玉 井 利 幸
目 次
Ⅰ.はじめに
Ⅱ.デラウエア会社法におけるエクイティの役割 A.自由の濫用の監視監督 :審査基準による審査 B.法創造 :審査基準の創出
C.
Schnell事件 とその意義Ⅲ.終わ りに
l.は じ め に
2005年 に制定 された新 しい会社法1)で は規制 の緩和が進み2),会社 関係者 に 許容 される 自由が拡大 した。拡大 した 自由のなかには,会社 やその株 主のため に適切 に用い られるだけでな く,濫用的に用 い られ る可能性 のある もの もある。
例 えば,全部取得条項付種類株式3)には,用 いることので きる場面や利用 目的 を限定す る明文の規定 はない。そのため,全部取得条項付種類株式 は,会社再 建 の場面で100%減資のために適切 に用 い られ るか もしれない し,少数株主 を 不公正 な条件 で会社 か ら締 出すために,濫用 的に用 い られるか もしれない。
明文で明示 的 に禁止 されてい ない こ とは全 て許容 されてい るわけで はない
1)平成17年法律 第86号。
2)相棒哲 ・郡谷大輔 「新会社法の解説(1) 会社法制の現代化に伴 う実質改正の概要 と基本的な考え方」商事法務1737号 (2005年)16‑17頁。
3)会社法108条1項7号。
〔95〕
96 商 学 討 究 第59巻 第1号
し,条文の規定に従 ってさえいれば常 に許容 されるわけではないか もしれない。
会社法が許容す る自由には限界があるか もしれない。そ うだ とすると,例 えば, 条文上要求 されている全部取得条項付種類株式の発行や取得の要件 を全て満た
していた として も,濫用的に用い られている場合 は,許容 されるべ きではない 場合が存在するか もしれない。全部取得条項付種類株式の利用の ように,条文 によって許容 される自由の限界が事前 に明示 されていない場合 は,裁判所が事 後的に許容 されるべ きか否かを判断する必要がある。裁判所 は, 自由が許容 さ れるか否かをどの ように判断すべ きか。 自由の限界 は どこにあるべ きか。
この間題 を考 えるには,デラウエア会社法におけるエ クイテ ィの概念 とそれ を用いたデラウエア裁判所の判断が参考 になるか もしれない。デラウエア会社 法では,制定法上明示的に許容 されているか否かが判然 としない場合は もちろ ん,条文上は明示的に許容 されている行為であって も,裁判所がエ クイテ ィの 原則 (equitableprinciple)に基づ き事後的に許容 されるべ きか否かを判断 し, 効力 を否定する場合があるか らである。デラウエア会社法では, 自由が許容 さ れるか否か とい う, 自由の限界 を決する裁判所の判断の基礎 にあるのはエクイ ティである。そのため,本稿では, 自由の許容性の判断 とい う裁判所の役割 を 考 えるための素材 を提供す るために,デラウエア会社法においてエ クイティが 果た している役割 を述べ る。
以下では,デラウエア裁判所がエクイティを用いて, どの ように自由が許容 されるか否かを判断 しているか, 自由の限界 をどの ように示 しているかを考 え ることにす る。その際に,Schnell事件 に特 に注 目す る。 Schnell事件 は,チ ラウエア会社法において一つの転機 となった事件であ り,現在のデラウエア裁 判所で用い られている審査基準の直接的な基礎 を与 えているか らである。
Ⅰ.デ ラ ウ エ ア 会 社 法 に お け る エ ク イ テ ィの 役 割
デ ラ ウエ ア会社 制 定 法 で は 自己抑 制 的 な立 法 ポ リ シー4)が 採 られ て い る た め, 自由の濫 用 の監視 監 督 や法創 造 とい う重 要 な役 割 はデ ラ ウエ ア裁 判所5)に 委 ね られ てい る。 デ ラウエ ア裁判所 は,司法 審査基 準 を創 造 し, そ れ を用 い て 事後 的 に審査 を加 える こ とに よって,自由の濫用 の抑 制 や是正 を行 ってい る6)0 この よ うな役 割 の基礎 にあ るのが エ クイテ ィの原則 で あ る7)。 以下 で は,現 在 用 い られ て い る審査 基 準 の創 出や審査 の方法 に大 きな影響 を与 えたSchnell事 件 に言 及 しなが ら, デ ラウエ ア裁判所 の判 断 にお いてエ クイテ ィの果 た して い
る役 割 を述べ る8)。
4)デラウエア会社法の特徴 と,その会社制定法の立法ポ リシーについては,玉井利 幸 「会社法立法の 日米比較(1) ‑行政主導モデル と司法依存モデル ー」商学討究58 巻1号 (2007年)59‑89頁 を参照。
5)デラウェア州の裁判所 システムの特徴やその歴 史については,玉井利幸 「会社法 立法の 日米比較(2)‑行政主導モデルと司法依存モデル ー」商学討究58巻2 ・3合 併号 (2007年)161‑182頁 を参照。
6)詳 しくは,玉井利幸 「会社法の 自由化 と事後的な制約 ‑デラウエア会社法を中 心 に‑(1x2)(3・完)」一橋法学3巻2号 (2004年)315‑361頁,同3巻3号 (2004年) 307‑347頁,同4巻1号 (2005年)125‑188頁 を参照。
7)以下で述べ るように,デラウエア裁判所がエクイティを用いて監視監督 しなけれ ばならない と考 える自由の濫用は,会社の受認者 (取締役や支配株主)が与 えられ た自由を用いて会社や一般株主の犠牲の もとに自己利益 を追求す るような場合であ る。典型的には,取締役の 自己取引や地位の保身のような利益相反がある場合であ る。 LeoE.Strine,Jr,IfCorporateActio71/sLawful,PresumablyThereAreCir‑ cumsta71CeSinWhichItIsEquitabletoTakeThatAction:TheImplicitCorollary totheRuleofSchnellv.Chris‑Craft,60BUs.LAW.877,883(2005)(「会社法 におけ
るエクイティの役割は,不怠実 (disloyalty)を監督することにある。不忠実 とは, 会社 とその株主の最上の利益以外の 目的のために行われる行為である。不忠実な行 為のほとんどは,個人的な利益 を図るためになされているので, 自己取引や取締役 の選出とい う領域以外では,取締役の行動 を制約するためにエ クイティがで きるこ とはほとんどない」).
8)本稿では,注意義務 についてほ とんど言及 していない。確かに,注意義務違反が 現実 に制約 を課す場合 もあ りうる。Smith事件では取締役の注意義務違反 とされ, 実際 に取締役 に責任が課 された。Smithv.VanGorkom,488A.2d858(Del.1985).
しか し,Smith事件 は非常 に異例 な判断であ り,取締役の利益相反のない場合は経 営判断原則 によって取締役の判断は保護 されるのが通常なので,注意義務違反の主
98 商 学 討 究 第59巻 第1号 A.自由の濫用 の監視 監督 :審査基準 によ る審査
デ ラウエ ア会社制 定法 は,授権法思想 を体現 し,主 にデ フ ォル トルールの提 供 を行 ってい る。私 的 自治 を重視 し,会社 関係者 に大 きな 自由 を与 えてい る。
強行 的 な規 定 は少 な く, 自由か ら生 じる弊害 の抑制や是正 は主 に裁判所 に委 ね られている。裁判所 は,主 に, この役割 をエ クイテ ィの創造物 であ る信 認義務 を用 いて行 ってい る。裁判所 は,信 認義務 を個 々の場面 で具体化 した審査基準 を用 いて取締役9)の行為 を審査 し,取締役 の信 認義務違 反 と取引 の効力や取締 役 の責任 をエ クイテ ィで結 びつ けるこ とに よって,会社 のあ らゆる側面 にエ ク
イテ ィ上の審査 と規制 を及 ぼ してい る。
会社 の行為 の ほ とん どに取締役 が関与 す る。取締役 に信認義務 を課 してお け ば,信 認義務違 反が あ ったか どうか を問 うこ とに よ り,取締役 の行為 を媒介 と して,会社 の ほ とん ど全 ての側 面 に規 制 を及 ぼす こ とが で きる10)。取締役 が 信 認義務 に違反 してい ないか,取締役 の行為 は会社 とその株 主 の最上 の利益 の ために行 われてい るか, とい うエ クイテ ィの概 念 に基づ く一般 的 ・抽象 的 な間
張に基づ く司法審査 によって実体的な制約が課 される可能性は低い。そのため,本 稿では,デラウエア会社法における自由の制約を考える際は,注意義務違反を除い て考えている。
9)正確 には受認者 (fiduciary)というべ きである。信認義務違反の有無を問われる のは取締役だけでない。支配株主がいる場合は支配株主 も信認義務による司法審査 の対象 とな りうる。支配株主は取締役の選任解任 を通 じて取締役会 と会社 をコン ト ロールできるので,取締役会は偵偶 に過 ぎず,取締役に信認義務 を負わせただけで は十分でないか らである。支配株主にも信認義務 を負わせることにより,支配株主 にも規制を及ぼす必要がある。 しか し,支配株主の存在 しない場合 も多 く,多 くの 場合は取締役の義務が問題 となるので,叙述の便宜のため,支配株主を明示的に区 別 して論 じる必要がない場合は,取締役で代表させている。
10)取締役 と会社 ・株主の間の問題 という会社の内部関係だけでな く,会社 と第三者 の契約のような会社の外部関係にも信認義務による審査を及ぼすことがで きる。第 三者 との契約 も取締役が行 うので,その契約を結ぶことが会社 と株主のためになる かどうか という形で判断をすれば,信認義務の審査を会社の外部関係にも及ぼすこ とが可能であるか らである。例えば,合併契約を保護するために対象会社が合併の 相手方 と結ぶ様々な取決め (取引保護条項,dealprotectionprovisions)の有効性 の判断 も,対象会社の取締役の信認義務 を用いて判断されることが多い。取引保諺 条項は会社 と株主の利益 に適 うか,取引保護条項 を取 り決めたことは取締役の信認 義務に反 していないか, という間を用いて判断されるのである。
を発 す るこ とに よって,規制が及 ぼ され る。義務違反が あ る とされれば,取締 役 の行為 や行為 の所産 (例 えば買収 防衛 策の導入 な ど) の効力 が否定 された り
(無効 や差止 め になる),取締役 に責任 が課 され るこ とになる11)。この ように, 取締役 の義務違反の有無 と効力 や責任 の有無 を結 びつ け るこ とに よって,濫用 的 な行為 が なされ るの を抑制 し, な された場合 や な され ようと してい る場合 は 是正 で きる ように してい る12)。
取締役 が義務 に違 反 してい るか どうか は,信 認義務 を個 々の場面 で具体化 し た審査 基準13)を用 いて審査 す る こ とに よ り判 断 され る14)。審査 基準 が義務 違 反の有無,す なわち取引や行為 の効力 を決 し,取締役 の責任 の有無 を決す る15)。 この よ うに,審査 基準 が 自由の制 約 され る場 面 や制 約 の度合 い を決 定す るの で16), デ ラウエ ア会社 法 で は審査 基準 が決定 的 な重 要性 を もつ。 デ ラウエ ア
ll)そのため,裁判所が取締役の具体的な義務内容をどのように定めるかによって, 自由の制約の度合いは影響 を受ける。重い義務を課せば自由の制約の度合いは高 ま る。信認義務は場面 (context)に応 じて変る義務 なので,ある具体的な場面にお ける取締役の具体的な義務内容をどのように定めるかという,裁判所の義務内容構 築の裁量は非常に大 きい。
12)以下で述べるように,デラウエア裁判所 はこのような介入の必要がある濫用的な 場合は,取締役や支配株主の利害対立 (利益相反)がある場合であると考えている。
13)MelvinA.Eisenberg,TheDivergenceofStandardsofConductandStandards ofRevieu)inCorporateLau),62FoRDHAML.REV.437,437(1993)(「審査基準は, 裁判所が行為者の行為 を審査 して,責任 を課すべ きか,または差止めによる救済を 与えるべ きかを決定するために,裁判所が適用すべ き基準 を述べている」);Nor‑ manVeasey&ChristineT.DiGuglielmo,WhatHappenedinDelawareCorporate Lau)andGovernancefrom1992‑2004.PARetrospectiveonSomeKeyDevelo♪‑
ments,153U.PA.L.REV.1399,1420(2005)(「審査基準が,‑・取締役が責任 を負 う かどうか,または取引が無効 とされるか どうかを決定する」).
14)審査基準の具体的な内容や,審査基準を用いた具体的な制約の方法については, 玉井利幸 「会社法立法の日米比較 (3・完)一行政主導モデルと司法依存モデルー 」
商学討究58巻4号 (2008年)139‑176頁を参照。
15)取引の正当性 を判断するための審査基準 と,個人責任追及の場面での審査基準は 乗離する場合がある。そのため,信認義務違反 とされ,取締役の承認 した取引が無 効 とされる場合であっても,取締役は,責任免除の定款規定 (DGCL§102(b)(7)) によ り,個人責任 を免れる場合 もあ りうる。Veasey&DiGuglielmo,SuPranote 13,at1422,1432‑36.
16)例えば,経営判断原則が適用 される場合は自由をほとんど制約 しないが,厳格な 完全な公正の基準が適用 される場合は, 自由の制約の度合いが高 まる。
100 商 学 討 究 第59巻 第1号
裁判所が行 う法創造の中で も,審査基準 の作成が最 も重要である。
この ように,デ ラウエ ア会社法では,信認義務 とい うエ クイテ ィの創造物 を 用 いることによって,取締役 の行為 を媒介 に,会社 のあ らゆる側面 に監視監督 を及 ぼす ことが可能 になっている。この ようなエ クイテ ィによる審査 と制約 は, 制定法上許容 されているか どうか明確 で ない場合 は もちろんの こと,取締役 の 行為が制定法上許容 されている場合 であって も及 び うる。会社制定法の要件 を 適法 に満 た している行為 であって も,それが不公正 な (inequitable)目的のた めに行 われているのであれば,許容 されない ことになる。制定法上の要件 を満 た しているか らといって,常 に是認 されるわけではないのである17) 。
そのため,取締役の行為 は,会社制定法や会社 の定款 ・附属定款 によって授 権 されているか とい うロー18)上 の分析 が加 え られ,もし授権 されているな ら, その事件 の固有 の状況 において,それ は衡平 (equitable)であ るか どうかが 判断 される。取締役の行為 には, ロー上の審査 と,エ クイテ ィ上の審査 とい う 性 質や次元の異 なる審査が加 え られることになる19)。
この ように,エ クイテ ィの審査 と制約 は,取締役 の行為 を媒介 に,会社 のあ らゆる側面 に,時 には制定法上の文言 さえ も超越 して,及ぶ。制定法の規定が あるか ないか,制定法の規定 に従 っている (す なわちその行為 を行 う権 限があ る)か どうかにかかわ らず,エ クイテ ィによる審査 と制約 は及 び うることにな る。その ことを明確 に述べ た事件がSchnell事件 である。
17)エクイティの起源がローの形式性 ・不都合性を克服することにあったことからす ると,このようなスーパーリーガルな性質はエクイティの本質である。
18)ローとエクイティを対比 して用いる場合,ローは会社制定法それ自体であ り,エ クイティは取締役の信認義務に関する司法判断の集積によって裁判官が形成 した法 を意味する。 この用語法は,Strine裁判官の用語法に倣っている。Strine,∫〟♪rd note7,at881.
19)1d.at880;JackB.Jacobs,TheU72eaSyTrucebetuJeenLauJandEquityi72Mod‑
ernBusinessEnterpriseJurisprudence,8DELL.REV.1,9(2005)(「会社の受認者 による権限の行使は会社制定法や定款 ・附属定款に従っているかどうかを問うだけ ではもはや十分ではない。現在は,その権限の行使は,その判断によって不利な影 響を受ける投資家に対 して公正で衡平 (fairandequitable)であるかも問う必要が あるのである」).
B.法創造 :審査基準の創 出
デ ラウエア裁判所が立法府 か ら委ね られている もう一つの役割 は,法創造で ある。 デラウエ ア会社制定法のブランクを埋 めるために,裁判所 は様 々な法の 提供 を行 っている20)。委任状勧 誘 の費用償還 に関す るルー ルの ように 自由の 濫用の監視監督 と直接 関係 のない法創造 もあるが,審査基準の創 出は監視監督 や 自由の制約 と密接 な関係がある。
上述の ように,デラウエア会社法では,会社 に関す る 自由の制約 は,主 に, 取締役 の行為 を媒介 として,取締役 の義務違反の有無 を問 うことによって行 わ れている。義務違反の有無 を判断す るために用 い られるのが審査基準である。
そのため, どの ような場合 に どの ような制約が課せ られ るか, 自由の制 限が ど の ような場合 に どの ようになされるかは,審査基準 によって定 まる。逆 にい う と,取締役 の判 断や行為 を どの程度尊重すべ きか (自由 を許容すべ きか), ど の程度介入 的 な審査 を加 えるべ きか (自由 を制約すべ きか), につ いての裁判 所 のポ リシー を実現 す るため に,審査基準 が作成 され る21)。審査基準 には, 裁判所 のポ リシーが具体化 されてい る22)。 どの ような場面 で どの ような審査 基準が用 い られ るかが,裁判所の介入 と自由の制約の程度 を決す るので,裁判 所 による審査基準の創造 と自由の制約 は密接不可分の関係 にある。そのため, デ ラウエ ア裁判所 の法創造 においては,審査基準の創造が最 も重要である。
20)具体例は,玉井利幸 「会社法立法の日米比較(1) 一行政主導モデルと司法依存モ デル ー」 商学討究58巻1号 (2007年)65‑66頁を参照。
21)さらに,どのような事案 (factpattern)にどの審査基準を用いるかを決定する 端緒の問題 も非常に重要である。審査基準によって証明内容 と証明責任の分配が変
り,訴訟の結果を事実上決定 しうるからである。
どのような事案にどの審査基準 を用いるか という端緒の問題の困難 さは,Rev‑
lon基準が適用 される場面はどのような場合か,といういわゆるレブロンランドの 範囲が未だに明確 とは言い難いことが,典型的に示 している。
22)William T.Allen,JackB.Jacobs&LeoE.Strine,Jr.,FunctionoverForm:A ReassessmentofStandardsofRevieu)inDelau)areCorporationLan),56BUs.LAW.
1287,1295(2001)(「司法審査基準は,基礎的なポリシー判断を反映 している,価値 を帯びた分析道具である。会社法においては,司法審査基準は会社の取締役による 行為がその信認義務に違反 しているかどうかを決定する際に裁判所が行 う仕事を叙 述 した,言語による表現なのである」).
102 商 学 討 究 第59巻 第1号
審査 基準 の創 造 の基礎 を与 えてい るのがエ クイテ ィの原則 であ る。現代 のデ ラウエ ア裁判所 に よ り用 い られてい る完全 な公正 やUnocal基準 な どの審査基 準 もエ クイテ ィの産物 であ る。 この ような現在用 い られてい る審査基準 の発展 に大 きな影響 を与 えたのがSchnell事件 で あ る23)0 schnell事 件 は,以下 で述 べ る ように,エ クイテ ィに よる審査 と制約が会社 のあ らゆる場面 に及 び うるこ とを明確 に宣言 した こ とと24),現 在用 い られて い る審査 基準 の基礎 を与 えた とい う意味 で,非常 に重 要 な事件 で あ る。 以下 で は,Schnell事件 の概 要 を紹 介 し,それが デ ラウエ ア裁判所 のエ クイテ ィに よる審査 と法創造 に もた らした 意義 を考 える。
C.Schnell事件 とその意義 1. 事件 の概 要
schnell事件25)は,経営 陣が 附属 定款 を変更 し,反対派 に よる委任 状競争 を 妨害 しよ うと した事件 で あ る。Chris‑Craftlndustriesが業績不振 に陥 ったた め,経営 陣 に不満 のあ る株 主が取締役会 の メ ンバ ー を交代 させ るため に委任状 競争 を行 お うとした。変更前 の附属 定款 で は,年次株 主総会 の開催期 日は特 定 の 日26)に定 め られ てい たが,変更 に よ り,一定 の期 間の任 意 の 日に株 主総会
23)〟.at1292m13(エクイティの事件では,「会社の取締役や役員は,ある特定の 状況における信認義務 を満た したか どうかが問題 となる。エクイティの事件は,問 題 となっている会社の行為が制定法や会社の定款 ・附属定款によって授権 されてい るか どうかが問題 となるような,『ロー』上の論点を含む会社法の事件 とは区別 さ れる。エクイティ (衡平法)上の会社の事件においては,問題 となるのは,会社の 受認者が異議 を申し立てられている会社の行為を行 う権限があったか どうかではな く,彼 らはその権限を適切 に行使 したか どうかである。法的権限の 『適切 な行使』
という規範的な概念を導入することによって,1985年以後,新 しい審査基準が創造 されて きた。 この領域の源 となった事件は,Schnellv.ChrisICraftIndustries,Inc., 285A.2d437(Del.1971)である」).
24)このようなエクイティの性質は伝統的にデラウエア会社法で認め られて きたもの ではあるが,Schnell事件はそれを明確 に述べたことに意味がある。
25)Schnellv.ChrisICraftIndustries,Inc.,285A.2d437(Del.1971).
26)変更前の附属定款で定め られていた総会期 日は,1972年1月の第二火曜 日であっ たが,附属定款 を変更 し,1971年の12月8日へ と早め られた。Schnellv.Chris‑ CraftIndus.,Inc.,285A.2d430,4311432(Del.Ch.),rev'd,285A.2d437(Del.1971).
を開催で きるようにな り,期 日を決定す る権限は取締役会 に授権 された。取締 役会は,当初の総会期 日であった1月か ら12月へ と開催期 日を5週間ほ ど早め た。開催場所 も,ニュー ヨーク州の僻地へ と変更 された。
反対派の株主は,変更 された期 日に株主総会が開催 されるのを差 し止めるた めに,デラウエア衡平法裁判所 に訴 えを提起 した。反対派株主は以下の ように 主張 した。取締役会の行為 は会社 の機構 を不公正 に操作 しているのであ り,そ の唯一の 目的は現行の経営陣の支配 を維持す ることにある。反対派株主は当初 の総会期 日にあわせて委任状勧誘書面などの準備 を行 っていたので,総会期 日 が5週早 まると準備が間に合わず,実効的な委任状競争が事実上で きな くなっ て しまう。取締役選出の過程が実質的に損 なわれ,株主の取締役の選任権が事 実上奪われて しまう。 この ような反対派株主の主張 に対 し,衡平法裁判所 は, 取締役会の行為 は会社制定法や定款 ・附属定款 に違反 していないので,何の救 済 も与 えることはで きない とし27),取締役会 に有利 な判断を行 った。
デラウエア最高裁判所 は,以下の ように述べて,衡平法裁判所の判断を覆 し た。「経営陣は, 自らの職位 を永続化す る とい う目的のために,そ して また‑
反対派株主が経営陣に対 し委任状競争 を行 う権利‑を妨害するとい う目的のた めに,会社組織 とデラウエア法 を利用 しようとした。 このような 目的は,会社 の民主主義 とい う確 立 された原則 に反す る不公正 な 目的 (inequitablepur‑ poses)である。その ような 目的のために,附属定款で定め られた株主総会の 期 日を取締役が早め ることは,許容 されてはな らない28)」。 「経営陣は,附属 定款で定め られていた期 日を変更する際に,新 しいデラウエア会社法の規定 に 厳密 に従 っていた と主張 している。その ような主張 に対する答 は, もちろん, 不公正 な行為 (inequitab一eaction)は,単 に法律上可能であるとい う理由だ けで,許容 されるようになるわけではない, とい うことである29)」。
27)Ld.at437.
28)SchnellV.Chris‑CraftIndustries,Inc.,285A.2d437,439(Del.1971). 29)〟 (emphasisadded).
104 商 学 討 究 第59巻 第1号
2.エ クイテ ィの優越 の明示
デ ラウエ ア最 高裁判所 は,この ように述べ て,会社 の受認者 (fiduciary)は, 法律上許容 されている行為 であ って も,不公正 な 目的のため に行 ってはな らな い とい うエ ク イテ ィ上 の法 理 (equitabledoctrine)を,特 に限定 を付 す こ と な く宣言 した30)。 デ ラウエ ア最 高裁判所 は,会社 の受 認者 の行為 は会社 制 定 法や定款 ・附属定款 に従 ってい るか どうかだけで な く,エ クイテ ィ上 の審査 も 受 けるこ とを示 したのであ る。受認者 の行為 は ロー に よって制約 を受 けるだけ で な く,エ クイテ ィの原則 (equitableprinciples)とい う最 も根本 的 な原則 に よって も制約 を受 け うる こ とを明示 した点 に,Schnell事件 の第一 の意義が あ る。
schnell事 件 はデ ラ ウエ ア会社 法 に大 きな転換 を もた ら した31)。 そ れ まで は,Schnell事件 の最 高裁判所 の よ うな実 質 的 な判 断で は な く,衡平 法裁判所 の よ うな形 式 的 な判 断32)の方が優 勢 で あ ったか らであ る33)。連邦裁判所 とは 異 な り,州裁判所 で は,制定法や定款 ・附属定款 の規定 に従 っていれば,た と えそ の結 果 が不 公 正 で あ って も, 許容 され る とい う判 断が な され る こ とが多 か っだ 34)。株 主 の公正 な取 り扱 い を可 能 にす る柔軟 な法準則 よ りも,取 引 を
30)Jacobs,SuPranote19,at7.
31)〟 (「Chris‑Craft事件はアメリカ会社法の発展の分岐点であった。なぜなら,そ の時か ら,ゆっ くりではあるが不可逆 に発展 し,エ クイテ ィの法理 (equitable doctrine)は,様々な異なった文脈において,取締役会の判断に関する司法審査に 覆い被 さるようになったか らである」).
32)争い となっている取引が会社制定法や定款 ・附属定款 によって禁止 されてお ら ず,詐欺的でない限 り,たとえその結果が株主に対 して完全 に公正でないように思 われるとしても,有効 とされることが多かったold.at3.
33)もちろん,それまで もエクイテ ィはデラウエア会社法の根本かつ重要 な一部で あった。会社の取締役の注意義務や忠実義務などの信認義務はエクイティの創造物 であ り,受認者の行為 を審査する基準であった。公正 というエクイティの根本的な 原則は,以前か ら,親子会社の合併のような利益の相反する取引を審査する基準で あった。例 えば,Sterlingv.MayflowerHotelCorp,,93A.2d107,109‑110(Del, 1952)(多数派株主は合併取引の双方の当事者の立場 にあるので,「多数派株主はそ の取引の完全 な公正 を証明す る責任 を負 う」)。以上 につ き,Jacobs,su♪ranote 19,at5も参照。
34)この当時の,このようなデラウエア裁判所の判断のアプローチに対する批判は,
計 画 す る経営者 に有利 な, 明確 性 と予 測可 能性 を もた らす 明確 な法準則 が好 ま れ てい た35)。形 式 に重 点 を置 く 「ロー」 的 なア プ ローチが優 勢 で あ った36)0
州裁判所 が この よ うな形 式 的 な判 断の ア プ ローチ を とって いた理 由は,一 つ には,州会社 制 定法 が授権 法 で あ る こ とにあ った。授権 法 の州会社 制 定法 は敬 締役 会 の行為 に僅 か な制 約 や禁 止 を課 して い るだ けで あ り, そ の よ うな制 限 も 手 続 的 な ものが多 く,実体 的 な もの は少 ない。 その ため,実務 家 の 間で は, 明 確 に禁 止 され てい ない行為 は許容 され てい る とい う考 えが支 配 的 にな り,裁判
例 えば,William LCary,Federalism a72dCorporateLau)IReflectionsUponDela‑
u)are,83YALEL.J.663(1974)を参照。連邦裁判所 の実質 を重視 した判断のアプ ローチ と比較 しなが ら,デラウエア裁判所の形式重視の判断のアプローチを批判 し ている。
35)個々の事件 における公正妥当な解決 を得 ることよ りも,ルールの明確性や法 シス テム全体の安定性,予測可能性が重視 され,この ような 「ハー ド」 なルールが個々 の事件で苛酷 な結果を生み出す として も,それは許容 されなければならないコス ト であると考 えられていた。Jacobs,Supranote19,at4.
36)実質的な公正 よ りも形式的な要件充足性 を重視す る裁判所 の判 断のアプローチ は, 2つの結果 をもた らした。一つは,連邦裁判所への逃避である。合併や公開買 付 (テ ンダーオファー)な ど会社の支配権 に関連する取引の多 くは,証券の取引を 伴 う。 このような取引によって不利益 を被 ると思った株主は,州会社法に基づ き州 裁判所 に訴えるだけでな く,連邦証券取引法 に基づ き連邦裁判所 に訴 えを起 こした。
連邦裁判所 は,1934年の証券取引法のSection10(b)とRule10(b)‑5の規定 を,開示 の十分性 に関する司法審査だけでな く,取引の実体的な公正性 に関する司法審査 も 許容 していると解釈 し,形式 よ りも実質を重視 した判断を行 った。そのため,州裁 判所 よ りも投資家保護 となるような判断がなされることが多 く,フォーラムとして 連邦裁判所が選択 されることが多 くなった。1d.at3.
しか し, この ような逃避 はSantaFelndustries,Inc.V.Green,430U,S.462 (1977)事件で終 わった。SantaFe事件でアメ リカ合衆国最高裁判所 は,1934年の 証券取引法は証券取引の重要な事実が十分 に開示 されているか どうかを判断するた めだけに用い られるのであ り,証券の取引が実体的に公正か どうかを判断す るため に用いることはで きない, としたか らである。開示が十分であれば,証券取引法は 取引が実体的に公正か どうかには関知せず,取引の実体的な公正性 は州裁判所が適 用する州会社法の排他的な領域である, とした。そのため,取引の実体的な公正性 (典型的には価格) に不満のある株主は,州裁判所 にしか救済を求めることがで き な くなったold.
もう一つは,連邦会社法の制定の機運の盛 り上が りである。例 えば,Cary教授 は, デラウェア州の立法府だけでな く,裁判所の判断が経営者 を有利 に取 り扱 っている ので,最低限の公正性の基準 を課す ように連邦会社法の制定 を行 うべ きであると主 張 した.Cary,sup7Tanote34,at701‑703.
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所 もそれ に従 った37)。結 果 的 に,制 定法 上 の要件 を満 た していれ ば,株 主 に 対 し不 公正 な結果が生 じる として も,裁判所 は許容す る ことにな り,経営者 に 有利 となる判 断が な され る ことが多 か った38)o
Lか し,Schnell事件 は, この よ うな ロー的 なアプ ローチ か らの決別 を明確 に宣言 した39)。 明確 で予 測可 能性 の高 い ルー ル に大 きな価 値 を置 くロー的 な アプローチか ら,その ようなルール を適用す るこ とに よって生 じる個 々の事件 の不都合性 を除去す るため に,公正性 に価値 を置 くエ クイテ ィの アプ ローチ‑
と転換 した。 明確 なルール をその まま適用す る と不 当 な結果 が生 じる場合 は, その ような結果 を防止 した り緩和 した りす るため に,裁判所 が実体 的 な介入 を 行 お うとす る よ うにな った40)。 もち ろん, この よ うなエ クイテ ィの原則 はそ れ まで もデ ラウエ ア会社 法 の重要 な一部 で あ ったのであ るが,Schne11事件 の
37)このような状況を反映 して,この当時のアメリカ会社法学は非常に停滞 していた。
その状況 を詩的に表現 した有名な文章がある。BaylessManning,TheSharehold‑
er'sA♪♪raisalRemedy:AnEssayforFrankCoker,72YALELJ.223,245n.37 (1962)(「知的な努力の領域 としての会社法は,アメリカ合衆国においては死滅 した。
アメリカ会社法が 『会社』 を真剣に考えるのを止めたときに,知的な構造物の上に 構築 されてきた法の全体は,ゆっ くりと穴が空いて腐っていった。我々には,偉大 なる空虚な制定法 しか残 されていない。それは‑錆び付いた梁の間を風が吹 き抜け るだけの空虚な高層 ビルにす ぎない」),
38)以上につ きJacobs,SuPranote19,at3.参照。 このような形式的な要件充足性 を 重視する考えは,DGCLが1967年に全面的に改正 されると一層強 くなった。Strine,
∫〟♪γαnote7,at881(デ ラウエア州法曹協会の中には,1967年 に新 しくなった
「DGCLは,会社法の全ての分野 を占めていると考 えられるべ きであ り,会社 に 関するコモ ンロー [玉井注 ・エクイティを用いた判例法のこと]はゴミの山に葬 ら れるべ きである」 と信 じる者 もいた).このような傾向は, 日本の新会社法制定後 の状況 と似ているか もしれない。 日本の場合,会社法が 「全て書 き尽 くしたい」 と いうポ リシーで作 られているので,このような傾向が強いか もしれない。
39)歴史は繰 り返す。中世イギリスで,ローの形式的な硬直性 とそれが もたらす不都 合 ・不公正を克服するためにエクイティが生 まれたように,デラウェア州で も,形 式的な判断の もたらす不当性 を緩和 し是正するために,実質的な公正性に重点を置
くエクイティ的なアプローチが取 られるようになった。
40)1970年代になって,デラウエア裁判所が実質的な公正性 に配慮する判断を行 うよ うになったのは,一つには,SantaFe事件 により,連邦裁判所が従来のように会 社の内部問題に立ち入ることがで きな くなったか らであるoJacobs,Supranote19, at4:Allenetal.,Supranote22,at1293n.18.
最高裁判所 の判 断 は,制定法 の要件 を満 た している場合 であ って も,エ クイテ ィ の審査 が及ぶ こ とを明確 に示 した ことに意味があ る。
この よ うな,実 質 的 な公正性 (equity)を重視 す る考 えは,後 のSinger事 件 やWeinberger事件 に受 け継 が れ てい く41)。 これ らの事件 の,形式 的 に は 制定法上 の要件 を満 た した締 出合併 であ って も,実質的 には不公正 な場合 はエ クイテ ィ上 の司法審査 が及ぶ とい う考 えはSchnell事件 の基本 的 な発想 と同様 であ る。形式的 な要件 充足性 だけで は足 りず,それ に加 えて実質的 な公正性 も 要 求 して い るか らで あ る42)0 singer事 件 で デ ラ ウエ ア最 高 裁 判 所43)は,
もう一つは,連邦政府 による介入の可能性が高 まり,デラウェア州の利益の源泉 である会社法販売 ビジネスに脅威 を与えたか らであるか もしれない0MarkJ.Roe, Delau)are'sCompetition,117HAR∨.L REV.588(2003).実際に,1960年代か ら70年 代にかけて最 も問題視 されていたゴーイングプライベー トを規制するために,SEC
はRule13e‑3を規定 した。 ゴーイングプライベー トに完全な公正 を要求 したSing‑
erv.MagnavoxCoワ380A.2d969(Del.1977)事件 はこのような連邦政府の介入 と いう脅威への対応であるか もしれない。1d.at616‑1&
41)同様 な発想は,DGCL§144に関する判断にも見 られる。Flieglerv.Lawrence, 361A.2d218(Del.1976)事件では,DGCL§144と利害関係者取引 (interested transactions)の有効性の関係が問題 となった。DGCL§144は,利害関係者取引 が情報 を入手 した利害関係のない取締役 もしくは情報 を得た株主によって承認され た場合,またはその取引が公正な場合は,その利害関係者取引は当然には無効(void) でない し取消可能 (voidable)で もないと規定 している。 しか し,デラウエア最高 裁判所 は,DGCL§144に規定 されている要件の うちの一つを満た していたとして も,ロー上の無効 (legalinvalidity)にな らないだけである, と判断 した。〟.at 222.そのため,例えば,利害関係のない取締役 によって承認を受けた場合であって
も,利害関係者取引は必ず しも経営判断原則によって保護されるわけではな く,さ らにその取引が衡平 (equitable)か どうかが問題にな り,エクイティ上の審査 (伝 認義務による判断)がなされることになる。制定法上の要件 を満たすだけでは足 り ず,エ クイテ ィ上 の審査 もク リア しなければな らないのである。以上 につ き, Strine,sup71anote7,at881n.18も参照。
42)Singerv.MagnavoxC0.,380A.2d969,975(Del.1977)(締出合併の当事会社であ る「Magnavoxは制定法上合併を行 う権限を有 していた し,その手続的な要件 も満 たしていた。 しか し,‑デラウェア州の判例法は,たとえ制定法上の命令に完全に 従っているとして も,あらゆる場合に,その行為が法的に有効 となるわけではない ということを明確 に教 えて くれる」。「我々はこのアプローチ [玉井注・Schnell事 件のアプローチ]を適用 し,制定法に従っていれば合併は司法審査か ら免れるとい う主張を拒絶する」);Id.at976(「当裁判所は,我が州の確立 された法 として,・・・
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Schnell事件 を引用 しなが ら,少 数株 主 を排 除す る こ とだ け を 目的 とす る現 金 締 出合併 は会社 の プ ロセ スの濫用 であ る と し44),完全 な公正 を要 求す る こ と に よって,不公正 な現 金締 出合併 を制 限 しようと した。
Weinberger事件45)も同様 で あ る。Weinberger事件 は,締 出合 併 を行 うの に事業 目的 は必 要 で ない と した点 はSinger事件 と異 な る ものの,完全 な公正 を要求す る こ とに よって,エ クイテ ィ上 の審査 も加 えてい るか らであ る。制定 法上 の要件 を満 た してい る ことは必ず しも公正 であ るこ とを意味 しないので, 完全 な公正 を求 め るこ とに よって不 公正 な締 出合併 を抑制 しようと してい るの であ る。完全 な公正 を満 た したか どうか を判 断す るため に,公正取 引 と公正価 格 が 一 体 と して 審 査 され る と して, 完 全 な公 正 の 内 容 を 明確 に した46)0
多数派株主が合併取引の双方の側に立つ場合は,「完全 な公正 (entirefairness)を 証明する義務」を負っている, ということを認識 している‑」).
43)デラウエア衡平法裁判所は,反対 に,ロー的なアプローチをとり,エクイティ上 の救済 を否定 していた。Singerv,MagnovoxC0.,367A.2d1349,1355(Del,Ch, 1976)(「デラウエア裁判所は,合併の有効性の判断の一部 として,合併を行お うと する理由や事業上の正当化について審査することはない。‑合併の理由は司法判断 の問題ではない し,‑合併 を開始 した者が何 らかの利益 を得るという事実があると いうだけで,合併が詐欺的になるわけで もない‑。詐欺がなかった り,合併の条件 が裁判所の良心に衝撃 を与えるほど不公正であるということを証明 したのでないの なら,立法府の制定 した法律によって与えられた会社の合併 という制定法上の装置 を利用することは‑許容 されるというのがデラウエア裁判所のポリシーである‑0 合併を行 う理由や事業上の必要性は司法判断の問題ではない‑.」).1d.at1356(多 数派株主が合併により少数株主を締出す際に 「詐欺や甚だしい編 Lがあったという ことを少数株主が証明で きたのでなければ,合併それ自体は,‑攻撃の対象 となら ない し,少数株主を除去することを主な目的 として計画 された合併はDGCL§251 や §253の不適切な利用 となるわけで もない」).
衡平法裁判所 と最高裁判所でロー的なアプローチか らエクイティのアプローチへ と転換 したのは,連邦政府の介入の脅威があったためか もしれない。Roe,SuPra note40,at616‑18.
44)Singerv.MagnavoxC0.,380A.2d969,980(Del.1977)(「会社の権能を少数派を 除去するためだけに用いることはその義務 [玉井注 ・信認義務]に違反 している」。
「少数派株主を締出す という目的のためだけに合併を行 うことは,会社のプロセス の濫用である」).
45)Weinbergerv.Uop,457A.2d701(Del.1983). 46)1d.at711.