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支持点メカニズムと外国為替相場

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(1)

支持点メカニズムと外国為替相場

その他のタイトル Support Point Mechanism and Foreign Exehange Rate

著者 木村 滋

雑誌名 關西大學商學論集

11

6

ページ 537‑550

発行年 1967‑03‑20

URL http://hdl.handle.net/10112/00021502

(2)

537 

支持点メカニズ

ムと外国為替相場

戦後の外国為替制度の特徴は国際通貨基金の下における支持点メカニズムにある︒したがって現代の外国為替相

場と外国為替操作を論ずるに当たっては︑制度的前提として︑金本位制の金現送点メカニズムでも︑金本位制離脱

後の変動為替制でもなく︑まさしくこの支持点メカニズムを前提しなければならない︒この支持点メカニズムと金

現送点メカニズムあるいは変動為替制のいずれがなんらかの視点︑たとえば国際均衡の自動調整作用よりみて機能

的に優れているかといった問題の理論的考察は別個の課題であって︑小論の任ではない︒以下この支持的メカー・ーズ

ムという制度的前提の枠内において︑本稿では︑支持点メカニズムと外国為替相場との関係を主として制度的に明

確にし︑かかる基礎知識の上に立って︑次稿で先物為替︑為替裁定︑金利裁定︑為替投機などの外国為替操作と支

持点メカニズムとの関係を主として理論的に考察する︒

国際通貨基金の下における支持点メカニズムの概念を明確ならしめるために︑金本位制の下における金現送点の

計算の問題から説明を始めよう︒

1 1  

イングランド銀行は一基準オンス

( s t a n d a r d o u n c

e )

ー純度ーーにつき買上げ価格

7 7 s . 9 d .

売渡し価格

7 7 s .

1 0 1  

12 

9 9 5   d .

で金売買の義務を負っているとする︒これらは純度引引以上の純金一オンス

( f i n o e g c e )

につきそれぞれ約

8 4 s . d .

と約

8 4 s . 1 1

‑ d

.

に相当する︒米国の造幣局は純金一オンスにつき⇔

2 0 . 6 7 1 8 3

で金売買を行なうものとする︒

13  9

1  

16 

一 五

(3)

538 

支持点メカニズムと外国為替相場︵木村︶

かくして第

1

表例ーに示すように︑ ロンドンとニューヨークの間の航海日数に八日を要し︑また米国の造幣局は金買上げに際し︑その九七%

は直ちに支払うが︑残りの三%は三0日後︑分析検査が終了した上で支払うものとする︒

金輸出点の計算

︹ 例

1

︺イングランド銀行から金を購入し︑これをニューヨークに現送して米国の造幣局に売る場合︑現送費控除

前のわ

1

当りの総取得対価

( g r o

s s

o u t t

u r n )

は鋳造平価⇔

4 . 8 6 6 5

となる︵計算上のまるめ方によってはこれとは

︹ 例

2

異なる数値が求まるが︑エビットに従って一応右のようになるとしておく︶︒

1 1

4 . 8 5 0 9 8 8 j r @ 4 . 8 5

し︶が求まる︒

( 3 2  

ロンドンの公開金市場で純金一オンス

8 4 s . 1 0

│ d

2

のように金輸出点色その市場が利用され︑第

1

表例

35  2  .

で買える場合︑イングランド銀行から購入するよりも低

1 1 1 @ 4 . 8 5 5 4 9 3 ( j

r

4 . 8 5 6 4 )

金輸入点の計算

︹ 例

3

︺米国の造幣局から金を購入してロンドンに現送し︑イングランド銀行に売る場合︑通常経費の合計を三%

29 

32 

と仮定すれば︑第

1

表例3のように金輸入点わ

1 1

1

4 . 8 8 9 0 0 3 ( = . $

4 . 8 8  

︹ 例

4︺右で︑ロンドンの公開金市場で︑純金一オンス当たり

8 4

s .

10

d .

で売れるならば︑第

1

表例4のように金輸

入点わ

1 1

1

4 . 8 8 5 7 3 3 ( = . $

4.88~)

が求まる。

(1) 

以上はエビットの示した例である︒実際に金現送点はどれほどであったかといえば︑第一次大戦以前の一八七七

ー一九一六年では金輸出入点は英米間でおよそ等

4 . 8 2 7

と⇔

4 . 8 9

で︑大戦後の一九二五ー一九三三年ではおよ

( 2 )  

そ等

4 . 8 5 1 4 5

と頓

4 . 8 9 0 2 1

と言われている︒これらは鋳造平価が⇔

4 . 8 6 6

であったから︑金平価からの乖離は金輸出点では戦前で0・八%、戦後で0・三%、金輸入点では戦前戦後とも0•五%程度のものと計算されよう。金

一 六

(4)

539 

1

計 算

支持点メカニズムと外国為替相場︵木村︶

1 〕

£1 当 た り の 総 取 得 対 価 ・ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ・ ・ $ 4 .  8665 

( ‑ ) 運 賃 3 s .

•···$ 0 .  0073 

保 険 料

l s . %. ・   ・ ・   ・ ・   ・  ・ ・  ・  ・  ・  ・  • • • • • • • ・    ・  ・ ・  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・   ・  ・  ・    ・  ・ ・ ・  ・  ・  ・  ・  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・   ・  ・ ・ $   0 .  00243 

包装費,運搬料およびニューヨークの代理店手数料

1/4 妬 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ・ ・ $ o .  001216 

ニューヨークにおける溶解・分析料 1 / 4 妬………$ 0.001216

金の 9 7 %に対する航海日数 8 日間の金利年率 3 %………… $0.00315 

金の 3 %に対する 30 日間の金利年率 3 ,劣………$ 0.0002

(金利はニューヨーク方式により 1 年 360 日で計算) $ 0.015512 

$  4.850988 

2 〕

£1 当 た り の 総 取 得 対 価 ・ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ・ ・ $ 4 .  87112 

( 一 )

この総取得対価につき計算した上記諸経費…•………..………… $o.

015627 

$  4.855493 

3 〕

£  1 当 た り の ド ル の 当 初 支 出 ・ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .

9

. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . $ 4 .  87438 

( + )   通常経費合計 (3 妬と仮定) $ 0.014623 

$  4.889003 

例 4

£1 当たりのドルの当初支出.

( + )   通常経費合計 (3 努

0:.属羞〗............·•

・  • ・  •...· •. ・  • ・  • ・  • ・  • ・  • ・  •... ・  •. ・  • ・  • ・  •. 9 . . . . . . .  9 . .  ・  •. ・  •...· • ・  • ・  • ・  • ・  • ・  • ・  •. ・  • 4 0.014613  .  87112 

$ 4.885733 

加盟国は米ドルで平価を表示し︑米ドルが るものとに分かれるように見えるが︑事実は︑ 平価を金で表示するものと︑米ドルで表示す 基金平価の設定である︒この規定によれば︑ って表示すべき義務を課している︒いわゆる する米ドル(‑オンスにつき三五ドル︶によ 九四四年七月一日現在の量目および純分を有 盟国に為替平価を共通尺度たる金もしくは

国際通貨基金は協定第四条第一項的で︑加 ズムが登場した︒ 人為的な為替変動範囲を画する支持点メカニ 金の下では︑金本位制の金現送点に対応し︑ 替の経験を経て︑第二次大戦後の国際通貨基 さて︑両大戦期間の金本位制離脱期の変動為 定取引に依存していたことに特色がみられる︒ であるが︑しかもそれはもっぱら民間の金裁 中心とする金輸出入点の範囲に画されるわけ 本位制の下では為替相場変動範囲は金平価を

(5)

540 

オンス三五ドルの金平価を維持する仕組みになっているので︑各加盟国はかかる意味でのキー・カレンシーとして

の米ドルを通じて間接的に金に結び付いているのである︒

さらに規程

F I

この基金平価の維持のために︑加盟国が金の売買を行なう場合︑平価の上下一定のマー

ジン︑すなわち︑平価の四分の一%に諸掛りを加えた限度内か︑諸掛りを含めて平価の一%のマージンを限度とし

なければならないとされているが︑この規程は加盟国の政府の貨幣用金に対するもので︑非貨幣用金には適用され

ない︒そこで︑パリー︑ロンドン等に自由金市場が存在しており︑殊に非加盟国のスイスでは金と為替相場との間

には後述するように密接な関係が存在する︒さらに問題は︑今日各国で金兌換が行なわれているわけではなく︑ド

ルの金平価維持の義務を有する米国にしても︑財務省の公定金売買価格は︑一オンス三五ドルの上下各四分の一%︑すなわち、三五•O八七五ドルと三四。九一五ドルをそれぞれ売買価格としてはいるものの、米国の財務省が金を

買い入れる時は相手の制限はないが︑売却する場合は諸外国の政府︑中央銀行︑国際機関に限られ︑その他の外国

非居住者はその保有ドルを金に兌換し得ない点にある︒このことも自由金市場が出現した原因であり︵ただし米国

には存在しない︶︑しかも基金も加盟国もかかる非貨幣用金の市場価格が平価以上に取引されるのを妨げる拘束力を

もたないのであり︑したがって米国の国際収支の持続的な赤字に際してドル危機を招いた所以でもある︒

右の基金平価の変更には加盟国の提議による変更と一律的変更がある︒前者については協定第四条第五項伺伽お

よび規程

F I

三で︑加盟国が自国経済の基礎的不均衡の是正のために平価変更の必要な理由書を付して加盟国みず

から提議し︑基金と協議しなければならないとされ︑さらに協定第四条第五項伺で︑基金はこの提議された変更が︑

従前一切の変更を含めてかつ引上げたると引下げたるとを問わず︑一︑第一次平価の一0%以内の変更には異議を

唱えず︑二︑次の一0%までの変更については同意または異議を唱えるが︑その加盟国の要請あれば七二時間以内

(6)

! 1 4 1  

︳ 九

に態度を決め︑三︑右以上の変更に対しては態度の表明には七二時間を越えることができる︑と規定する︒ここで

基礎的不均衡についてはその定義が明示されず︑基金当局の判断に委ねられているが︑たとえば内外物価の乖離に

基づく貿易収支の不均衡が︑自国物価の引下げか為替切下げによってのみ回復され得るという場合に︑もし前者の

方法によれば国内のデフレーションと失業を招来するに相違ないと見られるならば︑基礎的不均衡が存在するもの

( 3 )  

と認められ︑平価変更を提議できると解釈されている︒ところで加盟国の平価変更をこのように制限する規定はど

こまで有効であろうか︒アインチッヒに従って多少アイロニカルに考えれば︑この規定に違反して平価切下げをし

た国は当然ながら基金資金利用の資格を奪われ︑さらには脱退すらも要求されるであろうが︑この措置はあまり効

き目がない︒なぜなら︑過大評価通貨が切り下げられると︑その通貨への圧迫は緩和され︑もはや基金の援助を必

(4) 

要としなくなるからである︒次に平価の一律変更については︑協定第四条第七項で︑一︑加盟国の賛成が総票決権

の過半数に達し︑二︑基金割当額全体の一0%以上をもつすべての加盟国︵米国と英国がこれに当たる︶がこれに

承認を与えた場合に行なわれるが︑これを欲しない国は七二時間以内にその旨通告すればその変更を免れると規定

されている︒ところで今日では︑かつて金本位制の下で存在していたような︑金生産の増減と通貨発行の増減した

がって物価騰落との関係は薄く︑むしろ金価値の変更が国際流動性を増加させる一方策としての観点からこの規定

の意義を認めるべきであろう︒

最後に︑為替変動範囲については本章の主題である支持点メカニズムの規定であるから︑より詳細に考察しよう︒

協定第四条第三項では︑加盟国通貨相互間の為替相場は︑平価比率に対し︑一︑直物為替取引にあっては一%︑二︑

その他の為替取引にあっては︑直物為替取引のマージンに基金の適当と認めるマージンを加えたもの︑これらの限

度を越える開きがあってはならないと規定する︒

支持点メカニズムと外国為替相湯︵木村︶

(7)

542 

右の一の直物為替取引の変動幅一%の規定は金利要因を含まない電信相場でかつ対︷顧客・対銀行両相場ともに適

用されるものとみなされているが︑問題は規定を文字通りに解釈すれば︑平価比率に対してと言う以上は︑対米ド

ル相場のみならず︑それ以外の裁定相場に対しても適用さるべきものであるが︑現在ではその適用は対米ドル相場

に限定され︑米国以外の加盟国相互間の為替相場は後述する市場の裁定に委ねられている︒つまり︑たとえば一国

の対米ドル相場が平価の一%上限にあり︑他国が一%下限にあるとき約二%の開きが生じ︑協定の一%を上回るこ

とになるが︑基金は為替裁定市場の存在が交換性の達成維持に貢献するものとみてこれに反対しないこととしてい

る︒ここにいわゆる支持点︵介入点︶と裁定支持点の存在と区別が明白化されたわけである︒次に二のその他の為

替取引については︑なんら具体的に示されていない︒したがって先物為替取引については︑その変動幅に制限なき

ものと解釈されている︒もっとも先物相場は理論的にも実際的にも直物相場と無関係に変動せず︑なんらかの規則

性が認められるから具体的な規定の必要もないであろう︒

以上が為替相場にかんする基金の諸規定とその解釈である︒つまり今日の為替制度では︑各国の通貨は米ドルに

リンクし︑基準平価が設定され︑その平価を中心として対ドル基準相場の変動を一定のマージン内に留めるように

各国政府は義務づけられ︑この支持点︵介入点︶と呼ばれる上下限界相場で通貨当局は自国内の為替銀行と無制限

にドルの売買を行なうことによってこの義務を遂行するのである︒また︑他の通貨に対しては民間裁定に委ねるも︑

そのことは必然的にそれら通貨相互間の変動幅を定めていわゆる裁定支持点をもたらす︒たとえば銀行Aがドイツ

・マルクを手に入れようとする場合︑

イングランド銀行からわ

1 1 1

.

78

の中央銀行売相場︵支持上限︶でドルを

これを西ドイツのプンデス・バンクヘ毎

1 1 1 D M . . 

3 .

  97 

(支持下限︶で売るとすれば︑Aはお

1 1 1 D . M . 1 1 .

0366 

でドイツ・マルクを入手し得るわけである︒したがってドイツ・マルクの市場相場はこれ以上に上り得ないことと

(8)

2

表平価,裁定平価,支持点と裁定支持点 ドイツフランスイタリアスイス

2.  80  4.  00  4.93706  625.  00  4.  37282  360.  00  u.  s. 

1  2.  82  4.03  4.974  629.50  4.45  362.70  2.78  3.97  4.90  620.50  4.295  357.30 

2.  80  11.  20  13.  82377  1750.  00  12.  2430.  1008.  00  Stg.  £  1  2.82  11.  3646  14.02668  1775.  19  12.549  1022.  814  2.78  11.  0366  13.622  1724.99  11.  9401  993.294  25.  00  11.  20  123.  4265  15625.  OD  109.  3205  9000.  00  D.  M.  100  25.  1889  11.  3646  125.2897  15856.423  112.  0907  9136.02  24.8139  11.  0366  121.  5881  15397.022  106.5757  8866.004  20.  ・255  13.82376  81.  0199  12659.  355  88.  5713  7219.  789  F.  Fr.  100  20.4082  14.02668  82.2449  12846.938  90.8163  7402.04  20.  105  13.622  79.815  12474.869  86.349  7183.  353  o.  16  1750.  00  0.  64  0.  78993  0.  69965  57.  60  Lit.  100  0.  1612  1775.  19  0.64948  0.80161  o.  71716  58.4529  o.  1589  1724.999  0.63066  0.77839  0.68229  56.7592 

22.  8685  12.  2439  91.  4142  112.  9033  14292.836  8232.  676  S.  Fr.  100  23.  283'3  12.549  93.83  115.  8091  14656.588  8444.703  22.4719  11.  9401  89.2135  110.  1123  13943.82  8029.213 

0.  27778  1008.  00  1.  11111  1.  37141  173.  6111  1.  21462 

¥ 

100  0.27988  1022.814  1.  1279  1.  39211  176.  1825  1.  24545  0.  27571  993.294  1.  09457  1.35098  171.  078  1.18717 

出所:

P. Einzig,  A  Textbook  on  Forein  Exchange,  1966,  Appendix  II

ょり抜粋,ただし数字は若干修正。英国のみ受取勘定建,他は支払勘定建ゴチックは

u. s.

$に対しては平価,他通貨に対しては裁定平価。したがってゴチック以外で,

u. s.

$に対するものは,上方が支持上限,下方が支持下限。ただし,英国は上方が支持下限,下方が支持上限。同様に,

u. s. 

$以外の通貨に対するものは,上方が裁定支持上限,下方が裁定支持下限。ただし英国は上方が

裁定支持下限,下方が裁定支持上限。スイスについては金より計算されている(本文参照)。

枢鞄艇ヽ‑R

11'r<  ‑4 

AJ;t:囲衰榔母奪(長お)

1

(9)

544 

国立銀行法の実施に続き︑

でドイツ・マルクを売ることになるから︑

なる︒つまり

D.

M. 

1 1 .   0 3 6 6

は裁定支持上限である︒他方︑銀行Aがプンデス・バンクから⇔

1 1 1 D . M. 

4 .

  03 

( 支

持上限︶でドルを買い︑これをイングランド銀行にわ

1 1

1

2 . 8 2

(支持下限︶で売れば︑結局A

1 1 1 D . M . 1 1 . 3 6 4 6  

マルクの市場相場はこれ以下に下り得ないわけで︑

D. 

M. 

1 1 .

3

 

6 4 6

は裁

定支持下限である︒このようにして加盟諸国間の支持点︑裁定支持点が決定される︒第

2

表を参照されたい︒

この表で特に興味深いのは国際通貨基金の非加盟国でありかつ金取引の自由が認められているスイスの場合であ

ろう︒スイス・フランの金平価は一九五二年︱二月一七日の連邦通貨法

( F e d

e r a l

C u

r r

e n

c y

  L a

w )

によって︱フラン

40  11

純金63/;310すなわち

0.203226

…グラムと定められているが、これは純金1,80グラム114•920||'フランに当

63 

一九五三年︱二月二三日の国立銀行法

( N a t

i o n a

B l

a n

k   L

a w

)

の第ニ︱条はその銀行券を法定金価格にて金貨

もしくは金塊に兌換すべきことを規定している︒ただし憲法第三九条によって︑戦時もしくは通貨攪乱時には国立

銀行はこの兌換義務が免除され得る︒しかしながら国立銀行はこの義務が除かれたとしても︑同行はいぜんとして

改訂国立銀行法の第二二条の下で︑フランの価値を上述の平価に維持し︑金の売買に際しては︑

F e d e

r a l

C o

u n

c i

l  

h i ,  

よって定められた価格の上下限を遵守すべき義務を負っている︒国立銀行がその銀行券を金に兌換する義務は改訂

一九五四年六月二九日の連邦政府の決定によって廃止された︒同じ決定により連邦政府

は国立銀行券が法貨たることを宣言し︑国立銀行の金売買に際しては︑

B e

r n

e

受渡し価格が法定平価に見合う価格

から1ーを越えて離れないものでなければならないという義務を課した︒かくして同行の金売買価格の最高限と最

低限は純金一、000グラム当たり4•994.44フランと4"846.82フランまで許容され得るが、実際上はその許容限度

( 5 )  

に達せず、現在の

Berne

受渡し金売渡し価格は4•973.92フラン、買上げ価格は4•869.80フランである。

スイス・フランの対米ドル平価︑支持上限︑支持下限はどのような根拠で決定されているのであろうか︒

(10)

545 

1

オンス=$

3 5

購入手数料一%

+)輸送費十%

4 } 

1

4 

n 5  

$  35.26 — 1  4 

$  3 5 . 2 6 4 ‑

=金

1

オンス

1

オンス=金

3 1 .1 0

グラム

スイス国立銀行の金買上げ価格

1,000

グラム=S

. F r .4 ,  8 6 9 . .  80 

$1=5. F r .  4 .   2 9 5  

まず︑対米ドル平価は︑

ムの両通貨の金平価から⇔

1 1 1 S .

̲ F r . .     0 8 8 8 6 7 1 / 0 . 0   2 3 2 2 6 1 1 S .   F r .   4 .   3 7 2 8

と容易に計算される︒

次に下限の根拠は︑金輸入点であるから︑ニューヨークで財務省から金を購入し︑

Be

rn

e

に運び︑国立銀行に売

り渡す場合を考えればよい︒かくして金輸入点つまりスイスでの支持下限頓

1 1 1 S .   F r .   4 .   2 9 5

が計算されるわけである︒

同様に上限の根拠は︑金輸出点であるから

Be

rn

e

で国立銀行から金を購入し︑

ニューヨークに運び︑財務省に売り渡す場合を考えればよい︒かくして金輸出点つ

まりスイスでの支持上限⇔

1 1 1 S . F r .   4 4 .   5

最後に既に述べたごとく︑

スイスでは金取引が自由であるため為替相場と金相場

は密接な関係がある︒そしてそれはロンドンの金相場が支配的である︒つまりかり

にロンドンのドル表示金相場を一オンス三五

O

八ドルとし︑航空便による輸送費を一オンス0•四ニフランとすれば、スイス国立銀行の金買上げ価格一オンス一五一••四五フラン(S•Fr.4.

8 6 9 8 x   3 1 .  

1)·O八ドルで割れば、⇔

111s•Fr.

から輸送費を引き、三五

4 .   3 0

5

となる︒●のようにしてロンドンの金相場

( 6 )  

から求めた為替相場がスイスの市場為替相場の落ち着き先となるのである︒

次に︑第

2

表の支持点は︑各国によってまちまちで︑英国では上下限とも平価から0・七一四二八%︑ドイツと

日本は上下限とも

0 ・

七五%︑フランスは上限0・七四八ニ︱%︑下限

O ・

0六五%︑イクリアは上下限とも

0.七二%︑スイスは上限一・七六0八%︑下限一・七八三七%である︒基金非加盟国のスイスが基金規定一%の

規制を受けないことは言うまでもないが︑この変動幅は金現送費に基づいて計算されていること前述のとおりであ

1 1

純金

O ・

八八八六七一グラム︑一スイス・フラン

1 1

純金0

・ ニ 0三二二六グラ

(11)

546 

ンドニ円八

0

銭 ︑

ただ固定価格で金を売買する義務のみを負うだけではあるが︑

一 覧

一九五八年以来の米国の国際収支の赤字増大に伴う

スイス国立銀行の金売渡し価格

1 , 0 0 0

グラム=

S .F r .  4 ,  9 7 3 .  9 2  

1オンス=金3 1 .10

グラム

.•.

1

オンス=

S . F r .   1 5 4 .  6 8 8 9  

他方

1

オンス=$

3 5

財務省への 売渡し手数料

ー)輸

61‑43‑4 

3   2 7   0 4

"

 

 

l

41

̲2

 

$ 1  =S.  F r .   4 .  45 

支持点メカニズムと外国為替相場︵木村︶

る︒なお表に掲げなかったが︑

たとえばフィンランド︑

クアドルは一%という最大マージンを適用し︑ギリシアは二分の一%︑

エートは四分の一%と定めている︒支持点の変更は基金規制の一%にとど

一方的に自由に行なうことができ︑さらに︑かつてのカナダの

例に見られたように︑自由変動相場すら許容した基金の態度から推して︑

‑%以上の変動幅の申請をしても反対はされないであろうということであ

( 7 )  

ところで︑米国以外の国の通貨当局は為替相場が支持点に達したとき る ︒

︵時にはそれ以前に︶︑直接︑市場に介入してみずから為替の売買に乗り出 し相場が支持点を越えないようにする義務を負っているが︑米国自身は自己の勘定で市場に介入する義務はなく︑

ドル不安に対して一九六一年に再関された為替安定基金の平衡操作ーーi資金の保有が少なかったので主に先物アウ

トライト取引に向けられたー︑および一九六二年二月連邦準備制度自身が︵ニューヨーク連銀を通じて︶自らの

( 8 )  

勘定で直物市場介入に乗り出してきた︒

さて以上の支持点メカニズム︑すなわち︑平価︑支持点︑裁定平価︑裁定支持点と国内為替相場体系がいかなる 関係にあるかを︑わが国の対米ドル︑対英ポンドの各対顧客直物相場を例にとって見てみよう︒第

3

表はわが国の

一為替銀行の対顧客建値表

(0

pe

ni

ng

) の一部である︒対顧客電信売買相場のマージンは往復で︑米ドル一円︑英ボ メール金利は米ドル四五銭︑英ポンドニ円︑アローワンスは米ドル五銭︑英ボンド一

0

銭 ︑

四 四

(12)

547 

支持点メカニズムと外国為替相場︵木村︶

4

表の市場相場上下限が︑米ドルでは支持上下限︑英ポンドでは裁定支持上下限であり︑また前者が︑基金規定 の一%のマージンより狭い〇・七五%とするのは︑市場相場から決定される米ドル基準電信売買相場に銀行のマー

( 1 0 )  

ジン五

0

銭が計算に含まれることも考慮されているからである︒各種の相場の説明は註に譲られる︒

以上のごと<‑国の為替相場体系は支持点メカニズムの下に組織されており︑また先物相場は自由とはいえ︑適

3

EXCHANGEQUOTATIONS June 3 0 ,   1 9 6 6  

NewYork ( $ 1 )  

T .  T .   &  0/D  S e l l i n g   Acceptance 

T .  T .  Buying 

C r e d i t … S i g h t  Buying  3 0 d / s   1 1  

6 0 d / s   90d/s  1 2 0 d / s   l S O d / s   1 1  

Without C r e d i t … S i g h t   1 1  

London (£1) 

II  II  II 

¥ 

3 6 3 . 0 5  

363.50  3 6 2 . 0 5   3 6 1 .  60  360.20  3 5 8 . 8 5   3 5 7 . 4 5   3 5 6 .  1 0   3 5 4 .  7 5   3 6 1 .  3 0  

苦 1 ,0 1 3 .  1 0  

1 , 0 1 5 . 1 0   1 , 0 1 0 . 3 0   1 , 0 0 8 . 3 0   1,004.10  999.90  995.80  9 9 1 .  60  987.50  1 , 0 0 7 .   s o  

New York on London ( T .  T .  S) $ 2 .  7 9 0 7  June 2 9 ,   1 9 6 6   ( T .  T .  B) $ 2 .  7 9 0 5  

II 

第 4表

米 ド ) レ ・

英ボンド

Acceptance上限

I.  lVI.  F

.規制

T .  T .  & 0/DS. 

市 場 相 場

I.  M. F.

平価(裁定平価)

市 場 相 場 下 限 T .  T .  B .  

II 

I.  M. F.

規制  

Credit••· S i g h t  B .   1 1  

Without C r e d i t  S .   B .   1 1  

Usance B i l l  B. 

¥ 

II 

363.65  363.60  3 6 3 .  2 0   3 6 2 .  7 0   360.00  357.30  356.80  356.40  3 5 6 . 3 5   3 5 6 . 0 5   自 由

¥ 

1 , 0 2 6 .  2 1  

1 , 0 2 4 . 2 1   1 , 0 2 2 . 8 1   1 , 0 0 8 . 0 0   993.29  9 9 1 .  8 9  

9 8 9 . 8 9   989.09  自 由

こと言うまでもない︒ 限界相場を越えない のごとき限界相場が

( 9 )  

算出される︒第

3

のとすれば︑第

4

ワンスを付けないも あるときにはアロー 市場相場が上下限に 定されているから︑ ポンドで八

0

銭と協

の実際の相場がこの 米ドルで三

0

銭︑英 状の有無による差は 払手形買相場で信用

(13)

548 

支 持 点 メ カ ー ー ズ ム と 外 国 為 替 相 湯

︵ 木 村 ︶ 当な金利平価に鞘寄せされる傾向︑当該為替の先行き見込み等の諸要因の影響の下で︑直物相場と密接な関係を有

するのである︒

右のような戦後の外国為替相場制度の特色である支持点メカニズムが前提され︑

その枠内でカバー︑ ヘッジ︑投

機︑各種の裁定という為替取引の形態をとって︑あるいは為替取引となんらかの関係をもつユーロ通貨取引の形態 をとって各種の自生的な国際短期資本移動が行なわれるのである︒基金が国際収支の基礎的不均衡の存在する場合

( 1 1 )   に許容する平価変更の国際収支への効果の分析は為替安定性論の課題であるが︑次稿では支持点メカニズムとの関 係において︑外国為替操作︑言い換えればそれらの形態をとって行なわれる短期資本移動の理論的分析を行ないた

H•E•Evitt:

Ma

nu

al

  of

  Foreign E

xc

ha

ng

e 

( 1 s t

  e d

. ,  

1 93 6

) , 

5t

h 

e d . ,

 

1 96 0

,   pp. 

59

6

ー七一頁︒なお金現送点の計算法は

1

・東京銀行調査部訳︑六八

S .

Ev

el

yn

T  

ho

ma

s:

 T

he

  Ar

it

hm

et

ic

  of

  Foreign

  Ex

ch

an

ge

, 

1 93 4

,   pp. 

62

11

34

に も

見られる︒なお金現送点メカニズムの国際均衡的視点についてほ木村滋︑国際経済学︑第

2

章 で 扱 っ た ︒

0 .   M

or

ge

ns

te

rn

"

In

te

rn

at

io

na

l  F

i na n

c ia l

  Tr

an

sa

ct

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ns

 a

nd

u  B

si

ng

s  C

y cl e

s , 

1 95 9

,   p .  

1 77 ,

1 8  

4 . 

矧堀江薫雄︑国際通貨基金の研究︑一三二頁︒

P .

Ei

.n

zi

g"

AT

gt

bo

ok

  on

  Fo

re

ig

n  E

xc

ha

ng

e,

 1 9

6 6,  

p . 

I O .

な.お強制脱退の例として︑チェコスロバキアがあり︑同国

は 一 九 五 一 一 一 年 六 月

︑ 一 米 ド ル 五

0 クローネの平価を基金と協議せず七・ニ 0 クローネに切り下げた︒理事会はその変更理 由の説明を求めたが︑同国はこれに応じないので同年︱一月四日その資金利用の資格喪失を宣言し︑その後も基金の要求を 拒 否 し た の で

︑ 一 九 五 四 年

︱ 二 月 三 一 日 同 国 を 除 名 し た ︒ 堀 江

︑ 前 掲 書

︑ 一

︱ ︱

︱ ︱

l

頁 ︒

BI

S"

Ei

gh

t

Eu

ro

pe

an

  Ce

nt

ra

l  Banks,1963,  pp. 

27

7

8.

 

矧東京銀行調査部︑欧米における外国為替市場の実態︑三七ー八頁を参照︒なおこれらの点については同行調査部足立禎氏

の 御 教 示 を 受 け た

E i . n

z i g ,

i b i d

. ,  

p .  

4 .  

四 六

(14)

549 

I b i d

.

p p.  

6 ‑ 7 .

伊藤健雄︑外国為替市場辞典︑一五一頁︒

⑨基準平均相場が既に市場相場上下限にあるときは︑それ以上の二

0

銭の読みも︑五銭のアローワンスも付けないのが実際

である︒また実際のインター・バンク建値は一二銭のプローカレッジを考慮して上限は三六二円六七銭︑下限は一一一五七円二七 銭として建値を行なっている︒これらの点は伊藤健雄氏の御教示による︒

⑩わが国の対顧客直物為替相場がどのようにして決定されるかを知るためには次の文献が適当であろう︒

足立禎﹁外国為替の基礎理論︹ 3

︺﹂国際金融︑一九六六年八月一日号︒和田正康︑外国為替業務︑第

3 章︑外国為替相場の

決め方︒伊藤健雄︑外国為替市場辞典︒本稿脱稿後出版された文献として東京銀行調壺部編︑外国為替︑新銀行実務講座第

8

が あ る ︒

ここでは右の諸文献に依拠して本文の第

3

表の見方を説明しておこう︒

一 ︑ 米 ド ル

銀行電信売相場

( T .

T .  

S .  

Ra

te

)

各行は基準銀行電信売相場をそのままかあるいは上下五銭の範囲で加減して対顧客

T.

T.

S .  

Ra

te

を決定する︵通常各行同一となる︶︒では基準銀行電信売相場はいかに決まるか︒甲︵邦︶種為銀︱二行が輪番で その日の当番銀行となり︑プローカーから当日の東京市場の翌営業日渡し︵なければ当日渡し︶のインター・バンク加重平 均相場をとり︑これを算術平均して基準平均相場を算出する︒各為銀は午後五時︵土曜日は同一時︶までに希望する相場の 申し入れを当番銀行に行ない得る︒当番銀行は前後当番銀行と協議して︑この申し入れや︑市況等を考慮して︑基準平均相 場の上下二

0

銭以内で本邦インター・バンク米ドル相場を決定し︑これに銀行のマージン五

0

銭を加えて翌日の基準銀行電

信売相場とする︒各行は当日の午後五時半︵土曜日は同一時半︶までに当番銀行にこの相場を照会しなければならないが︑

修正の必要があると認めれば︑その月の幹事銀行に申し出る︒幹事銀行は前後月幹事銀行と相談し︑二水会を招集して協議

できる︒このようにして基準銀行電信売相場が決まる︒

参着払売為替相場

(0

/D

S e l l

i n g  

Ra

te

)

顧客から

M. T.

の依頼のあったときおよび

De

ma

nd

D ra f

t

の売相場として使用し︑

理窟から言えばメール期間金利分だけ

T . T .

  S .

より安かるべきであるが

T .

T .  

S .  

Ra

te

を適用する慣行となっている︒

輸入手形決済相場

(A

cc

ep

ta

nc

e

Ra

te

)

信用状付きの一覧払輸入手形の決済相場で︑

T .

T .  

S .  

Ra

te

+メール金利四五 銭 ゜

銀行電信買相場

( T .

T .  

Bu

yi

ng

  Ra

te

)

銀行電信売相場から銀行の往復マージン一円を引けばよい︒

支 持 点 メ カ ー ー ズ ム と 外 国 為 替 相 場

︵ 木 村 ︶

四 七

(15)

550 

支 持 点 メ カ ニ ズ ム と 外 国 為 替 相 湯 ︵ 木 村

一覧払手形買相場

( S i g h t B u y i n g

̲   R a t e )

一覧払輸出手形や小切手の買取りに使用する︒信用状付き

( W i t h C r e d i t )

の 場 合

T .

T .  

B .   R a t e

よりメール金利四五銭を引く︒信用状なし

( W i t h o u t C r e d i t ) の 場 合 は さ ら に 一

1 ‑ 0

銭 安 い ︒

ユーザンス・ビル

( U s a n c e B i l l )

信用状付きの 30

d / s ,

60   

d / s ,

  •••

の手形買相場は

S i g h t B u y i n g   W i t h   C r e d i t

の相場に対

しそれぞれユーザンス金利分が安くなっている︒信用状なしのものは取りあえず信用状付き

S i g h t B u y i n g R   a t e を 適 用 し

代金回収後実際のユーザンス金利を別途徴収する︒

二︑英ポンド

英ポンドの基準銀行電信売相場は前日のニューヨーク市場︵休日ならばロンドン市場︶の英ポンド対米ドル相場クロージン

グ仲値に前日の本邦インター・バンク米ドル相場を乗じ︑さらに銀行のマージン一円四

0

銭を加えて求める︒この基準銀行

電信売相場の変更も各行協議の上で行なえること米ドルの場合と同様である︒各行ほ当日の朝八時半以後この相場を当番銀

行に照会する︒各行はこれから銀行電信売相場を建てるに当たって︑上下一 0 銭のアローワンスを加算しても差支えない︒

他の諸相場は︑ポンドのメール金利二円︑一覧払手形買相場で信用状の有無による差八

0

銭を考慮して米ドルの場合に類比

的 に 求 め ら れ る ︒

皿ューロ・ダラーについては︑木村滋﹁ユーロ・ダラー﹂関西大学商学論集︑第一︱巻第五号︑為替安定性論については︑

木村滋︑国際経済学︑第

1 0

を 参 照 さ れ た い

︒ 一 九 六 七 年 一 月 一 日 稿

四 八

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