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3、「よりよい人間関係」の意味と「人間関係形成力」と「集団作り」の関係性

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Academic year: 2021

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中学校におけるよりよい人間関係づくりのためのプログラムの開発と実践

高度学校教育実践専攻 実習責任教員 阿形 恒秀 教職実践力高度化コース 実習指導教員 小坂 浩嗣 柿内 英紀

キーワード:人間関係形成力、自己他者理解力、コミュニケーション能力、ルール、リレーション

Ⅰ 課題とテーマの意味 1、今日的課題

今日、少子化、核家族化、情報化等が急激 に進み、生徒を取り巻く環境は大きく変化し ている。そのような中で、家庭や地域社会に おいて、人の関わり方を身に付ける機会や直 接の体験を通して学ぶ生活体験、自然体験の 機会が減少している。このことは、集団の中 で人間関係をうまく築くことができない生徒 を生み、いじめや不登校等さまざまな問題を 引き起こす一因となっていると言われている。

さらに、集団内の人間関係の希薄さや未熟さ による自己肯定感やコミュニケーション能力 の低下が指摘されている。

平成 20 年に改訂された中学校の学習指導 要領では、特別活動編の目標に「人間関係」

が加えられた。目標に「人間関係」が加えら れたのは、生徒が自分に自信を持てず、その ため好ましい人間関係が築けず、更に、社会 性の育成が不十分である状況を踏まえ、望ま しい集団生活を通して、生徒がよりよい人間 関係を築くことを目指したからである。また、

第4章「指導計画の作成と内容の取扱い」の 第2節の1「学級活動、生徒会活動の取扱い」

には、学級活動において「人間関係を形成す る力を養う活動などを充実するよう工夫する こと」と示されている。

そうした中で、生徒が一日の大半を過ごす

学校、学年、学級は、生徒の自己肯定感を高 め、集団の中で社会性を育成し人間関係の築 き方を学ばせる場として、その果たす役割が ますます重要になってきている。

2、実習校の課題と目的

実習校は県西部に位置する全校生徒 324名

(1年生4学級・2年生3学級・3年生4学 級・特別支援学級2学級)の中規模校である。

実習校の課題として、学校は落ち着いてき てはいるものの不登校問題(別室登校6名、

ふれあい学級に通級2名、完全不登校9名)

がある。不登校生徒の実態の一つとして「人 間関係づくりが苦手」が挙げられる。したが って不登校を生まない未然防止を講じる上で も、「集団作りを通した人間関係形成力の育成」

が必要であると考えた。

また、教職員への聞き取りから、学級づく りを進める上で困難に感じていることは、「生 徒同士の人間関係が築けない」「秩序やルール が守れない」などが挙げられた。

さらに、生徒間の人間関係づくりを進める 上で困難に感じていることは「他者とうまく 関われずに感情的になる生徒」への対応であ ることが分かった。そこで、よりよい人間関 係づくりを促進するプログラムを作成し、計 画的に人間関係づくりを進めていく必要を感 じ、本実践研究に取り組むことにした。

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3、「よりよい人間関係」の意味と「人間関係 形成力」と「集団作り」の関係性

文部科学省(2008)「中学校学習指導要領解 説特別活動編」においては、望ましい人間関 係について、「豊かで充実した学級生活づくり のために、生徒一人一人が自他の個性を尊重 するとともに、集団の一員としてそれぞれが 役割を果たし、互いに尊重しよさを認め発揮 し合えるような開かれた人間関係である」と 示されている。そこで本実践研究では、「より よい人間関係」について、「自他のよさを理解 し、様々な人とコミュニケーションを図り、

互いに協力し認め合える関係」であると考え た。そうしたよりよい人間関係を築くために は、他者との関わりの基盤となる自己他者理 解力と、他者と円滑な人間関係を築くための コミュニケーション能力の二つの力が必要だ と考え、これらを合わせて、「人間関係形成力」

と位置付けた。

次に、人間関係形成力と集団づくりの関連 性について述べる。生徒の人間関係形成力は 他者とのかかわりの中で育成されていくと考 える。そのため、生徒が所属する学級集団が どのような状況であるかということは、とて も重要な要因になる。所属する学級集団にお いて、学習規律やルールが守られ、生徒それ ぞれの人格が尊重される中で生徒同士が互い に関わり合い、さらに互いをより高め合って いくことで、人間関係形成力が高まると考え る。

河村茂雄(2007)は、「よりよい学級集団 にするためには、ルールとリレーションの二 つの要素が学級内に同時に確立していること である。」と述べている。また、ルールにつ いて、「生徒同士の対人関係を建設的に促進

し、互いが傷つくことなく、より対人関係を 広め深めることができるための行動の仕方の システムである。」と述べている。

また、岡田弘(2014)は、リレーションを

「あたたかな人間関係」とし、「自他を理解 し、認める関係ができればそれは肯定にな る。肯定的に認め合う関係が、あたたかな人 間関係づくりになる。」と述べている。

これらのことから、本実践研究において、

生徒の人間関係形成力を構成する自己他者理 解力とコミュニケーション能力を育成するこ とは、よりよい学級集団のリレーションとル ールの形成につながり、さらに、学級集団の ルールとリレーションの形成を目指す指導 は、自己他者理解力とコミュニケーション能 力の育成につながると考えた。

Ⅱ 実践の計画と取組

学級集団づくりの年間配置時期について、

教職員への聞き取りを行ったところ、4月が 出会い学級づくりの時期、5~7月が学校生 活に慣れてくる時期、9~12月が、学級の 仲を深める時期、1~3月が学級づくりの仕 上げの時期、と考えていることが明らかにな った。そこで、それらを「出会い」、「気付 き」、「協力」、「認め合い」の四つの時期とし て設定した。

次に、よりよい人間関係づくりを進めるこ とを目的として、朝の会・帰りの会での取 組、宿泊研修での取組、グループエンカウン ターの取組を立案し、実践を行った。

具体的には、朝の会で「1分間スピーチ」

帰りの会で「今日のMVP」を取り入れた。

育てるスキルを「話す」「聞く」「自己理解」

「他者理解」とし、朝の会では、互いを

認め

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合うこと、帰りの会では友だちを肯定的に捉 えることを活動のねらいとした。さらに、こ れらを取り入れることで人間関係形成力(自 他の良さを理解し、自己の個性を発揮しなが ら、様々な人とコミュニケーションを図り、

協力し認め合って生活していく能力)を身に 付けさせ、よりよい学級集団を作ることがで きると考え、実践を行った。

宿泊研修の取組は4月に行った。アクティ ビティとして「スゴロクトーキング」「☆い くつ」「仲間づくりハッピーレシピ」を取り 入れた。この取組で育てるスキルを、「話 す」「聞く」「自己理解」「他者理解」とし、

活動のねらいを、「様々な体験を通して人間 関係形成力を身に付けさせること」とし実践 を行った。

グループエンカウンターの取組において は、5月に、アクティビティ「背中合わせと 向かい合わせ」を実施した。ここでは、育て るスキルを「話す」「聞く」とし、活動のね らいを、「話す聞くときの位置関係が情報の 伝達にどのように影響するかを体験的に学ぶ こと」とした。

6月には、アクティビティ「オダーニ君を 探せ」を実施した。ここでは、育てるスキル を「自己理解」「他者理解」とし、活動のね らいを、「話し合いの中で、必要な情報を提 供し、積極的に課題解決に向けて貢献できる 力を付けること」とした。

7月には、アクティビティ「NASAゲー ム」を実施した。ここでは、育てるスキルを

「自己理解」「他者理解」とし、活動のねら いを、「他者との相違を確認しながら、合意 による集団決定の過程を体験的に学ぶこと」

とした。

どの取組においても、教員が生徒の実態を 共通理解し、それに基づいた取組になるよう に、学年全体で話し合いを行った。

Ⅲ 実践の総括 1、 成果

本実践研究は、「生徒の人間関係形成力を 構成する自己他者理解力とコミュニケーショ ン能力の育成」及び、「学級集団のルールと リレーションの形成を目指す集団作り」を目 的とし、よりよい人間関係づくりを進める取 組を計画し、実践してきた。

朝の会の取組では、共感的な感想が出され たり、自然と拍手が出たりするなど学級が温 かい雰囲気になった。また、生徒アンケート からも肯定的に捉える意見が多く出され、自 己を認め、さらに他者を肯定的に捉える生徒 が増加した。これらから、日常的に互いを認 め合う場を設定することは、人間関係形成力 の一つの力である自己他者理解力を高めるこ とに一定程度有効であったと推察される。

宿泊研修の取組では、仲間づくりハッピー レシピを進めていくうちに生徒の笑顔が増え、

意欲的に活動する場面が多く見られた。また、

シェアリングの中で「最初はドキドキしたけ ど安心して取り組めた。」「周りの優しさを感 じることが出来た。」「A君の手助けが嬉しか った。」「成功した時に何とも言えない良い気 持ちになった。」など肯定的な意見が多く出さ れた。これらから、意図的に様々な人とコミ ュニケーションを図り、互いに協力し合う場 を設定することは、人間関係形成力の一つの 力であるコミュニケーション能力を高めるこ とに一定程度有効であったと考える。

グループエンカウンターの取組では、授業

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後に行った生徒へのグループエンカウンター の自己評価から分析すると、授業を重ねるご とに各項目の評価が上がっている。これらか ら、学級の実態に応じて、計画的に人間関係 づくりの授業を実践したことで、人間関係形 成力が高まったと考えられる。

また、人間関係形成力が高まった生徒は周 囲との関わり方を変容させていき、よりよい 人間関係を築くことの大切さに気付くことも できた。

2、 課題と今後の展望

実践で明らかになった「よりよい人間関係 づくりのプログラム」の課題と、今後の方向 性について3点述べる。

ア 配慮を要する生徒への支援の工夫 配慮を要する生徒に対する、人間関係形成 力を高めるための個別の支援を検証する必要 がある。そのためには、配慮を要する生徒の 実態を把握し、他者と関わることへの不安感 やつまずきをなくすために、グルーピングや 声かけ等を工夫して働きかけていくことが重 要である。

イ 新しい指標の必要性

「日常生活の様子」「学級担任への聞き取り」

「Q-U アンケートの結果」から生徒の自己他 者理解力とコミュニケーション能力を把握し たが、個々の生徒理解が十分ではなく個を大 切にした取組には至らなかった。きめ細かな 生徒理解を深めるために、人間関係形成力の 各スキルを測ることができる新しい指標等も 検討したい。

ウ プログラムの有効性

学校の実態に合わせてプログラムを活用す ることは、生徒の人間関係形成力を高めるこ とに一定の効果は認められたが、系統的な高 まりと年間を通じた高まりには至らなかった。

そのため、系統的な実践、年間を通した実践 を行いながら、生徒の変容を見取り、その有 用性を検証していく必要がある。

3、まとめ

阿形(2015)は、児童期・青年期の仲間関 係について、依存と自立のサイクルという考 え方に基づき、「児童期・青年期における安心 基地の中心基地は、親でも安心毛布でも宗教 的イメージでもなく、同世代の友人との人間 関係であるだろう。」と述べている。複雑な人 間関係、多様な個性が渦巻く学級で、「級友へ の肯定的な安心を得ることができる」「学級の 中で自分の居場所を感じることができる」人 間関係づくりの実効化をこれからも考えてい きたい。また、今後さらに、人間関係形成力 を高めるために、日常の全教育活動で、より よい人間関係づくりを意識した実践を積み重 ねていきたい。

項 目 5月 6月 7月

1、楽しかった 3.65 3.65 3.92

2、自分のためになった 3.42 3.66 3.89

3、自分のよいところを

見つけることができた 3.42 3.56 3.77 4、友だちのよいところを

見つけることができた 2.82 3.63 3.73 5、自分の考えを

伝えることができた 2.91 3.68 3.78 6、友だちの考えを

聞くことができた 3.42 3.80 3.90

参照

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