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雑誌名 地域研究

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平成23年度学部重点課題(地域研究)成果報告書 :  人文学部防災研究会報告書 「大規模災害発生時に おける地域社会と経済活動の継続計画」

著者 鳥畑 与一

雑誌名 地域研究

巻 3

ページ 41‑45

発行年 2012‑03‑08

出版者 静岡大学人文学部

URL http://doi.org/10.14945/00007905

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平成 23年 度学部重点課題 (地 域研究 )成 果報告書 :人 文学部防災研究会報告書

「大規模災害発 生 時 にお け る地域社会 と経済活動 の継続 計画」

文責   経済学科   鳥畑与一 は じめに :研 究会の設立 と目標

昨年 3月 11日 に発生 した東 日本大震災は、被災地に甚大な被害を与えたのみならず、 日本の学術体 制のあ り方にも大きな衝撃を与えた。原子力発電に関す る 「安全神話の崩壊」に伴 う 「御用学者」 と い う言葉 の氾濫は、あらためて学術研究に身 を置 くものの社会的費務 とは何かを厳 しく問いかけるも のであつた。そのなかで、多 くの研究者が、大震災の復 旧・復興や原発事故に伴 う放射能被害の防止 等に誠実 に取 り組んできた。その多 くが 自然科学者 によつて担われたものであつたが、同時に社会科 学者 もまた様 々な取 り組みを行 つてきた。例 えば、福島大学では、震災直後か ら復 旧・復興に向けて 様々なプ ロジェク トを立ち上げてきたが、そ の中では脱原発 を目指 した地域経済の展望や被災を受 け た子供たちの心のケアな ど人文社会科学系の研究者 も大きな役割 を果た している。

静岡大学でも東 日本大震災の復 旧・復興 にどのよ うな研究面での貢献ができるのか とい う探求が な されてきたが、その中で人文学部 として何ができるのか とい う問題意識か ら有志でスター トしたのが 本研究会であつた。学部重点課題 (地 域研究 )と して財政的補助 を受け、経済学科・法学科の10名 の スタッフで立ち上がった本研究会の初年度は、まず 「我々に何ができるのかを明 らかにす る」 ことを 目標に、研究会の定例開催 とともに、 ヒア リング と現地調査がそれぞれ一回実施 された。東 日本大震 災に関わつて、そ して予想 され る東海・南海地震の防災・減災に関連 して、まずそれぞれのスタ ッフ の研究報告・交流 を軸に しつつ も、脱原発 を 目指 して 「牧之原 シ ヨック」を全国に与えた牧之原西原 市長への ヒア リング、そ して 「被災」大学 として大震災の復

1日

・復興のま さに渦中に身を置 く福島大 学の清水副学長へのヒア リングと福 島の観光業 と雇用状況に関す る現地調査 を通 じて、本研究会 とし て多 くの問題 を学び、課題 を明 らかにす ることができた と思える。 当然それは端緒で しかな く、本格 的な研究成果 としては今後の継続 した研究活動に待たねばな らない。本報告は、本研究会の 1年 間の

活動を概括す るに とどめるが、 この 1年 間の研究会スタッフの個 々の研究成果 をも含めた『 報告書』

を本年 に発行予定である。興味のある方は、そちらを参照 されたい。

1.研 究会について

(1)設 立 に あ た つて の研 究 会 設 立 趣 旨

東 日本大震災では、 「想定外」の大津波により事前の防災体制が大きなはころびを見せたことが大き な特徴であつた。震災後の情報通信の麻痺、行政機能の喪失、会社・工場等の大規模被害、金融機 関 の支店 における被害など、震災後の行政・経済・金融機能等の継続性 をどう維持するのかが大きな課 題 として浮かびあがつた。また福島第一原発事故は浜岡原発を抱 える静岡県にとつて大規模な原発事 故が起 きた場合の課題 をも明 らかに した。本研究プロジェク トでは、予想 される東海南海地震 に向け て どうい う政策的課題があるのかを整理 し提示す ることを目的 とす る。

(2)研 究会のメンパー と担当

研究会は、鳥 畑 与 一 (経 済 学 科 、担 当 :金 融 機 能 の継 続 性 )を 代 表 に して 、野 方 宏 (経 済 学 科 、観 光 産 業 の継 続 性 )、 寺 村 泰 (経 済 学 科 、企 業 活 動 の継 続 性 )、 布 川 日佐 史 (経 済 学 科 、 生 活・ 雇 用 の継 続 性 )、 藤 岡光 夫 (経 済 学 科 、 脱 原 発 と防 災 の 地 域 的 課 題 )、

‑41‐

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島慶 吾 (経 済 学 科 、 企 業 活 動 の継 続 性 )、 山 下 隆 之 (経 済 学 科 、企 業 活 動 の継 続 性

)、

川 瀬 憲 子 (経 済 学 科 、行 政 機 能 の継 続 性

)、

伊 東 暁人 (経 済 学 科 、情 報 通 信 網 の継 続 性 、本 庄 淳 志 (法 学 科 、 生 活 雇 用 の継 続 性 )を メ ンバ ー と して ス ター トした 。 ま た後 述 す る よ うに 、 メ ンバ ー 外 の研 究 者 との交 流 も進 め 、 静 岡 大 学 防 災 総 合 セ ン タ ー との連 携 も進 め る こ とが で き た 。

(3)研 究会活動 の概要

①  8月 3日   第 1回 ミーテ ィング

毎月 1回 の研究会 を通 じて、それぞれのメンバーが、研究課題 に関連 して どのような研究 と取組み を行 つているのかの研究交流を通 じて問題整理 を行 つていくことと、適宜、 ヒア リングや現地調査 を 行つてい くことを確認 した。

②  8月 26日 第 1回 ヒア リング (牧 之原市西原茂樹市長 )「 牧之原市防災体制について」

鳥畑 。川瀬・伊東の 3名 で牧之原西原市長の ヒア リングを実施。静岡県下で初めて浜岡原発停止決 議 を行つた牧之原市の防災に向けた取組みや市長 としての問題意識について話 を聞 くことができた。

隣接する自治体には リスク しかない、鈴木 自動草をは じめ地元立地企業・工場 も震災・原発 リスクを どう管理す るかで苦悶 している、市 としては積極的に被災地への支援に取組む と同時に東海地震に備 えて他 自治体 との防災協定でネ ッ トワーク作 りを進めると同時に地域の標高の確認、津波対策におけ る公共施設の役割見直 しな どに取組んでいる話 を何 うことができた。

③9月 30日   第 1回 研究会   山下忠 (県 BCP協 会 )&石 井洋之氏 「大規模 災害時における BCP」

大震災直後 に、被災 された方の救助活動や避難所の確保・運営な どとともに、企業活動の早期の復 旧・復興が大 きな課題 として浮かび上がった。様 々な部品等のサプライチェーンの拠点 としての東北 経済の麻痺が 日本企業全体に深刻な影響 を与えたのであった。震災以降の企業の活動継続性の確保 を 保証する 「事業継続計画」 (BCP)の 策定は、東 日本大震災以前か らも注 目され様 々な取組みが行われ てきたが、それが大きな効果があつた とい うことが今回の大震災でも立証 された。 この BCPは 企業 ば か りか行政や大学な どその応用範囲が広い とも考えられる。そこで事業継続計画について YAMAHAビ ジ ネスコンサルテ ィング代表の山下忠氏 と石井洋之氏の報告を何 うことになった。 8名 の参カロのもと、

BCPの 概念やその期待 される効果 とい う基本的な話か ら、静岡県が全国的に先駆的な取組みを行って いる具体的事例が紹介 された。例えば、県保証協会の BCP特 別保証 を契約 しておけば、被災後の中核 事業の再開に向けて迅速に融資を得 られ るとい う制度が静岡県のみで創設 されているとい う点は非常 に参考になつた。

10月 20日   第 2回 研究会   本庄淳志   「震災 と労働法―法律学でできること」

伊東暁人   「情報通信技術 と BCP〜 BCPか ら DCNへ 〜」

まず本庄氏か ら震災発生下で労働者は どうい う困難な状態に置かれ るのか、そ してそれ をどう解決 すべきなのか とい う課題 に対 して、労働条件の変更をめぐる法律・ 制度の現状や問題点を分か りやす く整理 しなが ら、企業の直接間接の被災による賃金の減額・不払いの問題 、失業・ 休業の発生 とその 補償の問題の発生に対 して、震災時においても解雇権濫用法理について 「震災時の対応 として、特 に 異なるものではない」としつつ も、使用者側 に過失を要 しない点で「差が顕在化」す る点を指摘 した。

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そ して災害下での雇用創 出のためには労働者保護立法の柔軟な運用が必要であ り、雇用の流動性を確 保す る政策のために 「経済学 とのコラボが有意義」であると指摘 された。

次に伊東氏か ら東 日本大震災では広範囲な情報通信 の途絶による 「届かない情報、伝 えられない情 報」の問題が深刻に発生 し、的確 にヒ ト、モノ、カネを動かすための情報の重要性が改めて確認 され た こと、そのなかで現在 の情報通信体制の問題点が大き く浮かび上がったこと、対応策 としては、で きるだけシンプルな文字メールのみのや り取 りの限定が必要であ り、かつ複数の通信アクセス手段の 確保 が不可欠であることが指摘 され、インターネ ッ トや衛星携帯通信の活用が必要であることが強調

された。

⑤10月 21日 〜22日   第 1回 現地調査

布川、鳥畑、川瀬 の 3名 で福 島現地調査 を行 つた。 まず福島大学では、清水修二冨 1学 長 と総務課の 木村女史か ら話 を伺つた。震災直後は停電、公共交通機 関の停止のもとで、帰宅出来なくなった学生 に会議室を開放 して宿泊 させ るな どの緊急対応 を行 つた こと、春休み中であつたが全学生の安否確認 を 3月 中に終了させ ることができたが必死の思いで取 り組んだこと、大学 を避難所 として提供 し、ま た放射能測定の取組みな ど地域 と連携 した取組みを行つてきたこと、震災以来役員が一名大学に輪番 で宿泊 して対応 して全学での避難指示 を出すか否かで苦渋の選択 を迫 られたこと、震災時、放射線計 測器一台 しかなく、他大学か ら貸 してくれたのが静岡大学の 10台 だけであつたことな ど、生々 しい言 葉では洗わせない苦労話 を伺 うことができた。

その後、県の旅館 ホテル組合事務長 さんからお話 を伺 うことが出来た。賠償問題での東電の 「えげ つないや り方」への怒 り、そ して福 島が見捨て られてい る邪魔者扱いされているのではないか とい う 思いのたけ、原発事故には 「原発か らの距離は関係 な く、すべての地域が福島 として敬遠 され る」 こ とで福島観光が壊滅的な打撃 を受 けている現状、福島市近郊 の土湯温泉では、原発事故の影響で客が 激減 し、16件 中 6件 が破産・体業の状況であるが、これか らが夜逃げ同然 の破綻が続 くのでは と懸念 しているとい う話であつた。最後に伺 つたハ ロー ワー ク福 島では、大震災後の福島市における休職状 況や失業者の現状について話 を聞 くと同時に、仮設住宅に戸別訪問員 を配置 し求職の案内な どの努力 をしているが、 昼 にはなかなか避難 されている方がつかめな くて との苦労話なども聞 くことができた。

ちょうど当日朝の新聞で仮設住宅の 7割 のかた方の職が無い、 とい う報道 もあ り、復興に向けてまず 生活再建 をどう進めるのか、現場の難 しさを実感できた。

⑥ll月 17日   第 3回 研 究会   藤岡光夫   「原爆災害の長期的健康障害―原発災害 との比較、

特殊性 と共通性の検討に向けて―

J

第 3回 では研究会では、冒頭 に簡単な福 島調査報告 (鳥 畑 )を 行 つた後に、藤岡氏による広島 。長 崎原爆被害者の実態調査・研究の報告 を受けま した。「唯一 の被爆国」日本 には認定 (生 存 )被 爆者が 26万 人存在 (2006年 時点 )し ているが、その方たちの健康状態や心の不安の問題に対す る系統的な実 態研究がない現状で、全体集団を対象に した全数調査 に取組んでいること、そのなかで心の傷 (PT

SD)や 「自覚 しない心の傷」など様々な問題が浮かび上がってきたことなどが報告 された。地震・

津波・原発事故の二重苦に苦 しむ福 島県、そ して地元大学 として苦闘す る福島大学の状況、 さらには 被災者の心のケアの重要性が浮 き彫 りになった。

第 4回 研 究会 (防 災総合 セ ンター・ セ ミナ ー室

)

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12月 15日

(5)

増 田俊明 (セ ンター長 )「 静岡大学防災総合センターの防災戦略」

川瀬憲子   「東 日本大震災後の復 旧・ 復興 と自治体財政―産業インフラ優先の 復興 と進まぬ生活再建」

第 4回 目は、増 田防災総合センター長か ら、静岡大学防災総合セ ンターの基本的性格や課題、そ し て大学内外 の様 々な研究者の交流ネ ッ トワー クとしての機能について話を伺 うことができた。専任 2 名、併任 15名 、客員 25名 で、 3部 (研 究・ 教育・ボランティア )で 展開 されているセンターの基 本は 「研究」であ り、防災の 「事前」に焦点を当てて活動を行 つていること、そ して 「アクロスの原 理」、「由比の地すべ り J「 静岡平野を襲った大津波」な どのセンターの具体的な研究成果についての紹 介が行われた。 なかで も千年を超 える大きな時間軸で大谷地区を大規模 な津波を襲つていることがボ ー リング調査で確かめられた とい う報告は、従来の想定ばか りか従前のマスコミ報道 をも超えたもの であ り興味深かつた。

川瀬報告は、何度かの現地調査 を踏まえて、大津波 とい う自然災害が 自治体行政の再編・合併 を通 じて 「復興災害」 とも言 うべき事態を招いていることを官城県石巻市の財政分析な どを中心に明 らか に したものであった。すなわち産業インフラの復興が優先 され生活・生業支援が軽視 され る構造が存 在 していること、阪神淡路大震災の教訓が活か されていないことな どが、国の補正予算の構造やその 下での 自治体財政や復興計画の問題点を通 じて詳細の述べ られ、 「地域差別 と悲劇 を繰 り返 さないため J

に生活中心、ボ トムア ップ型、地域産業重視・ 市民参加型の復 旧・復興政策への転換 を訴えるもので あった。

l月 19日 第 5回 研究会 (防 災総合センター・セ ミナー室

)

江 回昌克 (人 文社会科学研究科臨床心理学

)

「東 日本大震災被災者の心のケアについて」

横幕早希 (防 災総合センター

)

「東 日本大震災津波被災地現地踏査の報告」と「防災総合センターについて」

研究会外の研究者 との交流を拡大す るため、被災地か ら静岡県に避難 されてきた子供たちの心のケ アに取 り組んでいる江 日氏 と被災地での現地調査ばか りか学生を引率 してのボランテ ィア活動に取 り 組んでいる横幕女史の報告を受けることができた。江 口氏の報告では、こころの支援事業「アナナス

J

を通 じた被災地の児童・生徒や父兄 との交流 を通 じて、被災者 自身が抱 える様 々なギャップの大きさ や被災地か ら避難す る人たちへの複雑な被災者 自身の思い、そ して避難先で抱える深刻 な 「避難ス ト レス」の大きさ、「専門家が役に立たない」とい う局面の多 さ、そ こか ら学ぶべき 「支援活動を行 う際 の基本」について貴重な話 を伺 うことができた。

横幕報告は、防災センターのスタッフとしての自身の歩みの紹介か ら、「ふ じの くに防災フェロー養 成講座」を中心 としたセンターの教育活動の紹介の後、宮城県、岩手県、新潟県、和歌山での数多 く の現地調査を貴重な時系列での被災地の写真紹介を踏まえて行いつつ、県別犠牲者数、年代別犠牲者 構成比、市町村別祐犠牲者・犠牲者率、そ して市町村別の浸水域人 口に対す る犠牲者数の分析 を通 じ

て、今回の東 日本大震災の犠牲者のほとんどが津波によるものであ り高齢者に集 中しているが、明治 三陸地震による犠牲者率 と比べればその率は低い ことか ら、被災地における防災の取組みが況実に被 害を少な くする上で大きな効果 を発揮 したこと、ただ三陸地域外では防災意識 に差が存在 し被害を大 きくした可能性があることか ら、防災の取組みを今回の教訓を踏まえて強化す ることが静岡でも重要 であることを明 らかにす るものであった。

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(6)

終わ りに :防 災が求める知の総合力の発揮

本研 究会を通 じて浮かび上がったのは、 自然災害に対す る防災・減災や復 旧・復興において、 自然 科学者 と社会科学者の協同の重要性であつた。 自然事象の現象やその予知に基づ く防災において 自然 科学者 の果たす役害 Jの 大きさは言 うまで もないが、その情報をいかに正確に発信するか、その情報が 受 け手 にとつて どう云 う受容が され るのか、そ して リスクマネジメン トをどう行 うのか等において社 会科学者の果たすべき役割 も大きい。

そもそも現代社会に山積す る課題解決 のため 「知の統合」の 「復活」が叫ばれて久 しい。例 えば、

日本学術会議『 日本の展望一学術か らの提言 2010』 (2010年 4月 5日 )は 、「科学技術基本法 J(1995

年 )に 基づ く政策が人文・社会科学の知的営みを排除 し、技術開発志向に偏重 したもの と指摘 し、 自 然科学 と社会科学を統合 した「学術」の総合的発展の必要性 を説いていた。「学術か らの提言」の一つ である 「リスクに対応できる社会 を 目指 して」 (日 本の展望委員会・安全 とリスク分科会 )は 、リスク とは、「人が行 つた行為によって被 る損害の可能性すなわち確率」であると同時に「地震・風水害な ど の 自然災害、 自己が責任 を負いきれない思わぬ 自己としての危険および人間の力では避 けることので きないハザー ドな どをも含めて、人の意思決定のあるな しを越 えた」 ものであ り、これ らの個々人が 対応すべき リスク、国が対応すべき リスク、グローバルな対応 を要求 され るリスクに対応できる社会 を構築す るためには、 リスクの大き さを計測す るための 「リスク指標」の開発に基づいた リスク管理 が必要であ り、 この リスク管理科学 (安 全の科学 )の 確立のために 「自然科学 と人文・社会科学の緊 密 な連携が必要である」と指摘 していた

1。

ここで提唱 されている 「リスク管理の科学」は、リスク評 価、 リスク管理、 リスク・ コミュニケーシ ョンの 3要 素か らなるが、「極 めて複雑な作業であ り、そ の背景には文理融合型の総合科学の支援体制がなくてはな らない」 とされていた

2。

図 らず も、 2011年 3月 11日 の東 日本大震災に続 く福島第 1原 発事故の原発災害の発生は、自然科 学 と社会科学の両者の協同による知の総合化が緊急の課題であることを示 した。地震・津波 による甚 大な人的 。物的被害か らの復興 とい う課題ばか りか、原発事故に続 く放射能汚染の拡が りとい う純粋 に工学的・技術的事象 と思える問題 です ら、その再発防止や問題克服において人文・社会科学の貢献 が不可欠であることが示 された。 この点で田坂広志著『 官邸か ら見た原発事故の真実―これか ら始 ま る真 の危機』の指摘は極めて示唆に富んでいる。氏は、 リスクマネジメン トの視点か ら事故が単なる

「技術的要因」のみで起きたのではなく「人的、組織的、制度的、文化的要因」を根本原因として発 生 したものであ り、その解決な くして再発を防 ぐとい う真の リスクマネジメン トは実現 し得ない とい うことを強調す る

3。

また リスクマネジメン トの 3つ の原則である、①最 も厳 しい仮定に立つ、②最悪 を考 えて万全の措置を取 る、とともに③空振 りの損失 コス トを覚悟する、を挙げつつ 「この 3つ の原 則か ら考 えて、最 も取つてはな らない判断は、 『 この基準を厳守す ると、かな リコス トがかかる、従 っ て、実際には大 した健康 リスクは無いだろ うか ら、当面基準を緩 めよう』 とい う『 経済優先主義的』

な判断であることを強調す る。 このことは自然科学上の知見が社会科学上の 「一つの論理 Jで 歪め ら れる 「危険な協同 Jの 可能性 を示 しているのであつて、逆に社会科学の果たすべき役割が示 され る。

正 しい 自然科学 と社会科学の協同による知の総合化が求め られていると言 える。 (以 上は、鳥畑 による 私見を交えた研究会のま とめである。客観的な研究成果については『報告書』を参照 されたい。

)

1日 本学術会議・ 日本 の展望委員会・安全 とリスク分科会 「リス クに対応 で きる社会 を 目指 して」、 2010 年 4月 5日 、 五〜 Шペー ジを参照。

2同 5ペ ー ジ。

3田 坂広志『官邸から見た原発事故の真実』、光文社新書、2012年 1月 、79ペ ージ参照。

‑45‑

参照

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