2.5 臨床に関する概括評価
2.5.6 ベネフィットとリスクに関する結論
2.5.6.1 ベネフィット
RCRNS-01試験で認められた有効性の成績について,本剤投与群では,プラセボ群と比較
し,無再発期間の延長及び再発頻度の減少等で有意な改善が認められ,RCRNS-02試験にお
いてもRCRNS-01試験と同様の有効性が認められた。
本剤の375 mg/m2(最大量500 mg/回)を週1回,4回投与することで,約9ヵ月間(中 央値 267 日)の無再発期間を得ることは,小児期発症の難治性ネフローゼ症候群患者にと って有益であると考える。
現在,小児期発症特発性ネフローゼ症候群に対する第一選択薬は,副腎皮質ホルモン剤 の経口投与であり 3)4)5),副腎皮質ホルモン剤により寛解するステロイド感受性ネフローゼ 症候群と副腎皮質ホルモン剤で寛解しないステロイド抵抗性ネフローゼ症候群に移行する 場合がある2)3)4)5)。
ステロイド感受性では,比較的短期間に再発を繰り返す頻回再発型ネフローゼ症候群(頻 回再発型)や,副腎皮質ホルモン剤の減量や中止に伴い再発するステロイド依存性ネフロ ーゼ症候群(ステロイド依存性)に移行する患者が認められ,頻回再発型やステロイド依 存性になると,再発するたびに大量の副腎皮質ホルモン剤投与が必要となるため,副腎皮 質ホルモン剤特有の有害事象が小児期発症の難治性ネフローゼ症候群に対する治療継続上 の問題となる 3)4)5)。これを回避するため,副腎皮質ホルモン剤の減量若しくは副腎皮質ホ ルモン剤からの離脱を目的に,免疫抑制剤による治療を行うが,免疫抑制剤による治療を 中止した場合に,再び頻回再発型及びステロイド依存性となる場合や,既存の免疫抑制薬 治療で寛解を維持できない頻回再発型及びステロイド依存性患者の場合は,副腎皮質ホル モン剤からの離脱が困難となる 3)4)5)。更に,免疫抑制剤の副作用により長期投与や再投与 が困難となる場合も,副腎皮質ホルモン剤からの離脱が困難となる。このような状況にお いて,既存の副腎皮質ホルモン剤及び免疫抑制剤以外の治療法を選択できることは臨床上 重要であると考える。
また,RCRNS-01試験では,本剤投与により副腎皮質ホルモン剤の投与量を減量できるこ
とが確認された。本剤治療により,副腎皮質ホルモン剤の減量又は/及び離脱が可能とな り,特に小児患者で重要なリスクである副腎皮質ホルモン剤の有害事象(成長障害,骨粗 鬆症,高血圧,白内障,緑内障,糖尿病,中心性肥満,感染症,消化管潰瘍,精神障害,
副腎機能不全等)の発現が回避できる可能性が高いと考えられる。特に小児期発症のネフ ローゼ症候群の場合には,乳幼児期(2~6 歳)に発症以降全小児期にわたる長い罹病期間 となり,思春期,成人期まで持ち越す患者が少なくなく 86)87),長期間の副腎皮質ホルモン 剤投与により,特に低身長と骨粗鬆症が問題となることから 88),本剤による治療の導入に よるベネフィットは大きいと考える。
2.5.6.2 リスク
RCRNS-01試験において,本剤投与群では,プラセボ群と比較し,有害事象及び副作用の
発現頻度及び重症度(grade)が高くなる傾向にあったが,いずれの事象についても管理可
46 / 52 能であった。RCRNS-02 試験で発現した有害事象及び副作用についても RCRNS-01 試験と 同様であった。なお,RCRNS-01試験とRCRNS-02試験で死亡例は認めなかった。
RCRNS-01 試験及び RCRNS-02 試験の安全性評価において,未知の有害事象発現は認め
られず,これまでに国内外で確認された有害事象の種類,発現頻度,重篤度と異なる傾向 は認められなかった。RCRNS-01 試験及び RCRNS-02 試験で認められた有害事象及び副作 用は十分に対処可能であったが,本剤に特有の有害事象であるinfusion reaction及び感染症 が本剤治療の主なリスクであると考える。また,小児を対象に本剤が投与されることから,
RCRNS-01試験及びRCRNS-02試験で本剤が投与された症例を年齢区分(12歳,15歳及び 18歳)に分類し,有害事象,治療を必要とする感染症及びinfusion reactionの発現傾向を検 討したところ,有害事象及び治療を必要とする感染性の発現は年齢が低い症例の集団で多 くなる傾向にあり,一方,infusion rectionは年齢が高い症例の集団で多くなる傾向にあった。
したがって,小児等の年齢が低い患者への投与には有害事象の発現,特に感染症の発現に 十分な注意が必要であると考えられた。
本剤は,免疫機能を担う B細胞を傷害することで,効果を示す。B細胞枯渇状態となっ た場合には感染症の発現が最も懸念される事象である。RCRNS-01 試験及び RCRNS-02 試 験において,本剤の375 mg/m2(最大量500 mg/回)を週1回,4回投与することにより,
約5ヵ月間のB細胞枯渇状態が確認された。小児期発症の難治性ネフローゼ症候群患者で は,本剤の投与前に,副腎皮質ホルモン剤及び/又は免疫抑制剤が投与され,免疫機能が 低下していることが想定され,更に本剤投与による B細胞枯渇に伴う免疫機能低下が懸念 される。
RCRNS-01試験及びRCRNS-02試験において,末梢血中B細胞の状態を時間依存性共変
量とした繰り返しイベント解析の結果,末梢血中B細胞が枯渇(5個/μL未満)している間 は,治療を必要とする感染症の発現が有意に高かったことが確認されている。また,感染 症のリスクを上昇させると考えられる,白血球数減少,リンパ球数減少及び好中球数減少 が認められ,grade 3以上の事象も確認されているほか,遅発性好中球数減少や免疫グロブ リン値の低下も認められた。RCRNS-01試験において発現した感染症は管理可能であったも のの,プラセボ群と比較し本剤投与群で発現率が高かったことから,本剤投与期間中及び 本剤投与後に,感染症の発現に関して十分に注意をはらう必要があり,適切な管理と予防 的処置が必要であると考える。一般的に若年層ほど既存のウイルス,細菌,真菌に暴露さ れている期間が短く免疫が成立していないため,感染症が重篤な経過を辿る可能性が高い といわれており,低年齢層に投与する場合には特に配慮が必要と考えられる。
また,本剤特有の有害事象としてinfusion reactionがある。RCRNS-01試験及びRCRNS-02 試験では,infusion reactionの発現予防の前治療として,本剤の投与30分前に解熱鎮痛剤(ア セトアミノフェン),抗ヒスタミン剤(d-マレイン酸クロルフェニラミン)の投与に加え,
コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウムの静注が行われた。その結果,RCRNS-01試験及 びRCRNS-02試験で認められたinfusion reactionは,いずれもgrade 2以下の事象であり,全 ての事象が管理可能であった。小児期発症の難治性ネフローゼ症候群患者に対する本剤投 与においても,本剤投与前の前治療として副腎皮質ホルモン剤を投与することにより infusion reactionの発現頻度及び重症度(grade)の低下が期待できるが,小児期発症の難治 性ネフローゼ症候群以外の疾患において,副腎皮質ホルモン剤を投与した患者でも重篤な
infusion reaction の発現が認められていることから,本剤投与にあたっては十分に注意をは
らう必要がある。
小児期発症の難治性ネフローゼ症候群において,頻回再発型又はステロイド依存性とな った場合には再発を繰り返し,本剤を繰り返し投与する可能性が考えられる。RCRNS-02 試験では,登録前に適応外使用により本剤が投与された 3 例が登録されたが,少数例であ り,過去の本剤投与状況が把握できなかったが,安全性に関して特に注目すべき事項は確 認できなかった。
また,小児期発症の難治性ネフローゼ症候群患者に対しては,長期間にわたり副腎皮質 ホルモン剤及び免疫抑制剤が投与され,さらに本剤が投与される場合には長期間の B 細胞 枯渇の可能性が想定される。免疫抑制状態下での発現が想定される B型肝炎の再発や進行 性多巣性白質脳症(PML)の発現について,小児期発症の難治性ネフローゼ症候群での報 告は認められず,発現リスクは不明である。さらに B細胞枯渇状態での免疫系の成熟にも 配慮する必要がある。これらを含め,本剤投与に際し,重篤な有害事象の発現に注意をは らうとともに,患者の状態を十分に観察し必要に応じて適切な処置を行う必要があると考 える。
2.5.6.3 ベネフィットとリスクのまとめ
小児期発症の難治性ネフローゼ症候群に対する本剤投与について,国内で実施された
RCRNS-01試験及びRCRNS-02試験において,有効性及び安全性が確認された。
本剤の投与にあたり,感染症及びinfusion reactionの発現に十分な注意をはらう必要があ り,適切な管理と予防的処置が必要であると考える。また,小児等の低年齢患者への投与 には,有害事象の発現に十分な注意が必要であると考えられた。
長期間にわたり副腎皮質ホルモン剤,免疫抑制剤及び本剤が投与され,長期間の B 細胞 枯渇が想定されることから,本剤で発現が認められている B 型肝炎の再発や進行性多巣性 白質脳症(PML)の発現リスクがあることを考慮し,適切に医療現場へ情報提供するとと もに,患者の状態を十分に観察する必要がある。
医療現場に対して適切な情報提供が行われ,本剤投与時及び投与後に患者の状態に十分 注意がはらわれるならば,本剤の375 mg/m2(最大量500 mg/回)を週1回,4回投与する ことで,約 9 ヵ月間(中央値)の無再発期間を得ること,副腎皮質ホルモン剤からの減量 又は/及び離脱が可能になることにより副腎皮質ホルモン剤の長期間投与で懸念される有 害事象が回避できること,免疫抑制剤の投与を回避することで,免疫抑制剤の副作用が回 避できることは,小児期発症の難治性ネフローゼ症候群患者にとって臨床上大きな意義が あると考える。