高レベル放射性廃棄物の処分問題に関する 教材の開発と効果の分析
教育科学専攻
理数・生活系教育領域 田中 大樹
2018 年 2 月 6 日 提出
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< 目 次 >
1. は じ め に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・2 1.1. 問 題 の 所 在
1.2. 研 究 方 法
2. 教 材 の 開 発 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・8 2.1. 教 材 の 目 的
2.2. 自 分 ご と と し て 考 え る た め の 方 略 2.3. 教 材 の 構 成
3. 教 材 の 試 行 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・17 3.1. 試 行 ① の 概 要
3.2. 結 果 と 考 察
3.3. 教 員 へ の 聞 き 取 り 調 査 と 教 材 の 改 訂 3.4. 試 行 ② の 概 要
3.5. 結 果 と 考 察
4. 生 徒 の 変 容 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・54 4.1. 試 行 ① の 結 果 を も と に し た 分 析
4.2. 試 行 ② の 結 果 を も と に し た 分 析
5. 本 研 究 の ま と め ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・103
6. お わ り に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・104
7. 引 用 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・104
添 付 資 料 1: 生 徒 用 ワ ー ク シ ー ト ( 試 作 版 ) 添 付 資 料 2: 教 師 用 ワ ー ク シ ー ト ( 試 作 版 ) 添 付 資 料 3: 生 徒 用 ワ ー ク シ ー ト ( 完 成 版 ) 添 付 資 料 4: 教 師 用 ワ ー ク シ ー ト ( 完 成 版 )
2 1. は じ め に
1.1 問 題 の 所 在
2011 年 3 月 に 発 生 し た 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 で の 事 故 以 降 , エ ネ ル ギ ー に 関 す る 教 育 を 取 り 巻 く 環 境 は 大 き く 変 化 し て い る .文 部 科 学 省 か ら は ,放 射 線 に 関 す る 副 読 本 ( 文 部 科 学 省, 2011) が , 経 済 産 業 省 資 源 エ ネ ル ギ ー 庁 か ら は , エ ネ ル ギ ー に 関 す る 副 読 本 ( 経 済 産 業 省 資 源 エ ネ ル ギ ー 庁, 2015)が 全 国 の 小 中 学 校 に 配 布 さ れ た .ま た ,2014 年 度 か ら は 「 エ ネ ル ギ ー 教 育 モ デ ル 校 事 業 」 が 実 施 さ れ , 全 国 の 教 育 機 関 に お い て エ ネ ル ギ ー 教 育 が 活 発 に 実 施 さ れ て い る ( 公 益 財 団 法 人 日 本 科 学 技 術 振 興 財 団, 2014). さ ら に , 学 術 的 な 側 面 で は , 日 本 エ ネ ル ギ ー 環 境 教 育 学 会 か ら 教 員 を 対 象 と し た 書 籍 が 発 行 さ れ て お り
( 日 本 エ ネ ル ギ ー 環 境 教 育 学 会, 2016),年 度 末 に は ,全 国 の 教 員 を 対 象 と し た 研 修 会 が 実 施 さ れ て い る . こ の よ う に , エ ネ ル ギ ー に 関 す る 教 育 は よ り 一 層 重 視 さ れ つ つ あ る .
し か し , 非 常 に 重 大 で あ る に も 関 わ ら ず , 現 在 の エ ネ ル ギ ー 教 育 で も ほ と ん ど 触 れ ら れ て い な い 問 題 が あ る .そ れ は ,「 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 」で あ る .原 子 力 発 電 で 使 用 し た 核 燃 料 ( 以 下 , 使 用 済 み 燃 料 ) は , 青 森 県 六 ヶ 所 村 に あ る 再 処 理 工 場 で ウ ラ ン と プ ル ト ニ ウ ム を 取 り 出 し て 再 利 用 す る こ と に な っ て い る . し か し , 再 処 理 の 過 程 で は 核 分 裂 生 成 物 が 残 る た め , 処 分 が 必 要 に な る . 日 本 で は , 核 分 裂 生 成 物 か ら な る 廃 液 を ガ ラ ス と 溶 か し 合 わ せ , ス テ ン レ ス 容 器 の 中 で 冷 や し 固 め た 状 態 ( 以 下 , ガ ラ ス 固 化 体 ) に し , 地 下 300m よ り 深 く の 岩 盤 に 埋 設 す る 方 法 ( 以 下 , 地 層 処 分 ) を 採 用 す る こ と が 「 特 定 放 射 性 廃 棄 物 の 最 終 処 分 に 関 す る 法 律 」 で 制 定 さ れ て い る ( 衆 議 院, 2000).2000 年 に , 処 分 の 実 施 主 体 と な る 原 子 力 発 電 環 境 整 備 機 構( 以 下 ,NUMO)が 設 立 さ れ ,2002年 か ら 処 分 地 選 定 の た め の 調 査 を 受 け 入 れ る 自 治 体 を 公 募 し て い る . し か し , 現 在 ま で に 調 査 に は 至 っ て い な い . 国 は 2017 年 7 月 に , 地 層 処 分 に 関 係 す る 科 学 的 情 報 を ま と め た 「 科 学 的 特 性 マ ッ プ 」 を 公 表 し , 国 民 の 理 解 促 進 と 議 論 の 活 性 化 を 図 っ て い る と こ ろ で あ る ( 原 子 力 発 電 環 境 整 備 機 構, 2017).原 子 力 発 電 の 恩 恵 を 受 け た の は 現 世 代 で あ り ,将 来 の 世 代 に こ の 問 題 を 丸 投 げ す る こ と は 無 責 任 で あ る と い え る . 再 処 分 の 可 能 性 を 担 保 し な が ら , 現 世 代 で 処 分 の 方 針 を 固 め る こ と が 必 要 で あ る .
こ の 問 題 に つ い て ,日 本 学 術 会 議 は ,「 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 問 題 は ,そ の 重 要 性 と 緊 急 性 を 多 く の 国 民 が 認 識 す る 必 要 が あ り , 長 期 的 な 取 組 み と し て , 学 校 教 育 の 中 で 次 世 代 を 担 う 若 者 の 間 で も 認 識 を 高 め て い く 努 力 が 求 め ら れ る .」と 提 言 し て い る( 日 本 学 術 会 議, 2008).こ れ を 踏 ま え て ,NUMO は ,移 動 式 展 示 車 両「 ジ オ ミ ラ イ 号 」を 用 い て ,次 世 代 層 を 主 な 対 象 と し た イ ベ ン ト を 開 催 し て い る . ま た , 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 問 題 を 学 校 教 育 で 扱 う 取 り 組 み を 行 う 団 体 に 対 し て 支 援 を 行 い , 年 度 末 に は 東 京 で 各 団 体 の 成 果 を 共 有 す る 場 を 設 け て い る .さ ら に ,2017年 4月 に は ,小 中 学 校 を 対 象 と し た「 基 本 教 材 」 を 公 表 し た ( 原 子 力 発 電 環 境 整 備 機 構, 2017).
教 育 の 側 面 で は ,学 習 指 導 要 領 に 関 連 す る 記 述 が あ る .現 行 の 中 学 校 学 習 指 導 要 領 に は ,
「(7)科 学 技 術 と 人 間 」 の 内 容 の 取 り 扱 い と し て ,「 放 射 線 の 性 質 と 利 用 に も 触 れ る こ と 」 と 書 か れ て い る ( 文 部 科 学 省, 2008a). こ れ は 昭 和 44 年 以 来 , 約 40年 ぶ り に 放 射 線 の 学 習 が 復 活 し た も の で あ る .ま た ,「 ア エ ネ ル ギ ー 」の「(イ)エ ネ ル ギ ー 資 源 」に お い て ,「 原 子 力 発 電 で は ウ ラ ン な ど の 核 燃 料 か ら エ ネ ル ギ ー を 取 り 出 し て い る こ と , 核 燃 料 は 放 射 線 を 出 し て い る こ と や 放 射 線 は 自 然 界 に も 存 在 す る こ と , 放 射 線 は 透 過 性 な ど を も ち , 医 療
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や 製 造 業 な ど で 利 用 さ れ て い る こ と な ど に も 触 れ る .」 と 書 か れ て い る ( 文 部 科 学 省, 2008b). さ ら に ,「 ウ 自 然 環 境 の 保 全 と 科 学 技 術 の 応 用 」 の 「(ア)自 然 環 境 の 保 全 と 科 学 技 術 の 利 用 に つ い て 」で は ,「 第 1 分 野 及 び 第 2分 野 の 学 習 を 踏 ま え ,例 え ば ,エ ネ ル ギ ー や 物 質 の 利 用 と 自 然 環 境 の 保 全 な ど , 科 学 技 術 の 利 用 と 環 境 保 全 に か か わ る 事 柄 を テ ー マ と し て 取 り 上 げ ,生 徒 に 選 択 さ せ る よ う に す る .」と 書 か れ て お り ,テ ー マ の 例 と し て ,「 原 子 力 の 利 用 と そ の 課 題 」 が 挙 げ ら れ て い る ( 文 部 科 学 省, 2008c).
ま た ,2017 年 に 告 示 さ れ た 中 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 理 科 編 で は ,「(7)科 学 技 術 と 人 間 」 の「(ア)エ ネ ル ギ ー と 物 質 」に お い て ,「 エ ネ ル ギ ー 資 源 の 利 用 に つ い て は ,日 常 生 活 や 社 会 で 利 用 し て い る 石 油 や 天 然 ガ ス ,太 陽 光 な ど ,エ ネ ル ギ ー 資 源 の 種 類 や 入 手 方 法 ,水 力 , 火 力 , 原 子 力 , 太 陽 光 な ど に よ る 発 電 の 仕 組 み や そ れ ぞ れ の 特 徴 に つ い て 理 解 さ せ る . そ の 際 , 原 子 力 発 電 で は , ウ ラ ン な ど の 核 燃 料 か ら エ ネ ル ギ ー を 取 り 出 し て い る こ と に 触 れ る . 放 射 線 に つ い て は , 核 燃 料 か ら 出 て い た り , 自 然 界 に も 存 在 し , 地 中 や 空 気 中 の 物 質 か ら 出 て い た り ,宇 宙 か ら 降 り 注 い で い た り す る こ と な ど に も 触 れ る .」( 下 線 は 筆 者 追 加 ) と 書 か れ て い る( 文 部 科 学 省, 2017a).ま た ,「 東 日 本 大 震 災 以 降 ,社 会 に お い て ,放 射 線 に 対 す る 不 安 が 生 じ た り , 関 心 が 高 ま っ た り す る 中 , 理 科 に お い て は , 放 射 線 に つ い て 科 学 的 に 理 解 す る こ と が 重 要 で あ り ,放 射 線 に 関 す る 学 習 を 通 し て ,生 徒 た ち が 自 ら 思 考 し , 判 断 す る 力 を 育 成 す る こ と に も つ な が る と 考 え ら え る .」( 下 線 は 筆 者 追 加 ) と 書 か れ て お り , 知 識 を 理 解 す る だ け で は な く , 学 習 し た 知 識 を 活 用 し て 思 考 , 判 断 す る こ と が 求 め ら れ て い る ( 文 部 科 学 省, 2017a).
さ ら に ,「(7)科 学 技 術 と 人 間 」 の 「(イ)自 然 環 境 の 保 全 と 科 学 技 術 の 利 用 」 で は ,「 第 1 分 野 と 第 2分 野 の 学 習 を 生 か し , 科 学 技 術 の 発 展 と 人 間 生 活 と の 関 わ り 方 , 自 然 と 人 間 の 関 わ り 方 に つ い て 多 面 的 , 総 合 的 に 捉 え さ せ , 自 然 環 境 の 保 全 と 科 学 技 術 の 利 用 の 在 り 方 に つ い て 科 学 的 に 考 察 さ せ , 持 続 可 能 な 社 会 を つ く っ て い く こ と が 重 要 で あ る こ と を 認 識 さ せ る こ と が ね ら い で あ る .」,「 指 導 に 当 た っ て は ,設 定 し た テ ー マ に つ い て 科 学 技 術 の 利 用 と 自 然 環 境 の 保 全 に 注 目 さ せ , 科 学 的 な 根 拠 に 基 づ い て 意 思 決 定 さ せ る 場 面 を 設 け る こ と が 大 切 で あ る . 例 え ば , 意 思 決 定 を 行 う 場 面 で は , 資 源 の 利 用 は 私 た ち の 生 活 を 豊 か に す る 一 方 で 環 境 破 壊 を 引 き 起 こ す な ど , 同 時 に は 成 立 し に く い 事 柄 を 幾 つ か 提 示 し , 多 面 的 な 視 点 に 立 っ て 様 々 な 解 決 策 を 考 え さ せ た り , そ れ を 根 拠 と と も に 発 表 さ せ た り す る こ と な ど が 考 え ら れ る .」( 下 線 は 筆 者 追 加 ) と 書 か れ て お り , 思 考 判 断 す る 活 動 の 具 体 例 と し て , 多 面 的 な 視 点 に 立 っ た 思 考 や , 科 学 的 根 拠 に 基 づ い た 意 思 決 定 が 大 切 で あ る と 示 さ れ て い る ( 文 部 科 学 省, 2017b).
上 記 の 学 習 指 導 要 領 を 踏 ま え て , 現 行 の 理 科 や 社 会 科 の 教 科 書 で は , 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 に つ い て 扱 わ れ て い る . 平 成 28 年 度 版 の 理 科 と 社 会 科 の 教 科 書 に お け る 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 に 関 連 す る 記 述 を 表 1に 示 す .
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表 1. 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 に 関 連 す る 教 科 書 の 記 述
「 ウ ラ ン が 地 下 資 源 と し て 得 ら れ る 量 に も 限 り が あ る . ま た , 原 子 炉 の 中 で 放 射 線 が 発 生 し て お り , 慎 重 で 万 全 の 管 理 が 必 要 で あ る . さ ら に , 長 期 に 渡 っ て 放 射 線 を 出 す 廃 棄 物 が 生 じ る な ど , 解 決 し な け れ ば な ら な い 問 題 は 多 い .」
霧 田 ・ 森 本 ほ か 29 名 (2015)「 中 学 校 科 学 3」, 学 校 図 書 株 式 会 社 ,260.
「 原 子 炉 内 に は , 核 分 裂 に よ っ て 大 量 の 放 射 性 物 質 が た ま り , そ れ が 原 子 炉 の 外 に も れ る と , 土 壌 , 水 , 農 作 物 , 水 産 物 な ど を 汚 染 し , 人 体 に 健 康 被 害 が 出 る お そ れ も あ る . ま た ,原 子 炉 か ら 取 り 出 し た 使 用 済 み 核 燃 料 の 中 に は ,1000 年 以 上 も 強 い 放 射 線 を 出 し 続 け る 物 質 が 含 ま れ る た め , 安 全 な 形 で 管 理 し な け れ ば な ら な い . こ の よ う に , 原 子 力 を 利 用 す る と き に は 安 全 に 十 分 注 意 し て 行 う 必 要 が あ る .」
有 馬 ほ か 62 名 (2015)「 理 科 の 世 界 3」 大 日 本 図 書 株 式 会 社 ,286.
「 核 燃 料 や 使 い 終 え た 核 燃 料 ( 放 射 性 廃 棄 物 ) か ら 有 害 な 放 射 線 が 発 生 す る . 放 射 線 の 厳 し い 管 理 が 必 要 で あ る . 事 故 が 起 き た と き の 影 響 が 広 範 囲 か つ 長 期 間 に わ た る . 使 い 終 え た 核 燃 料 の 処 分 や 廃 炉 に す る こ と が 困 難 で あ る .」
塚 田 ほ か 58 名 (2015)「 未 来 へ 広 が る サ イ エ ン ス 3」 啓 林 館 株 式 会 社 ,192.
「 こ の よ う に ,放 射 線 は 様 々 な 場 面 で 活 用 さ れ て い る 一 方 で ,放 射 線 を 生 物 が 浴 び る( 被 曝 す る ) と , 細 胞 や DNA が 傷 つ い て し ま う 可 能 性 が あ る . 浴 び た 放 射 線 の 量 が 少 な け れ ば , ほ と ん ど の 場 合 , 細 胞 は 回 復 す る が , 一 度 に 大 量 の 放 射 線 を 浴 び る と 回 復 で き な く な り , さ ま ざ ま ざ 病 気 を 誘 発 し た り , と き に は 死 に い た っ た り す る な ど , 健 康 被 害 を 生 じ る こ と も あ る . そ の た め , 放 射 線 や 放 射 性 物 質 の あ つ か い に は , 細 心 の 注 意 や 配 慮 が 必 要 で あ る . 例 え ば , 原 子 力 発 電 所 で 使 う 核 燃 料 や 発 電 後 の 廃 棄 物 か ら は 放 射 線 が 出 て い る の で , 外 部 に も れ な い よ う に , 核 燃 料 や 廃 棄 物 の 管 理 , 原 子 炉 の 安 全 対 策 は 厳 重 に 行 わ な け れ ば な ら な い .」
塚 田 ほ か 58 名 (2015)「 未 来 へ 広 が る サ イ エ ン ス 3」 啓 林 館 株 式 会 社 ,195.
「 原 子 力 発 電 で は , 少 量 の 核 燃 料 で 大 き な 熱 エ ネ ル ギ ー を 得 る こ と が で き る . 大 気 を 汚 染 す る 排 出 ガ ス が 生 じ な い な ど の 利 点 が あ る . し か し , 核 燃 料 や 発 電 に よ っ て 生 じ る 核 廃 棄 物 が き わ め て 有 害 で あ る . 核 燃 料 か ら 得 ら れ る エ ネ ル ギ ー ( 核 分 裂 の エ ネ ル ギ ー ) の 制 御 に 高 度 な 技 術 が 必 要 と さ れ る な ど の 問 題 が あ る .」
細 矢 ほ か 28 名 (2015)「 自 然 の 探 究 中 学 校 理 科 3」 教 育 出 版 株 式 会 社 ,111.
「 こ う し た な か , 発 電 の 際 の 二 酸 化 炭 素 の 発 生 が 少 な く , 安 定 し た 電 力 供 給 が で き る エ ネ ル ギ ー の 開 発 が 進 め ら れ て い ま す . そ の 中 心 と な っ て い る 原 子 力 発 電 は , 日 本 で も 発 電 力 の 約 30%を 占 め て い ま す .一 方 で ,い っ た ん 事 故 が 起 き る と 重 大 な 被 害 が 発 生 す る こ と や , 放 射 性 廃 棄 物 ( 使 用 済 み 核 燃 料 な ど ) の 処 分 に 慎 重 な 対 応 が 必 要 な こ と な ど , 課 題 も 残 さ れ て い ま す .」
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中 村 ほ か 36 名 (2015)「 中 学 社 会 公 民 と も に 生 き る 」 教 育 出 版 株 式 会 社 ,184-185.
「 原 子 力 エ ネ ル ギ ー に よ る 原 子 力 発 電 は ,少 な い 燃 料 で 多 く の エ ネ ル ギ ー を つ く り 出 せ , 発 電 時 に 二 酸 化 炭 素 を 排 出 し な い 発 電 方 法 で す . し か し , 発 電 後 に 生 じ る 放 射 性 廃 棄 物 や 廃 止 後 の 発 電 所 を 安 全 に 処 理 す る 方 法 , そ の 費 用 の 確 保 , さ ら に は 事 故 を 起 こ さ な い た め の 安 全 対 策 や , 事 故 が 起 き た と き の 対 応 の 難 し さ な ど の 問 題 も 残 さ れ て い ま す .」
江 口 ほ か 9 名 (2015)「 社 会 科 中 学 校 の 公 民 」 株 式 会 社 帝 国 書 院 ,190.
「 国 内 に 資 源 を も た な い わ が 国 は , エ ネ ル ギ ー 資 源 の 80%以 上 を 輸 入 に 頼 っ て い ま す . わ が 国 で は , 海 外 か ら 燃 料 が 比 較 的 安 定 し て 供 給 さ れ , 温 暖 化 の 原 因 と な る 二 酸 化 炭 素 を 発 電 時 に 排 出 し な い 原 子 力 発 電 が , 発 電 量 の 約 3 割 を 占 め て き ま し た .し か し ,2011 年 の 東 日 本 大 震 災 に と も な う 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 の 事 故 で は , 放 射 性 物 質 が 飛 散 し , 多 く の 人 々 の 生 活 に 影 響 を 与 え て い ま す . こ の よ う な 甚 大 な 被 害 が も た ら さ れ た こ と を き っ か け に 安 全 性 が 議 論 さ れ て い ま す . ま た , 使 用 後 に 長 い 期 間 に わ た っ て 管 理 す る 必 要 が あ る 放 射 性 廃 棄 物 の 処 理 の 問 題 も あ り ま す . 日 本 の エ ネ ル ギ ー 構 成 を ど の よ う に す る か に つ い て は 議 論 が 続 い て い ま す .」
林 ほ か 50 名 (2015)「 中 学 社 会 公 民 的 分 野 」 日 本 文 教 出 版 株 式 会 社 ,194-195.
「 輸 入 資 源 の 確 保 が 難 し く , 温 室 効 果 ガ ス の 排 出 削 減 が 求 め ら れ て い る 中 , 日 本 で は エ ネ ル ギ ー 資 源 の 確 保 が 重 要 な 課 題 に な っ て い ま す . 原 子 力 発 電 は , 海 外 か ら 安 定 的 に エ ネ ル ギ ー を 供 給 で き , 少 な い 燃 料 で 多 く の エ ネ ル ギ ー を 取 り 出 せ ま す . ま た , 燃 料 を く り 返 し 利 用 で き ,発 電 時 に 二 酸 化 炭 素 を 排 出 し ま せ ん .し か し ,放 射 性 物 質 を 扱 う た め , 事 故 が 起 こ る と 甚 大 な 被 害 が 発 生 し ま す . ま た , 発 電 後 に 残 さ れ る 放 射 性 廃 棄 物 の 最 終 処 分 場 を ど こ に す る か と い う 課 題 も あ り ま す .」
坂 上 ほ か 49 名 (2015)「 新 し い 社 会 公 民 」 東 京 書 籍 株 式 会 社 ,185.
「 原 子 力 発 電 で は , 使 用 ず み 燃 料 な ど の 放 射 性 廃 棄 物 が 発 生 す る . 特 に 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 は , 強 い 放 射 能 を 持 ち , 放 射 能 が 低 下 す る ま で に 時 間 が か か る た め , 人 々 の 生 活 に 影 響 を あ た え る こ と の な い よ う , 地 中 深 く に う め て 処 分 す る 必 要 が あ る . 日 本 政 府 は こ の 最 終 処 分 場 を 日 本 国 内 に 造 る こ と を 検 討 し て い る が , ど こ に 造 る か ま だ 決 ま っ て い な い .」
坂 上 ほ か 49 名 (2015)「 新 し い 社 会 公 民 」 東 京 書 籍 株 式 会 社 ,245.
「 原 子 力 発 電 は 放 射 性 物 質 を あ つ か う こ と に つ い て 大 き な 不 安 が あ る 一 方 , 地 球 温 暖 化 の 原 因 と な る 二 酸 化 炭 素 を ほ と ん ど 出 さ ず , 原 料 と な る ウ ラ ン を く り 返 し 利 用 す る こ と で 大 き な エ ネ ル ギ ー を 安 定 的 に 得 ら れ る 利 点 も 指 摘 さ れ て い ま す . そ の た め , 大 量 の 石 油 等 を 輸 入 に 頼 る 日 本 で は 重 要 な エ ネ ル ギ ー 源 と な っ て き ま し た .し か し ,2011 年 3 月 の 東 日 本 大 震 災 の 際 に 起 き た 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 の 事 故 で は , 放 射 性 物 質 に よ る 深 刻 な 被 害 を も た ら し ま し た . こ の 事 故 は 日 本 だ け で な く , 世 界 各 国 の 原 子 力 発 電 の あ り 方
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に も 影 響 を あ た え , 各 国 で エ ネ ル ギ ー 政 策 全 体 を 見 直 す 議 論 が 活 性 化 し て い ま す . 私 た ち は 今 回 の 事 故 の 教 訓 を 生 か し , 原 子 力 発 電 へ の 依 存 を で き る 限 り 減 ら し つ つ , 放 射 性 廃 棄 物 の 処 理 問 題 や 火 力 発 電 所 の 効 率 化 , 安 定 し て 低 コ ス ト に エ ネ ル ギ ー を 供 給 で き る し く み 作 り , 地 球 温 暖 化 対 策 な ど に 取 り 組 ん で い か な け れ ば な り ま せ ん .」
伊 藤 ほ か 23 名 (2015)「 新 し い み ん な の 公 民 」 株 式 会 社 育 鵬 社 ,200-201.
「 先 進 国 を 中 心 に 利 用 さ れ て い る 原 子 力 発 電 は ,発 電 時 に ほ と ん ど CO2を 出 さ ず に 巨 大 な エ ネ ル ギ ー を 生 み 出 す こ と が で き る と い わ れ る .し か し ,2011 年 の 東 日 本 大 震 災 で お き た 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 の 事 故 の よ う に , 一 度 事 故 が お こ れ ば 取 り 返 し の つ か な い 大 き な 被 害 が 生 じ る . ま た , 使 用 後 の 核 燃 料 を 無 害 に 処 理 で き る 技 術 が 開 発 さ れ て い な い た め , 長 期 に わ た っ て 危 険 な 放 射 性 廃 棄 物 が 蓄 積 さ れ る と い う 問 題 も あ り , 対 応 が 求 め ら れ て い る .」
中 村 ほ か 9 名 (2015)「 中 学 公 民 日 本 の 社 会 と 世 界 」 株 式 会 社 清 水 書 院 ,175.
高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 が 完 了 す る ま で に は , 約 100 年 以 上 の 長 い 期 間 を 要 す る . ま た , 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 放 射 能 が 核 燃 料 の 原 料 で あ る ウ ラ ン 鉱 石 と 同 等 に な る ま で に , 数 万 年 と い う 極 め て 長 い 期 間 を 要 す る . そ れ だ け の 期 間 , 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 存 在 と 危 険 性 を 将 来 の 世 代 に 伝 え て い く こ と が 必 要 で あ る . 現 在 , 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 存 在 と 危 険 性 を 後 世 に ど の よ う に 伝 え て い く か が 検 討 さ れ て い る . し か し , 今 後 も 言 語 が 変 化 し て い く こ と が 予 想 さ れ る た め , 現 時 点 で 取 り 得 る 手 段 に よ り 数 万 年 後 の 世 代 に ま で 確 実 に 伝 え る こ と は 不 可 能 で あ る . そ の た め , 世 代 ご と に , こ の 問 題 に つ い て 語 り 継 い で い く 必 要 が あ り , こ の 役 割 を 教 育 が 担 う べ き で あ る .
ま た , 今 後 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 地 を 決 定 す る 際 に は , 住 民 投 票 な ど の 方 法 で 国 民 の 意 思 が 問 わ れ る こ と に な る . 早 け れ ば , 約 20 年 後 に は 処 分 地 を 決 定 す る こ と が 計 画 さ れ て お り , 現 在 , 義 務 教 育 課 程 で 学 ん で い る 子 ど も た ち も そ の 対 象 と な る . こ の こ と か ら も , 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 に つ い て 子 ど も た ち に 教 え る 必 要 が あ る .
こ れ ま で 述 べ て き た よ う に , 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 は 我 が 国 に と っ て 喫 緊 の 課 題 で あ り , 解 決 ま で に 非 常 に 長 い 期 間 を 要 す る . そ の た め , 学 校 教 育 を 通 し て 次 世 代 を 担 う 子 ど も た ち に 伝 え て い く こ と が 必 要 で あ る . 現 状 , こ の 問 題 を 教 育 現 場 で 扱 っ た 取 り 組 み が い く つ か 報 告 さ れ て い る . 森 山 ら は , 中 学 校 3 年 生 を 対 象 と し て 授 業 実 践 を 行 っ た . 学 習 課 題 を 「 放 射 線 源 を 地 下 に 埋 め る と , 地 上 で の 放 射 線 量 は ど う な る だ ろ う か 」 と し , モ デ ル 実 験 を 通 し て 岩 石 の 距 離 と 放 射 線 量 の 規 則 性 を 探 究 し た . こ の 実 践 に つ い て , 成 果 と し て , 生 徒 自 身 が 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 地 層 処 分 に つ い て 考 え る き っ か け を つ く る こ と が で き た こ と を 挙 げ , 一 方 で , 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 に 関 し て 授 業 展 開 す る 上 で , 様 々 な 客 観 的 か つ 科 学 的 な 事 実 を 生 徒 が 獲 得 で き る よ う に す る こ と を 課 題 と し て 挙 げ て い る( 森 山, 斉 藤, 高 橋, 大 石, 2015).奥 野 ・ 大 矢 は ,2009 年 に ス イ ス ITC(International Training Center)で 開 発 さ れ た 放 射 性 廃 棄 物 処 分 地 選 定 に 関 す る ゲ ー ム を 日 本 向 け に カ ス タ マ イ ズ す る と と も に , 電 子 デ バ イ ス を 用 い て 実 施 で き る ゲ ー ム を 開 発 し た ( 奥 野 大 矢, 2010). ま た , 萱 野 ら は , こ の ゲ ー ム を 簡 略 化 し 中 学 生 向 け に ア レ ン ジ し て , 中 学 校 2 年 生 を 対 象 と し て 授 業 実 践 を 行 っ た .ゲ ー ム で は ,初 期 設 定 と し て ,「 安 全 性( 地 質 構 造 へ の
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影 響 ・ 鉱 物 資 源 へ の 影 響 )」 と 「 環 境 影 響 ( 自 然 へ の 影 響 ・ 産 業 へ の 影 響 )」 の 4項 目 に つ い て ど れ だ け 重 要 だ と 思 う か を 5 段 階 で 評 価 す る . そ の 後 ,4 ヶ 所 の 仮 想 の 候 補 地 に つ い て , 土 地 利 用 や 地 層 に つ い て の 情 報 を 含 ん だ マ ッ プ や 施 設 建 設 時 の コ ス ト 評 価 , 候 補 地 の 立 地 や 経 済 状 況 , 人 口 , 国 や 自 治 体 お よ び 市 民 の 意 向 に 関 す る 文 章 記 述 か ら , 候 補 地 ご と に 前 述 の 4 項 目 を そ れ ぞ れ 10 段 階 で 評 価 す る . 初 期 設 定 で の 5 段 階 評 価 と 候 補 地 ご と の 10段 階 評 価 が 自 動 的 に 集 計 さ れ ,候 補 地 ご と に 評 価 点 数 が 算 出 さ れ る .こ の 評 価 点 数 が 最 も 高 い 候 補 地 が ,「 あ な た が 最 適 と 考 え る 候 補 地 」と し て 画 面 に 表 示 さ れ る .この ゲ ー ム を 用 い た 授 業 実 践 で は , 自 ら の 考 え と ゲ ー ム 画 面 に 表 示 さ れ た 結 果 が 異 な っ た 生 徒 が 数 名 見 ら れ た と い う . ま た , ゲ ー ム で あ っ た こ と か ら , 生 徒 は 積 極 的 な 姿 勢 で 取 り 組 み 全 員 が 結 論 を 出 す こ と が で き た 一 方 で , 生 徒 が 問 題 を 現 実 と し て 捉 え て い る か ど う か に つ い て は 別 問 題 で あ り , 今 後 の 課 題 と し て い る ( 萱 野, 熊 野, 大 矢, 池 谷, 2012).
ま た , 大 学 生 を 対 象 と し た 取 り 組 み も 報 告 さ れ て い る . 藤 川 は , 教 員 養 成 学 部 の 学 生 が 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 を 題 材 と し て デ ィ ベ ー ト を 行 う 授 業 を 開 発 ,実 施 し た .「 日 本 は 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 地 層 処 分 計 画 を 撤 廃 し , 高 級 官 吏 を 義 務 付 け る べ き で あ る . 是 か 非 か .」と い う 論 題 の も と 活 動 を 行 わ せ ,実 践 か ら ,高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 に つ い て デ ィ ベ ー ト を 行 う こ と を 前 提 に 学 ぶ こ と で , 専 門 外 の 学 生 で あ っ て も か な り の 程 度 学 習 が で き る こ と , 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 に つ い て デ ィ ベ ー ト を 行 う た め に は , 同 様 の 学 習 を 重 ね る こ と が 必 要 で あ る こ と , 肯 定 側 が 恒 久 管 理 を 主 張 す る 論 題 設 定 は , 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 を 扱 う 上 で 十 分 に 適 し た 論 題 で あ る と 結 論 付 け て い る ( 藤 川, 2013).
こ の よ う に , 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 を 教 育 現 場 で 扱 っ た 取 り 組 み は い く つ か 報 告 さ れ て い る . し か し , 特 別 な 機 器 な ど を 必 要 と す る な ど , ど の よ う な 教 育 現 場 で も 導 入 可 能 で あ る と は 言 い 難 い . 全 国 の 教 育 現 場 で 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 に つ い て 扱 わ れ る よ う に す る に は , 適 切 な 教 材 を 作 成 す る 必 要 が あ る . そ こ で 本 研 究 で は , 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 を 扱 っ た 教 材 を 開 発 し , 教 材 を 用 い た 授 業 に よ る 効 果 を 分 析 し た .
1.2 研 究 方 法
本 研 究 は , 以 下 の 5つ の 手 順 を 踏 ん で , 教 材 の 開 発 と 試 行 , 教 材 を 用 い た 授 業 に よ る 効 果 の 分 析 を 行 っ た .
(1) 教 材 の 開 発 (2) 教 材 の 試 行 ① (3) 教 材 の 改 善 ・ 完 成 (4) 教 材 の 試 行 ②
(5) 教 材 を 用 い た 授 業 に よ る 効 果 の 分 析
8 2. 教 材 の 開 発
2.1 教 材 の 目 的
本 研 究 で は , 教 材 の 目 的 を 2つ 設 け た . 第 1の 目 的 は , 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 に 関 す る 正 し い 知 識 を 理 解 す る こ と で あ る . 世 論 調 査 か ら , 原 子 力 ・ 放 射 線 ・ エ ネ ル ギ ー 分 野 へ の 国 民 の 関 心 が 低 下 し て お り ,知 識 量 が 減 少 し て い る 可 能 性 が 指 摘 さ れ て い る ( 日 本 原 子 力 文 化 財 団, 2017a). ま た , 本 教 材 で 扱 う 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 に つ い て は , 多 く の 生 徒 が 認 識 し て い な い こ と が 予 想 さ れ る . こ の 問 題 に つ い て 考 え る た め に , ま ず は 正 し い 知 識 を 理 解 す る こ と を 目 的 と し た .
第 2 の 目 的 は ,高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 を“ 自 分 ご と( 自 分 自 身 の 問 題 )”と し て 考 え ら れ る よ う に す る こ と で あ る .高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 に 関 す る 国 民 の 認 識 は ,2 つ の 報 告 ( 日 本 原 子 力 学 会, 2014; 日 本 原 子 力 文 化 財 団, 2017) に よ っ て 明 ら か に さ れ て い る .日 本 原 子 力 学 会 は ,首 都 圏 30km 圏 内 住 民 お よ び 原 子 力 学 会 員 を 対 象 に 調 査 を 行 っ た .
「 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 最 終 処 分 地 を 早 急 に 決 定 し な け れ ば な ら な い 」 と い う 意 見 に 対 し て , 首 都 圏 住 民 の 73%が 肯 定 的 な 回 答 ( 納 得 で き る :42.4%, ど ち ら か と い え ば 納 得 で き る:30.6%)を し ,学 会 員 の 83.9%が 肯 定 的 な 回 答( 納 得 で き る :52.5%,ど ち ら か と い え ば 納 得 で き る :29.4%)を し て い る .し か し 一 方 で は ,「 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 最 終 処 分 地 は , 当 分 の 間 決 定 で き な い 」 と い う 意 見 に 対 し て , 首 都 圏 住 民 の 42.6%が 肯 定 的 な 回 答( 納 得 で き る:21.2%,ど ち ら か と い え ば 納 得 で き る:21.4%)を し ,学 会 員 の 55.7%が 肯 定 的 な 回 答( 納 得 で き る:19.7%,ど ち ら か と い え ば 納 得 で き る:36.0%)を し て い る( 日 本 原 子 力 学 会, 2014a).
原 子 力 文 化 財 団 は , 全 国 (N=1200) を 対 象 に 調 査 を 行 っ た .「 原 子 力 発 電 所 か ら 発 生 す る 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 最 終 処 分 地 を 早 急 に 決 定 し な け れ ば な ら な い 」 と い う 事 柄 に 対 し て ,67.3%が 肯 定 的 な 回 答 ( そ う 思 う :40.3%,ど ち ら か と い え ば そ う 思 う :27.0%) を し て い る ( 日 本 原 子 力 文 化 財 団, 2017b). こ の 結 果 は , 前 述 の 日 本 原 子 力 学 会 の 調 査 と 同 様 の 傾 向 で あ る .し か し 一 方 で は ,「 自 分 の 住 む 市 町 村 ま た は 近 隣 市 町 村 に 最 終 処 分 場 が 計 画 さ れ た ら , 反 対 す る と 思 う 」 と い う 意 見 に 38.3%が 肯 定 的 な 回 答 を し て い る ( 日 本 原 子 力 文 化 財 団, 2017c). こ れ ら の 結 果 か ら , 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 を 処 分 す る こ と の 必 要 性 は 認 識 さ れ て い る が , 解 決 で き る と い う 認 識 や 処 分 を 受 け 入 れ る と い う 認 識 は あ ま り さ れ て い な い こ と が 分 か る .
ま た ,高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 に 関 す る シ ン ポ ジ ウ ム な ど で ,「 原 子 力 発 電 を 稼 動 さ せ た 国 や 電 力 事 業 者 が 責 任 を 持 っ て 解 決 す べ き で あ る 」,「 我 々 が 原 子 力 発 電 を 望 ん だ 訳 で は な い の で , 廃 棄 物 に 対 す る 責 任 は な い 」 と い っ た , 他 人 ご と と も と ら え ら れ る 意 見 を 聞 く こ と が あ る . 確 か に , 問 題 解 決 の た め に は 国 や 電 力 事 業 者 が 責 任 を 持 っ て 主 導 す る こ と が 大 前 提 で あ る . ま た , そ れ と 同 時 に , 国 民 全 体 が 他 人 ご と で は な く , 自 分 ご と と し て , 国 や 事 業 者 の 主 導 の 方 向 性 の 適 切 さ を 判 断 し , 場 合 に よ っ て は 反 対 す る 必 要 が あ る . そ の た め に は , 国 民 全 体 が こ の 問 題 を 自 分 ご と と し て 考 え る こ と が 必 要 不 可 欠 で あ る .
2.2 自 分 ご と と し て 考 え る た め の 方 略
前 述 の 通 り , 開 発 し た 教 材 の 目 的 は , 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 に 関 す る 正 し い 知 識 を 理 解 し ,自 分 ご と と し て 考 え ら れ る よ う に す る こ と で あ る .こ の 目 的 を 達 成 す る た め に ,
9 教 材 に は 様 々 な 特 徴 を 持 た せ た .
知 識 を 理 解 す る だ け で は , 必 ず し も 問 題 を 自 分 ご と と し て 考 え ら れ る と は 限 ら な い . 自 分 ご と と し て 考 え ら れ る よ う に す る た め に , 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 に 関 す る 様 々 な 課 題 に 対 し て 意 思 決 定 を 行 う 場 面 を 設 け た . 教 材 内 の 意 思 決 定 の 流 れ を 表 2に 示 す .
表 2. 教 材 に お け る 意 思 決 定 の 流 れ
章 節 意 思 決 定 内 容
2
1 処 分 方 針 ( 隔 離 処 分 , 地 上 管 理 )
2 隔 離 処 分 方 法
( 地 層 処 分 , 宇 宙 処 分 , 海 洋 底 処 分 , 氷 床 処 分 )
3
3 要 因 の 順 位 づ け
( 科 学 的 な 要 因 )
要 因 の 順 位 づ け
( 社 会 的 な 要 因 )
4
候 補 地 の 順 位 づ け
( 科 学 的 な 要 因 を も と に )
候 補 地 の 順 位 づ け
( 社 会 的 な 要 因 を も と に ) 処 分 地 の 決 定
処 分 地 決 定 へ の 国 民 全 体 の 理 解 処 分 施 設 の 建 設 受 け 入 れ
こ の う ち , 処 分 方 針 に 関 す る 意 思 決 定 や 隔 離 処 方 法 に 関 す る 意 思 決 定 は , 既 に 決 定 し て い る 事 項 に つ い て 改 め て 考 え る も の で あ る . 地 層 処 分 を 決 定 事 項 と し て 理 解 す る だ け で は な く , 地 層 処 分 に 決 定 す る ま で の 段 階 を 自 ら が 考 え な が ら 辿 る こ と で , 地 層 処 分 に 対 す る 理 解 を 深 め る . ま た , 将 来 よ り よ い 処 分 方 法 が 確 立 さ れ た 際 に , 将 来 の 世 代 が 再 処 理 を 選 択 で き る よ う に , 今 後 も よ り よ い 処 分 方 法 を 追 究 し 続 け る 心 情 を 育 む こ と を ね ら い と し て い る . ま た ,こ の 問 題 を 自 分 ご と と し て 考 え ら れ る よ う に す る た め に ,処 分 方 法 を 一 般 論 と し て 考 え る だ け で な く , 処 分 地 決 定 を 体 験 す る こ と が 必 要 で あ る と 考 え , 教 材 に は , 各 自 に 処 分 地 を 決 定 さ せ る 活 動 を 位 置 づ け た .3 章 3 節 で は , 処 分 地 決 定 の 際 の 要 因 を , 科 学 的 な 要 因(5 つ )と 社 会 的 な 要 因(5つ )に 分 け ,処 分 地 決 定 の 際 に 重 視 す る 順 番 に 並 べ る .3 章 4 節 で は ,「 国 内 全 域 を 対 象 に し た 調 査 を 行 っ た 結 果 ,7 つ の 候 補 地 が 挙 げ ら れ た 」 と い う 課 題 の も と , 候 補 地 に 関 す る 情 報 を 提 示 し , 科 学 的 な 要 因 と 社 会 的 な 要 因 の 両 面 か ら の 考 察 を 通 し て , 処 分 地 を 決 定 す る . 決 定 後 に は , あ な た が 決 定 し た 処 分 地 は 全 て の 国 民 に 受 け 入 れ ら れ る か , あ な た が 決 定 し た 処 分 地 が 自 分 が 住 む 地 域 だ と し た ら , 処 分 施 設 の 建 設 を 受 け 入 れ る か , と い っ た 切 実 な 問 題 に つ い て 考 え る .
前 述 の 意 思 決 定 を 行 う 活 動 に お い て , 自 分 の 意 思 を 質 の 高 い も の に す る に は , 多 面 的 な 視 点 か ら 考 え る こ と が 必 要 で あ る . そ こ で , は じ め に 個 人 で 意 思 を 決 定 し , 話 し 合 い を 行 い , そ の 後 個 人 で 意 思 を 再 決 定 す る と い う 3 段 階 の 活 動 と し た . 話 し 合 い で は , そ れ ぞ れ の 意 思 と そ の 根 拠 を 共 有 さ せ る . 他 者 か ら 新 た な 視 点 を 獲 得 す る こ と で , 自 分 の 意 思 を よ り 多 面 的 な 根 拠 に 基 づ く も の に す る こ と を ね ら い と し て い る .
ま た , 課 題 に 対 し て 教 材 内 で 複 数 回 意 思 決 定 を 行 い , 意 思 の 変 化 を 振 り 返 る 活 動 を 位 置 づ け た .「 地 層 処 分 の 賛 成 ・ 反 対 」 と 「 処 分 地 決 定 の 際 の 責 任 」 に つ い て 意 思 決 定 す る .
地 層 処 分 の 賛 成 ・ 反 対 に つ い て は , 教 材 内 で 3 回 (3 章 1 節 の は じ め ,3章 1 節 の 終 わ
10
り ,4 章 1 節 の は じ め ) 意 思 決 定 す る . こ の 3 回 は , 地 層 処 分 の 知 識 を 理 解 す る 前 後 と , 処 分 地 決 定 を 体 験 す る 前 後 の 比 較 で あ る . 賛 成 か ら 反 対 ま で の 5 段 階 か ら 選 択 し , そ の 理 由 を 記 述 す る . 処 分 地 決 定 の 際 の 責 任 に つ い て は , 教 材 内 で 2回 (3章 2 節 の は じ め ,4 章 1 節 の は じ め ) 意 思 決 定 す る . こ の 2 回 は , 処 分 地 決 定 を 体 験 す る 前 後 の 比 較 で あ る . 4つ の 選 択 肢 か ら 自 分 の 考 え に 近 い も の を 選 択 し ,そ の 理 由 を 記 述 す る .4つ の 選 択 肢 は ,
「 決 め ら れ な い の は 仕 方 が な い 」,「 国 が し っ か り と 決 め な け れ ば な ら な い 」,「 決 め ら れ る 大 人 に な り た い 」,「 私 た ち 自 身 が 考 え て い か な け れ ば な ら な い 」,の 順 に ,他 人 ご と か ら 自 分 ご と に な る よ う 設 定 し た .
な お , 中 学 校 理 科 の 学 習 に お け る 意 思 決 定 の 重 要 性 は , 中 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 に 明 記 さ れ て い る ( 文 部 科 学 省 ,2017b).
2.3 教 材 の 構 成
高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 は , 全 国 民 が 知 る べ き 重 要 な 問 題 で あ る . そ こ で , 義 務 教 育 課 程 内 に 位 置 づ け る こ と を 検 討 し た .現 行 の 教 科 書 で 中 学 校 3年 生 の 内 容 に 関 連 事 項 が 多 く 記 載 さ れ て い る こ と か ら , 中 学 校 3 年 生 を 本 教 材 の 対 象 と 設 定 し た . 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 に つ い て 中 学 生 が 分 か り や す く 理 解 で き る 説 明 資 料 が 無 い た め , 説 明 資 料 と ワ ー ク シ ー ト を 作 成 し ,一 元 化 し た も の を 作 成 し た .こ れ を ,「 生 徒 用 ワ ー ク シ ー ト( 試 作 版 )」 と 定 義 す る ( 添 付 資 料 1). 図 や イ ラ ス ト を 多 く 掲 載 す る こ と で , 生 徒 の 興 味 関 心 を 高 め て い る . ま た , 教 育 現 場 で 印 刷 す る こ と を 想 定 し て , 白 黒 印 刷 に も 対 応 で き る 配 色 と し た . さ ら に , 知 識 が 十 分 で な い 教 員 で も 本 教 材 を 使 用 で き る よ う , 教 員 用 の 教 材 を 併 せ て 開 発 し た . 生 徒 用 ワ ー ク シ ー ト に 指 導 上 の 留 意 事 項 や 予 想 さ れ る 生 徒 の 反 応 等 を 加 筆 し て い る . こ れ を ,「 教 師 用 ワ ー ク シ ー ト ( 試 作 版 )」 と 定 義 す る ( 添 付 資 料 2).
開 発 し た 教 材 の 構 成 を 表 3 に 示 す . 教 材 は 全 4 章 構 成 と し , 合 計 11 時 間 扱 い の 授 業 と な る こ と を 想 定 し て い る .1章 は 理 科 の「 科 学 技 術 と 人 間 」に 位 置 づ け ,2 章 以 降 は ,複 数 の 教 科 で 扱 い が あ る 内 容 で あ る た め , 総 合 的 な 学 習 の 時 間 に 位 置 づ け て い る .
表 3. 開 発 し た 教 材 の 構 成
章 節 内 容
1 教 科 書 準 拠 の 内 容(4) 1 エ ネ ル ギ ー と 発 電 に つ い て 理 解 す る . 2 放 射 線 に つ い て 理 解 す る .
2 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物
に つ い て(2) 1 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 に つ い て 理 解 し ,高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 方 針 を 考 え る .
2 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 隔 離 処 分 方 法 を 考 え る . 3 地 層 処 分 に つ い て(4) 1 地 層 処 分 に つ い て 理 解 す る .
2 処 分 地 の 選 定 要 因 に つ い て 理 解 す る .
3 処 分 地 を 決 め る 時 に 重 視 す る 要 因 を 考 え る . 4 仮 想 の 7つ の 候 補 地 の 中 で 処 分 地 を 決 定 す る . 4 私 た ち の 未 来(1) 1 学 習 を 振 り 返 り , 今 後 の 自 分 を 考 え る .
※( )内 の 数 字 は 授 業 時 間 数 を 示 す
11 2.3.1 1章
1 節 で は , 電 気 エ ネ ル ギ ー に つ い て 学 習 す る . 電 気 エ ネ ル ギ ー の 利 便 性 , 発 電 方 法 , 各 発 電 方 法 の メ リ ッ ト と デ メ リ ッ ト , エ ネ ル ギ ー ミ ッ ク ス , 発 電 に よ る 諸 問 題 ( エ ネ ル ギ ー 資 源 の 枯 渇 , 廃 棄 物 ) に つ い て 扱 っ て い る . 節 末 で は , 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 存 在 に 触 れ て い る .
2節 で は ,放 射 線 に つ い て 学 習 す る .1 節 と は ,高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 に つ い て 理 解 す る 上 で , 放 射 線 の 知 識 が 必 要 で あ る と い う つ な が り を 持 た せ て い る . 放 射 線 の 定 義 , 関 連 す る 用 語 ,単 位(Bq,Sv),自 然 放 射 線 と 人 工 放 射 線 ,放 射 線 の 有 効 利 用 ,放 射 線 の 性 質( 透 過 性 , 電 離 能 , 半 減 期 ), 被 ば く , 人 体 へ の 影 響 , 放 射 線 防 護 に つ い て 扱 っ て い る .
2.3.2 2章
本 章 で は , 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 に つ い て 学 習 す る .1 節 で は , 核 燃 料 の 原 料 , 発 電 に よ る 核 燃 料 の 組 成 変 化 , 高 レ ベ ル 廃 液 が 生 じ る 過 程 , ガ ラ ス 固 化 体 の 製 造 過 程 と 特 性 , 使 用 済 燃 料 と ガ ラ ス 固 化 体 の 貯 蔵 状 況 に つ い て 扱 っ て い る . こ れ ら を 学 習 し た 後 , 現 在 地 上 管 理 さ れ て い る ガ ラ ス 固 化 体 を , 今 後 も 地 上 管 理 し 続 け る か , 隔 離 処 分 す る か を 意 思 決 定 す る .
2節 で は ,世 界 が 隔 離 処 分 を 行 う 方 針 で あ る こ と と ,検 討 さ れ た 4つ の 隔 離 処 分 方 法( 地 層 処 分 ・ 宇 宙 処 分 ・ 海 洋 底 処 分 ・ 氷 床 処 分 ) に つ い て 扱 っ て い る . こ れ ら を 学 習 し た 後 , ど の 隔 離 処 分 方 法 を 採 用 す る か を 意 思 決 定 す る . こ の 意 思 決 定 を し や す く す る た め に , 事 前 に 4 つ の 方 法 の メ リ ッ ト と デ メ リ ッ ト を 考 え る . ま た , 本 節 の 最 後 で は , 更 に 良 い 処 分 方 法 を 考 え る .
2.3.3 3章
本 章 で は , 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 地 層 処 分 に つ い て 学 習 す る .1 節 で は , 世 界 が 地 層 処 分 を 行 う 方 針 で あ る こ と を 冒 頭 で 扱 っ て い る . そ の 後 , そ の 他 の 隔 離 処 分 方 法 が 採 用 さ れ な か っ た 理 由 , 多 重 バ リ ア シ ス テ ム , 処 分 施 設 , 処 分 地 選 定 の プ ロ セ ス , 研 究 施 設 , 日 本 お よ び 諸 外 国 の 状 況 に つ い て 扱 っ て い る . ま た , 本 節 の は じ め と 終 わ り で は , 地 層 処 分 の 賛 成 ・ 反 対 に つ い て 考 え る . こ の 活 動 は 第 4章 1節 で も 行 う .
2 節 で は , ま ず 初 め に , 処 分 地 決 定 の 際 の 責 任 に つ い て 考 え る . そ の 後 , 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 地 を 決 定 す る 際 の 要 因 に つ い て 学 習 す る . 本 研 究 で は , 実 際 の 処 分 地 決 定 の 際 に 考 慮 さ れ る 要 因 を も と に 検 討 し た . 実 際 の 要 因 を 表 4に 示 す . 実 際 に は こ れ だ け の 要 因 を 考 慮 し て 処 分 地 が 決 定 さ れ る .し か し ,こ れ ら 全 て を 考 え る の は 難 易 度 が 高 い た め , 中 学 生 で も 考 え ら れ る よ う に 要 因 を 簡 略 化 し た ( 表 5).
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表 4. 処 分 地 決 定 時 に 考 慮 す る 事 項 ( 原 子 力 発 電 環 境 整 備 機 構, 2004) 法 定 要 件 に 関 す る 事 項
( 概 要 調 査 地 区 選 定 に 関 す る 法 定 要 件 に 対 す る 的 確 性 を 評 価 す る 事 項 )
地 震 等 の 自 然 現 象 に よ る 地 層 の 著 し い 変 動 の 記 録 が な い こ と .
将 来 に わ た っ て ,地 震 等 の 自 然 現 象 に よ る 地 層 の 著 し い 変 動 が 生 ず る お そ れ が 少 な い と 見 込 ま れ る こ と .
地 層 処 分 を 行 お う と す る 地 層 が , 第 四 紀 の 未 固 結 堆 積 物 で あ る と の 記 録 が な い こ と . 地 層 処 分 を 行 お う と す る 地 層 に お い て ,そ の 掘 採 が 経 済 的 に 価 値 が 高 い 鉱 物 資 源 の 存 在 に 関 す る 記 録 が な い こ と .
付 加 的 に 考 慮 す る 事 項
( 法 定 要 件 に 対 す る 的 確 性 が 確 認 さ れ た 地 区 を 対 象 に , 概 要 調 査 地 区 と し て の 適 性 を 総 合 的 に 評 価 し , 必 要 に 応 じ て 相 対 比 較 を 行 う 事 項 )
地 層 の 物 性 ・ 性 状 に 関 す る 事 項 : 岩 盤 の 強 度 , 変 形 ・ 割 れ 目 ・ 風 化 ・ 変 質 の 状 況 , 地 温 勾 配 , 岩 体 の 形 状 ・ 規 模 , 隆 起 ・ 侵 食 の 速 度 , 異 常 間 隙 水 圧 ・ 膨 張 性 地 山 ・ ガ ス 突 出 ・ 山 は ね ・ 大 出 水 の 可 能 性
地 質 環 境 の 調 査 ・ 評 価 に 関 す る 事 項 : 調 査 の 範 囲 ・ 規 模 ・ 期 間 , 調 査 技 術 ・ 評 価 手 法 等 の 適 用 性 , 火 成 活 動 ・ 断 層 活 動 等 の 地 質 環 境 の 評 価 ・ モ デ ル 化 の 容 易 性 , 調 査 に 対 す る 土 地 利 用 等 の 制 約
建 設 ・ 操 業 時 に お け る 自 然 災 害 に 関 す る 事 項 : 地 震 ・ 地 す べ り ・ 洪 水 等 の 重 大 な 自 然 災 害 の 発 生 可 能 性
土 地 の 確 保 に 関 す る 事 項 : 土 地 の 確 保 の 容 易 性
輸 送 に 関 す る 事 項 : 利 用 可 能 な 港 湾 ま た は 港 湾 候 補 地 か ら の 距 離 等 の 輸 送 の 容 易 性
表 5. 本 教 材 に お け る 処 分 地 決 定 の 際 の 要 因
科 学 的 な 要 因 社 会 的 な 要 因
地 震 ( 活 断 層 ) 鉱 物 資 源
火 山 人 口 密 度
隆 起 ・ 侵 食 土 地 利 用
岩 盤 の 固 さ 港 か ら の 距 離
地 下 水 の 流 量 港 か ら の 輸 送 方 法
表 5 の 策 定 背 景 を 以 下 に 記 す . 表 4 の 要 因 を 分 類 す る と , 地 震 , 噴 火 , 隆 起 ・ 侵 食 , 第 四 紀 の 未 固 結 堆 積 物 , 地 層 , 地 下 水 と い っ た 科 学 的 な 要 因 と , 鉱 物 資 源 , 土 地 利 用 , 地 質 環 境 の 調 査・評 価 の 容 易 性 ,土 地 の 確 保 ,輸 送 と い っ た 社 会 的 な 要 因 の 2つ に 区 分 で き る . そ こ で ,「 科 学 的 な 要 因 」 と 「 社 会 的 な 要 因 」 の 2 つ の 柱 を 設 定 し た .
表 4 の 法 定 要 件 に 関 す る 事 項 の う ち , 第 1 項 目 お よ び 第 2 項 目 を ,「 地 震 ( 活 断 層 )」,
「 火 山 」,「 隆 起 ・ 侵 食 」 と し て 「 科 学 的 な 要 因 」 に 位 置 づ け た . 第 3項 目 の 第 四 紀 の 未 固
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結 堆 積 物 に つ い て は , こ の 言 葉 で は 生 徒 が 理 解 し づ ら い こ と が 予 想 さ れ る . 第 四 紀 の 未 固 結 堆 積 物 が 分 布 す る 地 層 は 力 学 的 な 強 度 が 著 し く 小 さ い こ と が 問 題 で あ る た め ,「 岩 盤 の 固 さ 」 と い う 言 葉 に 置 き 換 え て 「 科 学 的 な 要 因 」 に 位 置 づ け た . 第 4項 目 の 鉱 物 資 源 に つ い て は ,経 済 性 に 関 す る 記 述 が さ れ て い る こ と か ら ,「 社 会 的 な 要 因 」に 位 置 づ け た .表 4 の 付 加 的 に 評 価 す る 事 項 の う ち ,「 地 質 環 境 の 調 査・評 価 に 関 す る 事 項 」お よ び「 建 設・操 業 時 に お け る 自 然 災 害 に 関 す る 事 項 」 は , 土 地 確 保 や 作 業 の 容 易 性 を 評 価 す る も の と し て 位 置 づ け ら れ た も の で あ る .生 徒 が 考 え や す く す る た め に ,本 教 材 の 要 因 か ら は 除 外 し た . ま た ,「 地 層 の 物 性・ 性 状 に 関 す る 事 項 」と「 地 下 水 の 特 性 に 関 す る 事 項 」は ,複 数 の 要 素 が 含 ま れ て い る た め , 要 素 を 絞 っ た . 前 者 は ,「 岩 盤 の 強 度 」 に 絞 り ,「 岩 盤 の 固 さ 」 と い う 言 葉 に し た .後 者 は「 地 下 水 の 流 量 」に 絞 り ,こ れ ら を「 科 学 的 な 要 因 」に 位 置 づ け た . さ ら に ,「 土 地 の 確 保 に 関 す る 事 項 」 は ,「 土 地 利 用 」 と い う 言 葉 で 「 社 会 的 な 要 因 」 に 位 置 づ け た .「 輸 送 に 関 す る 事 項 」 に つ い て ,「 科 学 的 有 望 地 の 要 件 ・ 基 準 に 関 す る 地 層 処 分 技 術 WG に お け る 中 間 整 理 」で は ,長 距 離 輸 送 と 短 距 離 輸 送 に つ い て そ れ ぞ れ 検 討 さ れ て い る .「 日 本 の 国 土 は 南 北 で 1,000 km を 超 え る こ と か ら ,原 則 と し て 長 距 離 輸 送 が 必 要 と の 前 提 で 検 討 を 行 う こ と が 適 当 で あ る . 検 討 の 結 果 , 現 行 法 制 度 に お け る 制 約 等 を 前 提 と し た 場 合 , 陸 上 輸 送 ( 鉄 道 , 車 両 ) に は 海 上 輸 送 に 比 べ て 困 難 性 が 高 く , 海 上 輸 送 が 最 も 好 ま し い と 考 え ら れ る .」 と 述 べ ら れ て い る ( 総 合 資 源 エ ネ ル ギ ー 調 査 会 電 力 ・ ガ ス 事 業 分 科 会 原 子 力 小 委 員 会 地 層 処 分 技 術 WG, 2017).そ の た め ,本 教 材 で は ,処 分 地 の 最 寄 り の 港 湾 ま で 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 を 海 上 輸 送 し , 港 湾 か ら 処 分 地 ま で は 陸 上 輸 送 を 行 う こ と を 前 提 と し た .こ れ を 踏 ま え て ,「 輸 送 に 関 す る 事 項 」を「 港 湾 か ら の 距 離 」と「 港 湾 か ら の 輸 送 方 法 」 の 2 つ の 要 因 と し ,「 社 会 的 な 要 因 」 に 位 置 づ け た .
3 節 で は , 前 述 の 要 因 を , 科 学 的 な 要 因 と 社 会 的 な 要 因 に 分 け , 重 視 す る 順 に 順 位 づ け す る ( 図 1). こ の 活 動 に よ り ,4節 で 処 分 地 決 定 を 体 験 す る 際 に , 意 思 決 定 の 拠 り 所 と な る . 全 て の 要 因 を ひ と ま と め に し て 順 位 づ け る こ と も 検 討 し た が , 科 学 的 な 要 因 と 社 会 的 な 要 因 で は 比 較 基 準 が 大 き く 異 な る た め ,10 個 の 要 因 を 同 時 に 比 較 し て 順 位 づ け る こ と は 困 難 で あ る と 判 断 し た .
図 1. 要 因 を 順 位 づ け る た め の ワ ー ク シ ー ト
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4 節 で は , 仮 想 の 候 補 地 の 中 で 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の 処 分 地 決 定 を 体 験 す る . こ こ で 活 動 の 課 題 設 定 に つ い て , 実 在 し な い 候 補 地 の 中 で の 処 分 地 決 定 と す る と , 生 徒 た ち は 現 実 味 を 持 っ て 取 り 組 む こ と が で き な い . 自 分 ご と と し て 考 え さ せ る た め に は , よ り 実 際 に 近 い 課 題 設 定 が 望 ま れ る .そ こ で ,「 日 本 国 内 全 域 を 対 象 に 調 査 を 行 い ,7つ の 場 所 が 候 補 地 と し て 挙 げ ら れ た 」と い う 課 題 設 定 と し た( 図 2).な お ,候 補 地 名 に つ い て は ,国 内 の 約 4 割 の 都 道 府 県 が 最 終 処 分 地 の 受 け 入 れ を 拒 否 し て い る 状 況 で あ り( 土 屋・小 田・北 林 , 2016), 具 体 的 な 地 名 を 提 示 す る と , 個 々 が 持 つ そ の 土 地 に 関 す る 情 報 や イ メ ー ジ が 意 思 決 定 に 反 映 さ れ て し ま う た め , 活 「 候 補 地 A~G」 と 表 記 す る こ と に 留 め た .
図 2. 処 分 地 決 定 の 課 題
7 つ の 候 補 地 の 情 報 は 図 3 の 形 式 で 示 し て い る . 情 報 の 提 示 方 法 と し て , 図 , 表 , 文 章 記 述 , の 3 つ を 検 討 し た . 萱 野 ら が 開 発 し た 教 材 は , 図 や 文 章 記 述 に よ る 情 報 か ら 候 補 地 を 比 較 検 討 す る も の で あ る( 萱 野 ・ 熊 野 ・ 大 矢 ・ 奥 野 ・ 池 谷, 2012).こ の よ う な 情 報 の 提 示 方 式 を 採 用 す れ ば , 実 際 に 近 い 情 報 を 提 示 す る こ と が で き , 学 習 者 の 情 報 入 手 能 力 を 高 め る こ と も で き る . し か し , 一 定 の 情 報 入 手 能 力 を 持 っ た 学 習 者 で な い と , 情 報 を 適 切 に 入 手 し 判 断 す る こ と は 難 し い . そ こ で 本 研 究 で は , 情 報 入 手 能 力 に 乏 し い 学 習 者 で あ っ て も 意 思 決 定 が で き る よ う に す る た め に , 表 を 用 い て 情 報 を 提 示 し た . ま た , 情 報 を 分 か り や す く す る た め に , ○ △ ×等 の 記 号 で 表 す こ と も 検 討 し た . し か し , こ の よ う な 記 号 を 用 い る と , 記 号 が 表 す 意 味 が 要 因 ご と に 異 な る た め , そ の 都 度 記 号 が 表 す 意 味 を 考 え る 必 要 が 生 じ る . ま た , ×の 記 号 が 処 分 地 と し て 適 性 が な い こ と を 示 し て い る 印 象 を 与 え て し ま う た め , 望 ま し く な い . 以 上 の 理 由 か ら , 要 因 ご と に 情 報 を 短 く 簡 潔 に ま と め て 表 形 式 で 提 示 し た .
図 3. 処 分 地 決 定 の た め に 提 示 す る 情 報
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7 つ の 候 補 地 に は , そ れ ぞ れ に 欠 点 を 持 た せ て い る . つ ま り , 全 て の 条 件 を 満 た し た 候 補 地 が 存 在 し な い 状 況 下 で 処 分 地 を 選 定 す る . 実 際 に は , 科 学 的 な 要 因 か ら 安 全 性 を 担 保 し , そ の 上 で 社 会 的 な 要 因 を も と に 処 分 地 が 選 定 さ れ る . し か し , 安 全 に 地 層 処 分 す る た め に は , 科 学 的 な 要 因 が 重 要 で あ る こ と を 活 動 か ら 理 解 さ せ る た め に , 科 学 的 な 要 因 と 社 会 的 な 要 因 を 対 等 な 位 置 づ け に し た .
科 学 的 な 要 因 に つ い て は ,国 が 避 け る べ き 要 因 と 位 置 づ け て い る「 地 震( 活 断 層 )」と「 火 山 」を 欠 点 に 含 む 候 補 地 を 1 つ ず つ( 候 補 地 A,E)設 定 し た .残 り の 5 箇 所( 候 補 地 B, C,D,F,G) は , 欠 点 の 数 を 変 え る こ と で 差 別 化 を 図 っ た . 候 補 地 B,C,D,F,G の 科 学 的 な 要 因 と 社 会 的 な 要 因 の 欠 点 の 数 は 表 6の 通 り で あ る .な お ,「 土 地 利 用 」に つ い て は , 一 定 の 基 準 で 適 不 適 の 評 価 が で き な い た め , そ の 他 の 要 因 の 状 況 に 応 じ て 設 定 し た .
表 6. 各 候 補 地 の 欠 点 の 数 欠 点 の 数
候 補 地 B 候 補 地 C 候 補 地 D 候 補 地 F 候 補 地 G
科 学 的 な 要 因 1 2 2 1 1
社 会 的 な 要 因 2 1 1 2 2
ま ず は , 科 学 的 な 要 因 と 社 会 的 な 要 因 を 分 け て 考 え る . そ れ ぞ れ の 情 報 を も と に 候 補 地 を 順 位 づ け ,そ の 順 位 づ け を も と に 処 分 地 を 決 定 す る( 図 4).話 し 合 い と 再 度 の 意 思 決 定 の 後 で は , 決 定 し た 処 分 地 は 全 て の 国 民 に 受 け 入 れ ら れ る か , 決 定 し た 処 分 地 が 自 分 の 住 む 地 域 だ と し た ら 処 分 施 設 の 建 設 を 受 け 入 れ る か ,と い っ た 切 実 な 課 題 に つ い て 考 え る( 図 5). 処 分 地 決 定 を 体 験 す る 段 階 で は , 処 分 地 と 自 分 の 居 住 区 域 と の 距 離 は 明 ら か に さ れ て い な い た め , 自 分 へ の 影 響 は ほ と ん ど 考 え ず , 自 分 ご と と し て は 考 え ら れ な い . そ こ で , 自 分 と 処 分 地 の 関 係 に つ い て 考 え る こ と で , 処 分 地 を 決 め る こ と の 難 し さ を 実 感 さ せ , 自 分 ご と と し て 考 え ら れ る よ う に し た .
図 4. 処 分 地 決 定 の た め の ワ ー ク シ ー ト
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図 5. 処 分 地 決 定 後 に 考 え る ワ ー ク シ ー ト
2.3.4 4章
本 章 で は , 地 層 処 分 の 賛 成 ・ 反 対 と , 処 分 地 決 定 の 際 の 責 任 に つ い て 再 度 考 え , 前 章 ま で の 考 え と の 変 化 を 自 己 分 析 す る( 図 6).ま た ,学 習 全 体 を 振 り 返 り ,今 後 こ の 問 題 と ど う 向 き 合 っ て い く べ き か , ま た , そ の た め に 今 何 を す べ き か を 考 え る .
図 6. 考 え の 変 化 を 振 り 返 る た め の ワ ー ク シ ー ト
17 3. 教 材 の 試 行
3.1 試 行 ① の 概 要
本 試 行 は , 開 発 し た 教 材 が 中 学 校 3 年 生 の 学 習 に 適 し て い る こ と を 明 ら か に し , 中 学 生 が ど の よ う な 意 思 決 定 を 行 う か を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し た .2016年 10 月 中 旬 ~11 月 中 旬 に 梅 村 学 園 三 重 中 学 校 で 実 施 し た . 試 行 後 に は , 生 徒 と 教 員 を 対 象 と し て 質 問 紙 調 査 を 実 施 し た .
3.2 結 果 と 考 察
全 て の 授 業 と 質 問 紙 調 査 に 参 加 し た 生 徒(N=72)を 分 析 の 対 象 と し た .な お ,意 思 決 定 の 要 因 を 分 析 す る た め の 基 準 と し て , 生 徒 の 記 述 か ら 意 思 決 定 の 要 因 を 抽 出 し て 使 用 し た
( 表 7).ま た ,話 し 合 い 後 の 人 数 は ,話 し 合 い 前 と の 合 計 値 を 示 し た .こ れ は ,意 思 が 変 化 し た 生 徒 と し な か っ た 生 徒 が い る た め で あ る .
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表 7. 本 教 材 に お け る 意 思 決 定 の 要 因 一 覧
大 項 目 小 項 目 大 項 目 小 項 目
影 響
人 間 へ の 影 響
感 情
最 終 的 に は 住 民 次 第 で あ る
生 態 系 へ の 影 響 自 分 に は 無 理
環 境 へ の 影 響 将 来 を 担 う の は 私 た ち で あ る
影 響 を 及 ぼ す 範 囲 納 得 で き る ・ 納 得 で き な い
安 全 性
監 視 ・ 管 理 が 必 要
処 分 地 選 定
廃 棄 物 と の 距 離
監 視 ・ 管 理 が 可 能 土 地 の 量 的 制 限
異 常 を 察 知 で き る か 土 地 所 有 者 の 同 意
異 常 に す ぐ に 対 応 で き る か 地 域 住 民 の 同 意
将 来 の 安 全 性 の 保 証 人 口 密 度
処 分 後 の 被 ば く リ ス ク 鉱 物 資 源 の 有 無
将 来 性
将 来 世 代 へ の 負 担 土 地 利 用 の 状 況
将 来 世 代 が 近 づ く 可 能 性 保 護 区 域 か ど う か
再 処 理 の 可 能 性 文 化 財 等 の 有 無
再 利 用 の 可 能 性 調 査 の し や す さ
人 的 要 因 に よ る 変 化
何 が 起 こ る か 分 か ら な い 条 約 ・ 法 律 の 制 限 を 受 け る か
事 故 に よ る リ ス ク 処 分 地 選 定 が 難 し い
テ ロ な ど に よ る リ ス ク 処 分 地 と し て の 適 性 が あ る
災 害
地 震 ( 活 断 層 ) 無 理 矢 理 進 め て も 無 意 味
火 山 意 見 の 対 立 が 起 こ る
土 砂 崩 れ
処 分 作 業
輸 送 方 法 に よ る 運 び や す さ
台 風 作 業 の 容 易 さ
洪 水 ・ 津 波 作 業 を 行 う 期 間
環 境 の 変 化 地 層 の 特 性 処 分 の 確 実 性 ( 成 功 率 )
地 下 水 の 特 性 作 業 中 の 被 ば く リ ス ク
感 情
意 識 を す る か 距 離 に よ る 運 び や す さ
安 心 ・ 不 安 騒 音 等 の 被 害 が あ る か
嫌
お 金
処 分 費 用 良 い ・ 悪 い ( 責 任 が あ る ) 補 償 金 差 別 や 風 評 被 害 を 受 け る 土 地 の 価 格
思 い 入 れ が あ る 地 域 活 性 ・ 雇 用 促 進
国 を 信 頼 で き る か 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物
過 去 の 実 績
仕 方 が な い 危 険 性
無 責 任 で あ る ( わ が ま ま だ ) 安 全 に な る ま で の 期 間 の 長 さ 自 分 が 決 め た 責 任 が あ る
放 射 線 に 関 す る 知 識
放 射 線 を 遮 蔽 で き る
考 え た い ・ 考 え る べ き 放 射 線 が 漏 れ る
関 わ り た く な い 放 射 性 物 質 が 漏 れ る
19 3.2.1 処 分 方 針 に 関 す る 意 思 決 定
生 徒 の 意 思 を 表 8に 示 す .「 地 上 管 理 」 を 選 択 し た 生 徒 と ,「 隔 離 処 分 」 を 選 択 し た 生 徒 の 比 率 が 1:3 と な り , 約 76%の 生 徒 が 「 隔 離 処 分 」 を 選 択 し た . 話 し 合 い 後 に は ,10 名 の 生 徒 の 意 思 が 変 化 し た .「 地 上 管 理 」か ら「 隔 離 処 分 」に 変 化 し た 生 徒 は 3名 で あ り ,「 隔 離 処 分 か ら 「 地 上 管 理 」 に 変 化 し た 生 徒 は 7名 だ っ た .
表 8. 処 分 方 針 に 関 す る 生 徒 の 意 思
地 上 管 理 隔 離 処 分
話 し 合 い 前 14 名(19.4%) 58名(80.6%) 話 し 合 い 後 17 名(23.6%) 55名(76.4%)
次 に ,意 思 決 定 の 要 因 を 表 9 お よ び 図 7 に 示 す .「 影 響 」や「 処 分 地 選 定 」に つ い て 記 述 し た 生 徒 が 多 か っ た .「 影 響 」は ,主 に「 人 間 へ の 影 響 」に つ い て の 記 述( 約 63%),「 処 分 地 選 定 」は ,主 に「 土 地 の 量 的 制 限 」に つ い て の 記 述( 約 83%)だ っ た .話 し 合 い 後 に は ,
「 災 害 」や「 感 情 」に つ い て の 記 述 が 大 き く 増 加 し た .「 災 害 」は ,主 に「 地 震( 活 断 層 )」
に つ い て の 記 述 ( 約 75%),「 感 情 」 は , 主 に 「 安 心 ・ 不 安 」 に つ い て の 記 述 ( 約 35%) だ っ た .
表 9. 処 分 方 針 に 関 す る 意 思 決 定 の 要 因
項 目 話 し 合 い 前 話 し 合 い 後
影 響 16名(18.6%) 20名(15.4%)
安 全 性 3名(3.5%) 6 名(4.6%) 将 来 性 3名(3.5%) 4 名(3.1%) 人 的 要 因 に よ る 変 化 12名(14.0%) 14名(10.8%)
災 害 6名(7.0%) 12名(9.2%)
環 境 の 変 化 0名(0.0%) 0 名(0.0%)
感 情 8名(9.3%) 17名(13.1%)
処 分 地 選 定 18名(20.9%) 26名(20.0%) 処 分 作 業 1名(1.2%) 2 名(1.5%)
お 金 6名(7.0%) 11名(8.5%)
高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 10名(11.6%) 13名(10.0%) 放 射 線 に 関 す る 知 識 3名(3.5%) 5 名(3.8%)
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図 7. 処 分 方 針 に 関 す る 意 思 決 定 の 要 因
3.2.2 隔 離 処 分 方 法 に 関 す る 意 思 決 定
生 徒 の 意 思 を 表 10に 示 す .「 宇 宙 処 分 」を 最 も 多 く の 生 徒 が 選 択 し ,全 体 の 約 43%だ っ た . 次 い で 「 地 層 処 分 」 を 選 択 す る 生 徒 が 多 く , こ の い ず れ か を 選 択 し た 生 徒 は , 全 体 の 約 76%だ っ た . 話 し 合 い 後 に は ,14名 の 生 徒 の 意 思 が 変 化 し た .「 地 層 処 分 」 へ 変 化 下 生 徒 は 6 名 ,「 宇 宙 処 分 」へ 変 化 し た 生 徒 は 3 名 ,「 海 洋 底 処 分 」へ 変 化 し た 生 徒 は 2名 ,「 氷 床 処 分 」 へ 変 化 し た 生 徒 は 0 名 だ っ た .
表 10. 隔 離 処 分 方 法 に 関 す る 生 徒 の 意 思
地 層 処 分 宇 宙 処 分 海 洋 底 処 分 氷 床 処 分
話 し 合 い 前 22 名(30.6%) 30名(41.7%) 8 名(11.1%) 12名(16.7%) 話 し 合 い 後 24 名(33.3%) 31名(43.1%) 8 名(11.1%) 9名(12.5%)
次 に , 意 思 決 定 の 要 因 を 表 11お よ び 図 8 に 示 す .「 影 響 」 に つ い て 記 述 し た 生 徒 が 多 か っ た .「 影 響 」は ,主 に「 人 間 へ の 影 響 」に つ い て の 記 述( 約 47%)だ っ た .話 し 合 い 後 に は ,「 処 分 作 業 」 に つ い て の 記 述 が 大 き く 増 加 し た .「 処 分 作 業 」 は , 主 に 「 土 地 の 量 的 制 限 」に つ い て の 記 述( 約 46%)が 多 か っ た .前 節 の 処 分 方 針 の 意 思 決 定 と 比 較 す る と ,「 安 全 性 」に つ い て 記 述 し た 生 徒 が 増 加 し た 一 方 で ,「 感 情 」に つ い て 記 述 し た 生 徒 が 大 き く 減 少 し た .
0 5 10 15 20 25 30
人数
話し合い前 話し合い後
21
表 11. 隔 離 処 分 方 法 に 関 す る 意 思 決 定 の 要 因
項 目 話 し 合 い 前 話 し 合 い 後
影 響 38名(25.7%) 46名(22.7%)
安 全 性 22名(14.9%) 30名(14.8%) 将 来 性 12名(8.1%) 17名(8.4%) 人 的 要 因 に よ る 変 化 2名(1.4%) 8 名(3.9%)
災 害 8名(5.4%) 10名(4.9%)
環 境 の 変 化 1名(0.7%) 1 名(0.5%)
感 情 2名(1.4%) 5 名(2.5%)
処 分 地 選 定 22名(14.9%) 28名(13.8%) 処 分 作 業 10名(6.8%) 18名(8.9%)
お 金 20名(13.5%) 24名(11.8%)
高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 3名(2.0%) 4 名(2.0%) 放 射 線 に 関 す る 知 識 8名(5.4%) 12名(5.9%)
図 8. 隔 離 処 分 方 法 に 関 す る 意 思 決 定 の 要 因 0
10 20 30 40 50
人数
話し合い前 話し合い後