 図16.氏神奥のカシワ・ ることはできなかった。 しかし,今回の調査で,本県で2か所,愛媛 県で1か所カシワが分布していることを確認し,

参照

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