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S が現実成長率

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Academic year: 2021

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(1)OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ. 保証成長の不安定性のためのケインズの 条件とハロッドの条件 篠崎敏雄 I.序 ハロッドは r 動学理論におけるー論 J"AnEssayi nDynamicTheory"( 1 9 3 9 )1) の原稿をどめぐるケインズとの往復書簡の中で,貯蓄率. S が現実成長率. G の変. 化とともに変化する場合の,保証成長の不安定性成立のための条件について述 べている。これはケインズが,やはりこの往復書簡の中で繰り返し述べている, 不安定性成立のための条件とは異なるものである。ところが,一連の往復書簡 の後で実際に公表された「動学理論におけるー論」の中では,ハロッドは,事 実上ケインズの条件を採用している。しかし,第二次大戦後に,この論文の内. 容を拡充発展させて書物の形で司刊行した『動学的経済学序説~. (附?〉では,. 再び本来のハロッド自身の条件に戻っている。ここでは,保証成長の不安定性 成立のためのケインズの条件とハロッドの条件とを考察し,それらの違いの比 較や,ハロッドが以上のように態度を変えた事情などについて考察してみよう。 また,この条件と関連してケインズが主張する,保証成長率の存在の条件の意 義についても検討する。. I I . 保証成長の不安定性のためのケインズの条件 まず,現実成長率 Gの変化とともに貯蓄率. S が変化する場合に重点を置いて,. 保証成長の不安定性成立のためのケインズの条件について考察してみよう。ヶ 1) 2). Harrod,RF,"AnE s sa yi nDynamicT h e o r y ",EconomicJournal ,March,1 9 3 9 . H a r r o d,RF,TowardsaDynamicEconomics ,1 9 4 8 . ..

(2) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑2ー. 2. 第5 7巻 第 1号. インズは,ハロッドとの聞の往復書簡の中で,tという記号で,所得(=産出高) の増分に対する資本の増分の均衡比率を表している。これはハロッドの必要資 本係数(必要資本産出比率)に当たる。. また,平均貯蓄性向(貯蓄率〉のほか. 限界貯蓄性向という概念も使っているが,ここでは 率 ) ,. Smで限界貯蓄性向を表そう。. S で平均貯蓄性向(貯蓄. そうすると,保証成長の不安定性のためのケ. インズの条件は, t>smということになる。短期においては一般に ので. Sm>Sである. t > S mの条件は tが S よりも遁かに大きいということを意味している。. 次に,このケインズの条件が,何故不安定性成立のための条件と考えられて いるかということについて考察してみよう。ケインズ自身はこの点について , ω. とくに詳しい説明をしているわけではない。しかし,このケインズの条件を採 り入れている「動学理論におけるー論 J ( 1 9 3 9 )の第 1 0節での,ハロッドの説 明をも参考として考えてみよう。 ケインズは,大よそ次のように考えていたと思われる。今,現実成長率と保 証成長率が一致している状態から,何らかの理由で現実成長率が上方に請離し たとする。そしてその結果,保証成長径路上の産出高と比較して現実の産出高 がゐだけ上方に霜離したとする。その時に,不安定性が成立するためには,そ の話離の結果,さらに現実成長率が増大する力が働かなければならなし、。そし てその力は,最初の現実成長率の上方読離,したがってゐだけの産出高の余分 の上方講離の結果,資本不足が発生することによって生じると考えるのである。 そこで今度は,そのぬが資本不足を発生させる条件は何かということが問題と なる。ゐだけの産出高の上方霜離は,加速度原理から. だけの余分の投資必要 t x e. 額を生じる。また ,Xeは SmXeだけの余分の事後の貯蓄(したがって余分の事後の. x e> 投資〉を生じさせる。それゆえ,Xeが新たに資本不足を生じさせる条件は,t 3) ケインズは,ハロッドとの往復書簡の第 2回目の手紙以後ではという記号をこの意、 味で使っている。‑ 4) ケインズは往復書簡の中で,限界貯蓄性向も平均貯蓄性向も,向じ sとし、ぅ記号で表し ているが,ここでは両者を区別した。 5) Keynes,JM,The C o l l e c t e dW r i t i n g s0 /]oh冗 MaynardKe . Y n e s ,e d i t e d by D 9 7 3,p . 3 3 0 Moggridge,VoIXIV,1 6) Harrod,"AnEssay",p p . 2 4 ‑ 6 ..

(3) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 3. 保証成長の不安定性のためのケインズの条件とハロッドの条件. ‑3‑. SmXeということになる。これは,とりも直さず t>Smということである。また,. 貯蓄率(平均貯蓄性向)sが ( Gの増大とともに〕増大する時には,一般に Sm> 5であるので,上の条件は,t が S よりも遥かに大きごということを意味する。. このようにして ,t>Smの条件をみたす時にのみ,たとえば G の G叩からの上方 講離があり,保証成長径路上の産出高に比べ現実の産出高の上方議離があった 時,不安定性が成立すると考える。これが,ハロッドとの往復書簡でのケイン ズの基本的な考え方であったと思われる。 これを図で示せば次のようになる。第 1図においては,横軸に時間 T,縦軸 に産出高 xを計っている。 A 点から出発する右上がりの曲線は,最初の保証成 長径路を示す。そして,現実成長径路は最初この保証成長径路と一致していた とする。ところが, τ時点から. T+1時点にかけて,現実成長径路が上方に議離. し,その結果, τ+1時点において現実の産出高が保証成長径路上の産出高と比 X べて ,. eだけ上方に議離しているとする。ところが,その結果,次に辿る現実成. 長径路は. a, b, c,のいずれの径路となるかということが問題となる。ケ. インズの考え方によれば,t養 Smに従って,それぞれ a,b,C の径路を辿るこ z. A. 。. τ+2 第. 7). 1. 図. c fKeynes,JM . , T h eC o l l e c t e dW r i t i n g s0 1,p330. T.

(4) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑4‑. 4. 第5 7巻 第 1号 x. n l. ,. a. A '. 。. 7 :. 第. とになるのである。 不安定である。. 7 :+ 1 τ + 2. 2. T. 図. t>Smで aの径路(現実成長率増加〕の時,保証成長均衡は. t=Smで bの径路(現実成長率は不変〕を辿る時,この現実成長. sの増大の結果〉増大した新しい保証成長率が一致していれば,保証成長 率に C 均衡は中立的である。しかし,新しい保証成長率が新しい現実成長率にちょう ど一致する保証はない。また. t<Smで. の現実成長率の低下が一度増加した. cの径路(現実成長率減少)の時, こ. Sを減少させて保証成長率を元に戻し,現. 実成長率もそれに収散するようであれば,元の保証成長率の均衡は安定である と言える。 同じ事は,成長率を直接表すために半対数表を用いれば,より分り易くなる。 第 2図において,横軸に時間 T をばかり,縦軸に産出高の自然対数をはかる。. A点に始まる右上がりの半直線は最初の保証成長径路であるとする。その勾配 はその最初の保証成長率(正常保証成長率〉である。そして τ時点までは現実 成長径路は保証成長径路に一致しているが, τ時点、から τ十 1時点にかけて,現. ' C 'の勾配のように上方に議離したとする。その結果 τ+1 実成長率が線分 B 8) これは ,Gの Gw からの議離により変化する一時的保証率 t h et e m p o r a r yw a r r a n t e d r a t eでなくて,正常保証率 t h en o r m a lw a r r a n t e dr a t eである。 c f .印 c i t,p326.

(5) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 5. 保証成長の不安定性のためのケインズの条件とハロッドの条件. ‑5ー. 時点において現実の産出高はゐだけ元の保証成長径路上の産出高に比べて上 方にある。この結果現実成長径路が次にどのような径路を辿るかは,t 言~ Smの条. >Smの場合には, a 'の径路を辿り,線分 C a ' 件に従って決まると考えられる。 t の勾配で表される現実成長率は前より大きくなっている。これは元の保証成長 均衡が不安定であることを示す。 t =sの場合には, b 'の径路を辿り,線分 C 'b ' の勾配で表される現実成長率は前と不変である。この場合, Gの増大に伴う. S. の上昇が,ちょうどこの現実成長率に等しい保証成長率を生じさせれば,元の 保証成長均衡は中立的ということになる。しかし,ちょうどそうなる保証はな. <smの場合には現実成長率は下り,たとえば線分 C ' c 'の勾 いのである。また ,t 配で表されるものになる。もし同時に S も下り,その結果一度上がっていた保 証成長率が元の保証成長率に帰り,現実成長率もそれに一致して行けば,元の 保証成長均衡は,安定的である。しかし注意しなければならないのは,この場 合元へ帰って行くのは成長率であって成長径路ではないということである。 ここで,以上で説明した事柄を簡単な数式で表してみよう。 g で事前的投資の 成長率, 1 rで必要な投資(加速度誘発投資), 1で事後の投資を表す。投資関数 は次のようなものである。(ただし,. ドットの記号は時聞に関する導関数を表. す 〉 。. g=f(1r‑1 ). ( 1 ). f (0)=0,f '( 1 r . ‑ 1 ) >0 また,産出高の現実成長率の変化率と事前的投資の成長率の変化率は符号が 同じであると仮定する。すなわち. s ψzG=s i g ng. ( 2 ). 産出高の現実成長率が保証成長率と一致していない時には,生産物市場の均衡 も成立していないので,投資乗数の理論が成り立たず,事前的投資の成長率と 産出高の現実成長率とは一致しない。しかし,保証成長均衡からの諦離(現実 成長率と保証成長率との食違い〉があまり大きくない時には,事前的投資の成 長率と産出高の現実成長率が同じ方向に動くと仮定することは許されるであろ. 2 ) 式とから次のようになる。 う。そこで(1)式と (.

(6) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑6ー. 6. 第5 7巻 第 1号. ( l r ‑ l )主 O に従って G妻 O また ,l r‑lを生産不足と考えて,企業の生産面の調節から次のような関数を 考えることも出来る。 ( 3 ). G=~ (lr- 1). φ(0)=0,φ' ( l )>0 r‑ 1 いずれにせよ,現実成長率. Gが保証成長率 G却から上方に議離した時,資本不. 足(または生産不足)( l r‑l> 0)が生じれば,保証成長均衡は不安定であると いうことになる。このことが生じるためには必要であるとしてケインズによっ て主張された条件が 以上は. t>Smということである。. r 動学理論における一論 J ( 19 3 9 )でのハロッドの説明を参考として,. G の変化に伴って. S が変化する場合の保証成長の不安定性のためのケインズ. の条件の説明であった。ところが,このケインズの条件は,ハロッドは 化する場合についてのみ取り扱っているが. Sが変. S が変化しない場合にも当てはま. ると考えられる。そこで次には,この問題について考えてみよう。 今,貯蓄率(平均貯蓄性向〉と限界貯蓄性向とが一致し,しかも,現実成長 率の変化に伴って貯蓄率が変化しないという単純化の仮定をしてみよう。そし て,保証成長率から現実成長率が上方に言語離して,その結果現実の産出高が, 保証成長径路上の産出高から Xeだけ上方に議離したとする。その結果生じる余 分の必要投資は. t x , また余分の事後的貯蓄(=余分の事後的投資〉は SmXeとな e. る。そして,この場合不安定性成立のための条件は九 >SmXe,すなわち. t>Smと. し、うことになる。 このようにして,ハロッドはとくに言っていないが,ケインズの主張する不 安定性成立の条件は,産出高の現実成長率の変化に伴って貯蓄率が変化する場 合にも,変化しない場合にも,同じように当てはまることになる。. I I I . 保証成長の不安定性成立のためのハロッドの条件 次に,往復書簡に現れている,不安定性成立のための,本来のハロッドの条 件について考察してみよう。.

(7) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 保証成長の不安定性のためのケインズの条件とハロッドの条件. 7. 貯蓄率. ‑7ー. S が可変の場合のこの条件について考察する前に,現実成長率の変化. に伴って貯蓄率が変化しないという仮定の下で,この条件を考えてみよう。よ く知られているように,現実成長率と保証成長率をそれぞれ含むハロッドの方 程式は,単純な形では次の通りである。. G=s/C. ( 4 ). G叩 ニ s /C r. ( 5 ). C は現実の資本係数, Cr は必要資本係数で,ケインズの tに当たる。 この場合,事前的投資の成長率 gの変化率は,産出高の増分あたりの資本不 足(直接には投資不足〉の次のような増大関数であるとする。. g=f(Cr‑C). ( 6 ). '(Cr.‑C)>0 f (0)=0, f また,この投資の変化率と産出高の現実成長率の変化率の符号が同じであると. ‑c~霊 o. r すると , C. ~こ従って,. G 萎 O となる。. また, Cr 一 C を生産不足 (C‑C γ は生産過剰〉を表すものとすると,それに 対する生産面からの企業の調節を考慮し,次のような関数を考えることも出来 る 。. G=ψ(Cγ ‑ C). ( 7 ). ψ(0)=0, ψ'(C ‑C)>0 r いずれにぜよ , Cr‑C這. o~,こ従って,. G~言. O. とし、う関係を考える。. ところで, ( 4 ) 式と ( 5 ) 式との関係から,よく知られているように, G ~三 G却に. 従って C~三 Cr となる。 G>G却の時には C< Cr となり,仮定によって G はさ らに上昇する。また, G<G 却の時には C>C i rとなり,仮定によって G はさら に下落する。これがハロッドの不安定性原理の基本的な考え方である。 この場合,保証成長の不安定性が成立するための条件は,次の通りである。. signG=s i g n (Cr ‑C ). ( 8 ). ここには,ケインズの主張する t>smという条件は,何等関係していなし、。 また不安定性のためのケインズの条件においては,適切な時間の単位という ものが重要な意味を持っている。すなわち,諸量をはかる時間の単位が大きい.

(8) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑8‑. 8. 第5 7巻 第 1号. ほど tは小さくなり,時間の単位が小さいほど tは大きくなる。そこで. t>sm. の条件が成立するかどうかは,適切な時間の単位の大きさにも依存している。 8 )式で表される不安定性のための条件は,時間の単位に依存してい ところが, (. ない。たとえば,左辺は時間の単位の大きさによって変ったりしなし、。又右辺 においても,. Cと C,は双方とも時間の単位によって比例的に変化するから,右. 辺全体は時間の単位によって影響を受けない。 次に,貯蓄率. S が現実成長率. G の変化につれて変化する場合の,不安定性成. 立のために必要なハロッドの条件について考えてみよう。ハロッドはケインズ との往復書簡の中で,三回ほど,この間題にふれているご要するに,その条件 とは,たとえば現実成長率 G が保証成長率 G却を離れて上方に霜離し,同時に 貯蓄率. S が上昇する時,. Gの増加率が Sの増加率より大きいということであ. る 。. ( 4 ) 式から次のようになる。 C=sjG. ( 9 ). この式から自明なように,GjG~ s l sにつれて C豆 Oである。そこで, G=G i 即. したがって C=C r の状態から出発して ,C ,は不変のままで Gが上昇したとす る。その場合,前に述べたことから明らかなように,不安定性が成立するため ,とならなければならない。そのためには GjG> には, C<0であって ,C<C. s j sでなければならないのである。もし GjG=sjsであれば,Crが不変である ので ,G却=sjC r は,G と同じ率で上昇し,保証成長均衡の中立性が成立する。 また,その時には 附の時には,. C=0で,C=Crの状態が維持されている。さらに ,GjG< であって ,C>C rとなり,前に説明したメカニズムから,. C > ?. 安定性が成立する。 そしてハロッドは, GjG>sjsが成立しないような場合は,ありそうもない 情況であるとして,脚注的な事と呼び,重要視していなし、。. 9) 1 0 ). 印 c i t,pp335‑6,p338,pp342‑3 c f印 刷c i t,pp335・6,p. 33 8, p p . . 3 4 2 ‑ 3.

(9) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 9. 保証成長の不安定性のためのケインズの条件とハロッドの条件. ‑9‑. I V . 不安定性のためのケインズの条件とハロッドの条件との比較 以上,考察して来たように,保証成長の不安定性のための, ケインズによっ て主張された条件とハロッドの考えている条件とは,同じものではない。 ケインズの条件は. t>Smということであり,これは,現実成長率の増大に伴っ. て,貯蓄率が増大しょうがしまいが,それにかかわりなく必要な条件である。 現実成長率が保証成長率に一致している状態から上方に議離した時,その結果 保証成長径路上の産出高に比較して現実の産出高が とする。その場合,そのことのために,必要投資は たがって事後的投資〉は. Xeだけ大きくなっていた". t x eだけ増加し事後的貯蓄(し. SmXeだけ増加している。そこで,資本不足が生じて現. 実産出高をさらに上昇させる刺戟が生じるためには,. t x SmXeすなわち e>. t>Sm. でなければならないということであった。そしてその場合の投資関数は,次の ようであると考えた。ここで gは事前的投資の成長率, / rは必要投資, /は事 後的投資である。 ) ' E ( よ. g = f(1r.‑/) f(0)=0, f '( 1 r ‑1 )>0. また,企業の生産調整の面から考えた,現実成長率調整の関数は,次の通りで あると考えた。. G=φ( 1 r ‑1 ). ( 3 ). 1(0)=0, φ(/r‑/)>0 これらの自変数は,時間あたりの資本不足(投資不足〉の絶対額である。 一方,不安定性成立のためのノ、ロッドの条件は,現実成長率 G がたとえば増 加する場合,その増加率が貯蓄率. S の増加率より大きいということである。現. 実成長率が増加する時,貯蓄率が不変で、ある場合も,この条件を満たしている と考えることが出来る。 G が上昇する時. sが不変か,増大してもその率が G. Cが減少する。始め現実成長率と保証成 rの状態から出発すれば,Gの増大の結果必ず C<Cとな 長率が一致し ,C=C r の増大率ほど大きくなければ,必ず,. る。そしてこれは資本不足の発生を意味するから,さらに G を上昇させる刺戟.

(10) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑10‑. 第. 1 0. 5 7巻 第 1号. が生じる。 その場合の投資関数は次の通りであると考えた。. ( 6 ). g=F(Cr‑C) F(0)=0, F'(Cr‑C)>0. また,生産面からの現実成長率の調整の関数は次のようなもの'であると考えた。. G=ψ(Cγ ‑ C). ( 7 ). ψ(0)=0, ψ'(C‑C)>0 これらの場合の自変数は,資本不足と産出高の増大分との比率である。これは, ケインズの条件に関係する関数の自変数が,時間あたりの資本不足の絶対額で あったのと異なる。ハロッドの条件の場合の方がより動学的であり,またより 明快であると考えられる。 それでは,このようなケインズとハロッドとの聞の,不安定性についての分 析方法の具体的な違いは,どこから来たのであろうか。 済動学と恒常的成長の理論. IAクリーゲルは,経. ハロッドの「ナイフの刃」についての歴史を取り. 扱う論文」 ( 1 9 8 0〉〉で,ケインズとハロッドとの聞の往復書簡を資料として取 り扱っているので,これを参考として考えてみよう。 クリーゲルは,保証成長率のあり得る不安定性については,二つの見地から の接近が可能であるとし,これらのそれぞれを 'A型の不安定性」と 'B型の 不安定性」と呼んで、いる。そして,上記の往復書簡でケインズが採ったのが 'A 型の不安定性」であり,ハロッドが採ったのが 'B型の不安定性」であるとす る。ところで,これら二つの型の不安定性の違いは次のようなものである。 A型 の不安定性においては,保証成長率(均衡成長率〉は観念的なあるいは参照の 概念と考えることが出来,体系はそれをめぐって動くと考えられる。そこで, 体系は決してこの均衡率で成長している必要はないが,達成された成長率は分. 1 1 ) K r e g e l,JA,"Eco n o m i cD y n a m i c sa n dt h eT h e o r yo fS t e a d yG r o w t h :a nHi s t o r i c a l n i f e . e d g e " ',H i s t o r yo fP o l i t i c a lEc onomy ,1 2 : 1,1 9 8 0 . E s s a yo nH a r r o d ' sK 電. 1 2 ) ただし, p リーゲルは不思議なことに,ケインズとハロッドとの往復書簡でこれほど重 要な位置を占めている,不安定性のための条件について直接にはとくに述べていない。. 1 3 ). 印 c i t,p105.

(11) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 1 1. 保証成長の不安定性のためのケインズの条件とハロッドの条件. ‑11ー. 析的な目的のために,それに結びつけられるか関連させられると仮定される。 それに対して B型の不安定性では,体系はある意味において,現実的な事態と して均衡にあると想定し,保証成長率乞供給と需要についての静学理論が均 衡を考えたのと同じふうに均衡概念とみなすのである。そして知的実験として, 均衡状態からの観念的離脱を考えるケクリーゲルは,とれをまとめて次のよう に言う。 rA型の議論においては均衡は観念的 n o t i o n a lな構築物であり,現実. u t ‑ o f ‑ e q u i l i b r i u m体系の調整は,それと比較される。他方, の,均衡を離れた o. B型の議論においては,その反対が実情であり,均衡を離れた調整は,現実に 支配的な均衡に対して観念的なものと考えられる。?〉 また,クリーグノレは,ケインズとハロッドとの聞の往復書簡が最後に途絶え たのは,二人の聞に分析方法についての考え方の基本的な違いがあり,それが 一向に解消しなかったからだと解して,次のように述べる。「文通の中断の基本 的な原因は,ケインズが,均衡を離れた成長の過程を現実的な時間の歴史的過 程以外の何かとして眺めることが出来なかったのに対し,ハロッドが(その「動 学」理論において〉一時点における変化率で議論を遂行することに固執したこ とであるだろうと思われる。 JJ ところで, クリーゲルはこのように,ケインズとハロッドの不安定性につい ての分析方法の違いを比較しているが,彼自身は,ここで問題としている不安 定性の条件との関連はもとより,条件そのものについてもとくに述べていなし、。 しかし,これらの分析方法の違いと,不安定性の条件の違いには,関連が無い とは言えないと思う。 しかしそれよりも重要なのは,ケインズはノ、ロッドの新しい動学的方法にな じんでいず,彼に静学的な思考方法が残っている影響があると思う。さらに, それと関連して,往復書簡の議論の過程を見ても分かるように,ケインズは限 界貯蓄性向を重視しており,ハロッドが平均貯蓄性向〈貯蓄率〉を重視してい. 1 4 ) 匂 ιi t . , p 1 0 5 1 5 ) 印 c i , . l p1 0 5 1 6 ) 匂 a t .,p . 1 1 3.

(12) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑12ー. 第. 5 7巻 第 1号. 1 2. るのと対照的である。これの影響も大きいと考えられる。 このようにして,ケインズは,静学的思考方法の影響から,投資関数におい て資本不足の絶対額を自変数として選び,. また限界貯蓄性向に重点を置いた不. 安定性の条件を考えていると思われる。また,グリーゲルの主張のように,ケ インズが rA型の不安定性」の議論であり. r 均衡を離れた成長の過程を現実的. I節で説明したような,時間的' な時間の歴史的過程」として見たとすれば,第 I 過程に重点を置いた不安定性の条件の取り扱いをしたことも理解出来るように 思う。このようにして,現実の成長径路が保証成長径路から(たとえば上方に〉 需離した時,時間の径路の中における限界的な必要投資と事後の投資(=貯蓄〉 SmXeとの比較という形で,不安定性の条件を考えたものと思われる。. これに対してハロッドは,新しい自己の動学的思考方法を持っている。そこ で,相対的変化率(成長率〉と資本係数(加速度係数〉という概念を基礎に置 き,しかも一時点における変化率を取り扱っている。そしてこれと関連して, 貯蓄については平均貯蓄性向(貯蓄率)を重視している。しかもクリーゲノレの 主張のように rB型の不安定性」の考え方だとすると,現実成長率 G の変化に 伴う貯蓄率. S の時間的変化の過程〈限界貯蓄性向に関する問題〉にあまり重き. を置かないということが考えられる。このようにして,ハロッドが不安定性の 条件の問題を考える場合,保証成長率と現実成長率との比較,したがって必要 資本係数と現実資本係数との比較に重点を置いたと考えられる。 いずれにしても,保証成長の不安定性についてのケインズの条件とハロッド の条件とを比較する時,ハロッドの条件の方が明快で、,動学的な条件としては より良いように思われる。. 1 9 3 9 )の第 それでは何故ハロッドは,公表された「動学理論におけるー論J ( 1 0節と第 1 3節において,事実上ケインズの不安定性の条件を採り入れたので あろうか。大田な想像をするとすれば,往復書簡の最後までケインズが,余り にも彼の不安定性の条件に固執するので,ハロッドが,師でありまた論文を出 そうとするエコノミック・ジャーナルの編集者十で、もあるケインズに対して遠慮 をし,理論的には不必要な譲歩を行ったものと考えられる。そして,ケインズ.

(13) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 保証成長の不安定性のためのケインズの条件宇ハロッドの条件. 1 3. ‑13‑. の死後に刊行されたハロッドの『動学的経済学序説,s ( 19 4 8 )においては,現実 成長率 G の変化に伴い貯蓄率. S が変化する場合の,ハロッド自身の不安定性の. 条件を復活させたものと思われる。. v . ケインズの主張する保証成長率存在の条件について ケインズは,ハロ. y. ドとの往復書簡の最後の手紙で,保証成長の不安定性が. 成立するためには,まず保証成長率そのものが存在しなければならないことに 気が付いたと述べている。. ここでケインズの言う保証成長率の存在とは,その. 値があまり大きくなくて,現実成長率がそれに到達可能であるということであ る。保証成長率の存在可能性については次のように述べる。「一般には保証率は 存在しない。そして,保証率が可能であるためには,特殊な諸条件が必要とさ れる。貴方の要求を満たすために,保証された率を超える率のため必要である として私が確立しようと努めて来た諸条件は,実のところ,いやしくも保証率 が存在するためには必要であるところの,その諸条件である。」要するに,保 証成長率存在のための条件は,不安定性成立のための条件とも一致するという ことである。 保証成長の不安定性のためのケインズの条件は t >Smということであった。 すなわち,必要資本係数が限界貯蓄性向より大きいということである。保証成. mは平 長の不安定性を問題とするような短期においては,一般に限界貯蓄性向 S 均貯蓄性向. S より大き L、から,上の条件から. 定性成立の条件を. t>Sm>Sとなる。ケインズは不安. r tが S より遥かに大きし、」ことと表現しているが,. それは. このことを指しているのである。 G = S/tであるので,tが S より遥かに大きけ 甜. れば,保証成長率 G ω はかなり小さな値となる。そこで現実成長率がこの値に到 達可能となり,その意味で保証成長率は存在可能となるのである。しかし,ケ. 1 7 ) c f,Harrod ,R F,TowardsaDynamicEヒ onomi , ω,1 9 4 8,pp, . 7 8‑ 9,p, 8 6 1 8 ) Keynes, J M,TheC o l l e c t e d Wηt i n g s " voLXIV, p, 3 4 5 1 9 ) 匂 c i l,p3 4 6 2 0 ) 印 c i t,p3 3 0.

(14) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑14ー. 1 4. 第5 7巻 第 l号. インズの不安定性成立の条件と,保証成長率存在の条件は,形は似ているが数 値的に一致するとは考えられない。 ところで,ケインズは,この保証成長率の存在可能性の問題について次のよ うに言っている。「それゆえ,現実的諸条件において,困難は保証されたものを 越える率が不安定であることではなくて,保証率そのものがあまりにも高いの で,民間の危険負担で以てしては,偶然によって一寸の間である場合を除いて、 誰もあえてそれに到達しないことだと,私は想像する。」. また次のようにも言. う。「定常的な人口,平和および不平等な所得で以て,保証率は,民間の危険負 担的経済が,通常は到達不可能であり,決して維持出来ないところの速度を定 める。?〉当時は第二次世界大戦の勃発前であり,イギリス経済は高すぎ、る貯蓄 率のため保証成長率も高くなっていたのである。ケインズはこのことを念頭に 置いていたと考えられる。ハロッドは両大戦闘のイギリス経済を,自然成長率 に比べて保証成長率が高すぎる状態であると考えていたが,. この点で両者は. 基本的に同じ認識に立っていたので、ある。 ところで,ここに一つの疑問点がある。前述のようにクリーゲルは,ケイン ズは rA型の不安定性」の議論を採用していると言っている。そして rA型の 議論においては均衡は観念的な構築物であり,現実の,均衡を離れた体系の調 整は,それと比較される 5 1 〉と述べている。それでは何故,ケインズは観念的な 構築物である保証成長率の到達可能性を,その存在の条件として問題としたか, ということが疑問点である。クリーゲノレ自身もこの点については何も述べてい ない。. 1 9 3 9 )にお いずれにせよハロッドは,公表された「動学理論におけるー論 J ( いて,このケインズの主張する保証成長率の存在の条件について何も述べてい. 21 ) 印 c i t .,p. 34 9 2 2 ) 2 3 ) 2 4 ). 仰 c i t,p . 3 5 0 .. Harrod,R F,"AnEおayi nDynamicTheory",p. 33 c f,Harrod, R, EconomicDynamic , s .1973,ppJ08・9 (宮崎義一訳ハロッド経済動 学~,. 2 5 ). 1 7 0ページス. K r e g e l, JA, 宅 'E conomicDynamicsa n d . ",p J 0 5 ..

(15) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 1 5. 保証成長の不安定性のためのケインズの条件と ρ ロッドの条件. ‑15ー. ない。この条件なるものは,ハロッドの不安定性原理そのものの証明には,関 係が無いと考えたためで町あろう。不安定性原理に関係があるとすれば,この原 理をより現実的な分析に応用す則る場合においてだけであろう。. Vl.結び 以上のようにして,保証成長の不安定性が成立するための,ケインズの条件 とハロッドの条件について考察して来た。ここで,全体を整理して,私見をま とめてみたいと思う。 近代的な経済動学(経済成長理論〉の出発点となった,ハロッドの「勤学理 論における一論 J " AnE s s a yi nDynamicT h e o r y "( 1 9 3 9 ) の原稿をめぐって, ケインズとハロッドとの間で激しい論争が行われた。そこでケインズが終始と くに主張したのは,ハロッドが展開する保証成長の不安定性の原理には,その 不安定性が成立するために必要な条件があるということであった。それは,産 出高の増分に対する資本の増分の均衡比率(ハロッドの必要資本係数に当たる〕 が,限界貯蓄性向より大きいということであった。それはまた,その比率が平 均貯蓄性向よりも遥かに大きいということでもあった。その条件の考え方を図 解や数式を用いて詳しく説明した。 ところがハロッドは,そのケインズとの往復書簡の中で,ケインズとは違っ た不安定性成立のための条件を示している。それは,産出高の現実成長率が保 証成長率と一致している状態から,たとえば上方に議離して増大した場合,そ の増大率が貯蓄率(平均貯蓄性向〉の増大率より大きいということである。そ の場合には現実の資本係数は必要資本係数より小さくなる。現実成長率が増大 する時貯蓄率が不変であれば,同じ結果が生じ,これもハロッドの条件を満た す特殊な場合であると考えられる。このハロッドの条件の考え方も,数式で定 式化し,説明した。 次に,これらの不安定性のケインズの条件とハロッドの条件との比較をした。 ケインズの条件に含まれている投資関数では,自変数として発生する資本不足 (または過剰〉の時間あたりの絶対額を考えている。これに対して,ハロッド.

(16) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ ‑16‑. 第. 1 6. 5 7巻 第 l号. の条件に含まれている投資関数の自変数は,産出高増分あたりの資本不足(ま たは過剰)の増分の比率である。このように,両者の考え方に含まれている投 資関数に違いがある。全体としてハロッドの条件の方がより動学的で,しかも より明快である。この違いが現れている理由として,まずケインズには静学的 な思考法が残っているのに対し,ハロッドは自己の動学の思考法を確立してい るということがある。また,それと関連して,ケインズは限界貯蓄性向を重視 し,ハロッドは平均貯蓄性向を重視したこともある。さらに,ケインズは,ク リーゲルの言う rA型の不安定性」の考え方をし,ハロッドは rB型の不安定 性」の考え方をしていたことも関係があるであろう。ところでハロッドは,公. 1 9 3 9 )で,結局理論的には不必要な譲歩を 表された「動学理論におけるー論 J ( して,一部に事実上 ケインズの条件を採用している。これはケインズに対する i. 遠慮、から来たものではないかと思われる。 最後に,不安定性のための条件と関連してケインズの主張した,保証成長率 の存在の条件や,それを満たすことが困難であるという彼の説について検討し た。その条件とは,産出高の増分に対す る資本の増分の均衡比率 tが平均貯蓄性 U. 向 S より遥かに大きく,したがって保証成長率 G. 出. = $ / tが,現実成長率が到達. 可能なほど十分に小さいということである。そしてこの条件は満たされること が困難であることを述べている。これは,両大戦聞のイギリス経済では平均貯 蓄性向が高く,保証成長率が高いことを言っているものと思われる。そしてこ のことは,ハロッドが当時のイギリス経済において,保証成長率が自然成長率 より高いと考えていたのと,基本的には同じ認識であったと考えられる。また ケインズは,不安定性成立の条件と,保証成長率の存在のための条件は一致す ると言っているが,両者の形は似ていても,数値関係は一般に一致しないと考 えられる。.

(17) OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ 1 7. 保証成長の不安定性のためのケインズの条件とハロッドの条件. ‑17ー. 参考文献. r 1J Harrod,RF, AnE s s a yi nDynamicTheory ぺEωnomic]ournal,March,1939 電 '. C2J. ,TowardsaDy namicEconomic , s .1 9 4 8 . (3J ,EconomicDynamics ,1 9 7 3 o l l e c t e dW r i t i n g so jJ o h n Maynard K e y n e s,e d i t e dby D (4J Keynes,J M,The C Moggridge,VolXIV,1 9 7 3 r e g e l,JA,"EconomicDynamicsandt h eTheoryo fS t e a d yG r o w t h :anH i s t or I ‑ [5J K c a lE s s a yonH a r r o d ' sK n i f e ‑ e d g e " ',H i s t o r y0 1P o l i t i c a lE . ωnomy ,1 2・ 1 ,1 9 8 0 C6J 篠崎敏雄 r保証成長の不安定性のためのケインズの条件について J r 香川大学経済学 部研究年報~ 2 3,昭和 5 9年 3月 。.

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