コペンハーゲン・グリーンランドにおけるイヌイト 民族資料調査概報
著者 齋藤 玲子
雑誌名 北海道立北方民族博物館研究紀要
巻 6
ページ 147‑166
発行年 1997‑03‑25
URL http://hdl.handle.net/10502/5614
北海道立北方 民族 博物館研究紀 要 第6号(1997.3)
コペ ン ハ ー ゲ ン ・グ リー ン ラ ン ドに お け る イ ヌ イ ト民 族 資 料 調 査 概 報
齋藤 玲 子*
On the Survey of the Inuit Materials in Museums of Copenhagen and Greenland
Reiko SAITO
1.は じ め に
趣 旨
展 示 、 普 及 、 お よ び 資 料 収 集 の 前 提 とな る調 査 研 究 は 、 博 物 館 の 基 本 的 な 活 動 と して位 置 づ け られ て い る 。 当 館 で は 、 北 方 諸 民 族 に 関 す る 実 物 資 料 は も ち ろ ん 、 文 献 、 映 像 資 料 、 音 響 資 料 を継 続 的 に研 究 して き た が 、 これ らの 情 報 を 多 く もつ 研 究 機 関 が 所 在 す る 海 外 、 特 に対 象 と して い る民 族 の 居 住 地 に お い て 、 資 料 調 査 と諸 民 族 の お かれ て い る現 状 を 把 握 す る こ と は不 可 欠 で あ る 。 これ ま で 開 館 前 の 平 成 元 年 度 に資 料 収 集 の た め 北 欧 と北 米 に、 平 成4年 度 に ア メ リカ 、 平 成6年 度 に は 北 欧 に 当 館 職 員 が 赴 い て 調 査 や 収 集 活 動 を 行 っ て き て お り、 そ れ らの経 験 を も とに しな が ら調 査 の 計 画 を立 て た 。
今 回 の 海 外 民 族 調 査 で は 、 グ リー ン ラ ン ド ・イ ヌ イ トに 焦 点 を しぼ り、 デ ンマ ー ク の 首 都 コ ペ ンハ ー ゲ ン な らび に グ リ0ン ラ ン ドの 主 要 博 物 館 を は じ め とす る 関 係 機 関 に お い て 、 物 質 文 化 を 中 心 と した 調 査 を行 うこ と と した 。 当館 の展 示 にお い て 、イ ヌ イ トの資 料 は 数 量 的 に も質 的 に も 重 要 な位 置 を 占 め る も の の 、 ア ラ ス カ や カ ナ ダ に比 べ る と、 グ リ0
ン ラ ン ドの 資 料 につ い て は点 数 も情 報 も 少 な い た め、 で き るだ け 多 く の資 料 を 観 察 し、 付 随 す る 情 報 を収 集 す る。 そ れ と と も に 、 現 代 に お い て どの よ うな形 で 文 化 が継 承 され て い
る の か に つ い て も 見 聞 し、 資 料 収 集 の 可 能 性 も探 った 。
ま た 、 当 該 地 域 の研 究 機 関 な らび に研 究 者 とは 、 これ ま で に シ ンポ ジ ウ ム へ の 招 聴 や 印
*北 海道立北方民族博物館学芸員
キ ー ワ ー ド グ リ ー ン ラ ン ド、 イ ヌ イ ト、 博 物 館 、 資 料 返 還 Key Words Greenland, Inuit, Museum, Repatriation
齋 藤 コペ ン ハ ー ゲ ン ・グ リー ン ラ ン ドに お け るイ ヌ イ ト民 族 資 料 調 査 概 報
刷 物 の 交 換 な ど も行 われ て お らず 、 日本 人 研 究 者 も あ ま り現 地 調 査 を行 な っ て い な い こ と か ら、 物 質 文 化 に 関 す る 情 報 を 収 集 す る の み な らず 、 訪 問先 の 施 設 ・研 究 者 との ネ ッ ト ワ ー ク の 確 立 を も め ざ した 。
当然 の こ とな が ら博 物 館 の 機 構 や 活 動 につ い て 、 長 い 歴 史 を持 つ ヨー ロ ッパ の博 物 館 と して の デ ン マ ー ク国 立 博 物 館 と、 自立 を 目指 す グ リー ン ラ ン ド ・イ ヌ イ トの 文 化 の拠 り所 と して の 博 物 館 とい う二 つ の 視 点 か ら、 博 物 館 が そ れ ぞ れ の 社 会 で ど の よ うな 役 割 を果 た して い る の か を知 る機 会 に した い と も考 えて い た 。
調 査 予 定
調 査 期 間 は平 成8年8月3日 〜9月2日(30泊31日)で 、 前 半 は コペ ンハ ー ゲ ン、 後 半 は グ リー ン ラ ン ド各 地 で あ っ た 。
調 査 項 目 と して 考 えて い た も の は 、 ま ず 、 博 物 館(歴 史 、 組 織 、展 示 等)の 概 要 につ い て で 、 要 覧 や 年 報 等 の 印 刷 物 が あれ ば い た だ く。 これ は事 前 に 郵 便 で お 送 りい た だ け た館 も あ る 。 さ らに 、 イ ヌ イ ト資料 を 中 心 に 北 方 諸 民 族 資 料 の コ レク シ ョン につ い て 、 そ の成 り立 ち(誰 が どこ で 収 集 した もの か)と 保 存 ・管 理 の状 況 を 調 査 す る 。 可 能 で あ れ ば 収 蔵 庫 に入 り写 真 撮 影 や 計 測 、 資 料 カ ー ドの 閲 覧 ・コ ピー を願 い 出 る。 ま た 、 実 物 資 料 だ け で は な く 、 関 連 す る文 献 につ い て 、 書 庫 等 で の 閲 覧 ・コ ピー 等 を 行 う。 各館 で これ ま で に 出 版 した 北 方 諸 民 族 関係 の 図 録 や 研 究 報 告 な ど も余 部 が あれ ば い た だ く。
聞 き取 り と し て 、 資 料 の 収 集 計 画 や 収 集 方 法 につ い て 質 問 した り、 当館 が イ ヌ イ ト資 料 を 収 集 す る 際 の ア ドバ イ ス を い た だ く。 以 上 の よ うな 項 目を 書 き 出 して お き 、 各 館 を訪 問 した 初 日に ス ケ ジ ュ ー ル 確 認 や 担 当者 との 打 ち合 わ せ を した 。
ま た 、博 物 館 以 外 で は 、 文 化 保 存 団体 等 に お い て そ の活 動 内 容 を視 察 した り、販 売 して い る工 芸 品 の 種 類 ・価 格 等 につ い て も調 査 す る。
準 備
平 成8年 当 初 か らス カ ン ジ ナ ビア 政 府 観 光 局 等 を つ う じて デ ンマ ー ク、 グ リー ン ラ ン ド の博 物 館 等 関 連 機 関 、 交 通 ・宿 泊 情 報 な どを 集 め は じ め た。 ま た 、 国 内 の 研 究 者 で グ リー ン ラ ン ドで の 調 査 経 験 の あ る方 々 か ら受 け入 れ 先 の紹 介 を して い た だ き 、 訪 問先 に 手 紙 を 出 した 。 いず れ の機 関 で も、 快 く受 け入 れ て 下 さ る 旨の お 返 事 を い た だ い た 。
出 張 に先 立 ち、 グ リー ン ラ ン ドの 概 況(自 然 ・歴 史)と グ リー ン ラ ン ド ・イ ヌ イ トの 研 究 史 に つ い て 調 べ 、 館 長 を交 え た館 内 の研 究 会 で 発 表 を行 い 、 現 地 で の調 査 の助 言 を い た
だ い た 。
ま た 、 当館 所 蔵 の グ リー ン ラ ン ド ・イ ヌ イ ト資 料(46点)に つ い て の 情 報 を持 参 す る た め 、 写 真 を プ リン トし、 パ ソコ ンに 入 力 して あ っ た デ ー タ を プ リン トア ウ トした 。
北海道立北方民族博 物館研究紀要 第6号(1997.3)
2.グ リ ー ン ラ ン ド(グ リ ー ン ラ ン ド語 でKalaallit Nunaat)の 概 況
グ リー ン ラ ン ドは 北 緯60〜83度 に位 置 し、 面 積 は2,175,600k㎡ で 日本 の約6倍 と世 界 最 大 の 島 で あ るが 、 国 土 の80%以 上 が 氷 に覆 わ れ て い る。 人 口は1990年 で55,558人 。1950年 に 比 べ る と倍 増 して お り、1980年 以 降 も全 島 で は微 増 して い る が 、 島 内 の大 き な 町 へ 人 口 が 集 中化 して い る。 集 落 は海 岸 沿 い に点 在 し、 特 に 西 部 に 多 い 。 気 候 は 、 地 域 に よ っ て差 異 が 著 し く、 南 西 部 は 冬 で も海 氷 が 発 達 しな い 。 西 海 岸 に位 置 す る 首 都 の ヌ ー ク(北 緯64 度)で 年 間 平 均 気 温 一1.9℃ 、8月 の 平 均 気 温 は6.0℃ で あ る。
グ リー ン ラ ン ドは 「エ ス キ モ ー 文 化 」 の 最 東 端 に 位 置 し、 そ の 研 究 史 上 、 重 要 な 地 域 と して 注 目 され て き た 。 約4,000年 前 ま で に最 初 の居 住 者 が 現 れ た 後 、 近 現 代 ま で つ らな る
「エ ス キ モ ー 文 化 」 の 基 礎 とな っ た チ ュ ー レ文 化 の 担 い 手 た ち は、ベ ー リン グ海 峡 あ た り の 地 域 か ら拡 散 し、10〜11世 紀 に グ リー ン ラ ン ドに 到 達 した こ と が知 られ て い る 。 同 じ頃 ス カ ンデ ィ ナ ビア か ら グ リー ン ラ ン ドに移 住 して き た バ イ キ ン グ の末 商 が1500年 頃 ま で に 姿 を 消 し た の に 対 し、 イ ヌ イ ト(エ ス キ モ ー の こ の 地 域 で の 自称)の 祖 先 た ち は極 北 の地
に適 応 し、 生 活 を続 け て きた 。
グ リー ン ラ ン ドに は 、1721年 に 再 び デ ンマ ー ク ・ノル ウ ェ ー 同 君 連 合 か ら宣 教 師 が 来 て 宣 教 と交 易 の 拠 点 が 設 け られ 、 実 質 上 植 民 地 と な っ た 。1814年 に 同 君 連 合 が解 消 され る と、 デ ンマ ー ク の 領 土 と され た 。1933年 に は 常 設 国 際 裁 判 所 判 決 に よ っ て 、 デ ンマ ー ク の 主 権 が確 定 され 、 現 在 に い た る 。 しか し、 人 口 の お よ そ8割 が イ ヌ イ トの ア イ デ ンテ ィ テ ィ を 受 け継 ぐ グ リー ン ラ ン ダ ー 、 残 り2割 が 非 グ リー ン ラ ンダ ー で あ る こ とか ら 「デ ン マ ー ク 王 国 内 に お い て 特 別 の 民 族 社 会 を 構 成 す る 」 と し て 、1979年 に 内 政 自治 が 認 め ら れ 、 さ ま ざ ま な 権 限 が 国 家 か ら委 譲 され て きて い る 。
内政 自治 とは どん な もの か とい う と、 グ リー ン ラ ン ド内 に お け る文 化 ・産 業 ・福 祉 ・環 境 な ど に関 す る 権 限 が 国 家 か ら委 譲 され 、 立 法 や 行 政 も独 自に 行 え る 。 しか し、 外 交 や 安 全 保 障 な どの対 外 政 策 お よび 通 貨 政 策 に 関す る事 項 な ど は委 譲 され な い 。 対 外 関 係 の うち ECは 域 外 化(デ ンマ ー クは1973年 にEC加 盟)で 、 同 島 漁 業 産 品 の対EC市 場 無 関 税 輸 出承 認 や 一 定 期 間 に お け る グ リー ン ラ ン ド水 域 で のECに 対 す る漁 業 許 可 承 認 な どが で き る こ とに な っ て い る。
主 た る産 業 は 漁 業 で あ り、 日本 へ の 輸 出 も少 な くな い 。 工 業 、 建 設 、 貿 易 、運 輸 な どの 業 種 が 比 較 的 多 い 。 近 年 は 役 所 や 教 育 、 福 祉 関 係 の仕 事 に就 く グ リー ン ラ ン ダ ー も増 え て い る。 ハ ン タ ー は 人 口の1〜2%程 度 で あ る が 、 家 族 を含 め る と狩 猟 に よ っ て 生 計 を立 て て い る人 は4〜5%と 考 え られ て い る。
エ ス キモ ー の 総 人 口の約 半 数 は グ リー ン ラ ン ドに 居 住 して お り、 カ ナ ダ、 ア メ リカ(ア ラ ス カ 州)、 ロ シ ア(シ ベ リア東 端)と 違 っ て イ ヌ イ トが 社 会 の マ ジ ョ リテ ィ とな っ て い
齋 藤 コペ ン ハ ー ゲ ン ・グ リー ン ラ ン ドに お け る イ ヌ イ ト民 族 資料 調 査 概 報
る 唯 一 の地 域 で あ る 。 そ の特 殊 な 地 理 的 要 因 か ら、 言 語 や 狩 猟 な どの 独 自の 文 化 が今 も継 承 され て き て い る。
以 上 の よ うな 理 由 か ら、 グ リー ン ラ ン ド ・イ ヌ イ トに つ い て調 査 す る こ とは 、 先 史 時 代 か ら現 代 に い た る ま で 、 エ ス キ モ ー 文 化 研 究 の な か で 重 要 で あ る とい え る だ ろ う。
3.主 な 訪 問 地 と施 設
○ デ ン マ ー ク 国 立 博 物 館(The National Museum of Denmark/Nationalmuseet)
〔8月5日 〜16日 〕
・概 要/組 織
本 館 は 、 コ ペ ン ハ ー ゲ ン の 中 心 部 に 位 置 し 、 皇 太 子 の 宮 殿 と し て 使 わ れ て い た 建 物 を 改 築 し た も の で あ る 。1670年 頃 フ レ デ リ ク 三 世 に よ っ て 設 置 さ れ た ロ イ ヤ ル ・ア ー ト ・コ レ ク シ ョ ン に 起 源 を 持 ち 、1807年 に 国 家 の 文 化 ・歴 史 博 物 館 と し て 設 立 さ れ た 。1854年 に そ の 一 部 が 皇 太 子 宮 殿 に 移 管 さ れ 、1892年 に 全 て の 収 蔵 品 が 集 め ら れ た 。
本 館 の 主 な コ レ ク シ ョ ン は 、 デ ン マ ー ク の 先 史 か ら現 代 ま で の 文 化 に 関 す る 資 料 と 世 界 中 の 民 族 誌 資 料 、 古 代 遺 物 と コ イ ン ・メ ダ ル 資 料 で あ る 。 ま た 、 館 内 に は 「子 ど も 博 物 館 」 も あ る 。1992年 に リ ニ ュ ー ア ル ・オ ー プ ン し 、 約10,000㎡ の 展 示 ス ペ ー ス が あ る 。 本 館 の ほ か 、 コ ペ ン ハ ー ゲ ン の 北 部 郊 外 に ブ レ ー デ 博 物 館(Danish National Museum, Brede/Bredemuseet)と 野 外 博 物 館(Open‑air Museum/Frilandmuseet)の 国 立 博 物 館 分 館 が あ る 。 ブ レ ー デ 博 物 館 は 主 と し て 衣 類 や 織 物 に 関 す る 資 料 を 展 示 し て お り 、 25,000㎡ の 収 蔵 庫 を 併 設 し て い る 。 こ れ は 、 本 館 が 手 狭 に な っ た た め 、 ほ と ん ど の 資 料 を 郊 外 の ブ レ ー デ に 移 し た も の で 、 本 館 の 収 蔵 庫 に は 少 数 の 資 料 し か 置 か れ て い な い 。 ブ レ ー デ に は 保 存 管 理 部 門 が あ り、 約100人 の 職 員 が 配 置 さ れ て い る と の こ と で あ る 。 今 回 は 時 間 的 な 余 裕 が な く 、 展 示 を 見 た だ け で あ る 。
同 館 は 、9つ の 分 野 で 約120名 の 研 究 者 を 擁 す る 大 規 模 な 研 究 機 関 で も あ る 。 研 究 分 野 は 以 下 の と お りで あ る 。
民 族 誌/グ リー ン ラ ン ド考 古 学(Ethnography and Greenland Archaeology)、 近 代 デ ン マ ー ク 史/民 族 学(ModernDanishHistoryandEthnology,)、 保 存/古 代 技 術(Conservation and Ancient Technology)、 海 洋 考 古 学(Maritime Archaeology)、 自然 科 学;考 古 年 代 測 定/第 四 紀 地 質 学/古 植 物 学(Archaeometry, Quaternary Geology andPalaeobotany)、
貨 幣 学(Numismatics)、 デ ン マ ー ク先 史 学(Danish Prehistory)、 デ ン マ ー ク 中 世 学(Danish Middle Ages)、 古 代 遺 産;古 代 考 古 学/近 東 考 古 学/エ ジ プ ト学(Classical Archaeology, Near Eastern Archaeaology and Egyptology)
伝 統 あ る 博 物 館 の 民 族 誌 部 門 に は8人 の 研 究 員 が お り、 受 入 れ の 窓 口 と な っ て く だ さ っ
北海道立北方民族博物館研究 紀要 第6号(1997.3)
た メル ゴ ー(J.Meldgaard)博 士 は グ リー ン ラ ン ド考 古 学 の第 一 人 者 で あ る 。 グ リー ン ラ ン ド国 立 博 物 館 で展 示 して い るキ ラ キ ツ ォ ー ク の ミイ ラ の 調 査 に も参 加 して い る。 北 方 民 族 全 般 を 担 当 して い る ギル バ ー グ(R.Gilberg)氏 は 、 ス ミ ソ ニ ア ン で刊 行 して い る Handbook of North A merican Indians vol.5 Arctic中 、̀Polar Eskimo'の 章 を執 筆 して い る グ リー ン ラ ン ドの 専 門 家 で も あ る が 、 ア ジ ア も 含 め広 範 な 地 域 の 民 族 に詳 しい 。 同 氏 か らい た だ い た ご 自身作 成 の グ リー ン ラ ン ド関 連 文 献 の リス トは 、 大 変 有 用 で あ る。 資 料 デ ー タベ ー ス の 使 い 方 か らそ れ ぞ れ の コ レ ク シ ョ ンの 成 り立 ち ま で 、 さま ざ ま な ご教 示 を い た だ い た 。 日本 や 中 国 な どの地 域 を 担 当す る ホ ー ン ビ ュ(J.Homby)氏 は 、1983年 に 開催 され た 「日本 」 展 の た め来 日 した こ とが あ り、 ア イ ヌ 文 化 に 関 す る 情 報 収 集 も行 っ て い る。 「日本 」 展 の 図 録 や 同 館 収 蔵 の ア イ ヌ 資 料 リス ト、 写 真 な ど の コ ピー に つ い て 便 宜 を 図 っ て い た だ い た 。
民 族 誌 部 門 は 、 グ リー ン ラ ン ド事 務 局 を併 設 して お り、 関 係 資 料 の展 示 ・整 理 ・管 理 を 行 い な が ら、 徐 々 に グ リー ン ラ ン ドへ 返 還 す る た め の 事 務 を進 め て い る(4章 参 照)。 グ リー ン ラ ン ド ・イ ヌ イ トだ け で13,000点 を越 す コ レ ク シ ョン の 中 か ら、 毎 年 展 示 替 え も 行 っ て い る。 担 当者 の ボ ー ゲ ン(B。Haagen)氏 に は 、本 館 内 の 収 蔵 庫 の 一 部 を案 内 して い た だ き、 グ リー ン ラ ン ド資 料 の コ レ ク シ ョ ン別 リス トをい た だ い た 。
・展 示
民 族 誌 部 門 の 常 設 展 示 は22室 か ら成 って い る(本 館 は も と宮 殿 だ っ た た め 、 展 示 室 は 比 較 的 小 さ な 部 屋 に 分 かれ て い る)。 導 入 部 分 の3室 は イ ヌ イ トの コ レク シ ョ ンで 、 そ の ほ か ア メ リカ 、 ア ジ ア 、 ア フ リカ 、 オ セ ア ニ ア な ど世 界 中 の 民 族 資 料 を展 示 して い る 。 こ の他 に4室 分 が イ ヌ イ ト資 料 の展 示 室 に 当 て られ 、 グ リー ン ラ ン ドへ 返 還 す る 資料 な
ど、 一 部 展 示 替 え が 行 わ れ て い る 。96年 の 春 か ら秋 ま で 「グ リー ン ラ ン ドへ の返 還 」 (Tilbage til GRQINLAND)と 題 す る期 間展 示 が され て い た 。 ケ ー ス ご と に展 示 状 態 の 写 真(A4判 程 度)が つ い て い て 、期 間 展 示 終 了 後 グ リー ン ラ ン ドに返 還 され る資 料 に は シ ール が 貼 られ て い た 。 この 展 示 室 で は デ ー タベ ー ス を 活 用 して お り、 各 室 に1台 の パ ソ コ ン の モ ニ ター が 設 置 され て い る。 そ の ス ク リー ン は タ ッチ パ ネ ル 式 で 、初 期 画 面 は 個 々 の展 示 室 の 平 面 図 に な っ て お り、 見 た い 展 示 ケ ー ス の 部 分 を触 る と資 料 が 展 示 され た 状 態 の ケ ー ス を正 面 か ら見 た 画 面 に な り、 さ らに個 々 の資 料 に 触 れ る とそ の 情 報 が 資 料 カ ー ド の よ うな 画 面 と な っ て 表 示 され る 仕 組 み に な っ て い る 。 個 別 資 料 の 情 報 は 、 番 号 ・資 料 名 ・サ イ ズ ・素 材 を は じめ 、 ど こ か ら(収 集 地)・ どの よ う に博 物 館 に 収 蔵 され た か(収 集 者 ・寄 贈 者/機 関 な ど)・ 何 に 使 うか(使 用 法)・ 類 似 資 料(そ れ が ど こで 見 られ るか/
展 示 して い るか)と 、 さ ら に 関連 情 報 が(e.g.同 じ民 族 ・同 じ素材 な どの ジ ャ ンル で も) 検 索 で き る。 こ の 展 示 室 に は 説 明文 の パ ネ ル は あ る が 、 個 々 の 資料 に は 資 料 名 な どの 展 示
ラベ ル(ネ ー ム カ ー ド)は つ い て お らず 、 パ ソ コ ン で 見 る よ うに な っ て い る。
齋 藤 コペ ンハ ー ゲ ン ・グ リー ン ラ ン ドにお け る イ ヌ イ ト民 族 資 料 調 査 概 報
・収 蔵 資 料
民 族 誌 部 門 の コ レク シ ョン の成 り立 ち につ い て 、 イ ヌ イ ト資 料 を 中 心 に北 方 民 族 資 料 の 概 要 を 示 す 。
グ リー ン ラ ン ド ・イ ヌ イ トの コ レ ク シ ョン と して は世 界 最 大 の 規 模 で 、 研 究 の 中心 の一 つ とな っ て い る 。1980年 代 以 降 、 グ リー ン ラ ン ドへ の資 料 返 還 を進 め て い る が 、 返 還 前 の 資 料 数 は13,000点 を超 して い た 。 な か で も有 数 な コ レク シ ョン と して は グ ス タ フ ・ホ ル ム (G.Holm)が 、 .., 年 に 東 部 の ア マ サ リ ク 地 域 で 収 集 し た も の で 、 民 族 学 的 フ ィ ー ル ドワー クの 黎 明 期 に あ た る も の と して 評 価 され て い る 。 これ らの 資 料 は100周 年 を記 念 して 、 厚 い カ タ ログ が 作 成 され 、 グ リー ン ラ ン ドに返 還 され た(4章 参 照)。
同 館 の 民 族 誌 部 門 の研 究 者 と して 貢 献 した グ リー ン ラ ン ド生 まれ の デ ンマ ー ク人 ク ヌ ド ・ラ ス ム ッセ ン(K.Rasmussen)は 、 探 検 家 と して も有 名 で 、 数 々 の極 北 で の 学 術 調 査 を組 織 し、 これ らの 調 査 で 収 集 され た 物 の 多 くが 国 立 博 物 館 に 収 め られ て い る 。 特 に秀 逸 な の が第5次 チ ュ ー レ探 検 隊 に よ る もの で 、 カ ナ ダ のネ ツ リ ッ ク ・イ ヌ イ トの もの が 多 数 含 まれ て い る 。 ラス ム ッセ ンは 、 実 現 で き な か っ た シベ リア で の調 査 の 代 わ りに 、1920 年 代 後 半 を 中 心 に モ ス ク ワ の 博 物 館 との 資 料 交 換 や ロ シ ア 系 ドイ ツ 人 な どか らの 購 入 に よ って 精 力 的 に北 東 ア ジ ア の 民 族 資 料 を集 めて お り、 同 館 に は イ ヌ イ ト以 外 の北 方 民 族 の 資料 も数 多 く所 蔵 され て い る 。 デ ー タベ ー ス で 検 索 した とこ ろ 、 シベ リア ・エ ス キ モ ー 約 70点 、 チ ュ ク チ 約30点 、 コ リヤ ー ク約160点 、 ウイ ル タ約120点 、 ニ ブ フ約290点 、 ナ ー ナ イ 約90点 な どが 確 認 で き た(一 部 重 複 して い た り して 正 確 な数 字 で は な い)。 ち なみ に ア イ ヌ の資 料 もサ ハ リ ン の も の を 含 め、100点 以 上 収 蔵 して い る。
○ ポ ー ラ ー セ ン タ ー(Danish Polar Center/Dansk Polarcenter)〔8月13日 〕 国 立 博 物 館 か らの紹 介 で 訪 れ た ポ ー ラー セ ン ター は 、1989年 に デ ンマ ー ク政 府 の教 育 ・ 研 究 省 下 の研 究 所 と して 設 立 され た 。 北 極 と南 極(主 に グ リー ン ラ ン ドで は あ る が)で の
自然 科 学 ・人 文 科 学 全 般 にわ た る 調 査 を組 織 し、 資 金 の 確 保 か ら報 告 書 作 成 まで の研 究 を 支 援 す る こ と と、 情 報 セ ン タ ー と して の役 割 を持 つ 機 関 で 、 国 際 的 な 調 査 隊 も送 り込 ん で
い る。 国外 の 研 究 者 に対 して も 、 調 査 の ア レ ン ジ な どの 相 談 に の っ て い る とい う。
図 書 館 は 、1993年 に極 北 研 究 所(Danish Arctic Institute)、 コペ ンハ ー ゲ ン大 学 ・エ ス キ モ ー 学 科 とポ ー ラ ー セ ン タ ー の 図 書 を合 わ せ て 整 理 し直 した との こ とで 、 大 変 充 実 し た蔵 書 を誇 っ て い る。 情 報 サ ー ビス 部 門 も備 え て い る が 、 日本 か らは 国 立 極 地 研 究 所 以 外 の刊 行 物 が ほ とん ど収 集 で き て い な い の で 、極 地 に 関す る研 究 報 告 の 類 はぜ ひ 送 っ て ほ し い との こ とで あ っ た 。 出 版 物 も 多 数 あ り、 一 部 を寄 贈 して い た だ い た の で 、 文 末 の リス ト を参 考 に され た い 。
同 じ建 物 内 の 極 北 研 究 所 に は ア ー カ イ ブ ズ が あ り、 写 真 や 地 図 な どの 資 料 の 整 理 ・保 管 作 業 を進 め て い る。
北海道立北方民族博物館研 究紀要 第6号(1997.3)
ま た 、 コ ペ ン ハ ー ゲ ン 大 学 ・エ ス キ モ ー 学 科(University of Copenhagen, Dep. of Eskimology)の 教 員 や 学 生 に 供 す る ス ペ ー ス も 確 保 さ れ て い る 。
○ グ リー ンラ ン ダ ー ハ ウ ス(The Greenlandic House/Grσnlおndernes Hus/
Kalaallit Illuutaat)〔8月15日 〕
研 究 機 関 以 外 で 訪 問 した グ リー ン ラ ン ダ ー ハ ウ ス は 、 デ ンマ ー ク本 国 に暮 らす グ リー ン ラ ン ド出身 者 の 集 会 所 と して 、 さま ざ ま な事 業 や 生 活 相 談 な ど を行 っ て い る機 関 で あ る。
コペ ンハ ー ゲ ン以 外 に もオ ー フ ス 、 オ ー ル ボ ー 、 オ ー デ ンセ の 主 要 都 市 に所 在 して い る。
言 語 、 芸 能 、 工 芸 な どの 文 化 伝 承 活 動 の場 と して も機 能 して い る た め 、 図 書 室 や 工 作 室 な ど も あ り、機 関 誌 ・パ ン フ レ ッ ト類 の 発 行 や 展 示 会 の 企 画 も行 って い る。 ま た 、 毎 日は 開店 して い な い が 、 グ リー ン ラ ン ドの 食 材 を購 入 で き る 店 と、 グ リー ン ラ ン ド料 理 を食 べ られ るカ フ ェ も あ る。 工 芸 品 類 の販 売 も若 干 行 っ て い る。 案 内 して くだ さ った リサ ジ ャー (H.Risager)氏 は ジ ャ ー ナ リス トで 広 報 部 門 を担 当 して お り、 そ の ほ か 法 律 家 や ソー シ ャル ワー カー もい る とい う。
○ グ リー ンラ ン ド国立博 物 館 ・ア ー カ イ ブズ(Greenland National Museum&Archives/
Gronlands Nationalmuseum og Arkiv/Nunatta Katersugaasivia Allagaateqarfialu)
〔8、目19日 〜23日 〕
グ リー ン ラ ン ドの 首 都 ヌ ー ク の 市 街 地 か ら歩 い て 数 分 、18世 紀 に植 民 港(Kolonien Godthabs)と して 開 け た海 岸 沿 い の 古 い 建 物 を利 用 して い る 。 デ ン マ ー ク本 国 か ら返 還
され る 資 料 を収 蔵 す る た め に1990年 に 拡 張 ・改修 され て 近 代 的 な設 備 が整 っ た 。
館 長 以 下 学 芸 員3名 、 ア ー キ ヴ ィ ス ト2名 、保 存 管 理 技 術 者2名 ほ か 、 司 書 ・カ メ ラマ ン ・営 繕 係 な ど全 職 員18名 が 勤 務 して い る。 規 模 的 に は 当 館 と同 じ く らい とい っ た感 じで あ る が 、 受 付 に は コ ン ピュ ー ター や 監 視 カ メ ラ な ど の機 器 が 備 え て あ り、 少 な くな い 来 館 者 や 物 販 の 対 応 も 一 人 で 行 っ て い る分 、 専 門職 の 割 合 が 多 い の が 印 象 的 で あ っ た 。 発 掘 調 査 や 夏 休 み な どで 職 員 は 入 れ 替 わ り立 ち 替 わ り館 を 空 け て い た が 、 学 芸 員 一 人 を 除 い て 全 員 と顔 を あ わ せ る こ とが で き た 。 館 長 の ロー ジ ン(ERosing)氏 は 北 海 道 に 来 た こ とが あ り、 アイ ヌ 文 化 に も関 心 を持 っ て い た 。
・展 示
展 示 室 に 入 る とす ぐ 中央 に グ リー ンラ ン ド各 地 の 男 女 ・子 ども の 衣 服 がず ら り と並 ん で い る。 そ の 周 囲 に 、発 掘 され た 遺 物 が 時 代 区分 ご と に展 示 され て い て 、 グ リー ン ラ ン ドの 歴 史 が わ か る よ うに な って い る。 こ の コー ナ ー の み 、 英 語 の パ ネ ル とパ ン フ レ ッ トが用 意
され て い る が 、 そ の他 の 展 示 室 で の表 記 は 、 デ ンマ ー ク 語 と グ リー ン ラ ン ド語 で あ る 。 展 示 の 目玉 とな っ て い る の が 、 西 海 岸 中部 の 島 の キ ラ キ ツ ォー ク(Qilakitsoq)で 発 見
され た ミイ ラで 、4体 が ガ ラ ス ケ ー ス に 収 め られ て お り、 衣 類 な ど も復 元 され て い る 。 い
齋 藤 コペ ン ハ ー ゲ ン ・グ リー ン ラ ン ドに お け るイ ヌ イ ト民 族 資料 調 査 概 報
くつ か の 研 究 報 告 書 な どが 出 て い る よ うに 、 学 際 的 に 研 究 され て お り、 そ の 成 果 も展 示 さ れ て い る。
本 国 か ら返 還 され たG.ホ ル ム 収 集 の東 部 ア マ サ リク 地 域 の 民 族 資 料 な ど貴 重 な も の も 多 数 あ る。 イ グル ー の ジオ ラ マ風 展 示 な ど も あ り、 ガ ラス ケ ー ス に 収 め る だ け の デ ンマ ー ク 国 立 博 物 館 よ りも現 代 的 な展 示 方 法 を とっ て い る 。 自然 史 の展 示 も あ る が 、 職 員 の 専 門 分 野 は 民 族 学 と考 古 学 で あ り、本 館 展 示 スペ ー ス の ほ とん ど はイ ヌ イ トの 民 族 資 料 で 占 め
られ て い る 。
別 棟 で 樽 工 場 を再 現 した も の の ほ か 、 カ ヤ ッ ク と ウ ミア ック の 展 示 棟 も あ る。 博 物 館 と は 別 の 組 織 で あ るが 、す ぐ近 くに カ ヤ ック協 会(Qaj ak Association:カ ヤ ッ ク の技 術 を 継 承 す る団 体)の 収 納 庫 が あ り、屋 外 に も数 隻 の カ ヤ ッ クが 置 か れ 、 海 で練 習 す る光 景 も 見 か け る こ とが で き た 。
特 別 展 と して は 、E.ク ヌ ス の彫 刻 展(Sculpture works from Ammassalik by Eigil Knuth)を 行 っ て い た 。96年3月 に他 界 したEク ヌ ス は 彫 刻 家 で あ り考 古 学 者 で あ っ た 。 21体 の グ リー ン ラ ン ダ ー の 胸 像 と彼 の 業 績 に つ い て 紹 介 す る も の で あ っ た 。
95年 は 年 間約16,000人 の 観 覧 者 が あ っ た との こ とで あ る。 周 辺 人 口 を考 え れ ば 、少 な か らぬ 数 字 で あ る 。
・収 蔵 、 管 理 部 門
コ レク シ ョン別 索 引 で は96年 夏 現 在 、2232番 ま で の カ ー ドが 公 開 され て い る(5章 参 照)。 大 き な コ レ ク シ ョ ン で は 数 百 の 資 料 を 含 ん で い る が 、 全 体 の 資 料 点 数 は 分 か らな か っ た(要 覧 に も記 載 され て い な い)。 資 料 カ ー ドの 閲 覧 や コ ピ ー を させ て い た だ い た ほ か 、 約1日 半 収 蔵 庫 で 写 真 撮 影 も許 可 して い た だ い た 。
本 国 か らの 返 還 資 料 は 毎 年 相 当数 あ り、例 え ば1995年 は 約11,700点 の 考 古 資 料 と230点 の 民 族 資 料 が グ リー ン ラ ン ド博 物 館 に 収 め られ た 。 そ の ほ か 同 館 で 独 自 に収 集 した も の は 、 個 人 収 集 家 か らの寄 贈 が 主 で あ る とい う こ とで 、 博 物 館 設 立 の 基 礎 とな っ た グ リー ン ラ ン ド ・ トレー ド ・カ ンパ ニ ー か らの 工 芸 品類 の 寄 贈 資 料 が 多 数 を 占 めて い る とい う。 ま た 博 物 館 職 員 の 毎 年 の発 掘 調 査 に よ っ て も 収 蔵 資 料 が 増 え て い る 。 これ らの こ とか ら、
年 々相 当 数 が加 わ って お り、 総 点 数 が 公 表 され て い な い の か も しれ な い 。
グ リー ン ラ ン ド内 の博 物 館 で は 唯 一 保 存 ・修 復(conservation)の 専 門 家(2人)が お り、発 掘 品 の 保 存 処 理 や デ ン マ ー ク本 国 か ら返 還 され た 資 料 の チ ェ ック 、展 示 の た め の 修 理 ・復 元 な ど を行 っ て い る。 こ こで 扱 い きれ な い 貴 重 な 資 料 や 繊 細 な も の は 、 素 材 別 の 専 門家 が そ ろ っ て い る コペ ンハ ー ゲ ンに 送 られ る と い う。
ま た 、 併 設 され て い る ア ー カ イ ブ ズ に 研 究 員 が い る が 、 多 くの 古 文 書 類 は少 し離 れ た 国 立 図書 館 の別 棟 に 保 管 され て い る 。 通 訳 と して もお 世 話 に な っ た 英 語 に堪 能 な フ ラ ンセ ン
(N.Frandsen)氏 が 、 図 書館 とア ー カ イ ブ ズ に 案 内 して 下 さ っ た 。
北海道立北方民族 博物館研究紀要 第6号(1997.3)
○ グ リー ン ラ ン ド国立 図 書 館(National Library of Greenland/Det Gronlandske Landsbibliotek/Nunatta Atuagaateqarfia)〔8、 目22日 〕
国 立 図 書 館 とい って も保 存 や 研 究 者 等 の た め の 専 門 的 な も のだ け で な く、 子 ども か ら大 人 ま で 利 用 で き る 広 い 開 架 部 分 を持 っ て お り、 年 間 の本 の貸 し 出 し は100,000冊 に の ぼ る とい う。 視 覚 障 害 者 の た め に と朗 読 テ ー プ を揃 えて あ っ た り、 子 ど も た ち が イ ヌ イ トの 昔 な が らの 技 術 を 学 べ る スペ ー ス が あ っ た り、 と活 発 な活 動 を行 っ て い る 。 無 料 で 開放 して い る イ ン ター ネ ッ トの端 末 も あ り、 子 ど も た ち で 賑 わ っ て い た 。 グ リー ン ラ ン ド内 に は77
の 図 書館 が あ る が 、 そ の ほ とん どは 学 校 内 に あ る とい う。
ち ょ う ど訪 問 時 に は 、 グ リー ン ラ ン ダ ー の 画 家(Paul K. Kristensen)の 個 展 も 開 か れ て い た 。 こ の個 展 は グ リー ン ラ ンダ ー ハ ウス の 企 画 した も の で あ っ た 。
グ リー ン ラ ン ドに 関 す る 文 献 コ レ ク シ ョン の グ リ ン ラ ンデ ィ カ(Groenlandica)は 、 当初 グ リー ン ラ ン ド大 学 内 に あ っ た が 、 現 在 は 同 図 書 館 内 に併 設 され て い る。 植 民 地 時 代 の新 聞 か ら漁 業 統 計 に い た る ま で さま ざ ま な 分 野 の文 献(含 映 像 資 料)を 収 集 して お り、
10年 前 に 目録 も刊 行 し て い る。 グ リ ン ラ ンデ ィ カ 担 当 の ハ ンセ ン 〈K.G. Hansen)氏 は 民 族 学 を専 攻 して い た との こ とで 、 当 館 につ い て も 関 心 を 示 し、親 切 に ご 案 内 下 さっ た 。
○ グ リー ン ラ ン ド内 政 自治 政 府/文 化 ・教 育 ・宗 教 省(Greenland HomeRuleGovemment, Ministry of Culture, Education and Church/Gronlands Hjemmestyre/Namminer‑
sornerullutik Oqartussat) 〔8月23日 〕
グ リ ー ン ラ ン ド博 物 館 館 長 の 紹 介 で 、 政 府 庁 舎 を 訪 ね る こ と が で き た 。 文 化 ・教 育 ・宗 教 省 で は 学 校 、 芸 術 、 ス ポ ー ツ 、 宗 教 に 関 わ る 行 政 を 執 り行 っ て お り 、 博 物 館 も こ の 省 の 管 轄 下 で あ る 。 そ の 他 に は 社 会 福 祉 や 漁 労 ・狩 猟 ・農 業 な ど に 関 す る 省 庁 と 議 会 事 務 局 な
ど が あ る 。
同 省 で は 現 在 、 市 街 地 に 大 き な 文 化 会 館 を 建 設 中 で あ り、 工 事 中 の 現 場 も 案 内 し て い た だ い た 。 コ ン サ ー トや 演 劇 、 映 画 が 上 演 で き る 大 ホ ー ル を 中 心 に 、 展 示 や 会 議 な ど を 開 催 で き る 機 能 を 備 え 、 若 手 ア ー テ ィ ス ト ら が 技 術 の 習 得 や 創 作 活 動 な ど も 行 え る ア ト リ エ も
あ る 。1997年 の 冬 に 開 館 と い う こ と で あ っ た の で 、 も う利 用 され て い る こ と で あ ろ う 。
○ カ コ ル ト ツ ク 博 物 館(Qaqortoq Museum/Qaqortup Katersugaasivia)〔8月26、
27日 〕
カ コ ル ト ッ ク は 南 部 で 最 大 の 街 で あ り 、 人 口 は 約3,500人 。 冬 で も 海 が 凍 ら な い た め 、 一 年 中 狩 猟 が 可 能 で 、 良 港 で あ る こ と か ら早 く か ら植 民 も 始 ま っ た 。 当 時 は ア ザ ラ シ 脂 の 輸 出 が 主 な 産 業 で あ っ た と い う。
博 物 館 は1972年 に 開 館 し た が 、 や は り 古 い 鍛 冶 工 場 の 建 物 を 改 装 し た も の で あ る 。 専 門 職 員 は 館 長 の ニ ュ ー ゴ ー 氏(G.Nyegaard:専 門 は 考 古 学)一 人 と い う小 規 模 な も の だ
齋 藤 コ ペ ン ハ ー ゲ ン ・グ リー ン ラ ン ドに お け るイ ヌ イ ト民 族 資 料 調 査 概 報
が 、4艘 の カ ヤ ック を は じめ 、 貴 重 な 資 料 が と こ ろせ ま し と展 示 して あ る 。 ま た資 料 の ラ ベ ル もデ ン マ ー ク語 、 グ リー ン ラ ン ド語 、英 語 、 ドイ ツ 語 の4言 語 で記 して あ り、 大 変 親 切 で あ る。 近 年 の年 間 来 館 者 数 は 約5,000〜6,000人 台 で あ る 。
訪 問 時 ち ょ う ど展 示 され て い た の が ヨア ン ・マ ル ク ッセ ン(Johan Markussen:1906・
1994)の 絵 で あ っ た 。 マ ル ク ッセ ン は、 ナル サ ック 近 く の小 さな 集 落 に 生 ま れ 、 若 い 頃 の 記 憶 を も とに 、 伝 統 的 な 生 活 の様 子 や 精 神 世 界 を素 朴 な タ ッチ で 表 現 して い る。 マル ク ッ セ ンの 作 品 は 、 後 に訪 れ た ナ ル サ ッ ク の博 物 館 で も展 示 して い た 。
そ の 他 の み ど こ ろ と して は 、 博 物 館 の 建 物 の す ぐ隣 に 復 元 され た 土 で 覆 わ れ た 家 が あ り、 町 の 人 た ち に よ っ て 建 て られ た とい う。 老 夫 婦 とそ の 子 ど も夫 婦 の2世 帯 が住 む とい う設 定 で 、 家 の 中 に は 中 央 で 間仕 切 りを した 寝 台 と2つ の 石 ラ ンプ な どが あ る。
収 蔵 庫 は博 物 館 の屋 根 裏 に あ り、 民 族 資 料 以 外 の も の も詰 め込 ん で あ っ た が 、 数 は そ う 多 くは な い 。 貴 重 な も の は 展 示 して い る か 、 ヌ ー ク の博 物 館 で保 管 して い る と の こ とで あ
る。 約 半 日ほ ど資 料 の撮 影 を させ て い た だ い た 。
カ コル トッ ク役 場 の 一 室 が館 長 の ニ ュー ゴ ー 氏 の オ フ ィス とな って お り、 資 料 カ ー ドや 写 真 ・文 献 類 の ほ か 、 最 近 寄 贈 され た とい う衣 類 な ど も 一 時 保 管 し て あ っ た 。 カ ー ドは ヌ ー ク で 閲 覧 した も の と同 じ方 式 だ っ た の で 、 収 蔵 庫 で 写 真 を とっ た 資 料 の デ ー タ を探 す の は容 易 で あ っ た 。
資 料 収集 は 、 主 に古 い もの を持 っ て い る人 を 探 し当 て 、 少 額 の お 礼 で 寄 贈 して も ら うと の こ とで あ る 。館 長 は 、 夏 季 とい う こ と も あ っ て か 、 研 究 者 や 修 学旅 行 生 の案 内 の ほ か 、 町 の老 人 か らの 聞 き取 り調 査 な どで 毎 日忙 し く して い た 。
○ ナ ル サ ッ ク 博 物 館(Narsaq Museum/Narsap Katersugaasivia)〔8月28、29日 〕 グ リー ン ラ ン ドの 中 で も比 較 的気 候 条 件 が 良 く、 古 くか ら人 が 居 住 し、 古 代 ス カ ンデ ィ ナ ビア 人 の 遺 跡 の 多 い 地 で も あ る。 周 辺 の集 落 を あ わ せ る と人 口 は約2,150人 。 南 部 で は カ コル トッ ク に 次 い で 大 きな 町 で あ る。 ジ ャガ イ モ ・ビー ト ・ダ イ オ ウ(rhubarb)の 一 種 な ど、 野 菜 の 栽 培 や ヒツ ジ等 の畜 産 業 も盛 ん で あ る 。
博 物 館 は や は り古 い 建 造 物 を利 用 して お り、 一 番 大 き い 建 物 で は イ ヌ イ ト文 化 と植 民 以 来 の歴 史 な どを展 示 し、 そ の 他 に も植 民 地 時 代 の 印 刷 工場 や 店 を再 現 した建 物 や イ ヌイ ト の 土 の 家 と地 質 学 上 の コ レ ク シ ョ ン(鉱 物)展 示 館 な どが あ る。 土 の 家 は 町 の 人 に よ っ て 再 現 され た も の で 、 カ コル トッ ク の もの に比 べ る と新 しい 。
少 し 離 れ た 場 所 に ナ ル サ ッ ク 博 物 館 管 下 の ヘ ン リ ク&マ レ ー ネ ・ル ン ド記 念 館 (Henrik and Malene Lund Memorial House)が あ る 。 H.ル ン ド(1875‑1948)は 、 首 長 と して こ の 地 域 の発 展 に 寄 与 しな が ら、 詩 人 ・作 曲 家 ・画 家 と して 才能 を 発 揮 した 人 物 で あ る。 彼 らの 住 ん で い た 家 を そ の ま ま公 開 して い る 。
開 館 は6〜8月 の 夏 季 の み で あ る が 、 訪 問 し た と き 学 芸 員 の オ ー ル デ ン ボ ー(R.
北海道 立北方民族博物館研究紀 要 第6号(1997,3)
Oldenburg)氏 は 夏 季 休 暇 中 で 、本 国 か ら帰 省 中 の大 学 生 アル バ イ トの ク ロー(L. Bo Krogh) 氏 が 案 内 して くれ た 。 事 前 に手 紙 で 、 工 芸 家 の 活 動 に つ い て 関 心 を持 っ て い る こ と を伝 え て い た た め 、 毛 皮 ・羊 毛 製 品 の 工場 や 工 芸 家 の 方 々 の 工 房 な どを 案 内 して い た だ い た 。
○ ナ ル サ ッサ ッ ク博 物 館(Narsarsuaq Museum)〔8月30日 〕
機 構 が 穏 や か な こ とか ら グ リー ン ラ ン ドの 空 路 の拠 点 と も な っ て お り、 戦 時 中 は ア メ リ カ軍 の 駐 留 地 とな っ て い た が 、 戦 後 撤 退 し今 は 人 口150人 の 小 さ な集 落 で あ る 。
観 光 案 内所 に 併 設 され て お りi展 示 の公 開 しか して い な い よ うで あ る 。 展 示 は ナ ル サ ッ サ ッ クの 自然 や 産 業 と、 軍 事 資 料 を 中心 と した も の で あ っ た。
○ 工 芸 品 店等
デ ン マ ー ク国 立 博 物 館 職 員 の 紹 介 で コペ ンハ ー ゲ ン市 内 の イ ヌ イ ッ ト/エ ス キ モ ー ・ ア ー ト ・ギ ャ ラ リー(Inuit:Eskimo Art Gallery)に 行 っ た 。 現 在 は グ リー ン ラ ン ドか
ら1940年 以 前 の 古 い 資 料 を輸 出す る こ と が で きな い が 、19世 紀 末 か ら今 世 紀 前 半 に研 究 者 や 宣教 師 な ど と して グ リー ン ラ ン ドに 渡 っ た 際 に収 集 した 民 族 資料 が 本 国 内 に残 され て い て 、 そ れ ら と現 代 の 工 芸 品 や 絵 は が き、 書 籍 な ど も取 り扱 っ て い る店 で あ る。 店 の マ ダ ム に よれ ば 、 グ リー ン ラ ン ドで は 古 い 資 料 の 購 入 は 無 理 だ ろ う と の こ とで あ っ た 。 ギ ャ ラ リー の 中央 に は狩 猟 具 を積 ん だ カ ヤ ッ ク が置 か れ 、 そ の他 伝 統 的 な 衣 類 を 身 につ け た マ ネ キ ンな どい くつ か の も の は 看 板 が わ りで 売 り物 で は な い と の こ とだ っ た が 、 鈷 ・漁 携 具 ・ 仮 面 な ど博 物 館 資 料 と して価 値 の 認 め られ る もの が 多 か った 。 滞 在 中 に3度 足 を運 び 、 許 可 を 得 て30点 あ ま りの 資 料 の 写 真 撮 影 ・計 測 ・デ ー タ の 聞 き 取 りな ど を させ て い た だ い た 。 これ らの うち17点 は 、 そ の後 当 館 の 資 料 収 集 評 価 委 員 会 の 会 議 を経 て 、 購 入 した 。 コペ ンハ ー ゲ ン市 内 で 紹 介 され た も う一 つ の 店 フ ォ ー カ ス ・グ リー ン ラ ン ド(Focus Greenland)は 毛 皮 製 品や 工 芸 品 、 グ リー ン ラ ン ドに 関 す る書 籍 やCDな ど を扱 っ て い る が 、 古 い も の は な か っ た 。
ヌ ー ク の ア ー ク テ ィ ス ・ガ ヴ ェ シ ョ ップ(Arktis Gaveshop)は 、 以 前 は 伝 統 的 な も の の 複 製 品 な ど を 扱 っ て い た が 、92年 に オ ー ナ ー が 代 わ っ て か ら、 み や げ 物 が 中 心 で あ る 。 工 芸 品 の ほ か は 若 干 の 模 型 類 が あ る 程 度 で あ っ た 。 博 物 館 の ピー タ ー セ ン(M.
Petersen)氏 か ら個 人 の コ レク ター の 方 の 連 絡 先 を 教 え て い た だ い た が 、 連 絡 が 取 れ な か っ た 。 そ の ほ か 、 ヌ ー ク に は 皮 製 品 の 共 同作 業 所 キ タ ッ ト(Kittat)が あ り、 見 学 した が 、 ピー タ ー セ ン氏 に よれ ば これ も博 物 館 と して 収 集 す る よ うな もの は作 って い な い との こ とで あ っ た 。 しか しな が ら、 伝 統 的 な 技 術 を 継 承 し、 グ リー ン ラ ン ダ ー の 雇 用 の場 と も な っ て い る キ タ ッ トの活 動 につ い て は 、 参 考 に す べ き 点 が あ る よ うに思 う。
齋藤 コペ ンハ ー ゲ ン ・グ リー ン ラ ン ドにお け るイ ヌ イ ト民族 資 料 調 査 概 報
4.デ ンマ ー ク か ら の グ リー ン ラ ン ド文 化 資 料 の 返 還
ヨー ロ ッパ や ア メ リカ の博 物 館 で近 年 ク ロー ズ ア ッ プ され て きた 問題 と して 、 資 料 の 現 地 へ の返 還 の動 き が あ る 。 同 じデ ン マ ー ク国 家 の も と とは い え 、 物 理 的 に も遠 く離 れ た グ リー ン ラ ン ドで は 、 内政 自治施 行 後 、本 国 に あ る グ リー ン ラ ン ドの 文 化 資 料 を現 地 に 返 還 す る 作 業 が 進 め られ て い る 。 こ こ で は 、 デ ンマ ー ク 国 立 博 物 館 グ リー ン ラ ン ド事 務 局 の ホ ー ゲ ン氏 の 報 告[Haagen 1995]を 抄 訳 す るか た ち で 、 そ の概 要 を紹 介 した い 。
1976年 、 グ リー ン ラ ン ドの 地 方 議 会 で グ リー ン ラ ン ドの文 化 遺 産 の 所 有 権 につ い て の 議 論 が わ き あ が っ た 。 こ の とき 、 特 にデ ン マ ー ク 国立 博 物 館 の グ リー ン ラ ン ド ・コ レク シ ョ
ン につ い て 言 及 され た 。
そ れ よ り以 前 の1967年 、 個 人 らの 寄 贈 資料 を根 幹 と した 一 つ の 博 物 館 が グ リー ン ラ ン ド に 設 立 され て い た。1972年 、 こ の 博 物 館 は デ ンマ ー ク 政 府 に よ っ て 地 方 博 物 館 と して 認 可
され た 。1978年 に は研 究 者 が配 置 され 、 現 在 の 場 所 に移 転 した 。
1979年 に 内 政 自治 が 認 め られ 、81年 に は 同 博 物 館 も本 国 の博 物 館 法 下 か ら内 政 自治 政 府 の 管 理 下 に 入 った 。 同 年 デ ン マ ー ク国 立 博 物 館 に グ リー ン ラ ン ド事務 局 が設 置 され 、 資料 の返 還 作 業 が 本 格 的 に 開 始 され た 。1984年 に は 、 デ ンマ ー ク 国立 博 物 館 とグ リー ン ラ ン ド 国 立 博 物 館 間 で 協 定 が結 ば れ 、 そ れ ぞ れ の代 表 か らな る デ ンマ ー ク ・グ リー ン ラ ン ド博 物 館 委 員 会(The Denmark‑Greenland Museum Commission)を 設 置 、 返 還 す る資 料 に つ い て 毎 年 協 議 を 行 い 、 ガ イ ドライ ン を 定 め て い る 。 文 化 資 料 の 範 疇 に は 民 族 資 料(実 物)の み な らず 、 考 古 資 料 、 絵 画 や 写 真 な ど も含 ま れ る 。1982年 に2人 の グ リー ン ラ ン ダ ー の 描 い た 絵 画 コ レ ク シ ョン が 返 還 され た の を は じ め 、1986年 にG.ホ ル ム の 収 集 した ア マ サ リク の 民 族 資 料 約750点 な ど が順 次返 還 され て い る。
*民 族 資料以外で も地質学 ・動物学の資料類について本国の博物館や大学 とグ リー ンラン ド博物館 との あいだに同様の協定ができている。
グ リー ン ラ ン ドに返 す 前 に 、 各 コ レ ク シ ョ ンは 記 録 書 類 を作 り登 録 しな けれ ば な ら な い 。 これ は デ ン マ ー ク 国 立 博 物 館 の デ ー タベ ー ス(GENREG)で な され て い る。 同 時 に 写 真 撮 影 を し、 デ ー タベ ー ス に取 り込 ん で い る 。 写 真 は カ ラー の ポ ジ で 、 検 索 の 容 易 な ビ デ オ ・デ ィ ス ク に も 収 め られ て い る 。 グ リー ン ラ ン ドの 博 物 館 で もDMI(Danish Museum Index)を 用 い る こ と を決 め て い る た め 、 デ ー タベ ー ス は供 用 で き る 。
協 定 は 、 首 都 ヌ ー ク の グ リー ン ラ ン ド国 立 博 物 館 間 のみ に 適 用 され て い るた め 、 グ リー ン ラ ン ド内 に は 国 立 博 物 館 に加 え14の 地 方 博 物 館 が あ る が 、返 還 資 料 は す べ て 国 立 博 物 館 に所 蔵 され て い る。 そ こ で 現 在 グ リー ン ラ ン ドの博 物 館 関係 者 らは 、 資 料 が 収 集 され た 地 方 の博 物 館 に戻 す よ う決 議 を進 め て い る。
北 海道立北方民族博物館研 究紀要 第6号(1997.3)
5.資 料 カ ー ドと分 類 法 に つ い て
デ ンマ ー クの 歴 史 系博 物 館 に は 共 通 す る資 料 分 類 の 記 号(主 に用 途 別)が 、1冊 の 本 に ま と め られ て い る("Saglig registrant for kulturhistoriske museer")。 グ リー ン ラ ン ドで も こ の 分 類 を採 り入 れ て お り、 概 略 を 理 解 す れ ば 他 の博 物 館 に お い て も 同 じ方 法 で 検 索 が 可 能 で あ り、 大 変 便 利 な も の で あ っ た の で 、 以 下 に概 要 を示 す 。
グ リー ン ラ ン ドの 資料 カ ー ドは 、 受 け入 れ 時 の 情 報 や コ レ ク シ ョ ン全 体 の情 報 を記 入 す る もの と個 別 資 料 の カ ー ドに分 か れ て い る 。
グ リー ン ラ ン ド国立 博 物 館 で は 、 入 手 先 ・入 手 時 期 を一 に す る コ レ ク シ ョン ご との カ ー ド(複 数 点 の 資 料 を含 む)と 、 これ に対 応 す る来 歴 等 の フ ァイ ル 、 資 料1点 ず つ の デ ー タ が記 入 され た 通 称 ブル ー カ ー ドと呼 ば れ る青 色 の カ ー ドの3種 類 が あ る。1番 目の カ ー ド は 索 引 の よ うな も の で 記 録 番 号(コ レク シ ョ ン番 号)、 収 集 先 、 日付 、 資 料 点 数 、 写 真 番 号 、 参 考 資 料 な どが 書 か れ て い る。2番 目の フ ァイ ル はA3二 つ 折 りの 大 き さで1番 目の カ ー ドと対 応 し、 コ レ ク シ ョン の移 管 ・購 入 時 等 の 書 類 や コ レ ク タ ー の 手 紙 資 料 リス ト な どの 関 係 書類 が 挟 み 込 まれ て い る。 表 に コ レク タ ー や 収 集 の 経 緯 な ど が記 され て い る 。
3番 目の ブ ル ー カ ー ドに は 、 個 別 資 料 の 素 材 や 使 い 方 、 サ イ ズ な ど を記 入 し、 写 真 や ス ケ ッチ が付 い て い る。
1・2の カ ー ドは コ レ ク シ ョ ン番 号 順 に 収 め られ て い る が 、 ブル ー カ ー ドは 、 分 類 記 号 別(同 じ分 類 の 中 で は コ レ ク シ ョン番 号 順)に ス ト ック され て い る 。 目的 別 の 資 料 を探 し 出 しや す い シ ス テ ム で あ る。
分 類 は 、 デ ンマ ー ク本 国 の博 物 館 を基 本 に作 られ た も の な の で 、解 釈 を変 え た 使 い 方 が な され て い る 。 分 類 記 号 は アル フ ァベ ッ トと数 字 の 組 み 合 わ せ で 、例 えばAで 始 ま る も の は 「自然 」、Bは 「人 類 」、 Cが 「民 族 」 に 属 す る もの で あ るが 、 グ リー ン ラ ン ドの 博 物 館 の 場 合 、 ほ とん どの 資料 が 「民 族 」 に あ て は ま っ て しま うの で 、イ ヌ イ トの もの は こ こに 入 れ て い な い 。
比 較 的 資 料 数 の 多 か っ た 「衣 類 や 装 飾 品 」 を示 すNを 例 に 分 類 記 号 の 構 成 を見 て み る と、N1は 衣 服 一 般 、 N 2は 男 性 用 、 N 3は 女 性 用 な ど とな って お り、 そ の あ と に小 文 字 でcが 上 着 、dが ズ ボ ン、 eが 帽 子 な どの 被 り物 とな っ て い る。 つ ま り、 N 2 eで あれ ば 男 性 用 帽 子 で あ る。 この ほ か 、D12;信 仰 、 E 3;船(カ ヤ ック 、 ウ ミア ッ ク関 係 品)、
E8;氷 上 の移 動 手 段(権 な ど)、 F 6;狩 猟 、 F 7;漁 労 、 J 2;家 具 ・日用 品 、 P;
ア ー ト ・遺 物 な ども 資 料 数 が 多 か っ た 。
グ リー ン ラ ン ド国 立 博 物 館 とカ コル トッ ク博 物 館 で は 、 自 由 に カ ー ドを 閲 覧 させ て い た だ く こ とが で き た 。 基 本 的 に デ ンマ ー ク語 とグ リー ン ラ ン ド語 併 記 で あ っ た 。 ブ ル ー カ ー ドの 書 式 は 全 く 同 じで あ っ た が 、 カ コ ル トッ ク 博 物 館 は ブ ル ー カ ー ドの ほ か に 受 け入 れ カ ー ド(modtageseddel)と 呼 ば れ る も の が 、 グ リー ン ラ ン ド国 立 博 物 館 の1・2の
齋 藤 コペ ンハ ー ゲ ン ・グ リー ン ラ ン ドに お け る イ ヌ イ ト民 族 資 料 調 査 概 報
カ ー ドの 代 わ りに 用 い られ て い た。
ま た 、 デ ンマ ー ク 国 立 博 物 館 で は 、 実 際 に カ ー ドを手 に 取 る こ と が で き な か っ た が 、 デ ー タ ベ ー ス で 収 蔵 資 料 や 管 理 方 法 の 概 要 を知 る こ とが で き た。 リニ ュー アル の た め に10 年 ほ ど前 に整 備 され た も の で 、 文 字 情 報 のみ な らず 画 像 も ビデ オ デ ィ ス ク に収 め られ て い る 。 画 像 は カ ラ ー モ ニ ター で 見 る こ とが で き 、 モ ノ ク ロで 約7×9cmの サ イ ズ で は あ る が 、 す ぐ に プ リ ン トア ウ トす る こ と もで き る。 同 館 で は世 界 中 の民 族 の 資 料 を 収 蔵 して い る の で 、HRAF(Human Relations Area Files, Inc)が 刊 行 した 「地 域 ・民 族 分 類(略 称OWC;Outline of World Culture)」 を採 り入 れ て い る。 大 阪 の 国 立 民 族 学 博 物 館 で
もOWCを 使 用 して い る の で 、 あ る 程 度 な じみ が あ り、 検 索 も容 易 で あ っ た 。
6.お わ り に
時 間 的 な 制 約 や 報 告 者 の調 査 経 験 の未 熟 さか ら、 実 際 は 目的 と した こ との 半 分 も果 た せ な か っ た よ うに 思 う。 民 族 芸 術 の 歴 史 や 文 化 継 承 の 意 味 か ら、 カ ヤ ッ クや ウ ミア ッ ク の模 型 に 関 心 を 持 っ て い た が 、 ほ とん ど調 べ る こ とが で きな か っ た 。 ま た 、 交 通 の 不 便 さ と 日 程 の 都 合 で グ リー ン ラ ン ド北 部 や 東 部 へ 行 け な か っ た こ とも 大 変 残 念 で あ った 。
しか し、 日本 で は あ ま り知 られ て い な い グ リー ン ラ ン ド ・イ ヌ イ トの 文 化 を と りま く現 況 に つ い て 、 短 期 間 で は あ っ た が 実 地 調 査 を し た立 場 か ら、 少 しで も 多 く紹 介 す る機 会 を 作 る こ とが お 世 話 に な った 方 々 へ の お 礼 と考 えて い る。 平 成10年2〜3月 の 当館 で の 企 画 展 を 中心 に 、 成 果 を 還 元 して い きた い 。
この 調 査 に関 して は 、 報 告 者 は 他 に も以 下 の 短 文 を 書 い た 。
・「平 成8年 度 海 外 民 族 調 査 報 告 」 『北 方 民 族 博 物 館 だ よ り 』 第23号pp.6‑7 (1996.10.25発 そテ)
・「ス ー パ ー マ ー ケ ッ ト と市 場 」 『Arctic Circle』21号(北 海 道 立 北 方 民 族 博 物 館 友 の 会 季 刊 誌)pp.12‑14(財)北 方 文 化 振 興 協 会(1996.12.21発 行)
・「北 極 海 と大 西 洋 に は さ ま れ た 世 界 最 大 の 島 グ リー ン ラ ン ドの 人 と 自然 」 『網 走 新 聞 』(1997.1.1付)
ま た 、 文 献 や 写 真 そ の 他 の情 報 に つ い て も 当 館 か 報 告 者 が 所 持 して い る の で 、 関 心 の あ る方 は ご連 絡 い た だ き た い 。 これ らの 資 料 の貸 し 出 しな どで お 役 に 立 て れ ぼ 幸 い で あ る。
な お 、 本 文 中で 便 宜 的 に 和 訳 あ る い は カ タ カ ナ 表 記 した 固 有 名 詞 等 につ い て は 、 も と も とデ ンマ ー ク語 か グ リー ン ラ ン ド語 あ るい は 英 語 で 表 記 され て い た も の で あ り、 正 確 な 意 味や 発 音 と異 な る点 が 多 数 あ る と思 わ れ る が 、 で き る だ け本 来 の名 称 を併 記 した の で ご了 承 い た だ き た い 。
北海道 立北方民族博物館研 究紀 要 第6号(1997.3) 謝 辞
現 地 の 博 物 館 や 研 究 者 に つ い て 、 北 海 道 立 ア イ ヌ 民 族 文 化 研 究 セ ン タ ー の 谷 本 一 之 所 長 、 当 館 岡 田 宏 明 館 長 に 紹 介 な らび に情 報 提 供 を して い た だ い た 。 ま た 、 カ コル トッ ク で は 、 役 場 に お 勤 め の 日本 人 カ ミヤ ヨ シ カ ツ 氏 とナ ン ナ さ ん ご夫 妻 に 大 変 お 世 話 に な っ た。 ま た 、 現 地 観 光 局 の 方 々 は親 切 に情 報 提 供 を して くだ さ っ た 。 こ の ほ か に も お 名 前 を 挙 げ られ な か っ た 多 くの 方 々 に親 切 に して い た だ い た 。 最 後 に な って しま っ た が 、 準 備 期 間 を 含 め長 期 間 この 調 査 の た め に 時 間 を費 や す こ とが で き た の は 、 職 場 の 同 僚 の サ ポ ー ト の お か げ で あ る 。 記 して感 謝 申 し上 げ ます 。
参 考 文 献
本 調 査 で 入 手 した 文 献 以 外 の も の に つ い て 記 す 。
ジ ェサ ン、R.
1977(1969) 『ア マ サ リク エ ス キモ ー と文 明』(宮 治 美 江 子 訳)思 索 社 石 渡 利 康
1995 『北 極 圏 地 域 研 究 』 高 文 堂 出 版 社 ラ ウ ス 、 ア ー ヴ ィ ン グ
1990(1986) 『考 古 学 へ の 招 待 先 史 時代 の 民 族 移 動 』(小 谷 凱 宣 訳)岩 波 書 店 KLEIVAN, Helge
1984 Greenland Eskimo: Introduction. Handbook of North American Indians.
Vol.5 Arctic. Smithsonian Institution.
1984 Contemporary Greenlanders. Handbook of North American Indians.
Vol.5 Arctic. Smithsonian Institution.
Hart Hansen, Jens P. , J. Meldgaard and J. Nordqvist
1985 The Mummies of Qilakitsoq. National Geographic vol.167, no.2
調 査 期 間 中 に 現 地 で 入 手 した博 物 館 等 の 出 版 物 ・書 籍 ・CD・ ビ デ オ な どは 、 以 下 の と お りで あ る(た だ し、 筆 者 個 人 が購 入 し所 有 す る も の も含 む)。 ま た 、 こ の ほ か に もパ ン フ レ ッ ト類 を 多 数 入 手 した 。
・CD
Hauser, Michael (1992) Traditional Greenlandic Music. ULO
・ビ デ オ
Kleist, Isak (1995) Greenland: The Land of Challenge. Isak Kleist
齋藤 コペ ンハ ー ゲ ン ・グ リー ン ラ ン ドにお け る イ ヌ イ ト民 族 資 料 調 査 概 報
・地 図
Nuuk / Historisk Guide Vesterbygden.(1991, 1993) saga maps Qaqortoq / Uumannarsuaq (1992) saga maps
Narsarsuaq / Taateraat Kangersuasiat (1992) saga maps Paamiut / Ivittuut (1992) saga maps
・書 籍 類
1984 Timmissat amii (Birdskin). Pilersuiffik 1986 Amernik meqqulinnik katiterineq. Pilersuiffik 1987 Ujallut. Pilersuiffik
1994 Nunaarsussuup saqqaa(Changing Times in Housing and Everyday Life).
Eskimo Management ApS
The geology of the Nuuk region. Nunaoil AS Aschehoug Fakta i samarbejde med Nationalmuseet
1993 Besog Historien: Born og foraeldre. Komma & Clausen Berglund, Joel
1982 HVALSO: the Charch and the Magnate's Farm. Qaqortoq Commune Berthelsen, Chiristian etc. ed.
1993 Greenland Atlas. Atuakkiorfik Boertmann, David & J. Fjeldsa
1988 Gr 0 nlandske fugle. Pilersuiffik Bruun de Neergaard, Helga
1987 Avittat (Greenlandic Sealskiin Embroideries) Danish Polar Center
1994 Annual Report 1993. Danish Polar Center 1995 Annual Report 1994. Danish Polar Center
1996Arsberetning 1995. Dansk Polarcenter
1996 Danske Polarforskere: En vejviser. Dansk Polarcenter
1996 Tema: Ei gil Knuth tusaat: forskning i Gronland. Dansk Polarcenter Departement d'Anthropologie Universite Lavel
1988 The work of Knud Rasmussen. Etudes INUIT Studies Vol.12. Departement
d'Anthropologie Universite Lavel Egede, Ivalo ed.
1991 Conservation of nature in Greenland. Atuakkiorfik Eller, Poul & K. Mailing
フ レ デ 〃 ク ヌ ボ ー 城 国 史 博 物 館(フ ィ ッ シ ャ ー 緑 訳 ♪.Frederiksborg Museet