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英語の進行形に関わるアスペクトの認知的特性

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(1)

英語の進行形に関わるアスペクトの認知的特性

樋 口 万里子

0. lntroduction

 本稿の目的は、英語の進行形を統一的に説明できる概念を捉えることである。

その為には、動詞のアスペクトに関する正しい理解と明確な概念が不可欠であ るが、これまでのところ曖昧かつ不十分で定まった呼称すら存在せず、錯綜し

た議論が展開している。例えば(1)(b)、(2)(b)の説明にはしばしば「変化」、「一

時的」、「出来事としての状態」等の言葉が使われるが、いずれも直観的で定 義や相互関係等は不明である。そうした現状において、Langacker(1987a,b,

1991a,b)は、彼の認知文法の体系に則り、進行形be+V−ingに、[V]及び

[全体]という複合構造を見出し、perfective(bounded)という一貫性のあ る概念と明確な規定で、異彩を放っている。

(1)(a)*John is resembling his father.(c.f.John resembles his father.)

  (b) Mary is resembling her mother more and more.

(2)(a) He lives in London.

  (b) He is living in London.

(3) (a) The earth goes around the sun.

  (b) The earth is going around the sun.

(4)(a) He was standing there for 2 hours.

  (b) *lt was raining for 2 hours.

(5)(a)  John was writing a letter at 60 clock.

  (b) ??John was writing a book at 60 clock.

(2)

しかしLangackerの説明も、例えば(3)(4)(5)の(a)(b)の相違を捉えるには十分

とは言えない1。そこで本稿は、理論的にはLangackerの認知文法に基盤を置

くものの、多岐に渡る進行形現象をより包括的に説明すべく新たな概念を提案

する。第1章で先ずこの新たな概念の規定を行った後、2及び3章で、これま

で未解決だった問題の解決を図る。同時に、本稿の提案が、進行形の認知構造

を単純形との対照においても自然な形で説明できることを述べ、4章で進行形

の存在意義と、進行形で表現するとはどういうことかを明らかにする。尚、本 稿では、訳語による混乱を避け客観性を高める為、アスペクト関連の用語は英 語のまま使うことにする。

1.Static vs. Nonstatic

 これまで進行形については様々な概念で説明が試みられているが、いずれも 進行形の一面を捉えてはいるものの、概念規定が不十分で他の側面には説明力

を欠いていた。例えばComrie(1976)のimperf㏄tiveは大雑把に言うと「途

中」という意味だが、進行形だけでなく(6)(a)も共有する概念であり、(6)(a)は

stative、(b)はnonstative use of stativeと呼ばれ、概念規定は無いに等しい2。

(6)(a)John resembles his father.(c.f.*John is resembling his

    father.)

  (b)Mary is resembling her mother more and more.

1Langackerは、名詞の場合、可算・不可算の違いがboundaryの認識にあるので、動 詞のアスペクト対立もbounded/unboundedと考えるとパラレルに説明できると言う。

だが、動詞の場合は時間の流れにおいて捉えられるものなので、本稿では「変化を認 識するかどうか」を採用した。これもLangackerの認知文法自体の基本的枠組みに

は沿っていると考える。

2 もう少し詳しく言えば、Comrie(1976)のimperfectiveは、「出来事を構成してい

る内部の視点から見て始まりも終わりも見ないもの」である。

(3)

(7)(=(2)) (a) He lives in London.

     (b) He is living in I」ondon.

又、Smith(1983)は、進行形になれるアスペクトをevent(6)(b)、その背反概

念をstate(6)(a)とし、(7)(b)を eventとしてのstate と呼ぶ。このeventとは、

Vendler(1967)のachievement, a㏄omplis㎞ent, activityをく変化を伴うもの〉

という観点から纏めたもので、〈変化を伴わないもの〉がstateであるが、 event としてのstate というものが一体何を意味し、(6)(a)とどう違うかは不明である。

 こうした中では、一連の著述におけるLangackerのアスペクト概念は、明

確で画期的である。Smithのstate/eventとほぼ同類の概念を、彼がimperfec−

tive/perfectiveと呼ぶのは、別の概念をstateと呼ぶ為でもあるが、(6)(b)も

(7)(b)もperfectiveとでき、より一貫性を持った解析となるだけでなく、進行 形以外の現象への汎用性をも備えた独自概念だからでもある。この章では、先 ずLangackerの認知文法におけるアスペクト関連概念を概観した後、 Langacker

がimperfectiveと呼ぶ概念を詳しく検討し、それと対照させる形で本稿の代

案を明らかにしたい。

1−1. Langacker sAspedt

 例えばparallelという語を例に取ると、形容詞として用いられた場合はモノ とモノとの関係としての astate を表し、動詞の場合は、 a parallel state が時間の流れの上で一定期間続いている様を表す。

(8)(a)Line A is parallel to line B.

  (b)Line A parallels line B.

 Langacker(1987a,b,1991b)の認知文法の枠組みで正しく捉えられている

様に、「動詞の表すもの」とは「時間の流れにおいて把握可能な概念」である。

(4)

これを認知文法ではprocessと呼び、本稿もこれに従う。このprocessには、

出来事の認識の仕方によって[変化を伴う場合]と[それ以外の場合]があり、

それぞれperfective、 imperf㏄tiveと呼ばれる。

 この二つの概念を理解する上で大切なことは、「この動詞はperfective」と いう具合に決まっている訳ではなく、あくまで「物事がどう認知されているか の問題」だということである。それは丁度 table が常に可算名詞という訳で はないのと同様で、名詞の可算名詞・不可算名詞の対立に対応している。次の

(9)(a)は、例えば、漫画の白蟻の台詞として考えて頂きたい。このshelfや tableや(9)(b)のcatが不可算名詞なのは、 (白蟻にとって食べる対象である)

材質や物質名詞として捉えられ、「個体としてのアイデソティティや輪郭」が 失われているからである。

(9) (a) Idon t like shelf−1 d rather eat table.

  (b) After I ran over the cat with our car, there was cat all over

    the driveway.(Langacker:1991a:73)

(1① (a)An empty moat surrounds the old castle.

  (b) The soldiers are surrounding the old castle.

(1旬(a)のsurroundは変化を伴わない情景に対応しているのでimperfectiveで あるが、(10(b)でのsurroundは主語の「動き」の一場面でありperfectiveで

ある。(11)(a)(b)の場合も同様で、(a)のwindはimperfectiveで、(b)のwindは

perfectiveである。これは動詞windに2種類あるというのではなくwindに

表わされた出来事の認知の仕方に2種類あるということである。

(11)(a)This road winds through the mountains.

  (b)This road is winding through the mountains.

(11)(a)は、地図上の曲がりくねった道を見ている場合の表現で、全体像を一時

(5)

に見渡すことができ、そこに認識される存在は時間が経過しても変化しない。

それに対し(b)はその道を車で辿ちている人から見た様子であり、次々と変わっ

ていく情景を「動きの中の途中の状況」として見たイメージである。(b)の

windは「変化を伴うprocess」を表わしているのである。

 本稿はこの様なLangackerの枠組みに立脚している。だが、 Langackerの

概念規定では十分に説明の付かない進行形を捉える為には軌道修正が必要であ

る。そこで本稿では(1①(a)のsurround,(11)(a)のwindが対応している出来事の

アスペクトを新たにstaticと呼び、その背反概念をnonstaticと呼ぶことにし た。このstaticとLangackerのimperfectiveは、上述した概略的な部分では

一致するが、1−2.で示す具体的詳細部分で挟を分かつ。

1−2. Characterization of Static Process

 本稿のstaticもLangackerのimperfectiveも、現在進行形be+V−ingのV の位置に来れないアスペクト概念の呼称であるが、Langackerのimperf㏄tive

は1)homogeneity,2)contractibility,3)non−replicability,4)the absence of inherent bounding(Langacker:1991b:21)等の特徴を備え、このうち4)

が最優先特性であり、 indefinitely ongoing と同値ともされる。これに対し、

本稿の提案概念staticの本質的特性は1)、2)であり、3)、4)については 異論を持つ。本稿の見解では、replicabilityやboundaryは、変化として意識

されなければstaticであり、変化として認知されて初めてnonstaticであり

be+V−ingのVの位置に生じうる。本稿は、 static/nonstaticの対立をあくま で質的に捉え、「boundaryを意識しないこと」と、 indefintely ongoing を 区別する。この点がこの章の焦点である。以降で、Langackerの挙げる

imperfectiveの4つの特性の一つ一つと対照させつつ、本論の基軸概念をでき

る限り明確にしておきたい。

(6)

1−2−1. Homogeneity

 本稿のstatic processは第一義的に(1別a)、(b)のisが表わす様に、「変化が

意識されずhomogeneous」である。イメージとしては、ビデオで撮った静物

画映像を流している様なもので、時刻表示は刻々進むが、認知対象には変化が ない様である。映画とは、フイルム上に並んだ一コマーコマをある速度で流し ているものだが、一つのコマを一つのstateとみると、(13の様に全く同じコマ が並び、かつprocessを構成するのがstatic processである3。

(12) (a) The apPle is on the table.

  (b) He is a student.

(13) (a) aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa....

 (b) aa aaaa aaaa aaaa aaaa aaaa aaaa aa....

無論、(1別a)(b)で描かれている事態には、厳密に言えば変化があるかも知れな いが、言葉の上では捨象され、変化がないと見なされている。又、(13は、

[aa aa]をひとかたまりとし、一様に続いているものと見なすことができる。

これは、物質名詞waterが分子を構成する原子のレベルを問題にしないこと、

琵琶湖の水もフラソスの水も同じ水と見るのと同様である。ここ迄は、本稿の

3 又、(i)の様に変化が内包されていても、それをひとくくりにしたものを同じものと見 なせば、抽象的な高次の事象としてstaticというのが、物事の一般性や規則性を表 すgenericやhabitualであると思う。物語の筋や年表、スケジュール等も動作を内 包するがそれ全体を時間がたっても変化しないものと見なした場合も同様である。こ れらは世の中常に予期せぬ事柄ばかりだと備えることができず困るので、物事に規則 性を見出し精神的な安定を得ようとする人間の根本的な頭脳活動の現れであると思う。

この拙論自体も進行形の一般的性質を見つけようとしている訳である。

(i)....xyz abcde xyz abcde xyz abcde xyz abcde,...

(if xyz=p&abcde=q,) →....pq pq pq pq....

(ifpq=G,)→....GGGGG_..

(7)

Vendler(1967)     Smith(1983)      本稿 achievement

(旬.stOP,》耐

accomplishment

(阜9.draw a drde)

actlVlty

(ag. walk, swim)

state

(e.9.㎞ow, resemble)

hetrogenous   event

      (involves change)        nOnStatlC

       hetrogenous

       (ilwolves change)

homogeneous

}蕊一一}講三

く図1>

static processの特徴付けと、 SmithのstateやLangackerのimperf㏄tive

とは相いれないものではない。

 ところが、ただ単にhomogeneityといえば、 Smith(1983)が、 activityを

achievementやaccomplishmentと分けて特徴づける際に用いた特性でもある。

だが本稿では、activityは、動きや変化を伴うのでnonstaticと考える。例え ば、walkは身体の動きと位置の移動という変化があり、ビデオに撮れば、一

コマーコマの絵は異なる。ただ、Smith(1983)はactivityを[変化を伴うコ という点ではachievementやaccomplishmentと同じと言う。そうである以上、

activityをhomogeneousといっていても彼女が意図するところは、当然[変 化を伴うhomogeneity]である筈で、本稿でstaticと呼ぶ概念の持つhomo−

geneityとは異なる。 Smithは「activityはarbitrary endpointを持ち、 state

はendpointsを含まない」と言うが、本稿のstaticは「endpointsはあり得る

が意識されていないもの」である。本稿ではHe was a student for 3 years.

はstaticである。 endpointsの認識というのは変化の認識に他ならないので、

認識されればもはやhomogeneousではない。本稿のstaticはあくまで「変化

や動きを認識しないhomogeneity」を持つ性質である。

(8)

1−2−2. The Absence of Boundary Awareness

 the absence of boundingは、基本的にはimperfectivityの規定概念の一つ であるが、Langacker(1987b)は、 walk等のactivityが進行形になれるのは

「homogeneousだがboundedなのでperf㏄tiveだから」だとし、 Langacker

(1994)では、imperfectiveをindefinitely ongoingと、 perf㏄tiveをbounded

と同義とする。即ち、Langackerのperfectivityの中心概念は、 boundedで

ある。

  しかし、このboundedという概念が何を指すのかは、今一つはっきりしな い。まず、boundedと言うならば、例えば「2時間」の様なdurationalと整

合的な概念の様に思えるが、It sraining for 2 hours.等は非文である。こ れについては次章で詳しく論ずる。もう一つは、例えば(14や⑮等の一般に「一 時的」とされる進行形に関わる。1.angackerは(14)の1iveはbounded episode

として理解され(personal communication)、⑮の様に進行形になれる

habitualはboundedだから「一時的」なのだと説明する(Langacker:1994:2)。

しかし、進行形は常に一時的な事態を表す訳ではない(16)。勿論(1θのgoも、未

来永劫という訳ではなく50億年で終焉を迎えるという意味ではboundedかも

しれないが、彼がimperfectiveとするHe lives in London.のliveはindefi−

nitely ongoingで(16)のgoはboundedというのはどうも納得がいかない4。

(14)(=(2Xb)) He is living in London.

(15)      Alice is stalking that bird again these days.(habitual reading)

(16)        The earth is going around the sun.

Langackerがimperfectiveと分類する事態も常にindefinitely ongoingとい

う訳ではなく、一定の期間が想定される場合も多い(1カ(a)(b)(c)。その点では、

(9)

boundedとも言えないことはない。

(1の (a)The cat was on the mat.(猫がずっとこの場所にいるとう訳ではないだろう)

  (b) It was just 50 clock.

  (c)He lived there till the end of the month and then came here.

又、一時的なことがboundedというのならknowやbeの場合もboundして 概念化する事は可能である⑱(a)(c)。しかしだからといってそれをそのまま進 行形にはできない(18)(b)(d)。これも、単にboundingという概念では説明が付

かない。

(1⑧ (a)Iknew how to use this computer for those years I used it, but     now I ve totally forgotten it.

  (b)*Iwas knowing how to use this machine.

  (c) Iwas a student there that month.

  (d) *Iwas being a student.

ただ確かにactivityの類は単純過去形で表現すると、言語化されたイメージ の中で完結しているという意味ではboundedと言えるかもしれない。 Langacker 4具体的文脈でもう少し考えてみる。次の㈲(a)は、小学3年生達にある方法で英語を

ゼロから教えて半年後の途中経過を表現している。(u)(a)の過去進行形をを単純過去 形に替えると、そのreadをその当時の能力としてstaticに理解しても、その時点で その教育も調査も終わっているか、その後は関知しないというニュアンスが生まれ、

were readingでなければ、継続的に調査している現状に合わなくなる。又、(u)(b)も

日本かわうその生息範囲と数を調査した年毎に報告している文で、継続を示唆する。

この場合絶滅を意識させるという意味ではboundedと言えるかも知れないが、 were livingをlivedに替えるとそこで調査が打ち切られたようなニュアソスとなり、そち

らの方がよほどboundedとも言える。いずれにしろbe+V−ingのVの性質は

boundedよりは「意識した変化の途中」という方が的確である様に思える。

(u)(a)Third graders were reading English at the US2.7 grade level.

 (b)By 1948, the Japanese otters were living only in the western part of Shikoku.

(10)

を含め多くの人々が指摘している様に、(1旬(a)(b)は容認不可だからである。対 照的に、¢O(a)(b)等の過去のstatic processは終わっている場合もあるが、そ のまま今も続いている場合もあり得、表現自体にはその状態の終了と次の状態

への移行等の変化を含まない。このあたりがLangackerが「activityは典型 的にbounded episodeを表すから本質的にbounded」と主張する根拠となっ

ている様である。

(1》 (a)*He walked this morning and he may still be walking now.

  (b)*He slept all morning, and he may still be sleeping now.

⑳ (a) He loved her 10 years ago and he may still love her.

  (b) He was a student last year, and he{may still be/works in a

    bank}now.

 勿論activityを含むnonstatic processは、単純現在形では表現できない。

Langackerが特殊な用法と呼ぶgeneric, habitual等は、後に示す様にstatic

である。従ってactivityが典型的に過去形でboundedな場合に生じるという理

屈は成り立たないでもない。だが、genericやhabitual等単純現在形で生じる 場合はそれ程低頻度という訳でも非典型的と言える程でもないのではないだろ

うか?

 又、activityが上記の意味でboundedというのは、あくまで単純過去形で

あるからであって、activityそのものがboundedであるとは限らない。

Langackerがboundedとするsleep, walk等も、少なくとも⑳(a)(b)では非文

ではない。

⑳ (a)He was sleeping this morning, and he may still be sl㏄ping now.

  (b)He was walking this morning, and he may still be walking now.

一時的なlivingを表している筈の⑫(a)も継続的なコソテクストに入れても問

(11)

題はない⑫(b)。

(22) (a) He is living in London.

  (b)He was living in London last year, and he may still live here.

無論、(2別a)(b)が問題ないのは、文全体のアスペクトを決める主動詞のアスペ クトがstatic(Langackerでいうimperfective)だからである。だが、少なく ともliveそのものが基本的にboundedとは言えないのだから、 sleep, walk 自体もboundedとは限らないし、 activityもcyclicでindefinitely ongoing な場合もあるとは言えそうである5。

 少なくとも⑳(a)にしろ㈱にしろ、表現を見る限りにおいては、明確なbound−

aryは感じられない。いつのまにか気づいた時には始まっていて、そのうち終

わるかも知れないが、その状態の期間は任意で終わりは見えないのである。

㈱(=(19) Alice is stalking that bird again these days.[habitual reading]

では、⑫(a)(b)が一時的なニュアソスを帯びるのは何故であろうか?本稿では、

これをliveやstalkが、 boundedだからではなく、変化を意識させ、動きの中 の或一時期として捉えられるからではないだろうかと考える。(2別a)では「住

む場所の移動」、㈱では「習慣的行為の再開や休止」という、ON/OFFの変 化を意識しその途中でのONの一時期として現在を描いている訳である。変化

を意識しない場合は⑭となる。

(24)Alice stalks that bird these days.

5そもそも、彼自身の認知文法の枠組みにおいて示されている様に、−ing形をとった

動詞は一旦atemporalizeされ、 temporalにニュートラルな概念となる。特定の動詞

を、使用の場を離れてbounded等と言うのは、彼自身の枠組みと矛盾しているよう

に思われる。

(12)

この様に本稿では、be+V−ing形を動機づけ得るかどうかは、単にVが

boundedか否かということではなく、「出来事に変化を意識するかしないか」

だと考える。従って、Langackerのimperf㏄tive/perf㏄tiveではなく、別の

static/nonstaticという概念が必要となる。 Langackerのperf㏄tiveのイメー ジは、図2の(a)と(b)であるが、本稿のnonstaticは、(b)を変化として認識した

場合と図3の(d)を含む。

(b)}一一■1   ●   、

 .    ●

.    .     鳥

・        ◎

」          も.

(d)

     <図2>       <図3>

 本稿は、processが時間上の存在である以上、全てのprocessには基本的に

始まりと終わりがあると考える。static processと言えども、どこかで始まり

どこかで終わる。たとえ次の瞬間終わるかもしれなくても、表現のかかわる時 間において終わりも始まりも意識しないのが本稿のstatic processである。先 程rboudaryの認識というのは変化の認識の認識に他ならないのだから

homogeneousではない」と述べたが、例えば、⑳は或意味でboundedではあ

るが、「学生でなくなった瞬間」を表現の中に含んでいる訳ではない。即ち、

変化を含んでいない。

(29 He was a student for 3 years.

これはaglass of water等の場合の様に、物質名詞を区切ってみた場合に似 ている。aspotというのはboundary、即ち内側と外側の知覚における違いが

(13)

あることによって、aspotとして認識されるものだが、 waterは区切っても

区切ったことによって存在が認識されるのではない。次に述べるcontractibUity とも関係するが、水滴であっても瓶に入っていても水は水であり、物質として

認識する以上はboundaryは無関係である。

 この章では、static/nonstaticの区別においてboundaryというのは、直接

的というよりはその前後での変化を意識させ得る要素として間接的・部分的に 関わるということを述べた。

1−2−3. Contractibility

 constractibilityも、 homogeneityと同様、 mass nounとstatic processの

重要な側面である。Langackerが説明している様に、このcontractibilityと

は、 any subpart/any series of component states is itself a valid instance of the category (Langacker:1987:87)であることを意味する。即 ち、static processは、どの点を取っても動詞の表す全体像を備えている。

activityやachievement, accomplishment等の場合、時間経過に沿って一瞬

一瞬の絵は異なるので・動詞の全体像を描くには・或一定の時間が必要である・

例えば、stop等のachievementでは、動いている事物が動かなくなる変化、

draw a circle等のaccomplishmentでは、始めて終える迄、 walk等の

activityでは肢体の動きや位置変化等が捉えられ、時間軸上の変化が認識され て初めて動詞の全体像が捉えられる。だが、static processではどの絵も同じ というのがその定義であり、一瞬で動詞の表象の全体が描けるのである。勿論

「変化していないという認識」を持つにも時間が必要だが、変化していないと いう認識を支えるものがこのcontractibilityなのである。

 このcontractibilityは、単純現在形が表すprocessが何故基本的にstatic であるかを説明してくれる。英語の単純形が表すのは動詞の全体像であり、

(14)

non−modalの現在形は、発話者が現実現在のこととして認識する事態を表す。

従って単純現在形は現在の瞬間で動詞の全体像が捉えられなければならず、必

然的にcontractibleであるstaticでなければならない6。典型的なstatic

processが、問題なく単純現在形で表せ(e.g.He knows the answer.)、例え ばHe takes a shower now.が現在の実際の動作を指さないのはこの故であ る。nonstaticの場合、一瞬一瞬で絵が異なるので、発話時の一瞬では動作と

しての全体像は知覚できず、認識した際には終わっていて、表現対象の事態は

必然的に過去形となるからである。現在の予定やgeneric,habitual等の

垣gher−order processは物事の一定期間変わらないと見なした性質や道理なの で、全てcontractibleでありstaticである。

 この様に英語の単純現在形は「今現在進行中の動作」は表現しない。それを 表現するのが進行形と言う訳ではなかろうか。動作は一旦atemporalなing 形で捉えられ、be動詞というstatic processの一般形と統合されることによ

り時制文となり、現在進行中の事態の動詞表現となる。もともとcontractible な事態であれば、現在という一瞬で掌握可能で単純現在形で表せるので、わざ わざより複雑な構造の進行形にする必要はない。だからstatic processは、

be+V−ingのVにすると奇妙なのである。従って、進行形be+V−ingのVで表 わしたということは、Vに対応する出来事をnonstatic、つまり何らかの変化

を意識した事態として認識したということであり、進行形というのは現在をそ の途中の状態として表現しているというのが本稿の主張である。

 進行形be+V−ingのVに対応する出来事がcontractibleでないのに対し、

be+V−ing全体の主動詞であるbeはstatic processを表すので、進行形全体

はstaticでcontractibleである。 contractible、即ち「どの点、又は期間を取っ 6この動詞の全体像が指すものとはLangacker的に言うとfull instanciation of the

processである。

(15)

ても全体像を備えている」ということは、glass of waterと同様、様々な自 由自在の広がりをも持ち得るということであり。従ってstatic processには、

単純形、進行形全体の場合を含め、一瞬という点的なものから永続的なもの迄

あり得る㈲(a)一(e)。

¢⑤(a)It is 4:53:55 p.m.

  (b) She was a student for 20 years.

  (c) She loves you.

  (d) 2plus 2 makes four.

  (e) The earth goes around the sun.

(27)(a) He is taking a nap now.

  (b)At 50 clock yesterday, he was taking a nap.

  (c) She is writing a book now.

  (d) The earth is going around the sun.

⑰(a)は、基本的にtaking a napの途中である現在の一瞬を捉えたものである

が、現在が同じ状況に当てはまる状態は、しばらく続くかも知れない。又㈲

(d)の様に、V−ingで表現された動きがほぼ永遠に続くと想定されている場合も あるが、それは、現在があと何十億年かは続くとみられている事態の一部だか らである。基本的に⑰(d)が問題にするのは、動いている「今」であり、かつ それがcontractibleなstateであるということである。

 Mittwoch(1988:233−234)が、「進行形というのは基本的に (in capturing amoment of a changing situation)astill from a moving picture だ」

と言っており、筆者も同意見であるが、このamomentというのは、常に一

瞬という意味ではなく、動きに対する相対的な一部と考えるべきであろう。例

えば㈱(c)のnowは一瞬というよりは、最近という漠然とした期間を表してい

る。⑳(b)がおかしな文だと感じられるのは、Mittwoch(1988)が指摘している

様に、「本を書くという作業は、様々なレベルの複雑な活動と長い時間を要し、

(16)

手紙を書くといった1、2時間や1日や2日の作業では済まないものなので、

at 60 clockを本を書く一部として捉えるのには無理があるから」であろう7。

(28)(=(15))(a) John was writing a letter at 60 clock.

    (b) *John was writing a book at 60 clock.

 この様に、contractibilityとは、一瞬にして掌握可能でかつ自由自在の広が

りを意味しうる概念である。この概念は、2章のdurationalとの関連で重要

となる。

1−2−4. Non−replicability

 Langackerは、彼のimperf㏄tive processという概念の持つもう一つの性 質として最後にnon−replicabilityを挙げる。それは端的に言えば、複数の boundaryを含意するagain and againとは(変化を意識させるので)、共起

できないということである。

(2旬  Harry played the tune again and again.

㈹  *Harry resembled his father again and again.

しかし、確かに00はおかしいが、againのみならばstatic processとも共起可 能である⑪。勿論㈹は、別の状態であったものからの現況への変化という面よ

りは、現況そのものについて述べていて、前も同じ状況があったという意味で

7これは、㈹(a)一(d)ではいずれもおかしくないのに、 (e)が少し妙に感じられるのと

似ている。

(m) (a) Abody has two arms.

  (b)An arm has an elbow and a hand.

  (c)Ahand has five fingers.

  (d)Afinger has three knuckles.

  (e) ??Abody has twenty eight knuckles.(1.angacker:1978b:119)

(17)

againと言っている訳である8。従って単にreplicateされた事態と言っても、

変化に焦点が当たる場合と変化を意識しない場合とがあると言えるだろう。

G1) (a) He lives in London again.

  (b) Now he is a student again.

  (c)The cat is on the mat again.

  (d) The statue is standing on the hill again.

 さて1節では、本稿の代案として、複合構造をなす進行形be+V−ingの[V]

を捉える概念をnonstatic、[全体]をstaticとし、 staticの「動きや変化を意

識しない、又は含まない」という特徴を、homogeneousかつcontractible、

即ち一瞬で全体像を捉えることができかつ自由自在の期間が想定されるが、終

わって次の状態になる変化は含まないことと肉付けした。従ってboundaryや

replicabilityについては、そこに変化や動きを認識した場合は無論nonstatic

ということになるが、boundedでreplicatedであっても、その状態に入って

しまってからや変化する一歩手前迄、又は変化が曖昧で意識できない場合はや

はりstaticである。又、何故static processはbe+V−ingのVになれないか

という理由と、進行形は全体でstatic processであること、進行形全体の表す

状態はbe+V−ingのVの事態の「意味のある」一部であることにも概略的に

8Langacker自身の例にも、次のようなものがある。

6v)Alice is stalking that bird every morning again.

Langacker自身は㈹のagainをbe+V−ingのVの部分がboundedである間接的な要 因と言うが、このagainはVの部分というよりは、進行形全体を修飾していると考え るべきだろうし、少なくともその読みは可能であろう。Langacker自身も進行形be

+V−ingとはperfectiveであるVをimperf㏄tivizeする構文だといっており、進行形

全体はimperf㏄tiveであるので、 imperfectiveでもagainと共起している例と言え

るだろう。

(18)

触れた。

2.Adverbials and the C㎝positional Structure of the Progressive  この章ではここまで見てきた進行形の性質を副詞との関係で敷桁する。これ までも、単純形と進行形では、副詞の共起可能性が異なることが観察されてい

る。そこには、副詞がbe+V−ingのVか全体のいずれに係るかが絡んでいる様 である。そこで、本章では前章で得られた「be+V−ingのVはnonstatic、全

体は変化の途中のある状態としてstatic」という仮説を適用し、進行形の更な る性質を洗い出しつつ、これまで未解決の問題に取り組む。

2−1. The Progressive and Degree Adverbials

 Bertinetto(1994)は、 Langacker等の進行形を(全体で)stativeとする見 解に反論し、例えば次の⑬(a)(b)に見られる様な、表面的な違いを並べ、進行 形とstativeは異るとする。

㈱ (a) Little by little, the snow was covering the land.

  (b) *Little by little, John was angry.

しかしlittle by Iittleが係るのは、 be+V−ingのVの表わすものであって進行 形全体ではなく、幽(b)のwasは変化を伴わないのでこの様な副詞と馴染まな いのも当然である。Langackerは「進行形とはperfective processを

imperfectivizeした構文だ」と言ってはいるが、単純形のstativeと進行形を 全く同じとは言っていない。どちらもstaticであっても、単純形と複合的な 進行形全体が全ての面で同じ筈はなく、違っていて当然である。この様に、

stativeの概念規定やbe+V−ingの[Vのレベル]と[全体のレベル]を区別しな

い議論は不毛である。それまで漠然と捉えられていた進行形の複合的意味構造

(19)

を見定めたことにも認知文法の功績がある。

 ただLangackerも、 imperfectiveという点では同じである単純形と進行形 全体がどの様に異なるかについては言及していない。そこで本稿では、次に Mittwoch指摘するdurationalと進行形の共起可能性に注目し、進行形の性

質に今一歩踏み込み、考察を進めたい。

2−2. The Progressive and Durationals

 Mittwoch(1988)は、「例えば2時間といった特定期間で区切った過去の動

作は、 futurate の読みをしない限りは進行形にはなれない」という、それ

まで話題に上らなかった進行形の性質を指摘する。(b)が容認可能なのは

futurate の意で、その読みができないから㈹(a)は容認不可と言う。これは、

前述した様に、activityでかつboundedなので、 Langackerの説明だけでは

解決できない現象である。

⑬ (a)(=(4)(b)) *It was raining for 2 hours.

  (b)      John was working for 2 hours.

 彼女は、この現象を説明するにあたり、面白い洞察を行っている。彼女は進

行形を「一枚の紙に書いた線を、もう一枚の紙に空けた窓を通して見ている様

なもの」と例える。つまり、⑬(a)で言えば、雨が降っていたのは2時間より

長い時間であった可能性があり、窓から見える線は単に窓によって区切られた

知覚であって、動作の期間とは関係ない、だから⑬(a)が非文だと言うのであ

る。これは、進行形の複合的構造の一面を直観的にうまく捉えている。線が描

かれた紙の絵はbe+V−ingのVが描く事態に相当し、進行形全体が描くもの

は窓を通してみた事態なのだ。しかし、その窓に特定期間を想定できない理由

は今一つ明確でない。更に言えば、「明確に期間を区切った過去の動作は進行

(20)

形にはなれない」という彼女の観察も怪しい。何故なら、 futurate の読みを しなくても、観)は十分に容認可能だからである9。

⑭(=(4)(a)) He was standing there for 2 hours.

β》         He stood there for 2 hours.

即ち、⑭の for 2 hours は、窓で区切られた期間を表し、進行形全体で表さ れるstatic processを修飾している。 Mittwoch(1988)は進行形の複合構造を 直観的には感じながら、副詞との関係では捉え損ねている様である。

 彼女は又、進行形とは「動画の中から静止画を一枚引き抜いて来たようなも

の」とも言う。この直観を今一歩押し進めれば、⑬(a)と⑭の違いは歴然とし ている。⑭の引き抜いてきた絵は、動きの中の一瞬としては認識されているが、

それ自体は動かないものなのだ。⑬(a)が容認不可能なのは、次の様な理由に 依ると考えられる。先ず「2時間」が、「雨が降った」という動きを修飾する のであれば lt rained for 2 hours. と言えば済むことで、それ以上複雑な

構造にする必要はない。同時に、⑬(a)の2hoursが進行形全体にかかってい るとすると、もっと長い時間の動きの一部のstaticな2時間ということにな

るが、⑬(a)ではその解釈はできない。それに対し、⑭では、このbe+V−ing

のVの表わすものには動きが感じられるが、⑭の進行形全体に係る2hours

の間には動きはない。進行形とは、「引き抜いて来た一枚の静止画」とも言え 9Mittwoch(1988)は、類似の例(v)でwearそのものをstativeといって例外視し、そ

のstativeの一部だから全体でもstativeと言うが、それでは(v)の(a)をstaticと見た 場合の(b)との違いを説明できない。本稿では(a)のwearはnonstaticと考え、 static

なのは「進行形に組み込まれた動作」の途中の静的な部分と(b)の場合である。

Mittwoch(1988)が見落としているのはやはり進行形の複合構造と副詞の関係であろう。

(v)(a) John was wearing sunglasses when he stepped off the bus.

  (b) John wore sunglasses when he stepped off the bus.

(21)

るが、ビデオのポーズ状態とも言えそうである。動きを意識しつつも「ポーズ

にした期間」を問題にすれば、⑭の様にdurationalとも共起でき、ポーズ状

態の期間だけを問題にすれば、㈲という言い方になるのである。⑭との違いは、

前後の動きを意識するかどうかである。同じ事が、⑯聞の(a)(b)の違いについ ても言えるだろう。一般に㈱(a)の説明に使われる「一時的」やboundedでは、

⑯(a)は説明できない。living in London for 3 yearsは十分bounded

episodeの様に思われるからだ1°。

㈹ (a) *She was living in London for 3 years.

  (b)  She lived in ]London for 3 years.

G7)(a) She was living in London.

  (b)  She lived in ]London.

本稿では、⑰(a)のliveは住む場所を変えるという大きな動きの認識に対応し

た事態を表しているからbe十V−ingのVに収まることができ、その際、そのV

の期間は⑰(a)全体の表象より広い範囲の動きとなる。その中の一部として進 行形全体の表象である期間を捉えているから、㈱(a)には相対的に一時的なニュ

アソスが生まれるのである。実際にロソドソに住んでいた期間は、物理的には

⑰の(a)の方が(b)より長かったということは十分にあり得る。

  又、㈱と陶の違いは、通常殆ど感じられないが、durationalとの共起可能性 の違い㈲、㈲から、やはり㈹では動きが背後にあるということが言えそうだ。

寝ているstaticな間だけを表現するのは倒、@1)であり、sleepingが終わってい  る所まで含むのが⑫であろう。

10 uで表されている「住む場所の変化を含む動き」の期間を3年間と言うならば、

living in Londonという言葉だけでは表せない。仮に3yearsが修飾するものを

be+V−ing全体、即ち「その動きの中の一時期」とすると、 be+V−ing全体は動きで

ないはずで、そうなると、単に⑯(b)の様なstatic processになる。いずれにしろ期間

 と期間の対象が不整合である。

(22)

(38) He was sleeping.

陶  He was alseep.

⑩ *He was sleeping for 2 hours.(except habitual reading)

⑭  He was asl㏄p for 2 hours.

⑫  He slept for 2 hours.

 尚、durationalがall morning、 for hours,等のlooseな表現については、

一種の誇張表現的なものと見ることができる場合があるので、3−2で触れる

ことにする。

3. Other Types of the English Progressive

 ここまで幾つかの基本的現象を通し、進行形に働く概念について本稿の見解

を固めてきた。この章では、これまでad hocに処理されてきたより周辺的な

現象を本稿の仮説を用いて再解釈し、統一的説明を試みる。ここで取り挙げる のは、habitual progressive、 alreadyと共起する場合、 futurate と呼ばれ る場合である。

3−1. Habitual Progressive

 Goldsmith and Woisetschlaeger(1982)は、⑬(a)、(b)に見られる進行形と単 純形の違いをphenomenal vs. structuralという概念で捉える。現在進行形 は、例えばthis engineを現在実際に動かした場合の[現象]を表すが、単純形 は、動かさずとも解っているthis engineについての[構造的知識コであると

言う。

㈲ (a)This engine isn tsmoking anymore. [phenomenal]

  (b)This engine doesn tsmoke anymore. [structural]

⑭ (a) Alice is stalking that bird again.[actual or non−actual]

  (b)Alice stalked that bird{for an hour/every morning for a year}.

(23)

Langacker(1994)は、この見解を大枠では是認するが、進行形にはphenomenal なものもstructuralなものもあるとを指摘し、進行形自体の本質をphenomenal という概念に帰するのは間違っていると言う。即ち、㈲(a)及び⑭(a)には、現

前の動作(phenomenal)の解釈だけでなく、habitua1な構造的読みもあると

いうのだ。しかしそれは、phenomenal vs. structuralとLangacker(1994)

のactual vs. nonactualが同一概念の場合に言えるのであって、 Langacker の批判は必ずしも適切であるとは言えない。Langackerはphenomenalを

actualという(⑭(a)で言えば「Aliceが今現在目の前で走り回っている」といった)

狭い意味で捉えるので、habitualとして解釈した場合は(non−actua1なので)

phenomenalでないことになる。しかし、 phenomenalを「動作そのものに限

らず、現象として存在する」という意味でより広い概念と取れば、「今その性

質なり習慣が生じている」という意味で、habitualとして解釈した場合も、

phenomenalと言えるのではないかと思う。⑭(a)、(b)は、 habitualとすると

いずれもnon−actualだが、その習性が今現象として起きている場合も、更に

その習性が規則的に起きる場合も考えられる。これもphenomenal vs.

structuralという対照で捉え得る(それぞれ㈲㈲の(a)、(b))。

㈲ (a)This engine{is smoking/smokes}every morning these days.

  (b)This engine smokes every morning every summer.

㈹ (a)Alice is stalking that bird every morning these days.

  (b)Alice stalks that bird every morning every summer.

ただ、Goldsmith and Woisetschlaeger(1982)を読む限りでは、 phenomenal vs. structuralがhabitua1まで視野に入れた概念かどうかは定かではない。

又、phenomenal vs. structuralという区別は、「典型的には動作を表す動詞」

の進行形と単純形の違いを捉えるには意味を持つが、He sliving in London.

とHe lives in London.等はどちらも「今彼がLondonに住んでいる」とい

(24)

う点でphenomenalとも言えそうで、曖昧な部分が多い。無論、彼等も、進行

形の全ての性質をこの対立概念で捉え得ると言っている訳ではないが、「どの 部分が説明でき、どの部分が他のどのような概念で説明されるべきか」につい

ては触れていない。結局のところphenomenalというのは、やはり、「意識さ

れた動きや変化の途中の状態」という概念に含めることができるだろう。

 habitualというのは、「繰り返し出来事が起きていること自体」というよ りは、演繹的に導かれた「規則性」であってprogram的性質を指し、或一定

期間のどの一点を取っても、性質や規則性が存在する様を言うものである。従っ

てhabitualそのものは、基本的にはstaticである。習慣や習性はしばらく続

き止み又始まるということもあり得る。そこに変化を意識すれば、当然 nonstaticで、 be+V−ingのVに組み込まれ得る㊨。それは、 He sliving in

London.の様な場合と同様である。その変化に更に一定の規則性があれば、

重層的habitualにもなり得る㈲。

㈲ In those days, I was getting very hungry every morning.

㈲ Every summer, I was very hungry every morning.

 但し、単に変化の途中と言うと休止期も含むが、休止期は否定形が受け持ち、

肯定形はやはりVの意味する現象が生じている場合という意味でならphenomenal と言う側面は進行形の表わす概念の一角を担っているというべきだろう。

3−2, Progressive and Always

 ㈲(a)の様なalways,又forever, continually, constantly等の副詞を含 む進行形は、「進行形=一時的」及び「進行形=今起きている動作」という図 式からはずれ、往々にして感情的な色合いを持つので、一種のレトリックだか

らという理由で、説明の当然の対象外とされる事が多いようだ。

(25)

⑲ (a) He is always losing things.

  (b)He was working all morning.

  (c)You were talking on the phone for hours.

⑩ Old Lilly is always feeding the pigeons in the park.

61) Old Lilly always feeds the pigeons in the park.

 Goldsmith and Woisetschlaeger(1982)は、◎と61)の違いを例のphenomenal vs. structuralの延長である evidence/knowledge という対立で捉える。彼 等は、Old Lillyの行動を疎ましく思っている場合、㊧1)ではその人を問題行動 をする人として決め付け構造的に固定しまうことになるので それを避ける為 の言い方が◎で、そこから mild reproof のニュアソスが生まれるという苦

しい説明をしている。しかし、もしそうだとすれば尚更61)は⑩より表立って非 難している度合が強い筈なのだが、そうとも言い切れない。そのように説明す

るよりは、Old Lillyは、目にするときはいつも、問題行動を起している、そ れが鼻につくという感じが⑩で、⑪は単にOld Lillyの行動の習慣性を表現し ていると言う方がすんなりphenomenal vs. structuralという概念に沿った

説明になりうると思われる。即ち、⑩が意識させるのは、be十V−ingのVが対

応している具体的な行動・動きであり、その行動が目にするときはいつも生じ ているという誇張表現になっていると考える方が自然であろう。その方が、必 ずしも mild reproof とはならない國の様な場合も含めて説明が可能となる。

岡 He is always working very hard.

 先程の「単純形は、主語の性質として決め付け構造的に固定するのに対し、

進行形は、phenomenalに今の個別の現象を表す」という説明は、次の⑬⑭の

(a)(b)の違いにはうまく当てはまる。しかしこれも、⑬(b)がHe sacting rude.

(26)

等と言い替え可能だとよく言われる様に、動作が感じられ、その一・過性の動作 が行われているという表現になっているので、本稿の主張と合致する。

⑬ (a) He srude.

  (b) He sbeing rude.

⑭ (a)He spolite.

  (b) He sbeing Polite.

 又、上記の様に進行形を捉えれば、all morning, for hours等の誇張表現

的でlooseなdurationalもこのalwaysと同類に入れ同様に説明できる。

陶 (a) You were talking on the phone for hours.

  (b) You talked on the phone for hours.

⑯ (a)He was working all morning.

  (b)He worked all morning.

㈲⑯の(b)が単にその動作が行われた時間を示す事実の描写であるのに対し、

(a)では、動作はその前後も続いていたかも知れないが、durationalの示す範 囲で知覚したいずれの時点でも動作の途中の状況であったという表現になる。

それが誇張的、又は感情的な意味合いに繋がるのは自然なことであろう。

3−3.   Futurate  Progressive

 ⑰は、しばしば futurate progressive等と呼ばれるが、本稿では(出来 事が起きるのは未来としても)表現としては、やはりbe+V−ingのVの表す

動作や変化の途中の「現在の状況」と考える。同様に⑱の場合も、現在存在す る予定や計画で変化を意識しない場合と見なす。即ち、⑰の場合は、「明日発 つ」という行動を拡大解釈し、核となる「例えば『車に乗り込んで出発する』

という行動」だけでなく、その前段階の精神的な面も含めた準備段階にあるこ

とを意識させ、現在その渦中にあるという状態だと考える。これらの進行形が

(27)

しばしば近接未来と呼ばれるのは、この為であろう。Mittwoch(1988)の例㈹

も、これから2時間働くことになっていてそのスケジュールを考慮して行動し

ている状況を示していると見なす。

㈲ They are leaving tomorrow.

倒 They leave tomorrow.

陶 He was working for 2 hours.

 この様に考えれば、achievement(stoP, die等)の進行形も同様に捉えうる。

動きが止まる瞬間だったり、生命が失われる瞬間等、変化自体の特徴的部分が 一瞬で生じる場合、それが進行形になると、一瞬の途中という解釈は、ビデオ でスローモーショソにでもしない限り成り立たないので、拡大解釈された変化 の一部という意味になる傾向にある。ブレーキを踏んで止まるという行動に入 り、だんだん速度が落ちていく変化の途中が捉えられているのが㈹であり、死 ぬといっても、だんだん体の様々な部分が機能しなくなり、ついには心臓又は 脳が動かなくなるのが一般的な死であるとすると、その方向の変化が捉えられ れば、現在をその途中の状態として見なすことができ、㈹は死の一歩手前とい

う表現になるのだと思う。

◎  The bus is stopPing soon.

⑤) He sdying.

● It was flashing.

 働の様に、瞬間的な変化が連続的な変化の一部として解釈されるというのも 同じ理屈であろう。進行形が意識した変化の最中であることを表現することか ら生じる解釈なのである。言い換えれば、現在をある変化の渦中として捉える から進行形が使われる訳である。

 単に、「動作の進行の最初の段階」という言い方でこの現象を捉えようとす

(28)

ると、Smith(1983)の言う様に、⑬についてはいささかfar−fetchedというこ とになるかもしれない。だが、本稿で規定してきたように、動作や変化を意識 した現段階の状態と考えれば、⑭との違いも説明できる上、不自然でもないだ

ろう。

㈹ The sun is setting at 5 tomorrow.

  The train is leaving at noon.

⑭ The sun sets at 5 tomorrow.

  The train leaves at noon.

4. Mechanism of the English Progressive

 ここまで、進行形という現象に働く概念や進行形で表現する意味について議 論を重ねてきた。この章では、一歩踏み込んで、何故その概念の表象に進行形

という形を必要とするのか、何故be+V−ingのVが対応する出来事がstatic ではいけないのかを考え、単純形のstaticと進行形全体の表すstaticの相違

を再確認しておきたい。

 Langackerは、「進行形は、 a perfective processをimperfectivizeする構 文で、imperf㏄tiveが進行形be+V−ingのVになれないのは、既にimperf㏄tive なものをimperfectivizeする必要がないから」と言う。だがそれにしても、

「そもそも何故perfectiveをimperf㏄tivizeしなくてはいけないのか」という 疑問は残る。その原理を掴まなければ、「perfectiveをimperf㏄tivizeしたも

の」と「既にimperfectiveなもの」がどの様に異なるのかは説明できない。

又もし㈲が、「進行形はperfective expressionの存在を前提とし、それに或 操作を加えたもの」を意味しているとしたら、かなり問題である。

⑮ The progressive construction overall has the eff㏄t of imperf㏄tivizing   what would otherwise be a perf㏄tive expression.(Langacker:1987b:256)

(29)

 例えばLangacker(1994)は「habitualもperfectiveな場合があり、だから

㈹の様な進行形が可能だ」と言う。彼の基本的イメージはLangacker(1994)

から転載の次の図4,5である。だが、perfective habitualは文として存在す る訳ではない。もし仮に、Langacker(1994)で㈹と併記されているθが、彼の 言うhabitual perfectiveだとすると、彼の言うimperf㏄tiveとはdurational

と共起すればperfectiveになることになり、それでは辻褄が合わない。2章で

見たようにそれを進行形にもできない。本稿では㊧りは、これまで述べてきた様 に、ある期間続いた習慣を表し変化を含まないのでstatic processであり、こ

れそのものを進行形にする必要はない。⑯、◎のbe+V−ingのVは、一回又

は繰り返し続く実際の動作という意味では勿論、habitualに解釈した場合も、

習性の変化が意識されているのでnonstaticである。それぞれを本稿なりにイ

メージ化したのが図6である。

(a) Per⑫c6ve   (b)  Im 1允cdve   (c)     Progressive

<図4>

(a)  P㎏r飴cUve Habitual    (b) Impe㎡ヒc6ve Ha崩t岨1   (c)

●●●gー4●■●}一→●●●1−一{●●●

<図5>

(30)

Progressive

Progressive Habitual

<図6>

㈹  Alice is stalking that bird again.

θ Alice stalked that bird every morning for a year.

◎ Alice was stalking that bird again.

陶 Alice stalks that l)ird.

又、1−2−3.で述べた様にcontractibleでなければ現在の一瞬では全体像

が捉えられないので、現在単純形ではnonstatic processは表せない。裏を返 せば、単純現在形で捉えられる事態は、actualなものもnon−actualなものも 全てstaticである11。陶が表すのは、 habitual等のstatic processでしかない のである。従ってLangackerの言うbounded habitualが存在するとすれば、

単純形時制文の主動詞としてではなく、意識の上で捉えられた観念的なもので あり、文としては進行形のing形の中に組み込まれた形でしかない。

 このあたりに英語の進行形の存在意義が見い出せそうである。即ち、英語に

進行形が必要なのは、単純現在形の文ではnonstatic processを表せない為だ

と考えられる。単純形でも進行中の動きを表現できる仏語や独語とはこの点で

異なっている様だ12。歴史的な事実はともかく、現在の英語の単純現在形では、

(31)

staticは表せるが、現在起きているnonstaticな動きの途中経過を表現できな い。それ故進行形が必要なのである。単純形では表せない進行中のnonstatic processを現時点で捉え時制文として表現する為の構文が英語の現在進行形と

言えるだろう。

 次にこの見地に立って、be+V−ingのVがstaticではいけない必然性を再検 討してみる。動詞をing形にするということは、認知文法で正しく捉えられて

いる様に、時制文の主動詞の持つ時間的要素を捨象するということである。そ

のことによって、全体像を観念的に捉え、be動詞と結びつけ再度時間の上で

捉え直し、その動きの途中としての状態を表現するのが進行形という訳である。

static process自体は、名詞句(Knowing is believing.)や(Not knowing what to do,_)現在分詞でならば、 ing形になれるので、 static process

そのものがing形になれないのではない。従って進行形be+V−ingのVが staticではいけない理由は、 beに結びつき全体でstaticになることに関わる。

11 O述した様にstaticであれば、 homogeneousでcontractibleだから現在の一瞬でも 捉え得る。genericと考えられている事態も一応現在変化しない安定した世の中の物 事のあり方であるという意味でstaticであり、その表現も単純現在形が担う。

structualで演繹的に理解される世の中の森羅万象の仕組み、人やものの行動パター  ソや性質、こうの話はこういう話、何々のやり方、作り方、ルールや約束事決まり事 を表すプログラム、行動予定のリスト、紙に書いて「そういうもの」と理解した後は 変化しないものとして記憶されているものだ。勿論それらは書き換えられ、更新され ていくことがあるが、更新する事自体はnonstaticながら、更新された後は再度

staticである。

12 坙{語での「ている」と英語のing形は分布も意味機能も異なるので一概には比較し にくいが、日本語の動詞は、「ある」や「いる」以外は(「知らない状態」から「知っ ている状態」への変化を表す)「知る」等の様に殆どnonstaticであるので、英語で はstaticで現在形で言えるknowにあたる場合も「知っている」という「ている」

形を付加する必要がある。「それわかるなあ」と言うときの「わかる」はgenericの

意味でstaticである。

(32)

まず一つは、staticであれば、 contractibleだからいつでも単純形で表せるの で、わざわざより複雑にする必要がないという事が挙げられる。言ってみれば

He is a student.というのは、「その途中」という言い方をしなくても既に 現在は当然当該の事態の途中なのである。即ち、㈹(b)が問題ないのに㈹(a)が 容認不可能なのは、㈹(b)では思考の途中でこうしようかああしようかと考え ている途中の動きのある思考なのに対し、㈹(a)は映画を見た後の感想でそれ 自体はstaticである、それには I think.... という言い方ができるのでそ れ以上複雑にする必要がないと共に、staticということは始まりも終わりも意 識しないということなので、「その途中」という概念も存在し得ないからだと

考えられる13。

㈹ (a)*Iam thinking that the movie was good.

  (b) Iam thinking of going to a movie tonight.

 例えば知覚動詞の単純形と進行形の対立については、staticとagentivity

の関係について掘り下げる必要があるので、本稿では深く立ち入らないが、基

13

rmith(1983)は容認可能な文として㈹(a)の類である←i)を挙げ、説明を試みているが、

 筆者の調べた範囲では、かなり変か容認不可能との判断が圧倒的多数だったので、本 稿では議論の対象外とする。但し、(e)は、「悪夢を見たから」等というコンテクスト を考えれば、最近の出来事として意識できるので考えられないこともないと思う。(a)

 も揺れる思考や判断の一時期という意味では有り得ないこともないが、that節の命 題はある一定の判断という感じがするのでやはりかなり奇妙だと思う。

㊤i)(a)She sthinking that she wants to go home.

  (b) They are doubting your word.

  (c)1 mhating zoology class.

  (d)The cake has been looking done for the last five minutes.

  (e) Peter is believing in ghosts these days.

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