論文の内容の要旨
氏名:小須田 南
専攻分野の名称:博士(医学)
論文題名:MIN6細胞のグルコース応答性インスリン分泌における炭酸脱水酵素の役割
炭酸脱水酵素(Carbonic anhydrase; Car)は二酸化炭素の可逆的水和を触媒する酵素であり、細胞内局 在、組織分布の異なる複数のアイソフォームが存在する。これまでに、炭酸脱水酵素の阻害剤であるアセ タゾラミドを用いた研究から、インスリン分泌調節においてCarが何らかの役割を果たしていることが示 唆されている。そこで、膵β細胞でのインスリン分泌調節においてCarアイソフォームが果たす役割を検 索するために、インスリン分泌能の高いMIN6サブクローンと比較的低いMIN6サブクローンを用いて、
Car アイソフォームの発現を検討し、さらにインスリン分泌と関連が強いと考えられたアイソフォームに ついて、インスリン分泌における役割の検討を行った。
まずqRT-PCR法を用い、インスリン分泌能の高いMIN6サブクローンと比較的低いMIN6サブクロー ンや糖尿病モデルマウス膵島用いてCarアイソフォームの発現を検討した。さらに、遺伝子の発現を修飾 したMIN6細胞におけるグルコースに対するインスリン分泌応答を比較した。
qRT-PCR法により発現を比較するとCar5b、8、13は分泌能の高いサブクローンで、Car11は分泌能の 比較的低いサブクローンで発現が多く、Car5b、8、11、13がインスリン分泌に関与している可能性が示唆 された。また、ob/obマウスおよびHigh fat diet(HFD)マウス膵島におけるmRNA発現解析では、Car5b はコントロール群と比較しob/obマウスで発現量が増加し、HFDマウスでは増加はなかった。Car8は、
ob/obマウスで増加したが、HFDマウスでは低下した。Car11はob/obマウスで発現の減少傾向を示し、
HFDマウスでは低下した。一方、Car13についてはob/obマウスで発現増加傾向にあったが、HFDマウ
スでのCar13の発現は差を認めなかった。
そこで、MIN6細胞を用いてCar5b、11、13を過剰発現する安定した細胞株を作成した。Car5bを過剰 発現させた細胞では、免疫細胞染色により、棍棒状の構造が増強して見え、ミトコンドリアに局在すると 考えられた。また、Car5bの過剰発現を誘導した細胞ではグルコースによるインスリン分泌の増加を認め たが、Car11、13では、変化を認めなかった。
さらに、Car5bの発現をshort hairpin RNAを用いたRNA interferenceによりノックダウンするとイ ンスリン分泌が低下した。これらの結果から、インスリン分泌MIN6細胞において、ミトコンドリアに局
在するCar5bは、インスリン分泌を正に制御すると考えられた。