大学生のストレス自己評価尺度 : 質問紙構成と質 問紙短縮について
著者 尾関 友佳子
雑誌名 久留米大学大学院紀要 : 比較文化研究
巻 1
ページ 9‑32
発行年 1990‑08‑01
URL http://hdl.handle.net/11316/327
チ ミ 考 会 主 主 の ス ト レ ス 自 己 品 言 平 イ i I f i . F ミ
B芝
1質 問 祇 構 成 と 質 問 紙 短 縮 に つ い て
声喜三巴司 友 佳 子
厚 生 省 が
1988年 に 行 な っ た 心 身 の 健 康 " に 関 す る 実 態 調 査 ( 昭 和
63年 保 健 福 祉 動 向 調 査の概況)によれば, i ふ だ ん イ ラ イ ラ し た り ス ト レ ス を 感 じ て い る 」 と 答 え た ひ と は 全 体 の 半 数 以 上 に も 達 し て い る , ス ト レ ス に つ い て の 問 題 ほ , 今 ま で は 個 人 レ ベ ル の 問 題 と
考えられてきたが, この調査結果からも明らかなように,集団,社会レベルの問題:こ及ん
でいると言えよう.心理学の領域において,
Lazarus (1966)は ス ト レ ス を 情 動 の ネ ガ テ ィ ブ な 側 面 , つ ま り フ ラ ス ト レ ー シ ョ ン , 不 安 , コ ン フ リ ク ト な ど , 心 理 学 で 従 来 用 い ら れ て き た 言 葉 を ま と め た 包 括 的 な 概 念 と し て 用 い た . さ ら に , 彼 は 自 ら の 理 論 を 寝 開 さ せ , ス ト レ ス を 過 程 と し て 捉 え て い る
(Lazarus.1966;Lazarus&
Folkman. 1984 ).図
lに示 されているように, ス ト レ ス の 過 程 は 入 力 系 と し て 刺 滋 特 性 ( ス ト レ
yサー) , 媒 介 過 程 と し て 認 知 的 評 価 と 対 処 法 ( コ ー ピ ン グ ) の 選 択 , そ し て 出 力 系 と し て ス ト レ ス 反 応 の
3つ の 部 分 に 分 け ら れ る .
刺 激 特 性
〈ストレッサー〉
認 知 的 評価
対 処 法
(コーピング)
→ lス ト レ ス 反 応
i図
1心理的ストレスの過程(本明,
1988を一部改変)
1
本 研 究 は , 九 州 心 理 学 会 第
50回大会
(1989), 日本心理学会第
54回 大 会 ( 1
990)に
お い て 発 表 し た も の の 一 部 で あ る . ま た , 本 研 究 の 一 部 は , 石 橋 財 団 研 究 助 成
(1989)に よ り 行 な わ れ た も の で あ る .
心 理 的 ス ト レ ス の 過 程 を 解 説 し た 本 明
(1988)によれば,ストレッサー
(stressor)と は , 物 理 化 学 的 刺 激 の み な ら ず , 配 偶 者 と の 死 別 や 離 婚 な ど 心 理 的 ・ 社 会 的 諸 問 題 を 含 む 様々な外的環境の出来事(イベント)である.このような出来事は心理生理的変化として,
ストレス反応を誘発する
(e.g.. Holmes & Rahe.1967). と こ ろ で , ひ と は ス ト レ ッ サ ー に 出会ったとき,自らの安寧にとって, この刺激がどのような意味をもつのか認知的に評価 を す る . す な わ ち , あ る 出 来 事 を 自 分 と は 無 関 係 と 見 る か , 有 益 で 肯 定 的 な も の だ と み る か , あ る い は 自 分 の 持 つ 資 源 で は 負 い き れ な い ほ ど の 負 担 と 感 じ る も の ( ス ト レ ス フ ル と 呼ばれる)とみるかという判断を行なう.ストレスフルであるとする判断はまた,危害/喪 失,脅威あるいは挑戦といった評価を含んでいる.とくに危害/喪失の評価や膏威の評価は 怒 り , 恐 怖 , 恨 み な ど の 否 定 的 な 感 情 に よ っ て 特 徴 づ け ら れ る と 言 わ れ て い る .
コーピング
(coping)とは,結果(成功や失敗)に関係なく, ス ト レ ス フ ル な 圧 力 〈 要 求 〉 を 処 理 す る 努 力 の こ と で あ る . つ ま り , ス ト レ ス フ ル と 評 価 さ れ た 外 的 , 内 的 な 圧 力
〈要求)を処理したり,減じたり,あるいはそれに耐えたりするような認知的・行動的な 努 力 で あ り , 問 題 志 向 的 な コ ー ピ ン グ 形 式 と 情 動 志 向 的 な コ ー ピ ン グ 形 式 の 2 つに大別さ れている.
ストレス反応
(stress response)とは,短期的結果として捉えれば, ストレッサーによ っ て 個 人 に 生 じ た 心 理 的 な 反 応 な ら び に 生 理 的 な 反 応 で あ る . 一 方 , 長 期 的 な 結 果 と し て 捉 え れ ば , 適 応 ー 不 適 応 連 続 体 あ る い は 健 康 一 病 気 の 連 続 体 の い ず れ か に 位 置 づ け ら れ る
ような,ストレッサーに対して行なう心身の変化(状態〉である.
ス ト レ ス 研 究 は 従 来 よ り 様 々 な 領 域 で 試 み ら れ て き た が , そ の 最 大 の 研 究 自 慢 の 1 つは ス ト レ ス 過 程 の 解 明 で あ ろ う . す な わ ち , 新 名 ・ 坂 田 ・ 矢 冨 ・ 本 間 ( 1
990)も述べている ように,どのようなストレッサーがどのような過程(認知的評価, コーピングの選択〉を た ど っ て , ど の よ う な ス ト レ ス 反 応 を 個 人 に 引 き 起 こ す の か を 明 ら か に す る こ と で あ る . そ の た め に は , こ れ ら の ス ト レ ス の メ カ ニ ズ ム を 信 頼 で き る 測 定 用 具 で , 客 観 的 に 評 価 す ることが重要となる.
そ こ で , 大 学 生 が 日 常 生 活 に お い て し ば し ば 体 験 す る 出 来 事 〈 イ ベ ン ト 〉 を 評 価 す る た めのストレッサーに関する質問紙(久田・丹羽.
1987), ス ト レ ス フ ル な 事 態 で 試 み る コ ーピングを測定する質問紙(坂田,
1989), そ し て ス ト レ ス 反 応 を 測 定 す る た め の 質 問 紙 (新名ら,
1990)の
3種 類 を 用 意 し て , ス ト レ ス の メ カ ニ ズ ム を 解 明 す る こ と を 試 み た ( 尾関・原口・津田・佐藤・船津,
1989;尾関・原口・津田,
1990). こ れ ら の 質 問 紙 は い ず れ も 一 般 健 常 者 の ス ト レ ス を 測 定 す る た め に 開 発 さ れ た も の を テ ス ト ・ バ ッ テ リ ー と し て組み合わせて利用したが, 3つの質問祇の質問項目は合計 220と な り , 項 目 の 多 さ が 回 答 者 に 対 し て 時 間 的 経 済 的 な 面 か ら の み な ら ず , 心 的 努 力 の 持 続 と い う 面 か ら も 大 き な 負 担
を 課 す こ と と な っ た . 測 定 に お け る 簡 便 性 や デ ー タ の 信 頼 性 , 回 答 者 か ら の 協 力 の 得 や す
さなどを考虐したとき,項目の多いこの質問紙の施行は実際的には大きな問題と思われる.
本 研 究 の 目 的 は , 各 質 問 紙 が 有 し て い る ス ト レ ッ サ ー や コ ー ピ ン グ な ど の 概 念 や 測 定 目 的 な ど を 損 ね な い 範 囲 で , 原 版 の 項 目 短 縮 を 行 な い , 簡 便 か っ 信 頼 性 , 妥 当 性 の 高 い ス ト
レ ス 質 問 紙 を 作 成 す る こ と で あ る . 本 論 文 で は , 前 回 の
2回の調査(尾関ら.
1989,
1990)で 得 ら れ た デ ー タ の 基 礎 統 計 量 を 紹 介 し な が ら , こ れ ら 短 縮 版 の 作 成 過 程 に つ い て 報 告 す る . な お , 本 論 文 の 最 後 に 短 縮 さ れ た 質 問 紙 を 記 載 し て い る .
方 法
対 象 と 調 査 時 期
調 査 対 象 者 は 福 岡 県 内 の
4年 制 大 学 の 文 系 学 生
668名 で あ っ た . 調 査 は 講 義 時 間 を 利 用 し て ,
1989年
7月 上 旬 実 施 し た . 回 答 者 は 学 年 や 性 別 な ど を 記 入 す る フ ェ イ ス シ ー ト と 各 質 問 祇 か ら な る 小 冊 子 を 与 え ら れ , 教 示 の 後 , 各 自 の ベ ー ス で 記 入 を 求 め ら れ た .
質 問 祇 構 成
( 1
) ス ト レ ッ サ ー の 測 定
日 本 の 多 く の 大 学 生 が , 日 常 生 活 に お い て 経 験 す る 出 来 事 を 測 定 す る も の で あ り , 大 学 生 用 生 活 体 験 尺 度
(CollegeLife Experiences Scale : C L E S;久田・丹羽,
1987)の 項 目 を 一 部 修 正 し て 使 用 し た .
C L E Sの67項 目 の 中 に は 出 来 事 の 変 化 の 方 向 性 を 特 定 し た項目(例えば,
r生 活 上 の 仕 事 が 増 え た 」 な ど 〉 と 変 化 の 方 向 性 を 関 わ な い 項 目 ( 例 え ば ,
r通 学 時 間 が 変 わ っ た 」 な ど ) が 含 ま れ て い る . そ こ で , 変 化 の 方 向 を 問 わ な い 項 目 の うち
12項目を,
r通 学 時 間 が 増 え た 」 と 「 通 学 時 間 が 減 っ た 」 の よ う に 2 つに分けた. さ らに,
r事 故 や 病 気 で 病 院 に 行 っ た j の項目を追加し 計
80項目とした.
回 答 者 は 各 々 の 出 来 事 に つ い て , 過 去 半 年 間 に 体 験 し た か 否 か を 2 件法でチェックし,
体 験 し た 項 目 に つ い て は そ の と き ど う 感 じ た か " を 評 定 し た . 評 定 は ネ ガ テ ィ プ で も ポ ジ テ ィ プ で も な い 体 験
(0:どちらでもない〉を中心として, ネ ガ テ ィ ブ な も の ( ‑
3 :非 常 に つ ら か っ た ) か ら ポ ジ テ ィ プ な も の
(3:非常に楽しかった)までむ
7段 階 で 行 な
った.
( 2 ) ス ト レ ス 反 応 む 測 定
ひ と が ス ト レ ス フ ル な 状 況 下 に あ る と き の 多 様 な 心 理 的 ・ 身 体 的 ス ト レ ス 反 応 を 測 定 す
る 2 つ の 尺 度 を 使 用 し た . 心 理 的 ス ト レ ス 反 応 の 測 定 に は , 心 理 的 ス ト レ ス 反 応 尺 度 (
Psychological Stress Response Scale :P S R S;新名ら,
1990)を用いた.
P S R Sは,
情動的反応の
4つの下位尺度(抑うつ気分,不安,不機嫌,怒り〉からなる
26項目と認知
・行動的反応の
9つの下位尺度(自信喪失,不信,絶望,心配,思考力低下,非現実的顧 望,無気力,引きこもり,焦燥〉からなる
27項目の計
53項目から構成されている.身 f 本的
ストレス皮応、の浪
IJ定
lこは,身体的反応を測定する質問紙
CPhysical Response Scale :P R
s
;穂坂・矢富・新名・本間昼坂田.
1989)を用いた.
P R Sは,循環器系,消化器系,筋骨格系などの身体の自覚的症状について尋ねる
27項目からなっている.
憩坂ら
(1989)や新名ら(1
990)の質問抵では,これらの
80項目{こ対して,いずれも調 査時の
2‑3日間の状態に基づいて回答者に評定を求めている. しかし,今回の調査対象 者が大学生であり,心身ともに鑓寝的な者が多いことから,ここ数日間に限定するとスト
レス反応の回答率がID:くなることが予想された.そこで,最近
1ヶ月の心身の状態をよく あらわすように,
4段措
(0:あてはまらない.
1:ややあてはまる.
2:かなりあては まる,
3:非常にあてはまる〉で評定を求めた.
( 3
)コーピングの測定
ストレスを感じたとき,どのように考えたり行動したのかをiJt
Jr定するものであり,コー ピング尺度
(Stress Coping Scale : SCS;坂田
.1989)の
19の下位尺度(計画,情報収 集,再検討,努力,問題の価値の切上げ,注意の切り替え,問題の価{直の切下げ,思考田 避,あきらめ,開き直り,静観,待機,被支持,協力・援助の依頼,気晴らし,自己制御,
逃避,攻撃,正当化〉からなる
53項目と今日あらたに
2項目追加した
60項臣から携成され ている.追加した
2項目は「当然のこととして受けとめた」と「自分自身で問題を解決し ようと努力した」である.
回答者は, ストレスフルな状況にあったとき各項目のコーピングを行なったかどうかを
2件法でチェックし,行なった項目については,そのコーピングによってどの程賓ストレ スが援和されたと思うか,コーどングの効果の程置を
4段i普
(0:役に立たなかった.
1:やや役に立った.
2:かなり役に立った
3:非常に役;こ立った〉で評定した.
分析手続き
質問紙の短絡を以下のような手続きで試みた.①項目反応三容が
20%以下あるいは
80%以 上の項目を分析対象から除外する.②尺茂一項百間穏関係数〈項目得点と尺度得点、の椙関) の低い項目を削除する.尺度の講成項目が少ない場合は,尺定得点をそのまま用いずに,
尺度得点から当該項目の得点を引いた修正尺
OCf写点を用いる.③項目反tt.率の基準を満た
した項目について,因子分析やクラスター分析などを行なう.その結果をもとに因子負荷
量や尺度一項目間相関係数が低い項目を削除して尺度を再構成する.@尺震の内的整合性
を確認し,測定の正確さを推定するために信頼性係数
CCronbachの
α係数)を求める.
結 果 と 考 察
( 1 ) 分 析 対 象 者 の 属 性
表
1は 分 析 対 象 者 の 属 性 〈 学 年 , 性 別 , 学 年 別 の 比 率 ) を 示 し て い る . 対 象 者 の 約
70%が 大 学 に 入 学 し て ま も な い 1 年生である. し た が っ て , 今 回 分 析 対 象 と し た デ ー タ の 大 部 分 は , 大 学 生 と し て 新 し い 生 活 を 始 め た 彼 ら / 彼 女 ら の 状 況 を 反 映 し た も の と 言 え る .
表 1 分 析 対 象 者 の 内 訳
学年 男性 女性 比率(完)
1 303 150 69. 0
2 87 19 16. 1 3
年 以 上
86 12 14. 9目=657
( 2 ) ス ト レ ス 反 応 に 関 す る 質 問 祇 の 結 果 項 目 反 応 率
項 目 反 応 率 が
20%以 下 あ る い は
80%以 上 の 項 目 は な か っ た . そ こ で 全 項 目 を 以 下 の 分 析 対 象 と し て 用 い る こ と に し た .
基 礎 続 計 量
表 2に 各 下 位 尺 度 ご と の 平 均 値 と 標 準 偏 差 お よ び Cronbachの α係 数 を 示 す . 下 位 尺 度 の 平 均 値 と 標 準 偏 差 に 関 し て は } 新 名 ら ( 1
990)と ほ ぼ 同 様 の 結 果 が 得 ら れ た . さ ら に , 信 頼 性 に 関 し で も , 情 動 的 反 応 , 認 知 ・ 行 動 的 反 応 な ら び に 身 体 的 反 応 と も 新 名 ら と 同 じ く 高 い 信 頼 性 が 得 ら れ た . ス ト レ ス 反 応 の 項 目 反 応 数 の 平 均 は
37 .
0で 全
80項 目 の 約 半 数 で
あった.これに対して,平均評価得点、は
57.3で 最 高 得 点 値
240の約
1/4で あ っ た . こ の こ と
は,回答者のほとんどが,
0:あてはまらないか 1:ややあてはまるにチェックしてい
たことを意味しており,今回対象とした大学生のストレス反応は比較的弱いものであった ことを示している.
表 2 下位尺度の平均値と標準偏差および信頼性係数 (α)
下 位 尺 度 │吋│標吋 α
[情動的反応]
抑うつ気分
(0‑‑24 )
5. 77 5. 29 .887不安
(0‑‑24 )
5. 89 4. 42 . 813不機嫌
(0‑‑15) 4. 79 3. 34 .794怒り
(0‑‑15) 3. 53 3. 20 . 781[認知・行動的反応]
非現実的願望
(0‑‑9) 3. 78 2. 43 . 605心配
(0‑‑9) 3. 31 2. 36 . 717無気力
(0‑‑9) 2. 90 2. 25 . 738自信喪失
(0.......9) 2. 56 2. 24 . 732思考力低下
(0‑‑9) 2. 45 2.08 .711焦 燥
(0‑9) 2. 09 2.03 . 735不信
(0‑‑9)1 .
691 .
68 . 593引きこもり
(0‑‑9)1 .
65 2.02 . 665絶望
(0‑9)1 .
471 .
90 . 713[身体的反応]
(0‑‑78) 15. 46 12. 14 .904
( )の中の数字は各下位尺度の得点範囲を示している.
因 子 分 析
情動的反応
26項目について因子分析(主因子解法,斜交回転)を行なった結果, 2 因子 が抽出された(表
3). 2因子の累積寄与率は
80.7%であった.第
1因子には「悲しい
J,
「泣きたい気分だ」などの項目が含まれており,抑うつ因子と命名した.第 2 因子には「
憤まんがつのる
J,
iいらいらする」などの項目が含まれており,怒り因子と命名した.
新名ら
(1990)の報告では,情動的反応は抑うつ気分,不安,不機嫌,怒りといった
4つの 因 子 で 説 明 さ れ て い た が , 本 結 果 で は 2 つの因子で説明がつけられた. しかも新名らの カ テ ゴ リ ー で は , 怒 り 因 子 と 不 機 嫌 因 子 に 含 ま れ て い る 項 目 が 今 回 抽 出 し た 怒 り 因 子 に 混 在していた. ま た , 新 名 ら の カ テ ゴ リ ー で 不 安 因 子 に 含 ま れ て い た 項 目 群 は , 第 1 因子と 第
2因 子 に ま た が っ て 低 い 因 子 負 荷 を も っ て お り , 本 結 果 で は ま と ま り を も っ
lつ の 有 意 な因子としては抽出されなかった.
そ こ で , 抽 出 す る 因 子 数 を あ ら か じ め
4つ に 指 定 し て 因 子 分 析 を 行 な っ た と こ ろ , 表
4に示すように,抑うつ因子と怒り因子に加えて.
r恐 怖 惑 を い だ く 」 な ど の 項 目 を 含 む 因 子(不安因子と命名).
rがっかりする J と い っ た 項 目 を 含 む 因 子 〈 喪 失 因 子 と 命 名 ) が 有 意 に ま と ま り の あ る 因 子 と し て 抽 出 さ れ た ( 累 積 寄 与 率
88.9%). 喪 失 因 子 に 含 ま れ る 項目は 2 項 自 と 少 な か っ た の で 分 析 対 象 の 項 目 か ら 除 外 し た . 新 名 ら の 分 類 に よ る 怒 り と 不 機 嫌 の 項 目 群 は
1つの因子にまとまってしまったので,これを
1つ の 尺 度 に 統 合 し , 情 動的反応は抑うっと怒りと不安という
3つの下位尺度から構成されているものとした.
認 知 ・ 行 動 的 反 応 の
27項目について因子分析を行なった結果.
2因 子 が 抽 出 さ れ た ( 表
5 ). 2因 子 の 累 積 寄 与 率 は
78.3%であった.第
1因子には新名らのカテゴリーの焦燥,
思 考 力 低 下 , 心 配 , 無 気 力 , 非 現 実 的 願 望 , 自 信 喪 失 が 含 ま れ て お り , 情 緒 混 乱 因 子 と 命 名した.第
2因 子 に は 引 き こ も り , 絶 望 , 不 信 が 含 ま れ て お り , 引 き こ も り 因 子 と 命 名 し た . 認 知 ・ 行 動 的 反 応 の 9つの下位尺度はストレスの心理的過程を研究するために作成さ れたものであり,下位尺度には各々意味がある. しかし,本研究では認知・行動的反応は 情 緒 混 乱 と 引 き こ も り と い う 2 つの下位尺度から構成されているものとした.
身 体 的 反 応
27項目について因子分析を行なった結果. 2 因 子 ( 累 積 寄 与 率
76.0%)が抽 出された.第 1 因子には「体が疲れやすい」などの項目が含まれており, これを身体疲労 感 因 子 と 命 名 し た . 第 2 因子には「呼吸が苦しくなる」などの項目が含まれており, これ を 自 律 神 経 元 進 因 子 と 命 名 し た . 身 体 的 反 応 は , 身 体 疲 労 感 と 自 律 神 経 冗 進 の
2つの下位 尺度から構成されているものとした.
項 目 選 択
こ れ ら の 因 子 分 析 の 結 果 よ り , 各 質 問 紙 の 下 位 尺 度 を 再 帯 成 し , 因 子 負 荷 量 の 高 い 項 目
か ら , 情 動 的 反 応 は 抑 う つ , 怒 り , 不 安 の 各 尺 度
5項目ずつの
15項 目 を , 認 知 ・ 行 動 的 反
応は情緒混乱から
8項目と引きこもりから 7項目の15項目を,身体的反応、は身体疲労惑か
ら1
0項 目 と 自 律 神 経 元 進 か ら
10項目の
20項目を選定した. したがって, ストレス反応質問
紙 は 合 計
50項 目 と な っ た . こ の よ う に じ て 選 定 さ れ た 項 目 に 基 づ い て 算 出 さ れ た 各 項 目 の
平 均 値 と 標 準 偏 差 お よ び 修 正 尺 度 一 項 目 間 相 関 係 数 と
α係数を表
6に示す.
α係数は
o.74 4から
O.869の範囲であり,修正尺度一項目間十日関係数は
O.430から
O.784の範囲であること
から,この短縮版は十分な信頼性があると考えられる.
情動的反応の因子分析の結果 表
3因子負荷量
1 I I
力j]'リ ー ヨ 自
項
抑うつ 抑うつ 抑うつ 抑うつ 抑うつ 不安 抑うつ 抑うつ 抑うつ 怒り
.893. 791 . 787 .784 . 652 . 642 . 579 .577 .412 . 436
← 「 悲 し い .
泣きたい気分だ.
気分が落ちこみ,沈む.
さみしい気持ちだ.
心が暗い.
心に不安定感がある.
むなしい気持ちがする.
みじめな気持ちだ.
がっかりする.
残念な気持ちだ.
抑 う つ
怒り 不機嫌 怒り 不機嫌 怒り 不機嫌 不 安
. 785 . 754 .744 . 705 . 702 .498 . 410ト一一一
トー「憤まんがつのる.
いらいらする.
不愉快な気持ちだ.
不機嫌で,怒りっぽい.
怒りを感じる.
感情の起伏が激しい.
トー」重苦しい圧迫惑を惑じる.
怒 り
不機嫌 不 安 怒り 不機嫌 不安 不 安 不 安 不安 不安
. 379 . 373 . 362 . 333 . 298 . 283 . 282 . 255 .350. 337 . 273 . 385 . 376 .311 .294
気分がすぐれない.
気持ちが張りつめている.
くやしい思いがする.
ゆったりできない.
恐怖惑をいだく.
不安を感じる.
気が動転している.
気持ちが落ち着かない.
びくびくしている.
カテゴリーは新名ら
(1990)によるものである.
a)
表
4情 動 的 反 応 の 因 子 分 析 の 結 果
因 子 負 荷 量
項 目 E E W t r ] ' ー リ
Iヨト ー 悲 し い
.822抑うつ
さみしい気持ちだ.
. 807抑うつ
抑 泣きたい気持ちだ.
.704抑うつ
つ 気分が落ちこみ,沈む.
.644抑うつ
つ 心に不安定感がある.
. 609不 安
心が暗い.
. 510抑うつ
亡 む な し い 感 じ が す る
間抑うつ
不機嫌で,怒りっぽい. .
751不 機 嫌
怒りを感じる.
. 700怒り
怒│憤まんがつのる
. 664怒り
り いらいらする.
. 652不 機 嫌
不愉快な気持ちだ.
. 610怒り
← ー 感 情 の 起 伏 が 激 し い .
. 555不 機 嫌
ト 「 恐 怖 惑 を い だ く .
. 640不安 重苦しい圧迫感を感じる.
. 603不安 不 [ び く び く 山 る
. 596不安 安 ゆったりできない.
. 518不 機 嫌
不安を感じる.
. 513不安
気持ちが張りつめている.
. 507不安
喪 がっかりする.
.769抑うつ
失 残念な気持ちだ.
. 723怒り
a)
カテゴリーは新名ら(1
990)によるものである.
表 5 認 知 ・ 行 動 的 反 応 の 因 子 分 析 の 結 果
因子負荷量
項 目 1 I I
力jJ'リ
̲3トー「行動に落ち着きがない.
. 762焦操
じっとしていられない.
. 627焦燥 考えがまとまらない.
. 624思考力低下
注意が乱される.
. 534心配
情 話や行動にまとまりがない.
. 521思考力低下
緒 根気がない.
. 506無気力
混 仕事が手につかない.
. 492焦操
き し 自分を支えてほしいと思う.
. 482非現実的願望 取り越し苦労をする.
.442心配
柔軟な思考ができない.
.441思考力低下 自分が駄目になりそうだ.
. 428自信喪失 どうしても事態を変化させた1.'. .
411非現実的顎望 あれこれと思い悩む.
.408心配
ー̲̲J何事にも自信がない.
. 401自信喪失
ー 「 他 人 に 会 う の が わ ず ら わ し い .
. 722引きこもり 話すことがわずらわしい.
. 628引きこもり ヲ │ 何もかもいやだと思う.
. 580絶望
き 自分のからに閉じ込もる.
. 572引きこもり
, : 未来に希望がもてない.
. 569絶望 も 生きているのがいやだ.
. 556絶望 り 人が信じられない.
. 547不信 他人にやさしい気持ちになれない.
.416不信 ト ー 無 気 力 で , や る 気 が で な い .
. 407無気力
a)
カテゴリーは新名ら(1
990)によるものである.
表 6 ス ト レ ス 反 応 質 問 紙 の 下 位 尺 度 ご と の 項 目 の 平 均 値 ( M) と 標 準 偏 差 ( S D) , お よ び 修 正 尺 度 一 項 目 問 侶 関 係 数 ( r ) と 下 位 尺 度 の 信 頼 性 係 数 〈 α)
項 目
M I S D I r α[情動的反応]
抑 う つ 気 分
. 869悲しい気持ちだ.
O. 70 O. 86 . 757さみしい気持ちだ.
O. 91 O. 96 . 681泣きたい気分だ.
O. 71 O. 92 . 657気分が落ちこみ,沈む.
0.80 O. 90 . 734心が暗い.
O. 64 O. 85 .637怒り
. 854不機嫌で,怒りっぽい.
O. 81 O. 78 . 639怒りを感じる.
0.82 O. 88 . 6 ~ 2憤まんがつのる.
O. 77 O. 92 . 670いらいらする.
O. 95 O. 92 . 674不愉快な気分だ.
O. 65 O. 85 . 700不安
. 750恐怖感をいだく.
O. 32 O. 69 . 544重苦しい,圧迫感を感じる.
O. 81 O. 96 . 576びくびくしている.
O. 30 O. 65 . 503緊張がとけない.
O. 70 O. 86 . 472不安を感じる. 1 .
24 O. 98 . 784[認知・行動的反応]
情 緒 混 乱
. 811行動に落ち着きがない.
O. 72 O. 85 . 590むやみにうごきまわり, じっとしていられない.
O. 60 O. 85 .444頭の回転が鈍く,考えがまとまらない.
0.84 O. 85 . 606気がかりなことがすぐ頭に浮かぶ. 1 .
03 O. 97 . 534話や行動にまとまりがないと思う.
O. 96 O. 92 . 545根気がない. 1 .
27 O. 98 . 534仕事が手につかない.
0.77 O. 90 . 549誰かになぐさめてほしい,支えてほしいと思う. 1 .
271 .
01 .430引きこもり
. 811他人に会うのがいやでわずらわしく感じられる.
0.50 O. 81 . 590話すことがいやでわずらわしく感じられる.
0.45 O.1 '
6 .606何もかもいやだと思う.
a. 63 O. 88 . 51 '
5自分のからに閉じこもる.
0.70 O. 92 .527未来に希望が持てない.
0.62 O. 87 .532生きているのがいやだ.
O. 23 O. 62 . 547人が信じられない.
a. 51 a. 73 .485[身体的反応]
身体疲労感
. 828体が護れやすい. 1 .
141 .
03 .766体がだるい.
O. 60 O. 85 . 490脱力感がある.
O. 57 O. 88 . 582いつもより動作が鈍い.
0.84 O. 89 .698頭が重い.
O. 63 O. 91 . 630いつもより寝起きが悪い.
0.54 a. 81 . 535冷汗,脂汗をかく. 1 .
341 .
01 .757体がこわばる.
0.70 O. 88 .720食欲が減退している.
0.801 .
03 . 559体が熱くなったり,顔がほてったりする.
0.45 O. 76 . 500自律神経元進 . 7 4 .
4呼吸が苦しくなる.
O. 57 O. 89 . 623動惇がする.
O. 37 O. 75 . 55 1体がふらついたり,めまいがする.
0.78 O. 96 . 656吐き気がする.
O. 51 O. 85 .460胸部がしめつけられる感じがする.
0.29 O. 66 . 512お腹がはる.
O. 19 O. 52 .432体がむくむ.
0.55 O. 87 .595便秘,あるいは下痢がちである.
O. 19 O. 56 . 510肌が荒れたり,肌がくすむ.
0.24 O. 62 . 534耳鳴りがする. 1 .
081 .
06 . 641( 3
) ス ト レ ッ サ ー に 関 す る 質 問 紙 の 結 果
佳墜宝
表
7に 各 イ ベ ン ト 項 目 に 対 す る 体 験 率 と そ の 評 価 得 点 を 示 す . 体 験 事 の 高 い 項 目 と し て
「 生 活 パ タ ー ン が 大 き く 変 わ っ た J
(10.6%),
r将 来 の 職 業 に つ い て 考 え る よ う に な っ た J
(69.8%),
r自 分 の 性 格 に つ い て 考 え る よ う に な っ た J
(61.3%),
rい っ し ょ に 楽 し め る 友 人 が 増 え た
J(61.1%),
r自 分 の 能 力 ・ 適 性 に つ い て 考 え る よ う に な っ た
J(65.3%)
,
rお 酒 を 飲 む 機 会 が 増 え た J
(62.5%),
r家 族 と 過 ご す 時 間 が 減 っ た J (
61 .6%),
r自 分 の 勉 強 ・ 卒 業 な ど が う ま く 進 ま な い J
(60.1%)な ど が 示 さ れ た . こ れ ら は , い ず れ も 久 田 ・ 丹 羽
(1981)で は 体 験 率
80%以 上 の 項 目 で あ り , 彼 ら の 報 告 に 比 べ る と 若 干 体 験 率 が 低 い こ と を 除 け ば , 彼 ら と 同 時 の 結 果 が 得 ら れ た . こ れ ら の 結 果 に は , . 今 日 の 大 学 生 が 自 分 の 周 囲 の 環 境 と 様 々 な か か わ り 合 い を 持 ち な が ら , 同 時 に , 将 来 の 自 己 像 を 含 め た 自 己 の 内 面 へ も 強 い 興 味 を 抱 い て い る こ と が 表 わ さ れ て い る と 言 え る か も し れ ない
ク ラ ス タ ー 分 析
C L E Sか ら 以 下 の 得 点 を 算 出 し た .
① 総 イ ベ ン ト 数 : 体 験 し た 出 来 事 の 数
②総イベント評価:体験した出来事各々の評価得点、の絶対値の合計
③ 負 イ ベ ン ト 数 : ネ ガ テ ィ プ と 評 価 さ れ た 出 来 事 の 数
④ 負 イ ベ ン ト 評 価 : ネ ガ テ ィ プ と 評 価 さ れ た 出 来 事 各 々 の 評 価 得 点 、 の 絶 対 値 の 合 計
⑤ 正 イ ベ ン ト 数 : ポ ジ テ ィ ブ と 評 価 さ れ た 出 来 事 の 数
⑤ 正 イ ベ ン ト 評 価 : ポ ジ テ ィ プ と 評 価 さ れ た 出 来 事 各 々 の 評 価 得 点 の 合 計
⑦ 中 イ ベ ン ト 数 : ネ ガ テ ィ プ で も ポ ジ テ ィ プ で も な い と 評 価 さ れ た 出 来 事 の 数
表
7には
80項 目 の イ ベ ン ト に つ い て ③ ⑦ の
5つの
CL E S得 点 を 用 い て ク ラ ス タ ー 分 析 ( 最 短 距 離 法 〉 を 行 な っ た 結 果 が 示 さ れ て い る . 各 ク ラ ス タ ー は , 快'でも 不快' で も な い と 判 断 さ れ る ク ラ ス タ ー を 挟 ん で , 大 部 分 の 者 に と っ て 快 ' で あ る も の か ら ,
不快'であるものまでの 8 っと, 体験者の少ない'クラスターの 9 つに分けられた.
表
7の 左 端 は 各 ク ラ ス タ ー に 対 す る 名 称 と そ れ ら の ク ラ ス タ ー に 含 ま れ る 実 際 の 項 目 群 で ある.
C L E S
得 点 と ス ト レ ス 反 応
表 8に C L E S得点、の平均値と標準偏差,およびストレス反応との相関係数を示す.平
均 値 と 標 準 偏 差 は 久 田 ・ 丹 羽 ( 1
987)と ほ ぼ 同 様 の 結 果 が 得 ら れ た . 正 イ ベ ン ト 得 点 よ り
表
7クラスター分析の結果
1
6.
娯楽施設(映画、演劇、コンサートなど)に行く機会が増えた。
10大
I~1クラブ、サークル、ゼミなどで人とのつき合いが増えたロ
28変
8.お酒を飲む機会が増えた。
5117.
自分の経済状態が良くなった。
39快 I79.
前から欲しかったものが手に入った。
457.
異性に接する機会が増えた。
5932.
いっしょに楽しめる友人が増えた。
71
.新しく習いごとや趣味を始めた口
29.9 27 45 161 332 11 15.一人で過ごす時間が減ったロ
32. 4 31 44 139 272 46 73.流行(ファッシヲン、スポーツ、音楽など)に気を配るようになった。
46. 7 20 23 219 361 72 快 I3.通学時聞が減った。
36.3 13 17 128 2. 4
6 101 72.性的な事柄について考えたり、性的な行為をした。
34.8 13 18 118 223 101 59.特定の異性との交際が始まった。
16. 2 8 14 88 219 12 10.新しくアルバイトを始めた。
42.8 82 134 14 7 250 561
や
や A1
1 l 125.両組申仲が良くなった。
12. 3。。
61 116 21 38.学業上の努力が先生や仲間に認められた。(試験、レポート、発表など〉
10. 5。。
66 124 4tEG Q I ~ 160.
恋人との関係〈つきあい方、相手への気持ち)が変化した。
18.6 61 1194 . 1
96 22 67.結婚について考えるようになった。
29. 9 47 75 67 120 85 71.体重が減った。
28.1 45 61 15 126 71 13.生活パターンが大きく変わった。(食生活、睡眠時
IIJl.帰宅時間など)。
70.6 ・194 304 H5 255 131 24. 家族と過ごすlI ~fllj が減った。 61 .
6 ・156 198 31 63 211 68.自分の能力・適性について考えるようになった。
65.3 : 196 296 40 57 199 14.自分の容姿が気になるようになった。
56.2 : 162 251 53 19 159 65.自分の性格について考えるようになった。
61. 3 243 416 25 42 180 66.将来の職業について考えるようになった。
69.8 ・220 393 64 99 181 7.娯楽胞設に行く機会が減った。
18.8 64 84 11 23 50 51.自分
lこ関するうわさが広まった。
17. 1 51 85 14 18 49 56.隣近所に気をつかうようになった。
23. 9 82 111 2 15や
11.アルバイト先でトラブルを起こした。
11 .
3 58 116 5 11 12や
34..信頼していた友人、先輩などにうらぎられた。
8. 1 51 111不
18.いやな人から交際を迫られた。
9.8 58 124 3 6快 22.