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土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後に建物が取り壊されて新建物が建築された場合の法定地上権の成否

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(1)

︿判例評釈﹀

土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後に

建物が取り壊されて新建物が建築された場合の

法定地上権の成否

101-[奈良法学会雑誌』第四巻2号(1997年9月) 最高裁判所平成九年二月一四日第三小法廷判決 (短期賃貸借解除等請求事件・平成七年(オ)第二六一号民集五一巻二号三七五頁│上告棄却)

︹ 事 実 関 係 ︺ 訴外

A

信用金庫は、昭和五

O

年七月二九日、被告

Y

山との間で、同人所有の本件土地に極度額六

OO

万円、債務者

Y

印、根抵当権者 A とする根抵当権の設定契約を締結し、昭和五

O

年八月四日、根抵当権設定登記手続をした。右根抵当権の極度額は、順次増額されて、 平成三年四月一七日には二億一千万円に変更された。

A

信用金庫は、平成四年九月一七日、本件根抵当権に基づき本件土地の競売申立をし、同月一八日差押の登記を得た。原告

X

信用金 庫 は 、

A

信用金庫から、平成四年九月三

O

日向金庫甲支底の事業の譲渡を受け、同金庫が

Y

印に対して有する債権等を本件根抵当権と ともに譲り受け、平成四年一一月一八日、根抵当権移転の登記をし、本件不動産競売事件の債権者の地位を承継した。

Y

山 は 、 平 成 三年一一月二

O

目、被告

Y

ω

会社との聞で、本件土地の短期賃貸借契約(賃料月額五七万二千円、存続期間五年、譲渡・転貸可)を締

(2)

第10巻 2号一一102 結 し 、

Y

凶会社のために賃借権設定仮登記を経由した。 本件土地につき本件根抵当権の設定契約が締結された昭和五

O

年七月二九日当時、本件土地上には

Y

山所有の﹁旧建物﹂(軽量鉄骨 造亜鉛メッキ鋼板葺平屋建)が存在し、同建物にも本件土地と共同担保として根抵当権が設定されていた。その後、

Y

山は、旧建物を 取 り 壊 し 、 平 成 一 二 年 一 一 月 二

O

日本件土地を

Y

山会社に賃貸し、同会社は、平成四年一

O

月一六日に本件土地上に﹁新建物﹂(鉄骨造 陸屋根三階建宿舗及ぴ倉庫)を建築した。 なお付言すれば、旧建物については、滅失を原因として平成元年二月二二日付で滅失登記がなされ、同日付で本件根抵当権の共同担 保目録から抹消された。そこで、根抵当権者たる

A

信用金庫は、本件土地を更地としてその担保価値を再評価し、本件根抵当権の極度 額 を 、 平 成 一 冗 年 八 月 二 九 日 に は 一 億 円 に 、 同 年 一

O

月 二

O

日には一億四千万円に、同二年一

O

月二五日には一億八千万円に、同三年四 月一七日には二億一千万円にそれぞれ増額変更した。本件根抵当権設定契約当時、同契約当事者聞のいずれにおいても近い将来旧建物 を取り壊して新たに建物を建築することを予定していたわけでもなく、また、

A

信 用 金 庫 は 、

Y

山らに対し、本件土地上に新建物を建 築することを了承していたことはないことが認定されている。因みに、

X

の主張するところによると、本件競売事件における平成四年 一 一 月 一

O

日付鑑定評価書によれば、更地価格

l

一 億 七 六 六

O

万五千円、建付地価格

1

一 億 五

O

一 五 万 円 、 底 地 価 格 H 六七二一万円で ふ め ヲ 令 。

X

は、本件競売事件が現状のままで進行すると、最低売却価格が右底地価格を基準にして決定され、

X

は、右建付地価格との差額八 二九四万円相当の債権が回収不能となるおそれがあり、本件賃貸借契約の存在は、

X

に損害を及ぽすことが明白であるとして、民法三 九五条但童日に基づき、本件賃貸借契約の解除を求め、この解除判決の確定したときは、

Y

ω

に代位して、本件仮登記の抹消登記手続を 求めるとして本訴に及んだものである。 第一審は

X

の請求を認容したので

Y

山 ・

Y

削控訴。控訴審において

Y

らは新たに﹁昭和五

O

年七月二九日に本件土地に根抵当権が設 定された時点では、本件土地につき法定地上権成立の要件が充足されており、根抵当権者は、本件土地については、法定地上権の負担 付きの価格、すなわち本件土地の更地価格から法定地上権の価格を控除した底地価格しか把握していなかった。従って、根抵当権者の 承諾を得て、旧建物を取り壊して新建物を建築した本件の場合には、新建物のために法定地上権が成立するというべきである﹂と主張

(3)

103一一土地及ぴ地上建物に共同抵当権を設定した後に建物が取り壊されて… し た 。

Y

らの控訴を棄却。原審の理由は以下のとおりである。﹁根抵当権者たる

A

信用金庫は、旧建物取り壊し後は、本件土地を更地 として担保価値を算定して極度額の増額変更に応じてきたものであり、また本件根抵当権設定当時新建物の建築を予測していたわけ で は な い し 、

Y

らに対し本件土地上に新建物を建築することを承諾したこともないのであるから、本件土地につき新建物のために法定 地上権の成立を認めることは右抵当権者に不測の損害を被らせることになり、右法定地上権の成立を認めることはできないというべ き で あ る ﹂

o

Y

ω

Y

山 上 告 。 ︹ 上 告 理 由 ︺

ω

抵当権設定当時に存在していた建物がその後取り壊され、新たな建物が建築された場合には、法定地上権が成立するとするの が、これまでの確定判例である(大審院昭和一

O

年 八 月 一

O

日判決・民集一四巻一五四九頁、最高裁昭和五二年一

O

月一一日判決・民 集三一巻六号七八五頁など引用)。 間上告人は、﹁旧建物を基準とする﹂新建物のための法定地上権の成立を主張しているに関わらず、右のような法定地上権の成立 と無関係な理由を原審は述べて上告人の主張を認めないとしている。理由不備、理由魁酪の違法がある。 同旧建物を基準とする法定地上権が成立することは、抵当権設定時において、抵当権者たる被上告人が当然に予想できることであ り、かつ予想すべきである。仮に、その後建物が取り壊されて新建物が建築された場合に法定地上権が成立しないとすることは、本来 旧建物を基準とする法定地上権の負担付きの底地価格しか把握していなかった被上告人の本件土地に対する根抵当権が、現に建物が 存在するにも関わらず、更地価格全体を把握することとなり、新建物所有者の法定地上権が成立するとの正当な期待利益、建物維持の 利益を犠牲にして、被上告人に望外の不当な利益を与えるものであり、到底認められるべきではない﹂。上告棄却。 ︹ 判 決 理 由 ︺ ﹁所有者が土地及ぴ地上建物に共同抵当権を設定した後、右建物が取り壊され、右土地上に新たな建物が建築された場合には、新建 物の所有者が土地の所有者と同一であり、かっ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位 の共同抵当権の設定を受けたとき等特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しないと解するのが相当である。けだ し、土地及ぴ地上建物に共同抵当権が設定された場合、抵当権者は土地及び建物全体の担保価値を把握しているから、抵当権の設定さ

(4)

第10巻2号一一104 れた建物が存続する限りは当該建物のために法定地上権が成立することを許容するが、建物が取り壊されたときは土地について法定 地上権の制約のない更地としての担保価値を把握しようとするのが、抵当権設定当事者の合理的意思であり、抵当権が設定されない新 建物のために法定地上権の成立を認めるとすれば、抵当権者は、当初は土地全体の価値を把握していたのに、その担保価値が法定地上 権の価額相当の価値だけ減少した土地の価値に限定されることになって、不測の損害を被る結果になり、抵当権設定当事者の合理的な 意思に反するからである。なお、このように解すると、建物を保護するという公益的要請に反する結果となることもあり得るが、抵当 権設定当事者の合理的意思に反してまでも右公益的要請を重視すべきであるとはいえない。大審院昭和二二年(オ)第六二号同年五月 二五日判決・民集一七巻一二号一一

O

O

頁は、右と抵触する限度で変更すべきものである。 これを本件について見ると、原審が適法に確定したところによれば、

y

ω

は 、

X

に 対 し 、

Y

川所有の本件土地及ぴ地上の旧建物に共 同根抵当権を設定したところ、その後、旧建物は取り壊され、本件土地を賃借した

Y

ω

会社が本件土地上に新建物を建築したというの であるから、新建物のために法定地上権が成立しないことは明らかである。のみならず、旧建物が取り壊された後、

Y

山及び

X

は 、 本 件土地を更地として四度にわたって再評価をして被担保債権額の極度額を変更してきたから、新建物のために法定地上権の設定があ ったとする当事者の意思を推定することができず、したがって、その後に

Y

閉会社が

y

m

から本件土地を賃借して建築した本件建物の ために法定地上権の成立を認めるべきものではない。したがって、本件建物に法定地上権の成立が認められないとした原審の判断は、 正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。所論引用の判例は、事案を異にし本件に適切でない﹂。 ︹ 研 究 ︺ 一、本判決は、実務界に、大きな関心を呼んだものであり(例えば、石井異司・上野隆司・秦光昭﹁共同抵当権設定後の再築建物と法 定地上権﹂・銀行法務 2 1 五四

O

号参閉じ、これまでかなりの人々によって論じられてきた問題に最高裁としての見解を示したものと いえるであろう。本件の第一審は、専ら、民法三九五条但書による抵当権設定後の短期賃貸借契約の解除、それに基づく短期賃借権設 定仮登記の抹消を求めたものであり、その請求が認容されたが、第二審において更めて法定地上権の成立が

Y

らによって主張され争点 となった。上告理由の中心は、抵当権設定当時に存在していた建物がその後取り壊され、新たな建物が建築された場合には、法定地上 権が成立するとするのが、これまでの確定判決であり、上告人が﹁旧建物を基準とする﹂新建物のための法定地上権の成立を主張して

(5)

105一一土地及ぴ地上建物に共同抵当権を設定した後に建物が取り壊されて…・・ いるにも関わらず、法定地上権の成立と無関係な理由を述べて上告人の主張を認めようとしなかったのは違法であるというにある。こ の点は、いうまでもなく、民法一二八八条所定の法定地上権の成立要件に関する問題であるが、新建物は、抵当権設定者である土地及び 旧建物所有者が再築したものではなく、短期賃借権者が建築した建物であるということ、並ぴに旧建物を取り壊した後、何回かに渡っ て担保土地を更地と評価した極度額の増額が行われていることが大きな特徴点であるように忠われる。 抵当権設定当時、抵当土地上に建物は存在したが、その後、建物が取り壊され、新しい建物が建築された場合、新建物について法定 地上権の成立を認めることができるか、という問題に関して、判例は一定の見解を提示してきた。大審院昭和一

O

年 八 月 一

O

日 判 決 ( 民 集一四巻一五四九頁)は、﹁案ずるに民法三八八条には土地及び其の上に存する建物が同一の所有者に属する場合に於て其の土地又は 建物のみを抵当と為したるときは抵当権設定者は競売の場合に付地上権を設定したるものと看倣すとありて右所有者は土地のみに付 抵当権を設定したる以上建物の所有者としては其の設定と共に後日競売の場合に付地上権者として土地の利用を継続し得らるべき地 位を取得したるものと解すべきものなれば当該建物が抵当不動産の競売前既に朽廃したる場合は格別なるも然らざる限り其の所有者 は縦令建物が滅失することあるも再築の上当該土地の利用を継続し来たりたる以上依然競売の場合に付地上権者と看倣さるべき地位 にあるものと解するを相当とすべく且此の事は建物使用の都合上之を改築したる場合に於ても亦同一にして此の場合に限り解釈を異 にすべき理由あるを見ず然れども上記の如く土地のみを抵当と為したる場 A 口に於て抵当権実行の際建物が依然旧態の侭存したるに於 ては其の所有者は競売の場合に付当該建物其のものの所有の為にする地上権を取得するに過ぎざるものなるが故に再築改築等の為め 建物の状態に変更ある場合に於ても其の所有者の取得すべき地上権は旧建物の存したる場合に於けると同一のものたるべく﹂と述べ ている。すなわち、抵当権設定当時の建物を取り壊し再築した場合、新建物について地上権の存在は認められるが、旧建物が存在した ならば有したであろうと同一の範囲内においてのみ地上権者として土地の利用が可能であるとした。 ま た 、

A

が、土地及ぴ同地上の旧建物(非堅固建物)を買い受け、その資金を

B

銀行から借り受け本件土地に

B

銀行のために一番抵 当権を設定し、更に二番、三番の根抵当権を設定することを行ったが、土地のみに抵当権を設定したのは、

A

が近い将来旧建物を取り 壊して堅固な新建物を建築することを予定し、

B

銀行もこれを承知していたためであり、

B

銀行としては新建物を度外視して本件土地 の担保価値を算定しなかったことによるものである。その後、

A

は 、

C

から融資を受けて旧建物を取り壊し、新建物を建築し、同建物

(6)

第10巻2号一一106 に

C

のために一番抵当権を、

B

のために二番抵当権を設定した。その後、

B

が本件土地について抵当権を実行して自ら競落し、さらに その土地は

X

に譲渡された。また、新建物については

C

が抵当権を実行し

Y

がその建物を競落した。そこで、

X

Y

に 対 し 、 建 物 収 去 ・ 土地明渡を議求したが、これに対し、

Y

は法定地上権の確認を求める訴を提起し、両者が併合されたという事件で、最高裁昭和五二年 一

O

月一一日判決(民集一二一巻六号七八五頁)は、以下のように判示した。﹁思うに、同一の所有者に属する土地と地上建物のうち土 地のみについて抵当権が設定され、その後右建物が滅失して新建物が再築された場合であっても、抵当権の実行により土地が競売され たときは、法定地上権の成立を妨げないものであり(大審院昭和一

O

年(オ)第三七三号同年八月一

O

日判決・民集一四巻一五四九頁 参照)、右法定地上権の存続期間等の内容は、原則として、取壊し前の旧建物が残存する場合と同一の範囲にとどまるべきものである。 しかし、このように、旧建物を基準として法定地上権の内容を決するのは、抵当権設定の際、旧建物の存在を前提とし、旧建物のため の法定地上権が成立することを予定して土地の担保価値を算定した抵当権者に不測の損害を被らせないためであるから、右の抵当権 者の利益を害しないと認められる特段の事情がある場合には、再築後の新建物を基準として法定地上権の内容を定めて妨げないもの と解するのが相当である﹂。要するに、

B

銀行は、抵当権設定当時、近い将来旧建物が取り壊され、堅固な建物である新工場が建築さ れることを予定して土地の担保価値を算定したのであるから、抵当権者の利益を害しない特段の事情がある場合に当たるとしたもの である。この判例は、更地への抵当権設定後に建物が建築された場合にも、一定の影響を及ぽすのではないかと指摘がなされていた。 このような判例理論の状況のもとで、本判決はどの様な位置を占めるものであろうか。 二、土地・建物が共同抵当に供された後、旧建物を取り壊して新建物を築造した場合の新建物に関する法定地上権の成否について従来 の判例はどの様に解してきたであろうか。 ①大審院昭和一三年五月二五日判決(民集一七巻一一

O

O

頁 ) 訴外

A

は 、 大 正 一

O

年一二月二

O

目、その所有に係る土地ならびに当該地上建物に、

B

銀行に対する一万五千円の債務のため共同抵 当権を設定し、その登記を完了した。その後

B

銀行は抵当権の実行をなし、昭和九年四月二一目、

Y

(

被告・控訴人・上告人)が宅地 を競落取得し、同年七月二日所有権移転登記手続を終えた。他方、これより先、昭和七年四月五日頃、右宅地上の抵当建物が火災によ り 焼 失 し た た め 、

X

(

原告・被控訴人・被上告人)が、同年四月二三日宅地の上に幾分焼残材料を使用したとはいえ、別個の建物を建

(7)

107一一土地及ぴ地上建物に共同抵当権を設定した後に建物が取り壊されて… 築し、それを所有してきた。

X

は、昭和七年四月六、七日頃

A

より当時

A

の所有であった宅地上に存続期間を建物朽廃の時までとする 地上権の設定を受けたと主張した。因みに、

X

A

の 妻 で あ っ た 。

A

は生前病身であったため

X

が家事を掌握し、宅地上の家屋に居住 してきたが、火災により家屋が焼失したため、その焼け跡である宅地に家屋を建築し、家族とともに共同生活をしてきたが、かかる状 況 の も と で 、

A

X

に対し宅地一部の使用を黙認してきたものである。しかし、

X

A

から地上権の設定を受けたという主張について は、本判決は、これを認めなかった。しかし、進んで法定地上権の成否について判断し、以下のように述べた。﹁土地及ぴ其の上に存 する建物が同一の所有者に属する場合に於て其の土地又は建物のみを抵当となしたるときは抵当権設定者は競売の場合に付地上権を 設定したるものと看倣さるること民法第三八八条の明定するところにして、右の法理は土地及ぴ建物が同一の所有者に属する場合に 於て其の土地及ぴ建物を併せて抵当と為したるも後日土地又は建物のみに付競売ありたる場合並ぴに該土地又は建物の所有者に変更 を生じたる場合に於ても敢て異なるところなきものと解すべきものとす。而も冒頭の場合に於て土地のみを抵当と為したるとき其の 上の建物が朽廃に因るに非ずして滅失することあるも抵当権設定者に於て再築の上該土地の利用を継続するときは土地競売の場合に 付抵当権設定者は猶奮建物が存続したると同一内容の地上権を設定したるものと看倣すべきこと当院判例の示すところなり(昭和十 年(オ)第三七三号同年八月十日言渡判決参照)。果して然らば右の場合に抵当権設定者に於て自ら再築を為すことなく、自己の妻を して家屋を再築せしめて土地の使用を許諾し且つ自らも妻と共に該家屋に居住して其の敷地の利用を継続するが如き場合に於ても猶 且土地競売の場合に付前同様地上権を設定したるものと看倣すべきものと解するを相当とすべし﹂。本件は抵当権設走者の妻が再築を したケ

l

ス で あ る 。 ②東京地裁昭和四六年七月二

O

日判決(金法六二七号三七頁) 不動産仮処分異議事件であるが、債権者

X

の所有に係る本件土地及ぴ同地上建物につき抵当権が設定されたが、昭和四四年一月二七 日、債務者

Y

から土地、建物の双方につき任意競売の申立がなされ、

Y

が同年六月一六日本件土地二、八

OO

万 二 千 円 、 本 件 建 物 三 、 一

OO

万円で双方を競落し、同月一八日競落許可決定を得た。ところが、同年二月二五日頃、本件建物が

X

により取り壊されて存在し なかったため、右許可決定は取り消され、更めて本件土地についてのみ最低競売価格六、八八

O

万円と定められて手続が進められ、 Y が同年一一月一七日これを七、七

OO

万円で競落し、同月一九日競落許可決定を得、昭和四五年七月一一一一日その旨の所有権移転登記が

(8)

第10巻2号 一 一108 な さ れ た 。

X

は、本件建物のため本件敷地に法定地上権を有することになったと主張した。﹁右の事実関係のもとでは法定地上権の成 立はこれを認めるに由ないものと解するのが相当である。けだし、法定地上権は、抵当権設定当時同一の所有者に属していた土地とそ の地上建物が、競売の結果異なる所有者に帰属するに至る場合に、建物所有者もしくは建物競落人に土地の利用権を与えることによっ て建物を保護するために認められた制度であるし、とくに本件の場合には、土地、建物の双方が共同抵当とされていて抵当権設定後に なんらかの事情で建物が滅失した場合には、少なくとも土地については更地としての価値を有することが期待されているというべき であり、しかも取り壊し当時の建物所有権はいぜん抵当権設定者に属していたのであるから、前記競売手続が土地だけを更地として評 価して競売したことをもってとくに違法とすることはできず、むしろ、右のようにして競売子続を遂行し、競落にあたって法定地上権 の成立を否定することは、抵当権者の利益に合致するし、法定地上権を生ずるような建物の存在を予知しえない競落人に不測の損害を 与えることを避けられる反面、地上権の保護を受くべき抵当権設定者にとっても、法定地上権が成立しないことによる不利益は補われ ているものとみるべく、結果からみても妥当であるといわなければならないからである﹂。 ③ 京 都 地 裁 昭 和 六

O

年一二月二六日判決(金法一一一一二号四五頁) 原告

X(

信用組合)は、昭和五一年八月二六日、 A 所有の土地及ぴ建物につき抵当権の設定を受け、同月一一七日、その旨の登記を経 由した。その後、旧建物が取り壊され、

B

A

の承諾を得て昭和五二年九月一一一日、本件土地に新建物を建築し、同年一

O

月八日、そ の旨の所有権移転登記を経由したが、

X

は本件建物に抵当権を設定しなかった。本件建物は第三者に売却され、最終的には

Y

川の所有 と な り 、

Y

ω

Y

凶が居住していた。その問、

A

は死亡したが、その相続人

C

も本件土地に建物が存在することについて異議を述べな か っ た 。

X

は本件土地について抵当権を実行し、昭和五八年一二月一六日、競落によりその所有権を取得し、昭和五九年一月二六日、 所有権移転登記を得たので、

Y

山に対し本件建物の収去及ぴ本件土地の明け渡しと賃料相当損害金の支払いを求め、

Y

凶 ・

Y

聞に対し 本件建物からの退去及び土地明け渡しを求めた。

Y

ω

らは、右の事実関係に基づき、本件土地に法定地上権の成立していることを主張 し た 。 ﹁

X

が本件土地につき前記抵当権の設定を受けた当時、本件土地上には旧(この建物が存在し、本件土地及ぴその地上の旧(一) の建物は同一所有者に属していたものであって、

X

は、本件土地の担保価値をその地上に建物が存在しているものとして把握していた

(9)

109一一土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後に建物が取り壊されて…・・ というべきであるから、その後右旧建物が取り駿されて、

B

が本件土地上に本件建物を建築所有するに至っても、

X

の右抵当権の担保 価値が低減侵害されるおそれはないと考えられる。そうすると、前記判示の事実関係においては、

X

の 前 記 競 落 と 同 時 に 、

Y

は 、 本 件 土地につき本件建物に関しての民法三八八条所定の法定地上権を取得したものと解するを相当とする(大審院昭和一三年五月二五日 判決、民集一七巻一七号一一

O

O

頁 参 照 ) ﹂ 。 ④東京高裁昭和六三年二月一九日決定(判時一二六六号二五頁)

A

所有の土地及び建物につき、

B

信用金庫が、昭和五四年五月二六日、これを共同担保として極度額一億円の根抵当権を設定し、そ の旨の登記を経由した。その土地建物は、その後

Y

に譲渡され、昭和五四年五月二七日付で売買を原因とする所有権移転登記がなされ た。その後、旧建物は取り壊され、同年八月一八日付で滅失登記がなされた。さらにその後、本件土地上に本件各建物が新築され、現 存している。これらの建物は共同担保に供されなかった。

B

信用金庫から競売の申立があり、

X

がこれを買い受けた場合、新建物のた めに法定地上権が成立するかが争われた。 ﹁同一の所有者に属する土地と建物に抵当権が設定され、その後に右建物が滅失して新建物が再築された場合であっても、抵当権の 実行により土地が売却されたときは、右土地に付き再築後の建物のための法定地上権の成立を妨げないものであり、この理は再築した 者がまったくの第三者であっても変わらないものと解すべきである。蓋し、既に建物が存在することを前提にして設定された土地抵当 権は土地から右建物のための地上権を控除した価値をもってその目的とするものであって、土地及び建物に共同抵当権が設定された 場合であっても、土地又は建物の一方のみが競売に付されることがあり得る以上、土地に対する抵当権が法定地上権を控除した価値の みを把握していることに変わりはないのであり、したがって、建物が滅失した後再築された建物のために地上権の成立を認めても、そ の内容を再築前の建物を基準として定める限りなんら抵当権を侵害するものとはいえず、また、そうである限り、再築する者が抵当権 設定者である必要は少しもないからである。 これを本件について見るに、本件競売申立権者の抵当権(一番抵当権)設定時に本件土地及ぴ旧建物が申立外

A

の所有に属し、その 後旧建物は滅失し、第三者により本件各建物が再築されたことは明らかであるから、前記のとおり本件土地に付き旧建物を基準とした 内容の法定地上権が成立するものと解するのが相当である﹂。

(10)

第10巻 2号 110 ⑤大阪高裁昭和六三年二月二四日判決(金法一一九

O

号三四頁)

A

所有土地並びに建物に

X

が共同抵当権を設定した後、

A

は建物を取り壊し、

A

と密接な関係にある

B

法人が新建物を再築し、

Y

が 新建物と敷地に共同抵当権を設定した。

X

は 敷 地 に 、

Y

は新建物と敷地にそれぞれ抵当権の実行を申立て、執行裁判所は、各申立を併 合し新建物と敷地とを一括売却に付した。売却実施後、配当に当たり、同裁判所は、民事執行法八六条二項による新建物と敷地ごとの 最低売却価格計算に際し、新建物については建物自体の価額に旧建物が現存していると仮定した限度での法定地上権が付着している と解した価額を加算し、敷地については逆に右限度の法定地上権を負担しているものとして、同額を減額するいわゆる底地価額で計算 し、それを基礎として按分率を新建物につき

O

、六八二七、敷地につき

O

、三一七三と定め、それを売却代金に掛けて、それぞれの売 却代金を算出し、その額をもって配当表を作成した。

X

はこれに対し配当異議を申立て、さらに配当異議訴訟を提起したが、原審はそ の請求を棄却した。これに対し、

X

が、控訴を申し立てた事件である。

X

の主張は、以下のとおりである。第一、旧建物とその敷地に 共同抵当権を設定し、その全交換価値を把握していたのであるから、

A

の旧建物の取り壊しという不法行為によって旧建物に対する共 同抵当権者としての利益が奪われたのであって、したがって敷地については旧建物がなくなった以上更地価額としての価値を有し、か っそれに優先権を有する。第二、新建物について法定地上権が旧建物の限度において付着するというのなら、

X

についても旧建物が存 在するものとしてその価額の配当を認めるべきである。第三、旧建物が取り壊しによって

X

が現実に敷地に付き更地価額の担保価値を 取得した以上、その後新建物を再築しても、

X

には引き続き更地としての価値権把握を保護すべきである。控訴棄却。 ﹁ ( 一

)

X

が旧建物及びその敷地である本件土地に共同抵当権を取得した当時これらはともに

A

の所有に属していたから旧建物に ついては有利に、本件土地については不利に、それぞれ法定地上権が設定されたとみなすべきである。 以上の点について、

X

は、前記共同抵当権取得は土地につき前一不のような法定地上権が付着することを避けるためになしたものであ る旨るる主張し、現に

X

がこのようにして旧建物と本件土地の全価値権を同時に把握したことは事実である。しかし、前記の法理によ れ ば 、

X

の右全価値権の把握は、観念的には、法定地上権付着の旧建物の価値と法定地上権価額を控除した本件土地の底地価格とを合 算した価値を同時に把握した結果であって、旧建物の建付価額と本件土地の更地価額の合算額相当の価値を把握したためではないと 解すべきである。したがって、

X

があたかも本件土地につき抵当権を取得したことのみによってその更地価額相当の全価値を把握した

(11)

111-土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後に建物が取り壊されて・・ かのように主張する部分はいずれも採用することができない。 竺乙次に、旧建物が取り壊されその跡に新建物が再築された時点についてみるに、この場合においても、新建物について、旧建物 が存続していると仮定した限度での法定地上権がそのまま存続付着し、反面、本件土地は従前旧建物が存在したときと同様の法定地上 権を引き続き負担していると解するのが、右取り壊しと再築の期間が僅か二カ月であることや当初の抵当権設定当時の当事者の意思 の合理的解釈上も、相当である。﹂ ﹁新建物と本件土地を一括売却したさいの各代金割付額決定に際しでも、以上の法理に従い、新建物は旧建物存続を仮定した限度で の法定地上権を付着したものとして評価し、反面、本件土地については更地価額から右の限度での法定地上権額を控除した底地価額に 基づいて評価するのが最も合理的であって、これと同旨の見解によって作成された本件配当表には特段違法不当とすべき点はないと 言 わ な け れ ば な ら な い ﹂ 。 ⑥東京地裁平成四年六月八日執行処分(金法一三二四号三六頁) A 商事は、本件土地建物を所有していたが、

B

会社に対して、本件土地建物を共同担保として、債権額四億四千万円の抵当権を設定 し、平成元年五月二二日その登記手続を経由し、更に申立債権者

X

に対して、本件土地建物を共同担保として極度額一億九二

OO

万円 の根抵当権を設定して、平成元年二一月一九日その登記子続を経由した。平成二年頃、

A

商事は本件建物を取り壊した。

B

会社は、平 成 二 年 九 月 二 七 日 、

C

銀行に対して、本件土地建物を共同担保として、債権額四億四千万円の転抵当権を設定した。

A

商 事 は 、 D フ ァ イナンス会社に対して、本件土地を担保として、極度額二

O

億円の根抵当権を設定して、平成三年四月一一日その登記子続を経由した。 さ ら に 、 A 商 事 は 、

E

会社との間で、本件土地につき以下の内容の賃貸借契約を締結したと主張している。すなわち、契約日・平成 = 一 年 六 月 一

O

目 、 期 間 ・ 平 成 三 年 六 月 一

O

日から五年間、賃料月額・一二万円(但し、六

0

カ月分│五年分│七二

O

万 円 全 額 支 払 い 済 ) 、 敷金・なし、目的・プレハブ事務所建物の所有及ぴ露天自動車駐車場、特約・譲渡転貸することができるという契約である。

E

会 社 は 、 平成三年六月三

O

日、軽量鉄骨造陸屋根平屋建事務所床面積二一・四七凶(件外建物)を建築して同年七月六日その保存登記を経由し た X は、平成三年七月五日本件土地建物について、競売の申立をし、当裁判所は、同月九日上記申立に基づき、土地建物について、競

(12)

第10巻2号一一一112 売開始決定をした。件外建物については、平成三年八月一日

F

会社のため、順位一番の債権額八億円の抵当権設定仮登記がなされてい る。この件外建物のために法定地上権が成立するか否かが争われた。以下のように号ヨノ。 ﹁民法制定の際の審議の内容及び更地に抵当権が設定された場合に関する判例の態度をみれば、この制度の趣旨は、抵当権設定当時 の当事者の合理的な意思を尊重して、その意思の内容が、競売の場合に建物のため地上権を留保すべきものとする場合に、その意思の 内容を法律の力で実現することにあるが、それを超えて、抵当権設定当時の当事者の合理的意思として、建物のため地上権を留保した とは考えられない場合にまで、建物の価値を維持する必要があるということのみを強調して、法律上地上権の成立を強制することまで 含むものではないと解される。 ところで、土地とその地上建物が同一人に帰属する場合に、所有者がこれらを共同担保として、抵当権を設定する場合には、将来競 売によって土地と建物の所有者が異なることとなったときでも、建物のため地上権を留保する意思を、抵当権設定の当事者双方が有し ているのが通常であり、そのような意思が合理的なものであることは、改めていうまでもない。しかしながら、そのような当事者の意 思は、抵当権の設定された建物が、競売まで存続することを前提としているのであり、競売にいたる前に、旧建物が滅失して、これに 設定された抵当権が消滅した場合にまで、その後建築される新建物のため、地上権を留保する意思を有するということは考え難いこと である。仮に抵当権設定者がそのような意思を有していても、新建物に土地と同じ順位内容の抵当権の設定を受けず、したがって、土 地建物を共同担保にとっている場合とは、担保の内容に明らかな格差を生じる抵当権者が、そのような意思を有しているとはいえない し、仮にそのような意思であったとしても、その内容は、合理的なものであるとはいえない。 そうすると、抵当権設定時の合理的な意思の内容は、抵当権が設定された旧建物が滅失した場合には、その後に建築された新建物に 土地と同一順位同一内容の抵当権が設定される場合、または抵当権者がそのような抵当権の設定を受ける利益を放棄する場合は別と して、新建物には、地上権は留保されないものというほかはないものである。 そして、このような当事者の意思を尊重して、共同担保の対象となった旧建物が競売の前に滅失したときは、その後建築された新建 物には、原則として法定地上権は成立せず、例外として、新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かっ、新建物が建築された時 点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき、または抵当権者がそのような抵当

(13)

113一一ー土地及ぴ地上建物に共同抵当権を設定した後に建物が取り壊されて・ 権の設定を受ける利益を放棄したときには、新建物についての法定地上権が成立するものと解釈したからといって、第三者に不測の損 害を及ぽすという事態は考えられない。 そして、敷地に抵当権が設定されていることが判明すれば、建物を再築する者は、抵当権者が土地の担保価値の全部を把握している ことを容易に予測することができる。そして、その抵当権について付けられている共同担保目録を見れば、敷地上にあった旧建物も、 抵当権の共同担保となっていたことを知りうるのであり、そうなれば、敷地の抵当権者が、滅失した旧建物についても抵当権の設定を 受けることにより、土地の担保価値の全部を把握していたことを確認できるのである。 したがって、これから再築する新建物の所有者が、土地の所有者と同一の場合に、新建物に土地と同一内容の抵当権を設定するので なければ、新建物のため法定地上権が発生することはないとされたとしても、建物を再築する者は、建物の建築費を支出するだけでは、 敷地の土地の価格の六割から九割にも相当する高額の法定地上権を取得することができないという、経済常識として当然の結果を甘 受するよう求められるのみで、それ以上不利益を受けるわけではない(新建物の所有者と土地の所有者が異なる場合、土地の所有者が 設定した新建物のための土地の利用権は、一定の場合に限り、土地の買受人に対抗することができる。民法三九五条)。 これに反し、新建物に土地と同一内容の抵当権を設定しないまま、法定地上権の保護のみを要求するとすれば、その要求は、抵当権 者に法定地上権の価格という土地の価格の六ないし九割に相当する多額の損害を与えたまま、なんらの対価を支払うこともなく、土地 価格の六ないし九割という多大の利益を得ょうとするものとなって、誰れしもその要求の不当性を認めざるを得ないこととなる。 そして、建物の再築につき、その建築資金を融資する立場の者も、建物の敷地利用権がどのような内容となるのかについて、関心を 有するのが通常であって、その場合には、敷地及ぴ共同担保の対象となっている建物の登記簿を見ることにより、すでに敷地について 抵当権者がその担保価値の全部を把握していることを知りうるのである。そうであれば、建築資金を融資する者も、再築する者と同様 の認識を得ることができ、再築建物の建築資金の融資をするのみでは、敷地の土地の価格の六ないし九割という高額の価値のある地上 権について、抵当権を取得することができないという、経済常識として当然の結果の甘受を求められるにすぎない。 次に、建物の再築を請け負ったが代金の支払いを受けられない者について考えてみると、その代金債権は、不動産工事の予算額を建 築工事に先立ち登記することによって保護され(民法三三八条てそのような法律上の保護の結果、再築された新建物について土地と

(14)

第10巻 2号一一一114 同一順位同一内容の抵当権が設定されても、未払い代金債権を有する請負人は、その代金債権について、登記した不動産先取特権によ って、上記の抵当権に優先して、弁済を受けることができる(民法三三九条)。したがって、再築された新建物の所有者が土地の所有 者と同一であり、かっ、上記の抵当権を設定した場合のみ、新建物について法定地上権が発生すると解したからといって、未払いの請 負代金債権の保護が不十分となることはない。 以上のように、抵当権設定契約の当事者の合理的意思を尊重し、その内容にそう法律の解釈をしても、第三者に不測の損害を与える ことはなく、むしろそのように解釈しないと、常時抵当物件の監視をすることのできない抵当権者に不測の損害を与えることとなる。 したがって、民法一二八八条の解釈としては、土地及ぴその上に存在する建物(旧建物)について、共同抵当権の設定を受けた者がいる 場合に、その後旧建物が滅失して同じ土地上に新たな建物(新建物)が建築された場合、旧建物に法定地上権が成立する要件があった ときでも、その法定地上権は新建物には成立せず、新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かっ、新建物が建築された時点での 土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定登記を受けたとき、または土地の抵当権者がそのような 抵当権の設定を受ける権利を放棄したときには、新建物についての法定地上権が成立するものと解釈するのが相当である﹂。 ⑦東京地裁平成五年一月一八日決定(判時一四五一号二二三百() 本件の事実関係は以下のとおりである。

X

は 、

Y

に対する三六億円の融資の担保として、

Y

所有の土地及ぴその上の旧建物を共同担 保として第一順位の抵当権の設定を受け、更に、

Y

に対するこ三億円の融資の担保として、右土地、旧建物及び

Y

の子会社

A

所有の土 地を共同担保として第二順位の抵当権の設定を受けた。その後、

Y

は、旧建物を取壊して、本件土地

(

Y

所有の土地と

A

所有の土地) の上に新建物一棟を建築したが、建物再築の場合には債権者に第一順位の抵当権を設定する旨の

X

との当初の約束に反して、

B

建設会 社のために第一順位の抵当権を設定した。そのために、

X

は、前記貸付金について、第二、第三順位の抵当権設定仮登記をしたに止ま っ た 。

X

は、抵当権に基づいて、本件土地の競売を申立て、競売開始決定がなされた。この場合、新建物について法定地上権が成立す るかという問題について、本決定は以下のように判断した。﹁本件は、抵当権設定者が土地との共同担保の対象であった旧建物を競売 の前に取壊し、その後新建物を再築した場合であるが、このような場合には、新建物に土地と同順位の共同抵当権の設定登記を受けた ときを除き、新建物については地上権を留保しないのが抵当権者の合理的意思というべきである。なぜなら、抵当権者は、競売まで旧

(15)

115一一土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後に建物が取り壊されて 建物が存続するものとして土地建物の担保価値を把握していると考えるべきところ、建物が再築された場合に、新建物に法定地上権が 成立するとすれば、抵当権者は、地上権価格相当の多大な担保価値を失って、不測の損害を被るからである。そこで、このような建物 再築の場合には、抵当権者が土地と同順位の共同抵当権の設定登記を受けたときや、抵当権者がそのような抵当権の設定を受ける利益 を放棄したときを除き、法定地上権は成立しないというべきである。そして、このように法定地上権が原則として成立しないと解して も、建物を再築する抵当権設定者は、建物収去の結果を避けるためには、抵当権者のために本来設定すべきところの、土地と同順位の 共同抵当権を設定すればよい(法定地上権を成立させることができる)のであるし、また、再築工事を請け負う者や再築工事代金を融 資する者も、土地建物登記簿謄本をみることにより、新建物について法定地上権が発生するのが前述の場合に限られることを予測する ことができるのであるから、抵当権設定者や第三者に不測の損害を与えることにはならない﹂。このことを前提にした上で、本判決は、 民法三八九条の一括競売規定は、更地の抵当土地に抵当権設走者が建物を建築した場合のみならず、土地建物に共同抵当権が設定され た後、抵当権設定者が建物を取り壊して新建物を建築したため、新建物については法定地上権の成立しない場合にも適用すべきである と し た 。 大阪高裁平成五年六月一一日決定(判時一四六五号九一頁、金法一三六七号二二五頁) 債権者

X

は、平成二年六月、債務者

Y

に対し、一億五千万円を融資するに当たり、

Y

所有の土地とその地上建物を共同担保として根 抵当権を設定した。ところが、その後の平成コ一年一月、

Y

は、建物を取り壊したうえ、平成四年六月、右土地上に新建物を建築し、同 年六月、同建物を右土地とともに他に譲渡して所有権移転登記を経由してしまった。 そ の 後 、

X

は、右土地について競売の申立をするとともに、新建物についても民法三九八条に基づき右土地との一括競売を申し立て たが、原審は、右土地については競売開始決定をしたものの、新建物については法定地上権が成立するから同建物に対する一括競売は その要件を欠くとして、その申立を棄却した。本決定は、旧建物は、共同抵当権設定当時、既に老朽化し空家になっており、当事者間 においては、早晩同建物を取り壊して、本件土地を更地とすることが約定され、同建物には担保価値は認められず、専ら本件土地のみ を評価して融資額を定めたが、融資者としては念のために同建物にも根抵当権を設定しておいたものであるといった事実を認定した 上で、法定地上権の成立を否定した。法定地上権の成立は認められず、したがって、一括競売を申し立てることができるとした。 ⑧

(16)

第10巻 2号 116 コ一、以上、土地及ぴその地上建物に共同抵当権を設定し、後に地上建物が取り壊され、新しい建物が築造された場合、新建物のために 法定地上権が成立するかという問題について、判例の概要をみると、肯定・否定の両説に分かれることを看取することができる。前掲 ②⑥⑦判例が否定例であり(但し、②判例は新建物が再築されていない例か?。建物が存在するものとして競落許可をしたが、建物は 壊されて存在しなかったという事例)、③④⑤判例は肯定例であるといえよう。結論を分ける論拠の相違は、⑤の大阪高裁判決と、⑥ の東京地裁執行処分の論旨に端的に示されているように思われる。抵当権設定当時に抵当土地の上に建物が存在した場合、その一方ま たは双方を抵当に取り、後に抵当権が実行されてそれぞれ所有者を異にするに至ったときには、建物のために土地に法定地上権が設定 されるということについて異論はないであろう。そして、当時存在した建物が後に取り壊されて、新建物が建築された場合、旧建物の 範囲において新建物につき法定地上権の成立を認めることができるという判例法理の存在も事実である(前掲昭和一

O

年 大 審 院 判 決 、 昭和五二年最高裁判決)。しかも、新建物の建築者は旧建物の所有者

l

抵当権設走者でなくとも差し支、えないと考えるならば(前掲昭 和二二年大審院①判決、東京高裁昭和六=一年④決定)、本件のような場合においても新建物に関し、旧建物の範囲で法定地上権の成立 を認めることもあながち論理的には不可能ではないということになる。 しかし、秦教授の見解にも示されるごとく、近時、﹁バブル経済の崩壊後、土地と共に共同抵当の目的となっている建物を取り壊し て、:::第三者にその土地を貸して建物を建てさせるというような、要するに抵当権の実行を妨害するようなかたちで、従来の個別的 価値考慮説の言わば濫用が横行していた﹂が、﹁東京地裁の執行部では、全体価値考慮説という考え方(筆者注・前掲⑥東京地裁平成 四年執行処分の見解)を打ち出し、法定地上権の成立を否定することで執行妨害的なものを防いでいこうという、ある面では政策的な 判断を伴った理論によって処理してきた﹂という事情が重なって、この問題は論議を呼んできたとい、える(鼎談﹁金融法務を語る﹂銀 行法務

2

1

五四

O

号四八頁[秦発言])。すなわち、前掲⑤大阪高裁判決の見解、すなわち﹁法定地上権付着の旧建物の価値と法定地上 権価額を控除した土地の底地価格とを合算した価値を同時に把握した結果であって、旧建物の建付価額と土地の更地価額の合算額相 当の価値を把握したためではない﹂と解する見解と、⑥東京地裁平成四年執行処分の見解、すなわち﹁土地とその地上建物が同一人に 帰属する場合に、所有者がこれらを共同担保として、抵当権を設定する場合には、将来競売によって土地と建物の所有者が異なること となったときでも、建物のために地上権を留保する意思を抵当権設定の当事者双方が有しているのが通常であり、そのような意思が合

(17)

117一一土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後に建物が取り壊されて…. 理的なものであることはいうまでもない﹂が、しかしながら、﹁そのような当事者の意思は、抵当権の設定された建物が、競売まで存 続することを前提にしているのであり、競売に至る前に、旧建物が滅失して、これに設定された抵当権が消滅した場合にまで、その後 建築される新建物のため、地上権を留保する意思を有するとは考え難いことである﹂という見解に立ち、法定地上権を認めた場合の抵 当権者の被る不利益、法定地上権が認められるとした場合の新建物所有者の利益の不当性を挙げて、法定地上権の成立を否定する見解 (この点については、浅生重機・今井隆一﹁建物の建替、えと法定地上権﹂金法一三二六号六百九以下参照!このような解釈を導くについ ての物件明細書の要旨を紹介し、法定地上権制度の根拠に関する考え方および判例の態度をみるならば、民法三八八条は、当事者の合 理的な意思を無視してまで、建物の存続を図るものでないとする物件明細書の考え方は、法定地上権制度の基本に忠実な解釈であると いえようとしている)との対立ともい、える。前者は個別価値考慮説と称され、後者は全体価値考慮説と称せられる。 四、学説はどのような状況にあるといえるであろうか。個別価値考慮説は、土地・建物共同抵当の場合の担保価値把握を、土地抵当権 によるものと建物抵当権とによるものとを別個に分けて取り扱う立場である。しばしば言われるように、更地価値を

A

、法定地上権価 値を

B

、建物価値を

C

とした場合、土地と地上建物に共同抵当権を設定した場合は、土地抵当権による担保価値把握は

A│B

と な り 、 建物抵当権による担保価値把握は C 十

B

となり、それぞれを分けて捉えることになる。従って、建物が滅失して建物抵当権が消滅した 場合、土地抵当権のみが残り、それは

A1B

を把握しているに過ぎないということになる。これに対して、全体価値考慮説によれば、 土地抵当権は

A

B

を、建物抵当権は

C+B

を把握し、土地の交換価値のうち法定地上権相当部分については建物抵当権を実行して法 定地上権付建物の売却代金から被担保債権を回収することになるが、いずれにしても抵当権者は土地の全体的価値すなわち

A

を把握 しているものであることを重視すべきであるという立場である。従って、後者によると建物が滅失して建物抵当権が消滅した場合に は、土地抵当権は更地としての担保価値を有するものとして把握すべきであるということになる。前者は基本的には法定地上権の成立 を肯定する見解に連なり、後者は原則的に法定地上権の成立を否定する見解となって現れている。こうした枠組みを基本としつつ、学 説は、それぞれなんらかの偏差を伴って登場してきでいるといわざるを得ない。これらの諸見解については、すでに、伊藤教授が整理 されているところである(伊藤進﹁土地建物共同抵当における建物再築と法定地上権(上)(下こジュリスト一

O

五 五 号 、 一

O

五六号) が、煩を厭わずに若干の整理を行うと、

(18)

第10巻2号 一 一118 ①個別価値考慮説に立ちながら(大阪地裁執行部では、いまのところ、東京地裁の見解、すなわち全体価値考慮説に従わず、基本 的には従来の通説によるべきであるという見解で一致しているという発言がある。富川照雄﹁民事執行における保全処分の運用﹂判タ 八

O

九号九頁参照てこの考え方を利用して執行妨害を図ろうとする者のいることは事実であって、具体的には、土地と地上建物に共 同抵当権が第一順位で設定されているのに、建物を勝手に取り壊し、量一左押のプレハブ等の建物を新築する場合などがその例であるが、 これを放置し得ないことはいうまでもない、しかし、これに対しては、全体価値考慮説を採るまでもなく、権利濫用法理で処理するこ とが可能であるとする見解がある。抵当権設定者が建物を抵当権者の承諾なしに取り壊した場合は、抵当権の侵害となり、法定地上権 の利益を放棄したものに他ならないから、この場合に法定地上権の存在を主張することは権利の濫用であるということになる(前掲・ 富川論文九頁参照)。因みに、富川判事は、個別価値考慮説を採る理由を四点に分けて整理をしている。 ②土地とともに共同担保として抵当権の設定された同一所有者に属する地上建物が取り壊され建物が再築された場合、再築され た建物に法定地上権が認められるとなると、抵当権者としては追加担保の提供を受ける必要がある。けだし、追加担保の提供を受けな ければ、土地に対する法定地上権の負担を建物の価額で相殺することにより債権の回収を図るという図式は成り立たず、抵当権者の負 担のもとに新建物の所有者などが不当な利益を得ることになる。不動産業者等が古い建物付きで土地を購入し、そこに建物を新築する 計画を有している場合に、これに必要な資金を融資する金融機関は、通常、土地と建物に共同抵当権を設定するとともに、新築の建物 についてもその完成後に担保権を設定するという約束をするのが一般的である。しかし、融資先は、新築資金の融資を他にも求め、そ のために新築建物についてその他の金融機関のために第一順位の抵当権を設定することが多い。そうすると、先の新建物についての担 保設定約束は反故になってしまう可能性が高い。このような不利益を回避しようとすれば、再築建物について法定地上権の成立を否定 するか、あるいは、法定地上権の成立を認めるとしても追加担保の提供を求めることが必要である。しかし、追加担保の提供を求める ことは多くの場合至難の技であろう。従って、法定地上権の成立を否定し、その論拠として全体価値考慮説を持ち出す立場に行き着く ことになる。ただ、このことを理解しつつも、以下のような論旨を展開する見解がある。すなわち、このような事態を生ずるのは、あ る意味では、金融機関の融資先選択の誤りであり、利益追求を至上主義とする経営方針が招いた結果である。法は、このような場合に まで、民法三一八八条の解釈のもとに金融機関を救済する必要があるのかという疑問を提起し、共同抵当権の場合とそうでない場合との

(19)

119一一一土地及ぴ地上建物に共同抵当権を設定した後に建物が取り壊されて 論理的整合性という観点からも、法定地上権の成否は土地・建物に抵当権が設定された当時を基準とし、土地抵当権は建物のための法 定地上権を控除した価値を以て担保の目的としたものであるから、法定地上権の価値を控除した交換価値を実現すれば足りるものと し、再築された建物のために一般に法定地上権の成立を認めても、その地上権の内容を再築前の建物を基準として定める限り土地抵当 権の侵害はないということになる。ただ、抵当債務者が抵当権の実行を妨害するために地上建物を取り壊し、新たに建物を新築するよ うな例外的な場合(執行妨害刑乏には、正義・公平の理念から、全体価値考慮説に従い法定地上権の成立を否定するという見解がある (長谷川貞之﹁土地・建物の共同担保において建物が滅失し再築された場合と法定地上権の成否﹂ジュリスト一

O

一五号二八一頁以下) この見解はや、便宜的であり、何故、執行妨害型の場合のみ全体価値を考慮する必要があるのかという点についての説明が説得的では な し 。 ③ 土地・建物共同抵当の場合は、土地抵当権は土地自体の価値

( A

)

、建物抵当権は建物自体の価値

(

C

)

を支配し、共同抵当で あることから、両者の合計額

(

A

C

)

を支配することになる。建物利用権(地上権 ) ( B ) は、設定当時においては、独立の担保価 値対象としては観念しない。設定者は土地所有者として自己の建物を土地上に存置せしめることができる。建物の滅失によって建物抵 当権は消滅するが、土地抵当権は残る。この土地抵当権は土地自体の価値

( A

)

を支配しており、敷地利用権の負担は負っていない状 態になる。建物滅失という損失は生じているが、共同抵当の危険分散の機能が発揮され、土地抵当権により被担保債権全額の優先弁済 を受けることができる。その後、建物が再築されても、以上の状態に変動はない。それはあたかも、更地に抵当権が設定された後に、 建物を築造した場合と同様と考えてよい、すなわち、土地・建物共同抵当の場合の再築建物には、原則として、法定地上権は成立しな い。民法三八八条一一項の適用外となり、その再築が、設定者再築か第三者再築かを問わないし、再築建物に第三者の抵当権が設定され たか否かを問わないという見解がある(伊藤進﹁土地建物共同抵当における建物再築と法定地上権(上)(下)ジュリスト一

O

五 五 号 、 一

O

五 六 号 、 特 に 、 一

O

五六号一四七頁)。この見解は、土地と建物とを一体とみることが必要となるが、土地や建物をそれぞれ独立 の物とするわが民法の基本的立場からは検討を要するであろう。 ④山野目教授は、再築事例で、土地とその上の建物が共同抵当の目的とされた場合においても、法定地上権の成立可能性を肯定す べきであるとする。実質論として、法定地上権の成立を否定し、建物で営まれてきた居住や事業を覆す結果の重大性を考慮し、また、

(20)

第10巻2号 一 一120 先の⑦決定が示した建物収去を避けるための代替策としての﹁新築建物への土地と同順位の共同抵当権の設定﹂という方策の不安定性 を根拠としている。むろん、設定者がわざと建物を取り壊して再築する執行妨害の存在は意識されており、そのような場合には、民法 一条三項により法定地上権成立の主張を許さないなどの方法をとりうるとしている(判批・私法判例リマ

l

ク ス 8 号 三 四 頁 参 照 ) 。 ⑤高木教授は、先に挙げた東京地裁の見解を取り上げて、この見解は、果たしてこれまで築かれてきた法定地上権の判例理論や土 地と地上建物の関係についての法理論と整合性があるのかを検討する必要があると指摘した上で、法定地上権否定説をとるには、土地 と建物を一体と考え、その上に抵当権が設定されているとみる必要がある(先の伊藤教授の見解はこのような見解に対する対応か ? ) 0 単純な甲財産と乙財産の共同抵当の関係とは異なり、財団抵当や企業担保のような、土地と地上建物を集合財産的に一体とみて、この 上に抵当権が成立しているとみる必要がある。このように考えると、建物が滅失しても、建物抵当権が消滅するのではなく、建物それ 自体だけの価値を失うにすぎないと考えることが出来る。しかし、土地と建物をそれぞれ独立の不動産とみるこれまでの考、ぇ方に立っ と無理な法律構成かも知れない、と述べている(高木﹁共同抵当における最近の諸問題﹂金法二二四九号一三頁以下)。 ⑥模教授は、自己借地権的構成からの検討として、再築建物と法定地上権との関連を論じている(﹁再築建物と法定地上権① j ④

-NBL

五 五

0

・五五二・五五三・五五五号)。理論的には土地抵当権が法定地上権を控除した価値を担保目的としたものであるとして、 土地だけの抵当と共同抵当の場合との論理的整合性に注目し、他方、実践的には再築建物に従来どおりの抵当権の設定がなされなかっ た事態は金融機関の融資先選択の誤りであるなどとして原則的には法定地上権の成立を認め、執行妨害型のような例外的な場合に限 って正義公平の理念から法定地上権の成立を否定し、抵当権者の負担の下に再築建物の所有者が不当な利益を得る異常事態を回避す べきであるとする見解の存することを認め、新たな法理が確立されるまでのさしあたっての対応策としては現実的な解釈論であると しつつ、法定地上権を、借地権の地位の高まりに対応して、同一所有者に属する土地・建物の並存状態の発生時点で生ずる内面的自己 借地権より出発させる構成は、土地・建物の抵当取引をめぐって生ずる関係を合理的に処理する道を示しているように思うとして、自 己借地権的構成という見解を提示している。土地・建物に共同抵当が設定された場合における建物のための敷地利用権と各抵当権との 関係を次のように整理する。すなわち、同一所有者に属する土地・建物は内面的には建物建築当時よりすでに建物のための自己借地権 が土地上に設定されており、土地抵当権はこれに劣後するものとしてその部分に効力を及ぼさず、これを控除した形で土地を担保的に

(21)

l n -土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後に建物が取り壊されて…. 支配し、他方、建物抵当権は自己借地権にもその効力を及ぽし、建物とともにそれを担保的に支配する。そして、この自己借地権は、 土地抵当権や建物抵当権の実行による個別売却が行われ、土地・建物の所有者を異にするに至るとき、法定地上権として現実化する。 建物が朽廃以外の原因によって滅失したときの自己借地権の運命であるが、当該土地上に自己借地権に劣後する後順位権としての土 地抵当権が存在するところから、さらにその自己借地権自身が、建物とともにではあるが、抵当取引に出され、その状態が終わってい ないと解されるところから、自己借地権は単純に消滅するものではない。敷地利用権は建物の存立と存続を支える不可欠の前提条件で あって、建物の機能を拡充する単なる従的存在ではなく、建物を代表者としてその背後に控、えているものの、その社会的地位はますま す高まって建物との独特の並列的な物的結合体を形成してきでおり、建物抵当権はこのような物的結合体に対する抵当権を一不す外面 的な形態として、内面的には建物抵当権と自己借地権との複合体を形成してきでいるのであって、建物が滅失して結合体が崩壊して も、残された自己借地権に対する抵当権は直ちに無条件に消滅するものではない。ただ、建物滅失によって、結合体上の抵当権を代表 する建物抵当権が消滅し、自己借地権抵当権はその外形的代表者を失って、対抗関係においては勿論存続関係においても大きな不安に さらされ、それ自身外形上の自立的な存在形態をもたないだけに、その効力を自立的に実現できないことになってくる。そこで、自己 借地権抵当権がその存立を主張し、その効力を実現するには相当の期間内に自己の存在を何らかの外形的・代表的存在に結びつけるこ とが必要になるのである。そのために再築建物上の抵当権に結び付ける手法がとられることになる。自己借地権は内容的に無条件に再 築建物の種類・構造・容積等に適合するように改変されるものではないが、抵当権者との事前・事後の合意なしにも従前の枠内におい て、そして従前の順位において再築建物のための敷地利用権となり、再築建物との物的結合体を形成するとする。この場合、外面的に は、再築建物上に従前と同様の抵当権を設定し、自己借地権抵当権をそれに包摂させて従前と同様の担保関係を再構築する形をとるこ とになる。統合を実現するためには、再築建物について当事者による新たな抵当権設定契約が必要であり、自己借地権上の抵当権の効 力が当然に再築建物に及ぶというわけではないとする。ただ、問題は、設走者の信用状態に問題があるとき、解体・再築が無断で行わ れる場合晶、、承諾や合意があっても実行されず、第三者の抵当権の登記が先行する場合や、建物自体が合意の効果の及ばない第三者の 所有となる場合がままみられる。このような事態への対応策として、槙説は、当事者間に明示の合意がなくとも、取引慣行から原則と して抵当権設定の黙示の合意があったと解釈しつつ、恋意的な先順位抵当権の介入に対しては背信的悪意者の法理を持ち出すことな

参照

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