• 検索結果がありません。

各国における監査報告書の歴史とその意義 (下)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "各国における監査報告書の歴史とその意義 (下)"

Copied!
23
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

各国における監査報告書の歴史とその意義 (下)

その他のタイトル A History of Audit‑Reports in England, Germany and U.S.A.

著者 高柳 龍芳

雑誌名 關西大學商學論集

巻 24

号 1

ページ 57‑78

発行年 1979‑04‑25

URL http://hdl.handle.net/10112/00020949

(2)

(57)57 

[研究ノート]

各国における監査報告書の歴史 とその意義(下)

高 柳 龍

目 次

監査報告書の源流について ( 1 ) 揺箋期における監査報告書 ( 2 )   初期のイギリス監査報告書 ( 3 )   初期のドイツ監査報告書 2  監査報告書の生成について ( 1 )   中期のイギリス監査報告書 ( 2 )   中期のドイツ監査報告書

( 3 )   中期のアメリカ監査報告書(以上前号)

3  監査報告書の発展について ( 1 )   現代のイギリス監査報告書 ( 2 )   現代のドイツ監査報告書

(3) 

現代のアメリカ監査報告書

監査報告書における意見と情報の関係

監 査 報 告 書 の 発 展 に つ い て

(1) 

現代のイギリス監査報告書

19

世紀末から

20

世紀初頭にかけて,イギリスの監査がアメリカに対して大

きな影響を与えるが,その後,アメリカ産業の急激な発展の結果,アメリカ

に独自の監査思想が産みだされる。やがて

1930

年代に入ると,逆にイギリス

の監査はアメリカの影響を受けるようになった。イギリスにおける「会計原

(3)

58(58) 

各国における監査報告書の歴史とその意義(下) (高柳)

則」概念の生成がみられるのは此の頃であるといえよう。とくに第 2次世界 大戦以後の産業近代化を転機として,試査監査が採用され,一般的に「財務 諸表監査」の時代に入ったといわれる,いわゆるレックス対キルザント事件

(Rex v.  Lord Kylsant and Another)

を契機として会計原則の導入がな された。

1942

年にイングランド・ウエールズ勅許会計士協会により発表され た「会計原則の勧告」

(Recommendationon Accounting Principles)

がこ れである。その後,この勧告書が1

948

年になって会社法の中に導入されるこ

(1) 

とになるのである。

イギリスにおいては監査人の権限や義務,監査対象の範囲を始め,監査報 告書の内容等,会計および監査に関する事項はすべてこの会社法によって規 制を受けるのである。これに反して,アメリカでは,政府機関やニューヨー

ク証券取引所の介入は認められるが,会計および監査事項に関する指導と開 発は,殆んど米国公認会計士協会に負うところが大であった。さて, イギリ

スに戻り,

1948

年会社法附則第

9

条に規定された監症報告書の内容を示せば 次の通りである。

1

監査役は自己の監査目的を達成するため,最もよく知り,かつ最も 強い信念を得るために必要な一切の情報と説明とを入手したかどうか。

2  監査役の意見によれば,会社側の説明によって知りえた会社の帳簿に 関する限り,会社が正規の会計暖簿を備え付けていたと隠めうるかどうか,

および監査役が往査しなかった支店から,監査に十分有効な正規の報告書類 を入手したかどうか。

3  (1) 

報告書が取扱っている貸借対照表(包括的損益計算書としてそれ が作成された場合を除く)と損益計算書とが会計帳簿および報告書類と一致 しているかどうか。

(2) 

監査の意見,および彼らが入手し情報から知りえた範囲での知識,

ならびに彼らに与えられた説明によれば, 本法が要請している方法に基い

(1) 桜井弘蔵著会社監査論中央経済社昭和

43

56 8

(4)

各国における監査報告書の歴史とその意義(下) (高柳) (

59)59 

て , 上記の諸勘定が次の事項に関し本法の要請する報告をしているヵヽどう か,および真実かつ適正の状況

(trueand fair view)

を表示しているかど

うか。

( イ

) 貸借対照表についてはその会計年度末の会社の業務の状態,およ び

( 口

) 損益計算書についてはその会計年度の利益もしくは損失,または 場合によっては,上掲の事項に関し本法第 •8 条附則第三部により開示を必 要としない(報告書には掲示しなければならない)一切の非開示事項を除 いて,真実かつ適正な状況を表示しているかどうか。

連結勘定を提出する持株会社の場合には,監査役の意見によれば,連 結勘定が,会社の社員に関係ある限りにおいて会社およびその集合計算に含 まれた子会社の,業務の状態や利益または損失に関する,真実かつ適正の状 況を,本法の規定に基いて正しく作成しているかどうか,または場合によっ ては, 上掲の事項に関し本法第8条附則第三部により開示を必要としない

(報告書には掲示しなければならない)一切の非開示事項を除いて,真実か つ適正な状況を表示しているかどうか。」

以上,イギリス会社法第 9条附則は監査報告書の内容に関し,かなり綿密

な規定を設けている。この四つの法的要件は必ず監査報告書に盛り込まれね

ばならないので,かなり冗長な文言を持つ監査報告書となる。ただし,監査

報告書の形式に関しては法の規定がないために,協会その他の団体によって

その雛型が作成されている。

1948

年会社法に基いてイングランド・ウエール

ズ勅許会計士協会が発表しているパンフレットでは,各種の場合における監

査報告書の雛型を評議会の承認を得て勧告しているが,その内容は,第 9条

附則の定める順序や実際上の用語に厳密に従っており大多数のケースにおい

て使用されている。また,これらに代わる他の代替的な雛型を使用している

場合であっても,意見の順序が相遮したり,用語上多少些細な省略がみられ

るにしても,基本的には上記協会の勧告している雛型に一致しているのであ

(5)

60(60)  各国における監査報告書の歴史とその意義(下) (高柳)

(02)

ここに同協会の監査報告書の雛型を示せば次の通りである。

監査報告書

0 0株 式 会 社 株 主 御 中

私達の知り,かつ信じている限り,私達は監査目的のため必要と謡められ るすべての資料を入手し説明をうけた。私達の意見では,会計帳簿および往 査を省略した支店からの報告書の監査によって判明した限り,当会社は適当 な会計帳簿を記帳している。私達は別記の貸借対照表および損益計算書を監 査したが,それらは会計帳簿および支店の報告書と一致している。

私達の意見では,また入手した資料と説明による限り,上記諸勘定は,会 社法所定の様式により同法に定める事項を表示しており, また貸借対照表 00

0日現在における当所の財政状態を真実かつ適正に表示し,損 益計算書は同日に終る事業年度の損益を真実かつ適正に表示している。

(3) 

月 日

勅 許 会 計 士 何 某 」

この様式によれば,前半は監査概要(わが国における範囲区分)と個別的 意見とからなっており,後半が総合意見,(わが国における意見区分)からな っている。すなわち,イギリス監査報告書の監査の結論部分は次の二つの部 分に分けることができるのである。そのーは,会計帳簿が適切に作成されて いるかどうかについての報告であり,その二は,財務諸表の適正表示につい ての報告である。この前者の会計帳簿が貸借対照表およぴ損益計算書と一致 しているかどうかについての表示は,わが国およぴアメリカにおいてはみら れない特長(イギリス監査の影響を受けたといわれるドイツにおいては,ィ ギリスに類似した形式をもつ)を示すものであるといえよう。これは長い間 帳簿監査の伝統をもつイギリスにおいては,試査を前提とする財務諸表監査 の時代に入ってからも,その名残りとして監査報告書に表現されているもの

(2)近沢弘治 イギリス監査人報告書に関する最近の勧告会計昭和427月号 20

(3) 日下部与市著欧米の会計中央経済社昭和42

49

(6)

各国における監査報告書の歴史とその意義(下) ( 高 柳 ) (

61)61 

. . .  

と思われる。 しかし, 反面において, それまでは「真実かつ正確な状況」

(a  true and correct view)

という文言が使われていたのに対し,同法で は,「真実かつ適正な状況」

(atrue and fair view)

という文言を使用する ようになったのは, アメリカにおける「適正に表示している」

(present fairly)

という文言が, 試査を前提とする財務諸表監査においては世界的に 一般化し, 定着してきたことからの影響によるものと考えられる。 その点 で,この時代のイギリスの監査には,旧時代における帳俺監査的思考から脱 しようとする努力がうかがえるのである。

その後,産業が世界的規模で拡大を続けるに伴い,企業をとりまく利害関 係者も複雑多岐に亘るとともに,大企業といえども破産的危機を迎える段階 に入るのである。その結果,当然に監査人の責任の明確化が求められるよう になり,それに応じて情報提供における社会的要請が強まるのはイギリスに おいても例外ではない。このようにして,監査への社会的要請が生ずるに従 ぃ , イングランド・ウエールズ勅許会計士協会は,監査制度の綿密化を意固 して,「監査意見書」

(Statementson Auditing)

を次つぎに連続して発表 している。これは,

1961

年から

1966

年にかけて各年毎に六項目に亘る意見か ら成り立つものである。この中でとくに,第 5 号(総合計算書における監査 報告書)と第 6号(監査報告書における限定事項)は監壺報告書に関係して おり,この前者は,経済の発展に伴い一般化してきた持株会社と従属会社と の関係について規制を加えたものであって,その内容は従属会社に関する未 監査の計算書または他の監査人により監査された計算書を含む場合の総合計 算書について,持株会社監査役の義務や責任を取り上げたものである。後者 は,監査報告における限定事項(留保制限事項や意見差控え等も含んで)に ついて,限定の要件や限定事項の分析を行うとともに,それを通しての監査 人の責任や監査範囲を明確にしようと試みたものである。

また,このような試みと並んで他方においては,監査報告書の内容に関し

て冗長であり理解しにくいとの批判が生じていたことから,多年に亘って文

(7)

62(62)  各国における監査報告書の歴史とその意義(下) (高柳)

(4) 

言の短縮と用語の単純化への努力が払われてきている。その結果, 1967年会 社法では,監査報告書に記載すべき事項に関し一定の事項については,監査 役が満足しえた場合にその事項を記載しなくともよいという,監査報告書記 載内容に関する省略化への傾向が現われている。 1967年会社法第14条第4 によると,

(1)会社によって適切な会計恢簿が作成され,かつ往査しなかった支店から 監査上適切で十分な報告書が入手されたかどうか。

(2)会社の貸借対照表および損益計算書が会計帳簿およぴ支店の報告書と一 致しているかどうかについて,その調査の結果,監査人の意見によれば,こ れらの事項が充足されていないと認められる場合,または,自己の知り.か つ信ずる限りにおいて,監査上必要なすべての情報と説明を入手しえなかっ た場合には,当該留保事項を監査報告書に記載しなければならない。」ので ある。

以上のような,同法の監査報告書に関する純化の下で,

イ ン グ ラ ン ド ・ ウ

エールズ勅許会計士協会は次のような雛型の監査報告書を推奨している。

監査報告書

X

株式会社株主御中

私達の意見では,この年次報告書の何頁から何頁までに記載されている財 務諸表は,一年一月一日現在における当会社の財務状態およぴ,同日に終る 事業年度の利益(または損失)を真実かつ適正に表示しており.かつ, 1948 年およぴ1967年会社法に適合している。

会計事務所名

住所職業的資格一—-

一年一月一日

(4)近 沢 弘 治 同 文 17

」 f 5 )

The  Auditors'Report under the  Companies  Act,  1948,  by Sir  Russell  Kettle,  p. 

1 .  

(5)  日下部与市訳海外の会計と監査実務中央経済社昭和47 72

(8)

各国における監査報告書の歴史とその意義(下) (高柳) 63)63  この監査報告書は,極めて単純な形式をもつものであって,わが国を始め 多くの国のそれと異なって,範囲区分を要求していない点に大きな特長があ るといえよう。法により監査の対象が定まっており,採用すべき監査手続に 関し,一定の規範が存在している限りは限定事項のない場合であれば,この ように意見区分のみで構成される監査報告書の姿こそが,簡明にして理解し やすい理想形態であるといえよう。

(2)  現代のドイツ監査報告書

ドイツにおいては, 1861年 の 普 通 ド イ ツ 商 法 典 (AllgemeineDeutsche  Handelsgesetzbuch)いわゆる旧商法 (alteHGB) において初めて監査役

という役臓が定められたが,この監査役に対する各界よりの批判がたえず繰 り返えされてきた。それによれば,ーには監査役が実態上は取締役の上位に 立って経営指揮を行ったこと,二には監査役には会計上の専門的知識を有し ていないということの二つの理由から,専門の監査人に株式会社の監査を行 わしめる必要があったということである。そのため,ょうやく, 1931年株式 法に至って監査役監査とは別個に,専門監査人による法定監査制度が導入さ れることになるのである。したがって, ドイツにおいては,この株式法発令 以来,現在に至るまで,監査役監査と決算監査士の両者による法定監査が並 行して存在することとなるのである。この点,わが国の商法監査に類似して いるといえるであろう。

この株式法では, 決算監査士による強制監査が初めて導入されるととも に,監査報告書に関しても,その中に記載すべき内容が指示されることとな った。

「監査の終局的な結果について,重要な除外事項のない場合には,貸借対 照表監査士は,報告書によってその旨を確認しなければならない。監査報告 書には,会社の帳簿と書類ならびに取締役より入手した情報を基にして,義 務に従った監査の結果,記帳処理,年度決算書および営業報告書が法律規定

と一致しているかどうかを記載しなければならない。」

(9)

64(64) 

各国における監査報告書の歴史とその意義(下) ( 高 柳 )

この株式法の規定は監究報告に記載すべき内容につき規制を加えたもので あったが;とくに報告書の形式についての強制は存在していなかった。当時 は,すでに現存の会計監査士協会

(Institutder Wirtschaftsprlifer; Idw) 

が誕生しており,このような職業団体がこの時期にはいち早く形式的統一化 を計っており,実践に向けて監査報告書の雛型を発表していたため,敢えて 法による形式の統一化を規制する必要もなく,また,企業の事情によって種 々の形態を採ることがありうることを立法機関が考慮したことから,法によ る形式統一化が見送られたのである。

その後

1933

年に入り, ドイツの会計監査士協会は,上記株式法の主旨に のっとって,次のような形式の監査報告書を発表している。

「会社の帳簿と書類および取締役より与えられた情報を基にして,私(私 達)が義務に従って監査をした終局的結果,記帳処理・年度決算書およぴ営 業報告書中年度決算書を説明している部分は法律規定に適合している」

この文言は会計監査士協会専門委員会の説甲によれば,任意監査による監 査報告書のうち,もっとも根強く実践化し,完成されてきた形態を示すもの であって,すでに

1910

年代において発見され,以後一つの慣行となっている

(6) 

と主張している。

このドイツの監査報告書の特長としていえることは,わが国およびイギリ ス・アメリカにおける考え方と異なり,監査報告書は監査人の監査結果に対 する単なる主観的な意見表明を行う手段なのではなくて,むしろ,会計報告 に関する原則準拠性および合法性の遵守についての証甲の手段であるという 点である。したがって, ドイツの監査報告書の付加文言の中には,各国にお いて慣習とされている「私の意見によれば」

(inmy ((our))  opinion)

とい う言葉が見出されず,むしろ,積極的にその使用を避けており,この慣行は 現在に至るまで続いている。アメリカにおいては,監査人の達した結論は,

本質的にいって事実の問題

Mattersof  Fact

であるよりはむしろ意見の問

(6) Karoli,  Bilanzpriifung und Priifungsergebnis 1934,  S.  92. 

(10)

各国における監査報告書の歴史とその意義(下) ( 高 柳 ) (

65)61> 

Mattersof Opinion

であるとされているが, ドイツにおいては, 法律 に規定されている事実の存否,ないしは存在する事実の適法性への確認の証 明

Bescheinigung

としての性格が強く,監査人の達した結論には,意見の 問題であるとするよりはむしろ事実の問題であるとする考え方の方が強く支 配しているように思える。

上記の会計監査士協会の監査報告書雛型発表に先き立つ

1931

年に,同協会 の機関誌「会計監査士」

(Wirtschaftspriifer‑WP)

編集部が推奨した監査 報告書の雛型の中に,「私のえた確信~によれば」という言

(7) 

葉が使用きれたが, この雛型は普及しなかったといわれている。 この「確 信」という言葉はイギリスやアメリカにおいて一般的な慣行となっている,

主観的な確信(通常監査意見

Opinion

と呼ばれているもの)という表現に ならったものであるが,このような表現は監査報告書の中になお異議事項が 隠されて存在しているのではないかとの誤解を読者に与えるため,敢えて使

(8) 

用すべきではない,とカロリーは批判している。

また,この点に廃して,イギリスにおいて慣習となっている

nachmeiner  Erachtens,  nach meiner O"berzeugung,  nach sorgfiiltiger Priifungな

どの付加文を付してあえてその主観的性格を強調する必要はなく,このよう な文言は却って監査報告書の内容に他意があり,決算監査士がその責任を回 避しているような印象を与え,ひいては監査報告書の証明能力を疎外するも のであり,このような付加文をもってしても決算監査士の責任を制限しうる ものではない,といった論調もうかがえ,一貫してドイツでは,主観的判断

(9) 

であることを示すような文言を付さないのが習慣である。しかしながら,法 定監査導入の当初に会計監査士協会や諸論者が主張したような監査報告書を 一種の確認証明書とみなす考え方は,その後において後退しており,むしろ

(7) Ammerkung I,  WP. 1932, S.  270.  (8) Karoli,  a. a. 0.  S.  91. 

(9) Adler.  Di.iring.  Schmaltz,  Rechnungslegung  und  Pri.ifung  der  Aktien gesellschaft, Aufl, 1948, S.  625. 

(11)

66(66) 

各国における監査報告書の歴史とその意義(下) (高柳)

現在では,監査報告書は当然に主観的な性格をもつものであることを前提に して論議が進められており,ここにもアメリカの監査思想の影蓉を垣間みる ことができる。すなわち,今日では,このような「私の意見によれば」とい ったような主観的な表現をあえて強調的に使用しなくとも,監査報告書には 当然に意見の問題が取り扱われているのであるという考え方が一致して支持

(10) 

されているようにみえる。

1931

年株式法改正に基いて法定監査が部分的に実施され,それに応じて監 査報告書についての規定も採り入れられたのであるが,その後の形式監査と 実質監査についての論争,監査報告書に関する形式的統一化の問題など,監 査に向けられた関心が高まるとともに,

1937

年株式法の改正に当って,専門 監査人による法定監査制度が全面的に確立し, 実施されるに至った。 しか し,監査報告書に関する規定では,記載要件については全く旧法と同じであ りとくに目立った変化はない。その後,

1965

年株式法(硯行法)の施行に当 って,初めて監査報告書に記載すべき文言につき規定されるようになるまで は,その形式は前掲の協会による

1933

年発表の雛型が慣行として普及し,そ れ以外の形式は殆んど姿を消すに至っている。

しかし,その間における法定監査制度施行の経験は,長い間の検討を加え ながら,さらに簡潔な形態を持つ監査報告書の完成を目指してきた。経済界 をはじめ,一般公共も監査報告書の機能とその意義を十分認識するようにな ってきたため,

1965

年株式法においては,同法第

167

条 第

1

項に次のような 監査報告書に関する規定をおいた。

「監査の終局的結果により除外事項を生ずべき点がないときは,決算監査 士は年度決算書に対するつぎの付記によって,これを確認しなければならな

し ゜

記帳処理・年度決算書および営業報告書は,私(私達)の義務に従った監 査によれば,法律および定款に適合している。」

(10)  Adler.  Dilring.  Schmaltz,  Rechnungslegung  und  Prilfung  der  Aktien gesellschaft,  3 Aufl,  1957. 

(12)

各国における監査報告書の歴史とその意義(下) ( 高 柳 ) (

67)67 

同法施行以前の監査報告書の規定は法的要件さえその内容に含めていれば 十分である,とするものでその形式を問うものではなかったが,その後にお ける会計監査士協会の指導など監査報告書の発展と普及の結果,一定の形態 を採ることが慣行となった。しかし同法の施行により,さらにその内容を整 備することで,より簡潔な形式を使用することとなったのである。したがっ て,その後の監査実践においては,除外事項の発生しない場合には,法に定 められた「記帳処理・年度決算書および営業報告書は,私の義務に従った監 査によれば,法律および定款に適合している」という文言のみの監査報告書 が作成されることになったのである。

この規定の中における, 重要な変更の一つは, 「会社の帳簿と書類およぴ 取締役より与えられた情報に基いて」という文言が省かれたことである。取 締役が監査人に対し,帳簿と書類および情報を提供する義務は,すでに他の 規定において取締役の法的義務として定められているところであり,またこ の取締役の被監査責任は決算監査における大前提として当然のことなのであ るから,さらに監査報告書の中にこの種の文言を採り入れる必要はないと解 釈されたのである。この省略された文言の部分は,いわゆる範囲区分に属す るものであり, この部分を極度に簡略化し, 「私の義務に従った監査によれ ば」という一行の文言の中に範囲区分を集約したものであると考えられる。

その後,時を経ずして,範囲区分を完全に取り払って,監査報告書の内容 を意見区分のみに限定して作成すべきことを推進したのが,すでに述べたイ ギリスの監査報告書である。 このように, ドイツとイギリスの監査報告書 は,他の国に先がけて,無限定の場合における監査報告の簡素化を成しとげ たものといえるであろう。ただ, イギリスの監査報告書と比較するならば,.

第一点で「私の意見によれば」, さらに第二点で「真実かつ適正な表示」と いう文言がドイツの監査報告書の文言には見当らないところである。いうな らば,すでに述べたような主観的な表現を敢えて述べる必要がないというド イツ合理主義の影響,および「適正表示」の意義は「法律に適合している」

という表現の中にすでに盛り込まれているとする,法律至上主義の考え方が

(13)

68(68)  各国における監査報告書の歴史とその意義(下)、(高柳)

ドイツの場合にはみうけられるということである。その点において,わが国 および英米の監査思想との差異を読みとることができるであろう。

(3)  現代のアメリカ監査報告書

すでに述べたように, 1920年代後半は証券プームの時代に入り,それまで の信用目的による監査が一般投資家向けの監査に移行するようになった。し かし, 1929年には,大恐慌による会社倒産が続出し,証券価額の暴落によっ て多数の一般投資家が莫大な損害を蒙るのである。この恐慌の本質的原因は 生産過剰,物価の下落,購買力の減退によるものではあるが,さらに,これ に拍車をかけたものとして,このような経済事情の正確な反映を示すべき会 社の決算報告制度の不備,これに対する投資家の無知や無理解ならびに監査 人の責任の不明確さなどであったことが問われるであろう。とくに,このよ うな事情を立証する事件として, 1931年のウルトラマーレス事件および1932 年のクロイゲル事件が挙げられる。第三者に対する監査人の責任が初めて取

り上げられた事件であり,投資家保護に襲する法定監査の導火線となった重 要な事件でもある。

この結果,会計士側においては,債権者のみならず投資家を含む利害関係 者に対する責任を認識する動機となり,監査報告書についても検討を加えざ るをえなくなった。イギリスの監査報告書の影響から抜けでて,アメリカ独 自の監査報告書形態が確立する切掛を作った事件といえる。すなわち,監査 報告書は事実の証明書ではなく,監査人自身の意見の表明の場所であって,

監査人に過大な責任を負わせるような証明書としての役割を取り除き,意見 表弔書としての性格を強調せしめる方向が打ち出されるようになった。

さて,大恐慌による会社の倒産,不正経理の暴露,株価の暴落により,投 資家保護の必要性が生じ,証券市場を通じて証券を発行する会社の財政状態 や経営成績を正確に表示せしめることが緊急事となって, AIAやニューヨ

ーク証券取引所は決算報告制度や監査制度の研究調査に着手した。 1933年に ニューヨーク証券取引所が上場会社に対する財務諸表監査を要求したのが発

(14)

各国における監査報告書の歴史とその意義(下) ( 高 柳 ) (

69)69 

端となって各地の取引所がこれに倣いやがて,ニューディール政策の一環

として,

1933

5

月に「連邦有価証券法」

(FederalSecurities Act of 1933) 

およぴ1

934

年 6月に「連邦証券取引所法」

(FederalSecurities and Exchange  Act of 1934)

が発布され, この法律の管掌機関として「証券取引委員会」

(The Securities and Exchange Commission ; SEC)

が設立されて, 有 価証券発行会社に対する財務諸表などの届出書類に関する提出義務を定め た 。 この財務諸表には公認会計士による監査証明書が添付されることとな

り,ここに初めてアメリカの法定監査制度が創始されたのである。

他方,

AIA

およびニューヨーク証券取引所は共同研究の成果として,

1934

1

月に「会社会計の監査」

(Auditsof  Corporate Accounts)

を発表 したが,その中で監査報告書の雛型を公表している。それは次のようなもの である。

「私達は

XYZ

会社の

1933

年1

2

月3

1

日現在の貸借対照表および当該年度の 損益・剰余金計算書を検査した。これに関連して,私達は会社の会計記録,

基礎となったその他の証拠の検査もしくは試査を行い,また会社の役員や従 業員から情報を入手しかつ説明を求めた。さらに会計方法や当該年度の損益 諸勘定につき全般的な検閲を行ったが,私達は取引についての精査は行わな かった。

私達の意見によれば, 検査の結果, 添付されている貸借対照表および損 益・剰余金計算は当該年度中継続的に遵守していると恩められた会計原則に 準拠して,

1933

年1

2

月3

1

日現在における会社の状態および当該年度の経営成

(11) 

績を適正に表示

(fairlypresent)

している。」

この監査報告書の性格については「財務諸表の検証」のそれと比較すると 次のような差異が腿められる。まず第一に,範囲区分の中で,対象となるべ き財務諸表を明示することにより,監査の性格が財務諸表監査にあることを 認識せしめたこと,また,試査による検査であって精査でないことを示す文

(11)  Howard F. Stettler,  Auditing PrincJples, 1956, p. 574. 

(15)

70(70)  各国における監査報告書の歴史とその意義(下) (高柳)

言を入れることにより利害閲係者の判断を助け,監査人の責任の限界を明確 にした点で重要である。第二に,意見区分において会計原則への継続的準拠 性を記載せしめるとともに,さらに「証明する」という文言の代りに「適正 に表示している」という文言が使用された点で重要な変化がみられる。永年 使用されてきた「証明する」という文言が省かれ「適正に表示している」と いう文言に代わることによって, 監査報告書は, ここに証明書形式から,

財務諸表の適正表示に関して意見を述べる報告書形式へと移行したのであ (012)

また, AIA この共同研究の中で, 報告書様式につき留意すべき事項 として,会計原則や継続性について触れるとともに, 「限定事項」や「留意 事項」もしくは「補足的説明事項」などの諸概念の導入を試みてはいるが,

具体的な原則遮反の問題や,これら諸概念の意義と記載方法などについては 明確にするまでには至っていない。

しかし,やがてアメリカの監査史上,監査甚準や監査手続を標準化してい かねばならぬ転機が訪れる。それは,監査史上最大の事件といわれているマ ッケソン・ロビンス会社事件 (Mckesson & Robbins,  Inc.  Case)であ る。ニューヨーク証券取引所の上場会社であるこの薬品販売会社は巨額の粉 飾を行い,しかも,これに対しては有名なプライス・ウォーターハウス会計事 務所が監査を担当しながら, 1938年末に至るまで14年間に亘ってその粉飾決 算が発覚しなかった事件である。当社の行った粉飾は架空資産のうち殆んど が棚卸資産と受取勘定であって,永年に亘り操作されてきた決算を監査によ っても発見できなかったことから,監査手続そのものに重大な欠陥がひそん でいることが立証されたのである。 その結果, AIA19395月に「監査 手続の拡張」 (Extensionsof Auditing Procedure)という小冊子を発表す ることにより, 「棚卸資産の立合」および「受取勘定の確認」が一般に認め られた監査手続として,それが金額的に重要であり, しかも実施可能にして

(12)高田駒次郎著近代監査報告書論中央経済社昭和50

54 56

(16)

各国における監査報告書の歴史とその意義(下) (高柳) (

71)71 

合理的である限り省略を許されないものとなったのである。

この小冊子は

1941

2

月に修正を経て監査手続書の第

1

号として指定され た。監査手続委員会はそれに引き続き, 次つぎと後続する監査手続書によ って, 監査に関する特定問題についての見解を表明するようになる。同手 続書の中に「短文式による独立公認会計士報告書

(Report)

または意見書

(Opinion)

」という題名の下に監査報告書の雛型が示された。

1934

年の「会 社会計の監査」と比較してこの監査報告書の特長とするところは,まず第一 に,「会社会計の監在」において示された表題の「報告書または証明書」と なっていたものが, 「報告書または意見書」と改められて, 監査報告書が意 見の表明書であることを一層明確に打ち出したことである。第二に,マッケ

ソン・ロビンス事件の教訓に基いて内部統制組織および会計手続

(the.sys tern of  internal control and the accounting procedure)

を検査した旨の 記載を強制するとともに, 「会社の役員および従業員から情報を入手しかつ 説明を求めた」という表硯を,監査手続上当然に実施すべきものであるとの 理由から削除したことである。 なお, 「私達が適当と認めた方法と範囲に亘 って検査した」旨の文言が付加されたことにより,適用した監査手続につい ての監査人の責任範囲を明確にしている。第三に,意見区分において「当該 年度中継続的に違守している」とあった部分をさらに明確にする意図をもっ て「前年度と同一の基準に基いて」

(ona basis  consistent with that of  the preceding year)

と改めることにより, 前年度との会計原則適用の継

(13) 

続性の重要なことが強調されている。

この手続書は「一般に認められた監査手続」の確立を目指した点で監査史 上注目すべき特長をもつものであるが,さらに同手続書は,一般に認められ た監査手続が実施不可能であるか実施することが合理的でない場合には,意 見の表明を差控えるという考え方を打ち出している。それまでは,監査人が 監査した事項と監査しなかった事項とを記載すれば十分とされ,意見差控に

(13)

高田駒次郎著同書

57 60

頁 。

(17)

72(72) 

各国における監査報告書の歴史とその意義(下) ( 高 柳 )

ついては関心を持たれていなかった点を改良して,監査人の負うべき監査手

(14) 

続上の責任範囲を一層明確に示したものといえよう。

一方,

SEC

はマッケソン・ロビンス会社事件の教訓に基いて監査報告書 の改良を図り,

1940

12

月に「会計連続通牒第

19

号 」

(AccountingSeries  Release,  No.  19.

)を発表して見解を表明した。 この

SEC

の第

19

号の要 望を基にして翌年の

1941

2

月に,

AIA

は監査手続書第

5

号「 会計士証明 書、に関する改正証券取引所法」を発表し,新しい監査報告書の標準様式を 明示した。この監査報告書の内容は

SEC

の要求を入れてかなり長文化した ものであるが,その特長とするところは,まず範囲区分において「私達の意 見によれば,私達の検査は当該事清の下において適用できる一般に認められ た監査基準に準拠して実施され,かつ私達が必要と認めたすべての手続を含 んでいる」という一節が追加されたことである。この中の「一般に認められ た監査基準」については,当時必ずしも明確な内容をもったものとはいえな かったのであるが,前述の

SEC

の連続通課第

19

号による要請を受けた

AIA

がその監査報告書の中に引用して採り入れた文言である。

さて,上記の監査手続書第 5 号によって, 「一般に認められた監査基準に 準拠して」という文言が監査報告書に使用されることとなったが,その内容 については必ずしも明確ではなかったのであるが, その後,

1947

10

月に

「監査基準試案—一般に駆められた意義と範囲」が発表され,監査の一般 基準,実施基準および報告基準を整備体系化されるに至ったのである。さら に ,

1949

年には,監査手続書第

23

号において,それまで会計原則準拠性遮反 によって意見表明が無意味となる場合と,監査手続の省略によって意見が述 べられなくなる場合とが混同していた点を改正して, 「意見差控の場合にお ける会計士報告書の明確化」を図っている。

このように,監査報告書に関する基本原則が「監査基準試案」に規定され たことに続いて,

1948

10

月に監査手続書第

24

号「短文式監査報告書または

( 1 4 )  

AIA; Statements on Auditing Procedure, No. l (The Journal of  Accoun tancy,  Dec., 1939; pp. 380) 

(18)

各国における監査報告書の歴史とその意義(下) ( 高 柳 ) (

73)73 

証明書の修正」(

Revisionin Short~Form Accountant's Report or Certi―  ficate)

が発表され次のような監査報告書の雛型が示された。

「私達は

19

一年

12

31

日現在の

X

会社貸借対照表および当該事業年度の損 益計算書と剰余金計算書を検査した。私の検査は一般に恩められた会計原則 に準拠して実施され,したがって私達が当該事情のもとで必要であると考え た会計記録の試査およびその他の監査手続を含んでいる。

私達の意見によれば,添付された貸借対照表および損益計算書,剰余金計 算書は前年度と継続した基準に基づき採用された,一般に腿められた会計原 則に準拠しており,

X

会社の

19

一年

12

31

日現在の財政状態および当該年度

(15) 

の経営成績を適正に表示している」

この監査報告書様式の特長の第一は,内部統制組織の調査に開する字句を 削除したことである。これは監査が監査基準に準拠して実施されるのである から,内部統制組織の検討は当然その中に含まれているので,敢えて監査報 告書において明言する必要はないとの理由からであった。また,特長の第二 は,精査を省略した旨の記載が削除されたことである。すでに,財務諸表監 査にあたっては,試査監査が一般的慣行となってきており,利害開係者への 教育的目的も十分達成されたこと,監査基準の出硯によってそのような記載 が意味を持たなくなったという理由からである。

その後,この監査手続書はさらに,限定意見と反対意見およぴ意見差控,

あるいはそれらの継続性との関係,後発事項の問題などに対する

AIA

見解 を展開し発表するのであるが,

1971

11

月に公表された同手続書第

50

号は,

「財政状態変動表に関する報告」

(ReportingChanges in Financial Posi tion)

である。 ここに至って財政状態に関する期間的変動を集約した表,す なわち財政状態変動表が基本財務諸表の一部として提出されることを企業に

(16) 

対して義務づけたのである。その後,

1974

10

月に監査基準書第

2

号によっ

( 1 5 )  

AIA; Statements on Auditing Procedure, No. 24 (The Journal of Accoun tancy,  Nov., 1948, p. 390) 

(16)高田駒次郎藩同書 81

(19)

74(74) 

各国における監査報告書の歴史とその意義(下) ( 高 柳 )

て公表された監査報告書においては,監査対象となる財務諸表の中に,財政 状態変動表を明示することが規定されており,現行標準様式に到達したので ある。

監 査 報 告 書 に お け る 意 見 と 情 報 の 関 係

監査報告書は,は,監査の結果として,財務諸表に対する監査人の意見を 表明する手段であると同時に,監査人が自己の意見に関する責任を正式に駆 める手段であるといわれる。いいかえれば,企業財務諸表の適正性を批判的 に検討した結論が記載されたものであって,監査の開始から終了に至るまで の監査人の行為ならぴに判断の集約を示した文書である。

近年,監査報告書の本質をめぐって,「意見報告書」であるのか, それと も「情報報告書」であるのかが論争されたことがある。一般論としては,監 査報告書に記載されたもののうち,意見表明の部分が「監査意見」に属する ものであり,範囲区分の記載事項,補足的説明事項および付記事項等が「情

(1) 

報」提供に属するものであるとされ,この情報は監査意見を補足補充するも

(2) 

のであると考えられる。この観点は,監査上の責任という立場に立つ,監査 人側から見た監査報告書の性格を説明するものといえるだろう。このような 見解に立てば,監査報告書の本質は意見報告書であって,情報提供は一種の サービスとして記載されるところの,二義的な意味を持っにすぎないように 思える。

しかしながら,他方,財務諸表の利用者側に立って見るならば,これらの 人びとが甜務諸表を利用する時点の遅れや,財務諸表の公開事項に対する,

より理解し易い内容を知りたいという要望が生じてくる。このような立場に たって考えるならば,より適切な情報を社会に供給すぺき責務を監査人もま

( 1 ) 黒沢清著監査基準の解説森山書店

50

頁 。

(2) 

日下部与市著新会計監査詳説 中央経済社

357

頁 。

(20)

各国における監査報告書の歴史とその意義(下) ( 高 柳 ) (

75)75 

た負うことになろう。とくに,決算日以降の会社状況における事情変化を補 足的説明事項(あるいは後発事項)として監査報告書に記載することが,社 会的要請の結果としてその地歩を占めるようになったのは,外部の利害関係 者を保護すべき任務を保有する監査の必然的帰結である。

このように,監査報告書が社会一般に対して情報提供の機能を持つことは 当然としても,これに対する監査人の責任に関しては,必ずしもわが国の場 合明確であるとはいい難い。旧監査基準の「監査基準の設定について」の中 において,「監査報告書は, 監査の結果として, 財務諸表に対する監査人の 意見を表明する手段であるとともに,監査人が自己の意見に関する責任を正 式に隠める手段である」と述べている。すでに述べたように,ここでいう意 見には情報を含めるものではないとの解釈に立つならば,監査人は自己の表 明した意見に対して責任をとるのであるから,逆にいえば,意見ではない部 分,すなわち,情報の提供については単なるサービスにすぎないのであるか ら , これに対しては監査人は責任をとらなくてもよいと旧監査基準は述ペ ているようにみえる。 もしこのように解釈し, 補足的説明の部分は情報に 属するものであって,意見に含まれるものではないと考えるならば,この場 合の監査人の,情報提供に関する責任はどう問われるのであろうか。しかし ながら,繰り返すが「監査のもつ近代的意義という立場にたてば,社会的要 請として,補足的説明事項をも監査報告書に記載し,読者をして,財務諸表

(3) 

への誤解を防ぐことが,監査人に課された副次的職務」であることを認識し なければならない。

そこで,も一度ここに,財務諸表の利用者側に立って考えるならば,情報 提供に関する要求はまず第一に財務諸表を作成した企業に対して向けられよ う。したがって,財政状態および経営成績を財務諸表において適正に開示し なければならない第一次責任は企業の側に発生する。つぎに, これをうけ て,監査人は当該財務諸表の適正表示に関する意見を表明するものであるか

(3)

森実監査報告書における補足的説明事項について 香川大学研究年報

92

参照

関連したドキュメント

【現状と課題】

さらに, 会計監査人が独立の立場を保持し, かつ, 適正な監査を実施してい るかを監視及び検証するとともに,

地球温暖化対策報告書制度 における 再エネ利用評価

「今後の見通し」として定義する報告が含まれております。それらの報告はこ

H23.12.2 プレス「福島原子力事故調査報告書(中間報告書)」にて衝 撃音は 4 号機の爆発によるものと判断している。2 号機の S/C

高村 ゆかり 名古屋大学大学院環境学研究科 教授 寺島 紘士 笹川平和財団 海洋政策研究所長 西本 健太郎 東北大学大学院法学研究科 准教授 三浦 大介 神奈川大学 法学部長.

日本 The Parties shall pursue limitation or reduction of emissions of greenhouse gases not controlled by the Montreal Protocol from aviation and marine bunker fuels, working

海外では、IUCNによるLME(Large Marine Ecosystem/大規模海洋生態系)、UNE PのGIWA(Global International Waters Assessment)、WWFの Marine Ecoregions