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システムは, このような HMD の仕様に合わせて,(1) 立体視用のステレオレンダリング処理,(2) 頭の向きに合わせた視点方向の設定 (3) 光学拡大系レンズによる歪曲の補正処理を加えたものである ( 図 1 参照 ) 視野空間内の建物各部位の指標歩行経路に沿った視覚的シークエンスを

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Academic year: 2021

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637 日本建築学会技術報告集 第 23 巻 第 54 号,637-641,2017 年 6 月 AIJ J. Technol. Des. Vol. 23, No.54, 637-641, Jun., 2017 DOI http://doi.org/10.3130/aijt.23.637

VR ウォークスルーシステムに

よ る 視 覚 的 シ ー ク エ ン ス 分 析

ツールの開発

 

DEVELOPMENT OF ANALYSIS TOOL

FOR VISUAL SEQUENCE BY USING

VR WALKTHROUGH SYSTEM

安福健祐ー ーーーー * 1

キーワード:

シークエンス,視覚,空間知覚,バーチャルリアリティ Keywords:

Sequence, Vision, Space perception, Virtual reality

Kensuke YASUFUKUー ー * 1

This study aims to evaluate architectural space quantitatively based on visual sequence. In this paper, we propose a computational analysis method of a visual field along a walking path by using a virtual reality display. To analyze a visual sequence in an existing architecture, we measured the changes of the indices that are the geometric characteristics of a visual field based on the isovist theory. In addition, a virtual reality display, which employs a wide range view angle and a head-tracking system, enabled us to measure the relation between the visual field and the head motion.

*1 大阪大学サイバーメディアセンター 講師・博士(工学)

(〒 567-0047 大阪府茨木市美穂ヶ丘 5-1)

*1 Assoc. Prof., Cybermedia Center, Osaka Univ., Dr. Eng.

* 大阪大学サイバーメディアセンター 講師・博士(工学) * Associate Professor, Cybermedia Center, Osaka Univ., Dr. Eng. (〒567-0047 大阪府茨木市美穂ヶ丘 5-1) 1. 序 建築空間は人が移動することで体験されるものであり,その中で 起こる連続的な空間的特徴の視覚的変化をシークエンスと呼び,こ れまで研究が行われている.特に現状の建築図面には,視覚的シー クエンスを表現する手段がないことから,その記述法として,ノー テーション1),モーテーション2),遮蔽縁シーンブック3)などが提 案されている.これらは,移動時の時間経過に沿って空間的形状を 記述していくものであるが,建築の非専門家がシークエンスの記述 を見て,実際の空間体験をイメージするのは難しい.一方,筆者ら はこれまで,3D-CG により表現された建物内をウォークスルーする システムを利用することで,一人称視点で見た透視投影図を人間の 視野空間とみなし,歩行経路に沿った視野空間の変化に対して, isovist 理論4)を応用したコンピュテーショナルな分析手法を提案 している5) .しかしながら,ここでは,視野空間の平面図と断面図 を対象とした 2 次元的な解析となっており,3 次元的な解析には至 っていない.また,ウォークスルーシステムの表示装置には一般的 なディスプレイを用いてきたが,より没入感のある体験を提供し, ユーザの身体動作を検出するためには,バーチャルリアリティ(VR) 技術を取り入れることも有効となる. 本研究は,VR 型のウォークスルーシステムにより,人が移動する ときの視覚的シークエンスに基づき建築空間を分析する手法を開発 することを目的としており,ディスプレイ装置として,ヘッドトラ ッキングセンサーが付属したヘッドマウントディスプレイ(HMD)を 利用することで,ユーザの頭の動きとその視野空間の変化の関連性 について分析を行う.また,ケーススタディとして実在の住宅建築 物を取り上げ,建物の部位ごとの視覚的シークエンスについて考察 を行う. 2. 方法 2.1. VR ウォークスルーシステム 既報5)で開発を行ったウォークスルーシステムは,PC を利用して 3D-CG による建物のウォークスルー映像を表示するもので,リアル タイムレンダリング技術を利用して,ユーザのインタラクティブな 操作が可能なものである.本稿では,VR 技術として表示装置に HMD を利用することで,ユーザの建築空間への没入感を高めるとともに, ウォークスルー中のユーザの頭の動きを検出する. 図 1 HMD の表示画面とヘッドトラッキング HMD に表示する映像は,7 インチ液晶パネルを左右分割して 2 眼分 生成した立体視映像であり,片眼あたり 640×800 ピクセルの画素数 となる.また,その映像を光学拡大系のレンズにより水平視野角を 約 90 度(対角視野角 110 度)まで広げている.さらに,低遅延のヘ ッドトラッキング機能を利用することで,頭の向きに合わせた映像 を即座に生成し,全方位を見回すことができる.VR ウォークスルー

VR ウォークスルーシステムによる

視覚的シークエンス分析ツールの

開発

安福健祐 * Kensuke YASUFUKU キーワード: シークエンス,視覚,空間知覚,バーチャルリアリティ Keywords:

Sequence, Vision, Space Perception, Virtual Reality

This study aims to evaluate architectural space quantitatively based on visual sequence. In this paper, we propose a computational analysis method of a visual field along a walking path by using a virtual reality display. To analyze a visual sequence in an existing architecture, we measured the changes of the indices that are the geometric characteristics of a visual field based on the isovist theory. In addition, a virtual reality display, which employs a wide range view angle and a head-tracking system, enabled us to measure the relation between the visual field and the head motion.

Development of Analysis Tool for

Visual Sequence by Using VR

Walkthrough System

5.44 149.7 93 .6 41 64 110°

Right eye image Left eye image

eL eR

e‘L e‘R

Lens Lens

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638 システムは,このような HMD の仕様に合わせて,(1) 立体視用のス テレオレンダリング処理,(2)頭の向きに合わせた視点方向の設定 (3) 光学拡大系レンズによる歪曲の補正処理を加えたものである (図 1 参照). 2.2. 視野空間内の建物各部位の指標 歩行経路に沿った視覚的シークエンスを分析するため,VR ウォー クスルーシステム上で生成される 3D-CG のアニメーション映像から, isovist 理論4)を 3 次元に拡張した視野空間の幾何学的指標の変化 を測定するツールを開発する.isovist と異なるのは,isovist が「空 間内のある点における可視的な点の集合」と定義されて,視点から 周囲 360 度の可視領域を対象としているのに対し,本ツールは,視 野角内の可視領域である視野空間を対象としている点である.視野 空間は,同じ地点においても視線方向,視野角によって可視領域が 異なるため,視覚的シーケンスを分析する上で,人間の空間体験に 近い指標と考える.視野空間を説明するための用語定義を図 2 に示 す. 図 2 視野空間の定義 図 3 部位ごとの視野空間の指標 建物内に視点があると,建物の内部形状によって視野空間が切り 取られる.その境界面が壁や柱等,視点から見える面のことを「可 視面」と呼び,可視面ではない面を「遮蔽境界面」と呼ぶ.本稿で は,視野空間の幾何学的指標に,isovist 理論を援用した「視野体 積(V)」「可視面積(P)」「遮蔽面積(Q)」を用いる.視野体積は, isovist 理論の指標の一つ the area of the isovist を 3 次元空間 の体積に拡張し,視野空間内に限定して求める.可視面積は,the real-surface perimeter of the isovist の指標に基づき,視野空 間内の可視面の総面積として求める.遮蔽面積は,the occlusivity of the isovist の指標に基づき,視野空間内の遮蔽境界面の総面積 として求める.さらに,建築空間を詳細に分析するため,建物を構 成する基本要素である壁,柱,天井,床などの部位ごとに分けて上 記の指標を算出する.部位ごとに色分けした可視面の例を図 3 に示 す.尚,これらの指標は,既報5)の手法同様,VR ウォークスルーシ ステムの画面深度を活用することで,少ない計算負荷で算出できる. 2.3. ケーススタディ VR ウォークスルーシステムを用いて建築空間の視覚的シークエ ンスを分析するため,実在する建物の 3D-CG モデルを構築し,ある 歩行経路に沿った視野空間の指標変化を分析する.視野空間の指標 は,視野体積,可視面積,遮蔽面積の変化を建物部位ごとに算出す る.対象建物は,ル・コルビュジエ設計のサヴォア邸とする.サヴ ォア邸は,近代建築の 5 原則を実現した建物としてだけではなく, 建築的プロムナードと呼ばれる建物内を移動することで空間の連続 的変化を体験することをコンセプトにもつ住宅といわれている.ま た,富永6)によると,「ル・コルビュジエの住宅の内部は,きまっ て人の歩く経路が構築され,それが建築を内側から秩序づけている. その経路にしたがって場面(シーン)は展開し,次々と空間の連続 (シークエンス)の経験が知覚に収穫されるように計画されている」 とある.そのため,本ツールを用いて,建築空間の視覚的シークエ ンスを分析し,ツールの有効性を示すためにも適切な建物の一つで あると考える. 図 4 ケーススタディ建物の平面図と歩行経路 サヴォア邸の 3D モデルをウォークスルーするのに,図 4 のような 歩行経路を設定する.経路は屋外から開始し,正面玄関から建物の 中に入り,斜路を通って 2 階に上がり,サロンに到着するまでとし ている.本来,VR ウォークスルーシステムは,ユーザの操作で自由 な経路を選択することも可能であるが,本稿は第一段階として,こ のようにあらかじめ設定した経路に沿った視野空間変化を分析する. 実験では,被験者に HMD を装着してもらい,ワイヤレスコントロ ーラを持たせる.コントローラの指定したボタンを押すと,歩行経 路に沿ってウォークスルーが始まり,ボタンを押している間だけ前 進する.ウォークスルー中は自由に周囲を見回すことはできる.こ のようにして得られた被験者の視野空間の変化を分析するため,ウ ォークスルー中の被験者は左右の目で異なる 2 枚の立体視画像を見 ているが,分析用には両眼の中心を視点の位置にした 1 枚の透視投 影図を用いる.このときの視野角は HMD と同じ水平視野角 90°,最 大視距離 50m,画面解像度は 1280×800 画素とする.また,本稿で は,本ツールの開発の第一段階として,測定精度と性能検証を行う 視点 視野空間 壁 可視面 遮蔽境界面 視点 床 天井 柱

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639 ことが主な目的であることから,被験者一人の頭の動きと視野空間 を分析の対象とする. 3. 結果と考察 3.1. 歩行経路に沿った頭部の動き 図 5 は,ウォークスルー中の被験者一人の頭の角度変化と,提示 されている映像の一部を示している.ケーススタディにおいて設定 された歩行経路はあらかじめ一つに決められたものであるが, HMD を装着したユーザはコントローラのボタンを押している間だけ前進 し,ウォークスルー中は周囲 360 度を自由に見回すことができ,そ の頭の回転に応じた立体視映像が提示されている. まず,頭の仰角の変化に着目すると,この被験者は,ウォークス 図 5 歩行経路に沿った被験者一人の頭の動きとウォークスルー画面 図 6 歩行経路に沿った視野空間の指標変化 屋外 ピロティ 1 階 斜路 1 斜路踊場 斜路 2 2 階廊下 サロン 0 50 100 150 200 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 Rea l s ur fa ce p er imet er (m2 ) Time(s) P1 P2 P3 P4 P5 0 2500 5000 7500 10000 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 O ccl us iv ity (m 2) Time(s) Q1 Q2 Q3 Q4 Q5 0 50 100 150 200 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 Vi ew v ol ume (m3 ) Time(s) V1 V2 V3 V4 V5 -0.5 0 0.5 1 1.5 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 An gl e( ra d) Time(s) elevation angle azimuthal angle

(4)

640 ルー開始後 7 秒から 9 秒の間,建物の 2 階の外壁を見上げているこ とがわかる.次に,12 秒から 14 秒の間,玄関から建物内に入ると きも上方向を見る.これは,ウォークスルーの映像から開口部に頭 がぶつからないかを確認している動作と考えられる.その後,斜路 を通っている間,16.5 秒から 19.5 秒と,23 秒から 27 秒の間も上方 向を見ている.2 階床が視野空間に入ってくると,視線は徐々に水 平になる.このように,従来のウォークスルーシステムでは視線を マウスやコントローラによって操作する必要があったが,VR 技術を 用いることで,被験者の無意識的な頭の動きを考慮して視野空間の 分析が可能となる. 次に,グラフにおける方位角の変化に着目する.ウォークスルー 開始後,24 秒から 25 秒の間,斜路の踊り場において,歩行経路が 斜路に沿って回転する前に,進行方向に視線を向けている.そこか らさらに斜路を登っていくと,左手の窓を通して屋上庭園が視野空 間に入ってくると,その方向に視線を向けている.また,35 秒後は, 被験者がサロンに入り,周囲を見回している. 以上のことから,建築空間内のある歩行経路において被験者の行 動を分析すると,注視した点がわかること,進行方向に先に視線を 向けることを確認できた.このような頭の動きを考慮に入れること は,人間の知覚に近い視覚的シークエンスを分析する上で有効であ る. 3.2. 視覚的シークエンスの分析 建物の歩行経路に沿って,被験者一人の頭の動きを考慮した視野 空間の変化を図 6 に示す.このグラフは視野空間の指標の変化を時 系列で表し,その指標は建物の部位ごとに分かれている.具体的に は,壁の視野体積,可視面積,遮蔽面積を(V1, P1, Q1),同様に床 を(V2, P2, Q2),天井を(V3, P3, Q3),柱を(V4, P4, Q4),窓枠を (V5, P5, Q5)という記号で表している.家具などそれ以外の部位は 今回の分析の対象とはしない.歩行経路は,建物の屋外からはじま り,正面にある 1 階玄関から建物に入る.建物内は斜路を通って 2 階に上がり,2 階のサロンに到着するまでとなっている. 各指標の変化傾向を時系列でみると,屋外にいるときは建物の外 観が視野に入り,建物から視点が離れているほど視野体積が高い値 となっている.このとき視野空間内に入っているのは建物の南立面 で,壁とピロティの天井の可視面積 P2, P3 が特に大きな値となる. また,外壁やピロティの柱により遮蔽面積 Q1, Q4 の値も大きい.ウ ォークスルー開始 7 秒後は,被験者が 2 階の壁を見上げる動作のた め,壁の可視面積 P1 が一時的に増加する.次に,ピロティから建物 入口に入った瞬間,主に壁と床の視野体積 V1, V2 が増加する.建物 外部から内部に入る瞬間に,視野空間には大きな変化が起こること が指標から定量的に読み取れる.斜路を上がりはじめると,各部位 の視野体積,可視面積は次第に減少していく.斜路の踊場に入り経 路が 180 度回転すると,各部位の視野体積,可視面積は急に上昇す る.さらに,2 階に向かって斜路を上がりはじめると,屋上庭園や, サロンが視野空間に入り,各部位の視野体積,可視面積がさらに増 加する.2 階に上がると,その廊下では各部位の視野体積,可視面 積は減少し,サロンに入ると増加する. 対象建物であるサヴォア邸は,建物の中心にある斜路を通る上下 階移動に特徴があり,「スロープを登るに従って,視界は刻々と上昇 し,新しい視界が奥行き方向に開け,屋上庭園の広がりと光,屋外 の景色が人を誘惑してゆく.」6)という記述にもみられるような,空 間の開放性,閉鎖性の変化を指標によって定量的に表現できている. また,空間から誘惑する方向についても頭部の動きで再現できてい る. 3.3. 部位ごとの指標の関係性 本節では,建物の各部位ごとの指標の変化を詳細に分析するとと もに,各指標の関係性についても把握する.壁に遮られる視野空間 の指標(V1, P1, Q1)に着目すると,視野体積(V1)と可視面積(P1) の変化傾向がほぼ一致している.これは,視野空間内にある壁の面 積が大きくなると,V1, P1 ともに増加することを表す.しかしなが ら,V1 と P1 の比率は常に一定ではない.この比率は,視点と壁の 位置関係により変化する.具体的には,視点から壁までの距離が離 れると,同じ壁面積でも視野体積は増加する.また,その壁の向き は,視線に対して正面にあるほうが,側面にあるよりも視野体積が 大きくなる.例えば,被験者が屋外において,建物の正面から 2 階 壁や屋上壁を見上げているとき,V1/P1 の値は,2.0 以上となってい る.一方,被験者が建物内に入り,斜路を登っているときは,両側 の壁の影響で V1/P1 の値は 1.0 以下となっている.被験者がサロン に到着すると,その空間は開かれており V1/P1 の値は再び 2.0 以上 となる.このことから,壁の視野体積と可視面積の比率により,視 野空間内の壁のレイアウトによる空間の広がりとその方向性が定量 的に記述できる可能性を示した. 次に,床に遮られた視野空間の指標(V2, P2, Q2)に着目する. 被験者がウォークスルー開始時に屋外にいるときは,玄関や窓越し に床を見ているが,建物に近づくにしたがって,床の可視面積 P2 はわずかに増加していく.その一方で,可視体積は,視点が近づい ていくことで減少するため,床の可視面積の増加分は相殺される形 で V2 にほとんど変化がない.他の部位と比較してみると,サロン内 での床の可視面積が非常に大きくなっており,これは外部に開けた 居室にみられる特徴といえる.また,建物内では,壁とは異なり, V2 と P2 の比率にほぼ変化がみられない.これは,視線が水平のと き視線と床面は平行な状態が保たれるためである. 天井に遮られた視野空間の指標(V3, P3, Q3)に関しては,被験 者がウォークスルー開始直後,屋外からピロティの天井が見えるた め,可視面積 P3 は非常に大きな値を示す.また,天井面は水平のた め,可視面積 P3 は視野体積 P3 に比べて非常に大きな値を示す.建 物内において,床面同様,視線が水平であれば,視線と天井面が平 行に保たれるため,V3 と P3 の比率にほぼ変化はみられない. 柱に遮られた視野空間の指標(V4, P4, Q4)に着目すると,外部 からピロティの柱が視野空間に入っている間,遮蔽面積 Q4 が増加し ている.Q4 は,柱間に壁がないとき,V4, P4 と比べ相対的に大きな 値となる. 最後に,窓枠に遮られた視野空間の指標(V5, P5, Q5)に着目す る.被験者が外部にいるとき,遮蔽面積 Q5 はそれほど大きな値をと っていない.その一方,建物内においては,斜路やサロンの窓越し に外部を見ているとき,Q5 は非常に大きな値となっている.また, サロンにおいては,被験者が周囲を見回しているのに対して,Q5 に 大きな変化がみられない.これは,サヴォア邸に特徴的な水平連続 窓によって,遮蔽面積が保持されていると推察される.

(5)

641 4. 結論 本研究は,VR ウォークスルーシステムにより,人が移動するとき の視覚的シークエンスに基づき建築空間を分析する手法を開発する ことを目的としており,ディスプレイ装置として,ヘッドトラッキ ングセンサーが付属した HMD を利用することにより,ユーザの頭の 動きとその視野空間の関連性について分析を行うとともに,ケース スタディとしてサヴォア邸を取り上げ,建物の部位ごとの視覚的シ ークエンスについて分析を行うことで,以下の結果が得られた. (1) VR ウォークスルーシステムにより,従来のウォークスルーシ ステムでは視線をマウスやコントローラによって操作する必 要があったが,被験者の無意識の頭の動きも考慮した視野空 間の変化を分析可能なシステムを構築した. (2) 対象建物であるサヴォア邸は,建物の中心にある斜路による 上下階移動に特徴があり,その過程で,空間の開放性,閉鎖 性の変化傾向を視野空間の指標変化により定量的に記述した. (3) 視野空間内にある壁の視野体積と可視面積の比率から,視野 空間内にある壁のレイアウトによる空間の広がりと方向性が 定量的に記述できる可能性を示した. (4) 視野空間内にある床および天井は水平面であり,視線が水平 であれば,視野体積と可視面積の比率にほとんど変化はみら れない. 以上のことから,VR 技術を用いたウォークスルーシステムを用い て歩行経路に沿った視覚的シークエンスをコンピュテーショナルに 分析する手法を提案し,視野空間の開放性やその方向などは壁の指 標変化に着目することで,視覚的シークエンスを定量的に評価した. 本稿では,ツールの検証のため,被験者一人の頭の動きから視野空 間を分析しているが,今後は,被験者を増やすことで,一般的な人 間の行動特性と視野空間との相互関連性について詳しく分析するこ とが課題である. 謝辞 本研究は JSPS 科研費 JP16K06642 の助成を受けたものである. 参考文献

1) Thiel, P.: People, Paths and Purposes: Notations for a

Participatory Envirotecture, Univ of Washington Press, 1997 2) Halprin, L.: The RSVP Cycles: Creative Processes in the Human

Environment, George Braziller, 1970

3) 脇坂圭一,本江正茂,小野田泰明:視覚体験を通した流動的空間の記

述方法に関する研究,日本建築学会計画系論文集 第 76 巻 第 670 号,

pp.2273-2280, 2011.12

4) Benedikt M. L.: To take hold of space: isovist and isovist fields, Environment and Planning B, Vol.6, pp.47-65, 1979

5) 安福健祐, 出来佑也, 阿部浩和:ウォークスルーシステムによる歩行 経路に沿った視野空間分析ツールの開発と適用, 日本建築学会計画系 論文集 第 78 巻 第 684 号, pp.365-372, 2013.2 6) 富永讓:ル・コルビュジエ建築の詩 12 の住宅の空間構成, 鹿島出版 会, 2003 [2016 年 1 月 29 日原稿受理 2016 年 9 月 20 日採用決定]

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