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法 定 地 上 権 の 成 立 し な い 事 例

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(1)

︹判例研究︺

法定地上権の成立しない事例

園田格

昭和三六年二月一〇日最高裁判所第二小法廷判決︵昭和三三年︵オ︶第七七〇号建物収去土地明渡請求事件︶最高

裁民集一五巻二号二一九貢−棄却

︹判決要旨︺土地に対する抵当権設定の当時︑当該建物は末だ完成しておらず︑しかも原判決認定の事情︵原判

決理由参照︶に照らし更地としての評価に基き抵当権を設定したことが明らかであるときは︑たとえ抵当権者におい

て右建物の築造をあらかじめ承認した事実があっても︑民法第三八八条の通用を認むべきではない︒

︹事実︺Y︵被上告人︑被控訴人︑原告︶は次のように主張する︒Yは本件土地を昭和三〇年九月二二日から所

有している︒ところがⅩ︵上告人︑控訴人︑被告︶は︑本件土地の上に︑Yがその所有権を取得する以前から本件建

物を所有し爾来権限なくしてその敷地たる本件土地を占有している︒そこで︑Ⅹに対し︑本件土地の所有権にもとづ

き︑本件建物を収去して同土地を明渡し︑かつYがその所有権を取得した日の翌日たる昭和三〇年五月二三日から右

明渡まで一ケ月金四︑〇六一円の割合による本件土地の地代相当の損害金の支払いを求める︒

Ⅹは次のようにいう︒本件土地は元訴外Aの所有であり︑Aは︑昭和二八年七月Yから金員を借用し︑同債務担保

(2)

経 営 と 経 済

四 のために︑同土地に一番抵当権を設定したのであるが︑当時

A

は本件土地に本件建物を建築中であって︑

Y

はこの事 実を知りかつ乙れが築造に承認を与えて前記抵当権の設定を受けたのである︒而して︑

Y

は︑昭和二九年一月︑右抵 当権の実行として民法三八九条によって本件土地と建物との双方について競売をなし︑

Y

は 本

件 土

地 を

X

は本件建

物をそれぞれ競落してその所有権を取得したのであるから︑

Y

X

のために︑民法三八八条によって本件土地に地上

権を設定したものとみなされたものであるとして︑同土地の占有は権限あるものである︒

第一審は

Y

勝訴(東京地方裁判所)︒すなわち︑本件土地に

X

が地上権を有するかどうかについて︑次の如く述べ

﹁:::ところで民法三八八条は土地に対する抵当権設定当時建物が土地の上に存する場合についての規定であっ

て︑抵当権設定後土地の上に建物を築造した場合についての規定でないことは︑同法条自体から明らかである︒けど

し更地として評価して設定した抵当権が後にいたって地上権によって制限されることは抵当権の不当な圧迫となるか

らである︒さて︑本件抵当権設定当時本件建物が完成していなかったことは

X

の主張自体によって明らかであり︑本

件建物は右抵当権設定当時基礎コンクリートの上に土台を据付けたに止まり︑その建築材料の大部は他の場所におか

れ︑その一部が本件土地に搬入されていたに過ぎないものと認められる︒而して︑

Y

が前記抵当権の設定を受けるに あたり︑将来訴外

A

において本件土地に建物を築造すべきことを知っていたばかりでなく︑これに承認を与えていた る 乙とは

Y

の認めるところである︒

Y

は右被担保債権の弁済期までには建物が築造されるにいたるべきことを予期して

いたことが認められるけれども︑

Y

は本件設定当時本件建物の築造に着手されていたことを知らず︑本件土地を更地

と信じ更地として評価して抵当権を設定したものである︒また︑

Y

は本件抵当権の設定にあたり訴外

A

と の

聞 に

ω

A

は本件土地に

Y

の承認する設計通りの建物を被担保債務の連帯保証人たる訴外

B

を建築請負責任者と定めその所有

ω A

は右建物の建築中なるとその完成後なるとを問 として建築すること︑

A

は右建築請負責任者を変更しないこと

(3)

ω A

は︑右建物の完成次第これが所有

権保存登記をなし︑直ちに乙れに抵当権を設定して

Y

から金円を借受けること︑

ω A

は︑右建物の建築費用を

Y

外の者から融通を受けないこと︑を約し︑もって本件土地の担保価値の低下すべきことを極力防止しようとした乙と

が認められる︒而して︑本件建物は

Y

の承認する設計通りのものでないこと︑

A

は本件建物の建築費用を

Y

以外の

X

から融通を受け

X

のために本件建物に抵当権を設定した乙とが認められる︒してみると︑本件建物は前記抵当権設定

当時本件土地の上に存しなかったばかりでなく︑前記各事情の下において地上権を設定したものとみなすことは︑抵

当権者たる

Y

の予期に反し︑抵当権の不当な圧迫となることが明らかであるから︑本件建物の競落人たる

X

のために わず被担保債務を完済するまでは同建物を第三者に売買譲渡貸与しないこと

民法三八八条によって地上権を設定したものとみなすに由ないものと考える︒よって︑

X

が本件土地に地上権を有す

るとの主張は理由がない﹂と︒

第二審は︑第一審の判断をそのまま肯定し︑控訴棄却(東京高等裁判所)︒

上告理由は四点あるが︑判旨に関係ある第一点だけを挙げる︒日く︑

民法三八八条の学説︑判例の変選の跡から考え更に民法一条改正の精神を併せて考えると︑本件のような場合には

X

Y

に対抗しうる法定地上権を有するものと解するを相当と信ずる︒蓋し︑三八八条所定の法定地上権の発生は︑

初期においては︑土地に対する抵当権設定当時︑土地と建物とが︑既に︑同一人に属するときに限るとする解釈︑判

例から︑土地所有者の正当なる土地利用権に基いて築造せられた建物が︑競売当時存する以上︑又は建物の崩壊を防

︹ 上

告 理

由 ︺

ぐ必要ある︑あらゆる場合に及ぶものとの解釈に至るまで畢寛は︑敷地と分離した建物を不動産と認めた我が独特の

法制と︑民法一条所定の︑私権は公共の福祉に遵う︑権利の行使及び義務の履行は信義に従い誠実に之をなすことを

要し且つ権利の濫用は之を許さないという線に沿って来たことが観取できる︒かくて︑例えば︑土地と建物とが同一

(4)

経 営 と 経 済 三 六

人に属せない際に設定せられた一番抵当権に基いて建物が競売せられた場合にも︑両者が同一人に属する際に設定せ

られた二審抵当権が存する以上建物の競落人は土地の競落人に対し︑対抗しうる法定地上権を有すると認めるのが相

当であると解釈︑適用が行われるに至った︒更に進んで学説は︑三八八条の趣旨を抵当権者は仮令抵当権設定当時に

は︑建物が存在しない更地である土地に抵当権を設定したとしても︑将来その土地に︑合理的な土地利用権の行使に

基く︑建物築造に伴う利限が加えられるべき乙とを予期し且つこれを忍容すべき乙とを前提としておるものと解し︑

いやしくも︑競売当時︑土地と建物とが同一所有者に属し且つその建物が合理的(又は正当なる)な土地利用権に基

くものである以上︑仮りに競売の結果︑この両者が別の競落人の所有に帰しても︑建物競落人は土地の競落人に対抗

しうる法定地上権を有するものと解する学説が生じた︒乙の説の合理的説明の基礎は︑主として我が独特な不動産(

建物)登記制度に求めてすること前述のとおりであり︑肯けいに値するものである︒ドイツ民法と異り︑不動産であ

る建物を敷地の一体不可分としなかった我が法制の下では︑抵当権者は上述の如︑き場合に︑上述法定地上権の対抗を

受けることは︑前掲民法一条の社会福祉の趣旨からいっても︑やむをえないところであろう︒更に現在の我が社会の

家屋払底の実情を併せ考えると︑前掲学説は乙れを裁判の理論構成に採用せられて然るべきものであると思料する︒

本件事案は︑既に原審が取調べた証拠に現われた事実に明示されており︑訴外

A

の本件建物の建設は︑土地所有者と

して︑合理的且つ正当な土地利用権に基くものであることを認めえられる︒すなわち︑本件建物の築造は︑土地抵当

権設定当時︑既に

Y

が︑その事実を予期又は確定的事実として認識していたのみでなく︑自らその築造を要請し︑乙

れを右

A

の義務として約諾せしめておった乙とが認められる︒かかる事情の存在を無視し︑家屋払底の社会の実情を

顧みず︑民法一条改正前の判例を踏襲するに急なりしは畢寛民法三八八条を誤解したもので取消を免かれないと信ず

る ︑

と ︒

(5)

円 一

判 決

理 由

右の第一点についての理由のみを左に述べる︒

民法三八八条により法定地上権が成立するためには︑抵当権設定当時において地上に建物が存在することを要する

ものであって︑抵当権設定後土地の上に建物を築造した場合は原則として同条の適用がないものと解するを相当とす

る︒然るに本件建物は本件土地に対する抵当権設定当時完成していなかったことは原審の確定するところであり︑ま

た被上告人が本件建物の築造を予め承認した事実があっても︑原判決認定の事情に照し本件抵当権は本件土地を更地

として評価して設定されたことが明らかであるから︑民法三八八条の適用を認むべきではなく︑乙の点に関する原審

の判断は正当である︒所論は採用できない︒

裁判官全員の一致で棄却(藤田八郎︑池田克︑河村大助︑奥野健一)︒

︹ 参

照 条

文 ︺

民 法 三 八 八 条 ︒

民法は抵当権と用益権の調和︑すなわち価値権と利用権の調節にかなりの苦心を払っている︒短期賃貸借の保

護︑糠除もそうであるが︑法定地上権もその重要な一つである︒それは︑民法三八八条の﹁土地及ヒ其ノ上ニ存スル

︹ 研

究 ︺

判旨に若干の疑問をもっ︒

建物カ同一ノ所有者ニ属スル場合ニ於テ其土地又ハ建物ノミヲ抵当ト為シタルトキハ抵当権設定者ハ競売ノ場合ニ付

キ地上権ヲ設定シタルモノト看倣ス﹂との規定に示されている︒

然らば︑法定地上権制度の立法趣旨はど乙に求めらるべきであろうか︒ 一般に︑社会経済上の不利益を防止すると

いう国民経済上の利益を守る点に求められる︒さらに理論的に追求すれば︑抵当権者と抵当権設定者との意思の推測

に根拠がおかれている︒我妻博士によれば︑土地と建物とを別個の不動産とする民法の建前からいえば︑土地と建物

は取引の客体としても別個の物として取り扱われる︒従って︑建物が取引せられるときは土地の利用権を伴うものと

法 定

地 上

権 の

成 立

し な

い 事

(6)

経 営 と 経 済

7¥ 

みるべきであり︑また建物の存する土地が取引せられるときは建物のための利用権によって制限せられるものとみる

べきである︒そうであれば︑土地に建物が築造せられるときは︑土地所有権の内容は既に潜在的関係において︑その

建物利用のための法益と︑爾余の法益とに分離せられるものと考えられる︒土地と建物とが同一人に帰属している間

はその関係は顕在化する乙とはないし︑また当事者の意思によってこの土地または建物の一万を譲渡するときは︑賃

借権または地上権の設定ができるから右の関係は現実化する︒しかし︑右の土地または建物の一方に抵当権が設定さ

れ︑その実行の結果所有者が異ると︑右の潜在的利用関係は現実化されねばならぬ必要性をもっ︒なぜなら︑抵当権

設定当時に於ては土地と建物の所有者が同一人であるため︑建物のための土地利用権を設定することができないから

で︽%︒そ乙で︑民法はその潜在的利用関係を法律上当然に現実化するものと規定したものである︑と︑乙う説明さ

れ る

げ る

法定地上権が成立するためには︑幾つかの要件が備わらなければならないが︑判例・通説がその一つとして掲

﹁抵当権設定当時土地の上に建物の存する乙と﹂がここで問題とせられる︒判例は︑更地(建物の存しない土

地)に抵当権を設定した後に建物を設定した場合には︑更地と地上権による制限を受けた土地とではその担保価値に

大きな差を生ずるが故に︑更地として評価して設定した抵当権が後に地上権によって制畑山されるものとすれば︑利用

qL  

権に抵当権が不当に圧迫される結果を生︑するとの理由から︑法定地上権の成立を認めない︒判例はこの要件を厳格に

解するのである︒通説もこれを認める︒我妻博士も︑今日における担保価値評価の実状は誠に判例のいう通りである

qd  

と ︑

さ れ

る ︒

ところが︑判例・通説に対する有力な異説も存する︒ここに柚木教授の説かれるところを述べよう︒すなわち︑抵

当権の設定は設定者の使用︑収益を禁ずるものでなく︑逆にかかる権能を設定者に保留せしめる乙とが抵当権の近代

(7)

金融経済における王者たるの地位を築かしめたものである︒従って︑土地所有者はその更地に抵当権を設定した後で も自由にその地上に建物を建設しうべく︑いな︑このことこそ抵当地の利用価値を増大するものとして望ましい

D

一方において法が抵当地の利用を認め︑むしろこれを希望しながら︑他方に抵当地の競落に際しては忽ちこの

る に

建物を収去し崩壊せしむべしとするならば︑それは矛盾の甚だしいものであろう︒法定地上権の制度が建物の崩壊を

防止する社会経済的見地にたつものである以上︑かような場合にも保護を与えて︑建物の存続を図りもって抵当地の

利用価値の維持に努むべきものであろう︒尤も︑乙の場合に法定地上権を認めることは土地抵当権に不測の損害を与

えることも考えられる︒しかし︑抵当権自体が右の知き性質を有するものである以上︑土地抵当権者は後に建設せら

れることあるべき建物に与えられる地上権によってその抵当権が制限せられる乙とを予期すべきものというべく:・・:

A

ル ﹂

C

それでは︑解釈論としてどう考えたらいいのであろうか︒柚木教授も︑更地の抵当権設定後の築造建物に法定地上

権を認めるべしとの主張をなされる際︑その認められる地上権の内容には制限をおかれる︒日く︑ただその際認めら

れる地上権の内容は︑当初より建物が存した場合との権衡上土地抵当権者にとって負担の軽いものでなければならな

戸 ︒

い︑という制約があるにすぎない︑と︒そして民法三八九条の解釈については判例・通説と異る解釈を採られ︑土地

抵当権者がその土地のみを競売するときは︑抵当権設定後に建設せられた建物のために地上権による制限を受ける乙

とを欲しないならば︑彼は土地に建物を併せてとれを共に競売することによってその不利を免れることができる︑と

n o  

せ ら

れ る

我妻博士は︑解釈理論としては判例のいうととろを採られるが︑立法論としては︑法定地上権にまつわるこの制限

を︑抵当土地の利用を妨ぐる一大障碍であるととは疑ないとして︑抵当権設定以後の用益権が乙とととく覆滅に帰す

法 定

地 上

権 の

成 立

し な

い 事

(8)

O 守 ︐

という理論と共に︑立法上再考を要する価値権と用益権の不調和であることを指摘されている︒

経 営 と 経 済

思うに︑土地と建物を別個の不動産としてみる民法の建前が存する限り︑価値権と用益権の矛盾は避け難い現象と

して現われるものである︒その解決は結局︑立法にまつほかないものと考えられる︒近時の借地・借家立法の改正の

動きの中に︑借地権を物権化する乙とを前提として︑建物と敷地利用権の一体化︑すなわち︑まず建物はその敷地の

利用権を伴う場合においてのみ経済的効用を発揮するものであるから︑建物と敷地利用権とは各別には処分できない

ものとすること︒また︑土地所有者自身自己のために借地権を設定しうるものとせんとする意向がみられるとのこと

︒ ︒

である︒そうなれば法定地上権制度は廃止されるべき運命にあり︑問題は片附くであろう︒けれども︑現段階での解

釈としては︑やはり︑担保価値の把握という意味で﹁抵当権設定当時建物が存在すること﹂という法定地上権の成立

要件は︑一応︑判例・通説に従うほかないように思われる︒

三判例は︑法定地上権を認めるに当って如何なる態度を採って来たであろうか︒概していえば︑三八八条の要件

を緩和して︑法定地上権の成立する場合を多く認めているようである︒大要次の如くである︒

﹁抵当権設定当時土地と建物とが同一人に帰属する乙と﹂については︑抵当権設定当時にさえ同一人に属すれば︑

後に所有者が変更しても妨げないとし︑土地のみ抵当権の目的とされた後に建物の譲渡があった場合︑抵当権実行の

n v  

結果別に法定地上権を生ずるものとした︒また︑建物のみが抵当の目的となった後に土地が譲渡せられた場合も︑同

様に競落人は法定地上権を取得するものとする︒

﹁土地の上に建物が存して同一人に帰属することについては登記を要するか﹂に関しては︑判例は︑登記を必要と ω  しない旨を述べる︒

﹁土地と建物の両方が同時に抵当権の目的となった場合でも妨げない﹂︑とするのが判例であり︑三八八条の拡張

(9)

解釈を採る︒土地と建物が別異の人によって競落せられ︑また一方のみ競落せられる場合にも︑法定地上権の成立を 陶

認 め

る ︒

﹁土地または建物の競売されること﹂という要件に関しては︑抵当権にもとづく競売に限らず︑法定地上

権の要件を備える土地または家屋を一般債権者が強制競売に付する場合にも法定地上権を生ぜしめる︒

右のように眺めると︑制例は︑可及的に土地利用権を価値権の不当な圧迫にならないよう注意しながら保護せんと

する態度を採って来たといえるのではなかろうか︒

それでは︑本件の取扱いについて考えてみたい︒判決理由で述べてあるように︑

さ ら

に ︑

﹁抵当権設定当時において地

上に建物が存在することを要する﹂との要件を︑従来の判例・通説と同じく厳格に解する点は︑抵当権の担保価値維

持という点で是認せらるべきだと考える︒しかしながら︑抵当権の目的たる土地を更地として評価する場合において

従来の類似事件では︑当該土地に抵当権設定後建物が築造される乙とを︑抵当権者の方で全く予期していなかったの

が一般であると思う︒全然予期しない土地利用権が突如として現われ︑その結果抵当権の担保価値を低下せしめ抵当

権を圧迫する乙とは︑利用権の保護の限界を越えるものと思料される︒ピから乙の要件が必要となるものと思う︒

ところが本件では︑抵当権者の万で︑抵当権の目的たる更地に建物を築造せしめることを承認しているのである︒

したがって︑建物が存在するに至れば自己の抵当権の担保価値が低下するとの予想を有していたものと考えられる︒

しかも︑本件事実の認定によれば︑本件建物は︑抵当権設定当時において基礎コンクリートの上に土台が据付けられ

ており︑たとえ︑材料が一部しか本件土地に搬入されていて大部は他所におかれであったとしても︑建物が現に存在

することと︑存在するに至ることは︑乙の場合単に時間の問題に過ぎないものである︒抵当権者が本件土地の担保価

値の低減を来すことあるを予期する点では別異に考える必要はないものと思う︒そうどとすれば︑土地に対する抵当

法 定

地 上

権 の

成 立

し な

い 事

(10)

経 蛍 と 経 済

権設定当時に建物が完成しておらず︑

しめるから三八八条の適用なしと判断してしまうことは︑土地利用権を少しく軽く視ることになりはしないであろう

か︒建物の存続をかなり広範囲に認めて来た従来の判例の態度からいえば︑ ω  考 え ら れ る ︒

抵当権者において建物の築造に予め承認を与えていても︑ 担保価値を低下せ

一歩後退する結果になるのではないかと

もっとも︑本件の場合は︑第一審の事実に示されているように︑抵当権者が抵当権設定者に建物の築造についての

承認を与える際に︑四つの条項をあげて︑本件土地の担保価値の低下することを極力防止せんとする態度をとってい

る乙とは分る︒しかも抵当権設定者の側でその契約内容に違反する行為をなした乙とが認められる︒したがって︑外

見的には抵当権者の本来有すべき本件土地に対する担保価値を存続せしむるのが妥当であるかの如くである︒けれど

そ れ ら の 条 項 の 内 容 を よ く 検 討 す れ ば

︑ 恰 も 抵 当 権 者 が 建 物 を 築 造 す る と 同 じ よ う な も の で あ り

ω では︑建物の利用が極度に制限される結果になるであろうし︑ ω では︑完成した建物に必要なくして抵当権をわ

ざわぎ設定させるようなものである︒そして ω では︑建築費用面にまで抵当権設定者が抵当権設定者を拘束するも

のとなっている︒乙の契約内容通りの実行を建物築造者たる抵当権者に強いることはかなり酷であるし︑また建物の

築造に予め承認を与えた以上︑土地利用が早かれ遅かれ抵当の目的たる土地の担保価値低減を招来することは否めな

ω

で は

い事実であり︑それを排除せんとする抵当権者の願いに無理があるようである︒いわば土地利用権という社会的存在

を私人の意思で排除せんとする抵当権者の意思が︑本件判例の解釈に大きく影響している感がある︒

右の点を︑も少し仔細に検討して価値権と利用権の調節を図るべきではなかったか︒建物の現存を要する︑と一概

に割り切る乙とは如何なものであろうかと考える次第である︒

(11)

( 2 )   ( 1 )  

栄・担保物権法(民法講義

E )

一 七

五 頁

大民大正四・七・一民録一一一一輯一コ二三頁は︑﹁若

L i ‑ ‑

抵当権設定後に於て所有者が抵当と為したる土地の上に建物を建

設したる場合にも其適用ありと解するときは︑土地の抵当権者は抵当権取得の際何等地上権の負担あるべき事由を有せざる 我妻

完全なる土地所有権なりになし︑之に着眼し之を以て抵当権の目的と為すととを甘受したるものなるに拘わらず︑其後に至

り其意に反して所有者一己の行為に因り抵当権の目的物が物権の負担を受くるの結果を来し︑遂に意外の損失を被るに至る

ベし﹂︑と説く︒

( 3 )  

我妻・前掲一七六頁︒

馨 ・ 担 保 物 権 法 ( 法 律 学 全 集 旬 ) 三 一 一 一 一 頁 ︒

( 4 )   柚 木 ( 5 )  

柏木・問書三一三頁以下︒

( 7 )   ( 6 )  

柏木・同書三一九頁︒

我妻・前掲一七六頁︒

柚木・前掲二四

O

頁 参

照 ︒

( 9 )   ( 8 )  

大民聯大正

=7

コ了一四民集六七三頁ロ

( 1 0 )  

大民昭和入・三・二七新聞三五四三号一一頁︒

( 叫

大民昭和七・一

0

・ 一 二 民 集 一 二 七 七 頁 ︒

大民明治三八・八・二二民録一一九七頁︑大民明治四三・三・二三民録二三三頁︑大民昭和六・一

0

・ 二 九 民 集 九 三 一 頁 ︒

大民大正三・四・一四民録二九

O

頁 ︒ し か し な が ら ︑ 大 民 大 正 七 ・ 一 二 ・ 六 民 録 二 四 輯 一 一 一 一 一

O

二頁では︑建物の存しない土地を抵当の目的とした場合に︑たとえ

抵当権設定者と抵当権者との間に︑将来当該土地に建物を築造したときは地上権を設定したものと看倣すとの合意があった

自 問

司 ( 1 4 )  

法定地上権の成立しない事例

(12)

経 堂 と 経 済

四 回

としても︑それは競落人の取得した土地に地上権を負担せしめんとするものであって︑競落人は他人の行為によってかかる

負担をラける理由がないのであるから︑右のよラな合意は競落者に対抗しえない旨を判示している︒

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