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学習者と教育者 (特集 学びの最適化のために)

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Academic year: 2021

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学習者と教育者 (特集 学びの最適化のために)

著者 岡崎 有里

雑誌名 尚絅学院大学紀要

号 77

ページ 5‑6

発行年 2019‑07‑19

URL http://doi.org/10.24511/00000406

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学生自身で学びを組み立て可能とし、将来像を学生自身が模索できるとの特徴を掲げている。

これまでの学科制で関わった学生よりも多くの多様なニーズに対応していくことが求められる と思われる。少人数教育を大事にしてきた学院の文化を損なわないようにとアドバイザー制が 設けられた。担当する学生に適切なアドバイスをするためには、提供している学びを教員が理 解する必要が生じる。私が着任した時には約 10 名分の教員の学びのメニューを理解しようと したが、今後はさらに多岐にわたる専門分野を有する教員相互の理解が必須となるだろう。

 大量生産、消費の時代はもう過ぎ去り、型にはまった学生を輩出する時代でもなくなってい る。社会で求められる基礎的素養だけは身につけるように引っ張り、学生個々の力が発揮でき るよう見守っていくことが大事ではないだろうか。学生を見つめ、彼らから求められているこ とを理解・把握して学びを提供していくことを大切に考えたい。

 我々が対峙しているのは生身の若者たちであり、彼らが成長していく環境を我々は育んでい きたい。

学習者と教育者

講師 岡 崎 有 里

 私が大学において、栄養士や管理栄養士を目指す学生を対象とした授業を担当するように なって、今年でちょうど 10 年目となる。“10 年”という言葉を聞いてふと思い出したのは、

学生の頃に参加した大好きな作家の講演会であった。その作家は、「作家でも何でも、何かを 始めたら 10 年は続けることが大切である」と、当時の私たち学生に対して熱心に語っていた。

 さて、その“10 年目”がとうとう私にもやってきた。

 私は大学院を修了した後、助手として働いた。この期間は、自分が主となり授業を担当する 立場ではなかったため、授業担当教員の補佐に従事していた。今思うと私は、この助手であっ た期間に、『学びの最適化のために』重要な要素を学習する機会を得ていたと振り返る。

 助手として勤めていた頃は、教室内における「学習者」と「教育者」のやり取りを自分が

「観察者」として学べる機会が多々あった。そこで学んだことは、教育者は学習者の特性をよ く知り、理解するように努めなければならないということであった。

 授業は毎回、学習テーマがあるため、ほとんどの場合、まず教育者から言葉が投げかけられ、

授業がスタートする。その投げかけられた言葉を学習者がキャッチすることが重要であり、

キャッチできなければ、授業は成り立っていかない。

 よく講義は教育者から学習者へ向けた一方向的な授業となる可能性が高いといわれている が、この言葉のキャッチボールを教育者自身が意識しようとせず、講義の内容だけを一方的に ずらずらと講話するのは、学習者にとって望ましい授業であるとは言い難い。教育者と学習者 の言葉のキャッチボールが成立し、双方間で学びが広がっていくのが授業の理想的な形である と考える。よって単純に考えてみると、授業は教育者と学習者が、あるテーマに基づいた会話 を行う場であるともいえるため、教育者は学習者に歩み寄り、会話がしやすいような環境づく りに努めることが重要となる。

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 このことは、私が担当している「栄養教育論」の内容にも通じる。教科書にも記載されてい るが、管理栄養士が栄養カウンセリングを行う際には、ロジャース(Rogers, C.R., 1951)のク ライアント中心療法(client-centered therapy)の考え方が基本となる。この療法はクライア ント中心の態度によって、クライアントは本来の力を十分に発揮し、問題を解決してくことが 可能となるという考えに基づく。

 クライアント中心療法では、カウンセラーはクライアントの関心やものの見方に焦点をあて、

クライアントが現在何を求めているのか、何を心配しているのかに焦点を絞っていくとともに、

クライアントの体験に心を寄せて、その体験を尊重することがポイントとなる。大学における 教育においても、この栄養カウンセリングの基本がいかされると私は考える。よって、教員は 学生に対してカウンセラーと同様の配慮を行っていく必要があると感じる。

 また、学習者と教育者にとって本当に望ましい授業を行っていくためには、両者の間に信頼 関係を築くことが欠かせない条件となる。このことについても、栄養カウンセリングにおいて は、基本的な心構え(カウンセリングマインド)として次のような内容をあげている。①相手 を「固有の人格」として認め尊重すること、②価値観を交えずありのまま(気持ちや考え)を 受け入れること(受容)、③共感しつつ問題解決をめざして役立とうとすること、④温かく落 ち着いて誠実に対応することなどである。そして、これらを言葉にするのはたやすいが、対象 者は聖人ではないため、実際にいつも「そうある」ことは容易ではないとも示している。

 信頼関係を築くというのは容易いものではなく、むしろ大変難しいことである。しかし、毎 回の授業において、この信頼関係を築くために努力することは、学習者と教育者の双方にとっ て望ましい学びの場をつくることに繋がっていくと考える。よって私自身、このような心構え を常に意識して、授業を行っていきたいと思う。

 この度、大学での教員生活が 10 年目となる節目の年に、本稿の執筆依頼を受け、自分自身 が行っている授業のあり方について振り返る貴重な機会が得られたことを心から感謝してい る。教員を 10 年続けてみて思うことは、まだまだ学習者である学生に満足してもらえるよう な授業を行えているとは言い難く、課題は山積みであるということである。

 授業の場における主役は何といっても学習者である学生であるため、私たち教育者は主役で ある学生が最高の学びを行えるよう、十分にサポートする必要がある。よって、これからも学 生にとって望ましいサポートを懸命に考え、実行していくことを努めていくとともに、学生が 自発的な学びを積極的に行っていけるように応援し続けていきたいと強く感じている。

 本稿は今後の自分に対する教訓として、しっかり胸に刻んでおきたい。現在の私は、助手で あった時とは異なり、観察者して自分の授業を見ることはできない。よって、時には自己中心 的な授業となっていることや、学習者への配慮が欠けている場面などが多々あるだろう。これ からも“初心忘るべからず”の精神を胸に、日々の学生との時間を大切に過ごしていきたい。

【参考文献】

・杉山みち子,赤松利恵,桑野稔子編:カレント栄養教育論,建帛社,2017

・丸山千寿子,足立淑子,武見ゆかり:健康・栄養科学シリーズ 栄養教育論(改訂第4版),南江堂,2016

参照

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