• 検索結果がありません。

内包的地代と課税

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "内包的地代と課税"

Copied!
44
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

内包的地代と課税

は じ め に

リカードは,課税と地代との関係を主として外延的地代をとりあげな がら論じた。そこでほ,内包的地代も外延的地代の考え方をそのまま適 用することで理解できるとされ,とくに内包的地代の観点から租税の効 果を論ずる必要性はなかったのであろう。ところで,外延的地代と内包 的地代が同時に存在している場合には,地租に関するリカードの主張は 成り立たないというのが,シヤウプの見解である。ただし,シヤウプは,

内包的地代のみが存在する場合には,リカードの主張を認めるものと思 われる。けれども,その場合でも,リカードの主張は支持しがたい。そ れは,リカードの地代論には克服すべき問題点が潜んでいるからである。

このことを明らかにし,リカードよりも一般的な地代論を提示したのが スラッファであった。

本稿の課題は,このスラッファの内包的地代論にもとづいて,各種の 租税が賃金,利潤,地代にどのような影響を与えるかを考察することに ある。まずほじめに,シヤウプのリカード批判が検討され,あわせてス

ラッファの内包的地代論の要点が示される。つぎに,穀物が非基礎財で あり,価値尺度財でもないと仮定して,内包的地代の決定メカニズムを 説明し,このもっとも簡単な内包的地代モデルにより,原生産物税(=穀 物税),地租,賃金税および利潤税の所得分配に及ぼす効果を分析する。

(1)

(2)

さらに,穀物を価値尺度財とした内包的地代モデル,最後に,穀物を基 礎財とした内包的地代モデルによって,四つの租税の効果が分析される。

Ⅰ シャウプのリカード批判とスラッファの地代論

シャウプの問題提起

リカードは,土地の単位面積あたり税額が固定されている地租に関し て,そのような税によって穀物地代は影響をうけず,穀物価格が騰貴す ることにより,より収益性の高い土地でほ地租を償う以上の収入が生じ, その収入は貨幣地代の増大として地主に帰属すると主張した。こうして, 消費者は穀物に対して課税前よりもより高い価格を支払うことを通じ て,国家の収入のために税を負担するばかりか,地主への追加的収入に 対しても負担を強いられるというのが,地租についてのリカードの興味 深い結論であった(1)。

ところで,リカードの租税論を扱った著書のなかで,シヤウプはリカー ドの考えを批判し,地主は地租によって損失をこうむらないばかりか利 益をうけるというリカードの主張は一般に妥当しないと反論した(2)。

シヤウプによると,リカードの誤りは,課税の内包的耕作および内包的 地代への影響を考慮しなかった点にあるとされる。シヤウプは,地租が 各土地の地主に差別的な影響を及ぼすとし,そのことを表1に示されて いるような例をあげて説明する。しかし,この裏によるシヤウプの説明 は,あまりにも簡潔すぎる。そこで,つぎに,表1にもとづきながら, かなりの解釈をまじえて,シヤウプの説明の論理を明らかにしてみよう。

表1では,同じ大きさであるが,肥沃度の違うAからFまでの土地に, 同量の資本と労働が追加的に投下された場合の穀物生産量が例示されて いる。そして,社会的な穀物需要は穀物140単位であり,地租が課せら れる以前でほ,内包的と外延的とを含めて耕作の限界が穀物生産量5単 位のところでこの穀物需要が満されると仮定される。穀価ほ,地代を支

(2)

(3)

班ABCDEF

表1

地 代

資本と労働の 耕作の限界

追加的な投入による産出量耕物5単位

5‑4 0

6‑5‑4 1

7‑6‑5‑4 3

界位

代限単

l

の4 地作物

耕穀

8‑7‑6‑5岬4 6 10

9‑8‑7‑6‑5岬4 10 15

10‑9‑8‑7‑6‑5‑4 11 21

を地作物 軋代碩梢一31261117 た 税

耕穀 4 4 4 4 4

▲4‑

払わない資本と労働の投下部分一耕作の限界‑で決定される。

ここで,各々の土地に穀物で測って4単位の地租が課せられたとしよ う。かりに穀価が騰貴せず,しかも農業資本家は課税前と同じ利潤を獲

得しなければならないとすると,地租は地主の負担とならざるをえない。

しかし,そうした場合,A,B,Cの土地の地代は負となってしまい, 耕作から引き上げられるので,社会的な穀物必要量が生産されなくなる。

結局,穀価が騰貴して,耕作の促進がおこることになろう。いま,穀価 が限界4単位の穀物生産を償えるように25パーセソト騰貴したとする。

ひきつづき地租は地代の負担となるものとすると,A,Bの土地の地代 はなお負となり,それらの土地は耕作されないが,Cの土地の地代ほ地 租を負担しても正となり,その土地は再び耕作に引きいれられる。しか もこのとき,CからFまでの土地で内包的耕作が限界4単位の穀物生産 のところまで深化しているので,必要な穀物量の生産が可能となる。

こうしてみると,地租ほ地代によって負担され,税をさし引いた地代

が負となる土地の耕作は放棄されるということと,社会的に必要な穀物

量が生産されねばならないという要請とは,以上の場合なんら矛盾しな

いということができる。すなわち,地租は地代の負担となって一部の土

地の耕作を放棄させるが,他方で内包的耕作の深化を促し,その結果,

後者による穀物生産量の増加が前者による穀物生産量の減少を償うので

(4)

ある。

このように地租は地代によって負担されると考えてよいが,そうだか らといって,すべての地主が地租によって損失をこうむる訳ではない。

表1において,課税前に耕作の限界が穀物5単位のときの地代と,課税 後で耕作の限界が穀物4単位になったときの税引き後の地代とを比較し

てみよう。課税後にAとBの地主のうけとる地代は,事実上ゼロとなる。

課税前と比べて課税後では,Aの地主のうけとる地代はゼロのままであ るが,BとCの地主が手にする地代は減少する。しかし,Dの地主ほ課 税後も同額の地代(=穀物地代)をうけとり,EとFの地主ほ課税前より

も大きな地代を得る。この比較は穀物地代でなされたが,もし貨幣地代 で比較するなら,Dの地主も課税後より大きな地代を獲得することにな る。ともあれ,地租は各地の地主に差別的な影響を与えるということが わかる。

リカードほ,外延的地代の場合,あるいは内包的地代ではすべての土 地の品質は同一である場合を仮定して,耕作の限界は地租が課せられて も,社会的な穀物需要を満すためにほ変りえないとしている。そうであ るなら,リカードのいうように,穀物地代は地租の影響をうけない。し かし,外延的地代と内包的地代の存在を同時に考慮にいれるならば,地 租は地代により負担されつつ耕作の限界を変え,ある土地での内包的耕 作の深化によって穀物需要が満される場合を考えることができる。こう して,シヤウプは,地租に関するリカードの主張は一般的にいって成立 しないと判断するのである。

シヤウプは,リカードみ内包的地代の考え方そのものを批判している

のでほない。もしすべての土地の品質が同一であれば,シヤウプもリカー ドの主張を認めるものと思われる。しかし,そのとき,リカードの主張

は本当に成立するのであろうか。そして,そもそも,内包的地代に対す るリカードの考え方には,問題がないといえるのであろうか。

(4)

(5)

スラッファの内包的地代論

リカードによる内包的地代の説明ほ,外延的地代の原理を応用したも のである。すなわち,穀物需要の増大に応じて同一の品質の土地に資本

と労働を追加的に投下したとき,穀物の追加的な産出量は逓減し,資本 と労働の最終単位の投下が生み出す穀物量とそれ以前の資本と労働の諸 単位が生み出した穀物量との差額の合計が,その土地の地代(=穀物地 代)を規定するとされる。地代のこの説明ほ,生産方法を穀物1単位あた

りの資本と労働と土地の投入係数によって区別するならば,穀物生産方 法の連続的な変化を前提にしている。しかもその場合,各生産方法の資

本・労働比率ほ変らないと暗黙のうちに仮定されている。しかし,生産 方法が違うと資本・労働比率も異なることがあろうし,生産方法を連続 的に変化させなくても,穀物産出量を増加させることもできよう。

スラッファは,同一の品質の土地で二つの異なる生産方法が併用され るときに,内包的地代が発生すると考える(3)。土地の品質が同一で,ある 穀物生産方法だけではすべての土地を耕作しても穀物需要の増大に応え

ることができなくなると,単位費用一穀物1単位あたりの生産手段の 価値,利潤,賃金の合計‑はより大きいけれども,土地をより節約的 に使用する新たな生産方法が(4),以前の生産方法にかわって土地の一部 に導入される。この場合,この二つの生産方法の併用が可能となるよう に,地代‑これこそ内包的地代である‑が発生し,穀物価格も騰貴 する。これが,内包的地代のスラッファによる説明である。

穀物生産の増大がなおも要請されるならば,新しい生産方法がより多

くの土地に拡大していく。この生産方法がすべての土地に拡大されても,

なお穀物需要の増大に応ずることができなくなると,土地を一層節約的

に使用するさらに新しい第3の生産方法が土地の一部に導入され,さき

の第2の生産方法と併用されるように,地代は一層増大し,穀価もまた

一層騰貴する0「このようにして,生産方法は突発的に変化するけれども,

(6)

産出高ほ持続的に増加しうるのである。」(5)

リカードによる内包的地代の説明は,限界分析の始りとしばしばみな されてきた。しかし,スラ♭ファの地代論は,限界分析と無縁である(6)。

こうしたスラッファの考え方に従って,さきのシヤウプの問題をあらた めて見直してみよう。

シャワプの問題・再論

地租が課せられる以前でほ,Ⅹ,Y,Zという品質の異なる土地が耕作 されていたとする。そして,各土地にはそれぞれX‑1,Y‑1,Z‑1と

いう特有の生産方法が採用されており,それらの生産方法の単位費用c は,Ⅹ‑1から順に大きくなっているものとしよう(c£<d<d)。さらに, 穀物1単位あたりの土地の面積dは,各生産方法の単位費用に比例して

いるものとしておこう(尤最=邦/c呈=山王/c呈)。さて,Zがいわゆる限界 地であり,この三つの土地の耕作で穀物需要が満されているものとすれ

ば,ⅩとYには,各生産方法の単位費用とZ‑1の単位費用‑これが 穀価を決定する‑との差額だけ,穀物1単位あたりの地代(=貨幣地 代)が生ずることになる。この地代を穀価(=d)で除すと,穀物地代がも

とめられる。

ここで,土地の単位面積あたり71なる地租が課せられたとしよう。穀 物需要が満されるようZ‑1がZでひきつづき使用されるためには,穀

価はA…r4だけ騰貴しなければならない。このとき,その他の生産方法の 税を含む単位費用もまた,穀価の上昇率と等しく上昇する。したがって,

Ⅹ,Yの土地の貨幣地代は増大するが,穀物地代ほ課税前と変らない(7)。

この結論は,リカードの主張でもあった。

ところで,いまⅩには第2の生産方法Ⅹ‑2が知られており,それは 穀物1単位あたりⅩ‑1よりも少ない土地を使用するが,単位費用はよ

り大きいものとし(A主>A芝,Ci<c葺),課税前ではⅩ‑2の単位費用はZ‑

(6)

(7)

1の単位費用よりも大きいので(c…>cま),Ⅹ‑2は使用されていなかった としてみよう。地租が導入されると,Ⅹ‑2は土地をより節約的に使用す ることにより,税を単位費用に含めるならば,Ⅹ‑2の単位費用は,Z‑

1やY‑1の単位費用よりもかえって小さくなるという場合(c…+nd乏

<d十ndユ)も考えられる。この場合,地租が課せられた結果,Z‑1よ りもⅩ‑2の方が有利となる。さて,Zの耕作は放棄されても,Yにおけ るY‑1の使用とⅩにおけるⅩ‑1,Ⅹ‑2の使用で穀物需要が満される

とすると,Ⅹでは二つの生産方法の併用を可能にするように地代(=内 包的地代)が発生しなけれはならない。このとき,Ⅹでの穀物1単位あた

りの地代と単位費用の合計が,Y‑1の単位費用よりもなお小さいとす れば,後者で穀価が決定され,Yでは地代が消滅し,Ⅹには外延的地代 もつけ加わるであろう。地租ほ,シヤウプのいうように,各地の地代に 差別的な影響を与えるのである。こうしてみると,内包的耕作や内包的 地代の存在を考慮に入れるならば,種々の租税の効果に関するリカード の所説も修正されねばならない場合のあることがわかる。

もっとも,さきに述べたように,土地がすべて同じ品質をもち,内包 的地代しか生じていない場合にほ,シヤウプは地租に関するリカードの 主張を支持するであろう。けれども,そのような場合でも,リカードの 主張は成立しない。この点を明らかにするためには,内包的地代の決定

メカニズムを一層正確に理解しなければならない。

以下では,すべての土地の品質は同一であるとし,内包的地代のみが 取り扱われ,そのもとで,各種の租税が賃金,利潤,地代にいかなる影 響を及ばすかが検討される。

ⅠⅠ内包的地代の最も簡単なモデルによる租税分析

1 内包的地代モデルⅠの説明

内包的地代を説明するために(8),非常に単純化された経済を想定しよ

(8)

う。経済体系ほ一つの製造品と一つの農産物(=穀物)よりなる。製造品 ほ単一の生産方法によって産出されるが,穀物の生産には二つの方法が 存在する。土地はすべて同質である。また,賃金ほ後払いであり,生産 ほ流動資本のみ必要とする。各々の商品の産出量ほ,生産過程で生産手 段として使用された量を補填して余りあり,物的剰余を生みだすのに十 分な大きさである。純生産物は,課税がない場合,賃金と利潤,そして

ときには地代として分配される。

さらに,内包的地代の決定メカニズムを容易に理解しうるよう,穀物 ほ非基礎財とする。そして,価格や賃金は製造品のタームで測定される ものとする。このとき,価格方程式体系は次のようになる。

(1+γ)仇1+ム紬=1 ……(1)

(1+γ)α壬2+〟紗+dlβ=♪2 ……(2) (1+γ)α子2+だ紺+A2p=♪2 ……(3) (1)は製造品の価格方程式をあらわし,(2)と(3)は穀物生産の第1の方 法(=工程Ⅰ)と第2の方法(=工程ⅠⅠ)に対応する穀物の価格方程式で ある。穀物価格は♪2であらわされ,製造品価格♪1ほ1に等しいとされて いる。恥,ん(ダ,ノ=1,2)ほ,ノ商品1単位の生産に必要なダ商品の量と直 接労働量をあらわす。製造品と穀物は下つき添字1と2で区別され,上

っき添字1と2で穀物生産の各工程が区別されている。ノ4力(ゐ=1,2)は, 穀物生産の各工程で穀物1単位の生産に必要な土地の面積である。地代

はpであらわされ,地代が生ずるとすれば,どの工程でも単位面積あた り同じ大きさとなる。γとぴは,利潤率と賃金をあらわす。

ここで,穀物生産の工程Ⅰほ工程ⅠⅠよりも穀物1単位あたりより大き な土地を必要とし(dl>月2),工程Ⅰのみでは穀物需要は満されないとし ょう。穀物需要は,工程Ⅰと工程ⅠⅠを併用してすべての土地を耕作する か,あるいは工程ⅠⅠのみを使用して土地の一部を未利用のまま残すか, いずれかによって満されるものとする。

(8)

(9)

さて,賃金一利潤率関係(紺‑γ関係)は,基礎財部門である製造品部門 の生産条件によって決定される。(1)から次式が導出される。

紺(γ)= 1‑(1+γ)仇1

……(4) 賃金が外生的に与えられるとき,(4)よりそれに対応する利潤率が決定

され,工程Ⅰと工程ⅠⅠが併用されれば,(2)と(3)によって地代と穀価が 決定される。しかし,こうして決定される地代の大きさが負となる場合

も考えられる。そうしたときにほ,穀物生産において両工程の併用は不 可能となり,工程ⅠⅠのみが使用され,地代ほゼロとなろう。

では,二つの工程が併用されて,地代が正であるための条件は何んで あろうか。賃金と利潤率が製造品部門で決定されると,各工程における

穀物生産の単位費用が定まる。このとき,土地生産性のより高い工程ⅠⅠ の単位費用c2が土地生産性のより低い工程Ⅰの単位費用clよりも大き

いということが,正の地代のための条件である。この条件は,各工程の

穀物価格一地代関係(♪2‑β関係)を図示することによって,容易に確め

られる。

図1においては,工程Ⅰの♪2‑β関係が直線Ⅰとして,工程ⅠⅠの♪2‑β 関係が直線ⅠⅠとして描かれている(9)。おのおのの直線の傾きは各工程の 土地生産性(1〟1力)をあらわし,原点と直線が水平軸と交わる点との距離 が各工程の単位費用の大きさを示している。二つの工程が併用されると

き,地代と穀価ほ両直線の交点で決定されるが(10),Cl<c2であれば両直 線はβも♪2も正の象限で交わる。もし,Cl>c2であれば,pが負の象限

で両直線は交わるであろう。地代が正であるためには,Cl<c2でなけれ ばならない。

いまかりに,地代が生じていないものとしよう。そのとき,農業資本

家は単位費用のより小さな工程Ⅰを使用しようとするだろう。しかし,

工程Ⅰでは,すべての土地を耕作しても穀物需要を満すことはできない。

(10)

工程Ⅰの使用と土地を求める農業資本間の競争により地代が発生し,穀 価は騰貴する。ところが,地代が増大するにつれ,穀物1単位あたり地 代のより少なくてすむ工程ⅠⅠが次第に有利となり,地代が両工程の単位 費用の格差をちょうど相殺する程度にまで増大すると,工程ⅠⅠは工程Ⅰ

と同等に有利となる。そうしたとき,工程Ⅰにかわって土地の一部に工 程ⅠⅠが導入され,穀物需要が満されることになる。地代と穀価はそれ以

上増大,騰貴しない。すなわち,地代の大きさは両工程の単位費用の格 差を相殺し,両工程の併用を可能にするように決定され,それと同時に 穀価もまた決定されるのである。図1においては,地代がp*,穀価が♪誉 のとき,二つの工程の併用が可能となることが示されている。

ところで,穀物生産の各工程の単位費用は,必ずしも一定不変ではな い。それは,所得分配が変ることによって変化するかもしれない(11)。た

とえば,各工程の単位費用を等しくするような賃金と利潤率の可能な組

合せが存在する場合を考えることができる。このときは,土地は稀少と

ならず,地代は発生しない。なぜなら,土地が足らなくなると,土地の

(11)

一部でただちに工程ⅠⅠが工程Ⅰにとってかわるからである。

もし,賃金がより低く設定され利潤率がより高くなるにつれて,C2が Clよりも大きくなるなら,両工程が併用され,地代も増大する。逆に, C2がclよりも小さくなるのであれば,工程ⅠⅠだけが使用され,土地は過 剰となって地代は生じない。こうした状況で二つの工程を併用しようと すると負の地代が必要となるが,負の地代は経済的に意味をなさない。

こうしてみると,土地の稀少性と地代の大きさは,利用可能な工程と 穀物需要の関係のみならず,所得分配にも依存するといわねばならない。

2 モデルⅠによる租税の分析 原生産物税

原生産物税(=穀物税)を製造品で測って右とすると,価格方程式体 系ほ次のようになる。

(1+γ)の.+ム抑=1

(1+γ)α王2+〟紺+dlp+右=♪2 (1+γ)α子2+だ抑+d2β+右=♪2

……(5)

紺‑γ関係は,原生産物税の導入によっては影響をうけない。それは, 製造品部門の生産条件だけで決定されるからである。したがって,単位 費用のうちに税を含めると,原生産物税は,穀物生産の各工程ともその 単位費用を右だけ高める。このことは図1で示されている両工程のp

‑♪2関係を右だけ右へシフトさせるので,地代の大きさは変らず,穀価 が右だけ騰貴することになる。あるいほ,税導入以前の価格方程式体系 において♪2を(♪2一缶)におきかえれば,(5)の価格方程式体系を得るこ

とができるから,課税前の♪2は課税後の(♪2一石)に等しく,地代は課税 によって影響をうけないといってもよい。

穀物生産における各工程の単位費用の格差は,原生産物税によって変

(12)

る訳でほない。それゆえ,その格差を相殺するのに必要な地代の大きさ も変ることはない。地代が変らないのであるから,穀価が税額だけ騰貴 する。

こうして,製造品を貨幣とみなすなら,原生産物税は貨幣地代を不変 にとどめ,穀価の騰貴をもたらし,穀物地代を低下させるということが できる。この結論は,原生産物税についてのリカードの主張と同じであ

る(12)。

地 租

次に,土地の単位面積あたり製造品で測ってnなる地租が課せられ る場合を検討してみよう。価格方程式体系は,(6)のようになる。

(1+γ)仇1+ム抑=1

(1+γ)α壬2+〟抑+AIp+Al二n=♪2 (1+γ)α子2+だ紺+A2β+A2T4=♪2

……(6)

この価格方程式体系ほ,税導入以前の価格方程式体系におけるβを(β +n)におきかえたものに等しい。これより,一定の賃金と利潤率のもと で,課税後の地代と地租の合計は課税前の地代の大きさに一致するとい

うことがわかる。課税後の地代は,課税前の地代から地租を減じた大き さとなる。穀価ほ,地租によって影響されない。

このことは,図1に示されている各工程のβ‑♪2関係が課税によって どう変化するかをみることによっても,確かめることができる。地租は, 工程ⅠのP‑♪2関係をdlnだ仇工程ⅠⅠのそれをd271だけ右にシフ

トさせる。ということは,両工程のβ‑♪2関係がnだけ下方にシフトす るということでもある。その結果,地代はnだけ減少し,穀価は変化し ない。

二つの工程の単位費用の格差は,単位費用に税を含めると,(Al

一山2)nだけ縮少する。二つの工程の穀物1単位あたりの地代の格差は

(13)

(dl一山2)βであるから,この格差でもって両工程の単位費用の格差を相 殺する必要性は,nだけすくなくてすむ。これが,地租ほ地代によって

負担されるということの理由である。地租が地代によって負担されるな らば,穀価は変らない。

このように,内包的地代モデルでは,地租は地代によって負担される のであるが,もしも地租を負担すると地代が負になってしまうようであ れば,工程Ⅰと工程ⅠⅠの併用はもはや不可能となる。そのときには,工 程ⅠⅠのみが使用され,地代ほゼロとなる。そして,穀価ほ,工程ⅠⅠの税 を含む単位費用によって決定され,課税前と比べれば騰貴する。

地租に関するリカードの主張は,貨幣地代増大,穀物地代不変という ことであった。これまでの検討は,課税前に内包的地代が生じており, 製造品を貨幣とみなすならば,地租により貨幣地代と穀物地代はともに 減少するということを示している。

賃 金 税

今度ほ,賃金税の効果を検討しよう。賃金税率を税引き賃金に対する 税率と定義し,んとする。賃金税の導入ほ,価格方程式体系を次のよう

に変える。

(1+γ)の1+以1+ん)紺=1

(1+γ)α壬2+〟(1+ん)ひ+dlβ=♪2 (1+γ)α子2+だ(1+ん)紺+d2β=♪2

……(7) 賃金が外生的に与えられているならば,賃金税は税こみ賃金の増大を もたらし,利潤率を低下させる。このことは,製造品部門の紗‑γ関係

より明らかである。問題は,この所得分配の変化が地代にどのような影 響を及ぼすかである。これをみるためには,利潤率の低下によって,穀

物生産の各工程の単位費用がどのように変化するかを考察せねばならな

い。

(14)

各工程の税を含む単位費用は,次式で与えられる。

c九(γ)= 好+(1+γ)(んα缶一貯の1) (ゐ=1,2)……(8)

これより,α缶/好>仇1仏ならば,C力はγの低下とともに低下するという ことがわかる。ここで,各工程の生産手段・労働比率が,次のようであっ たとしよう。

α子2/だ>の1仏>α王2/〟 ……(9) このような条件のもとでは,利潤率の低下はc2を低め,Clを高めるよう に作用する。

賃金税による各工程の単位費用の変化と,それが地代に及ぼす影響を, 図2によって説明してみよう(13)。賃金が痴に与えられているとき,税の

導入以前では,利潤率は戸に定まり,工程Ⅰと工程ⅠⅠの単位費用ほそれ ぞれcl(戸),C2(戸)となって,地代は戸,穀価ほタ2に決定されていたも のとする。賃金税の導入は,一定の痴のもと,利潤率を戸からγ′へと

低くめる。そのとき,各工程の単位費用はそれぞれcl(γ′),C2(γ′)に変化 し,その格差ほ課税前よりも縮少する。そのため,各工程のβ‑♪2関係は

図2の破線であらわされているようにシフトし,地代は〆へと低下し, 穀価も炎に下落する。穀物地代もまた低下するであろう(14)。かくして, この場合,賃金税は利潤と地代によって負担されるということができる。

税引き賃金ほ,課税前の賃金に比べて,穀物で測るとかえって増大して いる。

賃金税が課せられて利潤率が低下することにより,両工程の単位費用 が等しいか,あるいは工程Ⅰの単位費用の方が大きくなるといった事態 が生ずるかもしれない。このような場合には,土地の稀少性が解消され, 地代はゼロとなる。

これまでは,(9)という条件を仮定していた。もし,(9)に示されてい

る不等号の向きが逆であるならば,賃金税の導入によって,地代が増大

(15)

(16)

し,穀価が騰貴したり,あるいは,新たに土地が稀少となって地代が発 生するということも考えられる。このとき,穀物で測った賃金ほ下落す

る。

ともあれ,内包的地代の場合には,賃金税の導入は,地代と穀価に影 響を与えるということが明らかとなった。この結果は,賃金税によって

は地代ほ影響をうけないとするリカードの主張とは相容れないものであ る。

ただし,利潤率が外生的に与えられているときにほ,税こみ賃金は課 税前の賃金と等しくなり,賃金税は賃金によって負担される。穀物生産

の各工程の単位費用は,課税によって変化しないので,賃金税は地代に なんらの影響も及ばさない。

利 潤 税

最後に,利潤税の効果を検討しておこう。利潤税率を′♪とし,それを 税引き利潤に対する税率と定義すれば,利潤税の導入によって価格方程 式体系は次のようになる。

(1+(1+ら)γ)の1+ム紺=1

(1+(1+ら)γ)α壬2+お抑+Alβ=♪2 (1+(1+ら)γ)α雪2+彦紺+A2̀)=♪2

……(10)

この(10)は,税導入以前の価格方程式体系においてγを(1+ら)γに おきかえることによって得られる。したがって,賃金がある水準に固定 されているときには,税こみ利潤率は課税前の利潤率に等しい。利潤税 は,利潤によって負担される。このとき,穀物生産の各工程の単位費用 もまた課税前と同じであるので,利潤税によっては,地代や穀価は変化 しないということができる。

もし,利潤率がある水準に外生的に与えられているのであれば,利潤

税は,税こみ利潤率を課税前の利潤率よりも高くし,賃金を低下させる。

(17)

1■

その場合にほ,穀物生産の各工程の単位費用は変化をこうむる。(9)の条 件のもとでほ,各工程の単位費用の格差は拡大し,地代の増大と穀価の

騰貴が生ずるだろう。賃金は穀物で測ると一層低下する。こうして,賃 金の低下は利潤税を負担する以上となり,かえって地代の増大をもたら すのである。もちろん,(9)の条件とは逆の条件のもとでは,反対の結果 が生ずることになる。

ⅠⅠⅠ穀物をニュメレールとした内包的地代モデルによる租 税分析

1内包的地代モデルⅠⅠの説明

モデルⅠでほ,製造品のタームで価格と賃金が測られた。しかし,こ れでは,穀価の変化に反応して賃金が変動する場合をうまく分析するこ とができない。そうしうるためには,賃金を穀物で測ることが必要とな る。穀価♪2を1とおき,製造品価格を♪1とすれば,価格方程式体系は次 のようになる。簡単化のため,穀物はなお非基礎財としておこう。

(1+γ)如11+ム抑=♪1

……(11) (1+γ)如壬2+紬+Alβ=1

……(12) (1+γ)如雪2+だ抑+d2β=1 ……(13) みられるように,いまや(11)のみでは,紺‑γ関係を確定しえない。し かし,この価格方程式体系から,三つの紺‑γ関係を得ることができる。

第1の抑‑γ関係ほ,穀物生産が工程Ⅰと工程ⅠⅠを併用して行われる 場合に対応するものであり,(11),(12),(13)より得られる。このぴ‑γ 関係を,技術(Ⅰ・ⅠⅠ)の軌2‑γ関係という。それほ,次式のようにあら わされる。

軌2(γ)=

(18)

(d2‑∧1)(1‑(1+γ)仇1)

だα‖)) A2(〟+(1+ γ)(Jlαi2‑〟α‖)) Al(だ+(1+γ)(ムα子2

……(14) 助2が正であるためには,(14)の分母は負でなければならない。というの ほ,仮定によりA2<Alであり,また製造品部門が物的剰余を生みだして

いるかぎり(14)の分子のく 〉ほ正と考えてよいので,(14)の分子が負 となるからである。れ′12=0に対応する最大利潤率βは,

斤=1二旦吐 ……(15)

で与えられる。(14)で示される紺Ⅰ2(γ)ほ,γの減少関数である。それは 形式的にほγの増加関数でもありうるが,その場合には,γがゼロと斤

の区間にあるとき,勅2は負になってしまう(15)。

技術(Ⅰ・ⅠⅠ)が採用されると,土地は稀少となり,地代が生じる。地 代一利潤率関係(p‑γ関係)ほ,次式で与えられる。

∴̲̲一二 三̲∴二̲∴ ∴ニ了二 二l̲「‑‑∴

……(16) (16)でみられるように,β(γ)はγの減少関数あるいは増加関数のいず れでもありうるし(16),γのある区間でほ負ともなりうる。

♪1に関しては, か(γ)=

/1(.l・.ll)

d2(〟+(1+γ)(/1αi2 〟仇1))‑Al(だ十(1+ γ)り1(Z子2 だ仇1))

……(17) が得られる。勅2が正とすると,(17)の分母は負となるので,♪1もまた正

となる(17)。

第2の抑一γ関係は,穀物生産が工程ⅠⅠのみで行われる場合に対応す

(19)

るものであり,(11)と(13)でβ=0としたものより得ることができる。そ の関係を,技術(ⅠⅠ)の紺2‑γ関係とする。

紺2(γ)= 1‑(1+γ)α‖

だ+(1+γ)(/lα子2‑だα‖) ……(18)

紺2(γ)はrの減少関数であり(18),紺2=0のときの最大利潤率ほ,れ厄‑γ 関係と同じβである。また,細2が正であるならば,♪.も正である(19)。技 術(ⅠⅠ)が採用されるときには,土地が過剰となり,地代は生じない。

第3の紺‑γ関係は,穀物生産に工程Ⅰのみが使用された場合に,(11) と(12)でβ=0としたものから得られる。もちろん,工程Ⅰのみでは穀物 需要をまかないきれない。したがって,この技術(Ⅰ)の紺1‑γ関係は,

あくまでも仮想的なものである。しかし,地代の決定メカニズムを明ら かにするためには,この関係もまた考慮に入れる必要がある。れJl一γ関 係は,紺2‑7・関係と同様に解釈することができる。

かくして,三つの技術の以十‑‑γ関係を導出することができた。それら を図示すると,図3のようになったとしよう。そのとき,P‑γ関係を, 図3の下図のように,γの減少関数として描くことができる。

図3によって,地代の決定メカニズムを考えてみよう。いま,賃金が 痴に与えられたとする。このとき,最も有利な技術(Ⅰ)における工程Ⅰ の使用では,必要な穀物量を産出できないので,その次に有利な技術(ⅠⅠ) が採用されるようにみえる。けれども,技術(ⅠⅠ)における工程ⅠⅠの使用 ほ,土地を過剰にする。土地の過剰,したがって地代ゼロという状況で は,すべての農業資本家ほ工程Ⅰを使用しようという誘因をつねにもつ であろう。そうであれは,工程Ⅰの使用と土地をめぐる競争が生じ,土 地ほやがて稀少となり,地代が発生する。こうした競争による地代の発 生と増大は,土地をより多く必要とする工程Ⅰの利潤率に反映される収 益性を,工程ⅠⅠのそれよりもよりすみやかに低下させる。地代の増大に

ともなって,二つの工程が収益性に関して等しく有利になったとき,利

(20)

20

(21)

潤率の低下は止み,土地に対するそれ以上の需要は生じない。図3でほ, 地代の大きさが戸となったとき,工程Ⅰと工程ⅠⅠはともに同一の利潤率

戸をもたらし,二つの工程の併用が可能になることが示されている。結 局,紺=廊の場合にほ,技術(Ⅰ・ⅠⅠ)が採用されざるをえないのである。

確かに,技術(ⅠⅠ)ほ,技術(Ⅰ・ⅠⅠ)よりも高い利潤率をもたらすこと ができる。しかし,技術(ⅠⅠ)の採用は安定的でなく,農業資本家の個別 的な利潤追求行動は,かえって体系全体の利潤率を低めてしまう(20)。も

し,賃金が晰2以上の水準に与えられるとすれば,利潤率は競争の過程 でゼロにまで低下するに至るであろう。したがって,体系全体はこのよ

うな賃金を維持しえないということができる。

紺=元のときには,穀物生産の両工程はともに有利となり,双方の技 術は同じ利潤率γ′をもたらす。この場合,土地は稀少とならず,地代は 生じない。

賃金が壷に与えられたとすると,技術(ⅠⅠ)が採用されるので,土地ほ 過剰となり,地代は生じない。技術(Ⅰ・ⅠⅠ)は技術(ⅠⅠ)よりも高い利潤 率をもたらすが,それを採用すると,地代ほ負となってしまう。

賃金ではなく,利潤率が外生的に与えられたとしても,以上と同じよ うに考えることができる。すなわち,利潤率がゼロとγ′の間に与えられ れば,技術(Ⅰ・ⅠⅠ)が採用されて地代が生ずるが,利潤率がγ′のときに は,技術(Ⅰ)と技術(ⅠⅠ)が同等に有利となり,利潤率がγ′と斤の間に 与えられると,技術(ⅠⅠ)が採用されるので,ともに地代ほ生じない。

2 モデルⅠⅠによる租税分析 原生産物税

原生産物税を穀物で測って苫とすると,税導入以前の価格方程式体

系において動,紺,βのかわりに,それらを(1一帯)で険したものを代入

(22)

22

(1一基)晰

(1一苫)隅

(1一茶)晰2

(23)

することによって,税を導入した価格方程式体系を得ることができる。

ということは,一定の利潤率に対応する課税後の動,紺,βの大きさは, 課税前のそれぞれの値を(ト苫)倍したものであることを意味する。技 術(Ⅰ・ⅠⅠ)に関してほこのようにいえるが,地代をのぞいて同じことが, 技術(ⅠⅠ)と技術(Ⅰ)についてもいえる。したがって,各技術の課税後の 紺‑γ関係,そしてβ‑γ関係を,図4の破線のようにあらわすことがで

きる。

まずはじめに,賃金が外生的に与えられている場合をみてみよう。あ る賃金のもとで,課税前には技術(Ⅰ・ⅠⅠ)が採用されていて,地代が生 じていたとする。もし課税後も技術(Ⅰ・ⅠⅠ)の採用が可能であるなら, 利潤率ほ低下し,税が利潤によって負担される程度が大きいほど,地代 (=穀物地代)はそれはど減少しない。ただし,外生的に与えられた賃金が

γ=0に対応する技術(Ⅰ・ⅠⅠ)の課税後の賃金,すなわち(ト苫)晰2を 上回るような水準であったら,体系全体ほこのような賃金をもはや維持 できず,再生産不可能となってしまう。

課税前に技術(ⅠⅠ)の採用をもたらしていた賃金のもとでほ,税の導入 によって技術(Ⅰ・ⅠⅠ)への転換が引きおこされ,地代が新たに生じて, 利潤率ほ税を負担する以上に低下するといった事態もおこりうる。課税 後も引きつづき技術(ⅠⅠ)が採用されるときには,利潤率ほ低下するが, 地代はゼロのままである。

ところで,図4ではβ(γ)がγの減少関数として描かれているが,図4 とほ違いp(γ)がγの増加関数であるなら,原生産物税が地代に与える 影響は以上とは異なったものとなる。技術(Ⅰ・ⅠⅠ)が課税後もひきつづ

いて採用される場合には,利潤率が低下し,地代も必ず減少する。また, 課税によって技術(Ⅰ・ⅠⅠ)から技術(ⅠⅠ)へと技術の転換が引きおこされ

ることもあり,そのときには,地代は正からゼロへと減少し,利潤率は

技術の転換がない場合にくらべて一層大きく低下する。

(24)

賃金でほなく,利潤率が外生的に与えられているならば,課税によっ て技術の転換がおこることはなく,課税前に地代が生じていたときには, 税は賃金と地代によって負担されることになる。

ともあれ,これまでの検討により,原生産物税は地代(=穀物地代)に 有利あるいは不利な影響を与える場合があることが明らかとなった。こ の結果ほ,原生産物税に関するリカードの主張と異なるものである。

地 租

土地の単位面積あたりの地租を穀物で測って帯とすると,税を導入 した価格方程式体系は,税導入以前の価格方程式体系においてβを(p +㍍)におきかえたものに等しい。このことほ,技術(Ⅰ・ⅠⅠ)の机2‑γ 関係は地租の導入によって変らないということを意味する。すなわち, 穀物生産における各工程の税を含まない単位費用の格差が,穀物1単位

あたりの地代と地租の合計によって相殺されるように地代が決定される ので,一定の利潤率に対して賃金は変る必要がないからである。製造品 価格もまた変化しない。ただし,一定の利潤率のもとで,地代は㍍だけ 減少する。

技術(ⅠⅠ)の抑2‑γ関係は,地租によって影響をうける。一定の利潤率 に対応する課税後の紺2の大きさは,課税前のそれを(1‑㌫A2)倍した

ものとなる(21)。技術(Ⅰ)の紺1‑γ関係についても,同じように考えるこ とができる。

かくして,各技術の課税後の抑‑γ関係とp‑γ関係を,図5における 破線のようにあらわすことができる。ただし,技術(Ⅰ・ⅠⅠ)の軌2‑γ関 係ほ,課税後も実線のままである。

ここで,賃金が外生的に与えられていたとしよう。ある賃金のもとで, 課税後も課税前と同じ技術(Ⅰ・ⅠⅠ)が採用されるなら,利潤率は変化せ ず,地代が地租額だけ減少する。もし,地代が地租を負担すると負にな

(24)

(25)
(26)

るようであれば,課税後ほ技術(ⅠⅠ)が採用され,地代はゼロとなり,利 潤率が低下する。このとき,地租は地代と利潤によって負担される。

課税前にほ技術(ⅠⅠ)が採用されていたような賃金では,課税後もひき っづいて技術(ⅠⅠ)が採用され,地代はゼロのままであり,利潤率は低下

し,地租は全面的に利潤の負担となる。

このような結果は,たとえβ(γ)をγの増加関数であるとしても,その まま妥当する。

外生的に与えられるのが利潤率であるとすると,地租は地代あるいは 賃金のいずれか,場合によってはその双方によって負担される。

これまでの検討により,地租は地代の負担とならずかえって地主に利 益を与えるというリカードの主張は一般的にほ成立しないということが 明らかとなった。

賃 金 税

賃金税が導入されると,税を含む価格方程式体系は,税導入以前の価 格方程式体系の紺を(1+㍍)抑におきかえることによって得られる。こ

のことから,ある利潤率のもとでの課税前の賃金には,その利潤率のも とでの課税後の税こみ賃金が対応しているということがわかる。した がって,税引き賃金は,課税前の賃金を1/(1+㍍)倍したものとなる。こ

うした関係ほ,どのような技術においても認められる。ただし,P‑γ関 係は,賃金税によって影響をうけない(22)。この点が原生産物税の場合と 異なるが,各技術の抑‑γ関係が変化する仕方ほ,原生産物税の場合と 同様である。

賃金が外生的に与えられているとしよう。賃金が高い水準に与えられ ているときには,税の導入の結果,体系全体はもほやそのような賃金を 維持できないこともある。

また,課税前と同じ技術(Ⅰ・ⅠⅠ)が採用されつづける場合には,地代

(27)

が税の導入によってかえって増大し,利潤率が大幅に低下するであろう。

その理由はこうである。課税による税こみ賃金の上昇は,利潤率の下落 をもたらすが,そのことが穀物生産の各工程の単位費用の大きさに影響

し,その格差が拡大するのであれば,それを相殺するように地代が増大 する0この地代の増大はさらにγの低下と♪1の下落をもたらすであろ うが,こうした地代の増大と利潤率の低下の累積過程は,それによって 各工程の単位費用と地代の合計が等しくなるまで続く。このような過程

を通じて,利潤は税を負担する以上に低下するのである。もちろん,p(γ) がγの増加関数の場合には,賃金税の導入によって地代が減少し,利潤

率の低下は小幅にとどまることとなる。

さらに,ある賃金のもとでほ,課税によって,課税前の技術(ⅠⅠ)から, 課税後の技術(Ⅰ・ⅠⅠ)の採用へと技術の転換がもたらされる事態も考え られる0そのときには,地代が新たに発生し,利潤率は技術(ⅠⅠ)が採用 されつづけるときよりも一層大きく低下する。ここでもまた,利潤ほ税

を負担する以上に低下する。なお,β(γ)がγの増加関数であるなら,課 税によって技術転換がおこるとしても,それほ技術(Ⅰ・ⅠⅠ)から技術(ⅠⅠ) への転換となる0こうしたときには,地代ほ正からゼロとなって,賃金 税ほ利潤と地代によって負担される。

課税後も同じ技術(ⅠⅠ)が採用されるのであれば,地代はゼロのままで あり,税は利潤によって負担されるだけである。

かくして,賃金が外生的に与えられていると,賃金税は利潤と地代に 様々の影響を与えるということができる。

利潤率が外生的に与えられている場合には,賃金税はもっばら賃金の 負担となって・利潤や地代にはなんらの影響も及ばさない。

利 潤 税

利潤税導入後の価格方程式体系は,税導入以前の価格方程式体系にお

(28)

図6

(29)

いてγのかわりに(1+りγを代入することによって得られる。したがっ て,一定の賃金に対応する課税前の利潤率は,同じ賃金に対応する税こ み利潤率に等しい。すなわち,課税後の税引き利潤率は,課税前の利潤

率を1/(1+fr)倍したものとなる。このことは,各技術において見い出さ れる。また,p‑γ関係についても同様であり,一定の地代に対応する税

引き利潤率は,課税前の利潤率を1/(1+≠r)倍したものである。よって各 技術の課税後の紺‑γ関係と,課税後のβ‑γ関係を図示すると,図6に

おける破線のように描くことができる。

賃金が外生的に与えられているときには,それがどの水準であろうと も,利潤税は税こみ利潤率を課税前の利潤率と同一にとどめるので,地 代には影響を与えない。利潤税はもっばら利潤の負担となる。この結果 は,リカードの利潤税に関する主張と一致する。

しかし,利潤率が所与とされているならば,さきの賃金が所与のとき の賃金税の分析のように,利潤税は賃金のみならず地代にも影響を与え

る可能性が生じる。

ⅠⅤ 穀物を基礎財とした内包的地代モデルによる租税分析

1 内包的地代モデルⅠⅠⅠの説明

これまでは,穀物を非基礎財として取り扱ってきたが,ここで穀物も また基礎財であるとしよう。ただし,簡単化のため穀物は製造品の生産 にのみ生産手段として投入されると仮定し,製造品と穀物の生産とも物 的剰余を生みだすものとする。また,穀物をニュメレールとする。その とき,価格方程式体系は次のようになる。

(1+γ)(♪1伽+α21)+ム紺=♪1 (1+γ)動α王2+〟紺+dlβ=1 (1+γ)♪.α雪2+β紬+d2β=1

……(19)

……(20)

……(21)

この価格方程式体系から,モデルⅠⅠと同様に,三つの技術の紺‑γ関

(30)

係を導き出すことができる。そのうちとくに検討を要するのは,技術 (Ⅰ・ⅠⅠ)の軌2‑γ関係である。それは,次式で与えられる。

丁̲三[壬;=三‡±ナ±‑±キーーご二士ご十

……(22) (22)ほ,技術係数のある値のもとで,利潤率の上昇が賃金の上昇と結び つきうることを示している。このような変則的紺‑γ関係ほ,技術(Ⅰ・

ⅠⅠ)においてのみあらわれる(23)。

単一生産物体系でほ,利潤率の上昇は標準商品で測った賃金を下落さ せるが(24),いかなる商品の価格も賃金の下落率をこえて下落しえな

い(25)。したがって,利潤率が上昇すると,いかなる商品で測っても賃金 は下落する。

けれども,結合生産物体系では,利潤率が上昇したとき,標準商品で 測るとある商品の価格が賃金の下落率以上に下落し,その商品と結合的 に生産される商品の価格がその下落を埋め合わせるように騰貴するとい

うことが可能となる。そうしたとき,価格が賃金の下落率以上で下落す る商品で賃金を測れば,賃金は利潤率とともに上昇するということがで きる(26)。

穀物生産は,穀物と土地との結合生産である。ただ,土地は投入分以

上に生産される訳ではないので,土地を生産手段として生産過程に入る

が産出ほされない商品とみなしてもよい。そうであれば,利潤率が上昇

するとき,標準商品で測ると賃金は下落するが,もし土地という生産手

段の価格が穀物の価格よりも一層大きく下落するならば,すなわち地代

が大きく下落するならば,穀価は賃金の下落率以上に下落するというこ

とが考えられる。このとき,穀物で賃金を測ると,利潤率とともに賃金

もまた上昇するという変則的な関係が認められる。

(31)

このような変則性は,内包的地代の場合にのみ特有の現象である。外 延的地代の場合には,穀価の決定に地代は関与しない。内包的地代の場 合でも,穀物が非基礎財であれば,変則的な紗‑γ関係ほ認められな

い(27)。

技術(ⅠⅠ)の紗2‑γ関係は,(19)と(21)でβ=0とすることによって得 られるので,変則性を示すことはない(28)。

抑2(γ)= (1‑(1+γ)仇1)‑α21α雪 2(1+γ)2

……(23)

技術(Ⅰ)の紺1‑γ関係についても,同様である。

いま,変則的な勅2‑γ関係を想定し,それと技術(Ⅰ),技術(ⅠⅠ)の紺

‑γ関係を図にあらわすと,図7のようになったとしよう。図7の下図に は,次式のβ一γ関係が示されている。

∴ ‡‑こ士一三壬∴ニー丁‑÷三三十三●二千二≒二き二三二

……(24) まず,賃金が所与であるとして,抑=痴の場合を考えてみよう。この とき,技術(Ⅰ・ⅠⅠ)が最も有利であるが,地代が負となるので,その採 用は不可能である。それゆえ,穀物需要を満すために,技術(ⅠⅠ)が採用 されるように思われるが,その採用は安定的ではない。というのは,技 術(ⅠⅠ)における工程ⅠⅠの使用は土地を過剰にするので,すべての農業資 本家により有利な工程Ⅰを導入しようという誘因を与えるからである。

その結果,いずれは土地が稀少となり,地代が発生する。地代は,二つ

の工程の収益性(=利潤率)を低める。利潤率の低下の度合は工程Ⅰの方

が大きいが,地代が増大しても工程Ⅰが有利でありつづけると,いかな

る農業資本家もあくまで工程Ⅰの使用と土地を求めて競争するので,地

代はますます増大し,利潤率は最終的にほゼロにまで低下してしまうで

(32)
(33)

あろう。利潤率がゼロでほ,どの農業資本家も穀物生産をしようとはし ない。すなわち,この体系では,痴なる賃金を維持することはできない のである。この体系全体にとっての最大賃金は紺′である。

紺=紺′のときには,技術(Ⅰ)と技術(ⅠⅠ)が同等に有利となるので,土 地は稀少とならず,地代は生じない。

紺=仰の場合には,二つの技術が採用可能となる。一つは技術(Ⅰ・ⅠⅠ) であり,それが採用されると,利潤率がれに,地代がβ1に定まる。もう 一つほ技術(ⅠⅠ)で,その採用は乃という利潤率をもたらすが,地代を生 みださない。このうちどちらの技術が採用されるかは,単なる技術選択 をこえる問題であって,農業資本家と地主との勢力関係に依存する。前 者が穀物生産工程を自由に選択できるならば,技術(ⅠⅠ)が採用されるで あろう。

利潤率が外生的に与えられると,どうであろうか。利潤率がゼロとγ′

との間に与えられるならば,たとえばγ=れのときには,技術(Ⅰ・ⅠⅠ)が 採用され,賃金はゐに定まり,地代はβ1に決定される。γ=れのとき, 技術(ⅠⅠ)の方がより有利であるが,その採用ほ安定的ではない。利潤率 がγ′と斤2の区間にあるときは,技術(ⅠⅠ)が採用され,地代は生じない。

2 モデルⅠⅠⅠによる租税分析 原生産物税と地租

原生産物税の導入ほ,各技術の抑‑γ関係に影響を与え,一定の利潤 率のもとでの賃金を低めるように作用するが,一様に低めるのではない。

賃金が低下する度合は,利潤率の水準によって異なり,利潤率がより高 くなるにつれその度合が大きくなるか小さくなるかほ,生産条件に依存 する。また,原生産物税ほp‑γ関係にも影響を及ぼし,一定の利潤率の

もとでの地代を低めるが,その度合もまた利潤率の水準によって異な

(34)

)

( 34

(35)

る(29)。変則的な軌2‑γ関係を想定し,課税後の紺‑γ関係とβ一γ関係 が図8の破線のように描けたとしよう。師は,各技術におけるγ=0に 対応する課税後の紺の大きさを示している。

はじめに,賃金が所与であったとする。ある賃金のもとで,課税後も 課税前と同じ技術(Ⅰ・ⅠⅠ)が採用されるならば,利潤率は上昇し,地代 は減少する。すなわち,地代は税を負担する以上に減少し,利潤率がか

えって上昇するという奇妙な事態が生ずる。これは,変則的な軌2‑γ関 係を想定したために生じた,特異な現象である。もちろん,課税後も課 税前と同様,技術(ⅠⅠ)が採用されるときほ,地代はゼロのままで利潤率 が低下し,税はもっばら利潤によって負担される。また,体系全体は, 課税前では維持されえた賃金をもはや維持できなくなるといったことも 生ずるであろう。

利潤率が所与の場合は,どうであろうか。課税後も同じ技術(Ⅰ・ⅠⅠ)が 採用されるならば,賃金の下落と地代の減少が生じる。技術(Ⅰ・ⅠⅠ)を ひきつづき採用すると地代が負になってしまうようであれば,技術(ⅠⅠ) への転換がおこり,地代はゼロ以下とはならないが,賃金は一層大きく 下落する。課税後も課税前と同じ技術(ⅠⅠ)が採用されるとき,地代はゼ ロのままで,税は賃金によって負担される。

次に,地租の検討にうつろう。地租が導入されても,モデルⅠⅠによる 分析でみたように,技術(Ⅰ・ⅠⅠ)の軌2‑γ関係は変らず,ただ一定の利 潤率に対応する地代が,課税前の地代から地租をさし引いたものに等し くなる。技術(Ⅰ)と技術(ⅠⅠ)の抑一γ関係は,地租によって影響をこう むり,一定の利潤率のもとでの賃金は下落するが,賃金の下落は技術(Ⅰ) における方が技術(ⅠⅠ)におけるよりも大きいし,その下落の度合は利潤 率の水準によっても異なる(30)。

賃金が外生的に与えられているときにほ,課税前は維持されえた賃金

が課税の結果もほや維持されえなくなる場合が,ここでも生じる。体系

(36)

全体は賃金を維持することができ,もし技術(Ⅰ・ⅠⅠ)が課税後も採用さ れるのであれば,利潤率は変化せず,地代が税額だけ減少する。また,

もし技術(ⅠⅠ)がひきつづいて採用されるとすると,利潤率が減少し,利 潤が税を負担する。

利潤率が所与のとき,技術(Ⅰ・ⅠⅠ)のもとでほ,賃金ほ変らず,地代 が減少する。その場合,地代が負になるようであれば,技術(ⅠⅠ)への転 換が生じ,地代はゼロとなり,賃金もまた下落する。技術(ⅠⅠ)が採用さ れつづける利潤率では,賃金が下落して,税は全面的に賃金によって負 担される。

いずれにしても,モデルⅠⅠⅠによる地租の分析結果は,モデルⅠⅠによる 分析と異なるものでほない。

賃金税と利潤税

賃金税の導入が各技術の抑‑γ関係やβ‑γ関係に与える影響につい ては,モデルⅠⅠによる分析のところで述べたことが,そのままあてほまる。

賃金がある水準に与えられているとき,賃金税の導入によって,その ような賃金を体系全体が維持できなくなる場合が生ずることは,モデル

ⅠⅠでの分析やこれまでの租税と同じである。体系は賃金を維持すること ができ,課税後も技術(ⅠⅠ)が採用されるとすれば,利潤率が低下し,利 潤が税を負担することになるが,課税後も採用される技術が技術(Ⅰ・ⅠⅠ)

であるときには,課税によって利潤率はかえって上昇し,地代が減少す る。後者でほ,地代ほ税を負担する以上に減少する。これほ,変則的な ぴ12‑γ関係を想定したモデルⅡⅠに特有の現象である。

もし利潤率が所与であれば,賃金税は地代に影響を与えることなく, すべて賃金によって負担される。

最後に利潤税であるが,利潤税が導入されたときも,課税後の紺‑γ 関係やp‑γ関係ほ,モデルⅠⅠでの分析と同じように考えてよい。

(36)

(37)

賃金が所与であるならば,いかなる技術のもとでも利潤率が低下し, 課税前に地代が生じていたとしても,地代の大きさには変化がない。利 潤税は,もっぱら利潤によって負担される。

逆に,外生的に与えられているのが利潤率であるとしてみよう。技術 (ⅠⅠ)が採用され,課税前に地代が生じていなかったとするなら,利潤税は 賃金の下落をもたらす0課税前に地代が生じていたならば,技術(Ⅰ・ⅠⅠ)

の変則的な軌2‑γ関係のもとでは,利潤税によって地代は減少し,賃金 はかえって上昇する。ただ,このとき地代が負となるようであれば,技

術(ⅠⅠ)への転換がおこり,地代ほゼロ以下にはならない。課税後の賃金 は,課税前よりも大きい場合もあるし,小さい場合もある。利潤率が高

く設定され,利潤税額が大きく,地代がゼロになるだけでは税が十分負 担されず・賃金が大きく低下しなければならないときに,課税後の賃金 は課税前に比べて下落することになろう。

おわ り に

社会全体の生産物のうち,生産手段の補填に必要とされるものをこえ る剰余部分ほ,賃金,利潤,ときに地代として分配される。租税はこの 剰余部分から支払われるので,課税前に地代が生じていなかったとする

と,賃金あるいほ利潤のいずれかの負担となる。いずれの負担になるか ほ,賃金と利潤のうちどちらが外生的に所与とされているかに依存する。

ところで,課税前に地代が生じていると,租税によっては直接的に地代 に影響を与えるし(31)・租税は租税負担を含めた賃金と利潤の所得分配を 課税前の所得分配とほ異なるものにすることによって,間接的に地代に 影響を与えると同時に,それを通じてまた賃金と利潤の所得分配を変え る0さらに,たとえ課税前にほ地代が生じていなかったとしても,課税

の結果・地代が新たに生じるという場合もみられる。このように,地代

の存在は租税負担の帰着関係を複雑なものにするのである。本稿でほ,

(38)

いくつかの内包的地代モデルに則して,この関係が考察され,次のよう な興味深い結果が得られた。

原生産物税の場合,賃金を外生的に所与とすれば,税は課税前に地代 が生じていないとまず利潤によって負担されるが,利潤率の低下の程度 は穀物生産工程によって違い,穀物1単位あたり土地をより多く使用す るのでそれのみでは穀物需要を満しえない工程の利潤率の方が,土地を 節約的に使用するのですべての土地を耕作しなくても穀物需要をまかな える工程の利潤率よりも大きくなるとき,土地が稀少となり地代が発生

して,双方の工程の利潤率はなお一層低下するという事態が生じる。ま た,ときには,課税前に地代が生じていたので,課税の結果,地代が減 少し利潤率の低下は小幅にとどまるという場合や,地代の減少が大きく かえって利潤率が上昇するといった場合もおこりうる。ただ,地租はた だちに地代の負担となり,地代が負担しきれないときにのみ,賃金や利 潤に影響を与える。

賃金税ほ,それが税こみ賃金を高めるとき,地代にも影響を及ぼし, 地代が減少すれば利潤率の低下は小さいか,または地代が大きく減少す

れば利潤率はかえって上昇することもあり,地代が増大すれば利潤率の

低下は税負担以上のものとなる。利潤税が税こみ利潤率を高めるときも, 同様に考えることができる。こうして,租税は地租をのぞき,賃金と利

潤の税こみの所得分配を変えることにより,地代に影響を与え,それが また賃金や利潤に影響を与えるということができる。

このようにみてくると,土地が均質で内包的地代のみ生じる場合でも, 租税の負担帰着に関するリカードの所説は修正されねばならない場合の あることが明らかとなる。では,リカードの誤りはどこにあったのであ

ろうか。それは,リカードにおいてほ賃金と利潤の分配関係と地代の決

定とが遮断されていたところにある。このような地代の取り扱い方は,

とくに内包的地代の場合,満足のいくものではない。というのは,内包

(39)

的地代は賃金と利潤の所得分配と同時に決定されるからである。本稿で は,スラッファの地代論にもとづいて,そのことを明らかにしておいた。

(1)リカード[6]Chap.12,pp.181‑183(邦訳,209‑211頁)参照。

(2)シヤウプ[7]Chap.7参照。

(3)スラッファの地代論は,スラッファ[8]Chap.11において簡潔に述べられて

いる。

(4)その生産方法は,土地を集約的(intensively)に使用すると表現されることが 多いが,土地を節約的に使用するといった方がより適切であろう。

(5)スラッフア[8]Chap.11,p.76(邦訳,127頁)。

(6)限界理論に対する批判へのスラッファの貢献については,クルツ[3]が要 領よくまとめている。

(7)たとえば,課税後のⅩ‑1における穀物1単位あたりの穀物地代をみてみよ う。それほ,次式で与えられる。

Ⅹ‑1における課税後の穀物地代

̲(.1・rtlい(̀トTトIt) cヱ+m主

仮定により,d主/c主=尤最だから,上式は, =亜±塙

Ⅹ‑1における課税後の穀物地代 cヱーCi

d

となる。これは,課税前のⅩ‑1における穀物1単位あたりの穀物地代にほかな らない。同様のことが,Y‑1についてもいえる。

(8)本稿における議論は,スラッファ[8]Cbap.11で示された内包的地代論を基 礎にしている。しかし,スラッファ自身の説明は,要点のみを明らかにしてい

るにすぎない。以下述べる内包的地代の説明については,後述のモデルⅠⅠとモ デルⅡⅠの説明もふくめて,モンクーニ[5],クルツ[2],クルツ[3],アブ

ラハムーフロア・ベビル[1]Chap.3,マイソウェアリング[4]Chap.12を

参考にした。とくにモンクーニ[5]には,多くを負っている。

(40)

(9)直線Ⅰと直線ⅠⅠは,

p=古♪2一方cl β=古♪2一弄c2

を図示したものである。

(10)直線Ⅰと直線ⅠⅠの交点(〆,〆)は,

p*=羞妄

〆= c2ノ11‑Clノ12 dl一山2 で与えられる。

(11)γの変化によって,C力がどのように変化するかについては,本文において後 述されるは)と図2をみられたい。本文(錮こおけるcムは,賃金税を含む単位費用 をあらわしているが,それがγのみの関数であることから,賃金税導入以前の 単位費用を示すものとしても解釈できる。

(12)原生産物税やその他の租税についてのリカードの所説に関しては,その要約 を拙稿[9]で示しておいた。

(13)図2では(9)の条件が仮定され,二つの工程の単位費用を等しくするような利 潤率が存在すると想定されている。

(14)c2が小さくなりclが大きくなると,♪2が低下することは,♪2の決定式より明 らかである。また,穀物地代がγの変化とともにどのように変化するかは,次 式で示される。

小人=しl‑

■lご)仙バミご/ご′パ」

dγ ‖AIc2一山2cl)2

これより,α‡2/Jぎ>α王2/J〜のとき,上式は正となって,γの低下とともに穀物 地代も下落することがわかる。

(15)本文(14)の分母をッとおくと,

忠 一…・!J)‡・1エバ」二 (1・,)2 叫)

を得る。これより,α圭2夙1>α子2夙2のとき,血ノ12/dγ>0というケースが考えら れるが,このケースは本文で述べた理由により棄却されねはならない。

(16)本文(咽の分母をγとおくと,

参照

関連したドキュメント

90年代に入ってから,クラブをめぐって新たな動きがみられるようになっている。それは,従来の

上げ 5 が、他のものと大きく異なっていた。前 時代的ともいえる、国際ゴシック様式に戻るか

式目おいて「清十即ついぜん」は伝統的な流れの中にあり、その ㈲

このように、このWの姿を捉えることを通して、「子どもが生き、自ら願いを形成し実現しよう

ヒュームがこのような表現をとるのは当然の ことながら、「人間は理性によって感情を支配

Q7 

以上の基準を仮に想定し得るが︑おそらくこの基準によっても︑小売市場事件は合憲と考えることができよう︒

遮音壁の色については工夫する余地 があると思うが、一般的な工業製品