小 児 歯 科 学 雑 誌 43(3):463-468 2005 463
早 期 萌 出 したTurner歯
に歯 髄 感 染 を起 こ した1例
難 波 み ち 子 内 川 喜 盛* 要 旨:乳 歯 の 根 尖 性 歯 周 炎 の 拡 大 は,後 継 永 久 歯 に種 々 の 障 害 を もた らす 。 今 回,先 行 乳 歯 の 根 尖 性 歯 周 炎 に起 因 して 重 度 の エ ナ メル 質 形 成 不 全 を伴 い 早 期 萌 出 した 永 久 歯 が,萌 出 直 後 に根 尖 性 歯 周 炎 を生 じた症 例 につ い て 報告 す る 。 患 児 は,5歳9か 月 の 男 児 で 下 顎左 側 第 一 乳 臼 歯 部 の疼 痛 と歯 肉腫 脹 を主 訴 と して来 院 した 。 患 歯 の保 存 を優先 し,根 管 治療 に て経 過 観 察 を行 っ て い た が,1年8か 月後 に や む な く抜 歯 処 置 を施 した 。 抜 歯 後 間 も な く,下 顎 左 側 第 一小 臼歯 は 早期 萌 出 し,中 程 度 の動 揺 と歯 冠 の広 範 囲 に エ ナ メ ル 質 の形 成不 全 が認 め ら れ た 。2か 月 後,下 顎 左 側 第 一小 臼歯 部 の疼 痛 と腫 脹 を 主訴 と して再 来 院 した 。 エ ッ ク ス線 検 査 か ら,歯 根 の 形 成量 は1/3程 度 で,根 尖 部 に透 過 像 が 認 め られ た 。 急性 根 尖 性 歯 周 炎 と診 断 し,水 酸 化 カ ル シ ウム 製 剤 を 貼薬 し,根 尖 の 閉鎖 を待 っ た 。 下顎 左 側 第 一小 臼歯 は,歯 根 の伸 展 を認 め,硬 組 織 に よ り根 尖 の 閉鎖 が 認 め られ た。 根 管 は易 破 折 性 を考 慮 し象 牙 質接 着 シ ス テ ム を用 い コ ン ポ ジ ッ ト レジ ンに て充 填 し,同 時 に フ ァ イ バ ー ポ ス トを併 用 した 支 台 築 造 を行 っ た 。歯 冠 修 復 は硬 質 レジ ン ジ ャ ケ ッ ト冠 を装 着 し,経 過 観 察 して い る。 以 上 か ら,感 染 を生 じた幼 若 永 久 歯 は状 況 を把 握 し,長 期 の 予 後 を考 慮 した 対 応 が 重 要 と考 え られ た 。Key words:幼 若 永 久 歯,Turner歯,早 期 萌 出,ア ペ キ シ フ ィケ ー シ ョ ン,支 台築 造
緒 言 乳 歯 の根 尖性 歯 周 炎 を放 置 す る と後 継 永 久 歯 に種 々 の 影 響 を及 ぼ す。 そ の影 響 は後 継 永 久 歯』の発 育 段 階 で異 な り,歯 質形 成 へ の 影 響 卜3)をは じめ,歯 胚 の 位 置4)や萌 出 時 期2聞 ∼8)に障 害 を及 ぼ す こ と が 報 告 さ れ て い る。 ま た,先 行 乳 歯 の根 尖 性 歯 周 炎 の ため に該 当 乳 歯 が 抜 去 さ れ た症 例 で は,歯 根 長 が 短 い 状 態 で も後 継 永 久 歯 の 萌 出 を認 め る こ とが あ るz5)。萌 出 直 後 の 永 久 歯 は 歯 質 が 未 成 熟 の た め翻 蝕 に罹 患 しや す く,さ ら に この 時期 は歯 質 も薄 い こ とか ら,齦 蝕 病 変 は 容 易 に歯 髄 へ と到達 し,歯 髄 炎 さ らに は根 尖部 の 炎症 を惹 起 す る こ とが あ る9∼1D。 根 未 完 成 永 久歯 の歯 内療 法 は,歯 髄 の全 部 除去 療 法 や 感 染 根 管 処 置 を適 応 した場 合,歯 根 の生 理 的成 長 は望 め ず,硬 組 織 を誘 導 し根 尖 閉 鎖 す る こ と に よ り治 癒 に至 る'∼12>。根 未 完 成 歯 根 尖 部 の硬 組 織 の 形 成 を促 進 す る た め に水 酸 化 カ ル シ ウ ム製 剤 が 貼 薬 剤 と して用 られ,良 好 な経 過 が 報 告 さ れ て い る9∼13)。一 方,水 酸 化 カ ル シ ウ ム の長 期 貼 薬 は歯 質 の 破 折 強 度 を低 下 させ る こ とが 報 告 さ れ てい る14)。臨床 にお い て 硬 組 織 の形 成 促 進 を 目的 と し た場 合,水 酸 化 カル シ ウム の貼 薬 は長期 間行 わ れ る こ と が 多 い 。 よっ て,根 尖 閉 鎖 後 の 修復 処置 は,歯 質 の 易破 折 性 を考慮 に 入 れ材 料,方 法 を選択 す る必 要 が あ る 。 そ こで今 回,先 行 乳歯 の根 尖 性 歯 周 炎 に起 因 して,後 継永 久 歯 に重 度 の エ ナ メ ル 質形 成 不 全 を伴 い早 期 萌 出 が 認 め られ,萌 出 間 もな く根 尖 性 歯 周 炎 が 生 じた症 例 を経 験 した の で,治 療 経 過 に若 干 の考 察 を加 え て報 告 す る。 な お,報 告 に際 して は患 児 な らび に保 護 者 の許 可 を得 て い る。 症 例 初 診 時 所 見 患 児:初 診 時 年齢5歳9か 月 男 児 初 診 日:平 成6年5月23日 主 訴:下 顎 左 側 第 一 乳 臼 歯 の 痺 痛 と歯 肉腫 脹 既 往 歴:特 記 すべ き事 項 な し 家 族歴:特 記 すべ き事 項 な し 現 病歴:患 児 は,2日 前 に下 顎 左 側 第 一 乳 臼歯 部 に痺 痛 を 覚 え,昨 夜 か ら歯 肉腫 脹 を認 め 来 院 した。 患 歯 は1年 前,齦 蝕 に よ り歯 髄 処 置 を受 け て い る。 現 症:下 顎 左 側 第 一 乳 臼歯 は,自 発 痛 と頬 側 歯 肉 に は 伴 歯 科 医 院 所 在 地:東 京 都 板 橋 区 桜 川2-9-3 (院長:難 波 み ち子) *日本 歯 科 大 学 歯 学 部 小 児 歯 科 学 講 座 東 京 都 千 代 田区 富 士 見1-9-20 (主任:内 川 喜 盛 助 教授) (2005年3月18日 受付) (2005年4月18日 受 理)
464難 波 み ち子:早 期 萌 出Turner歯 に歯 髄 感 染 を起 こ した1例 図1初 診 時 の エ ッ クス 線 写 真 大 豆 大 の腫 脹 が 認 め られ,動 揺 度 は2度 を示 した。 口腔 内清 掃 は不 良 で あ り,多 数歯 に わ た る翻 蝕 を認 め たが, 咬 合 状 態 に異 常 は認 め られ な か っ た。 エ ック ス線 所 見:患 歯 の 近遠 心 根 は炎 症 が 原 因 と思 わ れ る異 常 吸 収 が認 め られ た 。吸 収 を生 じた近 遠 心 根 の 歯 頸 部 側i/3付 近 よ り後 継 永 久 歯 胚 に及 ぶ 骨 の エ ッ クス 線 透 過 像 が 認 め られ た。 後 継 永 久 歯 胚 の下 顎 左 側 第 一 小 臼歯 の 歯 冠 はNollaの 石 灰 化 段 階5で あ っ た(図1)。 ま た,下 顎 左 側 第一 小 臼歯 の歯 胚 は,遠 心 に位 置 す る第 二 小 臼歯 歯 胚 と比 べ て低 位 に認 め られ た。 診 断:下 顎 左 側 第 一 乳 臼歯 の急 性 根 尖 性 歯 周 炎 処 置 な らび に経 過: 下 顎 左 側 第一 乳 臼歯 は,根 周 囲 の広 範 囲 に及 ぶ 歯 槽 骨 の 透 過 像 と後 継 永 久 歯 の 回避 現 象 を認 め たが,保 護 者 の 希 望 か ら保 存 す る こ と と し,根 管 治 療 を行 っ た。1か 月 後 に症 状 の 改 善 を認 め,水 酸 化 カ ル シ ウム 製 剤 にて根 管 充 填 を行 っ た。1年8か 月後,再 び 同 部 位 に疼 痛 と腫 脹 を訴 え来 院 した ため,永 久 歯 胚 へ の 影 響 を考慮 し,消 炎 処 置 後,抜 去 した。 抜 歯 後 間 も な く,下 顎左 側 第 一小 臼 歯 の 萌 出 が み られ た が,歯 冠 は広 範 囲 に及 ぶ エ ナ メ ル 質 形 成 不 全 を伴 い,中 等 度 の 動揺 が 認 め られ た 。 2か 月後,下 顎 左 側 に歯 肉 の 腫 脹 と疼 痛 を訴 え来 院 し た 。 エ ッ クス 線 検査 か ら,下 顎左 側 第 一小 臼歯 の根 形 成 はi/3程 度 で,根 歯 質 は菲 薄 で,根 管 は 太 く,根 尖 は大 き く拡 大 した 像 を呈 して い た 。根 尖 周 囲 に エ ック ス線 透 過 像 が認 め られ た(図2)。 下 顎左 側 第 一小 臼歯 の 急 性根 尖性 歯 周 炎 と診 断 し,根 管 の 開放 な らび に抗 菌 薬 と鎮 痛 消 炎 剤 にて 消 炎 処 置 を 行 っ た 。消 炎 後,根 尖 の 閉 鎖 を 目的 に感 染根 管 治 療 を 開 始 した。 貼 薬 は,粉 末 を精 製水 に て練 和 しペ ー ス ト状 に した 水 酸 化 カ ル シ ウ ム を レ ン ッ ロ を 用 い て 行 っ た(図 図2下 顎左 側 第 一小 臼歯 の感 染 に よ り再 来 院 時 のエ ッ ク ス 線 写真 図3水 酸化 カル シウムの貼薬開始時のエ ックス線写真 3)。 処 置 開始 か ら3か 月 間 は1∼2週 間 隔 で 根 管 洗 浄 と 水 酸 化 カ ル シ ウム の 貼 薬 を行 い,そ の 後1∼2か 月 の 間 隔 で 同 処 置 を行 い,根 尖 の 閉鎖 を待 っ た 。 エ ック ス線 写 真 か ら根 尖 の伸 展 が 認 め られ,V字 型 に根 尖 の 閉 鎖 が 認 め ら れ た(図4,5)。 根 周 囲 に は歯 根 膜 腔 を認 め,そ の 周 囲 には歯 槽 硬 線 が 認 め ら れ た。 感 染 根 管 処 置 開始 か ら7年 後,根 管 内 の窩 底 は完 全 に硬 組 織 で満 た され て い る こ とが確 認 さ れ た(図6)。 この 間,患 歯 の歯 冠 部 の 崩 壊 に よ る歯 列 周 長 の減 少 を 予 防 す る た め,保 隙装 置 の 必 要 性 の 説 明 を行 っ たが,保 護 者 か らの希 望 は な く,仮 封 材 にて 歯 冠 近 遠 心 幅 径 の 維 持 を行 っ た。 根 管 充 填 と して,患 歯 の 歯 質 の 菲 薄 と脆 弱 に よ る易 破 折 性 を考 慮 し,根 管 内 を象 牙 質接 着 シス テム を用 い デ ュ ア ル キ ュ ア型 の コ ン ポ ジ ッ トレ ジ ン にて 充 填 した 。 同 時 に グ ラ ス フ ァイバ ー強 化樹 脂 をポ ス トの 形 に した フ ァ イ
小 児歯 科 学 雑 誌43(3)2005465 図4水 酸化 カル シ ウ ム貼 薬 開 始 か ら2年 後 の エ ッ クス線 写 真 図5水 酸 化 カ ル シ ウ ム貼 薬 開始 か ら5年 後 の エ ッ ク ス 線 写 真 図6根 管 閉 鎖 後 の 口腔 内 写 真 図7フ ァ イ バ ー ポ ス ト と コ ン ポ ジ ッ ト レ ジ ン を 用 い た 築 造 時 の エ ッ ク ス 線 写 真 図8修 復 装 置 装 着2年 経過 後 の 口腔 内 写 真,咬 合 面 観(ミ ラー 像)(左)と 側 方 面 観(ミ ラ ー 像)(右)
466難 波 み ち子:早 期 萌 出Tumer歯 に歯 髄 感 染 を起 こ した1例 バ ー ポ ス ト15)を併 用 した支 台築 造 を行 っ た(図7)。 そ の 後,支 台 形 成 を行 い,硬 質 レジ ンジ ャケ ッ ト冠 を装 着 し た。 現 在,定 期 観 察 を行 っ て い る が,患 歯 に異 常 は認 め ら れ な い(図8)。 考 察 乳 歯 の 根 尖 性 歯 周 炎 の 治 療 目標 は,交 換 期 まで の 患 歯 の 保 存 を第 一 選 択 と考 え るが,炎 症 の 波 及 範 囲 に よ って は後 継 永 久 歯胚 へ の 影 響 を考 慮 して 早 期 の 抜 歯 が 必 要 と な る2⑯。先 行 乳 歯 の根 尖 性 歯 周 炎 が 後 継 永 久 歯 に及 ぼ す 影 響 は,後 継 永 久歯 の 形 成 段 階 や 萌 出 時期 に よ り異 な る2)。後 継 永 久 歯 の 萌 出 前 に観 察 され る乳 歯根 尖 性 歯 周 炎 の 影響 は,後 継 永 久 歯 胚 が 炎 症 巣 か ら遠 ざか る方 向へ 移 動 す る 回避 現 象4),ま た,こ の 時 期 に歯 冠 の 形 成 過 程 にあ る場 合 に は エ ナ メ ル 質 の 形 成 障 害 卜3)を生 じる。 感 染 乳歯 の抜 去 後 に は後 継 永 久歯 の萌 出 時期 の異 常 が 認 め られ る篇5∼8)。西 堀 ら5)は,後 継 永 久 歯 の萌 出余 地 が 充 分 で あ れ ば,抜 歯 側 の 永 久 歯 は健 側 と比 べ 早 期 に萌 出す る 傾 向が あ る こ と を報 告 して い る。 一 方,早 期 に先 行 乳 歯 を抜 去 した場 合,後 継 永 久 歯 の萌 出が 遅 延 す る割 合 が 多 い とい う報 告 も な され て い る8)。 本 症 例 にお い て は,先 行 乳 歯 の 根 尖 性 歯 周 炎 の 波 及 と 後 継 永 久 歯胚 の低 位 化 が 認 め られ た。 これ は,炎 症 の波 及 に よ る歯胚 の 回避 現 象 と思 われ た。 しか し,患 児,保 護i者か らの患 歯 保 存 の希 望 と消 炎 後 の 後 継永 久 歯 胚 の発 育 を期 待 して保 存 療 法 を選択 した 。 残 念 な が ら,下 顎 左 側 第 一 乳 臼歯 の症 状 の改 善 は得 られ ず抜 去 に至 り,そ の 後,後 継 永 久 歯 が動 揺 と重 度 の エ ナ メ ル 質形 成 不 全 を随 伴 して,早 期 の萌 出 を認 め た 。 これ は,先 行 乳 歯 の根 尖 部 病 変 に よ る歯 槽 骨 の破 壊 が広 範 囲 に及 び,そ して乳 歯 の抜 去 が 行 わ れ た こ とか ら後 継 永 久 歯 の早 期 萌 出が 認 め られ た と考 え られ た。 こ の こ とか ら,炎 症 の波 及 を最小 限 にす る た め,よ り早 期 の 抜 歯 処 置 を 選 択 す る 必 要 が あ っ たの で は ない か と思 わ れ た。 ま た,根 尖 性 歯 周 炎 を 発 症 した乳 歯 に対 して 保 存 療 法 を選 択 す る場 合,後 継永 久 歯 へ の 影響 につ い て の 充 分 な説 明,治 療 に対 す る保 護 者 ・患 児 の 同意 を得 る こ とお よ び術 後 の 注 意 深 い観 察 が 必 要 と考 え る 。 先行 乳歯 の抜 去 が 本 来 の 生 理 的 な 交換 時期 よ り早 期 の 場 合,後 継 永 久 歯 の萌 出 まで に隣接 す る歯 の抜 歯 空 隙部 へ の傾 斜 や 移 動 が生 じる17)。よ っ て,歯 列 周 長 の 減 少 を 防 ぐた め に保 隙 の必 要 性 も処 置 方 針 と して考 慮 す べ きで あ る。 本 症 例 で は,抜 歯 後 に速 や か に後 継 永 久 歯 の 萌 出 が 認 め られ た こ とか ら保 隙 の強 い必 要 性 は なか っ た。 し か し,そ の後 の歯 冠 の崩 壊 に よ って,遠 心 に位 置 した永 久 歯 の近 心 移 動 を生 じ,歯 列 周 長 の 減 少 を招 い た。 患 児 の 保 護 者 に は保 隙装 置 装 着 に対 す る理 解 は得 られ なか っ たが,そ れ に準 ず る歯 冠 形 態 の 維 持 を強 化 す べ きで あ っ た と考 え て い る。 萌 出 直 後 の 永 久 歯 は,歯 質 が 未 成 熟 の た め 爾 蝕 に罹 患 しや す く,さ らに早 期 萌 出歯 の歯 質 は薄 く,感 染 は 容 易 に歯 髄 へ と波 及 し歯 髄 炎 さ らに は根 尖 性 病 変 を惹 起 す る こ と とな る9∼ω。 本 症 例 患 児 の 口 腔 内 環 境 は 良 好 と は い え な い が,齦 蝕 に よる 崩壊 は認 め られ な か っ た 。本 症 例 の 下 顎左 側 第 一小 臼 歯 は,減 形 成 を伴 うエ ナ メ ル 質形 成 不 全 で あ るTurner歯 で あ り,ま た根 の 形 成 は わ ず か で 動 揺 が認 め られ た こ とか ら,感 染 経 路 は歯 冠 歯 質 の一 部 破 折 に よる か,動 揺 に よる歯 頸 部 辺 縁 か ら の感 染 な どが 考 え られ る が,明 らか に はで き なか った 。 根 尖 部 に炎 症 が波 及 した根 未 完 成 歯 に は,歯 根 の 生 理 的 成 長 は望 めず,根 管 内 の 感 染 物 質 を除 去 した 後,水 酸 化 カル シ ウ ム を用 い て根 尖 部 に接 す る歯 周 組 織 由来 の 硬 組 織 に よ る根 尖 閉鎖 を期待 す る9∼B)。本 症 例 に お い て, 感 染根 管 治 療 開始 時 の根 形 成 量 は1/3程 度 で あ り,根 尖 部 に及 ぶ 炎 症 と歯 肉膿 瘍 か ら,ア ペ キ シ フ ィケ ー シ ョ ン に よ る治 癒 を 目的 と して水 酸 化 カ ル シ ウ ム製 剤 を貼 薬 し た 。 そ の 結 果,根 尖 部 は硬 組 織 添 加 に よ り完 全 に 閉鎖 さ れ,根 形 態 はV字 型 で歯 根 の伸 展 が 認 め られ た。 こ れ は根 尖 の外 側 にセ メ ン ト質;)の 添 加 が 生 じた こ と に よ り根 尖 孔 が 閉鎖 した ア ペ キ シ フ ィケ ー シ ョ ンで あ り,水 谷 の 閉 鎖 形 態 の 分 類1)で は 根 管 内 石 灰 化 型 に分 類 で き る。 しか し,根 管 壁 は第 二 象 牙 質 が 添 加 され な い こ とか ら菲 薄 な ま まで あ っ た。 根 尖 閉鎖 後 の 問題 点 と して,患 歯 の歯 質 菲 薄 に よ る歯 質 の 破 折 が 挙 げ られ12),併 せ て 長 期 の水 酸 化 カ ル シ ウム 製 剤 の 貼 薬 に よ る歯 質 の 脆 弱 化14>から よ り破 折 が 生 じや す い状 態 で あ る こ とが 予 想 で きる 。Andreasenら14)は, 破 折 強 度 が 水 酸 化 カル シ ウム の貼 薬 歯 で は経 時 的 に 減 少 し,2か 月後 には 未処 置 歯 と比 較 して有 意 に 減 少 した と 報 告 して い る。 この 原 因 と してハ イ ドロ キ シ アパ タイ ト お よび コ ラー ゲ ンの 網 目の結 合 が 分 解 さ れ る こ とが推 測 され て い る 。本 症例 は,下 顎 左 側 第一 小 臼歯 の萌 出時 期 と感 染 時期 が早 期 で あ っ た た め,短 根 で 根 歯 質 は菲 薄 で あ り,併 せ て長 期 の水 酸 化 カ ル シ ウ ムの 貼 薬 が 施 され た こ とか ら,衝 撃 に対 し,よ り脆 弱 で あ る と考 え られ た。 一 般 臨床 に お い て ,永 久 歯 の 根 管 充 填 剤 は水 酸 化 カル シ ウ ム系 製 剤 や ガ ッ タパ ー チ ャが 用 い られ18),支 台 築 造 と して メ タ ル コ アの 使 用 頻 度 が 高 い19)。本 症 例 に お い て は,根 歯 質 の補 強 と辺 縁 漏 洩 の 減 少 を 目的 に,象 牙 質接
小 児 歯 科 学 雑 誌43(3)2005467 着 シス テ ム を用 い コ ン ポ ジ ッ トレ ジ ン を根 管 充填 剤 と し て使 用 した20、22)。また,メ タル コ ア は大 きな 剛 性 を もつ た め 残 存 歯 根 の 一 部 分 に応 力 が 集 中 し歯 根 破 折 を引 き起 こ しや す い こ とが 明 らか に な って い る23-26)。本 症 例 に お い て は弾 性 係 数 が 象 牙 質 に近 く2生25),歯質 と 同程 度 の し な りが あ り25・2λ28),腐食 しな い フ ァ イ バ ー ポ ス ト15)をコ ンポ ジ ッ トレジ ン と組 み合 わせ て支 台 築 造 と した。 被 覆 冠 は,審 美 性 を考 慮 して硬 質 レ ジ ンジ ャケ ッ ト冠29)を用 い た。 現 在,修 復 後2年 が経 過 し,下 顎 左 側 第 一 小 臼歯 は良 好 に経 過 して い るが,歯 列 につ い て は今 後 改 善 が 必 要 と 考 え て い る。 結 論 1.先 行 乳 歯根 尖 性 歯 周 炎 に起 因 し,早 期 萌 出 した 下顎 左 側 第 一 小 臼 歯 は 重 篤 な エ ナ メ ル 質 形 成 不 全 を 伴 う Turner歯 で あ っ た。 2.下 顎 左 側 第 一小 臼歯 は 萌 出 間 もな く,急 性 根 尖 性 歯 周 炎 を発 症 し,水 酸 化 カ ル シ ウム製 剤 を用 い感 染 根 管 治療 を行 っ た 。 そ の結 果,歯 根 の伸 展 を伴 い,硬 組 織 に よる 閉鎖 が 認 め られ た。 3.下 顎 左 側 第-・小 臼歯 の 歯根 の易 破 折 性 を考 慮 して コ ンポ ジ ッ トレジ ンに て根 管 充 填 し,同 時 に フ ァ イバ ー ポス トを用 い て支 台 築 造 した。 歯 冠 修復 は硬 質 レ ジ ン ジ ャケ ッ ト冠 を用 い,良 好 に経 過 して い る。 以 上 か ら,感 染 を生 じた幼 若 永 久 歯 は状 況 を把 握 し, 長 期 の 予 後 を考 慮 した 対 応 が 重 要 と考 え られ た 。 文 献
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A Case of Pulpal Infection in a Prematurely Erupted Turner's Tooth
Michiko Nanba and Yoshimori Uchikawa* Ban Dental Clinic
(Director : Michiko Nanba)
*Department of Pediatric Dentistry, School of Dentistry at Tokyo, Nippon Dental University. (Director : Associate Prof. Yoshimori Uchikawa)
Apical periodontitis in a primary tooth can cause various disorders in the successive permanent teeth. We report a case in which premature eruption and serious imperfect amelogenesis of a perma-nent tooth were observed cause by apical periodontitis of the corresponding primary tooth and apical periodontitis developing after eruption in the permanent tooth. Root canal treatment was conducted, restorative treatment was undertaken, and the clinical course was followed up.
The patient was a boy aged 5 years and 9 months who visited our hospital with the chief complaint of toothache, and was found to have gingival swelling over the mandibular left first primary molar tooth. According priority to the preservation of the affected tooth, root canal treatment was conducted and the clinical course was followed up. Nevertheless, the tooth had to be extracted 1 year and 8 months later. Extraction of this tooth was followed soon after by premature eruption of the mandibu-lar left first premomandibu-lar tooth. Looseness and extensive imperfect amelogenesis of the dental crown of this tooth were observed. Two months later, the patient came back with the chief complaint of tooth-ache, and examination revealed swelling of the mandibular left first premolar tooth. A diagnosis of acute apical periodontitis was made. A calcium hydroxide preparation was applied after administration of anti-inflammatory drugs, hoping for closure of the apex. As a result, growth of the dental root of the mandibular left first premolar tooth and closure of the apex with hard tissues were observed. Abutment was subsequently constructed within the root canal using composite resin and fiber post, followed by fixation of a hard resin jacket crown. The child continues to be observed.
In this patient, apical periodontitis in a preceding primary tooth affected the formation of the suc-cessional permanent tooth and also the permanent dental arrangement. This experience suggests that it is important to investigate the status of infected premature permanent tooth and to choose the best ap-proach for treatment, while taking the prognosis into consideration.
Key words : Immature permanent tooth, Turner's tooth, Premature eruption, Apexification, Construc-tion of abutment