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そ の結果 、「の だ」の 出現 は中級 から 始 ま り 、1

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(1)

(研究論文集-教育系・文系の九州地区国立大学間論文集-創刊号 2008)

英語母語話者の「のだ」の習得研究

-OPIデータの分析-

坂井 美恵子

要 旨

日本語 学習 者の「 のだ 」の習 得と 使用状 況に ついて 調べ るため 、英 語母語 話者の OPI(Oral Proficiency Interview)デー タに出 現す るムー ドの「 のだ」の 機能別 習得 状 況と 、「のだ 」の後 接語 句につ いて 調べた 。そ の結果 、「の だ」の 出現 は中級 から 始 ま り 、1. 説 明 、2. 強 調 、3. 確 認 、4. 前 置 き 、5. 推 定 、6. 挿 入 、7. 解 釈 の 順 に 習得が 進ん でいく こと がわか った 。後 接語句 に関し ては 、上 級で「 のだ 」の単 独 使 用は減 り、後接 語句の 使用が 増え る。「の だけ れども 」「の だが 」は中 級から 使用 が 始 ま り 、す べ て の レベ ル で 最 も多 く 出 現 した 。「 のだ よ」「 の だね」「 の だ よ ね」

は、上級-上 から使 用が 始まっ てい るが 、「のだ ね」は超級 になっ ても 誤用が 多い 。 質 問文に「の だ」を つけ る用法 は中 級で始 まり 、レベ ルが 上がる につ れ使用 頻度も 高 く な る。「の で は な い」 の 「 の 」は 構 文 上 不可 欠 で あ るが 、 こ の スコ ー プ の 「の だ 」は超 級で も出現 しな かった 。

【キーワード】 の だ ムー ド スコ ープ OPI 後接 語句

1 .はじ めに

「のだ 」は 多くの 日本 語初級 教科 書で扱 われ ている 文法 項目で ある が、そ の習得 は 学 習 者 にと っ て 難 しい と さ れ てい る 。「の だ」 が な く ても と り あ えず 文 は 成 立す る ので、学習 者が発 話に「のだ 」を 使用で きる ように なる のは時 間が かかる ようで あ る。また「 のだ 」の機 能は多 岐に 渡って いる にもか かわ らず 、初級 で導入 され た 後 、中級 や上 級で「 のだ 」の使 用法 につい て詳 しく学 習す る機会 が少 ないこ とも要 因 の一つ に考 えられ る。野 田他(2001)は、習 得が難 しい 理由と して 、「の だ」を つ け る か ど う か が 文 中 の 要 素 だ け で は 決 ま ら ず 、 文 脈 や 状 況 な ど 文 の 外 の 情 報 に よ って決 まる ことを あげ ている(1)。日 本語学 習者 はどの レベ ルでど のよ うに「 のだ」

を 習得し てい くのだ ろう か。

(2)

学 習 者 の 「 の だ 」 の 習 得 に 注 目 し た 研 究 は い く つ か あ る が 、 名 嶋 (2004) は 学 習 者の「 のだ 」文の 理解 と使用 を質 問用紙 形式 で調査 し、学習者 の「 のだ」の位置 づ けには 偏り があり、理 解や使 用し ていな い用 法があ るこ とを指 摘し ている が、こ れ は 学 習 者 の レ ベ ル 別 の 分 析 で は な い 。 崔 (2001) は 「 の だ 」 の 前 に 接 続 す る 品 詞 に注目 し、学習者 の言 語レベ ルが 上がっ ても 形容詞 に接 続する「の だ」の 使用は 増 えず、また、上級話者 でも動 詞よ りも形 容詞 に接続 する 場合に 誤用 率が高 いと し て いる。では 、後接 する 語句に はど のよう な違 いがあ るの だろう か。このこ とに注 目 し た 研 究 に 山 内 (2004) が あ る 。 山 内 は N グ ラ ム 統 計 処 理 に よ り OPI(Oral Proficiency Interview)デ ー タ に 表 れ る 複 合 的 な 形 態 素 の 出 現 頻 度 を 調 べ 、 超 級 レ ベ ルでは「ん ですけ ど」「 んで すね 」「 んで すよね 」と いった 文字列 の出 現頻度 が高 い ことを 指摘 してい る。しか し、そ れ以外 の「 のだ 」に後 接する 形態 素につ いて は 触 れられ てお らず、また 、すべ ての レベル を対 象とし た分 析では ない 。この ことか ら 、本稿 は英 語話者の OPI デ ー タを 用い、 会話 の中で のレ ベル別 、機 能別の 「の だ 」の習 得状 況につ いて 調査す るこ とにし た。

2 .研究 目的

ここで 本研 究の目 的を まとめ てお く。

( 1)「の だ」の機 能に注 目し 、機能 別の習 得順 序があ るか 、あ ればど のよう な 順 序にな るの かを調 べる 。

( 2)「のだ」の後接 形式 に注目 し、レベル 別の 使用実 態が どうな って いるの か 分 析する 。

3 .「 のだ」の 機能

「 のだ 」の機 能につ いて の研究 は、Kuno1973)、寺村(1984)、吉田(1988)、

McGloin(1989)、坪 根(1997)、桑 原(2003)など 多数あ る。本稿は スコ ープと ムー ド に 分 け て い る 野 田 (1997) や 庵 他 (2000) の 考 え 方 を 基 本 と し て 「 の だ 」 の 機 能 を分類 する ことに する 。野田(1997)は、「の だ」の 本質 は文を 名詞 文に準 じる 形 に変え るこ とだと した 上で 、名詞 化する 必要 がある とい う構文 的な 理由で 使用さ れ ている もの がスコ ープ の「 のだ」で 、話し手 の心的 態度 を表す のが ムード の「 の だ」だとして いる。野田(1997)に よれば、ス コープ の「の だ」は準 体助詞 の「の 」

+「だ 」とい う組成 に近 いもの で、前接す る部 分を名 詞化 するた めに 必須の もので あ る。例えば「[悲 しいか ら泣い た]ん じ ゃない のよ 。」とい う否定 の文 では、どこ

(3)

を フォー カス するか 明示 するた めに 必ず「 のだ 」文の 形を とる。これ がスコ ープの

「 のだ」であ る。ムード の「のだ」に は、聞き 手を必 要と する対 人的 ムード と、聞 き 手を必 要と しない 対事 的ムー ドが ある。また、状況や先 行文脈 が具 体的に 存在 す る かどう かで、関連づけ と非関 連づ けとに 分類 してい る。関 連づけと は聞き 手は 認 識 してい ない が話し 手は 認識し てい る既定 の事 態を 、状況 や先行 文脈 の事情 や意味 と して提 示し 、それ を聞き 手に認 識さ せよう とい う場合 であ る。非 関連づ けとは「の だ」の使われ ている 文を 既定の 事態 として 把握 したり 提示 したり する 場合で、先 行 発 話や具 体的 状況が 存在 せず 、目の 前の状 況を ただそ のま ま把握 した 場合に 用いら れ る。

本 稿 で は 野 田 (1997)、 庵 他 (2000)、 吉 田 (1988)、 坪 根 (2002) な ど の 先 行 研 究を参 考に し、ムード の「 のだ」文に 表れる 、文 脈の中 での表 面的 な意味 を以 下 の ように 設定 した 。なお 、用 例は OPIデ ー タに 出現し なか ったも のは 、野 田(1997 か らとっ た。OPIデータ にはレ ベル を付す 。(T はテス ター と呼ば れるOPIを実施 す る資格 を持 つ日本 語母 語話者 、S はイン タビ ューテ スト を受け てい る日本 語学習 者 を表す 。な お、長 い文 で用法 に無 関係の 部分 は省略 した 。相槌 や語 尾を伸 ばして い る部分 も省 略した 。)

< 説 明 >聞 き 手 が 知 ら な い こ と や 、 認 識 し て い な い こ と が ら を 説 明 す る 。 吉 田

(1988)がい う「告 白」 と「教 示」 はここ に入 る。

T :どう やっ て競争 する んです か。 どうや った ら勝ち なん ですか 。 S :一番 速い 人が、 あの 速いボ ート が勝つ んで す 。 (中 級-上 )

< 強調>話し 手の感 情や 聞き手 に認 識して ほし いこと を強 調する 。

S:石像もい っぱい ある し、なんか 評判は すご いらし い ん です よ。(上 級-上 )

< 前置き >話 し手が、聞 き手は 従属 節の事 態を 知らな いと 見なし たと きに、前置 き と して「 のだ 」文を 挿入 する。

S:その人を あの、まあ ちょっ と言 いづら い ん です けれど も、まあ殺 すって い い ますか ね… (上級 -上 )

< 確認>相手 の発言 した ことを 確認 する 。「だか ら~の か」と いうよう に、「 だから 」 を 伴うこ とも ある。

T:なんか、あ たしばっ かり質 問し てるん です けどね 、な にか 、わた しにお 聞 き になり たい ことな いで すか。

S :あ、 いい んで す か。(上 級-上)

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< 推定>「~ のでは ない か」という 否定の 形を してい るが 、否 定の意 味はな い。話 し 手 の 考 え を や わ ら か く 主 張 し た り 、「 ~ の で は な い ? 」 と 上 昇 イ ン ト ネ ー シ ョ ン で、話 し手 の推定 や判 断を聞 き手 に問う こと もでき る。

S:ま あ会社 に入っ てか ら、会社の やり方 とか 勉強す るか ら、それい い ん じゃ な いか なと思 って 。(上級 )

< 挿 入 >「~ っ て 言 うん で す か」「~ と 言 う んで す が 」 など 、 言 い 方を 考 え て いる と きに自 問し たり、 言い 換えを 挿入 すると きに 使われ る。

S : 表 計 算 ソ フ ト と か で す ね 、 そ の 上 に 使 う 、 だ か ら 、 何 て い う ん で す か ね 、 あ の、MS-DOSて 御存じ でしょ うか 。( 上級-上 )

以 上は野 田(1997)の分 類で言 えば 、対人 的関 連づけ ムー ドであ る。

< 解 釈 >話 し 手 が 状 況 を 自 分 に と っ て わ か り や す い 形 と し て 把 握 し た と き に 用 い る 。状況 に対 する解 釈で 、対事 的関 連づけ ムー ドであ る。

S:もし 、お 母さん がそ ういう 浮気 とか、許し てれば です ね、じ ゃあ 僕も浮 気 を し て も いい ん だ 、 と い う ふ う に考 え て し まう ん で は ない か と い う意 見 を も ってい ます 。( 上級-上 )

< 決意>話し 手の強 い意 志や決 意を 表明す る。

俺 は絶 対勝つ んだ 。

< 命令>聞き 手のな すべ きこと がら を命令 する 。

さ っさ と行く んだ 。上 司をか らかう んじ ゃ な いよ。

< 決意> と< 命令> は非 関連づ けの 対人的「の だ」で、既 定の事 態で あると いう こ とを特 に示 してい る。

< 発 見 >話 し 手 が 認 識 し て い な か っ た こ と を 把 握 し た 場 合 や 再 認 識 し た 場 合 に 用 い られる 。非関 連づけ ムー ドであ り、ま た、聞 き手を 必要と しな い対事 的ム ード。

そ うか 、この スイ ッチを 押す んだ 。

< 非難>「の だから 」の 形で 、主節 の判断 が必 然的な もの として 示さ れるた め、聞 き 手を非 難す るニュ アン スを帯 びる 。

せ っか く編ん でく れた んだ か ら、履 いた らいい のに 。

こ のほか にも 、書 き言葉 で使わ れる「物 語の場 面切り 替え 的な機 能」や 、女性特 有 の 丁 寧 な話 し 言 葉 で、「 で す / ます 」 の 後 に用 い ら れ る終 助 詞 化 した 「 の 」 など が あるが 、こ れらは 日本 語学習 者に よる発 話で ある OPI デ ータを分 析対象 とし た 本 稿では 扱わ ない。

(5)

4 .研究 方法 4.1 対象者

本研究 で扱 う日本 語学 習者の 発話 データ はKYコー パス を利用 する。KYコーパ ス と は 、 外 国 語 学 習 者 の 会 話 の 能 力 を 判 定 す る た め の イ ン タ ビ ュ ー テ ス ト で あ る OPIを 文 字化 した電 子デ ータで ある(鎌田 2006)。こ の中 から英 語母 語話者30 の デ ー タ を 分 析 の 対 象 と す る 。OPI で は 学 習 者 の 日 本 語 言 語 能 力 を ACTFL Proficiency ガ イドラ イン に基い て初 級、中 級、 上級、 超級の 4 レベル に分け る。

さ らに初 級と 中級は 上、 中、下 の 3 つ の下 位レ ベルに 、上 級は 2 つの 下位レ ベル に 分ける(2)( 牧野 他 2001)。本研 究の 対象者30人 の内訳は 初級- 下(1人 )、初級

- 中(2 人 )、初 級-上(2人 )、中級 -下(4人 )、中 級-中(4 人)、中 級-上(2 人 )、 上級(3人 )、 上級- 上(7人 )、 超級(5人 )であ る。

4.2 データ収 集と分 析

KYコ ーパス からの デー タ検索 は「WZ Editor」を 使用した 。「のだ 」が 使われ て い る文を 談話 ごと抜 き出 し、まず正 用かど うか の判断 をし た。そして 正用の 用例 を 上 記の機 能別 に分類 した 。それ と同 時に後 接表 現も抜 き出 した。なお 、OPIは日本 語 母語話 者で あるテ スタ ーが初 対面 の学習 者と 話すと いう 形式の ため 、OPIの一回 の インタ ビュ ーの大 半で 使用さ れる 文体は 丁寧 体であ る。イン フォー マルな 文体が 使 えるか どう かは超 級レ ベルで のロ ールプ レイ で扱わ れる が、本稿の 分析で は文体 の 区別は せず に同じ カテ ゴリー に入 れるこ とに する 。「のだ」は実際の 会話で は「ん で す」「んだ」など様 々な 形をと るが 、すべ て分 析対象 とし ている 。「ま た、も とも と 準体助 詞の「の 」+「 だ 」である「の だ」は 、イ ンフォ ーマル な文 体の質 問文 で は「行く の ? 」とな った り、「行く の かど うか」のよう に疑 問を表 す終 助詞の 後に 続 く語句 があ る場合 は「 だ」は 用い られな いが 、この よう な「の 」も 本稿の 分析対 象 に含め る。

5 .結果

5.1 機能別習 得順序

OPIの 英語 話者の デー タに現 れた「のだ 」に は、以 下の 七つの 項目 があっ た。す な わち 1. 説 明、2. 強 調 、3. 確 認、4. 前 置 き、5. 推 定 、6. 挿 入 、7. 解 釈であ る。

「 決 意 」「 命令 」「 発見」「 非 難 」 とい っ た 機 能は 出 現 し なか っ た 。 出現 し た 項 目の 階 層 性 を 含 む 習 得 プ ロ セ ス を 調 べ る た め に 有 効 な 手 法 で あ る と 言 わ れ て い る

(6)

Implicational Scaling( 含 意 的 尺 度 化 ) の 手 法 を 用 い て 、 デ ー タ 処 理 を 行 っ た

Hatch et al. 1991、 ニ ャンジ ャロ ーンス ック 2001)。「 のだ」 の各 々の機 能に つ い て正用 があ った場 合を 「1」、正用 がなか った 場合を 「0」 とし、 レベ ル別に表 1 に 示した 。デ ータ処 理の 信頼性 を示 す Coefficient of Scalability(尺度 化係数 )は 0.800と なり(3)、 極 めて 高く信 頼性 の高い 階層 として 成立 した(4)

表 1 機 能別 習得順 序

7 6 5 4 3 2 1

超 級 0 1 1 0 1 1 1

上 級-上 1 1 1 1 1 1 1

上 級 0 0 1 1 1 1 1

中 級-上 0 0 0 0 1 0 1 中 級-中 0 1 0 0 0 1 1 中 級-下 0 0 0 0 0 0 1 初 級-上 0 0 0 0 0 0 0 初 級-中 0 0 0 0 0 0 0 初 級-下 0 0 0 0 0 0 0

5.2 後接語句 別習得

「のだ 」に 後接し て出 現した 語句 の一覧 と、各レベ ルの 出現数 を図1に 示す。各 レ ベルの 人数 が同じ でな いため 、一 人当た りの 平均を 算出 した。なお 、表記 は発話 ど お り で はな く 、「の だ」 と い う 表記 を 基 本 的に 用 い る こと に す る 。例 え ば 「 んだ よ 」、「ん です よ」と いう 発話は 、ど ちらも 「の だよ」 と表 記する 。

6 .考察

6.1 機能別習 得順序

ま ず、表1に 明らか なよ うに「のだ 」は 初級レ ベルで は出 現して いな い。この結 果 から 、「のだ」は初級レ ベルで 学習 する文 法項 目にも かか わらず、初 級話者 にと っ て は習得 しに くい項 目で あるこ とが わかる 。中 級レベ ルで は 1. 説明 、2. 強 調、3.

確 認 、6. 挿 入 は 出 現 し て い る が 、4. 前 置 き 、5. 推 定 、7. 解 釈 は 上 級 レ ベ ル に な ら ないと 出現 してい ない。Implicational Scalingの 結果から は、「 のだ」の 習得に は おおよ そ次 のよう な順 序があ ると 言える 。す なわち 1. 説 明 、2. 強 調、3. 確認、

(7)

図 1 後接語句 別出現 数

0.3

0.3 2.3

3.8

3 0.5

3

0.3 1.0 1.0 4.0

3.0

3.7

1.3 0.6

0.7 2.0 0.9 上‐上

0.1 5.6 0.9

1.0 0.3

13.1 1.7

1.4 0.4

1.8 4 0.2

0.4 0.2

1.2

11.8 4

1.8

3.2 7 8.4

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30

のではない?(かなと思う)

のかな(と)、のかね 疑問語ナシ+のですか、のか(と)

疑問語+のですか、のでしょうか、のか のだけ(れ)ど(も)ね のだからね のだから のでしょう、のでしょ、のでしょうね のだよね(と思う)

のだね のだよ のだが のだけ(れ)ど(も)

なし(のだ。)

中-下 中-中 中-上 上-上

      出現数

4. 前 置 き 、5. 推 定 、6. 挿 入 、7. 解 釈 の 順 で あ る 。 な お 、 超 級 レ ベ ル に お い て 、 上 級-上 で既 に出現 して いる 4. 前 置きと 7. 解 釈 が出現し ていな いが 、超級 レベ ル の対象 者が5人 と少な かった ため にこの よう な結果 とな ったの かも しれな い。

最 初に習 得さ れる「 説明 」がム ード の「の だ」の典型 的な 意味と 考え られる 。聞 き 手は認 識し ていな いが 、話 し手は 認識し てい る事態 を提 示して 聞き 手に認 識させ よ うとい うこ の「 説明」の「の だ」は 、ど のレ ベルで も頻 繁に登 場す る。OPIでは 次 の例文 のよ うに 、学習 者の発 話を 促すた めに テスタ ーが 説明を 求め る質問 を多く す る傾向 があ る。こ れが 「説明 」の 「のだ 」が 多く登 場 す る 原 因 と も 考 え ら れ る 。

(例) T :どん な家 ですか 。

S :私の 家は 2階が ある んで す 。 (中級 -中 )

「 強調」も聞 き手が 認識 してい ない ことや 話し 手の感 情を 強調す るこ とで、聞き 手 に 認識さ せる ことに なる ので、説明 の一種 とも 捉えら れる。次に習得 される「確 認」

は、質問文で 聞き手 側に ある情 報を 話し手 がど う受け 止め たかを 伝え る機能 で、話

(8)

し 手によ る聞 き手に 対す る解釈 の説 明であ り、説明 の機能 から派 生し たと思 われ る。

話 し手に よっ て挿入 され る「 前置き 」は 、話し 手が伝 えた い事態 その ものに「の だ 」 を つ ける の で は なく 、「 前置 き」 す る こ とに よ っ て 聞き 手 に 心 構え を さ せ るな ど 、聞 き手を 意識し た使 い方で ある 。単 なる「 説明 」から 一歩進 んだ 聞き手 への 配 慮 を 含 ん だ機 能 で 、 習得 は 少 し 遅れ る 。「い いん じ ゃ な いか と 思 う 」な ど 、 断 定を 避 け る た めに 使 わ れ る「 推 定 」 の「 の だ 」 の習 得 は 、「 前置 き 」 と 同じ く 上 級 にな る 。

「 挿入 」は「 何て 言うん ですか 」と いうよ うに 、言 い方を 考えて いる ときに 挿入 さ れるフ レー ズで、多用 されて いる 。質問 文な のだが 、聞 き手の 答え を期待 してい る わけで はな く、話し手 の領域 にあ る情報 を自 分で引 き出 すため に聞 き手に 問いか け る形を とっ ていて、聞 き手を 会話 に巻き 込も うとし てい る。上級話 者の会 話テ ク ニ ッ ク で ある と 言 え よう 。「 解釈 」は 、 こ れ を使 用 し て いる 上 級 - 上の レ ベ ル の話 者 は次の 例に あるよ うに、ある話題 に関し て自 分の意 見を 説明し てい るとき に、自 分 の解釈 を「 のだ」 によ って示 しな がら会 話を 続けて いる 。

(例)S : 奥 さ ん が そ れ を 許 す と い う 場 合 は で す ね 、 子 供 が で す ね 、 た い へ ん 親 を 見 て 、 こ う い う 関 係 が 理 想 的 な ん だ と か 、 こ う い う 関 係 が 普 通 だ と か 、そ ういう ふうに こう 直感的 に思 ってし まう んだと 思う んです よね 。

( 上級‐ 上)

上 級 レ ベ ル で は 詳 し く 説 明 し た り 自 分 の 意 見 を 述 べ た り す る こ と が 求 め ら れ る(5) 意 見を述 べた り説明 をし たりし てい るとき にこ のよう な機 能が使 えれ ば、より説得 力 の あ る 話し 方 が で きる 。 な お、「挿 入 」 は 中級 - 中 で 初め て 出 現 して い る こ とか ら 、「 挿入」の 方が「 解釈 」より も習 得が早 いと した。

一 方、超 級に なって も出 現が見 られ なかっ た機 能に 、「決意 」「 命令 」「 発見 」「非 難 」があ る。OPI 30分 間の限ら れた状 況下 での会 話で あり、また 本研究 の対 象 者 が少な いこ ともあ るの で、本稿の データ だけ からは これ らの機 能の 習得の 有無を 判 断でき ない 。

6.2 後接語句 の種類 6.2.1 全体的 傾向

先 ず 、「の だ」 の 単 独 での 使 用 が 中級 - 下 か ら中 に か け て始 ま り 、 中級 で は 他 の

(9)

ど の 表 現 より も こ の 単独 使 用 の 割合 が 多 い 。し か し 、 上級 話 者 に なる と 、「の だ」

の 後接表 現に 少しバ ラエ ティが 出て くる。それと 同時に「のだ 」の単 独使用 は減り 、 上 級レベ ル以 降は後 接語 句を用 いた 表現の 方が 多くな る。すべ ての後 接語句 を含め た「のだ 」の 総出現 頻度 はレベ ルが 上昇す ると ともに 増え る。使 える「のだ 」の機 能 が段階 的に 増えて いき 、そ れと同 時に「のだ 」の 使用数 も増加 する 。し かし 、様 々 な 文 末 形 式が 使 え る 上級 - 上 か ら超 級 に な らな い と 、「 のだ 」 の 後 接形 式 の 種 類は 増 えない 。

6.2.2 のだけ れども

次 に後接 語句 を個別 に見 ていき たい 。図1 から わかる よう に後接 語句 の中で は、

中 級-中、上 級-上 と超 級では 、「の だけ(れ)ど(も)」が他 のどの 表現 よりも 使用 頻 度 が高い 。ま た、上 級で は同じ 意味 である「の だが」が多 く出現 して いる。上級以 上 のレベ ルで は段落、複 段落と いっ たテキ スト の型が 要求 される。そ こで上 級以 上 の 話 者 は、「の だ け れ ども 」 や 「 のだ が 」 の よう に 、 文 の結 束 力 を 生む 接 続 助 詞を

「 のだ」に続 けて使 用す ること によ り、単に文 を並べ るだ けで段 落レ ベルで 話す こ と ができ ない 中級話 者と の違い を出 してい る。ま た「思うん ですけ ど。」の ように、

「 のだけ ど」の 後に文を 続けず に終 わって いる 表現も よく 使われ てい るが、この よ う な言い 切り を避け るた めの終 助詞 化した 文末 表現も 、中 級-中 から 好んで 使われ て いる。

6.2.3 のだよ 、のだ ね、 のだよ ね

終 助詞の「よ 」「ね 」「よ ね」を「の だ」に後接 させた 表現 は、上級- 上から 使用 が 始 ま っ てお り 、 中 級- 中 か ら 見ら れ る 「 のだ け れ ど も」 よ り も 使用 開 始 が 遅い 。 こ のこと から モダリ ティ 表現を 二重 に重ね る形 式の習 得は 難しい こと がわか る。

こ の よ う な 終 助 詞 と 「 の だ 」 の 結 び つ き は 、 前 述 し た よ う に 山 内 (2004) も 指 摘 してい るが 、本 研究の 結果は 、同 じ KYコー パスを 対象 として いる 山内の 結果 と 異 な る 点 が あ る 。 山 内 (2004) は 上 級 と 超 級 で は 「 ん で す ね 」、「 ん で す よ 」 の 順 に 出 現 頻 度が 高 く 、「 んで す よ ね 」は 上 級 で はゼ ロ で 、 超級 レ ベ ル で出 現 す る 超級 話 者の特 徴的 表現だ と指 摘して いる 。とこ ろが本 研究で は上 級-上 で「の だよね(山 内 の 「 ん です ね 」 に 当た る )」の 出現 が あ り 、そ の 出 現 頻度 は 他 の 二つ に 比 べ て多 か った。 山内 は上級 -上 を N グラ ムの分 析対 象に含 めて おらず 、こ のこと が本稿 と 全く違 う結 果とな った 原因と なっ ている 。ま た本稿 では 、上級 -上 の「の だね」

(10)

の 出 現 頻 度は 「 の だ よ」 と 比 べ てほ と ん ど 差は な く 、 超級 で も 山 内の 結 果 と 違い 、

「 のだね」よ り「のだよ」の方が多 くなっ てい る。これは「 のだね」に は誤用と 思 わ れる使 い方 が多く 、上 級-上 では 15 例、超 級でも 15 例見 つかり 、本稿 の分 析 対 象から はず したた めで ある(6)。山 内の分 析は 誤用も 含め た全て の文 字列が 対象と な ってい るた め、「んです ね」が 多い という 違う 結果に なっ たので あろ う。

6.2.4 のか

「 の だ 」 の使 用 が 増 える と 、「か 」な ど が 後 接す る 質 問 文で も 「 の だ」 の 使 用 が 出 現する よう になる 。OPIで は 必ずテ スター に対 する質 問が 五つほ どあ るが 、この と きの「 のだ 」の使 用は 中級- 上か ら見ら れ始 め、特 に超 級で使 用が 多くな るとい う 結果に なっ た。上 級- 上と超 級で はどち らも 疑問語 があ る質問 文で の「の だ」の 使 用の方 が、 疑問語 がな い質問 文の 「のだ 」の 使用よ りも 多い。 疑問 語が「 のだ」

の 誘発剤 とし て捉え られ ている よう だ。

理 由を聞 く疑 問語で ある 「どう して 」「 なぜ 」「 なんで 」な どがあ る文 は「の だ」

が 必要で ある が(野田 1997)、上級 と上級 -上 でそれ ぞれ 1 例ず つ、 超級では 20 例 中3例がそ れに当 ては まった 。さ らに、これ らの理 由を 問う疑 問語 がある にもか か わ ら ず、「の だ 」 が 使わ れ て い ない 文 が あ るか ど う か 調べ た 結 果 、次 の 例 文 のよ う に上級 -上 と超級 でそ れぞれ1例 ずつ見 つか った。

( 例)? ど う し て そ こまで 言わな いと いけな い とか ね、っ ていう のが あるん で す ね。 (超 級)

野 田 他 (2001) は 「 ど う し て 」 や 「 な ぜ 」 が あ る 文 の 「 の だ 」 は 習 得 が し や す い と し て いる 。 つ ま り、「 の だ 」 の有 無 が 文 中の 条 件 で 決ま る 場 合 の文 法 項 目 は習 得 はしや すい という こと なのだ が、 実際に はそ うとは 言い 切れな いよ うであ る。

6.2.5 その他

「 のでは ない 」には二つ の機能 があ り 、一つは 否定を 表す スコー プの「 のだ 」で、

も う一つ は推 定や断 定を 避ける ムー ドの「のだ 」で ある 。ス コープ の「 ので はない 」 は どのレ ベル でも出 現が 見られ なか った。これ により、学 習者に とっ てスコ ープ の

「 のだ 」は習 得が難 しい 機能だ とい うこと がわ かった 。こ のほか 、ス コープ の「 の だ 」 で あ る「 の だ っ たら 」「 ので あれ ば 」「の なら 」「 ので あっ て 」 な どの 使 用 も な

(11)

か ったこ とか らも 、スコ ープの「の だ」の習得 が難し いこ とが窺 える 。こ のよう な 機 能があ ると いうこ とを 知らな いこ とも考 えら れる。 一方 、推定 の「 のでは ない」

は 機能別 習得 にも見 られ るよう に、 上級以 降で 使用が 見ら れる。

ま た、「の だろ う」は上級 -上と 超級 で一例 ずつ しかな く、「 のか もしれ ない 」「 の だ っ た 」 とい う 後 接 語句 の 出 現 はす べ て の レベ ル で な かっ た 。「の だ」 に 「 け ど」

や 終助詞 の「 ね 」「 よ」「 よね 」など が後接 する 形式は 比較 的習得 しや すいと 推察 さ れ るが、こ れら の形式 は、超 級話者 と言 えども 習得 は難し いと いうこ とが わかっ た。

7 .まと めと 今後の 課題

本 研究 の目 的 (1)「の だ 」の 機能 別 習得 につ い ては 、1. 説 明 、2. 強 調 、3. 認 、4. 前 置 き 、5. 推 定 、6. 挿 入 、7. 解 釈 の 順 で 概 ね 習 得 が 進 ん で い く こ と が わ か っ た 。 この こ と か ら、「 の だ 」 の典 型 的 な 機能 は 「 説 明」 で 、 こ れが 最 も 習 得し や すい機 能と いうこ とに なる。また、上級レベ ルにな らな いと出 現し ない「前置 き」

「 推 定 」「 挿入 」 と い った 機 能 は 、聞 き 手 へ の配 慮 や 、 聞き 手 を 会 話に 巻 き 込 もう と す る 機 能を 持 ち 合 わせ て お り、「説 明 」「強 調」「 確 認」 より 習 得 が 難し く な る よ う だ。また 、「決 意」「命令 」「発 見」「非 難」は超 級レベ ルで も習得 は見 られな かっ た が、OPIデ ータだ けで はこれ らの 機能の 習得 の有無 の判 断はで きな い。

目的( 2)の後接 形式 に注目 した レベル 別使 用実態 に関 しては 、初 級では 見られ な かった「の だ」の使用 が、中級- 下から 中級 -中に かけ て単独 の形 で始ま る。中 級 では単 独使 用の割 合が 高い 。上級 になり 後接 語句に バラ エティ が出 てくる と同時 に 、「の だ」の 単独使 用は 減少し、上 級以降 は後 接語句 を使 用した 表現 が多く なる 。 中 でも「 のだ けれど も」と「の だが 」は中 級か ら使用 が始 まり、他の どの後 接語句 よ りも多 く使 用され てい る。次に多 いのは 終助 詞の「のだ よ」「の だね 」「のだ よね 」 で 、 上 級 -上 か ら 使 用が 始 ま っ てい る が 、「 のだ ね 」 は 誤用 が 多 く 、超 級 に な って も 誤用が 目立 つ。質 問文 で「の だ」が使用 でき るよう にな るのは 中級 -中か ら中級

- 上にか けて で、レベル が上が るに つれ使 用頻 度も高 くな る。また 、ス コープ の「 の だ 」は出 現し なかっ たこ とから 、ス コープ の「 のだ」の習 得は難 しく 、また 学習の 機 会がな いの かもし れな いこと が指 摘され た。ただ 、KYコー パスを 分析の 対象と し た本研 究の 対象者 は30 人 で、それ ぞれの レベ ルの人 数は かなり 少な い。今 後更 に 多 く の デー タ を 分 析す る こ と によ り 、「の だ」 の 習 得 につ い て 本 稿の 結 果 と 同じ よ うにな るか 検証す る必 要があ る。

ま た、本研究 では OPIデ ータの 分析 であっ たの で、資料は 自然会 話で はある が、

(12)

限 られた 状況 下での 発話 でしか ない 。OPIは通常30分のイン タビュ ーで 、テ スター の 質問に 答え る形式 が約 20分 と、逆質 問 、ロ ールプ レイ で構成 され ている(牧野 2001)。こ のよう な状 況下で はす べての 機能 の使用 を確 認する こと ができ ない。

本 研究で は、話し 手がそ れまで 認識 してい なか った事 態を 発話時 に把 握した ことを 示 す非関 連づ け「の だ」の使用 は認 められ なか ったが 、こ ういっ た機 能の習 得状況 の 把握に つい ては別 の発 話環境 を設 定する 必要 がある と思 われる 。こ れにつ いても 今 後の課 題と したい 。ま た、本 研究 は英語 母語 話者の みの 分析で あっ たので 、中国 語 と韓国 語母 語話者 のデ ータと の比 較分析 も今 後行い たい 。

付 記

本 稿は 、『大分 大学留 学生 センタ ー紀 要第 3 号』(2006)に 掲載さ れた 「英語 母 語 話者の『の だ』の 習得 -OPIデー タの分 析- 」を 、査読 により 加筆 修正し たもの で ある。

1. 野 田 他 (2001) は これ を 「内 外条 件 」に よる 難 易度 仮説 と して おり 、 テン スの 使 い 分 け の よ う に 文 の 中 だ け で 決 ま る 対 立 は や さ し く 、「 の だ 」 の よ う に 文 の 外 の情報 で決 まる対 立は 難しい とし ている 。

2. OPIの 日 本 語版マ ニュ アルが 1999年 に改訂さ れ、現在で は上級 にも「上 級-下 」

「 上級- 中」「 上級- 上」 という 三つ の下位 レベ ルがあ る( 牧野他 2001)。

3. Coefficient of Scalabilityの算出方 法は次 の通 りであ る。

683 . 1

683 . 937 .

1 −

= −

= −

rep rep rep

scal MM

MM

C C =0.800

= Coefficient of Reproducibility Crep

MMrep = Minimum Marginal Reproducibility

4. Coefficient of Scalability0.6以 上で高 い信 頼性が ある とされ る (Hatch et al.

1991)。

(13)

5. A oficiency Guidelines‐Speakingによ ると 、例え ば上級 -中 レベル の

6.「 ん で す ね 」 は イ ン ト ネ ー シ ョ ン な ど に よ り 正 用 と な る 場 合 も あ る が 、KYコ ー CTFL Pr

話 者は 、詳細 に叙述 した り描写 した りする 能力 を持ち 、し ばしば 意見 を述べ る こ とがで きる とある (Swender 1999)。

パ ス で は あ く ま で 文 字 化 資 料 を 見 た 限 り の 印 象 で し か 判 断 で き な い 。「 フ ラ ン ス は(中略)人 たちの雰 囲気と かも 好きで すね、ちょうど、秋の、一 学期の ほ う 、パリ のほ うへ留 学し てた んです ね 。(超 級)」の ように、聞き手 がま ったく 知 らない 、話 し手の 個人 的な事 情に 使われ る「ね 」は、本 来は無 標か「 よ」で あ るべき なの で、誤 用と した。

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(8)

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図 1 後接語句 別出現 数  0.3 0.3 2.3 3.8 3 0.5 3 0.3 1.01.04.0 3.0 3.7 1.30.6 0.72.00.9上‐上0.15.60.91.00.3 13.11.71.40.41.84超0.20.4超0.21.2 11.841.83.278.4 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30のではない?(かなと思う)のかな(と)、のかね疑問語ナシ+のですか、のか(と)疑問語+のですか、のでしょうか、のかのだけ(れ)ど(も)ねの

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