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訳 業 点 検
武 居 正太郎
On Translation;
A Critique of Theree Japanese Versions
Masataro TAKESUE
1
一色マサ子氏によるMarckwardt,乃πθ沈翻EπgZ ∫h,1958の訳書が出たのは1960年で ある。当時早速買い求めて通読したが,別にこれといった印象は受けなかった。久しく本 棚に立てたままにしておいたのを最近ふと思い出して原著と比べながら読んでみた6訳書 が出た時,どのような書評がなされたかを調べてみたら, 「英文法研究」 (昭和32年5月 創刊,36年3月休刊)の35年10月号に笠井満氏の筆になるものが見つかった。しかし,そ の大部分は原著の内容紹介みたいなもので,結びに唯2点の指摘があるだけであった。
訳書が出てから既に久しく,再版されたとも聞いていない。今さら何をといわれるだろ うが,何か言わざるを得ない心境になったので,点検の結果を少しばかり記してみること
にした。
以下の点検は原著の2冷すなわち11The English Language in Americaおよび5 Yankee Ingenu三ty and the Frontier Spiritに関するものである。全巻について行なうだけ の時間的余裕がなかったからであるが,ひとつには他は推して知るべしの感があったから
である。
以下,英文の頭につけた数字は問題の個所が始まる行を示し,数字の前にマイナス記号 があるのはページの下から数えることを意味する。( )および〔〕の中の日本語は訳 者の責任であること,その申の末尾の数字は訳書のページを示す。なお,点検は論述の流 れに沿うて行なわれた。
P.1.
1. How many people in the world speak English as a first or native languagep(英
語を母国語とする人々の数はどれ位あるであろうか,1)ここではfirstは全く無視されている。 a first Ianguage−a native languageという等式 は常に成立するとは限らない。それはasecond language−a foreign languageといえない のと同じである。同様なことは,
一2. English is spoken as a first or native language on at least four continents of the world・(英語は少くとも世界の四大陸で自国語として話されているが,1)についても
いえる。
P.2.
4.It goes without saying tllat no two persons ever have an identical command of
their common language.(いうまでもないことだが,2人の人がひとつの言語を全く同じ ように知っているとは言えない,2) 煎じ詰めれば訳文のような意味になろうが,their common language, commandをこんな風に訳したのでは正確とはいえまい。共通の言語,
例えば我々だったら日本語を自由自在に使うといっても,そこには個人差があることを言
っているのだ。
14.If this be true of but two persons(2人の人間について言ってもこういうわけな
らば,2)
ここではbutが訳されていない。
一13.Of the 230 million speakers of English, one group of 145 miUion(英語を話す
2億2千万人のうち1億4千5百万人が,2)
ここではone group ofが無視されている。 1億4千5百万というのは任意の 145 millionではない。このことは冒頭にも,すぐ後にも米国在住者であることが示されてい る。前後関係から分らぬことはないが,145millionからなる集団といわなければ正確で
・はない。ただし,
一10.Another group of some fifty million(今ひとつの5千万ばかりの人のグループ,
:2)・ではgroupが考慮されている。
一8.British English(イギリス式英語,2)
一6. American EnglIsh(アメリカ英語,2)
何故前者に「式」がっくのか。ただし,これ等については後にも出てくるが,訳語はさ まざまである。表現が異なれば,ニュアンスもちがってくる筈である。
:P.5.
一16、Americanism(アメリカ式英語,3)
これとAmerican Englishとを,どう訳しわけるのか。
一13.He chaffed her for the Americanism(彼は彼女のアメリカなまりをからかっ た,4)
なまりとは標準からはずれていることば,発音ではないのか。ここで原語は果してこの
意であろうか。
:P.4.
16 the sign which is supPosed to have apPeared in a Paris shop window with the
legend:ENGLISH SPOKEN−AMERICAN UNDERSTOOD.(パリのショーウィンドー
に示されたと言われている説明書き,すなわち English Spoken−American Understood
(英語を話すが米語でもわかる)と書いた説明がきのことを,4)
(パリのショーウィンドー)とは余りにもgeneralizeした表現だ。「パリのある店のショ ーウィンドー」ではないのか。signは(説明書き)というよりも「掲示」である。1egend は(説明がき)と訳されているが,signとどうちがうのか。(英語を話すが…)でもわか らぬことはないが,掲示の文句らしく「英語話します一米語分ります」とでもしたら如何。
:P.4.
一10atwo−volume work on the same subject(2冊からなる同じ題目の書,5)
MenckenとKrapPでは書名がちがう。 「題目」という日本語はsubjectのこともtitle のこともいう。ここではsubjectの訳であるから,「同じテーマの書」とか「同じ問題を 論じた書」とかする方が誤解がなくてすむ。
訳 業 点 検 (武居)
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一6.attitude toward the material under consideration(アメリカ英語に対する態度,5)
(アメリカ英語)と訳すより,「考察の対象」という方が正確ではないか。
P.5.
1.first three editions(初めの3冊,5)はどうだろうか。 Menckenの書はSupPlement が2冊で,本冊が1冊だ。(初めの3冊)というと少くとも4volumesから成る著作の ように受取られる。
4. American English(アメリカの英語・,5)
何故ここでは「の」が入っているのか。
5.the English language(イギリス英語・,5)
これはこのContextでは単に「英語」であってしかるべきである。
11.between it and British English(このアメリカの英語とイギリス本国の英語の間 で,6)訳者の意図は分らぬではないが, 「米語と英語の間で」という方がすっきりしな
いか。
16. central tradition of the English language(「英語の主要な伝統」,6)は「を(英
語の)の次に移すべきだ。ここではthe English Ianguageは単に(英語)と訳されている が,1.5,では(イギリス英語)としてある。同様なcontextで何故こう訳しわけねばならないのか。
18.with great fidelity(如実に,6)
(如実に)という日本語の意味は「現実そのもののように」である。ここの訳は「きわ めて忠実に」ぐらいが適当ではないか。
一15. the adjective・4祝θγゴ。απ, unblushingly apPropriated, as is our wont,...is intended
to...(!勉副6伽という形容詞は,われわれアメリカ人のよくすることながら...厚かま しくもこの字を当用するのであるが,このアメリカという字は...するつもりである,6)
(字)というのはどうにも頂けない。
一7. between British and American(英米間の,6)
上に何度か引用した訳に比べると,これは少々粗雑である。ここでは,問題なのは言語 であって,国家ではないのである。
P.6.
11,Glven an American Engllsh which differs perceptibly from lts British counterpart
(イギリス英語の片われでありながらもそれとかなり異なるアメリカ英語を考えることに
なると,7)
an Amer・can Englishと不定冠詞がついていることには全然無頓着であるようだ。
12.we come to the question(われわれは次のような質問をしたくなる。すなわち,...
という質問をしたくなる,7)
これは教室で購読しているような訳しかたで,くどい。
How does this American variety of English reflect those facets of cultural history.
institutlonal development, and physical environment which are peculiar to the English−
speaking people on the American continent and which they do not share wth speakers
of English elsewhere on the globe〜(この英語のアメリカにおける変種がアメリカ大陸に 住んでいる英語国民に特殊なものであり,地球上の他の英語国民にはないところの文化史,制度の発達,自然環境という面をどのように反映しているのか,7)
訳文だけを読むと, (アメリカ大陸に住んでいる英語国民に特殊なもの)であるのは
(英語のアメリカにおける変種)であるみたいだ。peculiarなのはthose facets of cultural
:history,...だから,そのように読み取れる訳文でありたい。
一1 1n the light of the approach which has already been outlined with respect to
British and American English(イギリスの英語とアメリカの英語を考えて述べたやり方に照らしてみると,8)
これは誠にピンボケした訳というより外はない。
』P.81. . ・
5.Turner himself has stated his position as follows(Turner自身は彼の位置を次の ように述べている,108)
(彼の位置)というより, (彼の立場)ではないのか。
:P.82.
4. the English language in America(アメリカ英語,108)
これはAmerican EngliShというのと同じなのか。表現がちがうだけで,内容は同じだ
,といいきれるか。
一1, forelgn borrowings and the maintenance of older words, meanings, and pronun−
ciations, representing the incorporation of non−English elements and the retention of older phases of the culture of our mother coutry(外来語の借用と,英語でない要素と,
母国の文化の古い面の残存との結合したものを代表する古語や,古い意味や,発音などの なごりなどは,108)
何ともはや難解なこと。訳者は一体内容を理解しているのか。
12.In most玉anguages various parts of speech have what might be termed charac−
teristic shaPes(大ていの言語には特徴ある形と呼ばれてもよい種々の品詞がある,109)
こんな読み方をして,よくもまあ理解ができることよ。 「大ていの言語では,色々な品 詞が特徴的な形とでも呼べるものを持っている」というのではないか。
一5.journalistic jargon(ジャーナリズムのかくし語,109)
(かくし語)とは何か。 「ジャーナリストの用語」ではないのか。
一1.or some time has elapsed...(また変化が起ったとしても...いくらか時がたっ
たものである,109)この前の個所で,著者は,機能変化はイギリス英語には起らなかったと断定している。
そこで,ここの初めのorが問題だが,これは「言いかえると」位の意味で,アメリカ英 語起源の機能変化が,いくらか時がたってイギリス英語に輸入されたといっているのでは
ないのか。
:P.85
3.the most frequent type of change which is encountered(一番たびたび出くわし た変化のタイプ,110)
「最も頻雑に見られる変化のタイプ」とする方がすっきりする。
5.the use of nouns in an adjunct or joined function(名言司の付加物というか,他の
ものにつけ加えられる機能を持つ名詞の用法,110)この訳も難解だ。 「付加的あるいは接合的機能に名詞を使うこと」ではないのか。
8.the combinations(連合,110)
訳業点検(武居)
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これは語の組み合わせのことである。 「語結合」または「連語」とでも訳しては如何。
9. headlines(題目,110)
これは新聞の「見出し」である筈。
10.astounding combinations(びっくり仰天させるような連結,110)
ここでのcombinationsは1.8のそれとどう違うのか。別の語で訳すべき必然性がある
か。
10.CLUB FIGHT BLOCKS RIVER RAIL TUBE PLAN(組合の争いのために
河底のトンネルを作る計画がじゃまされる,110)
一色訳は原著の注釈的な文を訳したものだが,大文字を連ねた見出しをかかげての翻訳 とあれば,日本語もやはりそれらしいスタイルの表現であってしかるべきではないか。例 えば「組合闘争河底鉄道トンネル計画妨害」のように。
.14.is headed...(...という題で,110)
(題)ではなくて「見出し」とすべきであろう。
一7.finished building materials(ちゃんとした建築木材,111)「加工済建築資材」の 方がよかろう。 (ちゃんとした)という日本語は多義でありすぎる。
The verbal use of∫cα♂ρoccurred early(∫cα♂ρ〔頭の皮をはぐ〕の動詞的用法は古くか
ら使われていた,111)(用法は...使われていた)という表現は日本語に対するセンスの無さを物語る。
P.84.
2.was gne of the earliest lists of Americanisms(初期のアメリカニズムの一覧表に ふくまれている,111)
この訳からは,古いリストが幾つかあって,そのひとつというニュアンスが感じられな
い0
18.interview(面会する,112)
この訳はどうかと思う。特にjournalistic useであるからには,その辺のニュアンスを ふくんだ訳であるべきだ。
一18.both are first cited in 1869(両者ともに1869年に初めて引用された,112)
このように訳すと,誰かが何処かで書くか話すかしたことがあり,それを初めて引用し たという意味にとれるが,実は「両者とも初用例は1869年に出ている」ということではな いのか。OEDで年代を調べてみることだ。
15.news story(報道物語,113)
これは「新聞記事」ではないのか。
一2.word elements(語根,114)
これは「語要素」ではないのか。
P.86.
一11.book bindery(製本すること,115)
これは「製本所」ではないのか。
幽P.89.
1.that insidious fifth−column of American culture(あのアメリカ文化のゆだんのな らぬ第5列...のように,そっと,あらゆるすみずみまで,ゆだんのならないほど行きわ
:たったもので,118)
(そっと)以下に対応する英文は,少くとも原著の1958年のSecond printingには見当 らない。原文のinsidious fifth−columnの補足説明であるなら,もっと簡単に要領よくあ
りたいものだ。
12.Arnerican railroad terms(アメリカの鉄道の名称,119)
termは「用語」と訳す方がbetterであろう。
13.cha三r car〔背後の具合がかげんできるようになっている椅子を両側に備えつけた
客車,119〕
これは,あっさりと「安楽椅子つき特等車」位にしておいて,もっと説明がしたければ 脚註をするという手もある。
stopover〔途中下車駅(切符)〕
これは「途中下車」という行為は指さないのか。
14.milk train(市ヘミルクを出す汽車,119)
これもよくわからない。 「牛乳列車」位にしておいて,あとは脚註とするも一案。なお これには「鈍行列車」の意味もある。
一3.quota restrictions(割りあて額制限,120)
「額」という語をつかうと,金銭的な連想がある。ここでは「移民数の割りあて制限」、
のことだ。
immigration formalities in genera1(一般の移民の受ける形式的な事柄,120)
これは「移民手続一般」ではないのか。
P.90.
3.conducts a program of record muslc(レコード音楽のプログラムを指揮するだけ
である,120)
(プログラムを指揮する)とは実際にどういうことをするのか。 「レユード音楽の番組 を受持つ」とした方が分りやすい。なお, (だけである)は余計だ。
17.anti−braintruster〔反頭脳委員会,121〕
こんな委員会をF.D. Rooseveltがつくったわけではあるまい。 〔この委員会に反対す る人〕という説明の〔この委員会〕とは一体何のことか。甚だ理解に苦しむ説明だ。
P.92.
一15, This had gone to such lengths in the seventeenth and early eighteenth
centuries that...(このことが17世紀と18世紀初期にずい分長い間行われたので,124)to such lengthsは「非常に極端にまでおよんだ」の意味ではないのか。
Addison objected to it in a frequently quoted statement from one of theβρθcオ薦oγ
papers(Addisonはβφθ6厩oγ誌の1部から記事をしばしば引用して,これに反対した,
124)
何というひどい誤訳!不勉強も甚だしい。翻訳という仕事は辞書が傍にあればできると いうような安易なものではない。まして学術書であれば,読んで十分理解し得る力とでも いうべきものが訳者にそなわっていなくてはならない。訳書を公刊せんとするからにはな おさらである。そうでなければ「盲へび」のそしりを免れないであろう。
引用文があれば,その出典にあたって確かめるだけの努力がなければならなし1。
Addisonが引用しているのではなく, Addisonその人がその記事の筆者なのだ。5φθc一 観oγ:No.135, August 4,1711を見ること。 frequently quotedとはAddisonの筆になる
訳業点検(武居)
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ものを,他人がしばしば引用していることを言っているのだ。
一13.It is perhaps this humour of speaking no more than we needs must, which
has so miserably curtailed some of our words(われわれは,おそらくユーモラスな話し 方が,是非とも必要だというだけのことで,悲惨と思われるまでに,われわれの使うこと ばのあるものを切断してしまった,125)このようなデタラメ訳をつけて,よくもまあ平気でおられるものだ。ここでは「必要以 上には物を言わない英人気質」のために語の切り縮めがなされたといっているのだ。
上掲βρθc観07の記事の初めの方でAddisonはThe Eπ91∫曲delight in Silence more
than any other E麗γoρθ侃Nation, if the Remarks which are made on us by Foreigners are true.と言い,またFor, to favour our Natural Taciturnity, when we are obliged to
−utter our Thoughts, we do it in the shortest way we are able...と述べている。要する 1に,必要以上に物言わぬのがイギリス人かたぎなのだ。
一2.The English have contributed cα4,ρho置。,...(英語は...をとり入れた,125)
cαd助。加等のcurtailed wordsをcontributeしたのはイギリス人であ・る。 (とり入れ た)とすれば,どこかの外国語から借用したかに聞える。
幽P.95.
11.∫απfor an enthusiast (〔熱心な人々〕に対する 血ガ,126)
このforを(対する)と訳したのでは,よく意味が通じない。「〜の意味の」とする方
:がbetterではないか。
19. (boot or dgar) (長靴または安いシガレット,126)
cigarが(安いシガレット)とは恐れ入る。
以上のようにひとつひとつ見て行くと(とは言っても,敢えてふれなかったのが今まで
・に多々あるが),際限がないので,以下は特にひどいのだけを取り上げることにする。
1:P.95,
一13. aVermont statute(バーモント州,126)
statuteは(州)か。それなら何故に不定冠詞がついているのか。翻訳しながら,どうし てこんなことに思いをいたさないのだろうか。statuteは「法令」だ。
P.98,
12.the Marines and Coast Guard(海岸にも沿岸警備にも,133)
甚だ粗雑な訳だ。「海兵隊にも沿岸警備隊にも」としたら如何。
P.100
2. slide down a honey locust and not get scratched
(北米産のサイカチに乗っても,すべって引っかかれたりはしない,135)
訳者はサイカチを獣とでも思っているのだろうか。これは枝や葉にとげがある豆科の植 物。このようなことに関してはEncyclopediaでも見て確かめるだけの努力を必要とする。
「サイカチの木を滑り降りても,かすりきずも受けない」のではないか。
3. Ican whip my weight ln wildcats, hug a bear too close for comfort(山猫の中
に飛びこんで行き,気持ちよくしつかりと熊をだきしめることができ,135)これもひどい訳だ。オDゴ。蜘襯γyo∫沼〃〜θγ∫cαηf∫〃2∫o Hf∫ oγf αZ Pγゼπの1θ∫, ed. by
Mitford M. Mathews, The University of Chicago Press,1951.には次の説明があるl
Whip,り.4. In colloq. phrases:To初乃ψoπθ ∫ωθ69玩∫π 鋸。αεs, and variants, tofight w{th uncommon ferocity a血d effectiveness.
9.the llly of the vaUey(谷間の百合,136)
これは「鈴らん」ではないか。
12.aMexican mule(メキシコ産のロバ,136)
訳者はロバとラバが違うことをご存じないらしい。
19.hls Iady love(婦人に対する愛情,136)1ady玉oveは「恋人」だ。
,P.101.
一6.French flurts of the pastery(練り粉づくりのフランスの浮気女,138)
(練り粉づくりの)女とは菓子屋の女職人さんででもあるのか。 「おしろいなど塗りた くった」でなければ意味が通じない。
.3.having nothing as it seems in the fore−part but a few Squ玉rrils brains(前面に は何もつけず,だだ少しばかり,リスの頭をつけて,138)
あっばれ迷訳!afew Squirrils brainsは「余りよくないおつむ」とでも訳したら如何ひ OEDでもひいてみることだ。
P.102.
14.the countermovement toward litotes, or understatement(反対の方向の過少評価.
138)
これも誤訳。「曲言解すなわち控え目な表現に反対する動き」とでも訳すか。
16,the late seventeenth and eighteenth centuries(17世紀初期および18世紀,139)
藍ateは(初期)ではあるまい。
一13.We ve got the world on the hip because American boys have the hucklety−
buck and spizorinkum(我々は他人を負かした。アメリカのboysは正しく強いから,139>
これでも訳したつもりなのか。 「俺たちは世界を征覇したんだ。アメリカの選手たちは 盛んな開拓者精神を持ち,たゆまず努力をするからなあ。」とでも訳すか。
一5.no less a personage than the governer of one of our states(少1・1知事にさえ,139>
これは「州知事におとらぬ名士」ではないのか。
P.105.
5、the lay attitude toward the verbally esotic(ことばの上の深遠なものに対する常人.
の態度,139)
この訳も明確でない。「難解なことばに対する素人の態度」とでも訳すか。
一11.Aramaic(アラム語〔古代ギリシャの一地方語〕,140)
〔〕内の説明は甚だmisleadingである。こんな説明なら,無い方が罪がない。アラ ム語はセム語族一ヘブライ語,アラビア語などをふくむ一に属し,イエス・キリスト やその直接の弟子たちが話したといわれる言語。ギリシャ語はインド・ヨーロッパ語族に 属し,アラム語とは系統を異にする言語である。
一15. many of these are traceable to the development of Amercian instltutions and.
American way of life(これらのうちの多くは,アメリカの制度や生活用式の発達を跡づ けることができる,140)
(生活用式)は「生活様式」であろう。
訳業点検(武居)
71
are traceable toは「〜に起因している」ではないのか。
P.105.
11.without qualification(どんな特殊の性格ももたないで,142)
これは「制限なしに」ではないのか。
P.106.
。7.usually in lieu of a down payment(大ていは安くして買うような習慣のために,
144)
この訳もひどい。「大ていは頭金を払う代りに」ではないのか。
一6.trade−inには長々と説明がつけてあるが,あっさりと「下取り」としたら如何。
P.佃7.
5.1egislative investigation(行政研究ダ145)
(行政)でなく「立法」であろう。
ρ.旬8
−16.this independence of spirit(独立精神,147)
何とトボケた訳か。これは「精神的独立」だ。
わずか2章だけを見ても上記のような有様である。学術書であるから,著者の意図が大 体わかればいいというような翻訳は許しがたい。
(訳者のことば)に(教えるためには克明にしらべねばならないが,それを記録してお けばおもしろいと思った)とある。果して克明にお調べになったのか。誠にお粗末といわ
ざるを得ない。
著名学者が,内容も検討することなく,出版社に話をつけたという罪も,このような,
いいかげんな翻訳がまかり通る原因を与えたという点で,決して軽くはない。
私はかづて教え子のひとりから,立派に包装された贈物をもらったことがある。丁寧に 礼を言って,彼が辞去したあとで開いてみたら,一升瓶に入った日本酒であったが,一部 分白濁していて,飲めた代物ではなかった。
この訳書をささげられた恩師のお二方は,どのような思いをなさったであろうか。
皿:
小野達・小泉保共訳:英語文型論,北星堂書店,昭和50年3月。
これはG.H. Vallins,丁加ρα伽㍑o∫Eπ91∫画,1966の翻訳である。原書はE. Partridge とS.Potterによる改訂版だが,私が比べるのに使ったのはPelican Booksの中の1957 年版である。それ故に多少辞旬のちがいがあることを承知で点検した。ただし,本書の場 合も全巻を通してではなく,第一章から第四章の1の終りまでを見たにすぎない。
最初に示すページは訳書のそれであり,行数の示し方は一色訳の時と同じ。 〔 〕内は 訳書の語句である。
P.iii
1。 〔ペンブローク・カレッジ〕
Pembrokeは〔P6mbruk〕と読むのである。 、
p.16.脚註。 〔直接法〕
通例は「直説法」である。この通例でない訳語はp.17にも3回でているし,その後の 頁にも度々あらわれる。
P.29.5 〔ロウス監督〕 (Bishop Lowth)
Lowthは〔lauθ〕と読むのである。
p.50.一13.〔強勢の現代時制〕
〔強勢の〕はemphadcの訳だが「強調の」とした方がわかりやすい。訳者たちはこの
』語をいつもこう訳しているようだが,これではstressとの区別がつくまい。〔現代時制〕
はおそらく現在時制のミスプリントであろう。
一12, 〔中世紀までは時制40は.。.気まぐれな意味をもっていた〕
the medieval periodを〔中世紀〕とするのは未だいいとしても,この原文はUp to that time 40 had a causal senseだから〔時制40〕などとは飛んでもないし, causalを
casualと読みちがえて気がつかないのは全くひどい。
p.66.一3.〔かくして彼女は取り乱して倒れたが,付添いがなかったので火にのまれて
しまった〕
何ともひどい誤訳だ。これはShakespeareのJulius Caesar, IV. iii.155−6にある。〔火
・にのまれた〕のではなく「火をのんだ」のだ。自分の訳をつけるのもいいが,Shakespeare には定評のある邦訳があるのだから,借用する方が誤訳するよりはるかに賢明だ。
p.77.3.〔すなわち限定や修飾の語及び句を持った二つの主語一述語の単位を一つの文 に結びつけることであるが〕
〔一つの文に結びつける〕ではなく,「結びつけて一つの文にする」のだ。
p.86.一4. 〔その用法を用いる人々〕
日本語のセンスが欠けている訳である。
以上言及したものの外にconnective, conjunctive, conjunctionをみな〔接続詞〕と訳し 元り,訳しわける必要がないのにtextを〔原文〕, 〔資料〕, 〔テキスト〕としたり,
原書で9頁を参照するように指示しているのを訳書でそのまま訳したりしている。一々は 取りあげなかったが,細かい誤訳が多すぎる。固有名詞の読み方なども注意を払うべきだ。
期待して読んで,裏切られた感じが強い。
皿
沢田敬也訳,英語の発達,東京教学社,1975年。
これはH:.C. Wyld,丁加G70観h o∫Eπg1緬の訳書である。原著の初版は1907年出版,
私の手許のは1954年のReprint版である。訳本は第3章までしか読んでいないが,気が ついた点をのべてみる。
lp.16.一1.〔また同様に,砺∫の翫をできるだけ大きく発音し,かつできる限り長く のばし,その間に指先を喉に差し込むと〕
ゾ しレヘノ ノひ
波線の部分をよく考えてみると,こんなことが実際にできるわけがないと気がつく。原
文はput your finger−tips on your throat while doing soとなっている。つまり指先を喉
にあてるのである。onとinの読みちがえであろうが,誠にそそっかしい。だが訳して みて,おかしいと気がつかぬとは一体どうしたことか。
訳業点検(武居)
73
〔その予定音に誤りがないよう観察する音の例証として数語が与えられている〕
原文:and in order that there may be no mistakes as to which sound is intended,
several words are given to量Ilustrate the sound under d五scusslo琵
「どの音が意図されているかについて,まちがいが無いようにするために,その音の例
証として...」とする方が分りやすかろう。
p.27.一10 〔cは,しばしばこの音に発音されるように書かれていることに注意する〕
原文二Note that c is often written for this sound.
「この音をあらわすためにCと書くことが多いことに注意せよ」の方が分りやすい。
一5. 〔この音を表わすのに,しばしば2文字を使って書かれてあるが,これらの語の 音は1つの子音であることに注意する〕
原文:Note that, although often written with two letters, the sound in these words iS a Single COnSOnant.
「2文字で書かれることが多いが,これらの語中のその音は単一の子音であることに注 意」とでも訳す方が通りがよくないか。
p.52−10.〔これらの音は,綴字の中にまだ残ってはいるが,標準語では,もはや発音 されなくなっている7の前に主に生ずる〕
原文:These occur chiefly before anγ, which is still retained in the speUing, but no longer pronounced, in Standard English.
in Standard English の前にcommaがあることに注意すべきである。つまり,この語 句は but no longer pronounced だけにかかるのではないということだ。したがって,訳 文中の〔標準語では〕は〔これらの音は〕の次に入れるべきである。
P.55.4,一12,一4;p.54.12.〔多分〕
この原語はapproximatelyである。例えば〔ou〕という二重母音の説明のところ,原文
は(6)No.1.2consists, approxirnatly, of the short o in hot, followed by theπof
pπIIである。訳文は〔(b)〔1〕②の音は,多分履〔hっt〕の短い。音に,餌ZZのπが 続いて形成された音である〕となっている。この場合〔多分〕は適語ではなく, 〔大まか に言って〕位でなければ具合が悪い。p.54.13.〔この音でもまた,スコットランドの話者は。α7θ 〔kεe〕のような語の7音 を頭動,つまり巻き舌にし,フランス語の6に似ている音か,あるいは同一音である全く V\/VV、飼VV {異なる母音をだす〕
ダ
波線の部分はどういう意味なのか,私にはさっぱり分らない。
原文:Here again Scotch speakers trill or roll the hn such words as cαγθ, and pronounce a different vowel altogether, one approximating to, or identical with, French 6、
「この音でもまた,スコットランド方言話者は αγ8のような語のγ音をふるわせる,
つまり巻き舌にして全く異なる母音を発音する。その音はフランス語の6に大体似ている か,あるいはそれと全く同じかである」とでも訳すか。
P.19.12.〔⑳の診音に4ψの4音を発音し〕
い
波線の部分は「と」のミスプリントか。
14. 〔小指の先を(手は上向きに掌を握り)上の前歯の内側へ入れてみなさい〕
()内の原文はthe hand being held palm upwardsである。これは「手は掌を上向 きにして」ではないのか。
p.26。4.
p,55.7.〔(2)与えられた文章の中で〕
p.56.5.〔文章の中で〕
一1.〔英語の文章には〕
この3つの場合, 〔文章〕の原語はsentenceである。文法用語としてはsentenceは
「文」と訳されるのが通例であり,「文章」というのは,日本語では先ず「文が集まって 全体で一つのまとまりを持ったもの」のことをいう。 「文章」にあたる英語は先ずcom−
position, writingであろう。勿論「文」が「文章」の意味のこともあるが,上例の場合の sentenceは「文」と訳すのが至当であろう。
9.〔1 〃2g如41〃鶴yoπ.「お目にかかれてうれしい」の句の中で,〃獅の とyoπ のy音は無教養者の言葉で早日に発音する時は,ε音に訪〔∫)が続いた一般に読〔t∫〕
音と呼ばれている音にしばしば結合される〕
原文:In the phrase 1 〃391α41耀彦yoπ the of〃観and the y−sound of yoπ
frequently combine in rapid, unstudied speech, into what is popularly callled the 功一sound−that is, followed by the読sound.
unstudiedは〔無教養〕と一応無関係である。これは大体naturalと同義である。原文 は耀 のオとyoπのyが結合して酌音になることが多いといっているのである。沢
,田虫は余程神経をつかって読まないと,何が何だか分らない。
一2.〔音強勢〕の影響
原著では丁加血伽θπ θ0プ8〃θ∬0〃80捌4∫となっている。沢田訳では〔音強勢〕な 一るものが何かにおよぼす影響みたいに受取れやしないか。この場合,stressがsoundにお よぼす影響を意味していることはいうまでもない。
一1.〔小さいけれど絶対必要な...語〕
原文:small but indispensable words
〔小さい語〕とは何か。この場合のsmallは「余り重要でない」の意であるから,それ と分るように訳してほしかった。
P.57.6.Who s this book forP〔この本は誰のですか〕It s for me.〔それは私のです〕
それぞれの英文に対する日本訳はこれでいいだろうか。訳者はこの2つの英文の意味が Whose is this book〜It s mine.の意味とどのようにちがうと考えているのか,あるいは 伺義と考えているのか。
以上のべたことの外に若干のべると,P.26fの子音,母音,二重母音などの説明に し..などに現われる〕, 〔...に現われる〕がうんざりする程に頻出する。これなど,も っとすっきりしたいものだ。また第3章の4では終りのパラグラフが2つ訳出されていな いが,これに対しては何らのことわりもない。
ここで問題にした訳書は3冊とも残念ながら決してすぐれた訳業とはいい難い。神業で噂 億ないから,少々の欠点は誰にもあろう。それにしても多すぎる。ちいさなものまで一々
・拾ったら殆んどきりがない。翻訳は原著に対して忠実でなければならない。安易な気持で 取りかかるべきではない。訳者が自分では承知しているつもりの語でも,案外誤解して
いることがある。自分の仕事を世に問うからには自らに対してもきびしく,正確で良心的 でなければ,第一,原著者に対して甚だ失礼である。訳したものを公刊するとならば,大
訳業点検(武居) 75
学で講読や演習をやっている時とはちがって,使用する言葉も吟味されねばなるまい。そ ういうスタイルの点からみても,この3冊は共に見劣りがする。