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論文の内容の要旨
氏名:山 中 光 一
博士の専攻分野の名称:博士(工学)
論文題名:舗装構造設計のための混合地盤材料の変形特性に関する基礎的研究
従来,アスファルト舗装の設計方法は,材料や施工方法について一定の条件を規定する仕様規定の考え 方が用いられてきた。この方法は,材料や施工方法を規定しているため,新材料や新工法が導入されにく く,地域特性や使用材料などの条件に応じた柔軟性に欠け,コストの縮減が困難等の問題点が指摘されて いた。2001年には,「道路構造令」の一部改正にともない,舗装についても,環境負荷の尐ない舗装の導入 と舗装構造の性能規定化を図ることとされ,国土交通省令が制定された。これら政省令を具体化したもの として,「舗装の構造に関する技術基準」が国土交通省より,道路局長通達として示され,性能規定への移 行がなされた。性能規定では,舗装の性能指標を満足していれば,使用材料や施工方法は自由に選択する ことができる。近年は,循環型社会の形成が要請され,道路に用いる材料にもリサイクル材が求められて おり,これを可能とするためには,性能規定による設計方法が不可欠となる。性能規定への移行により,
今後は様々な材料が用いられることが期待される。
このような状況の中で,日本における地盤の特徴を考えた場合,日本は軟弱地盤が広く分布しているこ とから,これらの合理的な対策を考えていく必要がある。その方法の一つとして混合地盤材料を用いた地 盤改良があげられる。混合地盤材料は,母材に建設発生土が利用できることに加え,廃棄物を用いた混合 地盤材料も開発されてきており,これを舗装材料や路床土として利用できれば,道路舗装分野においても 環境負荷低減への貢献が可能となる。しかし,この場合には,土に土以外の材料を混入させるため,従来 の地盤材料と異なる力学特性を示す場合があることが指摘されている。これに対し,力学特性の把握に関 する研究は多くの研究機関で行われてきたが,これの多くは材料特性を把握することが目的である。その ため,混合地盤材料を用いた土構造物を施工する際に必要となる設計定数に関する研究は進んでおらず,
路床の上に構築される舗装構造を決定する際に必要となる設計定数は,いずれの設計図書にも示されてい ない。
一方で,舗装の構造設計に注目すると,仕様規定から性能規定へ移行するにともない,従来の経験的設 計方法(TA法)から理論的設計方法へ移行しつつある。TA法では,設計 CBRや等値換算係数を用いて設 計を行ってきたが,理論的設計方法では路床を含めた各層の弾性係数とポアソン比が必要となる。しかし,
弾性係数は様々な要因の影響を受け異なった値を示すことが知られており,用いる材料の弾性係数を正確 に把握することができなければ,舗装構造は異なったものになってしまう。舗装設計便覧(社団法人日本 道路協会)によれば,弾性係数とポアソン比の測定は,実測によるものが望ましく,レジリエントモデュ ラス(以下,Mrと呼称)試験が望ましいとしており,混合地盤材料の特徴である配合条件の違いや混入さ せる混入材剛性の違いがMrへ及ぼす影響の把握を明らかにしておくことが重要となる。しかしながら,混 合地盤材料を路床へ用いた際の設計定数に関する研究としては,羽田空港D滑走路に用いた気泡混合土の Mrが示されただけにとどまっており,混入材混入率や固化材混入率がMrに及ぼす影響の把握までには至 っていない。
そこで本研究では,混合地盤材料を路床へ用いた際の舗装の構造設計に必要な弾性係数を明らかにする ため,Mr試験を行い,混合地盤材料の配合条件の違いや混入材剛性がMrに及ぼす影響の把握を行った。
また,路床弾性係数は,応力レベル依存性があるため,構築される舗装厚によって異なった値を示す。そ のため,本研究では,平成13年度版舗装設計施工指針(社団法人日本道路協会)に示されている舗装断面 例と多層弾性理論を用いた舗装の構造解析により,輪荷重49kN作用時の路床弾性係数(以下Mr49と呼称)
のシミュレーション計算を行い,Mr49の算出を行った。その結果より,簡易的にMr49を算出できるよう,
配合条件に注目した推定式の提案を行った。
以下に,本論文の構成に従い概要を述べる。
第1章では,本研究を行うに至った研究背景を述べるとともに,研究の目的と位置づけについて述べ,
本論文の構成を示した。
第2章では,舗装の構造設計を理解するためには,その構造設計の変遷を知ることが重要であることか
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ら,アスファルト舗装要綱(初版)から現在の舗装設計施工指針(平成18年度版)に至るまでの舗装の構 造設計法について整理した。また,現在用いられている2種類の構造設計方法について示し,各設計方法 の利点と欠点を示した。性能規定への移行が決定されるにともない,設計方法も理論的設計方法に移行し つつあることから,理論的設計方法で必要となる弾性係数の算出方法や特徴について述べ,既往研究の整 理を行った。
第3章では,本研究で対象とした混合地盤材料に関する整理を行った。混合地盤材料の種類とその特徴 や適用事例の整理を行い,既往研究結果を示すことにより,混合地盤材料の問題点を指摘した。また,本 研究で用いた混合地盤材料を構成する母材(関東ローム),混入材(発泡ビーズ,ガラスビーズ),固化材
(普通ポルトランドセメント)の諸特性を述べるとともに,作製した混合地盤材料の物理的性質と力学的 特性に及ぼす配合条件の影響について考察を行った。混合地盤材料の湿潤密度は,母材よりも高い密度の 混入材を混入させると増加し,密度の低い混入材を混入させると減尐することが明らかとなった。その傾 向は,混入材混入率が増加することにより顕著に現れることを示した。また,含水比は,混入材の影響を 受け,土粒子に対する水の質量比でなくなることから,状態を表す指標としては不適切であることを示し た。力学特性は,CBR 試験と三軸圧縮試験(UU 試験)を行い,支持力特性とせん断特性に及ぼす配合条 件の影響ついて考察を行った。CBR試験より,剛性の低い材料を混入させた場合は混入率に反比例して支 持力は減尐傾向を示し,剛性の高い材料を混入させると増加傾向を示すことが明らかとなった。三軸圧縮 試験から得られる応力-ひずみ曲線より,剛性の高い混入材を混入させると,曲線初期の傾きは大きくな り,剛性の低い材料を混入させると小さくなることを示した。また,モールの応力円から得られる粘着力 は,固化材混入率の増加にともない増加傾向を示したが,せん断抵抗角については,固化材混入率が増加 することにより拘束圧の影響を受けにくくなり,減尐傾向を示すことを示した。
第4章では,混合地盤材料を用いたMr試験を行い,配合条件の違いがMrに及ぼす影響の把握を行った。
Mr試験は,舗装調査・試験法便覧(社団法人日本道路協会)に示されている15通りの載荷条件と0.1s載 荷,0.9s休止のハーバーサイン波を用いて試験を行った。その結果,混合地盤材料のMrは,剛性の高い混 入材を混入させた場合は増加傾向を示し,剛性の低い混入材を混入させた場合は減尐傾向を示すことが明 らかになった。また,その傾向は,混入材混入率が増加するにつれ,混入材剛性の影響が顕著に現れた。
固化材混入率の影響に注目すると,固化材混入率が増加すると母材の強度が増加するため,Mr試験の荷重 を載荷しても本研究の配合条件内では,破壊強度に対する荷重が小さいため母材が変形せず,母材が混入 材を圧縮することとなり,供試体の変形が混入材の変形に依存し,その差異は現れないことを示した。ま た,混合地盤材料のMrと偏差応力σdの関係は,配合条件によっては通常の地盤材料と異なり,σdが増加 するとMrも増加傾向を示す場合がある。これは,供試体の強度,剛性が増加することにより,破壊強度に 対して小さい荷重を載荷しても供試体に与えるダメージが小さく脆性的にならないためと考えられる。そ の傾向は,変形係数E50が約10MN/m2を境にMrとσdの関係は増加と減尐傾向に分かれることを示した。
第5章では,路床弾性係数であるMr49の算出を行った。また,舗装の構造解析やMr試験は複雑である ため,簡易にMr49を評価できるよう,混合地盤材料の特徴である配合条件を考慮した推定式の提案を行っ た。Mr49は応力レベル依存性があるため,舗装断面例と多層弾性理論を用いて輪荷重49kN作用時の舗装内 応力を算出し,Mr回帰モデル式に代入することによりMr49を算出した。Mr49を算出する過程で,混合地盤 材料を路床に用いた場合の構造解析に用いるMr回帰モデルとしては,偏差応力σdと主応力和θの影響を 両方考慮できるMEPDGモデルを用いるのが良いことを示した。舗装の構造解析によって得られたMr49は,
本研究の配合条件内では15~65MN/m2の範囲にあり,舗装計画交通量区分がN3~N7と変化するにつれ舗 装厚も増加するため,路床へ作用する応力が減尐し,Mr49は減尐傾向を示すことを示した。また,提案し た推定式でMr49を評価することが可能であることを示した。
この混合地盤材料を路床として利用する際には,どのような利用方法が適しているか判断するため,実 事例を参考に,CO2排出量を貨幣換算した環境コストを算出し検討を行った。その結果,現地発生土を用 いると,新材を用いる場合より半分の環境コストに抑えることが可能であることを示した。また,現地発 生土を用いた場合でも,混入材混入により余った発生土を処分するのではなく,再利用することによりさ らに環境コストを抑えることが可能である等の知見が得られた。
第6章では,本研究から得られた結論を総括し,その結果,混合地盤材料のMrは配合条件によって異な る傾向を示し,提案した配合条件を考慮した推定式で路床弾性係数Mr49を評価できることを示した。