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日本語初級教科書 におけ る 働 きか け表現初 出

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日本語初級教科書 におけ る 働 きか け表現初 出

丸 山 敬 介

1.は じ め に

筆者 は,昭 和62年 度 文 化 庁 日本 語 教 育 研 究 委 嘱 「日本語 教 育 機 関 に お け る コ ー ス デ ザ イ ンの 方 法 とコ ー ス運 営 上 の教 師 集 団 の 役 割 の分 担 に 関 す る調 査 研 究 」(日 本 語 教 育 学 会)の 分担 研 究 に お い て,日 本 語 初 級 教 科 書 本文 会 話 を 二 つ の タイ プ に分 け,い くつ か の 考 察 を試 み た 。 そ の2タ イ プ と は,ま ず,構 造 シ ラバ ス に の っ と り日本 語 の 構 造 的 知 識 の提 供 を 第 一義 的 に考 え る タ イ プで あ る。 こ う した 本 文会 話 は発 話 の場 所 や 状 況 が 特 定 しに く く,あ た か もあ るで き ご と ・状 況 を 尋 問 ・叙 述す る よ うに展 開 し て い く。 こ う した教 科 書 本 文 を分 担 研 究 で は 「叙 述 型 」 と名付 け た。 また 別 の一 方 は, 構 造 シ ラバ ス に の っ と って は い る もの のそ の項 目の 機 能 性 を も意 識 し,し たが っ て, 発 話 の 場 所 や 状 況 が特 定 で き表 現 意 図 も明 確 で 多 様 な 教 科 書 本 文 の タイ プ で あ る。 分 担研 究 で は この よ うな教 科 書 本文 を 「 非 叙 述 型 」 と した 。 こ う して分 類 してみ る と, 次 の よ う な こ とが 明 らか にな った1)。

・調 査 対 象 とな った 教 科 書 は大 まか に ど ち らか の タ イ プ に分 類 さ れ るが,い ず れ も 両 タ イ プの 混 合 形 で あ る とい え る。

・一 般 的 に は,課 が進むに したが って,非 叙述型発話が増えて くる。

・新 出 項 目 は叙 述 型 発 話 で ,既 出項 目は非叙述型発話 によって再提 出される。

・叙 述 型 本 文 の 発 話 は 実 生 活 で は あ る程 度 の不 自然 さ は拭 え ない もの の ,そ の分, 応 用 が 利 く。 非 叙 述 型 本 文 の発 話 は あ る場 面 で は極 めて 自然 で わ か りや す い もの の,そ れ 以 外 の場 面 で は 応 用 しに くい こ とが あ る。

以 上 の 考 察 は今 日の 日本 語 初 級教 材 の持 つ 側 面 の一 端 を示 した もの で あ るが,さ ら

(2)

2日 本 語 初級 教 科 書 にお け る働 きか け表現 初 出 に深 い検 討 は行 って い な い 。

そ こで 本 論 は,各 々 の教 科書 の叙 述 性 ・非 叙 述 性 の 一 つ の 大 きな分 岐 点 と して,聞 き手 に対 す る働 きか けの 初 出 が教 科 書 の ど の当 た りで どの よ うな 形で な され る のか を 分 析 し,も っ て今 日ま で 用 い られ て きた 日本 語 初 級教 科書 が い か な る特 徴 をそ な え て い る のか を明 らか に して み よ う とす る もの で あ る。 な お,採 取 した サ ンプ ル の表 記 に つ い て は筆 者 が 改 め た もの が あ る。

2.調 査 の 方 法

初 級 教 科 書 を叙 述 型 ・非 叙述 型 で 分 類 す る と,叙 述 型 本文 は た とえ ぼ次 の よ う な形 で 展 開す る。

ジ ョ ンさ んは 今 何 を して い ます か 。

ジ ョ ンさ んは 今 し ょ くど うで し ょ くじを して い ま す。

ラ タ ナー さん は 今 何 を して い ます か 。

ラ タ ナー さん は へ や で タ イ プ ラ イ ター を う って い ま す。

チ ンさん は 今 何 を して い ます か 。 チ ンさん は シ ャ ワー を あ び てい ます 。

国際 文 流 基 金(1987)『 日本 語 初 歩 』 第16課PP・127〜128 以 上 は,こ の 単 元 の 主 要 指導 項 目で あ るrて い る」表 現 に よる,問 答 形 式 で 本 文 会 話 が 進 行 して い る 。 こ う した 本 文 会 話 で は,「 〜 てい る」 表 現 の 文法 的意 味 す なわ ち 「動 作 の 継 続 」 が極 め て鮮 明 に 出て い る と思 わ れ るが,そ の分,場 面 ・状 況,発 話 者 な どが 特 定 しに く く した が っ て各 発 話 の発 話 意 図 も特定 しに くい。 あ えて 特 定 す る な らば,ほ とん どあ らゆ る発 話 が 根 本 的 に持 って い る と考 え られ る 「 情 報 の授 ・受 」 とさ れ よ う。 日本語 の構 造 的知 識 の提 供 を 第 一 義 的 に 考 え る叙 述 型 で は,そ う した 機 能 属 性 の 欠 如 は 当 然 の こ と と考 え られ る。 しか しな が ら,'80年 代 中頃 か ら急 激 な 学 習 者 の 増 加 を見 た今 日の 日本 語 教 育 で は,意 思 の 疎 通 を 第一 義 的 な もの と し,そ こで は,叙 述 型 の よ うに表 現 意 図が 「 情 報 の授 受 」 と特 定 さ れ しか もそれ が 連 続 す る とい う教科 書 本 文 会話 が,質 的 に変 容 を起 こ して い る もの と思 わ れ る 。た と えぼ 次 の よ う な 例 が あ る。

添 乗 員:皆 さ ん,も うす ぐ出発 しま す 。 バ ス に乗 って くだ さ い。

(3)

日本語 初級 教 科 書 にお け る働 きか け表 現 初 出3 マ リー:あ れ っ,広 田 さ んや 林 さ ん は?

山 本:広 田 さ ん は,今,電 話 を して い ます 。 マ リー:林 さ ん は?

山 本:林 さ ん は 売店 の前 で アイ ス ク リー ム を食 べ て い ま す 。 マ リー:木 村 さ ん と長 井 さん は?

山 本:さ あ …。

マ リー:あ っ,あ そ こで す 。池 の そ ばで 写 真 を撮 って い ます よ。

文 化 外 国 語専 門学 校(1987)『 文化 初級 日本 語1』 第10課pp.73 この本 文 で は,状 況 ・発 話 者(の 立 場)が,旅 行 に行 った観 光 地 で 出発 時 刻 に 参 加 者 が バ ス に戻 っ て こ な い場 面 ・添乗 員 と参 加 者 とい うよ うに,そ れ ぞ れ 容 易 に特 定 で きる 。 そ して,「 〜 て い る」 が 文 法 的 には 動 作 の 継 続 と い う意 味 で あ りなが ら も,不 在 者 の不 在 理 由 の説 明 とい う,そ の場 に立 脚 した 機 能 を持 っ て用 い られ て い る。 こ の よ うな本 文 会 話 にお け る変 質 は,同 形 の 指 導 項 目で も起 こっ てい る し また従 来 の初 級 指 導 項 目群 に は ない 形 の働 きか け表 現 が 用 い られ る とい う形 で も起 こ って い る もの と 考 え られ る。

そ こで 本 論 で は,本 文 会 話 あ るい はそ れ に準 ず る部 分 を各 々 の教 科書 の各 単 元 に お け る重 要 項 目が 象徴 的 に凝 縮 してい る もの と考 え,そ こか ら,叙 述 型 の情 報 の授 受 と い った い わ ぼ 「静 的 」 な機 能 に対 す る 「 動 的」 な表 現 意 図 と して 聞 き手 に対 して 実 質 的 な行 為 を働 きか ける表 現 の初 出を採 取 し,そ の表 現 形 と表 現 意 図,そ の教 科 書 にお け る提 出 位 置 な どを 明 らか に し,今 日まで 用 い られ て きた 日本 語初 級 教 科 書 の実 態 を 明 らか にす る こ とを 目 的 とす る。

次 に,調 査対 象 とす る初 級 教 科 書 を示 す 。 改 訂 版 を含 む,以 下 の59点 で あ る(表1 参 照)。

3.調 査 の 結 果

あ る働 きか け表 現 初 出課 に他 の複 数 の働 きか け表 現 が あ る場 合 が あ るた め,調 査 対

象 教 科 書59点 か ら採 取 した 働 きか け初 出表 現 は,96で あ る(文 末 「 採 取初 出働 きか け

表 現 」 参 照)。

(4)

4 日本語初級教科書 における働 きか け表現初出 表1調 査対象教 科書

No. 教 科 書 名 出版年 発 行 対 象 備 考

1 改訂標準日本語読本(第1部) 48 長沼直兄 X'62

2 Naganuma'sBasicJapaneseCourse 50 長沼直兄 SectionAMainTextと1は ほ ぼ 同 じ 。 X'67

3 NihongonoHanashikata 54 国際学友会 ひ らが な縮 刷 版 に 『よみか た 』('59) あ り。 ×'68

4 PracticalJapanese 62 長沼直兄他 2の 縮 刷 版 。 ×'72 5 ModernJapaneseforUniversityStu‑

dentsPartl 63 国際基督教大語学科 学 生 ×'86

6 BeginningJapanesePartl,2 63 エ ール大 一 般 X'74

7(1) 再訂標準日本語読本(第1部) 64 長沼直兄 1の 改 訂 版 。 ×'89 8 LearnJapaneseVol.1‑‑4 67 メ リー ラ ン ド大 一 般 X'72

9 BasicJapaneseVol.1,2 67 大阪外大留学生別科 留学生

10 にほ ん この きそ,に ほん この きそII 72 海外技術者研修協会 研修生 ロー マ字 版 。漢 字 か な混 じ り版 は'74 刊。 ×'76

11 あ た ら し い 日本 語JapaneseforToday 73 学習研究社 X'92

12 外国学生用 日本語教科書 初級(改訂版) 77 早稲 田大学 日本 語研 究教育

セ ン ター 学 生 '67初版 ,㌘2改 訂,'77再 訂 。い ずれ も 本文 中心 の小修 正。 ×'90 13 AnIntroductiontoModernJapanese 77 ジ ャパ ンタイ ムズ 一 般 X'90

14 日本語1 79 東外大付属 日本語学校 学 生 『日本 語教 科書 ガイ ド』 に は'73初版 とあ る。X'81

15 日本語1 79 国際学友会 学 生 奥 付 は77初 イ ル 』 ぱ75初 版,'79改 版,'87改 訂,『 訂 ×'93 デ ー タ フ ァ

16 日本 語初 歩1,皿 81 国際交流基金 '87に 改 訂

17 ACourseinModernJapanese1,2 83 名古 屋大 学総 合言語

セ ン ター 日本 語科 学 生 X'93

18 生活 日本 語1,2 83 文化庁 残留孤児 X'90

19 BusinessJapaneseI,II as 日産自動車 スマ ン ビジネ X'87

20 技術 研修 の ため の 日本 語1‑3 84 国際協力事業団 研修生 X'90

21 外国学生用 基礎 目本語 84 早稲田大学 語学教育研究所 学 生

22 JapaneseforBusyPeopleI,II sa 国際日本語普及協会

:・

23(8) LearnJapaneseVol.1‑4 84 メ リー ラ ン ド大 一 般 8の 改 訂版

24 日本語(に ほん ご/に っぽん ご) 85 開拓社 中心執 筆者 が5と 同 一で,そ の改訂版 的存在 。

25 ひろ こさ んのた の しい にほん ご1,2 86 凡人社 児 童 X'91

26 ExectiveJapanese1‑‑3 86 ア ス ミ ッ ク ビジ ネ スマ ン 27 BasicFunctionalJapanese 87 ジ ャパ ンタイ ムズ 一 般

28 文化 初級 日本語1,II 87 文化外国語専門学校 学 生 ×'94。奥 付 に は改 訂 表示 が な い が, rデー タフ ァイ ル亅には'89改訂 とある。

29 CommunicationJapaneseStylej 87 東京 日本語学校 学 生 '89改 訂 。 ×'93

30 エ クス プ レス日本語 87 東京YMCA

日本 語科 一 般 X'90

31(6) Japanese:TheSpokenLanguagePart

1‑3 87 講 談 社 イ ン ター ナ

シ ョナ ル 一 般 6の 改訂 版

32(16) 日本語初歩 87 国際交流基金 16の 改 訂版 。ただ し改 訂版 の前書 きに

は'85改訂 とあ る。 ×'92 33 SpokenJapanese 88 AKP同 志社 留学 生

セ ンター 学 生

34 長沼 新現代 日本語 88 東京日本語学校 '89改 訂 。 ×'93

35 にほん こか んた ん1,2 88 研究社 児 童 X'92

(5)

日本語 初級教科書 にお ける働 きか け表現初出 5

36 日本語 で ビジ ネス会話 初 級編 89 日米会話学院 37(1 初級 日本語 90 東 外大留 学 生 日本 語 教 育

セ ンター 学 生 14の 改 訂 版 。 ×'94 38 JapaneseforEveryone 90 学習研究社

39 CrashJapaneseforBusinessmen 90 テ ン ポ ラ リー セ ン タ ー

ビジネ スマ ン 40(10) しんに ほん この きそ1,II. 90 海外技術者研修協会 研修生 10の改 訂版

41 留学生の日本語会話 90 国際学友会 学 生 '92改 訂 。 ×'92

42(33) SpokenJapanese 90 AKP同 志社 留学生

セ ン ター 学 生 33の 改 訂 版 。 ×'92

43 日本語 初級 91 東海 大留 学生

教育 セ ン ター 学 生

44 SituationalFunctionalJapaneseVol.1,

2,3 91 筑波 ランゲー ジ

グルー プ 学 生

45 じっせ んに ほん ご 改訂 版 92 国際 日本語普及協会 研修生 '91初 版 。 46 研 修 生 のた めの にほん ご100時 間 92 TOPラ ンゲ ー ジ

日本 語研 究会 研修生

47 見 て ・きいて ・わ か る会 話式 日本 語文 法

1‑6 92 日本 語教 育セ ン ター 一 般 '94改 訂

。 ×'94

48 たの しい こ ど もの にほ んご 92 凡人社 児 童

49 にほ ん ごを まなぼ う1 92 文部省 児 童

50 CommunicativeJapaneseforTimePressed

People会 話 で 学 ぶ や さ しい 日 本 語 92 荒竹出版 '94改 訂 。x'94

51 CommunicatinginJapanese 92 創拓社 学 生

52 HelloJapaneseforBoys&Girls 93 InternationalIntern‑

shipPrograms 児 童

53 現代日本語 改訂版 93 亜細亜大留学生別科 学 生 '81初 版 。'93改 訂 版 初 版 。 54 別 科 ・日本 語1(第 二版) 93 長崎総合科学大学

別科 学 生 '89初 版 。'93第2版 。

55(39)CrashCourseJapaneseforBusiness 94 アル ク出版 ビジネ ス マ ン 39の改 訂版 56⑳ JapaneseforBusyPeopleI‑‑III 94 国際日本語普及協会 22の改 訂版

57 TotalJapanese1,2 94 早稲田大学 国際部 学 生 58(15) 進学す る人のための日本語初級 94 国際学友会 学 生 15の改 訂版 59(4 SituationalFunctionalJapaneseVol.1,

2,3 95 筑 波 ラ ンゲー ジ

グル ープ 学 生 44の 改 訂版

注 ・番号 の 後 にか っこの ある もの はそ の教科書 が改 訂版で あ るこ とを表 し,か っこの 中が改訂 前 の ものを表 す。

・中上 級 まで 含め複 数巻 で成 り立 って いる もの は,初 級 部分 のみ を取 り上 げた。

・出版 年 に関 しては初 版 の年 を掲載 した が,今 回 の調査 で初 版 の ものが入 手 で きず 二刷 り以 降 の ものを対 象 に した場 合 は,「 備考」 欄 に 「×㌧ 」 で出 版年 を示 した 。 また,出 版年 表 示 に当た っ ては,そ の教科 書 の奥付 ・改 訂版 の前 書 き ・後 述 「日本 語教 材 デー タ ファイ ル 日本 語教 科書』 ・国 際交 流基 金 編(1983)『 日本 語教 科書 ガイ ド亅(北 星 堂 書店)・ 河 原崎 幹夫 他(1992)『 日本 語 教材 概説 亅(同)な ど の間で 異 な る場 合 が あ ったが,そ う した際 に は原則 と して以 上 の うち前記3点 の中で 最 も早い もの の出版 年 を採 用 した。 また,「Vol.1」 「VoL2」 な ど と複 数巻 か ら成 り立 ってい る ものの出版 年 は,第1巻 の出版 年 を採用 した 。

・指 導対 象特 定 に当 た って は,日 本 語教 育学 会教 材委 員会 編(1992)『 日本語 教 材 デー タフ ァイ ル 日本語 教科 書』

の記 述 を参 考 に した。 これ は,「 当該 日本語 教科 書 の著 者 また は発 行機 関 に対 して ア ンケー ト用 紙 を送付 し,後 日 返送 され て きた 回答 を原文 の まま データベ ー スに入力 した」(同書pp,3)も の であ る。 なお,「 成人 と留学 生」 「 留 学生 と研 修 生」 な ど と指 導対 象 に複 数 あげ てい る ものは,一 般成 人 と区分 け した 。 また,「学 生 」 と した ものの 中 に は,進 学志 望者 ・日本 国 内の大 学 など に在 学す る留学 生 さら に海外 の大学 な どで学 ぶ外 国人学 生が 含 まれ る。

・表 中,二 重線 は年代 の 区切 りを示 す。

(6)

6 日本語初級教科書における働 きか け表現初出

表2表 現 形

動 詞 系

Vな さ い Vて 下 さい ※業務上待ち依頼 Vな いで下さい

一 一一'69 '75 ‑一一'79 '70 ‑'74 '80 ‑一一'84 '85 〜'89 '90 〜

2

1

2

2 1 2 10

2 2

1 1

計 3(3.1) 17(17.7) 5(5.2) 1(i.lo)

動 詞 系

お願 い します Nを,お 願い します Nを 下 さ い Nを 数 下 さ い

一 一'69 '75'79 '70'74 '80 〜'84 '85 ‑一'89 '90 〜

1 1

1 2

1 2 2 1

2

1 1 2 2

計 1(1.o) 4(4.2) 8(8.3) 6(6.3)

副 詞 系

小 計

ど うぞ ち ょ っ と 。 いかがですか 起立 ・ 礼 ・ 着 席

一 一 一'69 '75 ‑一 一'79 '70 〜'74

.1., '85 ‑一一'89 '90 ‑一一

3 1 1 2 3

7 2

1

3 1 1 2 4 9

1 1

計 17(17.7) 2(2.1) 1(1.0) 20(20.8) 2(2.1)

注()の 数字 は百分率 を表す(小 数点第2以 下四捨五入)。

(7)

日本語初級教科書 における働 きかけ表現初出 7

分 類 表

(1)

Vま し ょ う Vま せ んか Vま す(か)

9 α

1 99 2

1 3

1 1 1

7(7.3) 4(4.2) 3(3.1)

(2)

小 計

形容詞系

小 計

NはNで す Nが あ りますか系 〜がいいですね

‑⊥

1 1 1

10 5 6 9 14

22 1 1

4(4.2) 3(3.1) 66(68.8) 1(1.o) 1(1.o)

詞 系

小 計 総 計 教科書 数

は い,N。 Nは? Nで す(よ)。

9自

1 1

2

0 0 0 2 3 4

13(13.5) 6(6.3) 7(7.3) 13(13.5) 21(21.9) 36(37.5)

9 2 4 8 13 23

3(3.1) 1(1.o) 3(3.1) 9(9.4) 96(100) 59

(8)

8日 本 語 初 級教 科 書 にお け る働 きか け表 現 初 出 3‑1.初 出表 現 形(表2参 照)

採 取 し た 働 き か け 表 現 を 品 詞 別 に み る と,動 詞 系 が66(68.8%),副 詞 系20 (20.8%),名 詞 系9(9.4%),形 容 詞 系1(1.0%)で あ った 。 そ れ ら を年 代 別 にみ て み る と,'80年 以 降で ほ ぼ6割,'90年 以 降 の もの だ け で は も と も と教 科 書 数 が 多 い が 全 体 の4割 弱 を 占め,'90年 以 降 に一 気 に増 加 した 様 子 が うか が わ れ る。 さ ら にそ れ を異 な りで み て み る と,'70年 以 前 の教 科 書 で は8種,'70年 〜'74年4種,'75年 〜'79 年5種,'80年 〜'84年12種,'85年 〜'89年11種,'90年 〜16種 で あ った 。 や は り,時 代 が下 る に した が って,表 現 形 の種 類 が 着 実 に増 え て い る とい って よか ろ う。

一 般 に ,日 本 語 教 育 初 級 段 階 で は 「NはNで す 」 が最 も早 く提 出 され 続 い て 「い ま す ・あ りま す 」,そ し て発 展 的 な 形 と して 数 ・形 容 詞 を交 えた それ ら両 表 現 の順 で提 出 さ れ る が,今 回 の 調 査 で は,「NはNで す 」・「Nが あ り ます 」 系 は そ れ ぞ れ4

(4.2%)・3(3.1%),計7(7.3%)で あ り,決 して 数 の 上 で は多 くな い。 しか も,最 も数 の多 い'90年 以 降 の教 科 書 で は両 者 と も扱 わ れ て お らず,今 日 の働 きか け 表 現 初 出 は,従 来 か らの 一般 的 な指 導 項 目に機 能性 を付 与 す る形 よ りも,従 来 こ の段 階 で は 扱 わ れ てい なか った項 目を用 い る こ とに よ って な され てい る様 子 が うかが わ れ る。

以 下 各 表 現 形 ご とに み て い く と,ま ず,「NはNで す 」 は 通 常 事 物 の一 致(・ 不 一 致)の 表 現 と して提 出 され るが,今 回 の調 査 で働 きか け 表現 と認 め られ た の は,No.

19「 これ は 私 の 名 刺 で す 。」,No.36「 これ はお み や げで す 。 ワ イ ン とチ ー ズで す。」

の物 品 を勧 め る と き,及 びNo.28「 こ の大 きい 猫 は 誰 ので す か 。」 の 獣 医 の診 察 室 に 紛 れ 込 ん だ猫 の受 け取 りを飼 い主 に要 求 す る と き,さ らに 同 じ くNo.28「 そ の小 さ い 猫 は 私 の で す 。」 で 他 人 が 自分 の猫 を持 っ て い こ う とす る の を制 す る と きで あ った 。 これ ら の 内,物 品 を勧 め る と きの 形 と して は,「 これ は プ レゼ ン トで す 。 ど うぞ 。」

(No.34)の よ う に,「 ど うぞ 」 と と もに用 い られ る特 徴 的 な形 が あ り,そ う した例 はNo.19・No.36以 外 に6例 あ った(た だ し,今 回 の調査 で は 「ど うぞ」 が その 機 能 を 中心 的 に 担 って い る と して この6例 は 「ど うぞ 」 の 事 例 と し て分 類 した)。 こ の

「NはNで す 。+ど うぞ 。 」 とい う形 は,初 級 教 科 書 にお け る初 出働 きか け表 現 の一

つ の典 型 と考 えて よか ろ う。 ま た,No.28の2例 は状 況 ・発 話 意 図 と もにや や 特 殊 で

は あ る ものの,従 来 か らあ る指 導 項 目が あ る状 況 下 の も とに明 確 な 表現 意 図 を持 っ た

1列とい え よ う。

(9)

日本 語 初 級教 科書 に お け る働 きか け表現 初 出9

事 物 の存 在 を表 す 表 現 と して提 出 さ れ る 「Nが あ ります」 が 用 い られ て いた の は, No.3「 黒 い シ ャツ もあ りま す か 。 」,No.11「 フ ィル ム はあ ります か 。 」,No,14「 も っ

とや す い のが あ ります か 。」 の,い ず れ も買 い 物 に お け る物 品提 示 要 求場 面 にお け る 3例 で あ った 。 け れ ど も,こ れ らは'70年代 まで に 出現 してい るだ けで,'80年 代,'90 年 代 に は み られ ない 。 後 述 す る よ うに買 い 物 場 面 は計22例 あ る が,年 代 別 に見 る と, ほ ぼ 各 期3〜4例 で 一 定 して お り,特 に'80年以 降 減 って い るわ けで は な い 。 しか し な が ら,そ の 場 面 が や や 変 化 して お り,物 品提 示 を 要 求 す る 場 面 は'80年 代 ・'90年代 で は わ ず か1例 しか な く,代 わ りにNo.30の 「フ ィル ム を一 つ 下 さ い」No.45の

「シ ャ ン プー を 下 さい 」 の よ う に購 入 希 望 物 を明 示 しそ の購 入 意 図 を表 す 場 面 が 多 用 さ れ,そ の こ とが初 出表 現 形 と して の 「Nが あ ります 」 の 数 の 少 な さ に影 響 して い る もの と思 わ れ る 。

一方 ,自 ず と働 きか け る形 と考 え られ るそ の他 の 動 詞系 は そ の バ リエー シ ョン も多 く,動 詞 の活 用 形 だ けで も7種,こ れ ら に 「お願 い しま す 」系 ・「下 さ い 」系 を加 え る と計11種 類 で あ る。 そ して,そ の多 様 化 は'80年代 か ら始 ま り'90年代 に お い て 一気 に 進 ん で い る。 前 述 の通 り,動 作 性 の動 詞 の提 出 は 「NはNで す」 「Nが あ りま す」

が す ん で か ら とい うのが 一 般 的 で あ るが,こ う した バ リエ ー シ ョ ンを多 さ を見 る と, 従 来 は も っ と後 で提 出 され てい た 指導 項 目が あ るい は この レベ ルで は扱 って い な か っ

た項 目 が 提 出 さ れ る形 で,表 現 意 図 の初 出が 行 わ れ て い る ケ ー スが 多 い とい え よ う。

最 も多 か った の は 「Vて 下 さ い」 とい う形 で17(17.7%),こ れ に 「 業 務 上 待 ち依 頼 」 の 「ち ょ っ と待 って 下 さい ・ち ょっ とお待 ち下 さ い ・少 々 お待 ち下 さい 」 を 含 め る と,「V+下 さ い」 系 で22(22.9%)を 占め た 。 しか も,そ れ らの 表現 意 図 は,次 の通 り,買 い物 に お け る物 品 提 示 要 求3,教 室 用 語5,そ の他9,業 務 上 待 ち依 頼5 とバ ラ エ テ ィを みせ てい る。

「Vて 下 さ い」 買い物 教室用語 その他 計 業務 上待 ち依 頼

・見 せ る314・ ち ょ っ と待 っ て下 さい2

・見 る213・ ち ょ っ とお待 ち下 さい2

・待 つ123・ 少 々 お待 ち 下 さ い1

・言 う22計5

・借 りる22

(10)

10日 本 語 初 級教 科 書 に お け る働 きか け 表現 初 出

・呼 ぶ22

・取 る11 計35917

また,「Vて 下 さ い」 の特 徴 は'90年代 に急 増 してい る こ とで,'80年 代 まで は1〜4 例 しか な か っ た もの が'90年 以 降 に な る と一 気 に11例 を数 え る まで に な っ て い る。 そ

の一 般 定 着 化 の 最 た る例 と して,No。38が あ る 。No.38は,教 師用 指 導 書 を付 属 しそ の 冒頭 に 「教 室 用 語 」 と して 「Vて 下 さ い」 を提 出 して い るが,そ の指 導 書 第1課 で は それ を受 け 明 確 に 指 導 項 目 と位 置 づ け,「 開 け る ・見 せ る ・食 べ る ・貸 す ・書 く ・ 読 む ・飲 む ・取 る ・待 つ」 の 動 詞 を 出 し,そ の 上,「Vて ・Vて 下 さ い ・Vて 下 さい

ませ んか 」 の3つ の 形 を提 出 す る こ と と して い る(『JapaneseforEveryone教 師用 指 導 書』pp.20〜21)。 これ は,今 回 の 調 査 で は,第1課 で 「Vて 下 さ い 」 を正 面 切 っ て扱 っ た特 異 な 例 で あ った 。 こ う した 現 象 も,表 現意 図初 出が従 来 この レベ ルで 用 い られ て い なか った 表 現 に よ って な され て い る こ とを示 唆 す る もの とい え よ う。、

「Vて 下 さい 」 の 次 に多 い の は 「Vま し ょう」 の7例 で あ るが,内 訳 は,授 業 開始 な どの 指 示 を表 す 教 室 用 語4,意 向 伺 い ・誘 い ・確 認 が そ れ ぞ れ1で あ る。 「Vて 下 さ い」 と比 べ る と,数 ・種 類 と も少 ない 。 年 代 的 に見 て も,1〜2例 ず つ で あ る 。 こ れ は,そ の表 現 意 図 をみ て もわ か る よ う に,「Vて 下 さ い」 の汎 用 性 に 「Vま し ょ う」

の そ れ が 及 ぼ ず,「Vま し ょう」 が 用 い られ る の はや や 特 殊 な状 況 で あ る こ と,そ う した状 況が 表 現 意 図 初 出の 段 階 で は扱 い に くい こ とに よる もの と思 わ れ る。 けれ ど も, '80年以 降 はい ず れ か の 教 科 書 の初 出 の形 とな っ て お り,そ れ が 全 体 の バ ラ エ テ ィに 影 響 を 与 え て い る こ と に変 わ りは な い。

一 方 ,「Vな さ い ・Vな い で 下 さい 」 は,働 きか け表 現 初 出 と して は あ ま り用 い ら

れ て い な い 。'70年以 前 の 「Vな さ い」 は,No.1及 び そ の改 訂 版No.7の2例 で,い

ず れ も 「 行 く ・来 る ・入 る ・出 る」・方 向 を表 す 助 詞 「へ」 の導 入 課 で 学 習 者 に教 室

の 出入 りを さ せ て そ れ を叙 述 す る とい う形 を 取 っ て い る。'90年 代 の 「Vな さ い ・V

な い で 下 さ い」 はNo.53に あ る もの で,単 元 冒頭 に基 本 構 文 的 に提 出 され てい る も

の で あ る 。 これ は,初 出表 現 形 が 多様 化 して い る とはい って も,と もす れ ば 緊 張 を は

らむ よ うな 両表 現 に ま で に は それ が 及 ん で い な い こ とを示 して い る と考 え られ る。 ま

た,平 易 な 形 で あ る 「Vま す 」 も予 想 外 に用 い られ て お らず,タ バ コ を勧 め て い る

(11)

日本 語 初 級教 科書 に お け る働 きか け表 現 初 出11

No.18の 「タバ コ,吸 い ます か 」,同 じ くた こ を勧 め て い るNo.57の 「 食 べ てみ ます か 」,旅 程 案 内 を 申 し出 る と と もに 出発 を促 して い るNo.26の 「で は,ホ テ ルへ 案 内 しま す 。 」 の,3例 の み で あ った 。 一 般 に物 品 や 飲 食 を勧 め る場 合 に は 「Vま す か 」 と い う形 よ り も後 述 の 「ど うぞ」 が 広 く用 い られ,ま た ,動 作性動詞 の初 出の段階で は そ の意 思 表 明 な ど とい った機 能 よ りも,そ の 構 文 な どに教 師 ・学 習 者 の 興 味 が 行 く も の と考 え られ るが,そ う した こ とが 厂Vま す 」形 の数 の少 な さ に表 れ て い る と考 え られ る。

そ の 他 の 動 詞 系 で は,「Nを 下 さい 」 お よび 「Nを,数,下 さい 」 が 計14(14 .6%) で 多 い 。 年 代 別 に 見 て も,各 年 代 平 均 して コ ンス タ ン トに用 い られ て い る。 そ して, これ らの 内,物 品購 入 ・飲 食 物 注 文 な どが12を 占 め てい る。 こ う して み る と,初 級 冒 頭 の 諸単 元 で は,買 い物 ・注 文 等 を中 心 と した サ ー ビス の授 受場 面 に お い て表 現 意 図 が 初 出 とな る ケ ー スが いず れか の教 科 書 に必 ず み られ る とい え る。 また,「 お願 い し ま す」 に 関 して もよ く似 た傾 向 が あ り,単 独 で 用 い られ て い るNo.20の 郵 便 局 にお け る注 目喚起 を 除 くと,No.17・No.47が 飲 食 物 注 文,No.26が タク シ ー乗 車 時 の 行

き先 告 げ,No.40が 宿 泊 先 で の鍵 渡 し依頼 で あ っ た。

一 方 ,動 詞 系 が66(68.6%)用 い られ て い るの に対 して,形 容 詞 系 はわ ず か に1例 (1.0%)で あ る。 た とえ ば,No.36の 形 容 詞 の 指 導課 に は,… 「 す み ませ ん 。 そ の赤 い ネ ク タイ を見 せ て くだ さ い。」 「はい ,ど うぞ。」「少 し太いですね。」…,… 「い くら で す か 。」 「2万 円 で す 。 」 「高 いで す ね 。」… …(No.36『 日本 語 で ビ ジ ネ ス会 話 初 級 編 』 第5課pp.23)の よ うに,店 員 の 薦 め を拒 否 し別 の 品物 を提 示 す るよ う要 求 して い る形 容 詞 の 働 きか け 表現 が あ るが,初 出 と して は他 の表 現 に譲 って い る 。

副 詞 系 で は 「ど うぞ」 が17(17.7%)で,「Vて 下 さ い」 と並 ん で今 回 の 調 査 で 最 も多 く用 い られ て い た 。 各 年 代 と もよ く用 い られ て い るが,や は り'90年代 に入 って 急 に増 え て い る 。 それ は,現 実 の 意 志疎 通 を盛 り込 み た い とい う教 科 書 執 筆 者 の姿 勢 と,「 ど う ぞ」 の 日常 表 現 に お け る使 用 頻 度 の高 さ,使 用 場 面 の 明解 さ,初 級 学 習 者 に とっ て の発 言 の たや す さの 表 れ と考 え られ よ う。 今 回 の調 査 で は,名 刺 ・贈 答 品 ・ 飲 食 物 を差 し出 した り勧 め た りしそ の受 け取 りを促 す もの が11,入 室 促 しが3,飲 食

開始 勧 め が1,状 況 設 定 な しの勧 めが2で あ っ た。 そ して,前 述 の よ うに,「NはN

で す 」 と と もに用 い られ て い る のが 特 徴 的 で,17の 「ど うぞ」 の内,6例 が こ う した

(12)

12日 本 語 初 級教 科 書 に お け る働 きか け表現 初 出 形 で あ った 。

最 後 に,名 詞系 は全 体 の約1割 を 占 め はす る もの の,個 々 の例 は多 い もので も計3 例 に と どま って い る 。 そ の 内訳 は,「 起 立 ・例 ・着 席 」 の形 で教 室 用 語 と して 用 い ら れ てい る もの2,「 は い,お 茶 」 の形 で飲 食物 を勧 め てい る もの2,「 ご飯 です よ」 の 形 で 食 事 が で き て着 席 を 求 め て い る もの2,「 お砂 糖 は(?)」 の形 で 食 品 に 嗜好 品 を 加 え る 旨 申 し出 てい る もの1,「 忘 れ物 で す よ」 の 形 で忘 れ物 を指 摘 して い る もの1,

「そ れ じ ゃ,は い」 の形 で 代 金 を 渡 してい る もの1で あ った 。 これ ら は第1課 に提 出 さ れ て い る もの5,同 第2課3,第5課1で あ るが,こ れ らの課 で はい ず れ も文 型 と して は 「NはNで す 」 が 中心 と な って お り,採 取 例 の よ うな 呼 びか け ・呼 びか け に準 ず る形,述 部 が 省 略 さ れ た形 な どは この 時期 に は な じみ に くい とい う配 慮 が その 数 の 少 な さ の裏 に働 い て い る もの と考 え られ る。

3‑2.初 出表 現 意 図(表3参 照) 3‑2‑1.表 現 意 図 の 種 類 と表現 形

初 出 を 表現 意 図 別 に分 析 す る と,各 年 代 通 して 多 い の は,順 に,依 頼16(16.7%), 意 志表 示15(15.6%),指 示 ・促 し14(14.6%),勧 め11(11.5%),要 求10(10.4%) で あ った 。 異 な りで み てみ る と,'70年 以 前 の教 科 書 で は7種,'70年 〜'74年4種,'75

〜'79年3種 ,'80年 〜'84年8種,'85年 〜'89年10種,'90年 〜9種 で あ った 。'80年 以 降 教 科 書 数 が 増 えた こ と もあ っ て,約10種 とい う線 で 固 定 化 して い る。 た だ,'70年 以 前 の 教 科 書 は,'80年 〜'84年 と同 じ教 科 書 数 で あ り,表 現 意 図 も ほ ぼ そ れ と同 数 と

な っ て い る。

注 目す べ き は表 現 意 図 とそ の場 面 ・状 況 との 結 び つ きの強 さで,た と えば,依 頼 で は業 務 上 の待 ち依 頼 ・物 品 渡 し依 頼,意 志 表 示 で は物 品購 入 意 図 表 示,指 示 は教 室 用 語,勧 めで は飲 食 勧 め,と い う具 合 に 固定 化 して お り,あ ま りバ ラ エ テ ィを持 って い な い 。 これ は,今 回 の調 査 を働 きか け表 現 初 出の 分 析 と限 って い る た め,そ こで は, あ ま り複雑 な状 況 は用 い られ ず,そ の表 現 が 用 い られ る典 型 的 な状 況 で な おか つ 学 習 者 が 遭 遇 す るで あ ろ う極 め て頻 度 の 高 い状 況 しか 扱 わ れ て い な い た め と考 え られ る。

個 々 の表 現 意 図 を み て み る と,ま ず,依 頼 で最 も多 か った の は,「 少 々 お待 ち くだ

さい 」 な どの 業務 上待 ち依 頼 の5,次 い で ホ テ ル で 自室 の 鍵 を求 め るな どの物 品渡 し

(13)

日本語初級教科書 における働 きかけ表現初出 表3表 現 意 図 分 類 表

13

指 示 要 求 依 頼 誘 い 勧 め

一 一'69 4 1 3 2

'70 〜'74 1 3

'75 〜'79 3 2 1

'80 〜'84 1 1 2 1

'85 ‑一'89 4 1 1 4

'90 ‑一 5 3 9 3

計 14(14.6) 10(10.4) 16(16.7) 4(4.3) 11(11.5)

促 し 申 し 出 提 案 意向伺 い 確 認

〜'69 1 1

'70 ‑一'74 1

'75 〜'79

'80 〜'84 3 1

'85 〜'89 3 1 1

'90 〜 6 1

計 14(14.6) 2(2.1) 1(1.o) 1(1.0) 1(1.0)

禁 止 意思表示 注 目喚起 計 教科書数

〜'69 1 13(13.5) 9

'70 〜'74 1 6(6.3) 2

'75 〜'79 3 7(7.3) 4

'80 〜'84 3 1 13(13.5) 8

'85 〜'89 1 3 21(21.9) 13

'90 〜 1 4 4 36(37.5) 23

計 2(2.1) 15(15.6) 5(5.2) 96 59 注()内 の数字は百分率 を表す(小 数点第2以 下四捨五入)。

依 頼 の3で あ っ た。 そ の,業 務 上待 ち 依 頼(「 ち ょ っ と待 って 下 さ い 」2・ 「 ち ょっ と お待 ち 下 さ い 」2・ 「 少 々 お待 ち下 さ い」1)以 外 の表 現 形 は,「Vて 下 さい 」8,「Nを 下 さ い 」2,厂Nを お 願 い します 」1の 計11で,他 の 意 図 と比 べ る と種 類 が 多 か った6 依 頼 とい うの は 日常 生 活 にお い て もそ の頻 度 が 極 めて 高 くそ れ ゆ え初 級 学 習 者 とい え

ど も最 も必 要 と され る機 能 で あ る と思 わ れ るが,そ れ が こ う した 表 現 形 の多 様 さ に

な って 表 れ て い る とい え よ う。

(14)

14日 本 語 初級 教 科 書 に お け る働 きか け表 現 初 出

一方 ,意 志表示で は,そ のすべてが,「 〜 を くだ さい」 「〜お願い します」系で客が 店 員 に物 品 を指 定 しそれ を購 入(注 文)す る意 図 を示 す もので あ った 。 こ う した こ と か ら も,日 本語 教 育 初 級 の 冒頭段 階で は,学 習 項 目導 入 ・定着 に買 い 物 場 面 が よ く用 い られ て い る様 子 が うか が わ れ る。

指 示 は,「Vて 下 さい 」4,「Vま し ょ う(か)」4,「Vな さ い 」3,「 起 立,着 席, 礼 」2,「N,お 願 い します 」1で,そ の 内,タ ク シ ー に乗 っ て そ の行 き先 を 指 示 す る

1例 を除 い て は,す べ てが 教 室 用 語 あ る い は それ に準 ず る もの で あ っ た。 ま た,促 し で は,「NはNで す 。+ど うぞ。」 あ るい は それ に準 ず る形 で物 品 の 受 け 取 りを勧 め て い る 毛の8,「 ど うぞ 」 単 独 の形 で 物 品 の 受 け 取 りを勧 め て い る もの3,同 じ く

「ど うぞ」 の 形 で 入 室 を 勧 め て い る もの3で あ り,「NはNで す 」 で 物 品 を提 示 し,

「ど うぞ 」 で その 受 け取 りを促 す,と い うの が そ の典 型 で あ った 。

さ ら に,勧 めで は,飲 食物 を勧 めて い る例 が11例 中9例 を 占め た 。 そ の形 は他 の表 現 意 図 に比 べ る と多 彩 で,「 さ あ,ど うぞ」 「Nを ど う ぞ」 「は い,N」 「N,Vま す か 」 「Vま せ んか 」 「も うい っぱ い いか が で す か 」 が用 い られ てい た 。 他 の2例 は,状 況 な しの 「ど うぞ 」 で あ る。

最 後 に,や や 強 い表 現 の 要 求 で あ るが,こ れ は客 が 店員 に 「Nが あ りま す か ・Nを 見 せ て下 さ い」 な ど の形 で 物 品 の提 示 を要 求 して い る ものが6,税 関 職 員 が 渡 航 者 に パ ス ポ ー トの提 示 を求 めて い る もの1で あ り,自 ず と業務 上 で 要 求 す る者 ・さ れ る者, そ れ ぞ れ の立 場,そ してそ の状 況 が 明確 な もの で,特 に 緊張 した人 間 関係 とい うに は 当 た らな い もので あ った 。 残 り3例 は,食 事 の 用 意 が で きて家 族 に着 席 を要 求 す る も の2,猫 の受 け取 りを飼 い 主 に要 求す る もの1で あ った が,こ れ ら も緊張 を は らむ と い う性 格 は 薄 い もの とい えた 。 そ れ は,初 級 段 階 の 冒頭 とい う こ とを考 えれ ぼ 当 然 で あ ろ う。

以 上 に対 して,提 案 ・意 向 伺 い ・確 認 ・申 し出 ・禁 止 の 各 表現 意 図 は1例 あ るい は

2例 しか な か った が,こ れ は,こ れ らの表 現 意 図 は初 級 学 習 者 に はや や 込 み 入 った 状

況 の や や 高度 な もので あ り,ま して,初 出 とな る と極 め て そ の 数 が 限 られ る こ とに よ

る もの と思 わ れ る 。各 々 の状 況 ・表 現 形 は,順 に,レ ス トラ ンで 友 人 に よ い席 を示 し

て 着 席 を提 案 す る 「〜 が い いで す ね 」,休 日の過 ご し方 を尋 ね る 「Vま し ょ う」,休 日

の 予 定 を話 す1連 の 会 話 の 最 後 で 行 楽 の約 束 を確 認 す る 「Vま し ょう」,コ ー ヒ ー に

(15)

日本 語 初 級 教 科 書 にお け る働 きか け表 現 初 出15

砂 糖 を 入 れ よ うか と申 し出 る 「Nは?」 ・宿 泊 先 へ 旅行 者 を 案 内 す る 旨 申 し出 る 「V ま す」,他 人 が 自分 の猫 を持 って い こ う とす る の を制 す る 「NはNで す 」・状 況設 定 な

しの 禁止,で あ った 。

そ の他5例,4例 を採 取 した の は注 目喚 起 と誘 いで あ った 。 前 者 は 「〜 君 。 ち ょっ と」 の 形 で パ ー テ ィで教 官が 学 生 を呼 び止 め て い る もの2,「 お願 い しま す 。」 の形 で 郵 便 局 員 の注 目を 引 い て い る も の1,「 あ っ,ち ょっ と待 っ て 下 さ い」 「忘 れ 物 で す よ」 の 形 で 忘 れ 物 の 持 ち 主 と思 わ れ る者 に呼 び か け確 認 しよ うとす る もの そ れ ぞ れ1 で あ った 。 一 方 後 者 は,「Vま せ んか 」 の形 で 遊 興 ・行 楽 に誘 って い る もの2,「Vま

し ょう」 の 形 で 同 じく誘 って い る ものが1,状 況設 定 な しの 「Vま せ ん か 」 の 誘 いが 1で あ った 。い ず れ に しろ,今 日の 日本 語 初 級教 科 書 で は,「Vま せ んか 」 「Vま し ょ う」 表 現 を使 った 誘 い の 単 元 が しば ら く後 に1課 設 け られ て い る のが 普 通 で,初 出 と して そ う した形 で 働 きか け表 現 が 出 て くる の は少 数 で あ る とい え よ う。

ま た,表 現 意 図上 特 に注 目さ れ た の は,No.39及 び そ の改 訂 版 のNo.55で あ った 。 この教 科 書 は40時 間で ビ ジ ネ スマ ン対 象 に サ バ イバ ル ・ジ ャパ ニ ー ズ の指 導 を行 お う とす る もの で あ るが,そ の第1課 に 「ど う も」 と 「ど うぞ 」 だ けで,出 会 い ・別 れ の あ い さ つ,入 室 ・座 席 ・飲 食 物 な どの勧 め及 びそ れ に対 す る礼,謝 辞 な ど の機 能 を 果 た して しま う例 が場 面 を示 す イ ラ ス トと と もに約20出 され て い る。 そ の 申 に は,働 き か け表 現 で は な くそ の受 け表 現 と して寿 司 を勧 め られ て 「 寿 司 は ど う も…… 。」 とそれ を 辞 退 す る例 もあ る。40時 間 とい う,日 本 語 教 科 書 の 予 定 学 習 時 間 で は最 短 と思 わ れ る制約 が あ るか らこ そな さ れた,第1課 で 表現 意 図 が多 彩 に提 出 され てい る例 で あ る。

3‑2‑2.場 面 ・状況

次 に,場 面 ・状 況 と対 人 関係 につ い て み て お く。

採 取 した96表 現 の 内,最 も多 か った 場 面 ・状 況 は店 頭 で 商 品 を吟 味 し注 文す る一 連

の プ ロ セ ス の 中 の い ず れ か の部 分 に当 た る もので22例(22.9%),こ れ に レス トラ ン

な どで 飲 食 物 を注 文 す るな ど4例(4.2%),ホ テ ル の フ ロ ン トで 鍵 の 受 け 渡 しな どす

る5例(5.2%),さ らに そ の他(学 校 か ら奨 学金 を受 け取 る2,タ ク シー に乗 って行

き先 を 告 げ る1)3例 を加 え る と,公 共 の 場 で のサ ー ビス の授 受 が34例,35.4%を 占

め る。 一 方,学 校 場 面 で 最 も多 い の は,教 師 が 学 生 に教 室 で 何 らか の指 示 を出 して い

る と思 わ れ る も ので13例(13.5%),こ れ は サ ー ビス の 授 受 に次 いで2番 目に 多 い場

(16)

16日 本 語 初級 教 科 書 にお け る働 きか け表 現 初 出

面 ・状 況 で あ るが,こ れ らは いず れ も教 室 用 語 と して の提 出で,1例 を 除 い て 受 け表 現 を伴 って い ない もの で あ る。 それ 以 外 で教 師 と学 生 がや り と り して い る もの は5例 あ った が,忘 れ 物 の持 ち主 を さ が してい る もの2,パ ー テ ィの席 で 教 師 が 学 生 を呼 び 止 め て い る もの2,寮 で 教 師 が学 習 者 に部屋 の 鍵 を 渡 す もの1で,こ とさ ら教 師 と学 習 者 に特 徴 的 な場 面 ・状 況 とは い え ない もの で あ る。 学生 同士 の発 話 で は,日 本 人学 生 と外 国 人学 生 との問 で 遊 興 の誘 い を して い る もの2,同 じ く日本 人 学 生 と外 国 人学 生 との 問 で 出会 い のあ い さつ を してい る もの2で あ った。

そ れ 以 外 で は,来 訪 者 を迎 え て もて な して い る もの が多 く8例(8.3%),次 い で ホ ー ム ス テ イ先 の 家 庭 な どで 食 事 を して い る も の5(5.2%),ビ ジ ネ スマ ン同士 で 初 対 面 の あ い さつ を して い る もの4(4.2%),そ の 他 計13(13.5%)で あ った 。

けれ ど も一 方 で,依 頼 ・勧 め ・誘 い な ど とそ の 機 能 はわ か る ものの,誰 と誰 が どこ で ど うい う状 況 下 で 発 話 して い る のか 特 定 で きな い ものが14例(14.6%)あ った。 こ れ らの ほ とん ど は単 元 冒 頭 に 主 要学 習 項 目の 提 示 の形 で提 供 され て い るケ ー ス で あ る が,そ の場 面 ・状 況 性 の 希 薄 さ を問 題 にす る よ りも,む しろ学 習 項 目が 明確 な機 能 を 持 った 形,す なわ ち本 論 で い う とこ ろの 非 叙 述 性 が み られ る点 を前 向 きに と らえ るべ

きで あ ろ う と思 わ れ る。

これ ら場 面 ・状 況 を年 代 を通 した 異 な りで み て み る と(状 況 設 定 な しは 除 く),'70 年 以 前 の教 科 書 で は5種,'70年 〜'74年2種,'75年 〜'79年2種,'80年 〜'84年7種, '85年 〜'89年13種 ,'90年 〜18種 で あ り,場 面 ・状 況 に お いて も'80年代後 半 か ら多 彩 に な った 様 子 が うか が わ れ る。

なお,対 人 関 係 をみ て お く と,や は り客 と店 員 ・従 業 員 そ れ に準 ず る者 との 問 の発 話 が 最 も多 く34(35.4%),次 いで 教 師 と学 生18(18.8%),来 訪 者 と家 人8(8.3%), 家 族 同 士 及 びそ れ に準 ず る もの8(8.3%),友 人 同士7(7.3%),ビ ジ ネス マ ン同士4

(4.2%),そ の他3(13.5%),特 定 で きず14(14.6%)で あ っ た。 これ らの 年 代 を通 した 異 な り(状 況 設 定 な しは 除 く)は,'70年 以 前 の教 科 書で は3種,'70〜'74年3種, '75年〜'79年5種 ,'80年 〜'84年4種,'85年 〜'89年8種,'90年 〜9種 で あ った 。

3‑3.初 出 位 置 及 び 初 出学 習時 間

初 出 働 きか け表 現 の提 出位 置 及 び そ の 累計 学 習 時 間 は表4の 通 りで あ る。

(17)

日本語初級教科書 にお ける働 きかけ表現初 出 表4働 きかけ表現初出位置及び初 出時間数

17

No. 学習時間

a

総課 数 b 時 間 数 a/b=c

働 きか け

初 出課 d 提 出位 置d /b

提 出 時 間 cXd

1 560〜640 50 11〜13 10 20 110.130

2 280〜320 50 6 3 6 18

3 200 60 3 13 22 39

4 240 30 8 1 3 8

5 160 40 4 13 33 52

6 各175〜200 20,14 10‑r12 1 3 10‑‑12

7(1) 560〜640 50 11〜13 10 20 110‑130

8 各75 各15 5 1 2 5

9 各200 各25 8 2 4 16

10 各100 30,20 3(含,復 習) 2 4 6

11 200 30 7 4 13 28

12 300 40 8 4 10 32

13 300 30 10 2 7 20

14 300 32 9 6 19 54

15 300 36 8 13 36 104

16 300 34 9 6 17 54

17 各150 各12 13 1 4 13

18 明記せず 24,9 / 2 6 /

19 280 20,15 8 1 3 8

20 各100 各15 7 4 9 28

21 明記せず 53 / 15 28 /

22 50,240 30,40 4 2 3 8

23(8) 各75 各15 5 2 3 10

24 250〜270 35 7〜8 8 23 56‑一 一64

25 380 50,45 4 1 1 4

26 各50〜70 各10 5‑7 1 3 5〜7

27 120 24 5 5 21 25

28 300〜350 18,19 8〜9 3 8 64‑72

29 280 40 7 3 8 21

30 40〜50 20 2〜2.5 4 20 8‑10

31(6) 300 12,12,6 10 1 3 10

32(16) 300 34 9 6 17 54

(18)

18 日本語初級教科書 における働 きか け表現初出

33 70.90 39 2 1 3 6

34 各240 26,20 9‑一'12 2 4 18‑24

35 明記せず 20,10 / 6 20 /

36 300 46 7 2 4 14

37(19 300 28 11 1 4 11

38 200 27 7 1 4 7

39 40 18 2 1 6 2

40(10) 各100 各25 4 2 4 8

41 明記せず 30 / 1 3 /

42(33) 70‑‑90 39 2 1 3 6

43 200 24,22 4 1 2 4

44 350 各8 15 1 4 15

45 60 20 3 3 20 9

46 100 12 8 2 17 16

47 300 23,20,17 19,19,23 2 14 12 28

48 明記せず 37 / 1 3 /

49 100 33 3 1 3 3

50 150 30 5 4 13 20

51 140‑‑180 31 5〜6 5 16 25‑‑30

52 明記せず 28 / 5 18 /

53 150‑200 30 5〜7 17 57 85〜119

54 300 38 8 5 13 40

55(39) 40 19 2 1 5 2

56(22) 60,120,120 30,20,20 4 2 3 8

57 350 40 8 2 5 16

58(15) 300 22 14 4 18 56

59㈹ 350 各8 15 1 4 15

注 ・学 習 時 間 の特 定 に 当 た って は,日 本 語 教 育学 会 教 材 委 員 会 編(1992)『 日本 語 教 材 デー タ フ ァイ ル 日本 語 教 科 書 』 の記 述 を参 考 に した 。 こ れ は,「 当 該 日本 語 教 科書 の 著 者 ま た は発 行 機 関 に対 して ア ン ケー ト用 紙 を 発 送 し,後 日返 送 され た 回 答 を原 文 の ま ま デー タベ ー ス に入 力 した」(同 書pp.3)も の で あ る。

・各 課 所 要 時 間 数 厂a/b」は ,学 習 時 間 を 総 課 数 で 割 り小 数 点 以 下 を四捨 五 入 した。

・「 提 出位 置d/b」 は ,働 きか け表 現 初 出課 を 総課 数 で 割 り小 数 点 以 下 を四 捨 五 入 した 百 分 率 で 示 した 。

・「 提 出時 間c×d」 は ,各 課 所 要 時 間 に働 き か け表 現 初 出 課 の 課 数 を か けた も ので あ る。

・表 中 ,二 重 線 は 年代 の 区切 りを示 す 。

(19)

日本 語 初 級 教 科 書 に お け る働 きか け表 現 初 出19 これ らを 年代 別 にみ てみ る と,次 の通 りで あ る。

槲 讖 齢驪 初挈蠕鞠置挈軅1繍 謝噸

一 一"699312 .645.6

'70 ‑一'74208 .517.0

'75 〜'794018 .052.5

'80 〜'84809 .120.2

'85 ‑一'8913310 .425.9

'90 〜23r1110

.320.8 総 平 均591711.028.3

*想 定 学 習 時 間 に幅 の あ る も の は,そ の 最 大値 を採 用 した。

総 平 均 で 見 る と,教 科 書 全 課 に 対 し て11.0%の と こ ろ で 働 き か け 表 現 が 初 出 と な り, そ れ は 日 本 語 学 習 を 始 め て か ら28.3時 間 経 過 し た と こ ろ,と い え る 。 機 関 に よ っ て 学 習 時 間 は 一 定 し な い が 仮 に1日 の 学 習 時 間 を4時 間 と す る と,7日 程 度,1週 間 あ ま

りた っ た と こ ろ で 働 き か け 表 現 が 初 出 と な る 。

年 代 別 に み る と,提 出 位 置 は'80年 代 以 降 は 約10%で 一 定 し て い る と い え よ う 。 全 体 的 に 見 て も,'70年 代 後 半 は 遅 く な っ て い る が ほ ぼ10%前 後 で の 初 出 と 考 え て よ か ろ う。 こ う し た 提 出 位 置 の 一 定 性 は,初 級 段 階 に お け る シ ラ バ ス の 特 性 に よ る も の と 思 わ れ る 。 学 習 者 の 能 力 や ニ ー ズ に よ っ て シ ラ バ ス が 多 様 化 す る 中 上 級 と 違 い,初 級 段 階 で は 全 体 と して 構 造 シ ラ バ ス が 定 着 して お り,こ と に 冒 頭 部 分 で は 学 習 項 目 及 び そ の 提 出 順 が 固 定 し て い る と考 え ら れ る 。 そ れ ゆ え,約10%で の 提 出 が 一 定 し て い る も の と思 わ れ る2)。 し か しな が ら,平 均 値 で は そ う で あ る が,第1課 で 初 出 と な っ て い る 教 科 書17点 の 内6割 強11点 が ,'90年 に 作 成 さ れ た 教 科 書 で あ る 。 こ れ は,'80年 代 後 半 か ら 盛 ん に な っ て き た コ ミ ュ ニ カ テ ィ ブ ・ア プ ロ ー チ の 影 響 を 受 け,日 常 の よ

り現 実 的 な 意 思 の 疎 通 を 重 視 して き た こ と の 表 れ と考 え ら れ る 。 な お,最 も遅 い 提 出 位 置 は,年 代 順 に,33%,13%,36%,28%,23%,57%で あ る 。'90年 代 が 突 出 し て い る が,こ れ はNo.53で,'93年 の 改 訂 で あ る が,実 は 初 版 は'81年 で あ る 。 そ れ を 除 く と'90年 代 は20%で 最 も 遅 い 初 出 と な る 。 こ う し た 数 字 か ら は,年 代 が 下 が る に

し た が っ て 初 出 が10%程 度 を め が け て く り あ が っ て い く様 子 が うか が わ れ る 。

提 出 位 置 が ほ ぼ 一 定 し て い る の に 対 し て,提 出 ま で に 要 す る 学 習 時 間 は'90年 代 に

(20)

20日 本語 初 級 教 科 書 に お け る働 きか け表 現 初 出

近 づ くに した が って 短 くな っ てい る とい え よ う。'70年以 前 ・'70年代 後 半 に比 べ る と, 1/2以 下 の学 習 時 間で 働 きか け表 現 が 初 出 とな って い る 。毎 日4時 間 の学 習 時 間 とす る と,1週 間以 内 で の 初 出 で あ る。 これ は,提 出位 置 そ の もの が 早 くな って きた こ と の他 に,学 習 者 の多 様 化 が 進 み,短 期 学 習 者 用 の教 科書 が 作 成 され る よ うに な って き た こ とが 影響 して い る と思 わ れ る。 ち なみ に,想 定 学 習 時 間(複 数 冊 あ る もの は そ の 合 計)が100時 間以 下 の 教 科 書 は,'80年 前 半 まで は 皆 無,'80年 後 半 は2点,'90年 以 降 は6点 で あ る。 これ ら の教 科 書 で は前 述No.39及 び そ の 改訂 版 のNo,55の よ うに, 冒頭 か ら積極 的 に働 きか け表 現 が提 出 され,計8点 の 内1課 に働 きか け表 現 が提 出 さ れ て い る もの は5点 で あ った 。

3‑4.「 教 室 用 語 ・日常 表 現 」 別 枠 設 定 の有 無 とそ の働 きか け表 現

今 回 の調 査 で は,「 教 室 用語 」 あ る い は 「日常 表現 」 な ど と して正 規 の 単 元 群 と は 別 枠 で 教 室 内 外 の 使 用 頻度 の高 い表 現 を集 め提 出 して い る教 科 書 を調 査 し,そ こ に採 録 され て い る働 きか け表 現 の表 現 形 とそ の 表 現意 図 を も調 べ た 。 次 に そ の調 査 結 果 を 記 す(表5参 照)。

調 査 教 科 書59点 の内,正 規単 元 とは別 に 「 教 室 用語 ・日常 表 現 」 を 設 け て い る もの 15点,そ の他 教 師 用 指 導 書 な どに設 け てい る もの2点,計17点,全 体 の28.8%が 別 枠 に 設 け て い る 。年 代 別 に見 る と,'70年 以 前 の教 科 書 で は2,'70年 〜'74年1,'75年 〜 '79年1

,'80年 〜'84年2,'85年 〜'89年3,'90年 〜8で あ る。 年 代 別 の 出版 点 数が 異 な る の で 単 純 な 比 較 は で き な い が,少 な く と も'90年 以 降 出 版 の教 科 書 は,そ の 34.8%に 別枠 で 「 教 室 用 語 ・日常表 現 」 部 分 を設 け,そ こで は正 規 単 元 に お け る提 出 順 とは無 関係 に あ る表 現 が あ る機 能 を持 って用 い られ て い る と考 え られ る。 一 方,こ れ とは 逆 に,正 規 単 元 の1部 を 「 教 室用 語 ・日常 表 現 」 と して い る もの10点 で あ った 。

別 枠 の 「 教 室用 語 ・日常 表 現 」17点 か ら採 取 した 働 きか け表 現 は異 な りで44例 あ っ た が,そ の 表 現 形 を 見 て み る と,最 も多 い の は 「Vて 下 さい 」 で12,次 い で 「Vま

し ょう」7,「(〜 さ ん ・い っ し ょに)ど うぞ」5,「Vな い で 下 さ い」・「(も う1度,) お願 い します 」4,以 下,「Vて 」 「も う1度 」 「(これで ・で は),終 わ りま す」 各2,

「Vよ う」 「おV下 さ い 」 「〜 を下 さ い」 「質 問 が あ りま す 」 「質 問 は あ り ませ んが 」

表5「 教 室 用 語 ・日常 表 現 」 部 分 別枠 設 定 の有 無 とそ の働 きか け 表現

(21)

日本語初級教科書 における働 きか け表現初 出 21

No. 有 無 異なり提 出働 きかけ表現 表現意図 備 考

1 ・

2 ・

3 ・

4 ・

5 ・ ・ さ あ ,始 め ま し ょ う 。 指 示 ・促 し

・い っ し ょに読 んで下 さ い。 指 示

・本 を見 ないで 下 さい 。 禁 止

・〜 さ ん ,ど う ぞ 。 促 し ・指示

6 ・ ・聞 いて下 さ い。 指 示

・英語 は使 わ ないで下 さい 。 禁 止

・お願 い します 。 依 頼 ・指示 正 規 課 前 の 「IntroductoryLesson」 に 収 録 。 7(1) ・

8 ・ 1・2課 が,実 質,「教室 用語 」 にな ってい る。

9 ・

10 ・ ・始 め ま し ょ う 。 指示 ・促 し

・い っ し ょ に ど う ぞ 。 指 示

・もう一度(言 って下 さい)。 指 示

11 ・

12 ・ 学生 用文 法解 説書 に は,「 日本語 で言 って下 さい」 な ど

が収 録 され てい る*1。

13 ・

14 ・

15 ・

16 ・

17 ・

18 ・

19 ・

20 ・ ・始 め ま し ょ う 。 指 示 ・促 し

・聞 いて 下さ い。 指 示

・ い っ し ょに ど うぞ 。 指 示

・これで終 わ ります。 終了明示

・質 問が あ ります。 注目喚起

21 ・

20 ・ ・ち ょっ と 待 っ て 下 さ い 。 依 頼

・もう一度 お願 い します。 依 頼

23(8) ・ 1・2課 が 「 教 室用 語 ・日常 表現」の導入課 になっ てい る。

24 ・

25 ・ 1課 が 「 教 室用語 ・日常表現 」 の導入 課 にな ってい る。

26 ・

27 ・

28 ・ ・ ど う ぞ 勧 め

・一 を 下 さ い 。 依頼 ・要 求

29 ・

30 ・

31(6) ・ ・聞い て下 さい。 指 示

・本 を見 な いで下 さい。 禁 止

(22)

22 日本語初級教 科書における働 きか け表現初 出

・お願 い します 。 依 頼,指 示 6に あ っ た 「lntroductoryLesson」iよ な く な っ て い る 。 32(16) ・

33 ・

34 ・

35 ・ 別 枠 で 設 け て は い な い が,6課 は 「lnYorClassroom/Cl

assroomExpressions」 。

36 ・ ・ ど う ぞ ,お 入 り下 さ い 。 勧 め ・促 し

㍉ち ょっと待 って 下さい 。 依 頼

37⑯ ・

38 ● た だ し教 師用 指導 書 には 「一て くださ い」 を中心 に

教室 用語 が あげ られて い る。*2

39 ・ た だ し,1m課 が 「UsefulGreetings」 の 章 と な っ て い る 。

40(10) ・ ・始 め ま し ょ う。 指示 ・促 し

・も う 一 度 。 指 示

41 ・ た だ し,1課 は 「 あ いさつ」 とな ってい る。

42(33) ・

43 ・

44 ・

45 ・ ・始 め よ う 。 指 示 ・促 し

・見 て(下 さい)。 指 示

46 ・ ・見 て(下 さい)。 指 示

47 ・ 1課 の一部 であい さつ こ とばを まとめて取 り上 げてい る。

48 ・ ただ し,1課 があ いさつ こ とぼの導 入課 とな って いる。

49 ・ ただ し,1課 があ いさつ こ とばの導 入課 とな って いる。

50 ・ 。聞 い て 下 さ い 。 指 示

51 ・ ・も う一度 言 って下 さい 。 指 示

・ 一 さ ん ,ど う ぞ 。 促 し ・指示

・授 業 を始め ま し ょう。 指示 ・促 し

52 ・

53 ・

54 ・

55(39) ・ た だ し,1‑4課 が 「UsefulGreetings」 の 章 と な っ て い る 。 56(22) ・ ・ち ょ っ と待 って 下 さ い 。 依 頼

・もう一度 お願い します。 依 頼

57 ・

58(15) ・ ・で は,始 め ま し ょ う 。 指示 ・促 し

・聞い て下 さい。 指 示

・質問 はあ りませ ん か。 貔驢霖

・で は,終 わ り ま す 。 終了明示

59㈹ ・

注 ・各 教 科書 の働 きか け表現 の 内,同 じ形 で表 され 同 じ表 現意 図 を持つ ものが複数 あ った場 合 は,原 則 と して,一 例だ け提示 した 。

・表 中,二 重 線 は年代 の区切 りを示す 。

・*1No.12の 学 生用 文法 解説 書 にあ る働 きか け表 現 は次 の通 り。 「(日本語で,も う一度,み んな で,後 に つい て)言 って下 さい」(指 示)・ 「 答 えて ・聞い て ・読 んで ・本 を開 けて ・閉 じて ・書 い て ・覚 えて 下さ い」(指 示),

「 わ か りますか 」(理解 確認),「 よ くで きま した 」(評価 示 し),「 違い ます」(誤 り指 摘)。

・*2No.38の 教 師用 指導書 にあ る働 きか け表現 は次 の通 り。 「 今 日は…… の勉強 を しま し ょう」(指 示),「 聞いて

下さ い」(指 示),「 英 語を使 わ ないで 下 さい」(禁止),「 それ で は今 日の授業 は ここ までです 」(終 了明示)。

(23)

日本語 初 級 教 科 書 に お け る働 きか け表 現 初 出23

「こ こま で で す 」 各1,で あ っ た。 「Vて 下 さ い」 は さ ま ざ ま な形 を持 ち,「(も う1 度 ・大 き い声 で ・も っ とゆ っ く り ・日本 語 で ・み ん な で)言 って 下 さい 」 「本 を閉 じ て 下 さ い 」 「見 て 下 さ い」 「〜 さん に聞 い て下 さ い」 「 繰 り返 して 下 さ い」 「 読 んで 下 さ い」 「ち ょっ と待 って 下 さい 」 な ど,教 室 内 を 中心 に頻 繁 に 用 い られ るで あ ろ う表 現 と して 提 出 され て い る。 「Vま し ょ う」 は,1例 を 除 い て す べ て 「始 め ま し ょう」 で あ っ た 。 「Vな い で 下 さ い」 は 「 本 を見 な い で くだ さ い 」2,「 英 語 は(を)使 わ な い で 下 さ い 」2で あ っ た。

ま た,そ の 表現 意 図 は,指 示23(52.3%),次 い で 依 頼8(18.2%),禁 止4(9.1%), (授業 終 了 の)明 示3(6.8%),促 し ・勧 め 各2(4.5%),そ の他2で あ る が,依 頼 の 内 の 「も う1度 お願 い します 」 の2例 及 び促 し の 「〜 さ ん,ど うぞ」 の2例 は状 況 設 定 が な く表現 意 図 の明 確 な 決 定 が 困難 で,状 況 に よ って は 指 示 と とれ る場 合 が あ る。

そ うす る と,採 取 した 働 きか け表現44例 の 内,34例,77.3%が 教 室 内 で 指 示 を 与 え る 機 能 を持 った表 現 とい う こ とが で きる。

さ ら に,そ れ ら の指 示 表 現 は 当然 の こ と なが ら教 師側 の発 話 で あ るが,教 室 用 語 で 学 習 者 側 の 発 話 あ るい は学 習 者 も頻 繁 に用 い るで あ ろ うと思 わ れ る発 話 に は,「 お願 い します 」 「 質 問 が あ ります」 「ち ょっ と待 って 下 さ い 」が あ っ た。 特 に 「質 問 が あ り ます 」 は,そ の機 能 が 注 目喚起 と考 え られ る点 が特 異 で あ っ た。

4.ま と め

以 上 の 結 果 を ま とめ る と,日 本 語 学 習 が 始 ま って1週 間 た った ころ,教 科 書 の約1 割 ぐらい を消 化 した と ころで,デ パ ー ト ・商 店 ・レス トラ ンにお い て,「Vて 下 さ い」

厂ど うぞ 」 「Nを(数)下 さ い」 な ど の表 現 を使 っ て物 品 を購 入 した り注 文 した りす

る際 に必 要 な 諸 機 能 を持 っ た発 話 が な さ れ る,と い う働 きか け表 現 初 出 の典 型 が 浮 か

び上 が る。 しか しな が ら,今 日の学 習 者 ・そ の学 習 目的 ・学 習 形 態 な どの多 様 化 の 中

に あ っ て は そ れ は あ くま で も一 典 型 に過 ぎず,出 版 点 数 が 急 増 す る'90年 以 降,場

面 ・状 況,表 現 形 は そ れ ぞれ ほぼ20種,表 現 意 図 は約10種 を数 え る に至 っ てい る。 そ

れ は,「 初 級 の文 型 が現 実 の 生活 の 中 で,ど の よ うに使 わ れ るか を,一 つ 一 つ 見 直 」

(No.28『 文化 初級 日本 語1』 「この 本 の使 用 に 当た って 」pp.1)そ う とい う,教 育 現

場 の機 能 重視 の姿 勢 の表 れ で あ る と考 え られ るが,さ らに よ り子 細 にみ る と,こ う し

参照

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