26 奥 羽 大 歯 学 誌 2011
ト ピ ッ ク ス
乳児期 の栄養 と成長
奥羽大学歯学部成長発育歯学講座小児歯科学分野 島村 和宏
平 成22年 の 夏 は ど こ もか しこ も"酷 暑"で あ っ た 。 小 児 や 高 齢 者 に は と りわ け厳 しい 夏 とな り, 脱 水 に よ る犠 牲 者 も で た。 そ の 後,今 度 は 冬 の 寒
さ に震 え,多 くの 地 域 で 雪 の 被 害 が で た 。 さ あ も うす ぐ暖 か く な る か ら,と 安 心 は して い られ な い。
花 粉 症 で あ る。
ス ギ に代 表 され る花 粉 の 飛 散 量 は,前 年 度 の 天 候 に影 響 され る。 昨 年 気 温 が 高 か っ た こ とか ら, 今 年 は過 去 最 高 か と の 予 測 も あ る。 大 人 もつ らい が,子 ど も もつ らい 。 以 前 は大 人 の 病 気 と され て い た が,近 年 は ス ギ花 粉 症 の患 者 が低 年 齢 化 し, 小 学 校 入 学 前 の 発 症 も珍 し く な い 。 小 児 は 精 神 ・ 言 語 を含 め て 発 達 途 上 で,疾 病 に関 して も 自覚 症 状 を適 切 に伝 え られ ず,症 状 把 握 が 困難 な 場 合 が 多 い 。 保 護 者 が,如 何 に 気 付 くか が 重 要 で あ る。
症 状 は,一 般 的 な く し ゃみ や 鼻 汁 ば か りで な く, 皮 膚 の 赤 み や か ゆみ,鼻 出 血 な ど も あ る 。 目や 鼻 を よ く こす る,鼻 を す す る,鼻 出 血,口 呼 吸 な ど が あ っ た ら花 粉 症 の 始 ま りか も知 れ な い 。 花 粉 症 ば か りが原 因 で は な い が,問 診 で 口呼 吸 が 把 握 で き た 際 は,耳 鼻 科 へ の 対 診 も考 慮 す る 必 要 が あ る 。 花 粉 症 の よ うに,か つ て"大 人 の病 気"で あ っ
た ア レル ギ ー は,成 人 期 の 肥 満 と と もに 母 胎 や 乳 幼 児 期 の栄 養 面 と 関連 して い る とい う指 摘 が あ る 。 生 後4か 月 まで に,4種 類 以 上 の 固 形 物 を摂 取 し た 群 で は,固 形 物 を摂 取 しな か っ た群 に 比 べ,2 歳,10歳 ま で の 慢 性 湿 疹 の 既 往 が 高 か っ た と い
う報 告 が あ る。 ア レル ギ ー に つ い て は 多 くの 要 因 が 関 係 し,栄 養 摂 取 の 内 容 ・時 期 に 関 して も相 反 す る報 告 が あ る。 過 度 な対 応 は正 常 な成 長 を妨 げ る恐 れ が あ り注 意 が 必 要 だ が,疾 病 の 要 因 と い う 点 も含 め,小 児 の栄 養 と成 長 との 関係 が あ らた め て 注 目 され て い る。
ま た胎 児 期 の栄 養 に関 連 して,小 さ く産 ん で 大 き く育 て る と い っ た 考 え か ら か,1970年 の 調 査 で は 出 生 時 平 均 体 重 は 男 児3200g,女 児3100gで あ っ た が,2001年 で は 男 児3000g,女 児2900gと
な っ た。 確 か に妊 娠 中 の 著 しい 体 重 増 加 は母 胎 に も胎 児 に と って も好 ま し くな い 。 しか し過 度 な 食 事 制 限 を す る と,当 然 胎 児 へ の 栄 養 供 給 は減 少 し, 胎 児 は小 さ く な る。 それ 以 上 に,飢 餓 状 態 に 近 く な る こ とが あ る。 胎 児 期 に 抑 え られ た 分 を 出産 後 に 取 り戻 そ う と して,栄 養 をた め込 む よ うに な る。
そ の た め,脂 肪 細 胞 数 も急 激 に増 え,幼 児 期 に も その 生 活 が 続 く こ とで,将 来 的 な肥 満 や 血 圧 異 常 につ な が るの で あ る。 近 年,低 出生 体 重 児 の 割 合 が,出 生 児 の 約10%に 達 して お り,成 長 期 の 疾 病 を 心 配 す る声 も挙 が っ て い る。
一 方 離 乳 時 期 に つ い て の 平 成17年 の 調 査 結 果 で は,4か 月 頃 に 離 乳 を 開 始 し,12か 月 で 終 了 す る人 の 割 合 が10年 前 に比 べ て 少 な くな っ た と 報 告 され て い る。 幼 児 期 の 食 事 に 関 す る保 護 者 の 困 りご と(噛 ま な い な ど〉 につ い て,そ の誘 因 に 離 乳 の 急 ぎす ぎが 指 摘 され て お り,望 ま しい 時 期 (5〜6か 月 頃 開 始,13〜18か 月 で 終 了)の 情 報 が提 供 され て き た影 響 か も知 れ な い 。
食 事 内 容 や 与 え方 な ど,小 児 の栄 養,特 に 離 乳 期 の対 応 は 古 くて 新 しい 問 題 で あ り,保 護 者 に も 悩 み が あ る。 液 状 食 や 軟 食 に よ る顎 顔 面 ・口 腔 へ の 影 響 も報 告 され て い る が,離 乳 時 期 や そ の 食 性 に よ る 口 腔 へ の 影 響 につ い て は,ま だ ま だ 不 明 な 点 も多 く,重 要 な研 究 課 題 で あ る。
文 献
毎 日 新 聞:増 え る 子 ど も の 花 粉 症.1月21日15 面 2011.
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/03/
30314‑17.html厚 生 労 働 省:「 授 乳 ・離 乳 の 支 援 ガ イ ド」 の 策 定 に つ い て.審 議 会 議 事 録(2011 年1月25日 現 在)
菊 池 進 他:3章 小 児 の 特 性.最 新 小 児 歯 科 学 (稗 田 豊 治 他 編)第2版;11 医 歯 薬 出 版 東 京 1981.
高 木 裕 三 他:3章 全 身 の 発 達.小 児 歯 科 学(赤 坂 守 人 他 編)第3版;14‑19 医 歯 薬 出 版 東 京 2007.
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