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リツキサン注 10mg/mL 2.5 臨床に関する概括評価 1 / 52 リツキサン注 10mg/mL ( リツキシマブ ( 遺伝子組換え )) 難治性ネフローゼ症候群 第 2 部 ( モジュール 2):CTD の概要 ( サマリー ) 2.5 臨床に関する概括評価 全薬工業株式会社

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リツキサン注 10mg/mL

(リツキシマブ(遺伝子組換え))

難治性ネフローゼ症候群

第 2 部(モジュール 2):CTD の概要(サマリー)

2.5 臨床に関する概括評価

全薬工業株式会社

(2)

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略語一覧

略語 英名 和名及び定義

ABCB1 ATP-binding Cassette Sub-family B

Member 1 P 糖たんぱく質 ACTN4 α-actinin-4 α-アクチニン 4 ADCC antibody-dependent cell-mediated

cytotoxicity

抗体依存性細胞介在性細胞傷害作 用

ALT alanine aminotransferase アラニン・アミノトランスフェラー ゼ

ANCA anti-neutrophil cytoplasmic

antibody 抗好中球細胞質抗体

ANGPTL4 angiopoietin-like protein 4 アンジオポエチン様タンパク質 4 AR aldose reductase アルドースレダクターゼ

ASMase acid sphingomyelinase 酸性スフィンゴミエリナーゼ AUC area under the curve 血中濃度-時間曲線下面積 CD2AP CD2-associated protein スリット膜関連分子 CD3 cluster of differentiation 3 (ヒト白血球分化抗原及びその抗 原を認識するモノクローナル抗体 の国際的分類法) CD4 cluster of differentiation 4 CD8 cluster of differentiation 8 CD16 cluster of differentiation 16 CD19 cluster of differentiation 19 CD20 cluster of differentiation 20 CD34 cluster of differentiation 34 CD56 cluster of differentiation 56 CD80 cluster of differentiation 80 CDC complement-dependent cytotoxicity 補体依存性細胞傷害作用 CL clearance クリアランス

Cmax maximum concentration 最高血中濃度

CRP C-reactive protein C-反応性蛋白 CTCAE Common Terminology Criteria for

Adverse Events 有害事象共通用語規準 FAS full analysis set 最大の解析対象集団

FAT ‐ スリット膜関連分子

FSGS focal segmental glomerulosclerosis 巣状分節性糸球体硬化症 GBM glomerular basement membrane 糸球体基底膜

GFR glomerular filtration rate 糸球体濾過量 HACA human antichimeric antibody ヒト抗キメラ抗体 Ig A immunoglobulin A 免疫グロブリン A Ig E immunoglobulin E 免疫グロブリン E Ig G immunoglobulin G 免疫グロブリン G Ig M immunoglobulin M 免疫グロブリン M

IL interleukin インターロイキン

MCN minimal change nephrotic syndrome 微小変化型ネフローゼ症候群 MedDRA Medical Dictionary for Regulatory

(3)

略語 英名 和名及び定義 MN membranous nephropathy 膜性腎症

MRT mean residual time 平均滞留時間 MYH9 myosin, heavy chain 9 A 型ミオシン重鎖 NEP neutral endopeptidase 中性エンドペプチダーゼ

NF-related κB nuclear factor-related kappa B 免疫反応において中心的役割を果 たす転写因子の一つ

NPHS2 nephrosis 2 ポドシン

PLA2R phospholipase A2 receptor ホスホリパーゼ A2 受容体 PLCE1 phospholipase C, epsilon 1 ホスホリパーゼC イプシロン 1 PML progressive multifocal

leukoencephalopathy 進行性多巣性白質脳症

QOL quality of life クオリティ・オブ・ライフ,生活の 質

sCD23 soluble cluster of differentiation 23 可溶性CD23 sCD25 soluble cluster of differentiation 25 可溶性CD25

siSMP ‐ SMPDL-3b 遺伝子をノックアウトし た細胞系 SMPDL-3b sphingomyelin phosphodiesterase, acid-like 3b 糸球体のポドサイトのアクチン細 胞骨格を維持する酵素

SOD2 superoxide dismutase 2 スーパーオキシドジスムターゼ 2 STAT6 signal transducer and activator of

transcription 6

シグナル伝達系転写因子 6(Th2 細 胞分化に関与する転写因子) suPAR soluble urokinase-type plasminogen

activator receptor

可溶性ウロキナーゼ型プラスミノ ーゲン活性化因子受容体

T1/2 serum half time 血中半減期

TGF-β transforming growth factor β トランスフォーミング増殖因子 Treg T- regulatory cells 制御性T 細胞

TRPC6 transient receptor potential channel

6 受容体活性化Ca チャネル分子

Vds volume of distribution at steady

state 定常状態分布容積

WLW モデル Wei,Lin and Weissfeld model ‐

ZO-1 zonnula occludens-1 スリット膜関連分子

α-ENO α-enolase ホスホピルビン酸ヒドラターゼの 一つ

(4)

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目次

2.5 臨床に関する概括評価 ... 6 2.5.1 製品の開発の根拠 ... 6 2.5.1.1 臨床試験の概略 ... 7 2.5.1.1.1 国内臨床試験 ... 7 2.5.1.1.2 海外臨床試験 ... 7 2.5.1.2 試験方法の適切性 ... 7 2.5.1.3 治験相談の実施状況 ... 8 2.5.1.4 申請データパッケージ ... 9 2.5.2 生物薬剤学に関する概括評価 ... 10 2.5.2.1 製剤開発の経緯 ... 10 2.5.2.2 バイオアベイラビリティ ... 10 2.5.3 臨床薬理に関する概括評価 ... 11 2.5.3.1 ネフローゼ症候群における本剤の作用機序について ... 11 2.5.3.2 薬物動態 ... 20 2.5.3.2.1 小児期発症の難治性ネフローゼ症候群における本剤の血中濃度(RCRNS-02 試験) ... 20 2.5.3.2.2 特別な患者集団における薬物動態 ... 21 2.5.3.2.3 民族学的要因の影響 ... 21 2.5.3.2.4 外的要因の影響 ... 21 2.5.3.2.5 薬物相互作用 ... 21 2.5.3.3 薬力学 ... 22 2.5.3.3.1 B 細胞傷害作用 ... 22 2.5.3.3.2 HACA 産生 ... 22 2.5.3.4 臨床薬理のまとめ ... 23 2.5.4 有効性の概括評価 ... 24 2.5.4.1 有効性評価に用いた臨床試験の概略 ... 24 2.5.4.2 患者背景 ... 26 2.5.4.3 有効性の評価 ... 28 2.5.4.3.1 RCRNS-01 試験の中間解析 ... 28 2.5.4.3.2 RCRNS-01 試験の主な有効性の結果 ... 28 2.5.4.3.3 RCRNS-02 試験の主な有効性の結果 ... 29 2.5.4.3.4 RCRNS-01 試験と RCRNS-02 試験の有効性の比較 ... 30 2.5.4.4 特別な患者集団及び状況下における有効性 ... 31 2.5.4.4.1 繰り返し投与における有効性 ... 31 2.5.4.4.2 年齢が有効性に及ぼす影響 ... 31 2.5.4.4.3 1 回の投与量(375 mg/m2と500 mg/回)の有効性の比較... 32

(5)

2.5.4.4.4 外因性要因 ... 32 2.5.4.5 有効性のまとめ ... 33 2.5.5 安全性の概括評価 ... 34 2.5.5.1 治験薬の投与状況 ... 34 2.5.5.2 比較的よくみられる有害事象 ... 35 2.5.5.3 死亡 ... 37 2.5.5.4 その他の重篤な有害事象 ... 37 2.5.5.5 その他の重要な有害事象 ... 38 2.5.5.5.1 Infusion reaction ... 38 2.5.5.5.2 治療を必要とする感染症について ... 39 2.5.5.6 臨床検査値の評価 ... 40 2.5.5.6.1 一般臨床検査 ... 40 2.5.5.7 バイタルサイン,身体的所見及び安全性に関連する他の観察項目 ... 42 2.5.5.8 特別な患者集団及び状況下における安全性 ... 42 2.5.5.8.1 内因性要因 ... 42 2.5.5.8.2 外因性要因 ... 43 2.5.5.8.3 薬物相互作用 ... 43 2.5.5.8.4 妊娠及び授乳時の使用 ... 43 2.5.5.8.5 過量投与 ... 43 2.5.5.8.6 薬物乱用 ... 43 2.5.5.8.7 離脱症状及び反跳現象 ... 43 2.5.5.8.8 自動車運転及び機械操作に対する影響又は精神機能の障害 ... 44 2.5.5.8.9 市販後データ ... 44 2.5.5.9 安全性のまとめ ... 44 2.5.6 ベネフィットとリスクに関する結論 ... 45 2.5.6.1 ベネフィット ... 45 2.5.6.2 リスク ... 45 2.5.6.3 ベネフィットとリスクのまとめ ... 47 2.5.7 参考文献 ... 48

(6)

6 / 52

2.5 臨床に関する概括評価

2.5.1

製品の開発の根拠

リツキシマブ(遺伝子組換え)(以下,本剤)は,1991 年に米国 Biogen IDEC 社(当時 IDEC 社)において遺伝子組換え技術により創製されたマウス(可変部領域)とヒト(定常部領 域)のキメラ型の抗CD20 モノクローナル抗体(IgG1κ)であり,ヒト成熟 B 細胞の細胞表 面に発現しているCD20 に特異的に結合し,補体依存性細胞傷害作用,抗体依存性細胞介在 性細胞傷害作用及びアポトーシス誘導による直接的な細胞傷害作用などの作用メカニズム によって標的細胞を傷害し,薬理作用を示す。 本剤は,B 細胞性非ホジキンリンパ腫及び関節リウマチや ANCA 血管炎の自己免疫疾患 の治療薬として米国及び欧州等で承認されており,また,日本では B 細胞性非ホジキンリ ンパ腫やANCA 血管炎の治療薬として承認されている。 本一変申請の対象は,小児期(17 歳以下)にネフローゼ症候群を発症し,ステロイド感 受性を有するものの,頻回再発型又はステロイド依存性を示し,副腎皮質ホルモン剤又は 免疫抑制剤による既存治療では寛解維持が困難な難治性のネフローゼ症候群である。なお, 本剤のネフローゼ症候群に対する適応は,国内外のいずれの国及び地域においても承認さ れていない。 ネフローゼ症候群に対する初期治療は,主に副腎皮質ホルモン剤により行われるが,初 回治療後に再発を認め,頻回再発型又はステロイド依存性となり,副腎皮質ホルモン剤か らの離脱ができない場合,あるいは免疫抑制剤が奏効しない場合や不忍容を示す場合には, 副腎皮質ホルモン剤の長期投与を継続する必要があり,副腎皮質ホルモン剤の副作用が治 療継続及び寛解維持の観点から問題になることが多い。特に成長期にある小児のネフロー ゼ症候群においては,副腎皮質ホルモン剤の長期投与による成長障害が問題となり,更に 骨粗鬆症による圧迫骨折や大腿骨頭壊死により患者の QOL(生活の質)は著しく低下する ほか1),副腎皮質ホルモン剤からの離脱目的で投与される免疫抑制剤にも重篤な副作用の懸 念があることから,新たな治療薬を開発することが,小児期及び小児期発症のネフローゼ 症候群における重要な課題である。 2004 年以降,難治性を含むネフローゼ症候群における本剤の有効性が,国内外の学術雑 誌,又は学会等で報告されている。これらの報告からは,(1)ネフローゼ症候群発症患者 の寛解導入,(2)寛解導入後の再発抑制による寛解維持期間の延長が本剤の効果として期 待でき,更に,既存治療薬である副腎皮質ホルモン剤からの離脱又は減量や免疫抑制剤の 減量又は中止,ひいてはそれらの薬剤による有害反応の軽減等も期待されたことから,特 に成長期にある小児期発症の難治性ネフローゼ患者に対して,本剤を含む治療法の検討が 臨床医を中心に進められた。 国内においては,医師主導治験として小児期発症難治性ネフローゼ症候群を対象とした プラセボ対照臨床第III 相比較試験(RCRNS-01 試験)と薬物動態試験(RCRNS-02 試験) が2008 年 9 月より実施され,本剤の有効性と安全性が検証されたことから,難治性ネフロ ーゼ症候群を対象とする本剤の効能・効果及び用法・用量の追加に係る一変申請を行う。

(7)

2.5.1.1

臨床試験の概略

2.5.1.1.1

国内臨床試験

国内臨床試験は,$$$$ 年 $$ 月 $$ 日に実施した医薬品医療機器総合機構との医薬品□ □□□□□□□□□相談において,本剤の□□□□□□治験の実施について助言を得て, 小児期発症の難治性ネフローゼ症候群に対する本剤の多施設共同二重盲検プラセボ対照 ランダム化比較試験(RCRNS-01 試験),及び小児期発症の難治性ネフローゼ症候群に対 する本剤の薬物動態試験(RCRNS-02 試験)として実施された。 RCRNS-01 試験は,小児期発症の難治性ネフローゼ症候群患者で,ステロイドに感受性が あり,頻回再発型又はステロイド依存性と診断された症例を対象として,本剤 375 mg/m2/ 回(最大量500 mg/回)を 1 週間ごとに 4 回投与する群とプラセボ群にランダム化し,プロ トコール治療開始日から1 年間観察を行う,二重盲検化のプラセボ対照比較試験である。 目標被験者数を60 例(各群 30 例)とし,治験実施予定期間を 2008 年 9 月から 2012 年 8 月までの4 年間として,日本国内の 9 施設で実施された。また,第 1 回目再発を認めた被 験者が30 例に達した時点で有効性に関する中間解析を行うことが予め規定された。 主要評価項目を無再発期間として,プラセボ群と比較した場合の本剤の有効性及び安全 性について検討した。 RCRNS-02 試験は,RCRNS-01 試験に参加した被験者のうち treatment failure と判定されか つプラセボが投与されていた症例,又は2007 年 12 月 31 日までに本薬を投与された患者で ステロイドに感受性がある頻回再発型又はステロイド依存性の症例を対象として,本剤375 mg/m2/回(最大量 500 mg/回)を 1 週間ごとに 4 回投与する,単一アーム,オープンラベル 試験として実施された。目標被験者数を20 例とし,プロトコール治療開始日から 1 年間観 察を行った。治験実施予定期間を2008 年 9 月から 2012 年 8 月までの 4 年間とし,日本国 内の9 施設で実施された。 主要評価項目を本剤の薬物動態とし,その他に本剤の有効性及び安全性について検討し た。

2.5.1.1.2

海外臨床試験

本一変申請に関連し,海外で実施された臨床試験はない。

2.5.1.2

試験方法の適切性

RCRNS-01 試験,RCRNS-02 試験の開始前に,国内外の文献でネフローゼ症候群に対する 本剤の有用性が報告されたことから,本剤の臨床開発が計画された。 RCRNS-01 試験,RCRNS-02 試験の実施前に,医薬品医療機器総合機構との医薬品□□ □□□□□□相談( $$$$ 年 $$ 月 $$ 日開催実施)において試験デザイン等について助言 を得た上で治験の実施計画を立案した。 RCRNS-01 試験は二重盲検試験として実施された。盲検性の維持は,治験薬の割付管理を データセンターの治験薬割付管理者のみが行い,試験終了後の解析時まで封印することに より保証された。また,中間解析は,治験調整医師,治験責任医師等から独立した効果安 全性評価委員会及びその事務局により実施された。中間解析の結果,効果安全性評価委員

(8)

8 / 52 会において,プラセボ群へのランダム化を終了し,本剤投与群の予定症例数まで被験者を 登録することが決定され,治験調整委員会に本内容が勧告された。治験調整委員会は,治 験の継続の判断のみを治験責任医師及び治験実施医療機関に対して報告する予定であった が,報告に際し,プラセボ群に対する本剤投与群の優越性が推定可能となる情報が一部に 伝達された。そのため,有効性及び安全性に対する判定への影響が懸念されたが,試験終 了後の解析時まで割付コードが治験薬割付管理者により適切に封印され,被験者のランダ ム化結果は試験終了後のデータ固定時まで開示されなかったこと,治験責任医師及び治験 実施医療機関に対して報告が行われた時点で,主たる有効性及び安全性の評価対象集団 (RCRNS-01 試験におけるランダム化症例の本剤投与群 24 例とプラセボ群 24 例)において は本剤投与が終了していたこと,また,主要評価項目に影響する初回再発が客観的な指標 で確認されていたことから,有効性及び安全性に対する影響は軽微であると考えられた。 なお,盲検性に関わる検査項目として,B 細胞及び T 細胞の測定,本剤の血中濃度の測定, 及び血中のHACA 測定結果は,試験終了後の解析時まで開示されなかった。 また,小児期発症のネフローゼ症候群は極めて高活動性の疾患であるため,RCRNS-01 試験ではtreatment failure が定義され,treatment failure が認められた場合には,その時点で 盲検解除し,別途計画した RCRNS-02 試験への登録も含めて当該症例に対する最善の後治 療が選択できるよう計画された。Treatment failure の判定は,治験薬投与開始後の初回再発 を判定した後に行われたため,主要評価項目の評価には影響していない。Treatment failure による盲検解除は,通常の二重盲検比較試験における有害事象発生の場合の解除と同様に, 予め準備した緊急解除用の割付コードを用いて行い,緊急解除結果は,当該症例の治験を 実施した医療機関に限定して開示された。 以上より,本一変申請の評価資料である,RCRNS-01 試験及び RCRNS-02 試験は適切に 実施されたと考えられた。

2.5.1.3

治験相談の実施状況

国内□□□試験の計画立案に際し,治験調整医師は,医薬品医療機器総合機構と医薬品 □□□□□□□□□□相談( $$$$ 年 $$ 月 $$ 日開催)を行い,以下の助言を得た。

(9)

以上より,臨床開発及び臨床試験について再検討がなされ,本剤とプラセボ対照のラン ダム化比較試験としての RCRNS-01 試験と,薬物動態を確認するオープンラベル試験の RCRNS-02 試験を,同時に実施することとなった。

2.5.1.4

申請データパッケージ

本一変申請に用いた臨床試験の一覧を表2.5.1.4-1に示す。 表2.5.1.4-1 本一変申請に用いた臨床試験の一覧 試験番号 相 試験 デザイン 対象患者 治療 *4 例数 主要評価 項目 CTD 番号 RCRNS-01*1 III 二 重 盲 検 プ ラ セ ボ 対 照 ラ ン ダ ム 化 比 較試験 小児期発症(1~17 歳) の 難 治 性 ネ フ ロ ー ゼ 症候群の患者*2 本 剤 又 は プラセボ ラ ン ダ ム 化 48 例 (合計 55 例)*5 無再発期間*6 5.3.5.1-1 RCRNS-02*1 III 単 一 arm 試験 RCRNS-01 試験でプラ セ ボ 群 に 割 り 付 け ら れ treatment failure と 診断された患者,及び 小 児 期 発 症 の 難 治 性 ネ フ ロ ー ゼ 症 候 群 患 者で,$$$ 年 $ 月 $日 までに rituximab の投 与を受けた患者*3 本剤 23 例 薬物動態 5.3.5.2-1 *1 医師主導治験。 *2 特発性ネフローゼ症候群の発症時(初発時)年齢が 1 歳以上 18 歳未満であり,かつ,登録時年齢が 2 歳以上 であり,以下の1)~3)のいずれかを満たす。 1) 頻回再発又はステロイド依存性と診断され,免疫抑制薬(シクロスポリン,シクロフォスファミド,ミゾ リビン等)治療終了後再び,頻回再発又はステロイド依存性と診断された。 2) 頻回再発又はステロイド依存性と診断され,免疫抑制薬(シクロスポリン,シクロフォスファミド,ミゾ リビン等)治療を開始されたが,治療中に再び,頻回再発又はステロイド依存性と診断された。 3) 特発性ネフローゼ症候群を発症後にステロイド抵抗性と診断され,免疫抑制薬(シクロスポリン単独又は シクロスポリンとメチルプレドニゾロン併用)治療中又は治療終了後に頻回再発又はステロイド依存性と 診断された。 *3 適応外使用による rituximab 投与。なお,RCRNS-02 試験は 2008 年 9 月に開始している。 *4 被験者が割り付けらけれた各群の治験薬を,体表面積あたり 375 mg/m2/回(最大量 500 mg/回)を 1 週間間隔 で計4 回投与する(Day 1,8,15,22)。 *5 ランダム化された 48 例の内訳は,本剤投与群 24 例とプラセボ群 24 例。ランダム化終了後,本剤投与群のみ に7 例が登録されたため,本剤投与群は最終的に 31 例,プラセボ群 24 例の合計 55 例。 *6 登録割付日を起算日とし,治験薬投与開始後第 1 回目の再発発生日までの期間。

(10)

10 / 52

2.5.2

生物薬剤学に関する概括評価

2.5.2.1

製剤開発の経緯

本一変申請は,効能・効果及び用法・用量の追加に関する医薬品製造販売承認事項一部 変更承認申請であるため2.5.2.1に関する記載はない。 なお,国内で実施された医師主導治験で使用されたIDEC-C2B8 は,市販品のリツキサン 注 10 mg/mL(リツキシマブ(遺伝子組換え))と同一製剤であり,本一変申請において本 剤の品質,規格及び試験方法についての変更はない。 また,RCRNS-01 試験において使用されたプラセボ製剤は,市販品のリツキサン注 10 mg/mL(リツキシマブ(遺伝子組換え))を供給する Genentech 社が製造した製剤を使用し た。 IDEC-C2B8 の実薬製剤及びプラセボ製剤は,国内におけるリツキサン注 10 mg/mL(リツ キシマブ(遺伝子組換え))の製造販売元である全薬工業株式会社が供給した製剤が使用さ れた。

2.5.2.2

バイオアベイラビリティ

本剤は静脈内投与製剤であるため,バイオアベイラビリティ及び食事の影響に関する検 討は実施されていない。

(11)

2.5.3

臨床薬理に関する概括評価

2.5.3.1

ネフローゼ症候群における本剤の作用機序について

ネフローゼ症候群は,ハリソン内科学第4 版2)では,「重度の蛋白尿(3 g/日以上),高血 圧,高コレステロール血症,低アルブミン血症,浮腫や全身浮腫,顕微鏡的血尿を呈する 状態をいう。」とされており,また,ネフローゼ症候群診療指針 3)では「糸球体の大量の蛋 白尿による低アルブミン血症の結果,浮腫が出現する腎疾患群」,小児特発性ネフローゼ症 候群薬物治療ガイドライン 1.0 版 4),及び小児特発性ネフローゼ症候群診療ガイドライン 20135)では「ネフローゼ症候群は糸球体基底膜障害の結果,高度蛋白尿,低蛋白血症と全身 性の浮腫が起こる。」と記載されている。 臨床上の特徴として,重度の蛋白尿,軽微な血尿,低アルブミン血症,高コレステロー ル血症,浮腫,高血圧を呈し,診断や治療が行われない場合には,多くの糸球体が進行性 に障害され,糸球体濾過量(glomerular filtration rate, GFR)が減少し,腎不全に至る2)。

また,凝固亢進状態,血清中の結合蛋白喪失による関連機能異常が認められるほか,尿 蛋白自体が腎毒性物質として作用すると考えられている1)。

ヒトの腎臓には両側あわせて180 万個の糸球体があり,それぞれの糸球体は Bowman 腔 内に存在している。Bowman 腔を取り囲む皮膜の内側は壁側上皮細胞(parietal epithelial cell) に覆われており,この壁側上皮細胞は尿細管上皮細胞に移行して近位ネフロンを形成し, あるいは糸球体係蹄側に移行して臓側上皮細胞(足細胞,podocyte)を形成する2)。

糸球体基底膜(glomerular basement membrane, GBM)上にある有窓内皮細胞は糸球体係蹄 の内側表面を覆っている。臓側上皮細胞(足細胞)の緻密な足突起(foot process)は糸球体 係蹄の外側表面を覆うようにしてのび,更に隣り合う足突起がスリット膜(slit diaphragm) を介して相互に連結されることで,選択的濾過障壁が形成される。臓側上皮細胞は足突起 によって基底膜と接着し,スリット膜によって隣接する臓側上皮細胞と連結している。ス リット膜は,ネフリン,アネキシン-4,CD2AP,FAT,ZO-1,P カドヘリン,ポドシン,TRPC6, PLCE1,neph 1~3 蛋白などが関連した相互作用により血漿と溶質を濾過している。これら の蛋白の多くの変異は,大量の蛋白尿の原因となる2)。 70 kDa を超える血漿蛋白は,サイズ及び荷電による選択的障壁により基底膜を通過し, 糸球体基底膜内の経路により150 kDa を超える血漿蛋白の濾過は制限される。また,分子の 形状による濾過制限も存在し,同じ分子量でも球形の分子よりも伸張した分子が糸球体尿 細管壁を通過しやすい。更に,荷電による障壁は尿細管壁に配置されたグリコサミノグリ カ ン に よ る も の で あ り , 微 小 変 化 型 ネ フ ロ ー ゼ 症 候 群 (minimal change nephrotic syndrom,MCN)では荷電障壁の欠損,膜性腎症(membranous nephropathy, MN)ではサイズ 障壁の欠損の可能性が考えられている6)。 糸球体では1 日に 120~180 L の血漿が濾過され,下流尿細管でさまざまな溶質の再吸収 と分泌が行われる。ほとんどの血漿蛋白とすべての血球細胞は,膜孔のサイズと陰性荷電 で制御されている生理化学的障壁があるため濾過されない。多くの溶質において,その濾 過と再吸収のメカニズムは非常に複雑である。血清アルブミンの場合,糸球体だけでは濾 過障壁として不完全である。アルブミンは負電荷を帯びており,同じく陰性に荷電してい る糸球体基底膜とは反発しやすいが,アルブミンの物理的な大きさは半径3.6 nm で,糸球 体基底膜孔やスリット膜のサイズ4 nm より小さい。したがって,ある程度の量のアルブミ ンは必然的に濾過障壁を通過してしまうが,これらは近位尿細管に存在するメガリン (megalin)あるいはキュブリン(cubilin)受容体によって再吸収される。正常なネフロン 機能を有する健常人では1 日に尿中排泄されるアルブミン量は 8~10 mg 以下であり,これ

(12)

12 / 52 は総尿中排泄蛋白の 20~60%にあたる。このアルブミンや,それ以外の蛋白の尿中排泄量 は,糸球体疾患でグラム単位の量にまで増加することがある2)。 ネフローゼ症候群診療指針3),小児特発性ネフローゼ症候群薬物治療ガイドライン1.0 版 4)及び小児特発性ネフローゼ症候群診療ガイドライン 20135)において治療指針が示されて おり,特発性ネフローゼ症候群で発現が多いと考えられる微小変化型ネフローゼ症候群 (MCNS),巣状分節性糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis, FSGS)及び膜性腎 症(MN)の臨床的特徴,病理組織学的特徴及び病因を,表2.5.3.1-1にまとめた。 微小変化型ネフローゼ症候群については,病因が明確ではなく,T 細胞の機能異常が一因 と考えられている。巣状分節性糸球体硬化症については,続発性(二次性),家族性・遺伝 性,液性因子等に起因することが示唆されているほか,T 細胞の機能異常も推定されている。 膜性腎症では,続発性(二次性)や抗リウマチ薬等による薬剤性のほか,糸球体上皮の抗 原を標的とするIgG4 抗体の関与や M 型ホスホリパーゼ A2 型受容体が抗原となることが示 唆されている2)3)。

(13)

表2.5.3.1-1 微小変化型ネフローゼ症候群,巣状分節性糸球体硬化症及び膜性腎症の臨床的特徴,病理組織学的特徴及び病因2)3) ネフローゼ症候群 臨床的特徴 病理組織学的特徴 病因 微小変化型ネフローゼ症候群 (MCNS) 臨床的には急激な発症が特徴であり,突 然の浮腫をきたすことが多い。高度の蛋 白尿や低アルブミン血症,脂質異常症が 認められ,胸腹水の貯留をきたすことも ある。尿蛋白の選択性は高選択性のこと が多く,治療に対する反応が良好である 6)。成人において顕微鏡的血尿が観察され ることは稀ではなく,約 20~30%に報告 されている6)7)8) 急性腎不全をきたす症例もあり,高齢, 高血圧,高度蛋白尿をきたす症例に多い 7) 腎生検では光学顕微鏡所見上,糸球体に 明らかな異常は認められず,蛍光抗体法 では免疫グロブリンや補体の特異的な 沈着はない。電子顕微鏡ではびまん性の 足突起の消失のみが見られる。 病因は明らかではないが,T 細胞の機能異 常により糸球体の蛋白透過性亢進状態が 生じることが一因と考えられている9)。 巣 状 分 節 性 糸 球 体 硬 化 症 (FSGS) 巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)は,微 小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)と同 じような発症様式・臨床像をとりながら, MCNS と異なり,しばしばステロイド抵 抗性の経過をとり,最終的に末期腎不全 にも至りうる難治性ネフローゼ症候群の 代表的疾患である。 初期には大部分の糸球体には変化を認 めない一方で,主として傍髄部領域の一 部 の 糸 球 体 (focal= 巣 状 ) の 一 部 分 (segmental=分節状)に硬化を認めると いう病理形態学的特徴を有し,病期進行 とともに硬化病変が拡がっていく。 典型的なネフローゼ症候群を発症する原 発性(一次性)FSGS のほかに,肥満関連 腎症あるいは逆流性腎症など,形態学的 に 全 く同 じ よ う な組 織 像 を 示 す続 発 性 (二次性)FSGS の存在もよく知られてい る。 また近年,糸球体上皮細胞の構造膜蛋白 であるポドシン(NPHS2)や α-アクチニ ン4(ACTN4)などの遺伝子変異により発 症する家族性・遺伝性FSGS の存在が次々 に報告されている10)11)。

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14 / 52 表2.5.3.1-1 微小変化型ネフローゼ症候群,巣状分節性糸球体硬化症及び膜性腎症の臨床的特徴,病理組織学的特徴及び病因(続き)2)3) ネフローゼ症候群 臨床的特徴 病理組織学的特徴 病因 巣 状 分 節 性 糸 球 体 硬 化 症 (FSGS) (続き) 家族性FSGS で主に成人に発症するものと して,Ca チャネルである TRPC6 の遺伝子 異常が報告されている12)。成人領域の孤発 性FSGS でも A 型ミオシン重鎖(MYH9) 遺伝子多型と発症リスクとの相関がアフ リカ系アメリカ人を対象とした臨床研究 で示されており13),更に,このMYH9 遺 伝子異常が Epstein-Fechtner 症候群に合併 するFSGS 症例に認められることも最近明 らかとなった14) 最近の知見の蓄積を踏まえたうえでも,原 発性FSGS の病因については現在もなお不 明な部分が多いが,MCNS と同様に,主と して T 細胞の機能異常に伴う糸球体上皮 細胞障害が主要な機序の一つと考えられ ている。また,皮質部糸球体と傍髄部糸球 体の循環動態の違いなど血行力学的要因 も関与するとされる。 更に腎不全に陥った症例の腎移植におい て,移植直後より蛋白尿の再発がみられる ことがあり,しかもこの蛋白尿が血漿交換 療法にて軽減することから,一部の原発性 FSGS では糸球体濾過障壁の蛋白透過性を 亢進させる何らかの液性因子,又はそれを 制御する因子が発症に関与する可能性が 指摘されている15)。更に,ウロキナーゼ受 容体がFSGS の原因である可能性も示され ている16)

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表2.5.3.1-1 微小変化型ネフローゼ症候群,巣状分節性糸球体硬化症及び膜性腎症の臨床的特徴,病理組織学的特徴及び病因(続き)2)3) ネフローゼ症候群 臨床的特徴 病理組織学的特徴 病因 膜性腎症 (MN) 中高年者に多く,ネフローゼ症候群を呈 しても,尿蛋白の増加が必ずしも急速で はない。したがって,浮腫なども目立た ないため,むしろ脂質異常症などが本症 発見のきっかけとなることもある。血尿 は約 20%にみられ軽度なことが多いとさ れてきたが,厚生労働省進行性腎障害に 関する調査研究班(以下,研究班)の全 国調査では約40%に達していた17)18) 尿 蛋白 選 択 性 は 高い も の と 低 いも の と 様々であり,高いものは予後良好といわ れている 19)20)。高血圧は 10~35%に併発 し,研究班の報告では約 20%であった 17)18) 膜性腎症の光学顕微鏡所見では,糸球体 係蹄に沿って,基底膜のびまん性肥厚が 認められる。免疫蛍光法では,IgG と C3 がびまん性の顆粒状沈着を示し,電 子顕微鏡所見では,上皮下に高電子密度 沈着物が確認されるのが典型である1) 膜性腎症では,膠原病や悪性腫瘍などに続 発する例や抗リウマチ薬などによる薬剤 性の例も知られており,まずこれらの可能 性を検索する必要がある。 一方,特発性膜性腎症は糸球体上皮の抗原 を標的とする抗体の集積によって,in situ で発症するとの説が以前から有力であり, その抗体として IgG4 が報告されているが 21)22),最近,M 型ホスホリパーゼ A2 受容 体が抗原であるとの研究が注目を集めて いる23)。今後,このような研究が治療の糸 口となることも期待される。

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16 / 52 以下に,微小変化型ネフローゼ症候群,巣状分節性糸球体硬化症及び膜性腎症の発症に 関連する要因を示すとともに,想定される本剤の作用機序について考察する。 1. 微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS) 微小変化型の原因は特定されていない。上述のとおり,光学顕微鏡所見上糸球体に明ら かな異常は認められず,蛍光抗体法では免疫グロブリンや補体の特異的な沈着はなく,電 子顕微鏡でびまん性の足突起の消失のみが認められるが,足細胞を障害する決定的な因子 や機序は判明していない2)6)。 T 細胞の反応に関与するサイトカインが循環血液中に存在し,これが毛細血管の荷電状態 や正常な臓側上皮細胞の状態に変化を与えるという説が最も支持されている2)。 当初,T 細胞が産生する循環因子(circulating factor)による糸球体基底膜の傷害によるも のと考えられており 24),T 細胞を中心とした免疫反応異常,微小変化型の活動期における Th2 の活性化が確認されている25)26)27)28)。 最近では,エフェクターT 細胞を抑制し免疫反応を適正に制御する制御性 T 細胞 (T-regulatory cells, Treg)の異常が考えられており,Treg細胞機能の増強又は補充により蛋白

尿が低下することが,特発性ネフローゼ症候群のラットモデルで報告されている29)。 一方,微小変化型におけるB 細胞の関与は,直接作用又は T 細胞との関連において示唆 されている30)31)32)。 微小変化型ネフローゼ症候群においては,B 細胞の割合又は B 細胞数の上昇,免疫グロ ブリン値の上昇(特定の分画の上昇,高 IgE 血症等)が観察され,また,リツキシマブの 投与により寛解が認められていることから,微小変化型の発現にB 細胞の関与が推察され, 生体内のB 細胞を枯渇させることにより効果が期待できると考えられる。 Tani らは33),小児及び成人を含む,微小変化型ネフローゼ症候群(n=15),膜性腎症(n=20), IgA 腎症(n=15)及び膜性増殖性糸球体腎炎(n=8)と,健常人(n=15)について,B 細胞 サブセットの分布について解析した。細胞表面免疫グロブリン(Ig)G が発現した B 細胞 集団の割合は,4 つのネフローゼ症候群で有意に上昇し,IgA が発現した B 細胞集団割合は IgA 腎症と膜性増殖性糸球体腎炎において上昇した。また,IgE が発現した B 細胞集団割合 は微小変化型ネフローゼ症候群において上昇した。B 細胞集団割合の上昇に伴い,膜性腎症, IgA 腎症及び膜性増殖性糸球体腎炎では糸球体に免疫グロブリンの沈着を認め,微小変化型 ネフローゼ症候群では,血中IgE の上昇を認めたことを報告している。 また,Yokoyama らは 34),成人の微小変化型ネフローゼ症候群患者32 例の免疫学的特性 と疾患活動性との関連について解析した。活動期の17 例において,血清 IgM 及び IgE,B 細胞,細胞表面にIgG,IgM 及び IgE を発現している B 細胞集団が増加したが,血清 IgG, 末梢血 T 細胞は減少し,副腎皮質ホルモンにより寛解が維持されている 17 例においては, 血清免疫グロブリン及びB 細胞集団は正常値に回復する傾向にあり,末梢血 T 細胞及びヘ ルパー/インデューサーT 細胞は減少し,サプレッサー/細胞傷害性 T 細胞は増加した。副腎 皮質ステロイドの投与を行わず,安定した寛解状態を維持している14 例においては,前述 の異常が正常値に回復したが,IgM は高値を維持し,IgE の再上昇を認めたことを報告して いる。 Tan らは35),特発性ネフローゼ症候群の患者120 例について血清 IgE の値を比較し,微小 変化型の患者においては,膜性腎症及び膜性増殖性糸球体腎炎の患者と比較して有意に上 昇していることを報告している。更に,ステロイド感受性ネフローゼ症候群患者とステロ イド抵抗性ネフローゼ症候群患者の間で,血清 IgE 値に相違は認められなかったこと,及 び,ステロイド感受性ネフローゼ症候群患者において,再発時の血清 IgG 値が,寛解時よ りも有意に上昇していたことを報告している。 また,サイトカインに関連した免疫異常の関与が,先行するアレルギー反応の存在,ウ イルス感染期間の細胞性免疫の変化,副腎皮質ホルモン剤による高い寛解率により支持さ

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れている2)。インターロイキン13(IL-13),可溶性インターロイキン 2 受容体(sIL-2R)の 関与が示唆されている。 副腎皮質ホルモン感受性ネフローゼ症候群の小児患者の再発期間中に,CD4 リンパ球及 びCD8 リンパ球において IL-13 遺伝子の発現上昇が認められ29),T 細胞細胞質の IL-13 の 上昇を認め36),単球ではIL-8 及び IL-12 の産生抑制が認められることが報告されている37)。 IL-13 受容体の発現が足細胞に認められており,培養足細胞を IL-13 で処理した場合,経上 皮電気抵抗及び STAT6 リン酸化の減少による機能変化が認められているほか 38),末梢血 IL-13 が高発現となるトランスジェニックマウスモデルが開発され,微小変化型ネフローゼ 症候群と同様の腎障害を発現することが認められている39)。また,IL-13 は,ネフローゼ患 者においてIgE 及び IgG4 産生に関与していることが報告されている40)。微小変化型の発現 とB 細胞の関連性は明らかになっていないが,IL-13 は T 細胞(Th2 細胞)が産生し,B 細 胞も標的としており,B 細胞の活性化と分化を誘導することから,IL-13 を起点とする経路 によるB 細胞活性化が微小変化型の発現に関与していることも排除できないと考える。

IL-2 は T 細胞により産生され,IL-2 受容体に結合することで T 細胞を活性化させる。sIL-2R の機能は明らかではなく,また,微小変化型の発現とsIL-2R,及び B 細胞の関連性も明ら かではない。しかし,微小変化型においては,急性期にsIL-2R の値が非常に高く,寛解後 は正常値に回復することが確認されている41)42)43)44)45)46)47)48)。 足細胞に発現するCD80 と微小変化型の発現との関連も考えられている。CD80 は微小変 化型のマウスモデルの足細胞で発現が認められ,蛋白尿の発現に関連することが確認され ており39)49)50)51),また,微小変化型のネフローゼ症候群を発現した小児患者の足細胞にCD80 が発現していることが確認され,ネフローゼ症候群の症状が認められる時期において,尿 中にCD80 が確認されている52)。CD80 は膜貫通蛋白であり,通常,活性化 T 細胞,活性化 B 細胞,マクロファージ,樹状細胞に発現し,T 細胞活性化の補助調節因子といわれており, CD28 を介したシグナル伝達により T 細胞活性化を促進し,CD152 を介したシグナル伝達に よりT 細胞を抑制する2)。足細胞でのCD80 発現は,アクチンの再構成を誘発し,蛋白尿を 発現させ,尿中にCD80 が認められることが報告されている30)49)。なお,巣状分節性糸球体 硬化症や他の患者では,この現象は確認されていない53)。 その他に,アンジオポエチン様タンパク質 4(ANGPTL4)30)54),ヘモペキシン 55)56)57), ABCB1(ATP-binding Cassette Sub-family B Member 1)及び P 糖タンパク質(CD243)の48)58)59)60) 関与も示唆されているほか,nuclear factor- related kappa B(NF-related κB)が,微小変化型 の寛解患者,対照とした患者及び膜性腎症患者と比較し,微小変化型の再発患者の T 細胞 及びB 細胞の核で,増加していることが確認されている61)。NF-related κB はクロマチン再

構成に関連していると考えられている。

ヒトの微小変化型を想定したラットのpuromycin aminonucleotide nephrosis では活性酸素 が産生され,直接DNA を損傷し,足細胞のアクチン骨格の変化,足突起の癒合,足細胞の 糸球体基底膜からの遊離が認められ,蛋白尿が確認されている62)。 2. 巣状分節性糸球体硬化症(FSGS) 巣状分節性糸球体硬化症の病態の形成機序には複数の因子が関与しているとされており, T 細胞が介在する循環血液中の透過性因子,トランスフォーミング増殖因子(transforming growth factor β, TGF-β)による細胞増殖と細胞外マトリックス合成,遺伝子変異が関与する 臓側上皮細胞異常があげられる2)。 巣状分節性糸球体硬化症の 2/3 の患者において,血清中の可溶性ウロキナーゼ受容体 (soluble urokinase-type plasminogen activator receptor, suPAR)の量が増加していることが報 告されている16)。巣状分節性糸球体硬化症以外のネフローゼ症候群では,末梢血中のsuPAR は正常である。末梢血中のsuPAR は,足細胞表面の β3 インテグリンと結合し,これを活性 化することにより,足細胞の形態(足突起の癒合)やその機能に影響を与える16)。

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18 / 52 また,suPAR の上昇は炎症とは関連せず,ミコフェノール酸モフェチルによる治療によ りsuPAR は減少するが,シクロスポリン A 等のカルシニューリン阻害剤による治療ではあ まり影響がないことが確認されている。なお,suPAR の減少が維持されることにより,蛋 白尿の減少が認められている63)。 一方,Fornoni らは64),ファージディスプレイペプチドライブラリーのスクリーニングで, 本剤がsphingomyelin phosphodiesterase acid-like 3b(SMPDL-3b)と交叉反応する可能性が示 され65),リンパ腫細胞に対して本剤をin vitro で処理した場合,足細胞等の特定の細胞にお いて,受容体や伝達物質の構築に必須である 66)酸性スフィンゴミエリナーゼの活性を調節 することが報告されている 67)ことに基づき,腎移植を行った小児又は若年・青年患者を対 象に,巣状分節性糸球体硬化症における本剤の標的について解析した。 本剤がSMPDL-3b に結合して SMPDL-3b を安定化することにより足細胞のアクチン再構 築を抑制し,蛋白尿の発現抑制に効果を示すと考えられている。本剤に関する主な報告内 容は以下のとおりである。 (1) 巣状分節性糸球体硬化症再発患者の腎生検においてCD20 の発現は認められなかったが, SMPDL-3b と synaptopodin の共発現が糸球体で認められた。腎組織切片中の足細胞に蛍光 ラベルした本剤が結合することが認められ,linear SMPDL-3b blocking peptide により結合 が阻害された。一方,非特異的なIgG1,本剤以外の抗 CD20 抗体では SMPDL-3b との結 合は認められなかった。また,本剤は,培養した分化ヒト足細胞に対しても結合し,その 結合はSMPDL-3b blocking peptide により阻害された。本剤は SMPDL-3b の 50 kD アイソ フォームに結合することが示された。 (2) 巣状分節性糸球体硬化症の再発患者の腎生検では,糸球体数あたりの SMPDL-3b 及び synaptopodin 陽性細胞数が低下し,ヒト足細胞を巣状分節性糸球体硬化症の再発患者の血 清とともに培養した場合,SMPDL-3b mRNA と蛋白質の有意な減少が認められた。本剤 は,巣状分節性糸球体硬化症再発患者の血清による SMPDL-3b 減少を抑制したが,巣状 分節性糸球体硬化症の非再発患者,健常人のSMPDL-3b mRNA と蛋白質の発現に有意な 影響は与えなかった。

(3) 培養ヒト足細胞における酸性スフィンゴミエリナーゼ(acid sphingomyelinase, ASMase)の 活性について解析した結果では,巣状分節性糸球体硬化症再発患者の血清で処理した場合, ASMase 蛋白質(52 kD 又は 54 kD アイソフォーム)が有意に低下した。本剤は,52 kD のアイソフォームを維持することで,ASMase 蛋白質の低下を抑制し,ASMase 活性を正 常に維持すると考えられた。 (4) 培養ヒト足細胞を巣状分節性糸球体硬化症再発患者の血清で処理した場合,細胞のストレ スファイバーの顕著な破壊が認められるが,本剤によりストレスファイバー喪失の部分的 な抑制が示された。また,SMPDL-3b の過剰発現は,巣状分節性糸球体硬化症の再発患者 血清によるストレスファイバーの破壊を抑制した。本剤の作用は,ビンキュリン,ポドシ ン,ネフリンの発現調節に依存するものではないと報告されている。 (5) SMPDL-3b 遺伝子をノックアウトした細胞系(siSMP)を,巣状分節性糸球体硬化症再発 患者の血清で処理した場合,アクチンファイバーの破壊が確認され,本剤は,アクチンフ ァイバーの破壊を抑制することができなかった。足細胞のアクチン骨格に対する本剤の作 用について,SMPDL-3b が介在していることが示唆された。 3. 膜性腎症(MN) 膜性腎症については,足細胞上に発現しているM 型ホスホリパーゼ A2 受容体に対する 自己抗体(抗PLA2R 抗体)が確認されている23)68)69)70)71)。PLA2R はマクロファージに発現 しているマンノース受容体に似た構造を有し,C 型レクチンスーパーファミリーに属する膜 受容体グループの一部を形成しており72),足細胞での発現が確認されている73)。可溶性ホ

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スホリパーゼ A2 が結合することにより細胞内へシグナル伝達を行っていると考えられて いる73)。 抗PLA2R 抗体が膜性腎症患者の 70%に認められたことが報告されており48),本剤投与後 に,抗 PLA2R 抗体の減少または消失が認められ,抗 PLA2R 抗体の減少後に蛋白尿の減少 が認められたことが報告されている70)。 また,抗PLA2R 抗体以外の足細胞抗原に対する自己抗体も確認されており,膜性腎症の 発症に関与していることが示唆されている。それらは中性エンドペプチダーゼ(neutral endpeptidase, NEP),アルドースレダクターゼ(aldose reductase, AR)74),スーパーオキシド ディスムターゼ 2(superoxide dismutase 2, SOD2)74),ホスホピルビン酸ヒドラターゼ (α-enolase, α-ENO)に対する自己抗体である。膜性腎症と診断された 186 例と健常人 92 例 及び他の腎臓疾患(FSGS,IgA 腎症)を有する 96 例について自己抗体プロファイルを比較 解析した試験において75),膜性腎症患者では,抗AR 抗体陽性が 34%,抗 SOD2 抗体陽性 が28%,抗 α-ENO 抗体陽性が 43%であり(いずれも P<0.001),抗 PLA2R 抗体陽性例は 60% であった。抗PLA2R 抗体陰性例の 51%では他の自己抗体が 1 種類以上確認されており,全 ての自己抗体が陰性だった症例は20%であった。

膜性腎症の発症機構として,糸球体基底膜のlamina rara externa と足細胞の間の上皮下腔 に免疫グロブリンの沈着が形成されることが提唱されており,足突起基部に沈着すること で剥離を認め,糸球体基底膜の外縁に凝集することがin situ で確認されている76)77)。 リツキシマブはヒト B 細胞表面に存在する CD20 に結合し,補体依存性細胞傷害作用又 は抗体依存性細胞介在性細胞傷害作用によりB 細胞を傷害し,一時的に生体内の B 細胞を 枯渇させる。 CD20 抗原は,pro-B 細胞及び形質細胞を除く B 細胞に発現していることから,抗 PLA2R 抗体を産生する形質細胞の前駆細胞を生体内から枯渇させることで,抗PLA2R 抗体を減少 又は消失させ,寛解が得られると考えられる。 なお,膜性腎症患者では,疾患の発現に補体系が関与しており,IgG 免疫グロブリンが C1q と結合することにより蛋白尿が発現することが示唆されており77)78)79),また,補体の古 典経路又はレクチン経路が活性化されたことを示す C4d の存在が腎生検で認められている 80)81) 4. その他 ネフローゼ症候群の病型分類は明確ではないものの,T 細胞及び B 細胞の推移について 報告がある。 Kemper らは47),小児ステロイド感受性ネフローゼ症候群患者の異なる疾患状態において, T 細胞の活性化マーカー(可溶性 IL-2 受容体,可溶性 CD25(sCD25))及び B 細胞の活性 化マーカー(可溶性低親和性 IgE 受容体,可溶性 CD23(sCD23))について解析した。75 例(再発:33 例,寛解:42 例)と健常人 22 例について解析を行った。血清 sCD25 濃度は, 寛解例及び健常人と比較して,再発例で上昇していたが,再発例のうちステロイドの隔日 投与中の症例では,sCD25 の上昇は認めなかった。再発患者において,sCD25 は年齢と逆 相関し,総IgG 量と正の相関を示した。また,尿中への sCD25 の排泄は再発例で有意に上 昇した。血清中のsCD23 の値は,寛解例及び健常人と比較して,再発例で上昇し,再発例 のうちステロイドの隔日投与中の症例で最も高い値を示した。未治療の再発例において, sCD23 と総 IgE 量が有意に相関し,再発例のうちステロイドの隔日投与中の症例では sCD23 と総IgE 量が有意に相関した。なお,sCD25 と sCD23 は,互いに影響を示さなかった。 更にKemper らは82),小児のステロイド感受性ネフローゼ症候群患者89 例について,異 なる疾患状態におけるT 細胞及び B 細胞集団について解析し,液性免疫パラメータとステ ロイド治療の関連を検討した。未治療再発患者では,健常人と比較し,活性化CD3 陽性細 胞の増加を認めたが,CD19 陽性細胞(B 細胞)は減少した。一方,ステロイド依存性患者

(20)

20 / 52 及びステロイドの隔日投与中の再発患者では,健常人と比較してCD4 陽性細胞の絶対数が 減少し,CD19 陽性細胞(B 細胞)が相対的に増加した。未治療の寛解患者では,CD4 陽性 細胞の絶対数及び相対的減少が特徴的であり,CD8 陽性細胞及び活性化 CD3 陽性細胞は有 意に増加していた。ステロイドによる寛解導入は,CD4 陽性細胞の絶対的及び相対的抑制 の結果であるが,未治療寛解患者と比較し,ステロイドによる寛解導入患者では,B 細胞の 絶対的及び相対的な増加を認めたことを報告している82)。 Lapillonne らは,CD34 陽性造血幹細胞が,ステロイド感受性ネフローゼ症候群患者の再 発時(19 例)において,ステロイド感受性ネフローゼ症候群患者が寛解状態の場合(18 例) 及び健常人(18 例)と比較し,2 倍に上昇していることを確認し,また,ステロイド感受 性ネフローゼ症候群患者が寛解状態のとき,健常人と比較してCD19 陽性細胞(B 細胞)が 減少し,CD16 及び CD56 陽性細胞(NK 細胞)の上昇を認めたことを報告している83)。 以上より,微小変化型や巣状分節性糸球体硬化症における,T 細胞機能の変化と B 細胞 の関連,B 細胞分画の推移や IgE の発現,膜性腎症における自己抗体産生に対して,本剤は CD20 陽性の B 細胞を傷害することにより薬効を示すと考えられる。 また,巣状分節性糸球体硬化症における解析から,本剤の作用機序として足細胞に発現 している SMPDL-3b に直接結合し,足細胞構造の安定化を図ることにより薬効を示すと考 えられる。

2.5.3.2

薬物動態

2.5.3.2.1

小児期発症の難治性ネフローゼ症候群における本剤の血中濃度

(RCRNS-02 試験)

RCRNS-02 試験は本剤投与時の薬物動態プロファイルを明らかにすることを主要評価項 目として,(1) IDEC-C2B8 の小児期発症の頻回再発型/ステロイド依存性ネフローゼ症候群 に対する有効性と安全性を検証するプラセボ対照二重盲検試験(RCRNS-01 試験)で treatment failure と判定されかつプラセボが投与されていた患者,又は,(2) $$$ 年 $ 月 $日 までに本剤投与が行われた患者を対象に行われた。 375 mg/m2/回(最大量 500 mg/回)を 1 週間間隔で計 4 回投与し,各回投与直前直後,第 1 回目投与開始の 24 時間後,Day 29,Day 57,Day 85,Day 113,Day 169,及び Day 365(但 し,一部の症例はDay 253)に採血を行い,IDEC-C2B8 の血中濃度を測定した。 血中濃度は,各回投与時の治験薬投与終了後に上昇し,投与1 回目から投与 4 回目まで, 投与を重ねるごとにトラフ値が上昇した。4 回投与が終了できた 22 例の血中濃度について, 初回投与直後の平均値は222,000 ng/mL,第 2 回,第 3 回及び第 4 回目投与直後の血中濃度 平均値は,各々308,000,369,000 及び 414,000 ng/mL であった。また,本剤の最終投与後 5 ヵ月から10 ヵ月に血中から消失する傾向が認められた。 なお,RCRNS-01 試験は,二重盲検プラセボ対照試験であり,プラセボ群において薬物動 態のための頻回にわたる採血を防ぐために,血中濃度測定のための採血は最大 5 回とされ た。そのため,薬物動態を解析するための十分なデータは得られなかったが,本剤投与に より,血中濃度が上昇する傾向が確認された。

(21)

2.5.3.2.1.1

年齢による薬物動態の比較

RCRNS-02 試験において本剤が 4 回投与できた 22 例を,登録時の年齢により 2 群に分け て本剤の血中濃度について検討した。血中濃度及び薬物動態パラメータについて,12 歳未 満の症例と12 歳以上の症例,15 歳未満の症例と 15 歳以上の症例,及び 18 歳未満の症例と 18 歳以上の症例の間では,年齢が高くなると AUC 及び最高血中濃度(Cmax)が低くなり, 血中半減期(T1/2),クリアランス(CL),平均滞留時間(MRT),分布容積(Vds)が増加 する傾向が認められた。

2.5.3.2.1.2 375

mg/m

2

/週を 4 回投与した症例と 500 mg/回/週を 4 回投与した症

例の薬物動態

RCRNS-01 試験及び RCRNS-02 試験では,本剤 375 mg/m2/回(最大量 500 mg/回)が 1 週 間間隔で4 回投与された。本投与法では,体表面積が 1.34 m2以上の被験者で最大量の500 mg/回が適用されたことから,375 mg/m2投与と500 mg/回投与の薬物動態を検討した。 RCRNS-02 試験では,15 例に対して 375 mg/m2/回が投与され,8 例に対して 500 mg /回が 投与され,それぞれ14 例及び 8 例が本剤の 4 回投与を完了した。 血中濃度の推移は,375 mg/m2500 mg/回のいずれの場合も同様に,投与 1 回目から投 与4 回目まで,投与を重ねるごとにトラフ値が上昇した。 薬物動態パラメータについて,500 mg/回の投与症例では AUC 及び最高血中濃度(Cmax) が低くなり,血中半減期(T1/2),クリアランス(CL),平均滞留時間(MRT),分布容積(Vds) が増加する傾向が認められた。

2.5.3.2.2

特別な患者集団における薬物動態

RCRNS-01 試験及び RCRNS-02 試験の対象である小児期発症の難治性ネフローゼ症候群 患者以外の腎機能障害,又は肝機能障害を有する患者,高齢の患者に関する薬物動態は検 討していない。

2.5.3.2.3

民族学的要因の影響

現時点において,本剤を他の民族の小児患者へ投与した場合の薬物動態データが存在し ないことから,民族学的要因の影響は検討できなかった。

2.5.3.2.4

外的要因の影響

本剤は静脈内投与製剤であるため,外的要因よる制限の必要性は推定されない。

2.5.3.2.5

薬物相互作用

本一変申請に関連し,薬物相互作用についての検討は行われていない。

(22)

22 / 52

2.5.3.3

薬力学

2.5.3.3.1 B 細胞傷害作用

本剤は,B 細胞表面に発現している CD20 抗原に特異的に結合するマウス-ヒトキメラ型 モノクローナル抗体であり,その本質は免疫グロブリンG(IgG)である。本剤は,B 細胞 表面上のCD20 抗原に結合し,補体依存性細胞傷害作用(complement dependent cytotoxicity: CDC)や抗体依存性細胞介在性細胞傷害作用(antibody dependent cell-mediated cytotoxicity: ADCC)などにより B 細胞を傷害することで効果を示すことから,末梢血中の B 細胞数の 推移は本剤の薬効発現の指標となる。 RCRNS-01 試験及び RCRNS-02 試験において,B 細胞数(CD19 陽性細胞数及び CD20 陽 性細胞数)の推移について検討し,いずれの試験においても,本剤の 1 回目投与後に B 細 胞数の減少が認められ,初回投与の約5 ヵ月後から回復傾向が認められた。 RCRNS-01 試験では,本剤投与後に B 細胞数が急速に減少し,約 3 ヵ月間(Day 15 から Day 85 の各測定時点まで)減少し続けたが,約 5 ヵ月後(Day 141 又は Day 169 の測定時点) から増加する傾向にあった。一方,プラセボ群では B 細胞数の減少は認められなかった。 Day 15 から Day 169 までの各測定時点における B 細胞数は,プラセボ群と比較して本剤投 与群が有意に少なかった(t 検定,p≤0.001)。 また,RCRNS-02 試験でも,本剤投与後から B 細胞が急速に減少し始め,約 3 ヵ月間(Day 15 から Day 85 の各測定時点まで)減少を持続し,本剤投与約 5 ヵ月後(Day 141 の測定時 点)から増加する傾向にあった。 RCRNS-01 試験の本剤投与群の 24 例について,末梢血中 B 細胞の「枯渇」を確認した日 を起算日とした,末梢血中B 細胞数の回復(5 個/μL 以上)を確認するまでの期間の中央値 は148.0 日(95%信頼区間 131.0~170.0 日)であり,初回再発を認めた症例では,B 細胞が 未枯渇又は回復の状態であった。RCRNS-02 試験でも同様の結果が認められた。 本剤の血中濃度低下に伴い,B 細胞が回復する傾向が認められた(資料番号第 2.7.2.3.1 項参照)。 また,RCRNS-01 試験及び RCRNS-02 試験で,本剤の 1 回の投与量が 375 mg/m2の症例と 500 mg/回の症例に分類し,B 細胞枯渇からの回復をイベントとした生存時間解析を行った。 2 つの試験で本剤が投与された 54 例のうち,B 細胞が枯渇した 53 例を対象とした解析で, 500 mg/回投与症例で,長期間 B 細胞が枯渇する傾向が認められた(p<0.001,log-rank 検定)。

2.5.3.3.2 HACA 産生

本剤に対する中和抗体の産生について,RCRNS-01 試験の本剤投与群 24 例のうち 3 例 (12.5%),及び RCRNS-02 試験の 23 例中 4 例(17.4%)において HACA 産生が認められた。 RCRNS-01 試験のプラセボ群では HACA 産生は認めなかった。また,RCRNS-01 試験にお いてランダム化終了後に本剤投与群へ登録された 7 例では,HACA 産生は認めなかった。 RCRNS-01 試験及び RCRNS-02 試験で本剤が投与された 54 例の HACA 産生は 13.0%(7 例 /54 例)であった。HACA 産生を認めた時期の本剤血中濃度は,全ての症例で 0 ng/mL(検 出限界以下)であり,B 細胞は回復(5 個/μL 以上)していた。

(23)

2.5.3.4

臨床薬理のまとめ

1. 特発性ネフローゼ症候群と,本剤の作用機序との関連は不明な点が多い。小児に好発する MCNS の原因は特定されていないが,T 細胞に関連する免疫異常反応が示唆されており,本 剤の標的となるB 細胞の関与は,T 細胞との関連や B 細胞による直接作用が示唆されている。 FSGS の原因としては,複数の因子が関与していることが考えられており,また,本剤と糸 球体に発現するsphingomyelin phosphodiesterase acid-like 3b(SMPDL-3b)が交叉反応し,安 定化することで蛋白尿の発現を抑制する可能性が報告されている。MN の原因としては,足 細胞上に発現しているM 型ホスホリパーゼ A2 受容体に対する自己抗体(抗 PLA2R 抗体) 等が確認されており,本剤が自己抗体を産生する形質細胞の前駆細胞を枯渇させることによ り効果を示す可能性が考えられる。 2. 難治性の小児期発症ネフローゼ症候群患者にリツキシマブを投与した場合の本剤血中濃度 については,1 回目投与時から 4 回目投与直後にかけて投与後の血中濃度及びトラフ値が上 昇する傾向にあった。本剤の最終投与から約 5 ヵ月後から 10 ヵ月後にかけて,血中から消 失する傾向が認められた。 3. RCRNS-02 試験の症例について,12 歳,15 歳及び 18 歳を基準として分類し,薬物動態を検 討した場合,年齢が高くなると AUC 及び最高血中濃度(Cmax)が低くなり,半減期,クリ アランス,平均滞留時間,分布容積が増加する傾向にあった。 4. RCRNS-02 試験の症例を 375 mg/m2/週の 4 回投与群と 500 mg/回の 4 回投与群に分けて薬物動 態を検討した場合,500 mg/回の投与症例で,AUC 及び最高血中濃度(Cmax)が低くなり, 半減期,クリアランス,平均滞留時間,分布容積が増加する傾向にあった。 5. RCRNS-01 試験及び RCRNS-02 試験において,本剤の 1 回目投与後に B 細胞(CD19 陽性細 胞)の減少が認められ,初回投与から約5 ヵ月後から回復傾向が認められた。本剤の血中濃 度低下に伴い,B 細胞が回復する傾向が認められた。また,375 mg/m2/回よりも 500 mg/回投 与症例で,長期間B 細胞が枯渇する傾向が認められた。 6. RCRNS-01 試験及び RCRNS-02 試験で本剤が投与された 54 例の HACA 産生は 13.0%(7 例/54 例)であった。HACA 産生を認めた時期の本剤血中濃度は,全ての症例で 0 ng/mL(検出限 界以下)であり,B 細胞は回復(5 個/μL 以上)していた。

(24)

24 / 52

2.5.4

有効性の概括評価

小児期発症の難治性ネフローゼ症候群(頻回再発型又はステロイド依存性)に対する有 効性は,国内で医師主導治験として行われたRCRNS-01 試験と RCRNS-02 試験の成績に基 づいて評価された。RCRNS-01 試験は,プラセボを対照とした二重盲検比較試験であり,無 再発期間(登録割付日から起算した治験薬投与後第 1 回目の再発発生日までの期間)が主 要評価項目とされ,治験薬投与開始後1 年間(Day 1~Day 365)を観察期間として行われた。 副次的評価項目としては,treatment failure までの期間,再発率(回/観察人年),頻回再発ま での期間,ステロイド依存性発生までの期間,ステロイド抵抗性移行までの期間,ステロ イド総投与量,登録割付日前後365 日のステロイド総投与量の変化が評価された。 RCRNS-02 試験は,本剤を小児期発症の難治性ネフローゼ症候群に対して投与した場合の 薬物動態を検討することを目的として実施された単一アームのオープンラベル試験である が,副次的評価項目として無再発期間,再発率,再発割合など有効性に関する評価も詳細 に行われた。 RCRNS-01 試験及び RCRNS-02 試験では,治験薬が少なくとも 1 回以上投与され,投与 後の主要評価に必要なデータが測定された被験者集団をFull Analysis Set(FAS)とし,有効 性の解析を行った。RCRNS-01 試験の FAS は,本剤投与群 24 例,及びプラセボ投与群 24 例の合計48 例であり,RCRNS-02 試験での FAS は,23 例であった。 RCRNS-01 試験及び RCRNS-02 試験の有効性の成績を2.5.4.3項に記載し,本剤の小児期 発症の難治性ネフローゼ症候群に対する有効性のまとめを2.5.4.5項に記載した。

2.5.4.1

有効性評価に用いた臨床試験の概略

1. 国内第 III 相試験(試験番号:RCRNS-01 試験) 小児期発症の疾患活動性の高い難治性ネフローゼ症候群患者を対象として,IDEC-C2B8 を 375 mg/m2/回(最大量 500 mg/回),1 週間間隔で 4 回投与した際の有効性を検証し安全性を評 価する目的で本試験が行われた。 本試験の対象患者は,特発性のネフローゼ症候群であり,発症(初発)年齢が1 歳以上 18 歳未満,かつ,登録時年齢が2 歳以上である,以下の(1)~(3)のいずれかを満たす患者とし, 本剤投与群(IDEC-C2B8 群)とプラセボ投与群(プラセボ群)に 1:1 の割合でランダム化さ れた。 (1) 頻回再発又はステロイド依存性と診断され,免疫抑制薬(シクロスポリン,シクロフォス ファミド,ミゾリビン等)治療終了後再び,頻回再発又はステロイド依存性と診断された。 (2) 頻回再発又はステロイド依存性と診断され,免疫抑制薬(シクロスポリン,シクロフォス ファミド,ミゾリビン等)治療を開始されたが,治療中に再び,頻回再発又はステロイド 依存性と診断された。 (3) 特発性ネフローゼ症候群を発症後にステロイド抵抗性と診断され,免疫抑制薬(シクロス ポリン単独又はシクロスポリンとメチルプレドニゾロン併用)治療中又は治療終了後に頻 回再発又はステロイド依存性と診断された。 目標被験者数は,IDEC-C2B8 群が 6 ヵ月間寛解を維持する割合を p1=0.4(無再発期間の 中央値が5 ヵ月に相当),プラセボ群が 6 ヵ月間寛解を維持する割合を p0=0.1 としたときに, 5%水準の有意差(片側 2.5%)を検出力 90%で検出するために必要な症例として,各群 30 例に設定された。

(25)

治験薬は,体表面積あたり375 mg/m2/回(最大量 500 mg/回)を 1 週間間隔で計 4 回投与 (Day 1,8,15,22 に投与)し,治験薬の各回投与前に,infusion reaction の予防のために アセトアミノフェン(経口),d-マレイン酸クロルフェニラミン(経口),コハク酸メチルプ レドニゾロンナトリウム(静注)による前投与(premedication)がなされた。また,ネフロ ーゼ症候群に対する治療として,登録前の再発に対する副腎皮質ホルモン剤(プレドニゾ ロン)の投与,及び治験開始前から投与されている免疫抑制剤については試験開始後も継 続し,予め治験実施計画書に規定された方法に則り,漸減,中止された。 治験薬投与期間中は,各治験薬投与日に 1 週間ごとの観察が行なわれ,治験薬投与終了 後は,治験薬の最終投与の1 週間後(5 週目)に観察,その後 4 週間ごとの観察が 53 週目 まで行なわれた。観察期間は,治験薬の第1 回投与日(Day 1)から 53 週目(Day 365)ま での1 年間に設定された。 再発は,「試験紙法で早朝尿蛋白2+以上を 3 日間以上連続して示し,プレドニゾロン治療 を要したもの」と定義され,再発発生日は「試験紙法で早朝尿蛋白2+以上を 3 日間以上連 続して確認した1 日目」と定義された。 なお,RCRNS-01 試験では,安全性と有効性に関する中間解析を実施することが実施計画 で定められていた。安全性に関する中間解析は,治験薬投与完了又は中止した被験者が 20 名に達した時点で実施され,有効性の中間解析は,第1 回再発を発生した被験者が 30 例に 達した時点で実施され,解析項目は主要評価項目である無再発期間,有効性の中間解析時 点までの再発率,第2 回目再発発生までの期間とされた。有意水準は,無再発期間は log-rank 検定で片側0.25%,再発率は並べ替え検定で片側 2.5%,第 2 回目再発発生までの期間は WLW モデルによる解析で片側 2.5%とし,全てが有意だったとき中間解析時点での本剤投与群の 優越性が示されたと判断された。 2. 国内薬物動態第III 相試験(試験番号:RCRNS-02 試験) 小児期発症の難治性ネフローゼ症候群患者に対するIDEC-C2B8 の多施設共同二重盲検プ ラセボ対照ランダム化比較試験(治験実施計画書番号:RCRNS-01)で treatment failure と 判定されかつプラセボが投与されていた患者,又は $$$ 年 $ 月 $ 日(RCRNS-02 試験開始 $ ヵ月前)までに rituximab が投与された患者に,IDEC-C2B8 の 375 mg/m2/回(最大量 500 mg/回)を 1 週間間隔で 4 回投与し,薬物動態プロファイルを明らかにするとともに有効 性及び安全性を確認することを目的に本試験が実施された。 本試験の対象患者は,特発性のネフローゼ症候群であり,発症(初発)年齢が 1 歳以上 18 歳未満,かつ,登録時年齢が 2 歳以上である,以下の(1)~(3)のいずれかを満たす患者と された。 (1) 小児期発症の難治性ネフローゼ症候群患者を対象とした RCRNS-01 試験に参加し,プラ セボが投与された患者で,治験薬投与開始後Week 13(Day 85)以内に再発した患者 (2) 小児期発症の難治性ネフローゼ症候群患者を対象とした RCRNS-01 試験に参加し,プラ

セボが投与された患者で,Week 13 の翌日(Day 86)以降から Week 53(Day 365)に,頻 回再発,ステロイド依存性と診断された患者 (3) 小児期発症の難治性ネフローゼ症候群患者で,$$$$ 年 $$ 月 $$ 日までに rituximab の投与 を受けた頻回再発,ステロイド依存性患者 治験薬の投与,premedication 及びネフローゼ症候群に対する治療は RCRNS-01 試験と同 様の方法で行われた。 治験薬投与後の観察もRCRNS-01 試験と同様の時期に治療開始から 1 年間(Day 365)行 われたが,RCRNS-02 試験については,試験終了時期を考慮し,21 例目以降に登録された 症例については,37 週目(Day 253)までの 9 ヵ月間が必須観察期間に定められた。

表 2.5.3.1-1  微小変化型ネフローゼ症候群,巣状分節性糸球体硬化症及び膜性腎症の臨床的特徴,病理組織学的特徴及び病因 2)3) ネフローゼ症候群  臨床的特徴  病理組織学的特徴  病因  微小変化型ネフローゼ症候群 (MCNS)  臨床的には急激な発症が特徴であり,突然の浮腫をきたすことが多い。高度の蛋 白尿や低アルブミン血症,脂質異常症が 認められ,胸腹水の貯留をきたすことも ある。尿蛋白の選択性は高選択性のこと が多く,治療に対する反応が良好である 6) 。成人において顕微鏡的血尿が観察され
表 2.5.3.1-1  微小変化型ネフローゼ症候群,巣状分節性糸球体硬化症及び膜性腎症の臨床的特徴,病理組織学的特徴及び病因(続き) 2)3) ネフローゼ症候群  臨床的特徴  病理組織学的特徴  病因  膜性腎症 (MN)  中高年者に多く,ネフローゼ症候群を呈しても,尿蛋白の増加が必ずしも急速で はない。したがって,浮腫なども目立た ないため,むしろ脂質異常症などが本症 発見のきっかけとなることもある。血尿 は約 20%にみられ軽度なことが多いとさ れてきたが,厚生労働省進行性腎障害に 関する調査研究
表 2.5.4.2-1  RCRNS-01 試験及び RCRNS-02 試験の主な患者背景  項目 RCRNS-01 試験 RCRNS-02 試験 本剤投与群  プラセボ群  本剤投与  対象集団  例数  24  24  23  年齢 平均値 ±標準偏差  11.5±5.0  13.6±6.9  14.2±7.1  中央値 (最小値~最大値)  11.0  (3~25)  11.5  (5~37)  12.0  (6~38)  性別  男  18(75.0%)  16(66.7%)  15(65.2%)

参照

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