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剣道の防禦における時間的研究

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(1)

剣道の防禦における時間的研究

著者 恵土 孝吉

雑誌名 金沢大学教育学部紀要 自然科学編 = Bulletin of

the Faculty of Education, Kanazawa University.

Natural science

32

ページ 1‑9

発行年 1983‑02‑28

URL http://hdl.handle.net/2297/21162

(2)

剣道の防禦における時間的研究

恵士孝吉

11実験方法

1防禦の成功と失敗を知るために被検者を攻 撃側と防禦側の二組に分けた。攻撃者は防禦 者に防禦されないように相手の打撃部位(面、

小手、胴)の任意の-ケ所を打撃した。これ に対して防禦者には攻撃者に打たれないよう に打撃を防ぐことが要求された。すべての打 撃についての防禦成功、失敗を剣道7段1名、

6段1名、4段1名の計3名の有段者が判定 した。

2攻撃者と防禦者との距離は240cm(-足一 刀の間)としたが、それよりも遠い距離から の打撃も資料に加えた。

3上、中級者の被検者には平均107回、初級 者には平均58回の試技を行わせた。

4打ち込む時間間隔は試技の前の打突が終了 してから20秒とした。なお、相対してから打 ち込むまでの所要時間は攻撃者の自由意志に 任せた。

5防禦者が体さばきによって打突を防禦した 場合は成功、失敗にかかわらず、その値は資 料から除いた。

6防禦所要時間を知るために、防禦者の竹刀 にペーパーストレンゲージを貼布し、攻撃者 の打撃を防禦した時の竹刀の歪波を日本光電 製ペン書きオッシログラフで記録した。

防禦所要時間(反応時間十動作時間)は攻 撃者の右上腕二頭筋、三頭筋の筋放電開始か

ら防禦者の竹刀が攻撃者の打撃を防禦した時 に生じた竹刀の歪波の発生時までとした。また、

攻撃者の右上腕二頭筋、三頭筋の放電があっ てから防禦者の右上腕二頭筋、三頭筋の放電 I目的

剣道技術の攻防に関する研究は金木')、星 川2)、村田3)、竹内4,5)、恵士6,7,8,9,16)、福田10)U)、岩 下'2,1V志藤'4)、内匠屋'5)、笹原'7~24)によって報 告されている。

星1112)は剣道の打突動作、防禦動作の時間的 関係を検討した。未熟練者の打突時間よりも熟 練者の防禦時間が長いにもかかわらず、未熟練 者の打突がすべて防禦されてしまうことから、

熟練者は未熟練者の打突をその開始以前に察知 しているのではないかと推察している。また恵 士7)らは攻撃側の打突コースを正確に認知する ことが防禦率の向上に影響を及ぼすことを示唆

した。

剣道技術の主要素は打突の技術と相手の打突 をかわす技術に分けることができる。迅速で正 確な打突動作と、打突動作に対して迅速で正確 な防禦(かわす)動作が運動成果の向上に重要 な役割を果たす。

相手の打突動作2)に対して迅速な防禦動作を することによって相手の得点を防ぐことがで き、また、相手の防禦動作よりも迅速で正確な 打突によって得点を得ることができる。このこ とは攻撃側と防禦側の各動作時間の長短の争い と考えることができる。したがって各動作所要 時間の内容を検討することによって剣道におけ る運動成果の向上にとっての鍵を明らかにする ことができるものと考えられよう。

本研究は剣道の技術に差のある剣道経験者を 対象に、防禦率と防禦所要時間との間にどのよ うな関係が成り立っているのかを究明しようと するものである。

昭和57年8月31日受理

(3)

第32号昭和58年 金沢大学教育学部紀要(自然科学編)

までを反応時間とした。(図1-A) ある。(図1-B)したがって、防禦所要時間 動作時間は防禦者の右上腕二頭筋、三頭筋 は反応時間と動作時間を合計したものとな の放電があってから相手の打突を防禦した時 る。(図1-C)

に生じた防禦者の竹刀の歪波の始まりまでで

打突動作開始

力突意志朧|'右上腕二三頭筋放電)墓

一一一一一→霧

攻撃者

⑰禦者一一一看皐J,虐二:雲j蓋111扉、:;寄亟Ll

’(右上腕二、三頭筋放電)防

動へ

’一防禦所要時間一苧召(C) 作竹

図1攻防両者の時間的関係

5名(3段)、そして剣道の技術がとくに下手 な初級者(無段)3名の合計11名によった。

なお、各被検者の特徴を表1に示した。

7打ち方は、剣道7段の者が常に相手をつと めた。防禦側は、剣道の技術がとくにすぐれ ている上級者3名(6段~4段)と技術の程 度はとくにすぐれているとはいえない中級者

表1被検者の身体的特性

8攻防動作中における攻防両者の上、下肢 筋のE、M、Gならびに防禦者が防禦した時 の竹刀の歪波の一例を写真1に示した。

に対し、中級者では上級者よりも14.7%低下 し平均56.8%であった。初級者では、上級者 よりも58.9%、中級者より44.2%低下し平均 12.6%であった。

上級者と中級者、上級者と初級者、中級者 と初級者との間にそれぞれ統計的に1%水準 で有意な差がみられた。

なお、上級者、中級者とも被検者間で防禦

、結果 1防禦成功率(表2)

防禦成功回数と成功率を表2に示した。上 級者の防禦成功率は平均71.5%であったの

_耳←

攻撃者

防禦者

上級者 中級者 初級者

K・E T・I K@W T・T T、I T、A E・A H、H R・Y K,A MD 年令 36 36 22 23 20 20 19 20 20 19 19 27 身長 175 157 181 165 170 167 170 172 165 170 167 165 体重 65 59 70 60 72 60 72 65 60 55 57 57 経験年数 23 20 10 15 10

段位 0

(4)

恵土孝吉:剣道の防禦における時間的研究

-MENKAESHlDO-

TimOinlsec ̄----

MⅧuiⅧ)-辮HI1H蝉--TRight 卿(鰯,:,:瓢)一一十11.リトーー」

戸‐‐‐‐‐。この.nの‐‐‐‐」

MtibioMsont・rior-い ̄-.-. ̄~~T

MgQstrocnemius

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IIi

iⅧ,搬柵,L’一柵,--丁1ll

噸L--`-:LJLJ

IodBBIgrtoOdoO0ng0qgOIO、AtoWdOffonEOh10aoogCIoIngPo1nl

写真1剣道の攻防動作におけるE、M、G,と竹刀の歪彼

表2防禦成功回数とその率 分子・・…・成功回数分母……試技回数

哀 … =

岳。

… 志

錘  ̄

合計,

,L51 1箒 …

Lii] …

※※※:P<0.01?<0.0 71.5

,…

li6lL |汎l ‐j 3.4 12.6

 ̄二世二コ撫三と雪竺一」

上級者 中級者 初級者

項目 小手 合計 項目 小手 合計 項目 'j、手 合計

KE

T・T

K,W 11 31

24 35

26 35

34 42

31 41

22 37

32 36

25 35

26 31

77 109

80 111

74 103

70.6

72.1

71.8 T・T

Tl

T・A

E、A

H・H 20 35 26 33 25 35 24 35 23 35

19 35 2033

22 40 20 36 23 36

21 36 3211

19 35 14 34 13 36

60 106 57 98 11266

10558

59 107

56.6

58.2

58.9

55.2

55.1 R・Y

K・A

M、0 0 16

23

18

17

27

16

0 18

25

15

51

14 75

49

11.8

18.7

4.1

合計 10161 12087 10283 231323 71.5 合計 118175 104-180 17378 300528 56.8 合計 57 1160 58 22 175 12.6

60.4 72.5 81.4 71.5 71.5 67.4 57.8 45.1 56.8 56.8 15.8 18.3 3.4 12.6 12.6

(5)

第32号昭和58年 金沢大学教育学部紀要(自然科学編)

成功率には大きな差はみられなかった。しか し、初級者間では、最高と最低との間に約4 倍の差がみられた。

2部位ごとの防禦成功率(表3)

打撃部位ごとの防禦成功率をみると上級者 では胴の防禦率が81.4%と最も高く、次いで 小手の72.5%、面の60.4%であった。部位間 の防禦成功率の差は胴と面の間に1%水準で 統計的に有意な差が認められた。しかし、胴 と小手、面と小手の間には有意な差はみられ なかった。一方、中級者では面の防禦率が最

も高〈67.4%、次いで小手の57.8%、胴の 45.1%の順であった。部位間の防禦成功率の 差は面と胴の間に1%、胴と小手の間に2.

5%、面と小手との間に5%水準で統計的に有 意な差が認められた。

初級者では小手の防禦率が最も高く18.

3%、次いで面の15.8%、胴の3.4%であっ た。部位間の防禦成功率の差は面と胴、胴と 小手との間に2.5%水準で統計的に有意な差 がみられた。しかし、面と小手との間には有 意差はみられなかった。

表3部位間の防禦成功率の差の検定

-'、手有意性面一胴有意性胴一小手有意性 上級者604%-725%ナン604%-814%1%814%-725%ナン 中級者674%-578%5%674%-451CO1%451CO-578%25%

初級者158%-183%ナン158%-34%25%34%-183%25CO

3防禦所要時間(表4)

(1)上級者

防禦に失敗した場合も含めた防禦所要時 間の平均値は368.4,sec(S、5.2)であっ た。この内、失敗した場合の平均値は415

8,sec(S、D10.3)であり、成功した場合 の平均値は349.7,sec(SD4.0)であっ た。両者問には統計的に1%水準で有意な 差が認められた。

表4防禦所要時間(msec)

SDRYKAMOSD

扇圭司戸:丁:~「百万|万r告而~:而堂IKW

50321285

-|+※※※-

3372194 44871333

-1蕊露※-

347`'1`5

415.3 506.7 420.6 462.3 438.7

…''03

十※※※-

3497140

417.7 402.3 427.3

325.3 352.3 374.3 349.3

336.7 347.0

346.7 355.3

456.2499.9491.9482.ブ18.9 計363.0375.4366.9368.45.2

竺当二二三二二二二二些旦EL二二

※※※

※※※:P<0.01

※※※

(2)中級者

防禦に失敗した場合をも含めた防禦所要 時間の平均値は399.6,sec(S、D16.6)で あり、上級者よりも平均値で31.2,sec遅

くなった。

上級者と中級者の防禦所要時間は統計的

有意差は認められなかった。

このうち、失敗した場合の平均値は上級 者よりも32.9,sec遅くなり、448.7,sec

(SD33.3)であった。熟練度の差による時 間の延長は統計的に有意なものではなかっ た。(表5-a)

面一小手 有意性 面一胴 有意性 胴一小手 有意性 上級者 60.4%-72.5% ナシ 60.4%-81.4% 1% 81.4%-72.5% ナシ 中級者 67.4%-57.8% 5% 67.4%-45.1% 1% 45.1%-57.8% 2.5%

初級者 15.8%-18.3% ナシ 15.8%-3.4% 2.5% 3.4%-18.3% 2.5%

(6)

恵士孝吉:剣道の防禦における時間的研究 表5熟練度の差による失敗時間の検定

一方、成功した場合の平均値は上級者よ りも2.1,sec速くなり、347.6,sec(S D16.5)であったが、熟練度による時間の延

長は統計的に有意な差ではなかった。(表6

-a)

防禦に成功した場合と失敗した場合の両

表6熟練度の差による成功時間の差の検定

者には統計的に1%水準で有意な差が認め られた。

(3)初級者

防禦に失敗した場合をも含めた防禦所要 時間の平均値は482.7,sec(S、18.9)で あり、上級者よりも平均値で114.3,sec、

中級者より83.1,sec遅くなった。上級 者、中級者と初級者の間に統計的に1%水 準で有意な差が認められた。

このうち失敗した場合の平均値は上級者 よりも87.4,sec、中級者よりも54.5

,sec遅くなり、503.2,sec(SD28.5)で あった。

熟練度の差による時間の延長は上級者と の間に2.5%(表5-b)中級者との間で 5%(表5-c)水準で統計的に有意な差

が認められた。

一方、成功した場合の平均値は上級者よ りも12.5,sec、中級者よりも10.4,sec 速くなり337.2,sec(S、D9.4)であった。

熟練度の差による時間の短縮は上級者、中 級者両者との間に統計的有意な差はみられ なかった。(表6-b・c)

なお、防禦に成功した場合と失敗した場 合の両者には統計的に1%水準で有意な差 が認められた。

4動作時間(表7)

(1)上級者

防禦に失敗した場合をも含めた動作時間 の平均値は245.2,sec(S、9.6)であった。

この内、失敗した場合の平均値は292.0 ,sec(S、15.8)であり、成功した場合の

防禦所要時間 有意性 動作時間 有意性 反応時間 有意性 上級者

中級者

415.8±10.3 448.7±33.3

ナシ

89

●■5613+’+’00

●●279123

ナシ 123.8±9.1 119.7±2.9

ナシ

上級者 初級者

415.8±10.3 503.2±28.5

2.5%

292.0±15.8 374.0±22.6

2.5%

190●95+一+’82

392211

ナシ

中級者 初級者

448.7±33.3 503.2±28.5

5%

96

6232+一+’00

741733

ナシ ●gUa

99

25+’+’72

●●991211

ナシ

防禦所要時間 有意`住 動作時間 有意`性 反応時間 有意性 上級者

中級者

349.7±4.0 347.6±16.5

ナシ

226.7±7.5 227.8±14.2

ナシ

123.0±3.6 119.8±3.0

ナシ

上級者 初級者

04

●●49+一+一72

●●974333

ナシ

226.7±7.5 202.8±12.4

ナシ

6238+’+’03

●●342311

ナシ

中級者 初級者

347.6±16.5 337.2±9.4

ナシ

24

4211+一十一88

●●722022

ナシ

119.8±3.0 134.3±8.2

5%

(7)

金沢大学教育学部紀要(自然科学編) 第32号昭和58年

表7動作時間(msec)

初級者

上級者

374.0 -Ⅱ-※

202.8 22.6

※-

12.4

31701369

-1-※※※-

227.81142

29201158

-|卜※※灘-

226717.5

二7.92588239.0245.29.6258.4307.8278.0250271.2273.119.9332.9363.4363.353.414.5

ナシ ※※※

※※※:P<0.01

豪※※

平均値は226.7,sec(S、D7.5)であった。

両者の間には1%水準で統計的に有意な 差が認められた。

(2)中級者

防禦に失敗した場合をも含めた動作時間 の平均値は273.1,sec(S、D19.9)であり、

上級者よりも平均値で27.9,sec遅く なった。

上級者と中級者の動作時間は統計的に有 意な差は認められなかった。

このうち失敗した場合の平均値は上級者 よりも25.0,sec遅くなり、317.0,sec(S D36.9,であったが、熟練度の差による時間 の延長は統計的に有意なものではなかっ た。(表5-.)

一方、成功した場合の平均値は上級者よ りも1.1,sec遅くなり227.8,sec(S,

D14.2)であった。

熟練度の差による時間の延長は統計的に 有意な差は認められなかった。(表6-.)

防禦に成功した場合と失敗した場合の両 者には統計的に1%水準で有意な差が認め

られた。

(3)初級者

防禦に失敗した場合をも含めた防禦所要 時間の平均値は353.4,sec(SD14.5)で あり、上級者よりも平均値で1082,sec、

中級者より80.3,sec遅くなり、上級者、

中級者の両者との間に統計的に1%水準で

有意な差が認められた。

このうち失敗した場合の平均値は上級者 よりも82.0,sec、中級者より57.0,sec遅 くなり374.0,sec(SD22.6)であった。熟練 度の差による時間の延長は上級者との間に 統計的に2.5%水準で有意な差が認められ た。(表5-e)しかし、中級者との間では統 計的有意差はみられなかった。(表5-f)

一方、成功した場合の平均値は上級者よ りも23.9,sec、中級者で250,sec速く なり202.8,sec(SD124)であった。熟 練度の差による時間の短縮は上、中級者の 両者との間に統計的に有意な差はみられな かった。(表6-e、f)なお、防禦に成功 した場合と失敗した場合の両者では統計的 に1%水準で有意な差が認められた。

5反応時間(表8)

(1)上級者

防禦に失敗した場合をも含めた防禦時間 の平均値は123.2,sec(S、4.8)であった。

このうち失敗した場合の平均値は123.8

,sec(SD9.1)であり、成功した場合の平 均値は123.0,sec(S,D3.6)であった。

両者の間には統計的に有意な差は認めら れなかった。

(2)中級者

防禦に失敗した場合をも含めた防禦時間 の平均値は119.8,sec(SD2.0)であり、

上級者よりも平均値で3.4,sec速くなっ

(8)

恵土孝吉:剣道の防禦における時間的研究

表8反応時間(msec)

両=訂:帝;祠トテホ:i、:蒜了1両奇'てT:万]÷T5万

123.0 113.0 135.3 123.8 9.1 124.0 119.3 117.3 122.0 116.0 119.7 2.9 123.0 137.3 127.3 129.2 5.9

126.0 118.0 125.0 123.0 3.6 121.3 123.7 118.0 115.0 121.0 119.8 3.0

123.2136.5128.0129.25.4

:三上烹凹'当ffニニニニニif二二二二二二辻

2.0

た。

上級者と中級者の反応時間は統計的に有 意な差は認められなかった。

このうち失敗した場合の平均値は上級者 よりも4.1,sec速くなり119.7,sec(S、

D29)であった。

熟練度による時間の短縮は統計的に有意 な差は見られなかった。(表5-9)

一方、成功した場合の平均値は上級者よ りも3.2,sec速くなり119.8,sec(S D3D)であった。

熟練度による時間の短縮は統計的に有意 な差はみられなかった。(表6-9)

防禦に成功した場合と失敗した場合の両 者には統計的に有意な差は認められなかっ た。

(3)初級者

防禦に失敗した場合をも含めた反応時間 の平均値は129.2,sec(S、D5.4)であり、

上級者よりも平均値で6.0,sec、中級者よ り9.4,sec遅くなった。上級者との間に は統計的有意な差は認められなかったが、

中級者との間には5%水準で有意な差が認 められた。

このうち失敗した場合の平均値は上級者 よりも5.4,sec、中級者で9.5,sec遅く なり、129.2,sec(SD5.9)であった。熟 練度の差による時間の延長は上級者、中級 者の間に統計的に有意な差はみられなかつ

た。(表5-h.i)

一方、成功した場合の平均値は上級者よ りも11.3,sec、中級者で145,sec遅く なり134.3,sec(S、D8.2)であった。熟練 度の差による時間の延長は上級者との間に は統計的(表6-h)に有意な差は認めら れなかったが、中級者との間に5%水準で 有意な差が認められた。(表6-i)

なお、防禦に成功した場合と失敗した場 合の両者には統計的に有意な差はみられな かった。

1V考察

本研究は剣道の経験者を対象として打ち手の 攻撃を防禦することをさせた。その結果、防禦 率は上級者71.5%、中級者56.8%、初級者12.

6%であり、上級者と中級者・初級者、中級者と 初級者との間にそれぞれ1%水準で統計的に有 意な差が認められた。

中級者の56.8%は恵士,)が剣道の未経験者に 防禦の学習を1ヶ月間行わせた値59.5%とほ ぼ同じであり、初級者の12.6%は未経験者の

8%よりもやや大きい値であった。

剣道において:)絶対に有効な打突をとられな い条件は防禦動作が相手の打突動作よりも速い ことであり、また有効打突を成立させる条件は 相手の防禦動作よりも打突動作が速いことであ る。このことは攻撃側と防禦側の各動作時間の 長短の争いと考えることができる。

(9)

金沢大学教育学部紀要(自然科学編)

第32号昭和58年

防禦に成功した場合と失敗した場合について 防禦所要時間を比較検討してみると、剣道技術 の熟練度の差に関係なく統計的に有意な差が認 められた。

このことは、防禦の成功、失敗に時間的要因 が影響を与えていることを示すものである。し たがって防禦に成功するためには、ある一定の 限界時間があるものと考えられる。この限界時 間は相手の打突時間によって異なるが本研究に おける防禦成功時間は上級者349.7,sec、中級 者347.6,sec、初級者337.2,secであった。

星川2)が示した防禦時間は318,secであり、

また恵土,)は防禦可能な時間を438.4,sec

~453.1,sec、防禦不可能な時間を490.5,sec

~5492,secと報告している。

本研究で得られた値は星川の318,secより も大きく、恵土の438.4~453.1,secよりも小 さく、差がみられたが、これは実験条件の相違 によるものと思われる。すなわち星川の実験で は防禦部位が面に限定されたものであったが本 実験においては防禦部位が3ケ所の面、小手、

胴を含んだものであった。また恵士の実験は、

剣道の経験を有しない被検者が防禦の学習を1 ケ月行って得た値であった。

攻撃者の打撃動作を認知してから防禦動作を 起すまでの反応時間(中級者と初級者との間に 5%水準で統計的に有意な差が認められた外 は)にも、また防禦動作を開始してから防禦が 完了するまでの動作時間にもそれぞれ剣道技術 の熟練度の差による時間的差は認められなかっ た。にもかかわらず、熟練度の差によって防禦 率に大きな差が生じたことは、時間的要因の他 に防禦率向上にはたらく他の要因があるものと 推察される。

星川2)は剣道において、もし相手の打突を竹 刀の動き以前に察知すれば打突時間よりも防禦 時間が遅くても防禦は可能となることを報告し ている。また、恵土7)らは剣道に対する数多くの 練習の積み重ねによって相手とのやりとりにお

ける情報を有していることが防禦成功の条件の 1つであることを報告している。

防禦時間が剣道の技術の差によって不変であ るにもかかわらず、防禦率において大巾な差が みられた。この原因については本研究から明確 な結論をひき出すことはできないが少くとも時 間的要因によるものではないといえよう。

Vまとめ

剣道の技術に差のある剣道経験者を対象に剣 道の防禦動作を行わせたところ、次のような知 見を得た。

1防禦率は上級者71.5%、中級者56.8%、初 級者12.6%であった。

2防禦が成功した場合の防禦所要時間の平均 値は上級者349.7,sec±4.0、中級者347.6 ,sec±16.5、初級者337.2,sec±9.4であっ た。

3防禦が失敗した場合の防禦所要時間の平均 値は415.8,sec±10.3、中級者448.7,sec

±33.3、初級者503.2,sec±28.5であった。

4防禦が成功した場合の動作時間の平均値は 上級者226.7,sec±7.5、中級者2278

,sec±142、初級者202.8,sec±12.4で あった。

5防禦が失敗した場合の動作時間の平均値は 上級者292.0,sec士15.8、中級者317.0

,sec±36.9、初級者374.0,sec±22.6で あった。

6防禦が成功した場合の反応時間の平均値は 上級者123.0,sec±3.6、中級者119.8

,sec±3.0、初級者134.3,sec±8.2であっ た。

7防禦が失敗した場合の反応時間の平均値は 上級者123.8,sec±9.1、中級者119.7

,sec±29初級者129.2,sec±5.9であっ た。

(本研究に際して愛知県立大学の星川保先生 にいろいろと助言をいただいた。ここに記して、

(10)

恵土孝吉:剣道の防禦における時間的研究 深く感謝の意を表します。

尚、本資料の一部を日本体育学会第27

11)福田明正剣道のしかけ技と応じ技の実態調査(第 二報)体育学研究第10巻第1号pl601970 12)岩下己伸剣道の試合に関する研究(その4)武道

学研究第6巻第2号1973

13)岩下已伸剣道の試合に関する研究(その2)武道 学研究第1巻第1号1968

14)志藤義孝スポーツ剣道の-考察埼玉大学紀要第

14巻p37~431965

15)内匠屋潔全日本剣道選手権大会試合分析武道 学研究第7巻第1号1974

16)恵士孝吉ら剣道の初心者指導武道学研究第5巻

第1号p、51972

17)笹原六郎剣道試合における勝敗の分析的研究、武 道学研究第2巻第2号p、41~461970

18)笹原六郎剣道試合における勝敗の分析的研究(第 1報)武道学研究第1巻第1号1968

19)笹原六郎剣道試合における勝敗の分析的研究(第 2報)武道学研究第2巻第1号1969

20)笹原六郎剣道試合における勝敗の分析的研究

(第3報)武道学研究第3巻第2号1970 21)笹原六郎剣道試合における勝敗の分析的研究(第

4報)武道学研究第4巻第2号1971

22)笹原六郎剣道試合における勝敗の分析的研究(第 5報)武道学研究第5巻第2号1972

23)笹原六郎剣道試合における勝敗の分析的研究(第 6報)武道学研究第6巻第2号1973

24)笹原六郎剣道試合における勝敗の分析的研究一全 国教職員大会、国体出場選手の場合一武道学研究第

9巻第2号1976 回大会で発表した。

参考・弓|用文献

1)金木‘悟万分の-秒計による竹刀スピードと攻防 の研究武道学研究第9巻第2号p、15~16.1976 2)星川保剣道の打突動作、防禦動作の時間的関係

から見た剣道技術の特'性、武道学研究第11巻第2 号p、114~1151978

3)村田憲三剣道の応じ技について(第3報)体育学 研究第13巻第5号p2321969

4)竹内虎士剣道における防禦の不応期武道学研究 第11巻第2号p、511978

5)竹内虎士剣道試合において初動竹刀とこれに触発 される受太刀の動きの時間差について日本体育 学会大会号p、2081979

6)恵士孝吉ら剣道の打の研究(応じ技)日本体育 学会大会号p2561971

7)恵土孝吉ら剣道における応じ技の時間的分析、日 本体育学会大会号p、3161976

8)恵土孝吉ら剣道の防禦に関する研究日本体育学 会大会号p5071979

9)恵土孝吉剣道の防禦に関する研究金沢大学教育 学部紀要第30号1981

10)福田明正剣道の試合における技術と試合に現われ た体制理論(第一報)体育学研究第9巻第1号p、38

1969

参照

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